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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169598
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20231122BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080816
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】松澤 剛
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD06
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】サイドサポート調整機構を備えた構成において、シートバックの見栄えを確保しつつ、シートバックボードの小型化を図る。
【解決手段】車両用シート10では、シートバックパッド26は、シートバックボード46に対するシート左右方向両外側でシートバックボード46よりもシート後方側へ突出した左右の突出部26Pを有している。左右の突出部26Pは、サイドサポート調整機構28によって左右のサイドサポート14Sの間隔が狭められる際にシートバック表皮に生じる張力によってシート前方側へ潰される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドサポートを有するシートバックのクッション材を構成するシートバックパッドと、
前記左右のサイドサポートの間隔を調整するサイドサポート調整機構と、
前記シートバックパッドに被せられ、前記シートバックの背面側に位置する部位に開口が形成されたシートバック表皮と、
前記シートバックの背面に配置され、前記開口を塞いだシートバックボードと、
前記シートバック表皮における前記開口のシート左右方向両縁部をシート左右方向中央側へ弾性的に付勢し、前記間隔の調整時に伸縮する弾性部材と、
を備え、
前記シートバックパッドは、前記シートバックボードに対するシート左右方向両外側で前記シートバックボードよりもシート後方側へ突出した左右の突出部を有し、
前記左右の突出部は、前記サイドサポート調整機構によって前記左右のサイドサポートの間隔が狭められる際に前記シートバック表皮に生じる張力によってシート前方側へ潰される車両用シート。
【請求項2】
前記弾性部材には、前記シートバック表皮における前記開口のシート左右方向両縁部を前記シートバックのフレームにそれぞれ連結した左右の短尺弾性部材が含まれる請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記弾性部材には、前記シートバック表皮における前記開口のシート左右方向両縁部をシート左右方向に繋いだ長尺弾性部材が含まれる請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記長尺弾性部材は、左側弾性部材と右側弾性部材とに分割されると共に、前記左側弾性部材と前記右側弾性部材とを連結する連結具を有している請求項3に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドサポート調整機構を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用シートは、シートバックの左右方向両側部に設けられた左右のサイドサポートの間隔を乗員の体格に応じて調整するためのサイドサポート調整機構を備えている。この車両用シートでは、シートバックの背面に配置された樹脂製のシートバックボードのシート左右方向両側部がシート前方側へ曲がっており、シートバックの側面に配置されている。これにより、左右のサイドサポートがシート前方側かつシート左右方向中央側へ変位した状態でシートバックの側面に隙間が形成されることを防止し、シートバックの見栄えを確保するようにしている。下記特許文献2、3には、上記同様の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-137593号公報
【特許文献2】特開2014-156173号公報
【特許文献3】特開2015-113082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、シートバックの背面に配置されるシートバックボードがシートバックの側面側へ延長されて大型化しているため、シートバックボードの小型化を図る観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、サイドサポート調整機構を備えた構成において、シートバックの見栄えを確保しつつ、シートバックボードの小型化を図ることができる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、左右のサイドサポートを有するシートバックのクッション材を構成するシートバックパッドと、前記左右のサイドサポートの間隔を調整するサイドサポート調整機構と、前記シートバックパッドに被せられ、前記シートバックの背面側に位置する部位に開口が形成されたシートバック表皮と、前記シートバックの背面に配置され、前記開口を塞いだシートバックボードと、前記シートバック表皮における前記開口のシート左右方向両縁部をシート左右方向中央側へ弾性的に付勢し、前記間隔の調整時に伸縮する弾性部材と、を備え、前記シートバックパッドは、前記シートバックボードに対するシート左右方向両外側で前記シートバックボードよりもシート後方側へ突出した左右の突出部を有し、前記左右の突出部は、前記サイドサポート調整機構によって前記左右のサイドサポートの間隔が狭められる際に前記シートバック表皮に生じる張力によってシート前方側へ潰される。
