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特開2023-169600固形化物及び熱硬化性樹脂の処理方法
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  • 特開-固形化物及び熱硬化性樹脂の処理方法 図1
  • 特開-固形化物及び熱硬化性樹脂の処理方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169600
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】固形化物及び熱硬化性樹脂の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/18 20060101AFI20231122BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20231122BHJP
   B09B 3/32 20220101ALI20231122BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231122BHJP
   F23G 7/00 20060101ALI20231122BHJP
   C10L 5/48 20060101ALN20231122BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20231122BHJP
   B09B 101/78 20220101ALN20231122BHJP
【FI】
C08J11/18 ZAB
B09B3/20
B09B3/32
C09K3/00 111B
F23G7/00 Z
C10L5/48
B09B101:75
B09B101:78
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080821
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉江 信二
【テーマコード(参考)】
3K161
4D004
4F401
4H015
【Fターム(参考)】
3K161CA01
3K161CA03
3K161EA44
4D004AA07
4D004AA09
4D004BA03
4D004CA03
4D004CA04
4D004CA24
4D004CA29
4D004CA45
4D004CB13
4D004CB15
4D004CB31
4D004CC11
4D004CC15
4D004CC20
4D004DA03
4D004DA06
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA12
4F401AA13
4F401AA15
4F401AA16
4F401AA17
4F401AA19
4F401AA21
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA26
4F401AA28
4F401AA29
4F401BA04
4F401CA06
4F401CA14
4F401CA52
4F401CA60
4F401CA84
4F401DC02
4F401DC08
4F401EA76
4F401FA01Y
4F401FA01Z
4H015AA00
4H015AA02
4H015AA17
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA06
4H015BA07
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB10
4H015CA04
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】取り回し易く、処理時の反応効率が高い固形化物を提供する。
【解決手段】固形化物10は、熱硬化性樹脂片11と、加熱により発泡する発泡剤12と、熱可塑性樹脂及び/又は反応性接着剤と、が一体にされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂片と、加熱により発泡する発泡剤と、熱可塑性樹脂及び/又は反応性接着剤と、が一体にされた固形化物。
【請求項2】
複数の前記熱硬化性樹脂片と、前記発泡剤と、前記熱可塑性樹脂を含む複数の熱可塑性樹脂片と、が圧縮され、一体にされた、請求項1に記載の固形化物。
【請求項3】
前記発泡剤の分解温度は、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上200℃以下である、請求項1又は請求項2に記載の固形化物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の固形化物を、前記発泡剤の分解温度以上に加熱し、熱硬化性樹脂を燃焼又は熱分解する、熱硬化性樹脂の処理方法。
