(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169609
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 63/10 20060101AFI20231122BHJP
A01B 33/08 20060101ALI20231122BHJP
A01B 59/043 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A01B63/10 Z
A01B33/08 Z
A01B59/043 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080832
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三村 輔
(72)【発明者】
【氏名】丹治 光彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慎平
(72)【発明者】
【氏名】市川 愛梨
【テーマコード(参考)】
2B033
2B041
2B304
【Fターム(参考)】
2B033AA05
2B033AB01
2B033AB11
2B033AC04
2B033ED15
2B041AA09
2B041AA11
2B041AA15
2B041AB05
2B041AC03
2B041CA03
2B041CA16
2B041CC21
2B041HA25
2B041HA28
2B304KA09
2B304KA12
2B304LA02
2B304LA06
2B304LB05
2B304LB15
2B304MA02
2B304MA20
2B304MB02
2B304MC06
2B304MC13
2B304MC14
2B304PA01
2B304PC01
2B304RA08
2B304RA12
2B304RA13
(57)【要約】
【課題】作業車両において、対地作業機のカバー体の動作を走行機体側に伝達するための機構を構成する部品の取外しを行うことなく、対地作業機の昇降制御の作動状態と非作動状態の切換えを簡単に行うことを可能とし、作業性を向上させる。
【解決手段】昇降可能なロータリ耕耘機3を備えたトラクタであって、ロータリ耕耘機3は、ロータリ61とリヤカバー63とを有するものであり、ロータリ耕耘機3を昇降動作させる作業機用昇降機構に対して、リヤカバー63の上下回動についての回動量を伝達する伝達機構とを備え、伝達機構は、ロータリ側伝達機構101において、リヤカバー63の上下回動に連動して回動するリヤカバー側リンク111と、リヤカバー側リンク111の回動の伝達を受けて回動するワイヤ側リンク112と、ワイヤ側リンク112に対して伝達状態・非伝達状態のいずれかの状態となるように切換え操作可能に設けられたレバー113とを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、前記走行機体にリンク機構を介して昇降可能に連結された対地作業機と、を備えた作業車両であって、
前記対地作業機は、ロータリと、上下回動可能に設けられ前記ロータリの少なくとも一部を覆うカバー体と、を有するものであり、
前記走行機体側に設けられ、前記対地作業機を昇降動作させる作業機用昇降機構と、
前記作業機用昇降機構に対して、前記カバー体の上下回動についての回動量を、前記作業機用昇降機構の操作量として伝達する伝達機構と、を備え、
前記伝達機構は、前記対地作業機側に設けられた構成として、
前記カバー体の上下回動に連動して回動する第1リンクと、
前記第1リンクの回動の伝達を受けて回動する第2リンクと、
前記第1リンクまたは前記第2リンクに対して、前記第1リンクの回動を前記第2リンクに伝達させる伝達状態、および前記第1リンクの回動を前記第2リンクに伝達させない非伝達状態のいずれかの状態となるように切換え操作可能に設けられた操作部材と、を有する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記操作部材は、前記伝達状態で前記第2リンクまたは前記第1リンクの当接を受ける被当接部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記操作部材は、前記被当接部と反対側に把持部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記第1リンクと前記第2リンクとは、互いに同軸回転するように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記対地作業機側に設けられた構成として、一端側を前記第1リンクに対して支持させるとともに、他端側を前記カバー体に対して支持させ、前記第1リンクと前記カバー体とを互いに連結するとともに前記カバー体に対して前記第1リンクを弾性支持する連結ロッド部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
前記第1リンクは、前記ロータリに動力を伝達するための伝動軸を内部に有するフレーム部に当接することで前記第1リンクの回動を規制するストッパ部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項7】
前記伝達機構は、一端側を前記第2リンクに連結させたワイヤを有し、
前記伝達機構は、前記作業機用昇降機構側に設けられた構成として、前記対地作業機の昇降制御用の制御バルブを操作するとともに、前記ワイヤの他端側の連結を受けるフィードバック用操作部材を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項8】
前記作業機用昇降機構は、前記リンク機構を介して前記対地作業機を昇降動作させるリフトアームを有し、
前記伝達機構は、前記作業機用昇降機構側に設けられた構成として、前記フィードバック用操作部材と前記リフトアームとを互いに連結するとともに、前記フィードバック用操作部材に対して弾性支持されたフィードバック連結部を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記リフトアームには、前記リフトアームに対して回動可能に支持され、前記フィードバック連結部の一側を支持するとともに、前記ワイヤを支持する回動支持部材が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体により耕耘作業機等の対地作業機を牽引する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両の一例であるトラクタにおいて、走行機体と、走行機体の後側にリンク機構を介して装着された対地作業機である耕耘作業機とを備えたものがある。耕耘作業機としては、左右方向を回転軸方向として回転する耕耘爪であるロータリと、ロータリを上方等から覆うロータリカバーと、ロータリを後側から覆うリヤカバーとを有する構成のものがある。リヤカバーは、例えばロータリカバーに対して、左右方向を回動軸として上下回動(昇降回動)するように設けられている。
【0003】
耕耘作業機は、走行機体側に設けられた油圧式の作業機用昇降機構により、リンク機構を介した昇降動作について制御されるように設けられている。作業機用昇降機構は、作業機昇降用のアクチュエータである油圧シリンダと、油圧シリンダにより上下回動する左右一対のリフトアームとを有する。一対のリフトアームは、リンク機構に連結されており、油圧シリンダの動作より回動することでリンク機構を介して耕耘作業機を昇降動作させる。
【0004】
このような構成を備えたトラクタにおいて、ロータリの高さに基づく耕深(耕耘深さ)に応じて昇降回動するリヤカバーの回動量を、走行機体側の作業機用昇降機構に対して、油圧シリンダを動作させる制御バルブの動作量として伝達する耕深伝達機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。耕深伝達機構によれば、リヤカバーの回動量が、一対のリフトアームを回動させる油圧シリンダの動作に対してフィードバックされ、耕深が一定の状態に保持されるように耕耘作業機の昇降制御が行われる。
【0005】
特許文献1には、耕深伝達機構として、一端側をリヤカバーに連結させた第1ロッドと、第1ロッドの他端側の連結を受け第1ロッドの動作により回動する第1アームと、一端側を第1アームに連結させたプッシュプルワイヤと、プッシュプルワイヤの他端側の連結を受けた第2アームと、一端側を第2アームに連結させた第2ロッドと、第2ロッドの他端側の連結を受けて第2ロッドの動作により回動するリンクレバーとを備えた構成が開示されている。このような構成において、リヤカバーの上下回動が、第1ロッド、第1アーム、プッシュプルワイヤ、第2アームおよび第2ロッドを介してリンクレバーの回動動作として伝達される。リンクレバーの回動動作は、レバーやワイヤ等の伝達部材を介して、作業機用昇降機構に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耕耘作業機を備えたトラクタにおいては、耕耘作業の状況等により、耕耘作業機のリヤカバーの上下回動の動作を用いた耕耘作業機の昇降制御が不要となる場合がある。このような場合、特許文献1に開示されているような耕深伝達機構を備えた構成においては、リヤカバーと作業機用昇降機構との間の連動を断つため、耕深伝達機構を構成するアームやプッシュプルワイヤ等の部品を取り外すことが行われている。
【0008】
しかしながら、耕耘作業機の昇降制御が不要な場合にその都度耕深伝達機構の構成部品を取り外すことは、煩雑で面倒な作業となる。また、取り外した部品については、部品の保管が面倒であり、部品を紛失するおそれがある。このように、従来の耕深伝達機構については改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、対地作業機のカバー体の動作を走行機体側に伝達するための機構を構成する部品の取外しを行うことなく、対地作業機の昇降制御の作動状態と非作動状態の切換えを簡単に行うことができ、作業性を向上することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る作業車両は、走行機体と、前記走行機体にリンク機構を介して昇降可能に連結された対地作業機と、を備えた作業車両であって、前記対地作業機は、ロータリと、上下回動可能に設けられ前記ロータリの少なくとも一部を覆うカバー体と、を有するものであり、前記走行機体側に設けられ、前記対地作業機を昇降動作させる作業機用昇降機構と、前記作業機用昇降機構に対して、前記カバー体の上下回動についての回動量を、前記作業機用昇降機構の操作量として伝達する伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、前記対地作業機側に設けられた構成として、前記カバー体の上下回動に連動して回動する第1リンクと、前記第1リンクの回動の伝達を受けて回動する第2リンクと、前記第1リンクまたは前記第2リンクに対して、前記第1リンクの回動を前記第2リンクに伝達させる伝達状態、および前記第1リンクの回動を前記第2リンクに伝達させない非伝達状態のいずれかの状態となるように切換え操作可能に設けられた操作部材と、を有するものである。
【0011】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記操作部材は、前記伝達状態で前記第2リンクまたは前記第1リンクの当接を受ける被当接部を有するものである。
【0012】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記操作部材は、前記被当接部と反対側に把持部を有するものである。
【0013】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記第1リンクと前記第2リンクとは、互いに同軸回転するように設けられているものである。