【0007】
第1態様の車両用シートによれば、シートバックパッドは、左右のサイドサポートを有するシートバックのクッション材を構成する。左右のサイドサポートの間隔は、サイドサポート調整機構によって調整される。上記のシートバックパッドに被せられたシートバック表皮には、シートバックの背面側に位置する部位に開口が形成されている。この開口は、シートバックの背面に配置されるシートバックボードによって塞がれている。シートバック表皮における上記開口のシート左右方向両縁部は、弾性部材によってシート左右方向中央側へ弾性的に付勢されている。この弾性部材は、サイドサポート調整機構によって左右のサイドサポートの間隔が調整される際に伸縮する。
【0008】
上記のシートバックパッドは、シートバックボードに対するシート左右方向両外側でシートバックボードよりもシート後方側へ突出した左右の突出部を有している。左右の突出部は、サイドサポート調整機構によって左右のサイドサポートの間隔が狭められる際に、シートバック表皮に生じる張力によってシート前方側へ潰される。つまり、上記左右の突出部が潰れ代として潰されることにより、シートバック表皮に生じる張力が緩和され、左右のサイドサポートの変位が許容される。これにより、シートバックの側面がシートバック表皮によって形成された構成であっても、左右のサイドサポートの間隔調整が可能となるので、シートバックボードをシートバックの側面側まで延長する必要がなくなり、シートバックボードの小型化が可能となる。
【0009】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様において、前記弾性部材には、前記シートバック表皮における前記開口のシート左右方向両縁部を前記シートバックのフレームにそれぞれ連結した左右の短尺弾性部材が含まれる。
【0010】
第2の態様の車両用シートによれば、シートバック表皮における開口のシート左右方向両縁部をシート左右方向中央側へ弾性的に付勢する弾性部材には、前記両縁部をシートバックのフレームにそれぞれ連結した左右の短尺弾性部材が含まれる。これらの短尺弾性部材が、例えば左右のサイドサポートの間隔調整範囲が小さい高さ領域に配置されることにより、シートバック表皮の必要以上の変位を制限することができる。
【0011】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様において、前記弾性部材には、前記シートバック表皮における前記開口のシート左右方向両縁部をシート左右方向に繋いだ長尺弾性部材が含まれる。
【0012】
第3の態様の車両用シートによれば、シートバック表皮における開口のシート左右方向両縁部をシート左右方向中央側へ弾性的に付勢する弾性部材には、前記両縁部をシート左右方向に繋いだ長尺弾性部材が含まれる。この長尺弾性部材が、例えば左右のサイドサポートの間隔調整範囲が大きい高さ領域に配置されることにより、シートバック表皮が左右のサイドサポートに追従して変位し易くなる。
【0013】
第4の態様の車両用シートは、第3の態様において、前記長尺弾性部材は、左側弾性部材と右側弾性部材とに分割されると共に、前記左側弾性部材と前記右側弾性部材とを連結する連結具を有している。
【0014】
第4の態様の車両用シートによれば、シートバック表皮における開口のシート左右方向両縁部をシート左右方向に繋いだ長尺弾性部材は、左側弾性部材と右側弾性部材とに分割されており、左側弾性部材と右側弾性部材とを連結する連結具を有している。このため、本車両用シートの製造時には、シートバックパッドにシートバック表皮を被せた後で、左側弾性部材と右側弾性部材とを連結具によって連結することができる。これにより、シートバックパッドにシートバック表皮を被せる作業が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、サイドサポート調整機構を備えた構成において、シートバックの見栄えを確保しつつ、シートバックボードの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
図2図1に示される構成の一部を拡大し且つシートバックボードの図示を省略した状態で示す斜視図である。
図3図2のF3-F3線に沿った切断面を示す断面図である。
図4図2のF4-F4線に沿った切断面を示す断面図である。
図5】変形例を示す図4に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図5を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シートの前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0018】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、車両の乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背凭れとなるシートバック14と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト16とを備えている。この車両用シート10は、一例として車両のフロントシートである。