【請求項5】
加熱された前記固形化物に外力を加えて前記固形化物を崩壊させる、請求項4に記載の熱硬化性樹脂の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固形化物及び熱硬化性樹脂の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発泡ウレタン廃材と熱可塑性樹脂を押出成形機で加熱・混練して成形し、これを冷却して固化させた後、破砕して粒状物にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-138539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の社会構成から、持続可能な経済社会の構築が課題となり、循環社会形成の一つとして多種多様な3R(リサイクル・リデュース・リユース)が進められてきた。例えば、自動車産業においては、金属や、熱可塑性樹脂に関しては、継続可能な循環社会に向けた活動が行われつつある。しかし、硬質ポリウレタンフォーム等の熱硬化性樹脂については、端材等の再利用が十分になされておらず、ほとんどが産業廃棄物として取り扱われ、排出されている。産業廃棄物の多くは、埋め立て処理されており、熱硬化性樹脂のリサイクル率が極めて低いのが現状である。
【0005】
熱硬化性樹脂は、原料が石油系であるから、固形化して、固形化燃料(RPF、Refuse derived paper and plastics densified Fuel)として用いるサーマルリサイクルが検討されている。また、熱硬化性樹脂を固形化できれば、熱分解炉等を用いた触媒処理、液化処理等が可能となり、マテリアルリサイクルへ展開することも可能となる。すなわち、熱硬化性樹脂を固形化することによって、持続可能な経済社会に資することができる。熱硬化性樹脂の固形化は、輸送、保管、投入作業などの取り回し時のハンドリング性向上のために、型崩れしないよう「強固な固形化」であることが望まれる。
【0006】
他方、固形化燃料等の固形化物を処理する際には、燃焼炉やボイラー炉においては燃焼反応を生じ、熱分解炉においては、1つ以上の物質が別の物質へ化学変化する現象、いわゆる連鎖反応を生じる。これらの反応は、固体の表面で進行する反応(表面反応)であり、表面積が大きい程、迅速に進行する。
【0007】
上述の「強固な固形化」は、一定量の熱硬化性樹脂について比較した場合に、固形化物の表面積を減らす方向に作用する。すなわち、取り回し時のハンドリング性と、処理時の反応速度とは背反関係にあり、これらを両立できる技術が望まれている。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、取り回し易く、処理時の反応効率が高い固形化物を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
熱硬化性樹脂片と、加熱により発泡する発泡剤と、熱可塑性樹脂及び/又は反応性接着剤と、が一体にされた固形化物。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、取り回し易く、処理時の反応効率が高い固形化物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、固形化物を説明するための図である。
図2図2は、実施例及び比較例において、熱分解によって得られた残渣を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・複数の前記熱硬化性樹脂片と、前記発泡剤と、前記熱可塑性樹脂を含む複数の熱可塑性樹脂片と、が圧縮され、一体にされた、固形化物。
・前記発泡剤の分解温度は、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上200℃以下である、固形化物。
・上記の固形化物を、前記発泡剤の分解温度以上に加熱し、熱硬化性樹脂を燃焼又は熱分解する、熱硬化性樹脂の処理方法。
・加熱された前記固形化物に外力を加えて前記固形化物を崩壊させる、熱硬化性樹脂の処理方法。
【0013】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0014】
1.固形化物10
固形化物10は、熱硬化性樹脂片11と、加熱により発泡する発泡剤12と、熱可塑性樹脂及び/又は反応性接着剤と、が一体にされている。
【0015】
図1に示す固形化物10は、複数の熱硬化性樹脂片11と、発泡剤12と、熱可塑性樹脂を含む複数の熱可塑性樹脂片13と、が圧縮され、一体にされている。以下、熱硬化性樹脂片11、発泡剤12について説明してから、熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂片13)、反応性接着剤についてそれぞれ説明する。熱可塑性樹脂と反応性接着剤は、いずれか1方のみが用いられてもよく、両方が併用されてもよい。