【0014】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記伝達機構は、前記対地作業機側に設けられた構成として、一端側を前記第1リンクに対して支持させるとともに、他端側を前記カバー体に対して支持させ、前記第1リンクと前記カバー体とを互いに連結するとともに前記カバー体に対して前記第1リンクを弾性支持する連結ロッド部を有するものである。
【0015】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記第1リンクは、前記ロータリに動力を伝達するための伝動軸を内部に有するフレーム部に当接することで前記第1リンクの回動を規制するストッパ部を有するものである。
【0016】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記伝達機構は、一端側を前記第2リンクに連結させたワイヤを有し、前記伝達機構は、前記作業機用昇降機構側に設けられた構成として、前記対地作業機の昇降制御用の制御バルブを操作するとともに、前記ワイヤの他端側の連結を受けるフィードバック用操作部材を有するものである。
【0017】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記作業機用昇降機構は、前記リンク機構を介して前記対地作業機を昇降動作させるリフトアームを有し、前記伝達機構は、前記作業機用昇降機構側に設けられた構成として、前記フィードバック用操作部材と前記リフトアームとを互いに連結するとともに、前記フィードバック用操作部材に対して弾性支持されたフィードバック連結部を有するものである。
【0018】
本発明に係る作業車両は、前記作業車両において、前記リフトアームには、前記リフトアームに対して回動可能に支持され、前記フィードバック連結部の一側を支持するとともに、前記ワイヤを支持する回動支持部材が設けられているものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、対地作業機のリヤカバーの動作を走行機体側に伝達するための機構を構成する部品の取外しを行うことなく、対地作業機の昇降制御の作動状態と非作動状態の切換えを簡単に行うことができ、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトラクタの平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る作業機用昇降機構を示す左側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る作業機用昇降機構を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るトラクタが備える油圧回路の構成を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るロータリ耕耘機および作業機用昇降機構ならびに耕深伝達機構の構成を示す左側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るロータリ耕耘機を示す右後方斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るロータリ耕耘機を示す左側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るロータリ耕耘機の上部を示す左側面断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るロータリ側伝達機構の右後方斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るロータリ側伝達機構の左後方斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るロータリ側伝達機構の前方斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るロータリ側伝達機構の分解斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るロータリ側伝達機構の背面断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るロータリ側伝達機構の一動作状態(連動オンの状態)を示す斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るロータリ側伝達機構の一動作状態(連動オフの状態)を示す斜視図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る機体側伝達機構の斜視図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る機体側伝達機構の平面図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る機体側伝達機構の一部の構成を省略した左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、走行機体により耕耘作業機等の対地作業機を牽引する作業車両において、対地作業機が有するカバー体の上下回動についての回動量を、対地作業機を昇降動作させる作業機用昇降機構の操作量として伝達する伝達機構の構成を工夫することにより、作業性の向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
以下に説明する本発明の実施の形態では、本発明に係る作業車両として、対地作業機の一例である耕耘作業機を備えた農作業用のトラクタを例にとって説明する。ただし、本発明に係る作業車両は、走行機体と、走行機体にリンク機構を介して昇降可能に連結され所定の作業を行うための対地作業機とを備えたものであればよい。
【0023】
図1から
図5を用いて、作業車両の一例であるトラクタ1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、トラクタ1の前方に向かって左側(
図2における下側)および右側(
図2における上側)を、それぞれトラクタ1における左側および右側とする。
【0024】
図1および
図2に示すように、トラクタ1は、走行機体2と、走行機体2にリンク機構4を介して昇降可能に連結された対地作業機の一例であるロータリ耕耘機3とを備える。トラクタ1は、走行機体2によりロータリ耕耘機3を牽引して作業を行う。
【0025】
走行機体2は、左右一対の前車輪5と、左右一対の後車輪6とを有する。走行機体2の前部には、例えばディーゼルエンジンであるエンジン7が搭載されている。エンジン7は、ボンネット8により覆われている。トラクタ1は、エンジン7の駆動力により前車輪5および後車輪6を駆動することで前後進走行するように構成されている。
【0026】
走行機体2上において、エンジン7の後方には、キャビン9が設置されている。キャビン9の内部には、トラクタ1のオペレータが座る運転席11と、運転席11の前方に配置され前車輪5を操向操作するためのハンドル12とが設けられている。キャビン9の左右両外側には、オペレータが乗降するためのステップ13が設けられている。キャビン9の底部の下側には、エンジン7に燃料を供給する燃料タンク14が設けられている。
【0027】
キャビン9内において、運転席11の前方には、ステアリングコラム15が配置されている。ステアリングコラム15は、キャビン9の内部の前面側に配置されたダッシュボード16の背面側に立設されている。ステアリングコラム15の上側から上向きに突出したハンドル軸の上端部にハンドル12が取り付けられている。
【0028】
ステアリングコラム15の周囲には、走行機体2の走行を操作するための変速ペダルやブレーキペダルやクラッチペダル、エンジン7の回転速度を調節するためのスロットルレバー、走行機体2の進行方向について前進と後進を切り換え操作するための前後進切換レバー等の各種操作具が設けられている。また、キャビン9内において、運転席11の側方に設けられたコラム等には、ロータリ耕耘機3の高さ位置を手動で変更調節するための作業機昇降レバーや、ロータリ耕耘機3の目標耕耘深さを設定するための耕深設定器等が配置されている。
【0029】
走行機体2は、前車軸ケース21を有するエンジンフレーム22と、エンジンフレーム22の後部に着脱可能に固定された左右の機体フレーム23とにより構成されている。前車軸ケース21の左右両端側から左右外向きに、前車軸24が回転可能に突出している。前車軸ケース21に前車軸24を介して前車輪5が取り付けられている。
【0030】
機体フレーム23の後部には、エンジン7からの回転動力を適宜変速して車輪に伝達するためのミッションケース25が連結されている。ミッションケース25の内部には、油圧無段変速機や前後進切換機構等の走行伝動系の構成が設けられている。
【0031】
ミッションケース25の左右両外側面には、左右の後車軸ケース26が左右外向きに突出するように装着されている。左右の後車軸ケース26には、左右の後車軸27が回転可能に内挿されている。ミッションケース25に後車軸27を介して後車輪6が取り付けられている。左右の後車輪6の上方はリアフェンダー28によって覆われている。
【0032】
走行機体2において、ミッションケース25の後部の上側には、ロータリ耕耘機3を昇降動作させる油圧式の作業機用昇降機構30が、ミッションケース25に対して着脱可能に設けられている。作業機用昇降機構30により、リンク機構4を介したロータリ耕耘機3の昇降動作が制御される。このように、トラクタ1は、走行機体2側に設けられた作業機用昇降機構30を備えている。作業機用昇降機構30は、全体的に略左右対称に構成されている。
【0033】
ロータリ耕耘機3は、ミッションケース25および作業機用昇降機構30に対して、リンク機構4を介して連結されている。リンク機構4は、トップリンク31および左右一対のロワリンク32を有する3点リンク機構として構成されている。
【0034】
トップリンク31の前端部は、作業機用昇降機構30の後端部に設けられたトップリンクヒッチ33に対してピン等の軸支部材により回動可能に連結されている。トップリンクヒッチ33は、作業機用昇降機構30の後側において後方に向けて突出するととともに左右方向を板厚方向とした互いに平行な左右一対の支持板33aを有する(
図4参照)。各支持板33aには、トップリンク31の前端部を軸支するための支持孔33bが形成されている。トップリンク31は、所定のフレーム形状を有するリンクフレーム36を介してロータリ耕耘機3の所定の部位に連結されている。トップリンク31の後端部は、リンクフレーム36の前端部に対してピン等の軸支部材により回動可能に連結されている。
【0035】
左右のロワリンク32の前端部は、それぞれミッションケース25の後部の左右側面部に対してピン等の軸支部材を介して回動可能に連結されている。左右のロワリンク32の後端部は、ロータリ耕耘機3の前部に設けられたロワリンクヒッチ92に対してピン等の軸支部材により回動可能に連結されている。
【0036】
ミッションケース25の後面部には、PTO軸35が後方に向けて突出している。PTO軸35は、エンジン7の回転動力をPTO(Power take-off)駆動力として取り出してロータリ耕耘機3に伝達するための出力軸である。ロータリ耕耘機3は、PTO軸35の回転動力の入力を受けて駆動する。
【0037】
作業機用昇降機構30は、本体ケーシング41内に各種の油圧機構を内蔵した昇降機構本体部40を有する。昇降機構本体部40は、本体ケーシング41内に、ロータリ耕耘機3の昇降制御用のアクチュエータである昇降用油圧シリンダ42(
図5参照)を有する。昇降用油圧シリンダ42は、単動形の油圧シリンダである。
【0038】
また、作業機用昇降機構30は、昇降用油圧シリンダ42の伸縮動作より本体ケーシング41に対して上下回動する左右一対のリフトアーム43を有する。リフトアーム43は、本体ケーシング41の後部において左右方向を回動軸方向として基端部を回動可能に支持させており、本体ケーシング41から後側に延出している。リフトアーム43は、昇降用油圧シリンダ42のシリンダロッド42aに対して所定の連結部材を介して連結されている(
