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特開2023-169624配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法
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  • 特開-配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169624
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20231122BHJP
   F17D 3/05 20060101ALI20231122BHJP
   G01F 23/00 20220101ALI20231122BHJP
【FI】
G01F1/00 H
F17D3/05
G01F1/00 J
G01F23/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080856
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 潤
【テーマコード(参考)】
2F014
2F030
3J071
【Fターム(参考)】
2F014AC03
2F014GA01
2F030CA03
2F030CC12
2F030CE04
3J071AA03
3J071AA12
3J071BB11
3J071CC24
3J071DD14
3J071EE06
3J071EE18
3J071EE21
3J071EE31
3J071FF16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】狭小の場所であっても配管内の流体をモニタリングすることが可能な配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法の提供。
【解決手段】ドレン量モニタリングシステム1は、配管10内を流れるドレン量をモニタリングする。配管10の外周面には周方向に沿って音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26が取り付けられており、各音響センサは取付位置の音響を検出して制御装置2に向けて電気信号を送信する。配管10内には、蒸気及び蒸気が凝縮して発生したドレンが流れており、蒸気の流速はドレンの流速よりも早く流体音も大きい。このため、制御部3は、各音響センサからの電気信号に基づき、配管10内のドレンの液面レベルを推認してモニタリングすることができ、モニタリング結果はモニター8に表示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を流体としての気相流体及び液相流体が所定の基準方向に向けて流れ、当該液相流体が内部基準面を伝って流れる配管に対して設置される配管内の流体モニタリング装置であって、
前記配管の周方向に沿って配置される複数の状態検出手段であって、各々の検出部位における配管内の前記流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が前記気相流体又は前記液相流体のいずれであるかを表す検出信号をそれぞれ出力する複数の状態検出手段、
を備えたことを特徴とする配管内の流体モニタリング装置。
【請求項2】
請求項1に係る配管内の流体モニタリング装置において、
前記状態検出手段は、前記配管内を前記流体が流れる際に発生する流体音を前記所定の状態として検出する、
ことを特徴とする配管内の流体モニタリング装置。
【請求項3】
請求項2又は請求項3に係る配管内の流体モニタリング装置において、
前記複数の状態検出手段は、前記基準方向に対して垂直に形成される垂直面に沿って配置される、
ことを特徴とする配管内の流体モニタリング装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に係る配管内の流体モニタリング装置において、
前記複数の状態検出手段は、前記配管の周方向において、前記内部基準面に近い部分に偏って配置される、
ことを特徴とする配管内の流体モニタリング装置。
【請求項5】
内部を流体としての気相流体及び液相流体が所定の基準方向に向けて流れ、当該液相流体が内部基準面を伝って流れる配管に対して設置される配管内の流体モニタリングシステムであって、
前記配管の周方向に沿って配置される複数の状態検出手段であって、各々の検出部位における配管内の前記流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が前記気相流体又は前記液相流体のいずれであるかを表す検出信号をそれぞれ出力する複数の状態検出手段、
前記複数の状態検出手段がそれぞれ出力した前記検出信号に基づいて、前記内部基準面に対する前記液相流体の液面のレベルの位置を認識する認識手段、
