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特開2023-169605遠隔操作システム及び遠隔操作支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169605
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】遠隔操作システム及び遠隔操作支援方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/24 20060101AFI20231122BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20231122BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231122BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B62D1/24
B62D6/00
G05D1/02 W
G05D1/00 B
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080827
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末廣 優樹
【テーマコード(参考)】
3D030
3D232
5H301
【Fターム(参考)】
3D030EA26
3D232DA04
3D232DA23
3D232DA76
3D232DA82
3D232DA86
3D232EB12
3D232EC22
3D232GG01
5H301AA03
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301HH01
5H301HH02
5H301JJ01
(57)【要約】
【課題】遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作において、状況に応じて操舵反力をフレキシブルに調整する。
【解決手段】遠隔操作システムは、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作を支援する。遠隔操作システムは、移動体の実転舵角に相当する第1パラメータに基づいて第1反力制御量を算出する。また、遠隔操作システムは、移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、移動体の前方の路面状態を判定する。遠隔操作システムは、路面状態及び移動体の速度に応じて第1反力制御量を調整し、調整後の第1反力制御量に応じた操舵反力を遠隔オペレータが操作するハンドルに付与する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作を支援する遠隔操作システムであって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、前記移動体の前方の路面状態を判定し、
前記移動体の実転舵角に相当する第1パラメータに基づいて第1反力制御量を算出し、
前記路面状態及び前記移動体の速度に応じて前記第1反力制御量を調整し、
調整後の前記第1反力制御量に応じた操舵反力を前記遠隔オペレータが操作するハンドルに付与する
ように構成されている
遠隔操作システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔操作システムであって、
前記路面状態は、路面粗さを含む
遠隔操作システム。
【請求項3】
請求項2に記載の遠隔操作システムであって、
前記路面粗さが閾値以上であり、且つ、前記速度が第1速度閾値以上である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記操舵反力が減少するように前記第1反力制御量を調整する
遠隔操作システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の遠隔操作システムであって、
前記路面粗さが閾値以上であり、且つ、前記速度が第1速度閾値未満である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記操舵反力が減少しないように前記第1反力制御量を調整する
遠隔操作システム。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の遠隔操作システムであって、
前記路面粗さが閾値未満であり、且つ、前記速度が第1速度閾値未満である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記操舵反力が増加するように前記第1反力制御量を調整する
遠隔操作システム。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の遠隔操作システムであって、
前記路面粗さが前記閾値未満であり、且つ、前記速度が第1速度閾値より高い第2速度閾値以上である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記操舵反力が減少するように前記第1反力制御量を調整する
遠隔操作システム。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の遠隔操作システムであって、
前記認識センサは、前記移動体の周囲の状況を示す画像を取得するカメラを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、前記画像を分析することによって、前記移動体の前方の前記路面粗さを推定する
遠隔操作システム。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の遠隔操作システムであって、
前記認識センサは、前記移動体の周囲の点群を取得するライダーを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、前記移動体の前方の路面の前記点群の高さ分布に基づいて、前記移動体の前方の前記路面粗さを算出する
遠隔操作システム。
【請求項9】
請求項1に記載の遠隔操作システムであって、
前記路面状態は、路面の摩擦係数を含む