図5参照)。
【0039】
リフトアーム43は、リンク機構4を介してロータリ耕耘機3を昇降動作させる。各リフトアーム43は、リフトロッド44を介してロワリンク32に連結されている。リフトアーム43は、後端部に、リフトロッド44の一端側の連結を受ける二股状の軸支部43aを有する。リフトアーム43の軸支部43aには、リフトロッド44の上端部がピン等の軸支部材45を介して回動可能に連結されている(
図3参照)。左右のリフトアーム43が回動することにより、リフトロッド44およびリンク機構4を介してロータリ耕耘機3が昇降する。例えば、左右のリフトロッド44の一方は、油圧シリンダ等によりロータリ耕耘機3の傾斜制御用のアクチュエータとして構成されている。
【0040】
図5は、トラクタ1が備えるロータリ耕耘機3の昇降制御に関する油圧回路50の構成を示している。油圧回路50は、エンジン7の駆動力により作動する作業機用油圧ポンプ51を有する。油圧回路50は、リフトアーム43を動作させる昇降用油圧シリンダ42と、昇降用油圧シリンダ42の動作を制御する制御バルブ52とを有する。
【0041】
制御バルブ52は、本体ケーシング41が有するバルブケースに組み込まれたスプール53と、リフトアーム43の下降制御用の電磁弁である下降バルブ54とを含んで構成されている。制御バルブ52は、スプール53および下降バルブ54により、作業機用油圧ポンプ51から供給される作動油の昇降用油圧シリンダ42に対する供給制御を行う。
【0042】
油圧回路50によれば、スプール53または下降バルブ54の切換え動作によって昇降用油圧シリンダ42が伸縮し、左右のリフトアーム43が上下回動する(矢印A1参照)。これにより、左右のリフトロッド44を介して左右のロワリンク32が上下回動し、ロータリ耕耘機3が昇降動作する。なお、油圧回路50は、リリーフ弁55、チェック弁56その他の各種油圧機器を備えている。
【0043】
ロータリ耕耘機3について説明する。ロータリ耕耘機3は、ロータリ61と、ロータリ61を上側から覆う本体カバー62と、ロータリ61を後側から覆うリヤカバー63と、本体カバー62の右側に設けられたサイドカバーをなす軸受側板64とを有する。
【0044】
ロータリ61は、PTO軸35により出力された回転動力の伝達を受けて回転する。ロータリ61は、左右方向に延伸した筒状のロータリ軸65と、ロータリ軸65に対して設けられた複数の耕耘爪66とを有する。耕耘爪66は、ロータリ軸65の外周側に設けられた円形のフランジ部66aと、フランジ部66aに対してボルト等の固定具67によって着脱可能に取り付けられた所定の湾曲形状を有する複数の爪本体66bとを有する(
図8参照)。ロータリ61は、左右方向についてロータリ耕耘機3の略全体にわたる範囲に設けられている。
【0045】
回転するロータリ61により、圃場が耕耘される。本実施形態では、耕耘爪66は、ロータリ軸65に対して軸方向に所定の間隔を隔てて9箇所に設けられている。また、各耕耘爪66において、爪本体66bが、フランジ部66aに対して周方向に所定の間隔を隔てて6箇所に設けられている。
【0046】
本体カバー62は、ロータリ61の回動軌跡の上方において水平状に設けられた板状のカバー体である。本体カバー62は、平面視で左右方向を長手方向とした略矩形状の外形を有し、左右方向についてロータリ61の全体または略全体をカバーするように設けられている。また、本体カバー62は、前後方向については、ロータリ61の全体または略全体をカバーするように設けられている。本体カバー62は、略水平状の板状部分であるカバー本体68と、カバー本体68の左右両側に設けられた側板部69とを有する。
【0047】
リヤカバー63は、上下回動可能に設けられロータリ61の少なくとも一部を覆うカバー体の一例である。リヤカバー63は、本体カバー62に対して上下回動可能に設けられている。リヤカバー63は、本体カバー62の後側から垂れ下がった形態をなすように設けられたカバー体であり、側面視で所定の屈曲形状を有する板状の部分をカバー本体70としている(
図7参照)。
【0048】
リヤカバー63のカバー本体70は、側面視での屈曲形状をなす面部として、上側から下側にかけて順に、後下がりの傾斜面部である上傾斜面部71と、上傾斜面部71よりも後下りの傾斜を急とした中間傾斜面部72と、中間傾斜面部72よりも後下がりの傾斜を緩やかとした下傾斜面部73とを有する。あくまでも一例であるが、上傾斜面部71の後下がりの傾斜角度は、本体カバー62が沿う水平面に対して30°程度である。
【0049】
カバー本体70の左右両側には側板部74が設けられている。側板部74は、左右方向を板厚方向とするとともにカバー本体70の側面視の屈曲形状に沿うように設けられている。カバー本体70の表面側(後側)には、左右の側板部74の左右内方の位置に、カバー本体70の側面視の屈曲形状に沿う補強リブ75が設けられている。
【0050】
リヤカバー63は、左右方向について本体カバー62と略同じ長さを有し、本体カバー62の後側に連結された状態で設けられ、本体カバー62とともにロータリ61を上方および後方から覆うカバー部を構成している。リヤカバー63は、左右方向に延伸した筒状のリヤカバー回動軸76により、本体カバー62に対して、左右方向に沿う所定の回動軸O1を中心として回動可能に支持されている(
図6、矢印B1参照)。
【0051】
図9に示すように、リヤカバー回動軸76は、カバー本体70の上傾斜面部71の上縁部と上傾斜面部71の前側に形成された前下がりの傾斜面部77とによる上側に凸の角部78に対して下側から嵌るように位置し、リヤカバー回動軸76は、リヤカバー63の一部として設けられている。リヤカバー回動軸76は、上傾斜面部71の上縁部に対して溶接等により固定された支持プレート79により下側から支持されている。リヤカバー回動軸76は、角部78をなす各面部および支持プレート79に対して溶接等により固定されている。
【0052】
リヤカバー回動軸76は、本体カバー62の後端部の左右方向の略中央部に設けられたヒンジ部80により回動可能に支持されている。ヒンジ部80は、リヤカバー回動軸76を貫通させた円筒状の貫通支持部81を有する。また、リヤカバー回動軸76は、本体カバー62の左右の側板部69に対して所定の部材を介して回動可能に支持されている。
【0053】
軸受側板64は、左右方向を板厚方向とした板状の部材であり、本体カバー62の右側方に設けられている。軸受側板64は、その下部に設けられた軸受部82により、ロータリ61のロータリ軸65の右端部を軸受等によって回転可能に支持している。
【0054】
また、ロータリ耕耘機3は、本体カバー62の上方に設けられたメインビーム90と、メインビーム90の中央部に設けられたギヤケース91とを有する。
【0055】
メインビーム90は、左右方向に延伸した筒状の中空部分であり、円筒状の周壁部を本体部分として円筒面状の外周面90cをなしている。メインビーム90は、右端部のフランジ部90aを、軸受側板64の上部に対してボルト等の固定具により固定させた状態で支持されている。
【0056】
メインビーム90において、ギヤケース91の左右両側には、上述のとおりロワリンク32の後端部の連結を受けるロワリンクヒッチ92が設けられている。ロワリンクヒッチ92は、メインビーム90から前方への突出部を有するとともに左右方向を板厚方向とした互いに平行な左右一対の支持板93を有する。ロワリンクヒッチ92は、支持板93にメインビーム90を貫通させた態様で設けられている。メインビーム90は、各ロワリンクヒッチ92の左右内側の支持板93を、本体カバー62上に設けられたリブ板部94に対してボルト等の固定具により固定させることで、左右中間部を、本体カバー62に対して支持させている。
【0057】
ギヤケース91は、ミッションケース25のPTO軸35からの駆動力の入力を受ける伝動機構を内蔵している。ギヤケース91は、前方に向けてPTO入力軸95を突出させている。PTO入力軸95は、両端に自在継手を有するとともに軸方向に伸縮可能に構成された伝動軸(図示略)によってPTO軸35に連結されている。
【0058】
ギヤケース91は、PTO入力軸95の回転動力を、メインビーム90内に設けられたロータリ伝動軸96に伝達するベベルギヤを内蔵している。ベベルギヤは、PTO入力軸95およびロータリ伝動軸96の各軸に固設されており、ギヤケース91内で互いに噛合している。メインビーム90は、ロータリ61に動力を伝達するための伝動軸であるロータリ伝動軸96を内部に有するフレーム部に相当する。
【0059】
ロータリ伝動軸96は、メインビーム90のうち、ギヤケース91よりも左側の部分の内部に設けられており、メインビーム90と同軸心配置されている。ロータリ伝動軸96の回転動力は、メインビーム90の左側に上端部を連結させたチェンケース97(
図2参照)内のチェン伝動機構(図示略)により、ロータリ61のロータリ軸65に伝達される。チェン伝動機構は、ロータリ伝動軸96およびロータリ軸65の各軸に対して設けられたスプロケットと、これらのスプロケットに巻回されたチェンとを有する。
【0060】
メインビーム90は、左端部のフランジ部90bを、チェンケース97の上部に対してボルト等の固定具により固定させる。つまり、メインビーム90は、右側の軸受側板64の上部と、左側のチェンケース97の上部との間に横架された状態で設けられている。チェンケース97の下部には、ロータリ軸65の左端部が軸受等によって回転可能に支持されている。
【0061】
以上のような構成により、PTO軸35から伝動軸を介してPTO入力軸95に入力された回転動力が、チェンケース97内のベベルギヤ、ロータリ伝動軸96、チェンケース97内のチェン伝動機構を介して、ロータリ軸65に伝達される。これにより、ロータリ61が回転駆動する。ロータリ61は、左側面視で左回り方向(反時計方向)に回転する。
【0062】
以上のような構成を備えたトラクタ1は、作業機用昇降機構30に対して、リヤカバー63の上下回動についての回動量を、作業機用昇降機構30の操作量として伝達する伝達機構として、耕深伝達機構100を備えている(
図6参照)。
【0063】
上述のとおり本体カバー62に対してリヤカバー63を上下回動可能に支持した構成を備えたロータリ耕耘機3においては、圃場に対するロータリ61の沈み込みの量、つまり耕深(耕耘深さ)により、下端部を圃場表面に接触させたリヤカバー63の上下回動の位置が変化する。すなわち、柔らかい圃場に対しては、ロータリ61の沈み込みが深くなるため、圃場表面の高さが相対的に上がり、リヤカバー63は上方に回動する(
図6、矢印C1参照)。一方、硬い圃場に対しては、ロータリ61の沈み込みが浅くなるため、圃場表面の高さが相対的に下がり、リヤカバー63は下方に回動する(
図6、矢印C2参照)。
【0064】
このような構成を備えたトラクタ1において、耕深伝達機構100は、耕耘深さに応じて昇降回動するリヤカバー63の回動量を、走行機体2側の作業機用昇降機構30に対して、昇降用油圧シリンダ42を動作させる制御バルブ52の動作量として伝達するための構成である。耕深伝達機構100によれば、リヤカバー63の回動が、一対のリフトアーム43を回動させる昇降用油圧シリンダ42の動作に対してフィードバックされ、耕耘深さが一定の状態に保持されるようにロータリ耕耘機3の昇降制御が行われる。
【0065】
図6に示すように、耕深伝達機構100は、ロータリ耕耘機3側に設けられた構成であるロータリ側伝達機構101と、走行機体2側となる作業機用昇降機構30側に設けられた構成である機体側伝達機構102と、ロータリ側伝達機構101と機体側伝達機構102との間をつなぐ操作ワイヤであるワイヤ103とを有する。耕深伝達機構100は、リヤカバー63の上下回動に連動するロータリ側伝達機構101の動作を、ワイヤ103によって本機側の機体側伝達機構102に伝達するように構成されている。
【0066】
ロータリ側伝達機構101の構成について、
図9から
図16を用いて説明する。ロータリ側伝達機構101は、ロータリ耕耘機3のカバー部に対して設けられている。ロータリ側伝達機構101は、メインビーム90のうちギヤケース91よりも左側の部分に設けられた左側のロワリンクヒッチ92およびその近傍部分に対して設けられている。