前記認識手段が認識した前記液相流体の液面のレベルの位置を表示する表示手段、
を備えたことを特徴とする配管内の流体モニタリングシステム。
【請求項6】
請求項5に係る配管内の流体モニタリングシステムにおいて、
前記認識手段は、前記内部基準面に最も近い位置に配置されている前記状態検出手段からの前記検出信号を基準として、前記内部基準面に対する前記液相流体の液面のレベルの位置を認識する、
ことを特徴とする配管内の流体モニタリングシステム。
【請求項7】
内部を流体としての気相流体及び液相流体が所定の基準方向に向けて流れ、当該液相流体が内部基準面を伝って流れる配管に対して設置される配管内の流体モニタリング方法であって、
前記配管の周方向に沿って配置される複数の検出部位における配管内の前記流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が前記気相流体又は前記液相流体のいずれであるかを検知するステップ、
前記検知に基づいて、前記内部基準面に対する前記液相流体の液面のレベルの位置を認識するステップ、
を備えたことを特徴とする配管内の流体モニタリング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法は、配管内を流れる流体の量をモニタリングするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば産業プラントには蒸気等を移送するための配管系統が設置されていることがある。この配管内の蒸気は熱交換器等の装置に供給されるが、放熱によって凝縮して蒸気の一部はドレン(凝縮水)に変化する。このため、配管内には蒸気と共に発生したドレンが流れることになる。
【0003】
発生したドレンの量が過度に多くなると蒸気移送の障害になるため、適切なタイミングでドレンの排出処理等のメンテナンスを行う必要がある。このため、配管内のドレンの量をモニタリングする技術が求められる。
【0004】
このようなモニタリングシステムとして、後記特許文献1に開示された配管内のモニタリングシステムがある。このモニタリングシステム1は、配管2の底部外面に超音波送信器11を配置し、配管2内に向けて斜め方向に超音波を発射する。発射された超音波はドレン51内を伝播して液面(ドレン51と蒸気50との境界面)で反射する。
【0005】
配管2の底部外面には、配管2内における蒸気の移送方向である矢印A方向に沿って複数の超音波受信器12(12A~12E)が順に所定間隔で配置されており、液面で反射した超音波の反射波を受信する。そして、制御部31は、超音波を発射してから反射波を受信するまでの経過時間、反射波の受信位置等の情報に基づいてドレン51の液位等を算出する。これによって配管2内のドレン51の量を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-109428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述の特許文献1に開示されたモニタリングシステム1においては、システムを構成する機器の配置場所が広範囲にわたるため、狭小の場所に設置することが難しい。すなわち、モニタリングシステム1が備える複数の超音波受信器12(12A~12E)は、蒸気の移送方向である矢印A方向に沿って順に所定間隔で配管2に配置される。このため、配管2が産業プラント等の各種設備と交錯するような狭小箇所に配置されている場合、モニタリングシステム1を設置することが困難となり得る。
【0008】
そこで本願に係る配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法は、これらの問題を解決するため、狭小の場所であっても配管内の流体をモニタリングすることが可能な配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に係る配管内の流体モニタリング装置は、
内部を流体としての気相流体及び液相流体が所定の基準方向に向けて流れ、当該液相流体が内部基準面を伝って流れる配管に対して設置される配管内の流体モニタリング装置であって、
前記配管の周方向に沿って配置される複数の状態検出手段であって、各々の検出部位における配管内の前記流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が前記気相流体又は前記液相流体のいずれであるかを表す検出信号をそれぞれ出力する複数の状態検出手段、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本願に係る配管内の流体モニタリングシステムは、
内部を流体としての気相流体及び液相流体が所定の基準方向に向けて流れ、当該液相流体が内部基準面を伝って流れる配管に対して設置される配管内の流体モニタリングシステムであって、
