(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169626
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ワイヤソー及びワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20231122BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20231122BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20231122BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20231122BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B24B27/06 D
B24B49/14
B28D5/04 C
B28D7/04
H01L21/304 611W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080858
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 健司
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】大矢 純
(72)【発明者】
【氏名】吉村 浩幸
【テーマコード(参考)】
3C034
3C069
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB91
3C034CA30
3C034CB20
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB03
3C069BC02
3C069CA04
3C069CB01
3C069CB03
3C069EA02
3C158AA05
3C158AA12
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC01
3C158AC02
3C158BA07
3C158BB04
3C158BC01
3C158CB01
3C158CB03
3C158DA03
3C158DA15
5F057AA02
5F057BA01
5F057BB03
5F057CA02
5F057EB24
5F057GA04
5F057GA07
5F057GB03
5F057GB30
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】加工精度に優れたワイヤソー及びワーク加工方法を提供する。
【解決手段】一対のワイヤガイド2,2間に巻回されたワイヤ3によって、回転軸の延びる方向に並ぶワイヤ列と、ワイヤガイド間へ向かってワークWを進退可能に保持し、ワイヤ列へワークを押し当てるワーク保持部5と、ワーク保持部を支持するフレーム20と、を備え、フレームは、温度の変化により弾性変形可能な第1支持部21及び第2支持部22を有し、第1支持部は、ワイヤ列の並び方向におけるワーク保持部の中間部よりも一方側に配置され、第2支持部は、ワイヤ列の並び方向における第1支持部よりも他方側に配置され、第1支持部及び第2支持部が、互いに独立して形成される温調通路31,32をそれぞれ有し、温調通路へ供給される温調媒体によって温度変化し、ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが互いに平行な回転軸を有し、該回転軸を中心に回転駆動される円柱状の一対のワイヤガイドと、
前記一対のワイヤガイド間に巻回されたワイヤによって形成され、前記回転軸の延びる方向に並ぶワイヤ列と、
前記ワイヤガイド間へ向かってワークを進退可能に保持し、前記ワイヤ列へ前記ワークを押し当てるワーク保持部と、
前記ワーク保持部を支持するフレームと、を備え、
前記フレームは、温度の変化により弾性変形可能な第1支持部及び第2支持部を有し、前記第1支持部は、前記ワイヤ列の並び方向における前記ワーク保持部の中間部よりも一方側に配置され、前記第2支持部は、前記ワイヤ列の並び方向における前記第1支持部よりも他方側に配置され、
前記第1支持部及び前記第2支持部が、互いに独立して形成される温調通路をそれぞれ有し、前記温調通路へ供給される温調媒体によって温度変化することで前記ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形可能に構成されることを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
前記第1支持部は、前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より一方側に一方側第1支持部及び前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より他方側に他方側第1支持部を有し、
前記第2支持部は、前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より一方側に一方側第2支持部及び前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より他方側に他方側第2支持部を有し、
前記一方側第1支持部、前記他方側第1支持部、前記一方側第2支持部及び前記他方側第2支持部が、互いに独立して形成される前記温調通路をそれぞれ有し、前記温調通路へ供給される前記温調媒体によって温度変化することで前記ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