【0067】
ロータリ側伝達機構101は、第1リンクとしてのリヤカバー側リンク111と、第2リンクとしてのワイヤ側リンク112と、操作部材としてのレバー113とを有する。また、ロータリ側伝達機構101は、リヤカバー63側に設けられた支持部材としてのステー114と、リヤカバー側リンク111とステー114とをつなぐ連結ロッド部としての第1フィードバックロッド部115とを有する。第1フィードバックロッド部115は、リヤカバー63側のフィードバックロッド部である。
【0068】
リヤカバー側リンク111は、本体カバー62に対するリヤカバー63のリヤカバー回動軸76による上下回動に連動して回動するように設けられている。リヤカバー側リンク111は、直線棒状の支持軸部121と、リンク本体部122と、円筒状の連結軸部123とを有する(
図13、
図14参照)。
【0069】
リヤカバー側リンク111は、左右一対のリンク支持板部116に支持されることで、メインビーム90の後側に位置している。リヤカバー側リンク111は、一対のリンク支持板部116に対して、支持軸部121により、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。
【0070】
一対のリンク支持板部116は、互いに平行な板状部分であり、左側のロワリンクヒッチ92の一対の支持板93のうち、メインビーム90から後側への張出し部分として設けられている。リンク支持板部116は、側面視においてメインビーム90に対して略矩形状の突出形状を有する。一対のリンク支持板部116により、リヤカバー側リンク111の支持ブラケットが形成されている。なお、左右のリンク支持板部116は、ロワリンクヒッチ92とは別途に設けられた構成であってもよい。
【0071】
支持軸部121は、軸方向を左右方向とした向きで、左右のリンク支持板部116の後側の角部に形成された支持孔116aを貫通した状態で支持されている(
図14参照)。支持軸部121のうち、左側のリンク支持板部116から左方に向けて突出した左側の端部には、支持軸部121を貫通させた円板状の係止リング125と、支持軸部121に対して径方向に貫通した直線棒状の係止ピン126とが取り付けられており、リンク支持板部116に対する支持軸部121の右方への抜けが規制されている。係止ピン126は、例えばスプリングピンであり、支持軸部121の端部に形成された貫通孔121aを貫通している(
図13参照)。支持軸部121の軸心位置が、リヤカバー側リンク111の回動軸O2の位置となる(
図9、
図14参照)。
【0072】
リンク本体部122は、支持軸部121のうち、右側のリンク支持板部116から右方に向けて突出した右側の部分に設けられている。リンク本体部122は、支持軸部121をなす軸部材を貫通させており、支持軸部121と一体的に回動する部分となっている。リンク本体部122は、支持軸部121の軸方向を板厚方向とした板状の部分であり、側面視(支持軸部121の軸方向視)で所定のリンク形状を有する。
【0073】
リンク本体部122は、そのリンク形状をなす部分として、支持軸部121による軸支部分である基部130からの延出部分である第1アーム部131、第2アーム部132および係止突片部133を有する。概略的に、第1アーム部131は、基部130から後方に向けて延出しており、第2アーム部132は、基部130から上方に向けて延出しており、係止突片部133は、基部130から下方に向けて延出している。リンク本体部122は、直線状の第1アーム部131と、基部130を介して略直線状をなす第2アーム部132および係止突片部133とにより、略「T」字状のリンク形状をなしている。
【0074】
支持軸部121は、右側のリンク支持板部116からの右方への突出部分を、他の部分に対して部分的に軸の外径を大きくした拡径部121bとしている(
図14参照)。拡径部121bは、リンク支持板部116の支持孔116aの内径よりも大きい外径を有し、支持軸部121において、左右のリンク支持板部116に対する貫通部分に対する段差面を形成している。これにより、拡径部121bが右側のリンク支持板部116に対する係止部となり、リンク支持板部116に対する支持軸部121の左方への移動が規制されている。
【0075】
連結軸部123は、支持軸部121と同軸心状に形成された軸状部分であり、リンク本体部122から右方に向けて突出している。連結軸部123は、リンク本体部122をなす板状部材を貫通した支持軸部121をなす軸部材の右側の端部により形成されている。連結軸部123は、支持軸部121の拡径部121b以外の部分と略同じ外径、または支持軸部121より小さい外径を有する。
【0076】
連結軸部123は、支持軸部121の拡径部121bに対して小径であり、拡径部121bに対する段差面を形成している(
図14参照)。これにより、拡径部121bが、リンク本体部122をなす部材に対する係止部となり、支持軸部121に対するリンク本体部122をなす部材の左方への移動が規制されている。連結軸部123は、リヤカバー側リンク111に対するワイヤ側リンク112の軸支部となる。
【0077】
リヤカバー側リンク111の回動軸O2回りの回動において、第2アーム部132が、メインビーム90に当接することでリヤカバー側リンク111の回動を規制するストッパ部となる。すなわち、第2アーム部132は、回動軸O2を中心とした回動軌跡をメインビーム90に干渉させるように設けられており、メインビーム90の後側に位置する第2アーム部132がリヤカバー側リンク111の回動により前側に移動し(倒れ)、メインビーム90の外周面90cに接触することで、リヤカバー側リンク111の左側面視での左回り方向の回動が制限される(
図9参照)。
【0078】
ワイヤ側リンク112は、リヤカバー側リンク111の連結軸部123に対して、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。ワイヤ側リンク112は、レバー113を介して、リヤカバー側リンク111の回動の伝達を受けて回動するように構成されている。ワイヤ側リンク112は、連結軸部123を貫通させるボス部135と、ボス部135から延出したアーム部136とを有する。
【0079】
ボス部135は、円筒形状を有する部分であり、中心軸をリヤカバー側リンク111の回動軸O2に一致させている。アーム部136は、左右方向を板厚方向とした板状の部分であり、ボス部135の径方向に沿ってボス部135の外周面から直線状に延出している。
【0080】
ワイヤ側リンク112は、軸受部材である円筒状のドライブッシュ137を介して連結軸部123にボス部135を貫通させた状態で、連結軸部123に対して回動可能に支持されている。ボス部135から右方へ突出した連結軸部123の先端部には、連結軸部123の外周溝123aに対して止め輪138が外嵌されており、連結軸部123に対するワイヤ側リンク112の抜けが規制されている。リンク本体部122をなす板状部材は、リヤカバー側リンク111は、拡径部121bと連結軸部123による段差面と、ボス部135とにより挟持された状態となっている(
図14参照)。
【0081】
このような構成により、ワイヤ側リンク112は、リヤカバー側リンク111に対して、リヤカバー側リンク111の回動軸O2を中心として相対回動可能に支持されている。つまり、ワイヤ側リンク112は、その回動軸をリヤカバー側リンク111の回動軸O2に一致させている。このように、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112とは、互いに同軸回転するように設けられている。
【0082】
ワイヤ側リンク112は、左右方向について、アーム部136を、リヤカバー側リンク111の係止突片部133の右方において、係止突片部133に対してわずかな隙間を隔てた位置に隣接配置させるように設けられている(
図14参照)。
【0083】
レバー113は、リヤカバー側リンク111の回動をワイヤ側リンク112に伝達してワイヤ側リンク112を回動させる連動機構において、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の連動状態と非連動状態を切換え操作するための部材である。レバー113は、ワイヤ側リンク112に対して、リヤカバー側リンク111の回動をワイヤ側リンク112に伝達させる伝達状態、およびリヤカバー側リンク111の回動をワイヤ側リンク112に伝達させない非伝達状態のいずれかの状態となるように切換え操作可能に設けられている。
【0084】
レバー113は、円形の横断面形状を有する棒状の部材をL字状に屈曲させた態様の屈曲棒状の部材である。レバー113は、L字状の一方の辺部をなす軸部分を、左右方向を軸方向とした操作軸部141とし、L字状の他方の辺部をなす軸部分を、操作軸部141に対して直角状に屈曲した把持部142としている。
【0085】
レバー113は、操作軸部141を、ワイヤ側リンク112のアーム部136の略中央部に対して右側から貫通させるように設けられている。アーム部136には、操作軸部141を貫通させる円形の孔部136aが形成されている。孔部136aは、操作軸部141の外径と略同じ孔径を有する。レバー113は、ワイヤ側リンク112に対して、レバー保持機構150により支持された状態で設けられている。
【0086】
レバー保持機構150は、レバー113をアーム部136に対して左右方向、つまり操作軸部141の軸方向に移動可能に支持する支持ブラケット151を有する。支持ブラケット151は、アーム部136における孔部136aの形成部位の右側に、アーム部136と一体の部分として設けられている。支持ブラケット151は、上面部152、下面部153および側面部154を有し、これらの面部によって略「U」字状をなす屈曲板状の部分である。
【0087】
上面部152は、アーム部136の延伸方向について孔部136aに対してボス部135側に位置している。下面部153は、上面部152に対向した面部であり、アーム部136の延伸方向について孔部136aに対してアーム部136の先端側に位置している。側面部154は、上面部152と下面部153をつなぐ部分であり、アーム部136の右方に位置し、アーム部136に対向している。
【0088】
支持ブラケット151は、側面部154に操作軸部141を貫通させた状態で、操作軸部141の先端側をアーム部136に貫通させたレバー113を、操作軸部141の軸方向に移動可能、かつ操作軸部141の軸回りに回動可能に支持している。側面部154には、操作軸部141を貫通させる円形の孔部154aが形成されている。孔部154aは、操作軸部141の外径と略同じ孔径を有する。
【0089】
レバー113は、左右方向について、操作軸部141の先端部143を、リヤカバー側リンク111の係止突片部133に干渉する位置までアーム部136から左側に突出させた状態(
図15参照)を、リヤカバー側リンク111の回動をワイヤ側リンク112に伝達させる伝達状態とする。レバー113が有する操作軸部141の先端部143は、伝達状態でリヤカバー側リンク111の係止突片部133の当接を受ける被当接部となる。アーム部136から左側に突出した操作軸部141の先端部143は、リヤカバー側リンク111の係止突片部133の後方に位置している。
【0090】
一方、レバー113は、左右方向について、操作軸部141の先端部143を、係止突片部133に干渉しない位置まで右方に退避させた状態(
図14、
図16参照)を、リヤカバー側リンク111の回動をワイヤ側リンク112に伝達させない非伝達状態とする。非伝達状態において、操作軸部141は、先端部143の全体または略全体を、アーム部136の孔部136a内に位置させる。
図14に示す例では、非伝達状態の操作軸部141は、先端部143をアーム部136からわずかに左方に突出させている。
【0091】