前記配管の周方向に沿って配置される複数の状態検出手段であって、各々の検出部位における配管内の前記流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が前記気相流体又は前記液相流体のいずれであるかを表す検出信号をそれぞれ出力する複数の状態検出手段、
前記複数の状態検出手段がそれぞれ出力した前記検出信号に基づいて、前記内部基準面に対する前記液相流体の液面のレベルの位置を認識する認識手段、
前記認識手段が認識した前記液相流体の液面のレベルの位置を表示する表示手段、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本願に係る配管内の流体モニタリング方法は、
内部を流体としての気相流体及び液相流体が所定の基準方向に向けて流れ、当該液相流体が内部基準面を伝って流れる配管に対して設置される配管内の流体モニタリング方法であって、
前記配管の周方向に沿って配置される複数の検出部位における配管内の前記流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が前記気相流体又は前記液相流体のいずれであるかを検知するステップ、
前記検知に基づいて、前記内部基準面に対する前記液相流体の液面のレベルの位置を認識するステップ、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る配管内の流体モニタリング装置においては、複数の状態検出手段が、各々の検出部位における配管内の流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が気相流体又は液相流体のいずれであるかを表す検出信号をそれぞれ出力する。そして、この複数の状態検出手段は、配管の周方向に沿って配置される。
【0013】
したがって、狭小の場所であっても配管内の流体をモニタリングすることが可能な配管内の流体モニタリング装置を提供することができる。
【0014】
また、本願に係る配管内の流体モニタリングシステムにおいては、複数の状態検出手段が、各々の検出部位における配管内の流体の所定の状態を検出することによって、当該流体が気相流体又は液相流体のいずれであるかを表す検出信号をそれぞれ出力し、認識手段が検出信号に基づいて、内部基準面に対する液相流体の液面のレベルの位置を認識する。そして、この複数の状態検出手段は、配管の周方向に沿って配置される。
【0015】
したがって、狭小の場所であっても配管内の流体をモニタリングすることが可能な配管内の流体モニタリングシステムを提供することができる。
【0016】
また、本願に係る配管内の流体モニタリング方法においては、複数の検出部位における配管内の流体の状態を検出することによって、当該流体が気相流体又は液相流体のいずれであるかを検知し、この検知に基づいて、内部基準面に対する液相流体の液面のレベルの位置を認識する。そして、この複数の検出部位は、配管の周方向に沿って配置される。
【0017】
したがって、狭小の場所であっても配管内の流体をモニタリングすることが可能な配管内の流体モニタリング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願に係る配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法の第1の実施形態であるドレン量モニタリングシステム1の全体構成を示すブロック図である。
図2】蒸気11及びドレン12が流れる配管10の側面断面図である。
図3図1に示す制御部3が実行するモニタリング処理の内容を示すフローチャートである。
図4図1に示すドレン量モニタリングシステム1が検出した検出例1における音量の大きさを示すグラフである。
図5図1に示すドレン量モニタリングシステム1が検出した検出例1における音量の大きさに基づいて行う表示画面である。
図6図1に示すドレン量モニタリングシステム1が検出する検出例2における配管内の状態を示す図である。
図7図1に示すドレン量モニタリングシステム1が検出した検出例2における音量の大きさを示すグラフである。
図8図1に示すドレン量モニタリングシステム1が検出した検出例2における音量の大きさに基づいて行う表示画面である。
図9図1に示すドレン量モニタリングシステム1が検出する検出例3における配管内の状態を示す図である。
図10図1に示すドレン量モニタリングシステム1が検出した検出例3における音量の大きさを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法の下記の要素に対応している。
【0020】
ドレン量モニタリングシステム1・・・流体モニタリングシステム
制御部3・・・認識手段
モニター8・・・表示手段
配管10・・・配管
配管内底面10a・・・内部基準面
蒸気11・・・気相流体