【0016】
(1)熱硬化性樹脂片11
熱硬化性樹脂片11の樹脂種は特に限定されない。熱硬化性樹脂片11の樹脂種としては、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、及びこれらの誘導体等が挙げられる。熱硬化性樹脂片11の樹脂種は、1種のみであってもよく、2種以上が混合されていてもよい。これらの中でも、リサイクル促進の観点から、熱硬化性樹脂片11の樹脂種は、ポリウレタン樹脂が好ましく、硬質ポリウレタン樹脂より好ましい。
【0017】
熱硬化性樹脂片11は、熱硬化性樹脂の発泡体片であってもよい。熱硬化性樹脂片11が発泡体片である場合には嵩高いことやハンドリング性が悪い点などリサイクルする上で特に悪い態様となるので、圧縮・固形化することでリサイクル性を高める効果が特に顕著である。熱硬化性樹脂片11が熱硬化性樹脂の発泡体片である場合において、熱硬化性樹脂片11は圧縮された状態、すなわち、固形化される前よりも密度が高い状態で固形化されることが好ましい。
【0018】
熱硬化性樹脂片11は、リサイクル促進の観点から、破棄される予定の使用済み熱硬化性樹脂含有製品、又は、熱硬化性樹脂含有製品の製造過程で排出される端材を粉砕して得るとよい。また、熱硬化性樹脂片は、熱硬化性樹脂含有製品の製造過程で排出される熱硬化性樹脂のカス又は屑を、そのまま用いてもよい。
【0019】
また、熱硬化性樹脂片11は、少なくとも熱硬化性樹脂を含んでいればよく、熱可塑性樹脂や、その他の材料を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む複合材を粉砕して、熱硬化性樹脂片11としてもよい。その他の材料としては、ガラスフィラー等の無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
【0020】
熱硬化性樹脂片11の大きさは特に限定されない。熱硬化性樹脂片11の大きさは、例えば、0mmよりも大きく、30mm以下、15mm以下、8mm以下であってもよい。熱硬化性樹脂片11の大きさは、例えば、外形の最大長を測定して求められる。
【0021】
熱硬化性樹脂片11の配合量は、リサイクル促進の観点から、固形化物10全体を100質量部とした場合に、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、更に好ましくは20質量部以上である。上記の熱硬化性樹脂片11の配合量は、固形化物10の強固な固形化の観点から、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下であり、更に好ましくは40質量部以下である。これらの観点から、上記の熱硬化性樹脂片11の配合量は、好ましくは5質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上50質量部以下であり、更に好ましくは20質量部以上40質量部以下である。
【0022】
(2)発泡剤12
発泡剤12は、加熱により発泡する発泡剤であれば特に限定されない。発泡剤12は、未発泡の状態で固形化物10に含まれ、固形化物10が加熱される際に発泡し得る。発泡剤12が発泡すると、固形化物10内に空孔が形成されると考えられる。場合によっては、発泡剤12の発泡に起因して、固形化物10が脆くなって崩壊し得る。すなわち、発泡剤12が発泡することによって、固形化物10の表面積を大きくすることができる。
【0023】
発泡剤12としては、熱分解型発泡剤が好適である。発泡剤の分解温度は、特に限定されない。発泡剤の分解温度は、熱可塑性樹脂の軟化点以上200℃以下であることが好ましい。発泡剤の分解温度が熱可塑性樹脂の軟化点以上であれば、固形化物10の加熱時において、熱可塑性樹脂が軟化した状態で発泡剤12が発泡するから、好適に固形化物10に空孔を形成できる。発泡剤の分解温度が200℃以下であれば、熱硬化性樹脂の原料としてMDI(ジメチルメタンジイソシアネート)が使われている場合においても安全に固形化物10を処理できる。詳細には、原料のイソシアネートとしてMDIが使われているウレタン樹脂等は、200℃より高い温度で加熱すると、分解生成物としてMDA(メチレンジアニリン)を生成する場合がある。MDAは、安全性の観点から、600℃以上の高温加熱処理や、強酸等による中和処理等によって、処理後の固形化物10から除去することが望まれる。その点、MDAを生成しない温度(例えば200℃以下)で発泡剤12を発泡させて、固形化物10の燃焼や熱分解等を行うことができれば、MDAを除去する手間をかけることなく、安全に固形化物10を処理できる。
【0024】