【0019】
図3及び図4に示されるように、シートバック14における左右方向の両側部には、シートバック14における左右方向の中央部よりも前方側へ突出した左右のサイドサポート14Sが設けられている。このシートバック14は、フレームであるシートバックフレーム18と、シートバックスプリング24(図2参照;図3及び図4では図示省略)と、クッション材であるシートバックパッド26と、左右のサイドサポート調整機構28と、表皮であるシートバック表皮32と、左右の短尺弾性部材36Sと、長尺弾性部材36Lと、シートバックボード46(図2では図示省略)とを備えている。
【0020】
シートバックフレーム18は、シートバック14の左右方向の両側部において上下方向に延在する左右のサイドフレーム20(図3及び図4参照)と、左右のサイドフレーム20の上端部を左右方向に繋いだアッパフレーム(図示省略)と、左右のサイドフレーム20の下端部を左右方向に繋いだロアフレーム(図示省略)と、左右のサイドフレーム20の背面側に取り付けられたワイヤフレーム22とを有している。
【0021】
左右のサイドフレーム20及びロアフレームは、例えばプレス成形された金属板によって構成されており、アッパフレームは、例えば金属パイプによって構成されており、ワイヤフレーム22は、例えば互いに溶接された複数の針金によって構成されている。アッパフレーム、ロアフレーム及びワイヤフレーム22は、溶接等の手段で左右のサイドフレーム20に固定されている。このワイヤフレーム22は、シートバック14の上下方向中間部における左右方向の両側部において上下方向に延在する左右の縦ワイヤ22Aを有している。
【0022】
シートバックパッド26は、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されており、シートバックフレーム18によって支持されている。このシートバックパッド26は、シートバック14の左右方向中央部に配置されたパッド本体部26Cと、シートバック14の左右方向両側部に配置された左右のパッドサイド部26Sとを有している。左右のパッドサイド部26Sは、左右のサイドフレーム20を前後方向両外側及び左右方向外側から囲むように形成されている。左右のパッドサイド部26Sは、パッド本体部26Cよりも前方側に突出しており、左右のサイドサポート14Sのクッション材を構成している。
【0023】
左右のサイドサポート調整機構28は、左右のサイドサポート14S内に配置された左右のパドル30を有している。これらのパドル30は、例えば樹脂によって平板状に形成されており、左右のサイドフレーム20の前方に配置されている。左右のパッドサイド部26Sは、左右のパドル30を前方及び左右方向両外側から囲むように形成されている。左右のパドル30は、図示しない駆動モータの駆動力によって図3及び図4に実線で示される退避位置と図3及び図4に二点鎖線で示される突出位置との間で回動される構成になっている。これにより、左右のサイドサポート14Sの左右方向の間隔が調整され、左右のサイドサポート14Sによる乗員のホールド性が調整される構成になっている。
【0024】
具体的には、左右のパドル30が上記の退避位置に位置する状態では、左右のサイドサポート14Sが乗員の上体の側面から離間する幅広位置(図3及び図4に実線で示される位置)に配置され、左右のサイドサポート14Sによる乗員のホールド性が低くなる。左右のパドル30が上記の突出位置に位置する状態では、左右のサイドサポート14Sが乗員の上体の側面に接近する幅狭位置(図3及び図4に二点鎖線で示される位置)に配置され、左右のサイドサポート14Sによる乗員のホールド性が高くなる。
【0025】
シートバック表皮32は、布材、皮革、合成皮革などからなる複数の表皮片が縫製されて袋状に形成されており、シートバックパッド26に対して上方側から被せられている。このシートバック表皮32には、図2図4に示されるように、シートバック14の背面側に位置する部位に開口34が形成されている。この開口34は、シートバック14の上部側から下端にかけて形成されており、後方向側から見て矩形状をなしている。
【0026】
左右の短尺弾性部材36S及び長尺弾性部材36Lは、弾性部材36を構成しており、シートバック表皮32における上記開口34の左右方向両縁部を左右方向中央側へ弾性的に付勢している。左右の短尺弾性部材36S及び長尺弾性部材36Lは、例えば帯状のゴム材によって構成されている。左右の短尺弾性部材36Sは、長尺弾性部材36Lよりも左右方向の寸法が十分に小さく設定されており、左右方向に互いに離間して配置されている。左右の短尺弾性部材36Sは、シートバック14の上下方向中間部に配置されており、開口34の上部に位置している。長尺弾性部材36Lは、シートバック14の下端部に配置されており、開口34の下部において左右方向に延在している。
【0027】