遠隔操作システム。
【請求項10】
請求項9に記載の遠隔操作システムであって、
前記摩擦係数が閾値未満である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記操舵反力が減少するように前記第1反力制御量を調整する
遠隔操作システム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の遠隔操作システムであって、
前記摩擦係数が閾値以上であり、且つ、前記速度が第1速度閾値未満である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記操舵反力が増加するように前記第1反力制御量を調整する
遠隔操作システム。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の遠隔操作システムであって、
前記路面粗さが前記閾値以上であり、且つ、前記速度が前記第1速度閾値より高い第2速度閾値以上である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記操舵反力が減少するように前記第1反力制御量を調整する
遠隔操作システム。
【請求項13】
遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作を支援する遠隔操作支援方法であって、
前記移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、前記移動体の前方の路面状態を判定することと、
前記移動体の実転舵角に相当する第1パラメータに基づいて第1反力制御量を算出することと、
前記路面状態及び前記移動体の速度に応じて前記第1反力制御量を調整することと、
調整後の前記第1反力制御量に応じた操舵反力を前記遠隔オペレータが操作するハンドルに付与することと
を含む
遠隔操作支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、移動体と、移動体を遠隔操縦する遠隔操縦装置とを備える遠隔操縦システムを開示している。移動体は、前方を撮影する広角カメラを備える。また、移動体は、前方の注視地点の注視用画像を抽出する。遠隔操縦装置は、広角カメラにより撮影される運転用画像と共に注視用画像を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-021517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作において、ステアバイワイヤ(Steer-By-Wire)車両の場合と同様に、操舵反力を遠隔オペレータ側のハンドルに付与することが考えられる。操舵反力により、遠隔オペレータは、移動体の実際の走行に即した操舵フィーリングを得ることができる。
【0005】
但し、移動体が凹凸路面を走行する場合、その路面の凹凸によりハンドルがとられ、遠隔オペレータが操舵操作を安定的に行いづらくなるおそれがある。遠隔オペレータによる操舵操作が不安定になると、遠隔操作の対象である移動体の走行も不安定になるおそれがある。その一方で、移動体がオフロードを極低速で走行する場合、遠隔オペレータがオフロードの手応えを感じたいというニーズも考えられる。遠隔操作における操舵反力制御については改善の余地がある。
【0006】
本開示の1つの目的は、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作において、状況に応じて操舵反力をフレキシブルに調整することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作を支援する遠隔操作システムに関連する。
遠隔操作システムは、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、
移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、移動体の前方の路面状態を判定し、
移動体の実転舵角に相当する第1パラメータに基づいて第1反力制御量を算出し、
路面状態及び移動体の速度に応じて第1反力制御量を調整し、
調整後の第1反力制御量に応じた操舵反力を遠隔オペレータが操作するハンドルに付与する
ように構成されている。
【0008】
第2の観点は、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作を支援する遠隔操作支援方法に関連する。
遠隔操作支援方法は、
移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、移動体の前方の路面状態を判定することと、
移動体の実転舵角に相当する第1パラメータに基づいて第1反力制御量を算出することと、
路面状態及び移動体の速度に応じて第1反力制御量を調整することと、
調整後の第1反力制御量に応じた操舵反力を遠隔オペレータが操作するハンドルに付与することと
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、移動体の前方の路面状態及び移動体の速度に応じて操舵反力が調整される。つまり、状況に応じて操舵反力がフレキシブルに調整される。従って、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る遠隔操作システムの構成例を示す概略図である。
図2】本開示の実施の形態に係る車両の構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の実施の形態に係るセンサ群と運転環境情報の例を示すブロック図である。
図4】本開示の実施の形態に係る遠隔オペレータ端末の構成例を示すブロック図である。
図5】本開示の実施の形態に係る操舵反力制御の概要を説明するためのブロック図である。
図6】反力制御量算出部の比較例を示すブロック図である。
図7】本開示の実施の形態に係る反力制御量算出部の構成例を示すブロック図である。
図8】本開示の実施の形態に係る路面状態判定処理を説明するための概念図である。
図9】本開示の実施の形態に係る基本制御量算出部の構成例を示すブロック図である。
図10】本開示の実施の形態に係る操舵反力制御の一例を説明するための図である。