ドレン(凝縮水)12・・・液相流体
音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26・・・状態検出手段、流体モニタリング装置
移送方向30・・・基準方向
配置面30a・・・垂直面
電気信号・・・検出信号
【0021】
[第1の実施形態]
本願に係る配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法の第1の実施形態を、ドレン量モニタリングシステム1を例に説明する。本実施形態におけるドレン量モニタリングシステム1は、図2に示す配管10内のドレン(凝縮水)12の流量をモニタリングする。
【0022】
配管系統はたとえば産業プラントに設置される。そして、配管10は水平方向に設置されており、ボイラー等で生成された蒸気11を熱交換器等の所定の蒸気使用機器に向け、移送方向30に圧送する。蒸気11は放熱によって凝縮して一部がドレン12に変化する。配管10が水平方向に配置されているため、蒸気11から発生したドレン12は配管内底面10aに溜まり、蒸気と共に移送方向30に向かって流れる。
【0023】
配管10内でドレン12の量が過度に多くなると蒸気移送の障害になるため、配管系統には随所にスチームトラップが設けられており(図示せず)、適宜、自動的に配管内のドレン12を配管系統の外部に排出している。しかし、蒸気11の移送状態や配管系統の設置環境等によって発生するドレン12の量が増加し、スチームトラップの排出能力を超えて配管10内に多量のドレン12が流れることがある。
【0024】
このため、本実施形態におけるドレン量モニタリングシステム1は、配管10内のドレン12の流量をモニタリングする。なお、本実施形態におけるドレン量モニタリングシステム1は、配管10の複数個所に設けられている。
【0025】
(ドレン量モニタリングシステム1の全体構成の説明)
図1に基づいてドレン量モニタリングシステム1の全体構成を説明する。図1は、図2に示す配置面30a部分の断面図である。配置面30aは、移送方向30に対して垂直に形成される仮想平面である。
【0026】
配管10の外周面には、12個の音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26が取り付けられて配置されている。これらの音響センサは、配置面30a上に配置されている。なお図2では、音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26の図示は省略されている。
【0027】
音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26は、それぞれ取付部位の近傍に発生している音を振動として検出し、各々、電気信号を発信するようになっている。配管10内を流れる蒸気11やドレン12は、流れに伴う流体音を生じさせ、音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26はそれぞれ取付部位における流体音を検出する。
【0028】
ここで、蒸気11やドレン12の流体音は、主に配管10の内壁との摩擦によって発生する。この摩擦によって発生する流体音は、一般に流体速度の6乗ないし9乗に比例して大きくなる。たとえば、流速が2倍になった場合、流体音は64倍以上になり、蒸気11やドレン12の流速が速くなるに従って流体音も大きくなる。そして、蒸気の体積はドレンの体積の100倍以上大きいため、蒸気の流速はドレンの流速よりも早く、流体音も蒸気の方がドレンよりも大幅に大きい。
【0029】
図1に示すように、音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26は、配管10の周方向において、配管内底面10aに近い部分に偏って配置されている。これは、水平方向に設置されている配管10内では、蒸気11から発生したドレン12は配管内底面10aに溜まって流れるため、配管内底面10aに近い部分により多くの音響センサを配置し、ドレン12の流体音を効率的に検出するためである。
【0030】
音響センサ20は、配管10の最も下方に位置する底点に向けて取り付けられており、音響センサ26は、配管10の最も上方に位置する頂点に向けて取り付けられている。これによって音響センサ20と音響センサ26とは、配管10の断面において垂直方向の直径線上に並んで位置する。そして、他の10個の音響センサは、音響センサ20、26を結ぶこの垂直方向の直径線を対称軸として線対称に配置されている。なお、音響センサ24a、24bは、配管10の断面において水平方向の直径線上に並んで位置している。
【0031】
音響センサ21a、21bは、音響センサ20の両側に同じ間隔をもって配置されており、音響センサ21a、21bを結ぶ水平線は第1レベルを形成する。また、音響センサ22a、22bは、音響センサ21a、21bのそれぞれ上方の両側に同じ間隔をもって配置されており、音響センサ22a、22bを結ぶ水平線は第2レベルを形成する。