より具体的には、発泡剤12としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機系発泡剤、及び、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)等の無機系発泡剤等が挙げられる。アゾ化合物としては、ジアゾカルボンアミド(ADCA)等が挙げられる。上記スルホヒドラジド化合物としては、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等が挙げられる。上記ニトロソ化合物としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。発泡剤12は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。各化合物の特徴の代表例を以下に示す。
・ADCA
分解温度:200℃-210℃
主な分解ガス:N、CO、CO、NH
ガス発生量:210mL/g
・DPT
分解温度:205℃
主な分解ガス:N
ガス発生量:240mL/g
・OBSH
分解温度:160℃
主な分解ガス:N、H
ガス発生量:125mL/g
・重曹
分解温度:140℃-170℃
主な分解ガス:CO、H
ガス発生量:150mL/g
【0025】
上記の発泡剤の中でも、分解速度の観点から、有機系発泡剤が好ましい。さらに、発泡剤は、長期の保管においても経時変化が少ないこと、混合の際に分散性が良いこと、反応温度を調整可能であること、分解ガス中に水蒸気を大量に発生させないこと、固形化物10の劣化を促進させるガスを発生しにくいこと等の観点から適宜選定し得る。例えば、DPTは、安価であり、分解助剤である尿素系助剤の添加により分解温度を、例えば130℃程度まで下げることが可能である。しかし、発泡剤としてDPTを用いる場合には、酸との接触は避ける等の点において、取り扱いに注意を要する。このような種々の観点から検討して、固形化物10に用いる発泡剤を選定すればよい。
【0026】
発泡剤としては、ADCAが特に好適である。その理由としては、以下の点が挙げられる。
・自己消火性がある。
・ADCAの分解温度は比較的高めであるが、多くの分解助剤との相性が良い。このため、分解助剤の添加により分解温度を200℃以下(例えば160℃程度)に下げることが可能である。
・分解ガスとして水を生成しないため、炉内温度への影響が少ない。
・ガス発生量が比較的多く、固形化物10を十分に空孔化できる。なお、臭い等の問題で、好ましくない分解ガスとしてNHが発生する場合であっても、水式スクラバー等を設けることによって容易に除去できる。このため、周辺環境へも配慮し易い。
・ADCAの粒子径は、一般的に5μm-25μmであり、他の発泡剤に比して小さいため、反応に適している。また、ADCAは分散性がよいため、熱硬化性樹脂片11と、熱可塑性樹脂又は反応性接着剤と略均一に混合可能である。この結果、固形化物10全体において、発泡剤12を略均一に発泡させることができる。
【0027】
発泡剤12の配合量は、固形化物10の表面積を大きくする観点から、固形化物10全体を100質量部とした場合に、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上であり、更に好ましくは0.8質量部以上である。上記の発泡剤12の配合量は、コストの面から、好ましくは3質量部以下であり、より好ましくは2質量部以下であり、更に好ましくは1.5質量部以下である。これらの観点から、上記の発泡剤12の配合量は、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上2質量部以下であり、更に好ましくは0.8質量部以上1.5質量部以下である。なお、発泡剤12は、熱硬化性樹脂片11及び熱可塑性樹脂とは別に配合されてもよく、熱可塑性樹脂に含まれた状態で配合されてもよい。
【0028】
(3)熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂片13)
熱可塑性樹脂を用いる場合において、熱可塑性樹脂は特に限定されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリイミド、及びこれらの誘導体等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよく、2種以上が混合されていてもよい。これらの中でも、軟化点が低い点から、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリエチレンから選ばれる1種以上が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。本開示において、軟化点はビカット軟化点(JIS K 7206:2016)に従って測定できる。