図11】本開示の実施の形態に係る操舵反力制御の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0012】
1.遠隔操作システムの概要
移動体の遠隔操作(遠隔運転)について考える。特に、地上を走行する移動体の遠隔操作について考える。そのような移動体としては、車両、ロボット、等が例示される。車両は、自動運転車両であってもよいし、ドライバが運転する車両であってもよい。ロボットとしては、物流ロボット、作業ロボット、等が例示される。
【0013】
一例として、以下の説明においては、遠隔操作の対象である移動体が車両である場合について考える。一般化する場合には、以下の説明における「車両」を「移動体」で読み替えるものとする。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る遠隔操作システム1の構成例を示す概略図である。遠隔操作システム1は、車両100、遠隔オペレータ端末200、及び管理装置300を含んでいる。車両100は、遠隔操作の対象である。遠隔オペレータ端末200は、遠隔オペレータOが車両100を遠隔操作する際に使用する端末装置である。遠隔オペレータ端末200を遠隔操作HMI(Human Machine Interface)と言うこともできる。管理装置300は、遠隔操作システム1の管理を行う。典型的には、管理装置300は、クラウド上の管理サーバである。管理サーバは、分散処理を行う複数のサーバにより構成されていてもよい。
【0015】
車両100、遠隔オペレータ端末200、及び管理装置300は、通信ネットワークを介して互いに通信可能である。車両100と遠隔オペレータ端末200は、管理装置300を介して互いに通信可能である。また、車両100と遠隔オペレータ端末200は、管理装置300を介さずに直接通信を行ってもよい。
【0016】
車両100には、カメラを含む各種センサが搭載されている。カメラは、車両100の周囲の状況を示す画像を取得する。車両情報VCLは、各種センサにより得られる情報を含み、少なくともカメラにより得られる画像を含む。車両100は、車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。
【0017】
遠隔オペレータ端末200は、車両100から送信された車両情報VCLを受け取る。遠隔オペレータ端末200は、車両情報VCLを遠隔オペレータOに提示する。具体的には、遠隔オペレータ端末200は、表示装置を備えており、画像情報等を表示装置に表示する。遠隔オペレータOは、表示された情報をみて、車両100の周囲の状況を認識し、車両100の遠隔操作を行う。遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に関する情報である。例えば、遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる操作量を含む。遠隔オペレータ端末200は、遠隔操作情報OPEを車両100に送信する。
【0018】
車両100は、遠隔オペレータ端末200から送信された遠隔操作情報OPEを受け取る。車両100は、受け取った遠隔操作情報OPEに従って車両走行制御を行う。このようにして、車両100の遠隔操作が実現される。
【0019】
2.車両の例
2-1.構成例
図2は、本実施の形態に係る車両100の構成例を示すブロック図である。車両100は、通信装置110、センサ群120、走行装置130、及び制御装置150を備えている。
【0020】
通信装置110は、車両100の外部と通信を行う。例えば、通信装置110は、遠隔オペレータ端末200や管理装置300と通信を行う。
【0021】
センサ群120は、車両100の周辺の状況、車両100の状態、等を検出する。センサ群120の具体例は後述される。
【0022】
走行装置130は、駆動装置、制動装置、及び転舵装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0023】
転舵装置は、車両100の車輪を転舵する。より詳細には、転舵装置は、車輪を転舵するための転舵アクチュエータ135を含んでいる。例えば、転舵アクチュエータ135は転舵モータである。転舵モータのロータは、減速機を介して転舵軸に連結されている。転舵軸は、車輪に連結されている。転舵モータが回転すると、その回転運動は転舵軸の直線運動に変換され、それにより車輪が転舵される。転舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置とも呼ばれる。
【0024】
制御装置150は、車両100を制御するコンピュータである。制御装置150は、1又は複数のプロセッサ151(以下、単にプロセッサ151と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置152(以下、単に記憶装置152と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ151は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ151は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置152は、プロセッサ151による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置152としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。制御装置150は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。
【0025】
車両制御プログラムPROG1は、プロセッサ151によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ151が車両制御プログラムPROG1を実行することにより、制御装置150の機能が実現される。車両制御プログラムPROG1は、記憶装置152に格納される。あるいは、車両制御プログラムPROG1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0026】
2-2.運転環境情報
制御装置150は、センサ群120を用いて、車両100の運転環境を示す運転環境情報ENVを取得する。運転環境情報ENVは、記憶装置152に格納される。