レバー保持機構150は、レバー113を支持ブラケット151に対して操作軸部141の軸方向に付勢する付勢部材としてのコイル状のスプリング155を有する。レバー113には、操作軸部141においてスプリング155の付勢力を受ける円板状の座金156が固設されている。座金156は、操作軸部141において鍔状の部分をなしている。
【0092】
スプリング155は、支持ブラケット151内において、操作軸部141を貫通させるとともに、側面部154と座金156との間に圧縮状態で介装されている。スプリング155は、レバー113を左方向、つまり操作軸部141の軸方向についてレバー113が先端部143を突出させて伝達状態となる側に向けて付勢している。
【0093】
レバー113においては、操作軸部141に、レバー113を支持ブラケット151に対して係止させるための直線棒状の係止ピン158が設けられている。係止ピン158は、例えばスプリングピンであり、操作軸部141の中間部において、操作軸部141を径方向に貫通した状態で設けられており、操作軸部141の外周面から突出している。係止ピン158は、操作軸部141に対して固定状態で設けられている。
【0094】
支持ブラケット151においては、下面部153の後側に、係止ピン158の係合を受ける切欠き状の係止凹部153aが形成されている。係止凹部153aは、係止ピン158を嵌合させる大きさに形成されている。係止凹部153aには、係止ピン158の操作軸部141から下側への突出部分が嵌合する。
【0095】
係止ピン158は、係止凹部153aにより下面部153に係合することで、支持ブラケット151に対するレバー113の左右方向の移動を規制し、支持ブラケット151に対するレバー113の左右方向についての位置決めを行う。係止ピン158および係止凹部153aは、レバー113を左右方向について非伝達状態となる位置で位置決めするように設けられている。レバー113の非伝達状態において、座金156は、アーム部136から右方に離れた位置にあり、レバー113の左方への移動代が確保されている。
【0096】
以上のようなワイヤ側リンク112に対するレバー113の支持構成においては、レバー113に対し、操作軸部141の軸回りの回動操作、および操作軸部141の軸方向(左右方向)の移動操作が行われる。レバー113の操作においては、把持部142が作業者によって把持される部分として用いられる。このように、レバー113は、先端部143と反対側に把持部142を有する。
【0097】
レバー113を非伝達状態から伝達状態に切り換える場合の切換え操作および各部材の動作について説明する。レバー113は、非伝達状態において、係止凹部153aに係合した係止ピン158により操作軸部141の軸方向に沿う移動が規制された状態で、スプリング155による左方への付勢作用を受けている。レバー113は、非伝達状態において、操作軸部141の軸回りの回動に関し、把持部142を下側に向けた状態となっている(
図14、
図16参照)。
【0098】
非伝達状態のレバー113が、操作軸部141の軸回りについて、係止ピン158を係止凹部153aから離脱させる向き、つまり把持部142を後側に回動させる向き(
図16、矢印D1参照)に回動操作される。ここで、レバー113は、例えば略90°回動操作される。このレバー113の回動操作により、係止ピン158が係止凹部153aから離脱し、支持ブラケット151に対するレバー113の係合が解除される。
【0099】
レバー113は、支持ブラケット151に対する係合が解除された状態となることで、スプリング155の付勢力により自動的に右方に移動する。これにより、レバー113は、先端部143をアーム部136から左方に突出させ、伝達状態となる(
図15参照)。レバー113の伝達状態においては、座金156がアーム部136に対するストッパとなり、レバー113の左方への移動が規制される。
【0100】
レバー113が伝達状態にある状態において、リヤカバー側リンク111が回動軸O2回りに係止突片部133を後側に移動させる向き(左側面視で左回り方向)に回動し、係止突片部133がレバー113の先端部143に前側から当接することで、レバー113を介してワイヤ側リンク112がリヤカバー側リンク111により後側に押され、ワイヤ側リンク112が回動することになる。つまり、ワイヤ側リンク112は、レバー113を介してリヤカバー側リンク111の回動に連動し、リヤカバー側リンク111と一体的に回動軸O2回りに回動することになる。
【0101】
レバー113を伝達状態から非伝達状態に切り換える場合の切換え操作および各部材の動作について説明する。レバー113は、伝達状態において、スプリング155による左方への付勢作用を受けている。レバー113は、伝達状態において、操作軸部141の軸回りの回動に関し、把持部142を後側に向けた状態となっている(
図15参照)。
【0102】
伝達状態のレバー113が、まず右方に引かれることで、スプリング155の付勢力に抗して右方向に移動するように移動操作される。これにより、レバー113は、先端部143を右方に退避させる。レバー113は、左右方向について係止ピン158が係止凹部153aの位置に達した状態で、操作軸部141の軸回りについて、係止ピン158を係止凹部153aに嵌合させる向き、つまり把持部142を下側に回動させる向き(
図15、矢印D2参照)に回動操作される。ここで、レバー113は、例えば略90°回動操作される。これにより、係止ピン158が係止凹部153aに嵌合し、レバー113が支持ブラケット151に対して係合した状態となる。これにより、支持ブラケット151に対するレバー113の位置が保持される状態となり、レバー113が非伝達状態となる。
【0103】
レバー113が非伝達状態にある状態において、リヤカバー側リンク111が回動軸O2回りに係止突片部133を後側に移動させる向きに回動しても、係止突片部133はレバー113の先端部143に当接しない。つまり、リヤカバー側リンク111は、ワイヤ側リンク112とは無関係に(独立して)回動軸O2回りに回動することになり、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の非連動状態が得られる。
【0104】
以上のように、レバー113の操作により、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の連動状態と非連動状態の切換えが行われる。なお、本実施形態では、レバー113は、ワイヤ側リンク112側に設けられているが、リヤカバー側リンク111側に設けられてもよい。この場合、レバー113は、リヤカバー側リンク111と一体的に回動する部分となり、ワイヤ側リンク112側の所定の被当接部位に当接することで、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の連動状態を生じさせることになる。
【0105】
ステー114は、リヤカバー63においてリヤカバー側リンク111の後方の位置に設けられ、リヤカバー63と一体的に回動する部分となる。つまり、ステー114は、リヤカバー63の一部として設けられている。ステー114は、棒状の第1フィードバックロッド部115の一端側を回動可能に支持する。
【0106】
ステー114は、固定面部161と、支持面部162とを有し、これらの面部によって略「L」字状をなす屈曲板状の取付け金具である。ステー114は、リヤカバー63における上傾斜面部71上に設けられている。ステー114は、支持面部162の板厚方向を左右方向とする向きで、固定面部161を溶接やボルト等の固定具により上傾斜面部71に固定させた状態で設けられている。図示の例では、固定面部161は、上傾斜面部71に対してボルト163等により2箇所で固定されている。
【0107】
第1フィードバックロッド部115は、一端側である前側をリヤカバー側リンク111に対して回動可能に支持させるとともに、他端側である後側をステー114を介してリヤカバー63に対して回動可能に支持させている。第1フィードバックロッド部115は、リヤカバー側リンク111とリヤカバー63側のステー114とを互いに連結するとともにリヤカバー63に対してステー114を介してリヤカバー側リンク111を弾性支持する。
【0108】
第1フィードバックロッド部115は、ロッド部の本体である直線棒状のロッド164と、ロッド164をリヤカバー側リンク111に対して支持する支持筒165と、ロッド164に軸方向の付勢力を作用させる付勢部材としてのコイル状のスプリング166と、ロッド164とともにスプリング166を支持するバネ受ナット167とを有する。
【0109】
ロッド164は、一側の端部である後端部を、ステー114に対して、後支持軸168により左右方向を回動軸方向として回動可能に支持させている。後支持軸168は、その左側の部分を、ステー114の支持面部162に貫通させ、支持面部162への貫通部分に対する拡径部分である円筒状のロッド支持部168aを、支持面部162の右側に位置させている。
【0110】
後支持軸168は、支持面部162に対して回動可能に支持されている。後支持軸168は、ロッド支持部168aにおいて径方向に貫通した支持孔に、ロッド164の後端部を貫通させた状態で、ロッド164を支持している。ロッド164は、その軸方向についてロッド支持部168aに対して移動可能となっている。なお、後支持軸168の支持面部162から左方への突出部分には図示せぬピン等の係止部材が取り付けられ、後支持軸168の抜けが規制されている。後支持軸168によるステー114に対するロッド164の軸支部が、第1フィードバックロッド部115の後側の軸支部となる。
【0111】
支持筒165は、両端開口の円筒状の部分を筒本体部とし、筒本体部の外周面から右方に向けて突出した支持軸部165aを有する。支持筒165は、支持軸部165aを、リヤカバー側リンク111の第1アーム部131の後端部に貫通させた状態で、第1アーム部131に対して左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。なお、支持軸部165aの第1アーム部131から右方への突出部分には図示せぬピン等の係止部材が取り付けられ、支持筒165の抜けが規制されている。
【0112】
支持筒165は、筒本体部にロッド164の上端部を貫通させた状態で、第1アーム部131に対してロッド164を支持している。支持筒165から上側に突出したロッド164の上端部には、ロッド164に対して径方向に貫通した直線棒状の係止ピン169が設けられている。係止ピン169は、例えばスプリングピンであり、支持筒165の上側の開口端面に接触することで、支持筒165に対するロッド164の抜けを規制する。
【0113】
支持筒165は、ロッド164を軸方向に移動可能に支持しており、筒本体部に対してロッド164が移動することで、支持筒165から前側へのロッド164の突出量が変化する。支持筒165によるリヤカバー側リンク111に対するロッド164の軸支部が、第1フィードバックロッド部115の前側の軸支部となる。
【0114】
スプリング166は、ロッド164を貫通させるとともに、支持筒165とロッド164の後部に設けられたバネ受ナット167との間に介装されている。ロッド164の少なくとも後部は、外周面にネジを切ったネジ軸部となっており、バネ受ナット167はロッド164の後部に螺合した状態で設けられている。
【0115】
バネ受ナット167は、前側に拡径部分であるフランジ部167aを有し、フランジ部167aにおいてスプリング166の後側を支持している。スプリング166は、前側の端部を、支持筒165の後側の端面に支持させている。ロッド164に対するバネ受ナット167のネジ係合構造により、ロッド164上におけるバネ受ナット167の位置調整が可能となっている。バネ受ナット167の位置調整により、スプリング166の圧縮状態、つまりスプリング166の付勢力が調整される。
【0116】
スプリング166により、支持筒165に対して、バネ受ナット167を介して、ロッド164が軸方向後側に付勢される。ロッド164のネジ軸部におけるバネ受ナット167の後方には、係止ナット170が螺合している。係止ナット170は、ロッド支持部168aの前側に位置し、スプリング166により後側に付勢されたロッド164のロッド支持部168aに対するストッパとして機能する。