【0029】
熱可塑性樹脂は、例えば、複数の熱可塑性樹脂片13に含まれている。熱可塑性樹脂片13は、リサイクル促進の観点から、破棄される予定の使用済み熱可塑性樹脂製品、又は、熱可塑性樹脂製品の製造過程で排出される端材を粉砕して得るとよい。また、熱可塑性樹脂片13は、熱可塑性樹脂製品の製造過程で排出される熱可塑性樹脂のカス又は屑を、そのまま用いてもよい。例えば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む複合材を粉砕して、熱可塑性樹脂片13としてもよい。固形化物10において、熱可塑性樹脂片13は、一部又は全部が溶融、固化して熱硬化性樹脂片11に付着していてもよい。
【0030】
熱可塑性樹脂の配合量は、固形化物10の強固な固形化の観点から、固形化物10全体を100質量部とした場合に、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、更に好ましくは30質量部以上である。上記の熱可塑性樹脂の配合量は、熱硬化性樹脂のリサイクル促進の観点から、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下であり、更に好ましくは50質量部以下である。これらの観点から、上記の熱可塑性樹脂の配合量は、好ましくは10質量部以上70質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上60質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以上50質量部以下である。
【0031】
(4)反応性接着剤
反応性接着剤を用いる場合において、反応性接着剤は特に限定されない。反応性接着剤としては、ウレタン樹脂系接着剤、変成シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ変成シリコーン樹脂系接着剤、アクリル変成シリコーン樹脂系接着剤、シリル化ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等が挙げられる。
ウレタン樹脂系接着剤の好適なものとして、湿分の存在や加熱等により硬化して小片同士を結合させる溶剤型ポリウレタンあるいは2液無溶剤ポリウレタン等からなるポリウレタン系のものを挙げることができる。2液無溶剤ポリウレタンについては、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等のアミン系硬化剤等を使用したものが好ましい。ウレタン樹脂系接着剤はトルエンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の活性イソシアネートを含有する高分子量体を成分とし、粘性が高い場合には、種々の有機溶媒により希釈されて使用される。なお、前記有機溶媒としては、メチレンクロライド等のハロゲン化溶媒が揮発性及び不燃性の点から好ましい。反応性接着剤の配合量は、固形化物10の強固な固形化の観点から、固形化物10全体を100質量部とした場合に、5質量部以上30質量部以下が好ましい。
【0032】
2.固形化物10の製造方法
固形化物10は、熱硬化性樹脂片11と、発泡剤12と、熱可塑性樹脂又は反応性接着剤を混合し、造粒して得ることができる。固形化物10の造粒には、汎用の造粒機を用いることができる。造粒時の温度は、特に限定されない。造粒時の温度は、発泡剤12の分解温度以下であることが好ましい。
【0033】
3.固形化物10の密度、大きさ、及び用途
固形化物10の密度は、固形化物10の材料及び圧縮の程度に応じて変動し、特に限定されない。固形化物10の密度は、例えば、0.10g/cm~2.00g/cmであってもよく、0.50g/cm~1.50g/cm、0.80g/cm~1.20g/cmであってもよい。固形化物10の密度は、固形化物10の重さと体積を計測して、算出できる。
【0034】
固形化物10の形状及び大きさは特に限定されない。固形化物10は、熱処理効率を考慮して、略円柱状に形成されてもよい。固形化物10が略円柱状をなす場合において、固形化物10の直径は、好ましくは5mm以上70mm以下であり、より好ましくは5mm以上40mm以下であり、更に好ましくは8mm以上15mm以下である。固形化物10が略円柱状をなす場合において、固形化物10の高さは、好ましくは10mm以上80mm以下であり、より好ましくは20mm以上60mm以下であり、更に好ましくは30mm以上50mm以下である。
【0035】
固形化物10の用途は、特に限定されない。固形化物10は、サーマルリサイクルの観点から、固形化燃料として用いられることが好ましい。また、固形化物10は、マテリアルリサイクルの観点から、新しい製品の材料として再利用されてもよい。
【0036】
4.熱硬化性樹脂の処理方法