【0027】
図3は、センサ群120と運転環境情報ENVの例を示すブロック図である。センサ群120は、認識センサ121、車両状態センサ124、位置センサ127、等を含んでいる。運転環境情報ENVは、周辺状況情報SUR、車両状態情報STA、位置情報POS、等を含んでいる。
【0028】
認識センサ121は、車両100の周囲の状況を認識(検出)する。例えば、認識センサ121は、車両100の周囲の状況を示す画像IMGを取得するカメラ122を含んでいる。認識センサ121は、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)123を含んでいてもよい。認識センサ121は、レーダを含んでいてもよい。
【0029】
周辺状況情報SURは、認識センサ121による認識結果、すなわち、車両100の周囲の状況を示す情報である。例えば、周辺状況情報SURは、カメラ122によって得られる画像IMGを含んでいる。周辺状況情報SURは、ライダーによって得られる点群情報PCを含んでいてもよい。
【0030】
周辺状況情報SURは、車両100の周囲の物体に関する物体情報を含んでいてもよい。車両100の周囲の物体としては、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、白線、信号、標識、路側構造物、等が例示される。物体情報は、車両100に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。例えば、カメラ122によって得られた画像IMGを解析することによって、物体を識別し、その物体の相対位置を算出することができる。また、ライダー123によって得られた点群情報PCに基づいて、物体を識別し、その物体の相対位置と相対速度を取得することもできる。
【0031】
車両状態センサ124は、車両100の状態を検出する。車両状態情報STAは、車両状態センサ124によって検出される車両100の状態を示す。
【0032】
車両状態センサ124は、転舵角センサ125を含んでいる。転舵角センサ125は、車両100の車輪の実転舵角δaを検出する。例えば、転舵角センサ125は、転舵アクチュエータ135(転舵モータ)の回転角を検出する回転角センサを含んでいる。転舵モータの回転角が実転舵角δaに相当する。他の例として、ピニオン角が実転舵角δaとして用いられてもよい。車両状態センサ124は、転舵アクチュエータ135を駆動する転舵電流を検出する電流センサを含んでいてもよい。転舵電流も実転舵角δaに関連する。
【0033】
また、車両状態センサ124は、速度センサ126を含んでいる。速度センサ126は、車両100の車速Vを検出する。その他、車両状態センサ124は、ヨーレートセンサ、加速度センサ、等を含んでいてもよい。
【0034】
位置センサ127は、車両100の位置及び方位を検出する。例えば、位置センサ127は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を含んでいる。位置情報POSは、位置センサ127により得られる車両100の位置及び方位を示す。地図情報と周辺状況情報SUR(物体情報)を用いた自己位置推定処理(Localization)により、高精度な位置情報POSが取得されてもよい。
【0035】
2-3.車両走行制御
制御装置150は、車両100の走行を制御する車両走行制御を実行する。車両走行制御は、転舵制御、駆動制御、及び制動制御を含む。制御装置150は、走行装置130を制御することによって車両走行制御を実行する。具体的には、制御装置150は、転舵装置を制御することによって転舵制御を実行する。また、制御装置150は、駆動装置を制御することによって加速制御を実行する。また、制御装置150は、制動装置を制御することによって減速制御を実行する。
【0036】
制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて自動運転制御を行ってもよい。より詳細には、制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて、車両100の走行プランを生成する。走行プランとしては、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、右左折を行う、障害物を回避する、等が例示される。更に、制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて、車両100が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリを生成する。目標トラジェクトリは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、制御装置150は、車両100が目標トラジェクトリに追従するように車両走行制御を行う。
【0037】
2-4.遠隔操作に関連する処理
車両100の遠隔操作が行われる場合、制御装置150は、通信装置110を介して遠隔オペレータ端末200と通信を行う。
【0038】
制御装置150は、車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。車両情報VCLは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に必要な情報であり、上述の運転環境情報ENVの少なくとも一部を含んでいる。例えば、車両情報VCLは、カメラ122によって得られる画像IMGを含んでいる。車両情報VCLは、点群情報PCや物体情報等の周辺状況情報SURを含んでいてもよい。車両情報VCLは、車両状態情報STAを含んでいてもよい。車両情報VCLは、位置情報POSを含んでいてもよい。
【0039】
また、制御装置150は、遠隔操作情報OPEを遠隔オペレータ端末200から受信する。遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に関する情報である。例えば、遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる操作量を含む。制御装置150は、受信した遠隔操作情報OPEに従って車両走行制御を行う。
【0040】