【0032】
さらに、音響センサ23a、23bは、音響センサ22a、22bのそれぞれ上方の両側に同じ間隔をもって配置されており、音響センサ23a、23bを結ぶ水平線は第3レベルを形成する。また、音響センサ24a、24bは、音響センサ23a、23bのそれぞれ上方の両側に同じ間隔をもって配置されており、音響センサ24a、24bを結ぶ水平線は第4レベルを形成する。さらに、音響センサ25a、25bは、音響センサ24a、24bのそれぞれ上方の両側に同じ間隔をもって配置されており、音響センサ25a、25b を結ぶ水平線は第5レベルを形成する。
【0033】
図1に示すように、ドレン量モニタリングシステム1は制御装置2を備えており、この制御装置2は制御部3、受信部4及びメモリ5を有している。音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26が各々発信する電気信号は、通信ラインを通じて制御装置2に与えられる。なお、本実施形態においては、各電気信号は有線の通信ラインを通じて制御装置2に与えられているが、無線によって送信してもよい。
【0034】
発信された各電気信号は受信部4を介して制御部3に取り込まれる。制御部3は取り込んだ各電気信号に基づき、メモリ5内に記憶されているデータを参照して所定のモニタリング処理を実行して配管10内のドレン量を検知する。制御装置2にはモニター8が接続されており、制御部3はドレン量の検知結果をモニター8に表示する。
【0035】
(ドレン量モニタリングシステム1の動作の説明)
続いて、ドレン量モニタリングシステム1の動作を説明する。図3は、制御部3が実行するモニタリング処理の内容を示すフローチャートである。本実施形態におけるドレン量モニタリングシステム1は、配管10の複数個所に設けられているため、たとえばドレン量のチェックを行う場合、オペレータは端末機(図示せず)から特定の検出箇所を入力して指定する。
【0036】
この指定を受けて制御部3は、指定された検出箇所における各音響センサから電気信号を取り込み、12箇所の検出部位におけるそれぞれの音量の大きさを把握する(ステップS2)。そして、把握した12箇所の音量の大きさがすべて同じであるか否かを判別する(ステップS4)。
【0037】
ここで、音量の大きさが同じであるか否かについては、誤差を考慮して判別する。すなわち、蒸気11やドレン12の流体音の大きさは、音響センサの取付部位や配管10内の圧送状況等の影響を受けて不安定なため、所定の同一判定許容値a0の範囲内であればステップS4において音量の大きさは同じであると判別する。同一判定許容値a0は、予想される音量誤差の最大範囲値として予め設定された値であり、メモリ5に記憶されている。
【0038】
図4は、ステップS2で把握した、音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26の各取付部位における音量の大きさを示す一例(検出例1)である。制御部3は、これらの音量の大きさの最小値と最大値との差の値を求め、その値が同一判定許容値a0以下であれば音量はすべて同じ大きさであると判別する。
【0039】
図4の検出例1では、最大値は音響センサ21bが検出した音量であり、最小値は音響センサ25bが検出した音量である。そして、これらの音量値の差a1は同一判定許容値a0以下であることから、制御部3は音量がすべて同じ大きさであると判別し、ステップS4からステップS12に進み、モニター8に「すべて蒸気」である旨を表示して処理を終了する。
【0040】
検出した音量がすべて同じ大きさである場合、配管10内にドレン12が充満していることも考えられるが、前述のように本実施形態における配管系統には随所にスチームトラップが設けられており、適宜ドレン12を配管系統の外部に排出している。このため、ドレン12が充満していることは実際上、考えらえられないため、検出した音量がすべて同じ大きさである場合、制御部3は配管10内はすべて蒸気であると判断する。
【0041】
図5は、検出例1においてステップS12で表示するモニター8の表示画面である。モニター8の表示画面には、表示領域8aに検出箇所や検出日時等の情報が表示され、表示領域8bには配管10の断面図を表す円図形内にドレン量が表示される。検出例1では、制御部3はステップS12の処理として「すべて蒸気(ドレンはありません)」と表示する。
【0042】
次に、図6は検出例2における配管10内の状態を示す断面図であり、配管10内には蒸気11と共にドレン12が流れている。前述のように配管10は水平方向に設置されているため、ドレン12は配管内底面10aを伝って流れている。
【0043】