熱硬化性樹脂の処理方法の一例を説明する。熱硬化性樹脂の処理方法は、上記の固形化物10を、発泡剤12の分解温度以上に加熱し、熱硬化性樹脂を燃焼又は熱分解する。熱硬化性樹脂の燃焼には、燃焼炉、ボイラー炉等を用いることができる。熱硬化性樹脂の熱分解には、熱分解炉等を用いることができる。熱分解炉を用いた処理方法は、周辺環境への影響が少ない点から好ましいと言われており、有望である。
固形化物10の加熱温度は、特に限定されない。固形化物10の加熱温度は、固形化物10の燃焼反応や分解反応を生じる温度以上であって、200℃以下が好ましい。固形化物10の加熱時間は、特に限定されない。固形化物10の加熱時間としては、例えば、2時間以上8時間以下とすることができる。
【0037】
熱硬化性樹脂の処理方法は、加熱された固形化物10に外力を加えて固形化物10を崩壊させることが好ましい。固形化物10を崩壊させることによって、固形化物10の表面積を好適に大きくして、固形化物10の処理速度を高めることができる。具体的には、バッチ式の焼却炉や熱分解炉においては、炉内の回転羽根等で加熱しつつ、外力を加えるとよい。連続式の炉、例えば被処理物を横に移動させる炉においては、送り機のネット等を振動させる振動手段を設けることによって、外力を加えるとよい。
【0038】
5.本実施形態の作用効果
本実施形態によれば、従来、熱硬化性樹脂の軽量化、断熱性向上、緩衝性改良のために用いられていた発泡剤12を固形化物10に用いることで、加熱処理前には固形化物10の取り回し易さを保ったまま、加熱処理時には固形化物10に空孔を形成し、固形化物10の表面積を大きくできる。このため、固形化物10を効率よく処理可能となる。
また、熱硬化性樹脂として、ポリウレタンフォーム等の嵩高い発泡体を用いる場合には、固形化物10として圧縮、固形化することによって、炉内に投入する回数を少なくできる。
また、発泡剤の分解温度が200℃以下の場合には、熱硬化性樹脂の原料にMDIが用いられていても、MDAの発生を抑制しつつ固形化物10を安全に処理できる。
また、発泡剤12を固形化物10に用いることによって、加熱によって固形化物10を弱体化して、好適に崩壊させることができる。
【実施例0039】
1.造粒
(1)実施例の固形化物の作製
熱硬化性樹脂片と熱可塑性樹脂として、硬質ポリウレタン(PU)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート、PET)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、PP)、ガラスフィラー(GF)の複合体である車両用天井材の粉砕物(φ8mmのスクリーンを通過したもの)を用いた。車両用天井材の粉砕物のPU、PET、PP、GFの配合比は、30:30:10:30である。
発泡剤として、粒子径10μmのADCAを用いた。
【0040】
造粒機に車両用天井材の粉砕物 200kgと、ADCA 2kgを投入して、混合、造粒した。なお、造粒機内スクリーン部の温度を120℃以下に維持するために、必要に応じて造粒機内に散水した。造粒によって、固形化物として直径10mm、高さ40mm以上のペレットを得た。
【0041】
(2)比較例の固形化物の作製
発泡剤を用いなかった他は、実施例と同様にしてペレットを得た。
【0042】
2.熱分解
実施例のペレット 10kgを、箱状の容器に入れて、熱分解炉(WEF技術開発社製、ZEROSONIC)を用いて加熱処理した。ペレットの分解状況を1時間毎に確認して、分解後の残渣を取り出した。分解には、4時間かかった。
比較例のペレット 10kgを、実施例のペレットとは別の時間に、同じ装置を用いて加熱処理した。ペレットの分解状況を1時間毎に確認して、分解後の残渣を取り出した。分解には、7時間かかった。
【0043】
3.結果
熱分解によって図2に示すような残渣が得られた。残渣における黒色の部分は、炭化物であると考えらえる。残渣における白色の部分は、ガラス繊維と、セラミック灰であると考えらえる。なお、セラミック灰とは、炭化物を更に分解させることで炭素を分解(昇華)させた結果の残渣である。
【0044】
4.考察
実施例は、処理時間が比較例よりも短かった。固形化物に発泡剤を用いることによって、発泡剤を用いない場合に比して、処理時間を短縮できることが示唆された。
実施例の残渣は簡単に手で解せた。比較例の残渣は、容器の形状をなしており、手で解し難い状態であった。発泡剤を用いた固形化物は、表面積を大きくするうえで、外力を加えて崩壊させる手段が有効であることが示唆された。
【0045】
以上、本実施例によれば、取り回し易く、処理時の反応効率が高い固形化物を提供できた。
【0046】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 …固形化物
11 …熱硬化性樹脂片
12 …発泡剤
13 …熱可塑性樹脂片
図1
図2