3.遠隔オペレータ端末の例
図4は、本実施の形態に係る遠隔オペレータ端末200の構成例を示すブロック図である。遠隔オペレータ端末200は、通信装置210、表示装置220、遠隔操作部材230、反力アクチュエータ240、及び制御装置250を含んでいる。
【0041】
通信装置210は、車両100及び管理装置300と通信を行う。
【0042】
表示装置220は、各種情報を表示することにより、各種情報を遠隔オペレータOに提示する。
【0043】
遠隔操作部材230は、遠隔オペレータOが車両100を遠隔操作する際に操作する部材である。遠隔操作部材230は、ハンドル235(ステアリングホイール)、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器、等を含んでいる。
【0044】
操作量センサ237は、遠隔操作部材230の操作量を検出する。例えば、操作量センサ237は、ハンドル235の操舵角であるハンドル角θsを検出する操舵角センサを含んでいる。操作量センサ237は、操舵トルクを検出する操舵トルクセンサを含んでいてもよい。また、操作量センサ237は、アクセルペダルやブレーキペダルのストロークを検出するストロークセンサを含んでいる。
【0045】
反力アクチュエータ240は、ハンドル235に操舵反力を付与する。例えば、反力アクチュエータ240は、反力モータである。反力モータのロータは、減速機を介してハンドル235に連結されている。反力モータの回転により、ハンドル235に操舵反力を付与することができる。反力アクチュエータ240の動作は、制御装置250によって制御される。
【0046】
制御装置250は、遠隔オペレータ端末200を制御する。制御装置250は、1又は複数のプロセッサ251(以下、単にプロセッサ251と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置252(以下、単に記憶装置252と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ251は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ251は、CPUを含んでいる。記憶装置252は、プロセッサ251による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置252としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD、SSD、等が例示される。
【0047】
遠隔操作プログラムPROG2は、プロセッサ251によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ251が遠隔操作プログラムPROG2を実行することにより、制御装置250の機能が実現される。遠隔操作プログラムPROG2は、記憶装置252に格納される。あるいは、遠隔操作プログラムPROG2は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。遠隔操作プログラムPROG2は、ネットワーク経由で提供されてもよい。
【0048】
制御装置250は、通信装置210を介して、車両100と通信を行う。制御装置250は、車両100から送信される車両情報VCLを受信する。制御装置250は、画像IMGを含む車両情報VCLを表示装置220に表示することによって、車両情報VCLを遠隔オペレータOに提示する。遠隔オペレータOは、表示装置220に表示される車両情報VCLに基づいて、車両100の状態や周囲の状況を認識することができる。
【0049】
遠隔オペレータOは、遠隔操作部材230を操作する。遠隔操作部材230の操作量は、操作量センサ237によって検出される。制御装置250は、遠隔操作部材230の操作量を反映した遠隔操作情報OPEを生成する。例えば、遠隔操作情報OPEは、ハンドル235のハンドル角θsを含んでいてもよい。ハンドル角θsは、遠隔オペレータOによるハンドル235の操作量に相当する。遠隔操作情報OPEは、操舵トルクを含んでいてもよい。遠隔操作情報OPEは、アクセルペダルやブレーキペダルのストローク量を含んでいてもよい。制御装置250は、遠隔操作情報OPEを通信装置210を介して車両100に送信する。
【0050】
更に、制御装置250は、反力アクチュエータ240を制御して、ハンドル235に操舵反力を付与する。ハンドル235を操作する遠隔オペレータOは、ハンドル235に付与される操舵反力を感じる。
【0051】
4.操舵反力制御
以下、本実施の形態に係る遠隔操作システム1による操舵反力制御について更に詳しく説明する。遠隔操作システム1は、操舵反力制御を通して、遠隔オペレータOによる遠隔操作を支援していると言える。
【0052】
図5は、本実施の形態に係る操舵反力制御の概要を説明するためのブロック図である。遠隔操作システム1は、「反力制御量算出部400」を含んでいる。反力制御量算出部400は、反力アクチュエータ240を制御するための「反力制御量CON」を算出する。反力制御量CONとしては、反力アクチュエータ240の目標トルク、目標駆動電流、等が例示される。反力アクチュエータ240は、反力制御量CONに従って制御され、反力制御量CONに応じた操舵反力をハンドル235に付与する。
【0053】
尚、反力制御量算出部400は、遠隔操作システム1の構成要素のいずれによって実現されてもよい。車両100、遠隔オペレータ端末200、及び管理装置300は、互いに通信可能であり、反力制御量CONの算出に必要な情報をやり取りできるからである。
【0054】
例えば、反力制御量算出部400は、遠隔オペレータ端末200に含まれている。
【0055】
他の例として、反力制御量算出部400は、車両100に含まれていてもよい。その場合、遠隔オペレータ端末200は、車両100側の反力制御量算出部400によって算出される反力制御量CONを通信を介して受け取る。
【0056】
更に他の例として、反力制御量算出部400の機能は、車両100と遠隔オペレータ端末200に分散されていてもよい。つまり、車両100と遠隔オペレータ端末200との協働により反力制御量算出部400が実現されてもよい。
【0057】
更に他の例として、反力制御量算出部400の少なくとも一部が管理装置300に含まれていもよい。
【0058】