【請求項3】
前記ワーク保持部は、前記ワークの加工中に前記ワーク保持部の傾き変位を検知する傾斜センサと、
前記傾斜センサが検知した変位量に基づいて、前記第1支持部及び前記第2支持部へそれぞれ供給する前記温調媒体の温度又は流量を調整し、前記ワイヤ列の並び方向に対する前記ワーク保持部の前記傾き変位を抑制するように前記第1支持部及び前記第2支持部の変形量をそれぞれ制御する制御装置と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤソー。
【請求項4】
前記フレームは、前記ワイヤ列の並び方向における前記第1支持部よりも他方側に、前記第2支持部と前記ワイヤガイドを回転駆動するモータとを有し、
前記第1支持部は、前記第2支持部よりも大きな線膨張係数を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤソー。
【請求項5】
それぞれ互いに平行な回転軸を有し、該回転軸を中心に回転駆動される円柱状の一対のワイヤガイドと、前記一対のワイヤガイド間に巻回されたワイヤによって形成され、前記回転軸の延びる方向に並ぶワイヤ列と、前記ワイヤガイド間へ向かってワークを進退可能に保持し、前記ワイヤ列へ前記ワークを押し当てるワーク保持部と、前記ワイヤ列の並び方向における前記ワーク保持部の中間部よりも一方側に第1支持部及び前記ワイヤ列の並び方向における第1支持部よりも他方側に第2支持部を有し前記ワーク保持部を支持するフレームと、前記ワーク保持部に設置された傾斜センサと、前記第1支持部及び前記第2支持部にそれぞれ互いに独立して形成された温調通路へ温調媒体を供給する制御装置と、を備えるワイヤソーを準備し、
前記ワークの加工中、前記傾斜センサが前記ワーク保持部の傾き変位を検知し、
前記ワーク保持部が検知した変位量に基づいて、前記制御装置が前記第1支持部及び前記第2支持部へそれぞれ供給する前記温調媒体の温度又は流量を制御し、
前記温調媒体の制御による温度の変化によって、前記ワイヤ列の並び方向における前記ワーク保持部の傾き変位を抑制するように、前記第1支持部及び前記第2支持部が、前記ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形することを特徴とするワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤソー及びワーク加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンインゴット等の被加工物(以下、ワークと称する)を、スライス状に切断加工する装置として、ワイヤソーが知られている。ワイヤソーでは、一方側のボビンから繰り出されたワイヤが、複数のワイヤガイドの周囲に巻回されてワイヤ列を形成し、他方側のボビンに巻き取られる。ワイヤは高速駆動され、ワイヤ列においてワークを複数枚の工作物へ切断する。
【0003】
工作物として、半導体基板の材料となるウエハ等を切り出す場合は、厚さやソリ(平坦度)等の品質指標があり、高精度な加工が求められる。しかしながら、加工負荷、加工熱、ワイヤソー本体の稼働時の発熱等の要因で、ワイヤガイド及びワークを支持するフレームが変位することにより、ワイヤとワークとの間に相対的な変位差が生じ、切り出された工作物にうねりやソリが生じるという問題があった。
【0004】
従来、このような問題を解決するために、例えば特許文献1では、ワークを支持するフレームの温度を変化させ、フレームをワイヤ列の並び方向と平行な方向に弾性変形させることによりワークとガイドローラとの相対変位をワイヤ列の並び方向に変化させて、ワークの切断形状を制御することが開示されている。また、特許文献2には、ワイヤを巻回させる溝付きローラの軸中に通す冷却水の温度制御により、溝付きローラの軸方向の変位量を制御することでインゴットの切断軌跡を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-114280号公報
【特許文献2】特開2008-213110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工作物のうねりやソリの要因は、ワイヤ列の並び方向と平行な方向(溝付きローラの軸方向)の変位だけではなく、ワイヤに対するワークの傾きの変位を含む三次元的な変位である。そのため、特許文献1や特許文献2のように、フレームをワイヤ列の並び方向と平行な方向に変位させるだけでは、加工精度の向上に限界がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワイヤに対するワークの傾きを抑制し、加工精度に優れたワイヤソー及びワーク加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、ワイヤ列の並び方向における一方側の第1支持部と、他方側の第2支持部をそれぞれ独立して変形可能とすることで、ワークの傾き変位を抑制するようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
それぞれが互いに平行な回転軸を有し、該回転軸を中心に回転駆動される円柱状の一対のワイヤガイドと、
前記一対のワイヤガイド間に巻回されたワイヤによって形成され、前記回転軸の延びる方向に並ぶワイヤ列と、
前記ワイヤガイド間へ向かってワークを進退可能に保持し、前記ワイヤ列へ前記ワークを押し当てるワーク保持部と、
前記ワーク保持部を支持するフレームと、を備え、