図7は検出例2において、制御部3がステップS2で把握した、音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26の各取付部位における音量の大きさを示すグラフである。前述のように、蒸気の流体音はドレンの流体音よりも大きいため、音響センサ20、21a、21b、22a、22bの取付部位における音量よりも、音響センサ23a、23b、24a、24b、25a、25b、26の取付部位における音量の方が大きく検出される。
【0044】
図7に示す検出例2においては、各取付部位における音量の大きさの最小値(音響センサ21aの音量)と最大値(音響センサ23bの音量)との差a2の値が同一判定許容値a0を超えているため、制御部3は把握した12箇所の音量の大きさがすべて同じではないと判別し、ステップS4からステップS6に進む。そして、ステップS6において最下部の音響センサ20の取付部位における音量を基準音量として取り出す。その後、制御部3は、取り出した基準音量と他のすべての音量とを比較し、基準音量と同一音量の音響センサの取付部位を把握し、ドレンの液面レベルを推認する(ステップS8)。
【0045】
基準音量と同一音量であるか否かについては、誤差を考慮して判別する。すなわち、ドレン12の流体音の大きさは、音響センサの取付部位や配管10内の圧送状況等の影響を受けて不安定なため、所定のドレン量判定許容値b0の範囲内であればステップS8において音量の大きさは同じであると判別する。具体的には基準音量から「+ b0」及び「-b0」の範囲内であれば同じ音量であると判断する。なお、ドレン量判定許容値b0は、予想されるドレン音量誤差の最大範囲値として予め設定された値であり、メモリ5に記憶されている。
【0046】
図7に示す検出例2においては、音響センサ20の取付部位における基準音量から「+ b0」及び「-b0」の範囲内の音量であり同一であると判断することができるのは、音響センサ21a、21b、22a、22bの各取付部位における音量である。このため、制御部3は音響センサ21a、21b、22a、22bが示す液面レベルのうち最も上部に位置する第2レベル(音響センサ22a、22b)まではドレン12が存在し、かつ隣接する上部の第3レベル(音響センサ23a、23b)にはドレン12は存在していないと認識する。
【0047】
これによって、制御部はドレン12の液面は第2レベルと第3レベルとの間に位置していると推認することができる。そして、制御部3はステップS10に進み、推認したドレン12の液面レベルを表示する。図8は、検出例2においてステップS10で表示するモニター8の表示画面である。モニター8の表示領域8bに、第2レベルと第3レベルとの間にドレンの液面がある旨を図と共に表示する。
【0048】
ところで、配管10内を流れるドレン12の液面は実際には不安定で平坦ではないことがある。特に蒸気11やドレン12の流速が早い場合、図9に示すように、ドレン12の液面の両端部分が配管10の内面に沿ってせり上がることが多い。図9に示す配管10内の状態を検出例3とした場合、液面の両端部分のせり上がりは音響センサ23a、23b(第3レベル)の取付部位を超えているが、液面の大部分は前述の検出例2における状態(図6)と同様のレベルである。
【0049】
図10は、検出例3について制御部3がステップS2で把握した、音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26の各取付部位における音量の大きさを示している。図9に示すドレン12の液面両端のせり上がりによって、音響センサ23a、23bの取付部位における音量が小さくなっているが、せり上がり部分のドレン12の量は比較的少ないため、音響センサ20、21a、21b、22a、22bの取付部位の音量ほどは小さくない。
【0050】
すなわち、この検出例3の場合、音響センサ23a、23b(第3レベル)の取付部位における音量は、音響センサ20の取付部位における基準音量から「+ b0」の範囲を超えているため、ステップS8において基準音量と同一音量とは判断されない。このため制御部3はせり上がりの影響を無視してドレン12の液面レベルは第2レベルと第3レベルとの間にあると推認し、ステップS10において検出例2と同様の表示(図8)を行うことができる。したがって、ドレン12の液面のせり上がりの影響を排除して、適切に液面レベルを推認することができる。
【0051】
なお、検出例3の場合、制御部3は把握した図10に示す音量に基づいて液面のせり上がりを認識し、このせり上がりをモニター8に図示することもできる。
【0052】
また、本実施形態においては、ドレン量モニタリングシステム1によるモニタリング結果(検出結果)は、すべてメモリ5に記録される。このため、蒸気11の移送運転中に何らかのトラブルが発生した場合、モニタリング結果の記録を参照してトラブルの原因を究明することが可能になる。
【0053】