一般化すれば、反力制御量算出部400は、遠隔操作システム1に含まれる1又は複数のプロセッサと1又は複数の記憶装置により実現される。
【0059】
4-1.比較例
図6は、反力制御量算出部400の比較例を示すブロック図である。反力制御量算出部400は、第1パラメータ取得部410、基本制御量算出部440A、ダンピング制御量算出部450、及び加算部460を含んでいる。
【0060】
第1パラメータ取得部410は、車両100の実転舵角δaに相当する「第1パラメータP1」を取得する。例えば、第1パラメータP1は、車両100の実転舵角δaである。他の例として、第1パラメータP1は、車両100の転舵アクチュエータ135を駆動する転舵電流であってもよい。第1パラメータ取得部410は、車両情報VCLから第1パラメータP1を取得することができる。
【0061】
基本制御量算出部440Aは、基本的な操舵反力成分を生成するための基本制御量CON-Bを算出する。例えば、基本的な操舵反力成分は、車輪にかかるセルフアライニングトルクに相当するばね成分を含む。基本制御量算出部440Aは、車両100の実転舵角δaに関連する第1パラメータP1に基づいて、基本制御量CON-Bを算出する。例えば、実転舵角δaが増加するにつれて、基本制御量CON-Bは大きくなる。基本制御量算出部440Aは、車速Vも考慮して、第1パラメータP1と車速Vに基づいて基本制御量CON-Bを算出してもよい。
【0062】
ダンピング制御量算出部450は、遠隔操作情報OPEに含まれるハンドル角θsを取得する。そして、ダンピング制御量算出部450は、ハンドル235の操舵速度(dθs/dt)に応じたダンピング成分を生成するためのダンピング制御量CON-Dを算出する。
【0063】
ばね成分やダンピング成分以外の操舵反力成分が生成されてもよい。
【0064】
加算部460は、基本制御量CON-B、ダンピング制御量CON-D等を加算することによって、最終的な反力制御量CONを算出する。
【0065】
4-2.課題
上述の比較例に係る操舵反力制御により、遠隔オペレータOは、車両100の実際の走行に即した操舵フィーリングを得ることができる。但し、車両100が凹凸路面を走行する場合、その路面の凹凸によりハンドル235がとられ、遠隔オペレータOが操舵操作を安定的に行いづらくなるおそれがある。遠隔オペレータOによる操舵操作が不安定になると、遠隔操作の対象である車両100の走行も不安定になるおそれがある。
【0066】
特に、遠隔操作の場合、車両100と遠隔オペレータ端末200との間に通信遅延が存在する。通信遅延の存在により、遠隔オペレータOによる車両100の遠隔操作はぎこちなくなる可能性がある。そのような状況において、路面凹凸という“外乱”によって遠隔オペレータOの遠隔操作が更に乱されるといった事態は回避することが望ましい。
【0067】
その一方で、車両100がオフロードを極低速で走行する場合、遠隔オペレータOがオフロードの手応えを感じたいというニーズも考えられる。よって、状況に応じて操舵反力をフレキシブルに調整することができる技術が望まれる。
【0068】
4-3.路面状態と車速を考慮した操舵反力制御
図7は、本実施の形態に係る反力制御量算出部400の構成例を示すブロック図である。反力制御量算出部400は、第1パラメータ取得部410、速度取得部420、路面状態判定部430、基本制御量算出部440、ダンピング制御量算出部450、及び加算部460を含んでいる。ダンピング制御量算出部450及び加算部460は、上述の比較例の場合と同様である。
【0069】
第1パラメータ取得部410は、上述の比較例の場合と同様である。すなわち、第1パラメータ取得部410は、車両100の実転舵角δaに相当する「第1パラメータP1」を取得する。例えば、第1パラメータP1は、車両100の実転舵角δaである。他の例として、第1パラメータP1は、車両100の転舵アクチュエータ135を駆動する転舵電流であってもよい。第1パラメータ取得部410は、車両情報VCLから第1パラメータP1を取得することができる。
【0070】
速度取得部420は、車両100の車速Vを取得する。車速Vは車両情報VCLから得られる。
【0071】
路面状態判定部430は、車両100の前方の路面状態が一定条件を満たすか否かを判定する。本実施の形態では、路面状態として「路面粗さ(road surface roughness)」を考える。路面粗さRは、路面の凹凸度合いと言うこともできる。路面粗さRが高いほど、その路面の凹凸度合いは高い。路面状態判定部430は、車両100の前方の路面粗さRが閾値Rth以上であるか否かを判定する。つまり、路面状態判定部430は、車両100の前方の路面が凹凸路面であるか否かを判定する。
【0072】
図8は、路面状態判定処理を説明するための概念図である。上述の通り、車両100には、車両100の周囲の状況を認識する認識センサ121が搭載されている。周辺状況情報SURは、認識センサ121による認識結果を示す。路面状態判定部430は、周辺状況情報SURに基づいて、車両100の前方の所定範囲における路面粗さRが閾値Rth以上であるか否かを判定する。
【0073】
例えば、周辺状況情報SURは、カメラ122に得られる画像IMGを含んでいる。路面状態判定部430は、画像IMGを分析することによって、車両100の前方の所定範囲における路面粗さRが閾値Rth以上であるか否かを判定する。例えば、様々なシーンにおける画像IMGと路面粗さRとの組み合わせを示す多量の学習データが用意され、その学習データを用いた機械学習によって画像認識AI(Artificial Intelligence)が予め用意される。画像認識AIは、画像IMGを入力し、その画像IMGに含まれる路面の路面粗さRを出力する。あるいは、画像認識AIは、画像IMGを入力し、路面粗さRが閾値Rth以上であるか否かを示す情報を出力してもよい。路面状態判定部430は、画像認識AIを利用して、車両100の前方の路面粗さRを推定することができる。あるいは、路面状態判定部430は、画像認識AIを利用して、車両100の前方の路面粗さRが閾値Rth以上であるか否かを判定することができる。
【0074】