【0117】
ロッド164に対する係止ナット170のネジ係合構造により、ロッド164上における係止ナット170の位置調整が可能となっている。係止ナット170の位置調整により、ロッド164が支持筒165に対して係止ピン169を係止させた状態における、支持筒165とロッド支持部168aとの間に位置するロッド164の部分の長さが調整される。
【0118】
以上のような構成を備えた第1フィードバックロッド部115は、支持筒165からの突出量を変化させる支持筒165に対するロッド164の軸方向の移動により、スプリング166の伸縮をともなって、支持筒165および後支持軸168による前後の軸支部間の距離を変化させる。このように、第1フィードバックロッド部115は、前後の軸支部間の部分を伸縮させる態様でリヤカバー側リンク111をリヤカバー63に対して弾性支持する。
【0119】
以上のような構成を備えたロータリ側伝達機構101に対し、ワイヤ103は、一端側をワイヤ側リンク112に連結させている。ロータリ側伝達機構101は、ワイヤ側リンク112のアーム部136の下端部において、ワイヤ103の一端側である後端側の連結を受けている。
【0120】
機体側伝達機構102の構成について、
図3、
図17から
図19を用いて説明する。機体側伝達機構102は、作業機用昇降機構30の本体ケーシング41の後部の左側に設けられており、左側のリフトアーム43に連結された部材を含んでいる。
【0121】
機体側伝達機構102は、ワイヤ103の他端側である前端側の連結を受けるフィードバック用操作部材としてのフィードバックアーム181と、フィードバックアーム181に対して弾性支持されたフィードバック連結部としての第2フィードバックロッド部182とを有する。第2フィードバックロッド部182は、作業機用昇降機構30側のフィードバックロッド部である。
【0122】
フィードバックアーム181は、左右方向を板厚方向とした長手状の板状部材であるアーム本体183を有する。フィードバックアーム181は、アーム本体183の長手方向の一側の端部を、スプール53(
図5参照)の操作軸184に連結させている。操作軸184は、左右方向を回動軸方向として回動可能に設けられた軸であり、本体ケーシング41内部のスプール53から本体ケーシング41の外部に左方に向けて延出している。操作軸184の本体ケーシング41からの突出側の端部に、アーム本体183の一端部が固設されている。フィードバックアーム181は、操作軸184の回動軸に一致する回動軸O3を中心として、操作軸184と一体的に回動する。
【0123】
フィードバックアーム181は、ロータリ耕耘機3の昇降制御用の制御バルブ52(
図5参照)を操作する操作部材である。具体的には、フィードバックアーム181が回動軸O3を中心として左側面視で右回り方向(時計方向)に回動すること(
図19、矢印E1参照)による操作軸184の回動操作は、スプール53の操作として、リフトアーム43を上昇回動させる操作、つまりロータリ耕耘機3を上昇させる操作に対応している。また、フィードバックアーム181が回動軸O3を中心として左側面視で左回り方向(
図19、矢印E2参照)に回動することによる操作軸184の回動操作は、スプール53の操作として、リフトアーム43を下降回動させる操作、つまりロータリ耕耘機3を下降させる操作に対応している。
【0124】
第2フィードバックロッド部182は、フィードバックアーム181と左側のリフトアーム43とを互いに連結する連結機構部である。フィードバックアーム181は、第2フィードバックロッド部182の一側である前側の連結を受けるとともにワイヤ103の前端部の連結を受ける連結軸部185を有する。連結軸部185は、アーム本体183の長手方向の他側の端部から左方に向けて直線状に延出している。連結軸部185の左端部に、ワイヤ103の前側の端部が連結されている。
【0125】
詳細には、連結軸部185は、アーム本体183の左側に、他の部分に対して部分的に軸の外径を大きくした円筒状の拡径部185aを有する。連結軸部185において、拡径部185aより右側の部分は、外周面にネジを切ったネジ軸部となっている。連結軸部185は、ネジ軸部をアーム本体183の端部に貫通させ、拡径部185aによる段差面と、ネジ軸部に螺合したナット186とによりアーム本体183を挟持した状態で、アーム本体183に固定されている。
【0126】
第2フィードバックロッド部182は、直線丸棒状の部材により形成され第2フィードバックロッド部182の上部をなす軸部187と、略「L」字状に屈曲した屈曲板状の部材により形成され第2フィードバックロッド部182の下部をなすプレート部188とを有する。プレート部188は、略「L」字状の屈曲形状をなす部分として、軸部187の軸方向に沿って延伸した長手状の第1プレート部189と、第1プレート部189の下端部から左右内側(右側)に向けて直角状をなすように屈曲した第2プレート部190とを有する。
【0127】
軸部187をなす棒状の部材と、プレート部188をなす屈曲板状の部材とは、溶接等によって互いに固定され、一体的な第2フィードバックロッド部182を構成している。第1プレート部189の上端部の左側に、軸部187をなす棒状の部材の下端部が溶接等によって固定されている。
【0128】
第2フィードバックロッド部182は、第1プレート部189に連結軸部185を貫通させて連結軸部185に係合することで、フィードバックアーム181に対して連結されている。第1プレート部189には、連結軸部185を貫通させる孔部として、第1プレート部189の延伸方向を長手方向とした長孔189aが形成されている。第1プレート部189は、長孔189aの幅を、連結軸部185の拡径部185aの外径よりも小さくし、拡径部185aによる左側の段差面を接触面として係止されることで、連結軸部185における右方への移動の制限を受けている。
【0129】
第2フィードバックロッド部182の他側である後側は、リフトアーム43に対して回動支持部材192を介して支持されている。回動支持部材192は、リフトアーム43の基部から左方に向けて突出した支持軸193に対して回動可能に支持されている。支持軸193は、リフトアーム43の基部において左側の側面に取り付けられた支持プレート194が有する上側への山形状の支持突部194aの頂部に設けられている。
【0130】
回動支持部材192は、幅狭の板状部材を所定の形状に屈曲させた態様の部材である。回動支持部材192は、屈曲形状をなす部分として、長手方向の略中央部に支持軸193を貫通させた長手状の支持基部192aと、支持基部192aの下側(前側)の端部から左右外側(左側)に向けて直角状をなすように屈曲したロッド支持部192bと、支持基部192aの上側(後側)の端部から左右外側(左側)に向けて直角状をなすように屈曲したワイヤ支持部192cとを有する。
【0131】
回動支持部材192においては、支持基部192aのうち支持軸193よりも下側の部分とロッド支持部192bとにより、支持軸193による軸支部から下側に延伸した略「L」字状のロッド支持用のアーム部が形成されている。また、回動支持部材192においては、支持基部192aのうち支持軸193よりも上側の部分とワイヤ支持部192cとにより、支持軸193による軸支部から上側に延伸した略「L」字状のワイヤ支持用のアーム部が形成されている。
【0132】
回動支持部材192は、支持軸193に対して、支持軸193の軸心を中心として回動可能に支持されている。回動支持部材192は、支持軸193の先端側(左側)の縮径部を貫通させて支持軸193の基部側(右側)の拡径部に対して係止されている。支持軸193のうち、回動支持部材192からの左方への突出部分には、回動支持部材192を貫通させ拡径部分をなす係止リング195と、支持軸193の先端部を貫通するピン等の係止部材(図示略)とが取り付けられ、支持軸193に対する回動支持部材192の左方への抜けが規制されている。
【0133】
回動支持部材192は、第2フィードバックロッド部182と一体的に支持軸193回りに回動するように設けられている。回動支持部材192は、ロッド支持部192bに対して、第2フィードバックロッド部182の軸部187を垂直状に貫通させた状態で、第2フィードバックロッド部182の上側を支持している。
【0134】
軸部187は、ロッド支持部192bに対する貫通部分およびその近傍部分を、外周面にネジを切ったネジ軸部としており、ロッド支持部192bの前後両側には、調整ナット196が螺合している。軸部187上における一対の調整ナット196の位置調整により、軸部187の軸方向について、ロッド支持部192bに対する軸部187の支持位置の調整が可能となっている。回動支持部材192は、軸部187の上側への延長線上に支持軸193の先端部が位置するように、軸部187を支持している。
【0135】
回動支持部材192は、ワイヤ支持部192cの先端部に、ワイヤ103を支持するための切欠き状の凹部192dを有する。回動支持部材192は、凹部192dにワイヤ103の所定の部位を嵌合させることで、ワイヤ支持部192cにワイヤ103を貫通させた態様で、ワイヤ103を支持している。
【0136】
このように、リフトアーム43には、リフトアーム43に対して支持軸193を介して回動可能に支持され、第2フィードバックロッド部182の一側(上側)を支持するとともに、ワイヤ103を支持する回動支持部材192が設けられている。
【0137】
第2フィードバックロッド部182は、付勢部材としての引張バネ197により、フィードバックアーム181に対して、第1プレート部189の長手方向に沿う方向の上側、つまり支持軸193側に向けて付勢されている。言い換えると、引張バネ197は、フィードバックアーム181と第2フィードバックロッド部182の間において、フィードバックアーム181の先端部を第2プレート部190側に近付ける方向の付勢力を作用させている。したがって、フィードバックアーム181は、引張バネ197により、回動軸O3回りの回動について、リフトアーム43を下げる方向(
図19、矢印E2参照)に付勢されている。
【0138】
引張バネ197は、コイル状の本体部の両側にフック部197a,197bを有する。引張バネ197は、上側のフック部197aを、連結軸部185における右方への延出部分であるバネ支持軸部185bに係止支持させている。バネ支持軸部185bには、フック部197aの離脱を防止するための拡径部分をなすフランジ部185cが設けられている。また、引張バネ197は、下側のフック部197bを、第2プレート部190に形成された貫通孔部190aに貫通させることで第2プレート部190に係止支持させている。
【0139】
このように、第2フィードバックロッド部182は、引張バネ197により、フィードバックアーム181に対して弾性支持されている。フィードバックアーム181と第2フィードバックロッド部182の相対的な移動は、フィードバックアーム181の連結軸部185を貫通させた第2フィードバックロッド部182の長孔189aによって許容される。
【0140】
ワイヤ103について説明する。ワイヤ103は、いわゆるプッシュプルワイヤであり、両端にワイヤエンド202が設けられたワイヤ本体であるインナーワイヤ201を所定の被覆部材により被覆した構成を有する。ワイヤエンド202は、係止用の孔部を形成したリング状の部分を有する。ワイヤ103は、両端部において互いに共通の構成を有する。
【0141】
ワイヤ103は、インナーワイヤ201を貫通させた被覆部材として、インナーワイヤ201の両端部を除いた略全体を被覆するアウタチューブ203と、アウタチューブ203に対してインナーワイヤ201の端部側に設けられたアウタ金具204と、アウタ金具204に対してインナーワイヤ201の端部側に設けられた蛇腹部205とを有する。アウタ金具204の外周面はネジ面となっており、アウタ金具204には2つのナット206が螺合している。蛇腹部205は、一端側をアウタ金具204に対して固定させるとともに、他端側(ワイヤエンド202側)をインナーワイヤ201に対して固定させ、アウタ金具204に対するインナーワイヤ201の移動にともなって伸縮する。
【0142】