左側の短尺弾性部材36Sの左端部は、シートバック表皮32における開口34の左縁部に縫製等の手段で係止されており、右側の短尺弾性部材36Sの右端部は、シートバック表皮32における開口34の右縁部に縫製等の手段で固定されている。左側の短尺弾性部材36Sの右端部及び右側の短尺弾性部材36Sの左端部には、それぞれJフック38が縫製等の手段で係止されている。各Jフック38は、例えば樹脂によって長尺状に形成されており、上下方向を長手方向として配置されている。各Jフック38は、上下方向から見て断面J字状をなしている。左側のJフック38は、ワイヤフレーム22が有する左側の縦ワイヤ22Aに引っ掛けられており、右側のJフック38は、ワイヤフレーム22が有する右側の縦ワイヤ22Aに引っ掛けられている。これにより、シートバック表皮32における開口34の左右方向両縁部が、左右の短尺弾性部材36Sを介してシートバックフレーム18にそれぞれ連結されている。
【0028】
長尺弾性部材36Lは、長尺弾性部材36Lの左側部分を構成する左側弾性部材36LLと、長尺弾性部材36Lの右側部分を構成する右側弾性部材36LRとに分割されている。左側弾性部材36LLの左端部は、シートバック表皮32における開口34の左縁部に縫製等の手段で係止されており、右側弾性部材36LRの右端部は、シートバック表皮32における開口34の右縁部に縫製等の手段で固定されている。左側弾性部材36LLの右端部と右側弾性部材36LRの左端部とは、連結具40によって連結されている。
【0029】
連結具40は、Jフック42とアロー44とによって構成されている。Jフック42及びアロー44は、例えば樹脂によって長尺状に形成されており、上下方向を長手方向として配置されている。Jフック42は、上下方向から見て断面J字状をなしており、アロー44は、上下方向から見て断面矢印状をなしている。Jフック42は、左側弾性部材36LLの右端部に縫製等の手段で固定されており、アロー44は、右側弾性部材36LRの左端部に縫製等の手段で固定されている。アロー44は、Jフック42の内側に嵌合されて係止されている。これにより、左側弾性部材36LLと右側弾性部材36LRとが連結具40によって連結されている。
【0030】
シートバックボード46は、シートバック14の背面に配置されており、上記の開口34を塞いでいる。このシートバックボード46は、例えば樹脂によって矩形板状に形成されており、シート前後方向を板厚方向として配置されている。このシートバックボード46の左右方向の幅寸法は、シートバック14の左右方向の幅寸法よりも小さく設定されている。このシートバックボード46は、シート前方側へ突出した複数のフレーム係止部(図示省略)を有しており、これらのフレーム係止部がシートバックフレーム18に係止されることでシートバックフレーム18に取り付けられている。シートバックボード46の周縁部は、前方側へ湾曲している。このシートバックボード46によって、開口34の前縁部、左縁部及び右縁部と、左右の短尺弾性部材36Sと、長尺弾性部材36Lとが後方側から覆われている。
【0031】
シートバックボード46に対する左右方向両外側には、シートバックパッド26が有する左右の突出部26Pが配置されている。左右の突出部26Pは、シートバックパッド26の一部によって構成されており、シートバックボード46よりも後方側へ突出している。各突出部26Pは、上下方向から見て後方側へ凸をなす略半円形状をなしている。左右の突出部26Pの表面は、シートバック表皮32によって覆われている。これらの突出部26Pは、サイドサポート調整機構28によって左右のサイドサポート14Sの間隔が狭められる際にシートバック表皮32に生じる張力によって前方側へ弾性的に潰される。
【0032】
具体的には、左右のサイドサポート14Sが前述した幅広位置に位置する状態では、左右の突出部26Pが図3及び図4に実線で示される通常状態となる。この通常状態では、左右の突出部26Pがシートバックボード46よりも後方側へ突出する。一方、左右のサイドサポート14Sが前述した幅狭位置に位置する状態では、左右の突出部26Pが図3及び図4に二点鎖線で示される潰れ状態となる。この潰れ状態では、左右の突出部26Pの背面とシートバックボード46の背面との前後方向の位置が略同じとなるが、シートバックボード46とシートバック表皮32との間に隙が発生しないように構成されている。
【0033】
左右のサイドサポート14Sが幅狭位置から幅広位置へと移動されると、左右の突出部26Pに加わるシートバック表皮32の張力が小さくなり、左右の突出部26Pが潰れ状態から通常状態へと弾性復帰する。つまり、左右の突出部26Pは、左右のサイドサポート14Sの間隔調整に伴って上記の通常状態と潰れ状態との間で弾性的に変形する。なお、シートバックパッド26において、左右の突出部26Pに相当する部位をシートバックパッド26の他の部位とは異なる硬度に成形してもよい。それにより、左右の突出部26Pを設定通りに弾性変形させ易くなる。
【0034】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
本実施形態に係る車両用シート10では、シートバックパッド26は、左右のサイドサポート14Sを有するシートバックのクッション材を構成している。左右のサイドサポート14Sの間隔は、サイドサポート調整機構28によって調整される。シートバックパッド26に被せられたシートバック表皮32には、シートバック14の背面側に位置する部位に開口34が形成されている。この開口34は、シートバック14の背面に配置されるシートバックボード46によって塞がれている。シートバック表皮32における開口34の左右方向両縁部は、弾性部材36によってシート左右方向中央側へ弾性的に付勢されている。弾性部材36は、サイドサポート調整機構28によって左右のサイドサポート14Sの間隔が調整される際に伸縮する。