他の例として、周辺状況情報SURは、ライダー123によって得られる点群情報PCを含んでいる。点群情報PCは、車両100に対する各計測点の相対位置(方向、相対距離)を含んでいる。よって、点群情報PCから、点群の高さ分布を取得することができる。路面状態判定部430は、点群情報PCで示される点群から、車両100の前方の所定範囲における路面を表す路面点群を抽出する。続いて、路面状態判定部430は、路面点群の点群情報PCに基づいて、路面点群の高さ分布を取得する。そして、路面状態判定部430は、路面点群の高さ分布の分散に基づいて、車両100の前方の路面粗さRを算出する。路面点群の高さ分布の分散が大きくなるにつれて、路面粗さRは大きくなる。路面状態判定部430は、このようにして算出された路面粗さRが閾値Rth以上であるか否かを判定する。
【0075】
路面状態判定部430は、路面状態情報RSを出力する。路面状態情報RSは、車両100の前方の路面粗さRを含む。路面状態情報RSは、車両100の前方の路面粗さRが閾値Rth以上であるかを示す路面状態フラグを含んでいてもよい。
【0076】
基本制御量算出部440は、基本的な操舵反力成分を生成するための基本制御量CON-B(「第1反力制御量」)を算出する。例えば、基本的な操舵反力成分は、車輪にかかるセルフアライニングトルクに相当するばね成分を含む。基本制御量算出部440は、第1パラメータP1、車速V、及び路面状態情報RSを受け取る。基本制御量算出部440は、第1パラメータP1に基づいて基本制御量CON-Bを算出し、更に、路面状態情報RS及び車速Vに応じて基本制御量CON-Bを適宜調整する。「調整」を「補正」と言い換えることもできる。
【0077】
図9は、基本制御量算出部440の構成例を示すブロック図である。基本制御量算出部440は、制御量算出部441、ゲイン設定部442、及び乗算部443を含んでいる。
【0078】
制御量算出部441は、車両100の実転舵角δaに相当する第1パラメータP1に基づいて、基本制御量CON-Bを算出する。例えば、実転舵角δaが増加するにつれて、基本制御量CON-Bは大きくなる。制御量算出部441は、車速Vも考慮して、第1パラメータP1と車速Vに基づいて基本制御量CON-Bを算出してもよい。制御量算出部441から出力される基本制御量CON-B、すなわち、調整前の基本制御量CON-Bを、便宜上、「基本制御量CON-B0」と呼ぶ。
【0079】
ゲイン設定部442は、路面状態情報RS及び車速Vの情報を受け取る。ゲイン設定部442は、路面粗さR及び車速Vに応じてゲインGを設定する。乗算部443は、調整前の基本制御量CON-B0にゲインGを掛けることによって、基本制御量CON-Bを算出する。つまり、ゲインGにより基本制御量CON-Bが調整される。ゲインGが1より大きいことは、操舵反力が増加するように基本制御量CON-Bが調整されることを意味する。ゲインGが1より小さいことは、操舵反力が減少するように基本制御量CON-Bが調整されることを意味する。ゲインG=1の場合、調整前の基本制御量CON-B0と調整後の基本制御量CON-Bは同じであり、調整幅(補正幅)はゼロである。ゲインG=1の場合も、「調整(補正)」の概念に含まれるとする。
【0080】
このように、基本制御量算出部440は、車両100の前方の路面粗さR及び車速Vに応じて、基本制御量CON-Bすなわち操舵反力を調整する。つまり、基本制御量算出部440は、状況に応じて基本制御量CON-Bすなわち操舵反力を調整する。以下、操舵反力の調整例を説明する。
【0081】
4-4.調整例
図10は、路面粗さRと車速Vに応じた操舵反力の調整例を示している。
【0082】
第1速度閾値Vth1は、極低速走行と低速走行を区別するための閾値である。例えば、第1速度閾値Vth1は3.6km/hである。車速Vが第1速度閾値Vth1未満である場合(V<Vth1)、車両100は極低速で走行していると判定される。第2速度閾値Vth2は、低速走行とそれ以上を区別するための閾値であり、第1速度閾値Vth1よりも高い。例えば、第2速度閾値Vth2は7.2km/hである。車速Vが第2速度閾値Vth2未満である場合(V<Vth2)、車両100は低速で走行していると判定される。
【0083】
4-4-1.R≧Rthの場合
まず、路面粗さRが閾値Rth以上である場合、つまり、路面凹凸が大きい場合について考える。
【0084】
路面粗さRが閾値Rth以上であり、且つ、車速Vが第1速度閾値Vth1以上である場合(R≧Rth、V≧Vth1)、ゲインGは1未満に設定される(G<1)。つまり、ハンドル235に付与される操舵反力が減少するように基本制御量CON-Bが調整される。よって、車両100が凹凸路面を走行する状況において、路面凹凸(外乱)が遠隔オペレータO側に伝わることが抑制される。その結果、ハンドル235が取られることが抑制され、遠隔オペレータOによる遠隔操作(操舵操作)の安定性が確保される。遠隔オペレータOによる遠隔操作の安定性が確保されるため、車両100の走行安定性も確保される。
【0085】
特に、遠隔操作の場合、車両100と遠隔オペレータ端末200との間に通信遅延が存在する。通信遅延の存在により、遠隔オペレータOによる車両100の遠隔操作はぎこちなくなる可能性がある。そのような状況において、路面凹凸という“外乱”によって遠隔オペレータOの遠隔操作が更に乱されることが回避される。
【0086】
また、本実施の形態では、車両100の真下の路面粗さRではなく、車両100の前方の路面粗さRが考慮される。これにより、路面凹凸(外乱)の影響が遠隔オペレータO側に伝わることをより確実に防止することが可能となる。
【0087】
その一方で、車両100がオフロードを極低速で走行する場合、遠隔オペレータOがオフロードの手応えを感じたいというニーズも考えられる。そこで、路面粗さRが閾値Rth以上であり、且つ、車速Vが第1速度閾値Vth1未満である場合(R≧Rth、V<Vth1)、ゲインGは1以上に設定される(G≧1)。例えば、ゲインGは1に設定される(G=1)。つまり、ハンドル235に付与される操舵反力が少なくとも減少しないように基本制御量CON-Bが調整される。これにより、遠隔オペレータOは、オフロード等の凹凸路面の手応えを効果的に感じることができる。尚、極低速走行の場合、仮に車両100の走行安定性が低下したとしても、直ぐに停車させることが可能である。
【0088】
4-4-2.R<Rthの場合
次に、路面粗さRが閾値Rth未満である場合、つまり、路面凹凸が小さい場合について考える。
【0089】