ロータリ側伝達機構101に対するワイヤ103の連結支持構造について説明する。
図10に示すように、ワイヤ103は、一端側である後端側のワイヤエンド202を、ワイヤ側リンク112のアーム部136の下端部に設けられたワイヤ係止ピン211に係止させることで、ワイヤ側リンク112に連結されている。ワイヤエンド202は、アーム部136から右方に突出したワイヤ係止ピン211を貫通させ、ワイヤエンド202から突出したワイヤ係止ピン211の先端部に取り付けられるピン等の係止部材(図示略)によりワイヤ係止ピン211に対して保持される。
【0143】
ワイヤ103は、アーム部136に対する連結部から、本体カバー62上を前後方向に沿うように水平状に配され、本体カバー62上に設けられたワイヤ支持ステー213により後端側のアウタ金具204を支持させている。ワイヤ支持ステー213は、固定面部213aと、支持面部213bとを有し、これらの面部によって上面視で略「L」字状をなす屈曲板状の取付け金具である。
【0144】
ワイヤ支持ステー213は、固定面部213aを、本体カバー62上に設けられた左右のリブ板部94のうちの左側のリブ板部94に対して右側にて平行状に位置させ、支持面部213bを前側かつ右側とした向きで、固定面部213aを貫通する固定ボルト214によりリブ板部94の前部に固定されている。固定面部213aとリブ板部94との間には、固定ボルト214を貫通させた円筒状のカラー215が介在している。固定ボルト214は、リブ板部94およびその左側に重なった支持板93を貫通し、ナット216に螺合している(
図14参照)。
【0145】
ワイヤ支持ステー213の固定面部213aには、固定ボルト214を貫通させる孔部として、前後方向を長手方向とした長孔213cが形成されている。長孔213cにより、リブ板部94に対するワイヤ支持ステー213の固定位置の前後方向の位置調整が可能となっている。
【0146】
ワイヤ支持ステー213は、支持面部213bに、ワイヤ103を支持するための切欠き状の凹部213dを有する。ワイヤ103は、アウタ金具204を凹部213dに嵌合させるとともに、2つのナット206により支持面部213bを板厚方向の両側から挟持した状態で、ワイヤ支持ステー213に対して支持されている。アウタ金具204上における一対のナット206の位置調整により、アウタ金具204の軸方向について、ワイヤ支持ステー213に対するアウタ金具204の支持位置の調整が可能となっている。
【0147】
このようなワイヤ103の後端部の支持構成によれば、ワイヤ側リンク112に連結されたワイヤエンド202と、ワイヤ支持ステー213に支持されたアウタ金具204との間の蛇腹部205が、本体カバー62上を前後方向に沿って水平状に配された状態となる。ワイヤ103は、ロータリ耕耘機3に対する支持部分から、前斜め上方に位置する機体側伝達機構102に対して延設された態様で配されている(
図6参照)。ワイヤ103は、ロータリ側伝達機構101と機体側伝達機構102との間において、例えばリンク機構4を構成するロワリンク32等に対して結束バンド等によって適宜保持される。
【0148】
機体側伝達機構102に対するワイヤ103の連結支持構造について説明する。
図17に示すように、ワイヤ103は、他端側である前端側のワイヤエンド202を、フィードバックアーム181の連結軸部185の先端部(左側端部)に係止させることで、フィードバックアーム181に連結されている。ワイヤエンド202は、連結軸部185を貫通させ、ワイヤエンド202から突出した連結軸部185の先端部に取り付けられるピン等の係止部材(図示略)により連結軸部185に対して保持される。
【0149】
ワイヤ103は、連結軸部185に対する連結部から、第2フィードバックロッド部182の左右外側(左側)において、第2フィードバックロッド部182と平行状に配され、上述のとおり回動支持部材192のワイヤ支持部192cに対して支持されている。ワイヤ103は、アウタ金具204をワイヤ支持部192cの凹部192dに嵌合させるとともに、2つのナット206によりワイヤ支持部192cを板厚方向の両側から挟持した状態で、回動支持部材192に対して支持されている。アウタ金具204上における一対のナット206の位置調整により、アウタ金具204の軸方向について、回動支持部材192に対するアウタ金具204の支持位置の調整が可能となっている。
【0150】
このようなワイヤ103の前端部の支持構成によれば、前側の蛇腹部205が、第2フィードバックロッド部182の上部と回動支持部材192に対して左側面視で重なるように、第2フィードバックロッド部182および回動支持部材192に対して平行状に配された状態となる。
【0151】
以上のようにロータリ側伝達機構101および機体側伝達機構102のそれぞれに対して連結されたワイヤ103によれば、ワイヤ側リンク112の回動が、インナーワイヤ201を移動させ、フィードバックアーム181の回動として伝達される。そして、ワイヤ103によれば、ワイヤ側リンク112の回動によるアーム部136の下端部の移動量、つまり後側のワイヤエンド202の移動量が、インナーワイヤ201の移動量となり、フィードバックアーム181を回動させるアーム本体183の先端部の移動量、つまり前側のワイヤエンド202の移動量となるように各部材が連動する。
【0152】
以上のように、耕深伝達機構100によれば、トラクタ用の簡易的なロータリ耕耘機3の昇降についてのオートコントロール構造が得られる。耕深伝達機構100を備えたトラクタ1の動作として、リヤカバー63の上下回動に連動したロータリ耕耘機3の昇降動作(以下「作業機オート昇降動作」という。)について説明する。作業機オート昇降動作は、ロータリ側伝達機構101のレバー113の操作状態がリヤカバー側リンク111の回動をワイヤ側リンク112に伝達させる伝達状態にある状態(
図15参照)で行われる。
【0153】
まず、リヤカバー63が所定の基準位置から回動軸O1を中心として開く方向に上昇回動すると(
図6、矢印C1参照)、リヤカバー側リンク111が、第1フィードバックロッド部115に押され(
図9、矢印F1参照)、回動軸O2を中心として、第1アーム部131を上昇させる向き(左側面視で左回り方向)に回動する(
図9、矢印F2参照)。このリヤカバー側リンク111の回動は、先端部143に係止突片部133の接触を受ける伝達状態のレバー113によりワイヤ側リンク112に伝達され、ワイヤ側リンク112がアーム部136を後側に移動させる向き(左側面視で左回り方向)に回動する(
図9、矢印F3参照)。これにより、ワイヤ103が後側に引っ張られる(
図9、矢印F4参照)。
【0154】
リヤカバー側リンク111の回動軸O2回りの回動について、リヤカバー側リンク111は、係止突片部133をレバー113の先端部143に接触させるまでは、ワイヤ側リンク112に対してはフリーの状態で回動する。すなわち、リヤカバー63が下降端に位置する状態では、係止突片部133とレバー113の先端部143との間には間隔があり、リヤカバー63が下降端から上昇側に所定量回動することで、係止突片部133がレバー113の先端部143に接触し、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の連動状態が得られる。
【0155】
リヤカバー63が上昇する場合のリヤカバー側リンク111の回動動作について、メインビーム90に接触する第2アーム部132がストッパとなり、リヤカバー側リンク111の回動が規制される。
図9においては、第2アーム部132をメインビーム90に当接させた状態のリヤカバー側リンク111を二点鎖線で示している。
【0156】
第2アーム部132がメインビーム90に当接した状態から、リヤカバー63がさらに上昇すると、ロッド164が、リヤカバー側リンク111に取り付けられた支持筒165に対してスプリング166の付勢力に抗して上昇し、支持筒165からの突出量を増加させるように、回動が規制された状態のリヤカバー側リンク111に対して上昇する(
図15、矢印G1参照)。
【0157】
ワイヤ103が後側に引っ張られることで、機体側伝達機構102において、フィードバックアーム181が左側面視で左回り方向に(後側に)回動する(
図19、矢印E1参照)。ここで、フィードバックアーム181は、引張バネ197の付勢力に抗して回動する。フィードバックアーム181が後側に回動することで、操作軸184を介してスプール53が所定の方向に押圧操作され、制御バルブ52が上昇駆動状態に切り換わり、作業機用油圧ポンプ51からの圧油が昇降用油圧シリンダ42に供給され、昇降用油圧シリンダ42がリフトアーム43を上昇させるように動作する。これにより、リフトアーム43が上昇回動し(
図19、矢印H1参照)、ロータリ耕耘機3が上昇することになる。
【0158】
ロータリ耕耘機3が上昇すると、相対的にリヤカバー63が閉じる方向に下降回動する。リヤカバー63が下降回動すると(
図6、矢印C2参照)、リヤカバー側リンク111が、第1フィードバックロッド部115に引っ張られ(
図9、矢印F5参照)、回動軸O2を中心として、第1アーム部131を下降させる向き(左側面視で右回り方向)に回動する(
図9、矢印F6参照)。
【0159】
リヤカバー側リンク111が矢印F6の方向に回動することにより、ワイヤ側リンク112に対してレバー113の先端部143を介して作用していた係止突片部133からの押圧力が解除される。すると、引張バネ197がワイヤ103の戻しバネとして作用し、ワイヤ103が前側に移動するとともに(
図9、矢印F7参照)、機体側伝達機構102において、フィードバックアーム181が左側面視で左回り方向に(前側に)回動し(
図19、矢印E2参照)、元の位置に戻る。
【0160】
フィードバックアーム181が元の位置に戻ることで、スプール53に対する押圧操作が解除され、スプール53に対して設けられたバネの作用によってスプール53が中立位置に位置し、制御バルブ52が下降操作状態に切り換わり、昇降用油圧シリンダ42の作動油の排出をともなって、リフトアーム43が下降回動し(
図19、矢印H2参照)、ロータリ耕耘機3が下降することになる。
【0161】
以上のようにして、リヤカバー63の上下回動によるロータリ耕耘機3の昇降動作についてのフィードバック制御が行われる。これにより、圃場表面の状態等にかかわらず耕耘深さが一定の状態に保持される。
【0162】
一方、上述のような作業機オート昇降動作は、ロータリ側伝達機構101のレバー113の操作状態がリヤカバー側リンク111の回動をワイヤ側リンク112に伝達さない非伝達状態にある状態(
図16参照)においては行われない。すなわち、レバー113が非伝達状態にある状態においては、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の連動が断たれ、リヤカバー63の上下回動にともなうリヤカバー側リンク111の回動はワイヤ側リンク112に伝達されない。したがって、リヤカバー63の上下回動によっては、ワイヤ103は作動することなく、フィードバックアーム181は操作されないことになる。
【0163】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るトラクタ1によれば、ロータリ耕耘機3のリヤカバー63の動作を走行機体2側に伝達するための機構である耕深伝達機構100を構成する部品の取外しを行うことなく、ロータリ耕耘機3の昇降制御の作動状態と非作動状態の切換えを簡単に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0164】
すなわち、耕深伝達機構100を備えた構成によれば、レバー113の操作によるリヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の連動状態と非連動状態の切換えにより、作業機オート昇降動作のオン状態とオフ状態とが切り換えられる。このため、作業者は、耕深伝達機構100を構成するワイヤ103等の部品の着脱を行うことなく、レバー113の出し入れといった簡単な操作により、リヤカバー63と作業機用昇降機構30との間の連動状態・非連動状態を切り換えることができる。