【0036】
上記のシートバックパッド26は、シートバックボード46に対する左右方向両外側でシートバックボード46よりも後方側へ突出した左右の突出部26Pを有している。左右の突出部26Pは、サイドサポート調整機構28によって左右のサイドサポート14Sの間隔が狭められる際に、シートバック表皮32に生じる張力によってシート前方側へ潰される。つまり、左右の突出部26Pが潰れ代として潰されることにより、シートバック表皮32に生じる張力が緩和され、左右のサイドサポート14Sの変位が許容される。これにより、シートバックの側面がシートバック表皮32によって形成された構成であっても、左右のサイドサポート14Sの間隔調整が可能となるので、シートバックボード46をシートバック14の側面側まで延長する必要がなくなり、シートバックボード46の小型化が可能となる。
【0037】
また、シートバックボードがシートバックの側面側まで延長された先行技術では、乗員の車両乗降時に、車外側のサイドサポートに乗員の身体が引っ掛かり、シートバックボードの車外側端部に車外側へ向いた荷重が作用する。このため、シートバックボードに必要以上の強度対策が求められるが、本実施形態ではそのような対策が不要となる。また、先行技術文献の欄に記載した特開2015-113082号公報に記載の発明では、サイドサポート調整機構のパドルにシートバック表皮を連結クリップで固定しているため、部品点数が増加すると共に、車両用シートの解体時に連結クリップが破損する問題や、解体作業性が悪化するといった問題が生じるが、本実施形態ではそのような問題の発生を回避することができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記の弾性部材36には、シートバック表皮32における開口34の左右方向両縁部をシートバックフレーム18のワイヤフレーム22にそれぞれ連結した左右の短尺弾性部材36Sが含まれている。これらの短尺弾性部材36Sが、左右のサイドサポート14Sの間隔調整範囲が小さい高さ領域(本実施形態ではシートバック14の上下方向中間部)に配置されることにより、シートバック表皮32の必要以上の変位を制限することができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記の弾性部材36には、シートバック表皮32における開口34の左右方向両縁部を左右方向に繋いだ長尺弾性部材36Lが含まれている。この長尺弾性部材36Lが、左右のサイドサポート14Sの間隔調整範囲が大きい高さ領域(本実施形態ではシートバック14の下部)に配置されることにより、シートバック表皮32が左右のサイドサポート14Sに追従して変位し易くなる。
【0040】
また、本実施形態では、上記の長尺弾性部材36Lは、左側弾性部材36LLと右側弾性部材36LRとに分割されており、左側弾性部材36LLと右側弾性部材36LRとを連結する連結具40を有している。このため、本車両用シート10の製造時には、シートバックパッド26にシートバック表皮32を被せた後で、左側弾性部材36LLと右側弾性部材36LRとを連結具40によって連結することができる。これにより、シートバックパッド26にシートバック表皮32を被せる作業が容易になる。
【0041】
なお、上記実施形態において、図5に示される変形例のように左右のサポートワイヤ48を追加する構成にしてもよい。左右のサポートワイヤ48は、針金によって構成されており、左右のサイドフレーム20の後方側で上下方向に延在している。左右のサポートワイヤ48は、例えば図示しない上端部及び下端部が前方側へ屈曲されており、溶接等の手段でシートバックフレーム18に固定されている。左右のサポートワイヤ48は、シートバックボード46の左右両端部に対して前方近傍に配置されており、シートバック表皮32における開口34の左右方向両縁部に対して後方側から接触している。これらのサポートワイヤ48によって、シートバック表皮32における開口34の左右方向両縁部の位置が拘束されている。これにより、シートバックボード46の後方側への浮き上りが防止されるので、シートバックボード46に対するシートバック表皮32の干渉量を一定に保つことができる。
【0042】
また、上記実施形態では、弾性部材36が左右の短尺弾性部材36Sと長尺弾性部材36Lとによって構成された場合について説明したが、これに限らず、弾性部材の構成は適宜変更可能である。例えば弾性部材は、上下二つの長尺弾性部材によって構成されてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、車両用シート10が車両のフロントシートである場合について説明したが、これに限らず、本発明に係る車両用シートは車両のリヤシートであってもよい。
【0044】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用シート
14 シートバック
14S サイドサポート
18 シートバックフレーム(フレーム)
26 シートバックパッド
26P 突出部
28 サイドサポート調整機構
34 開口
36 弾性部材
36L 長尺弾性部材
36LL 左側弾性部材
36LR 右側弾性部材
36S 短尺弾性部材
40 連結具
46 シートバックボード
図1
図2
図3
図4
図5