路面粗さRが閾値Rth未満であり、且つ、車速Vが第1速度閾値Vth1以上、第2速度閾値Vth2未満である場合(R<Rth、Vth1≦V<Vth2)、ゲインGは1に設定される(G=1)。つまり、基本制御量CON-Bの調整幅はゼロに設定される。これにより、遠隔オペレータOは、車両100の実際の走行に即した操舵フィーリングを得ることができる。
【0090】
路面粗さRが閾値Rth未満であり、且つ、車速Vが第2速度閾値Vth2以上である場合(R<Rth、V≧Vth2)、ゲインGは1未満に設定される(G<1)。つまり、ハンドル235に付与される操舵反力が減少するように基本制御量CON-Bが調整される。例えば、高速走行時の横風も、操舵操作に影響を与える“外乱”となり得る。ゲインGを1未満に設定することにより、そのような外乱が遠隔オペレータO側に伝わることを抑制することが可能となる。
【0091】
路面粗さRが閾値Rth未満であり、且つ、車速Vが第1速度閾値Vth1未満である場合(R<Rth、V<Vth1)、ゲインGは1より大きくなるように設定される(G>1)。つまり、ハンドル235に付与される操舵反力が増加するように基本制御量CON-Bが調整される。例えば、極低速走行時に低い縁石と車輪が接触した場合、その情報が増幅されて遠隔オペレータ側に伝わる。これにより、遠隔オペレータは、低い縁石であってもその存在をはっきり認識することが可能となる。
【0092】
4-5.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、車両100の前方の路面状態(路面粗さR)と車速Vに応じて操舵反力が調整される。つまり、状況に応じて操舵反力がフレキシブルに調整される。従って、遠隔オペレータOによる車両100の遠隔操作性が向上する。
【0093】
5.変形例
変形例では、路面状態として「路面の摩擦係数μ」を考える。路面状態判定部430は、車両100の前方の路面の摩擦係数μを推定する。そして、路面状態判定部430は、車両100の前方の路面の摩擦係数μが閾値μth未満であるか否かを判定する。言い換えれば、路面状態判定部430は、車両100の前方の路面が低μ路であるか高μであるかを判定する。
【0094】
例えば、周辺状況情報SURは、カメラ122に得られる画像IMGを含んでいる。路面状態判定部430は、画像IMGを分析することによって、車両100の前方の所定範囲における路面が低μ路であるか高μであるかを判定する。例えば、様々なシーンにおける画像IMGと摩擦係数μとの組み合わせを示す多量の学習データが用意され、その学習データを用いた機械学習によって画像認識AIが予め用意される。画像認識AIは、画像IMGを入力し、その画像IMGに含まれる路面の摩擦係数μを出力する。あるいは、画像認識AIは、画像IMGを入力し、摩擦係数μが閾値μth未満であるか否かを示す情報を出力してもよい。路面状態判定部430は、画像認識AIを利用して、車両100の前方の路面の摩擦係数μを推定することができる。あるいは、路面状態判定部430は、画像認識AIを利用して、車両100の前方の路面の摩擦係数μが閾値μth以上であるか否かを判定することができる。
【0095】
図11は、摩擦係数μと車速Vに応じた操舵反力の調整例を示している。
【0096】
まず、摩擦係数μが閾値μth未満である低μ路の場合について考える。摩擦係数μが閾値μth未満である場合(μ<μth)、ゲインGは1未満に設定される(G<1)。つまり、ハンドル235に付与される操舵反力が減少するように基本制御量CON-Bが調整される。これにより、低μ路におけるハンドル235の“抜け感”が再現される。
【0097】
次に、摩擦係数μが閾値μth以上である高μ路の場合について考える。
【0098】
摩擦係数μが閾値μth以上であり、且つ、車速Vが第1速度閾値Vth1以上、第2速度閾値Vth2未満である場合(μ≧μth、Vth1≦V<Vth2)、ゲインGは1に設定される(G=1)。つまり、基本制御量CON-Bの調整幅はゼロに設定される。これにより、遠隔オペレータOは、車両100の実際の走行に即した操舵フィーリングを得ることができる。
【0099】
摩擦係数μが閾値μth以上であり、且つ、車速Vが第2速度閾値Vth2以上である場合(μ≧μth、V≧Vth2)、ゲインGは1未満に設定される(G<1)。つまり、ハンドル235に付与される操舵反力が減少するように基本制御量CON-Bが調整される。例えば、高速走行時の横風も、操舵操作に影響を与える“外乱”となり得る。ゲインGを1未満に設定することにより、そのような外乱が遠隔オペレータO側に伝わることを抑制することが可能となる。
【0100】
摩擦係数μが閾値μth以上であり、且つ、車速Vが第1速度閾値Vth1未満である場合(μ≧μth、V<Vth1)、ゲインGは1より大きくなるように設定される(G>1)。つまり、ハンドル235に付与される操舵反力が増加するように基本制御量CON-Bが調整される。例えば、極低速走行時に低い縁石と車輪が接触した場合、その情報が増幅されて遠隔オペレータ側に伝わる。これにより、遠隔オペレータは、低い縁石であってもその存在をはっきり認識することが可能となる。
【0101】
以上に説明されたように、本変形例によれば、車両100の前方の路面状態(摩擦係数μ)と車速Vに応じて操舵反力が調整される。つまり、状況に応じて操舵反力がフレキシブルに調整される。従って、遠隔オペレータOによる車両100の遠隔操作性が向上する。
【符号の説明】
【0102】
1 遠隔操作システム
100 車両
120 センサ群
121 認識センサ
130 走行装置
135 転舵アクチュエータ
150 制御装置
151 プロセッサ
152 記憶装置
200 遠隔オペレータ端末
230 遠隔操作部材
235 ハンドル
240 反力アクチュエータ
250 制御装置
251 プロセッサ
252 記憶装置
300 管理装置
400 反力制御量算出部
410 第1パラメータ取得部
420 速度取得部
430 路面状態判定部
440 基本制御量算出部
442 ゲイン設定部
450 ダンピング制御量算出部
460 加算部
R 路面粗さ
δa 実転舵角
θs ハンドル角
CON 反力制御量
CON-B、CON-B0 基本制御量
CON-D ダンピング制御量
OPE 遠隔操作情報
VCL 車両情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11