【0165】
また、レバー113の操作によって作業機オート昇降動作のオン状態とオフ状態を切り換えることにより、例えば、清掃時においてロータリ耕耘機3を上昇させた際やリヤカバー63を上昇回動させた際の油圧のリリーフを防止することができる。
【0166】
また、レバー113は、伝達状態でリヤカバー側リンク111からの押圧作用を受ける被当接部としての先端部143を有する。このような構成によれば、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112の連動機構を簡単な構成により実現することができる。
【0167】
また、レバー113は、先端部143と反対側に把持部142を有する。このような構成によれば、レバー113を操作するための構成を簡単に設けることができるので、耕深伝達機構100を操作するための構成の簡略化を図ることができる。
【0168】
また、ロータリ側伝達機構101において、リヤカバー側リンク111とワイヤ側リンク112は、共通の回動軸O2を中心として回動するように同軸支持された状態で設けられている。このような構成によれば、ロータリ側伝達機構101をコンパクトな構成にすることができる。これにより、ロータリ耕耘機3のカバー部においてロータリ側伝達機構101の設置スペースの確保が容易となる。
【0169】
また、ロータリ側伝達機構101は、リヤカバー63に対してリヤカバー側リンク111を連結させるとともに弾性支持する第1フィードバックロッド部115を有する。このような構成によれば、リヤカバー63の上下回動を適切にリヤカバー側リンク111に伝達することが可能となる。これにより、リヤカバー63の上下回動についての回動位置に応じてロータリ耕耘機3の昇降動作を精度良く制御することが可能となる。
【0170】
また、第1フィードバックロッド部115は、ロッド164上における係止ナット170の位置調整によってリヤカバー側リンク111とステー114との間で作用する部分の長さの調整が可能に構成されている。このような構成によれば、リヤカバー63の上昇回動について、リヤカバー63の回動がワイヤ103に伝達されるまでのリヤカバー63の初期不感帯、つまりワイヤ103の引き始めを調整することができる。これにより、ハンチングを抑制することができる。また、本体カバー62上におけるワイヤ支持ステー213によるワイヤ103の支持部においても、一対のナット206によってワイヤ103の支持位置を調整することで、リヤカバー63の回動がワイヤ103に伝達されるまでのリヤカバー63の初期不感帯を調整することができる。
【0171】
また、リヤカバー側リンク111は、メインビーム90に当接することでワイヤ103を引っ張る方向のリヤカバー側リンク111の回動を規制するストッパとして機能する第2アーム部132を有する。このような構成によれば、別途ストッパを設けることなく、簡単な構造により、リヤカバー側リンク111の回動を規制することができるので、ワイヤ103に対して過剰な引張り荷重が作用することを防止することができ、ワイヤ103を保護することができる。これにより、耕深伝達機構100の安定した動作を確保することができる。また、リヤカバー63がある一定量以上に開いたときにワイヤ103を引っ張らないようにすることができるので、油圧のリリーフを防止することができる。
【0172】
また、第1フィードバックロッド部115は、リヤカバー側リンク111の回動が規制された状態からのリヤカバー63の上昇回動を、スプリング166の付勢力をともなった支持筒165に対するロッド164の相対移動によって吸収するように構成されている。つまり、支持筒165を用いたロッド164の支持構成により、ロッド164の逃げ機構が構成されている。このような構成によれば、ロッド164に対して過剰な荷重が作用することを防止することができ、ロッド164を保護することができるとともに、第1フィードバックロッド部115を安定して動作させることができる。
【0173】
また、機体側伝達機構102は、ロータリ耕耘機3の昇降制御用の制御バルブ52を操作するとともにワイヤ103の前側の連結を受けるフィードバックアーム181を有する。このような構成によれば、ワイヤ103の動作を制御バルブ52に対して確実に伝達することができ、耕深伝達機構100の安定した動作を確保することができる。
【0174】
また、機体側伝達機構102は、フィードバックアーム181とリフトアーム43とを連結するとともにフィードバックアーム181に対して弾性支持された第2フィードバックロッド部182を有する。このような構成によれば、ワイヤ103に対して所定の向きに付勢力を作用させることができるので、リヤカバー63の動作に連動するワイヤ103をこじらせることなく、ワイヤ103におけるインナーワイヤ201の摺動抵抗を低減することができる。これにより、ワイヤ103の動作を安定してフィードバックアーム181に伝達させることができ、耕深伝達機構100の安定した動作を確保することができる。
【0175】
また、機体側伝達機構102において、第2フィードバックロッド部182に付勢力を作用させる部材として、引張バネ197が設けられている。このような構成によれば、引張バネ197の付勢力によって第2フィードバックロッド部182の戻り動作をアシストすることができるので、耕深伝達機構100の安定した動作を確保することができる。
【0176】
また、リフトアーム43には、第2フィードバックロッド部182と一体的に回動するとともにワイヤ103の支持部を有する回動支持部材192が回動可能に設けられている。このような構成によれば、機体側伝達機構102において、ワイヤ103の支持部を第2フィードバックロッド部182と一体的に回動させることができ、リフトアーム43が昇降回動することによっても、リヤカバー63の動作に連動するワイヤ103をこじらせることなく、ワイヤ103におけるインナーワイヤ201の摺動抵抗を低減することができる。これにより、ワイヤ103の動作を安定してフィードバックアーム181に伝達させることができ、耕深伝達機構100の安定した動作を確保することができる。
【0177】
また、回動支持部材192によれば、リフトアーム43に対する第2フィードバックロッド部182の軸支部をなす部材とワイヤ103を支持する部分とを一体の部材により構成することができる。これにより、リフトアーム43が動いても、ワイヤ103のストロークを一定にすることが可能となる。
【0178】
また、ロータリ側伝達機構101および機体側伝達機構102は、それぞれロータリ耕耘機3および作業機用昇降機構30に対して外付けの構造となっている。このため、作業機用昇降機構30の内部構造の変更等をすることなく、従来の機械に対して耕深伝達機構100を簡単に設置することが可能となる。
【0179】
また、機体側伝達機構102においては、回動支持部材192に対する第2フィードバックロッド部182の軸部187に螺合した一対の調整ナット196による位置調整機構により、第2フィードバックロッド部182の支点間距離L1(
図19参照)を可変とすることができる。これにより、第2フィードバックロッド部182の角度を変更することができ、例えばリフトアーム43の上昇側のみのオート制御を行うこと等が可能となる。なお、支点間距離L1は、左側面視における連結軸部185の軸心位置と支持軸193の軸心位置との間の距離である。
【0180】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る作業車両は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0181】
本技術は、以下のような構成を取ることができる。なお、以下に記載の構成は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
(1)
走行機体と、前記走行機体にリンク機構を介して昇降可能に連結された対地作業機と、を備えた作業車両であって、
前記対地作業機は、ロータリと、上下回動可能に設けられ前記ロータリの少なくとも一部を覆うカバー体と、を有するものであり、
前記走行機体側に設けられ、前記対地作業機を昇降動作させる作業機用昇降機構と、
前記作業機用昇降機構に対して、前記カバー体の上下回動についての回動量を、前記作業機用昇降機構の操作量として伝達する伝達機構と、を備え、
前記伝達機構は、前記対地作業機側に設けられた構成として、
前記カバー体の上下回動に連動して回動する第1リンクと、
前記第1リンクの回動の伝達を受けて回動する第2リンクと、
前記第1リンクまたは前記第2リンクに対して、前記第1リンクの回動を前記第2リンクに伝達させる伝達状態、および前記第1リンクの回動を前記第2リンクに伝達させない非伝達状態のいずれかの状態となるように切換え操作可能に設けられた操作部材と、を有する
ことを特徴とする作業車両。
(2)
前記操作部材は、前記伝達状態で前記第2リンクまたは前記第1リンクの当接を受ける被当接部を有する
ことを特徴とする前記(1)に記載の作業車両。
(3)
前記操作部材は、前記被当接部と反対側に把持部を有する
ことを特徴とする前記(2)に記載の作業車両。
(4)
前記第1リンクと前記第2リンクとは、互いに同軸回転するように設けられている
ことを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の作業車両。
(5)
前記伝達機構は、前記対地作業機側に設けられた構成として、一端側を前記第1リンクに対して支持させるとともに、他端側を前記カバー体に対して支持させ、前記第1リンクと前記カバー体とを互いに連結するとともに前記カバー体に対して前記第1リンクを弾性支持する連結ロッド部を有する
ことを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の作業車両。
(6)
前記第1リンクは、前記ロータリに動力を伝達するための伝動軸を内部に有するフレーム部に当接することで前記第1リンクの回動を規制するストッパ部を有する
ことを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の作業車両。
(7)
前記伝達機構は、一端側を前記第2リンクに連結させたワイヤを有し、
前記伝達機構は、前記作業機用昇降機構側に設けられた構成として、前記対地作業機の昇降制御用の制御バルブを操作するとともに、前記ワイヤの他端側の連結を受けるフィードバック用操作部材を有する
ことを特徴とする前記(1)~(6)のいずれか1つに記載の作業車両。
(8)
前記作業機用昇降機構は、前記リンク機構を介して前記対地作業機を昇降動作させるリフトアームを有し、
前記伝達機構は、前記作業機用昇降機構側に設けられた構成として、前記フィードバック用操作部材と前記リフトアームとを互いに連結するとともに、前記フィードバック用操作部材に対して弾性支持されたフィードバック連結部を有する
ことを特徴とする前記(7)に記載の作業車両。
(9)
前記リフトアームには、前記リフトアームに対して回動可能に支持され、前記フィードバック連結部の一側を支持するとともに、前記ワイヤを支持する回動支持部材が設けられている
ことを特徴とする前記(8)に記載の作業車両。
【符号の説明】
【0182】
1 トラクタ(作業車両)
2 走行機体
4 リンク機構
3 ロータリ耕耘機(対地作業機)
30 作業機用昇降機構
43 リフトアーム
52 制御バルブ
61 ロータリ
63 リヤカバー(カバー体)
90 メインビーム(フレーム部)
96 ロータリ伝動軸(伝動軸)
100 耕深伝達機構(伝達機構)
101 ロータリ側伝達機構
102 機体側伝達機構
103 ワイヤ
111 リヤカバー側リンク(第1リンク)
112 ワイヤ側リンク(第2リンク)
113 レバー(操作部材)
115 第1フィードバックロッド部(連結ロッド部)
131 第1アーム部
132 第2アーム部(ストッパ部)
133 係止突片部
142 把持部
143 先端部(被当接部)
181 フィードバックアーム(フィードバック用操作部材)
182 第2フィードバックロッド部(フィードバック連結部)
192 回動支持部材