以上のように本実施形態では、配管内底面10aに最も近い位置に配置されている音響センサ20における音量を基準音量としてドレン12の液面レベルを推認し、ドレン量のモニタリングを行う。この点、蒸気11の音量とドレン12の音量と区別するためのしきい値を予め設定しておき、蒸気11とドレン12とを判別することも考えられる。しかし、蒸気11やドレン12の音量そのものは、ドレン量モニタリングシステム1の設置場所や配管10内の圧送状況等によって大幅に異なるため、しきい値を基準にした場合、蒸気11とドレン12とを正確に判別できない場合がある。
【0054】
本実施形態では、配管内底面10aに最も近い位置に配置されている音響センサ20における音量を基準音量として蒸気11とドレン12とを判別するため、ドレン量の正確なモニタリングが可能となる。なお、蒸気11やドレン12の音量が安定している箇所にドレン量モニタリングシステム1を設置するような場合は、予めしきい値を設定しておき、このしきい値を基準として蒸気11とドレン12とを判別してもよい。
【0055】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、本願に係る配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法の例としてドレン量モニタリングシステム1を掲げたが、これに限定されるものではなく、内部を気相流体及び液相流体が所定の基準方向に向けて流れ配管に対して設置されるものであれば、他のシステムに適用することができる。
【0056】
また、前述の実施形態においては、配管10が水平方向に設置されている例を示したが、傾斜して設置されている配管に本願に係る配管内の流体モニタリング装置、流体モニタリングシステム及び流体モニタリング方法を適用することもできる。この場合、流体が伝って流れる配管の底部が内部基準面(配管内底面10a等)として位置づけられる。
【0057】
また、前述の実施形態においては、気相流体として蒸気11を例示し、液相流体としてドレン12を例示したが、それぞれ他の流体を対象とすることもできる。さらに、前述の実施形態においては、状態検出手段として蒸気11やドレン12の流体音を検出する音響センサを掲げたが、各々の検出部位における配管内の流体(蒸気11又はドレン12等)の所定の状態を検出するものであれば他の検出手段を採用することもできる。たとえば、配管内の流体の温度を検出して、当該流体が気相流体(蒸気11等)又は液相流体(ドレン12等)のいずれであるかを判別してもよい。
【0058】
また、前述の実施形態においては、複数の状態検出手段として、12個の音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26を例示したが、複数であれば11個以下又は13個以上の音響センサを用いることもできる。また、12個の音響センサが図示した状態で配置された例を示したが、異なる配置の状態検出手段(音響センサ等)を採用してもよい。たとえば、配管の周方向にわたって均等に状態検出手段(音響センサ等)を配置してもよい。
【0059】
さらに、前述の実施形態においては、音響センサ20と音響センサ26とが、配管10の断面において垂直方向の直径線上に並んで位置し、他の10個の音響センサが音響センサ20、26を結ぶこの垂直方向の直径線を対称軸として線対称に配置されている例を示した。しかし、音響センサ20、26を結ぶ垂直方向の直径線に対して片側にのみ音響センサを配置してドレン12の液面レベルを推認してもよい。すなわち、音響センサ20、21a、22a、23a、24a、25a、26の7個のみ、又は音響センサ20、21b、22b、23b24b、25b、26の7個のみを配置してもよい。
【0060】
また、前述の実施形態においては、音響センサ20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26が、基準方向(移送方向30等)に対して垂直に形成される垂直面(配置面30a等)に沿って配置される例を示したが、垂直ではなく斜め方向の配置面に状態検出手段(音響センサ等)を配置することもできる。さらに、配管の周方向に沿って配置される限り、平面上ではなくランダムに状態検出手段(音響センサ等)を配置してもよい。
【0061】
なお、以上に述べた各実施形態を任意に組み合わせて他の実施形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1:ドレン量モニタリングシステム 3:制御部 8:モニター 10:配管
10a:配管内底面 11:蒸気 12:ドレン
20、21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24b、25a、25b、26:音響センサ
30:移送方向 30a:配置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10