前記フレームは、温度の変化により弾性変形可能な第1支持部及び第2支持部を有し、前記第1支持部は、前記ワイヤ列の並び方向における前記ワーク保持部の中間部よりも一方側に配置され、前記第2支持部は、前記ワイヤ列の並び方向における前記第1支持部よりも他方側に配置され、
前記第1支持部及び前記第2支持部が、互いに独立して形成される温調通路をそれぞれ有し、前記温調通路へ供給される温調媒体によって温度変化することで前記ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、温度の変化により弾性変形可能な第1支持部と第2支持部を、ワイヤ並び方向の一方側と他方側とに配置し、第1支持部と第2支持部それぞれの温度を制御してワークの進退方向に変形させることで、ワイヤに対するワークのワイヤ並び方向の傾きを補正することが可能となる。これにより、ワイヤに対するワークの傾きの変位を小さくして加工を行い、うねりやソリの小さい工作物を得ることが可能となり、加工精度に優れる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
前記第1支持部は、前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より一方側に一方側第1支持部及び前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より他方側に他方側第1支持部を有し、
前記第2支持部は、前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より一方側に一方側第2支持部及び前記ワイヤの軸方向における前記ワーク保持部の中間部より他方側に他方側第2支持部を有し、
前記一方側第1支持部、前記他方側第1支持部、前記一方側第2支持部及び前記他方側第2支持部が、互いに独立して形成される前記温調通路をそれぞれ有し、前記温調通路へ供給される前記温調媒体によって温度変化することで、前記ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形可能に構成されることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、ワイヤ並び方向の両側及びワイヤ軸方向の両側で、ワーク保持部の外周4か所に、温度変化によって弾性変形可能な支持部を配置することで、例えば前後左右のワークの傾きをより精密に制御することが可能となり、加工精度をさらに高めることができる。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記ワーク保持部は、前記ワークの加工中に前記ワーク保持部の傾き変位を検知する傾斜センサと、
前記傾斜センサが検知した変位量に基づいて、前記第1支持部及び前記第2支持部へそれぞれ供給する前記温調媒体の温度又は流量を調整し、前記ワイヤ列の並び方向に対する前記ワーク保持部の前記傾き変位を抑制するように前記第1支持部及び前記第2支持部の変形量をそれぞれ制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
ワークの長さや加工速度によって工作物のうねりの状態は異なるが、上記の構成によると、加工を行いながら実際のワークの傾きに基づいて第1支持部及び第2支持部の変形量がそれぞれ制御されるため、ワーク形状や加工条件に拠らず加工精度を向上できる。
【0015】
第4の発明では、第1又は第2の発明において、
前記フレームは、前記ワイヤ列の並び方向における前記第1支持部よりも他方側に、前記第2支持部と前記ワイヤガイドを回転駆動するモータとを有し、
前記第1支持部は、前記第2支持部よりも大きな線膨張係数を有することを特徴とする。
【0016】
上記の構成によると、フレームのうち、ワイヤソーの筐体部分を構成する第2支持部よりも第1支持部の方がワイヤとワークとの相対変位に影響を与えやすいため、第1支持部の線膨張係数を第2支持部よりも大きくすることで、第2支持部よりも第1支持部を容易に変位可能とし、効率的に加工精度を高めることが可能となる。
【0017】
第5の発明は、ワーク加工方法であって、
それぞれ互いに平行な回転軸を有し、該回転軸を中心に回転駆動される円柱状の一対のワイヤガイドと、前記一対のワイヤガイド間に巻回されたワイヤによって形成され、前記回転軸の延びる方向に並ぶワイヤ列と、前記ワイヤガイド間へ向かってワークを進退可能に保持し、前記ワイヤ列へ前記ワークを押し当てるワーク保持部と、前記ワイヤ列の並び方向における前記ワーク保持部の中間部よりも一方側に第1支持部及び前記ワイヤ列の並び方向における第1支持部よりも他方側に第2支持部を有し前記ワーク保持部を支持するフレームと、前記ワーク保持部に設置された傾斜センサと、前記第1支持部及び前記第2支持部にそれぞれ互いに独立して形成された温調通路へ温調媒体を供給する制御装置と、を備えるワイヤソーを準備し、
前記ワークの加工中、前記傾斜センサが前記ワーク保持部の傾き変位を検知し、
前記ワーク保持部が検知した変位量に基づいて、前記制御装置が前記第1支持部及び前記第2支持部へそれぞれ供給する前記温調媒体の温度又は流量を制御し、
前記温調媒体の制御による温度の変化によって、前記ワイヤ列の並び方向における前記ワーク保持部の傾き変位を抑制するように、前記第1支持部及び前記第2支持部が、前記ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形することを特徴とする。
【0018】
上記の構成によると、温度の変化により弾性変形可能な第1支持部と第2支持部を、ワイヤ並び方向の一方側と他方側とに配置し、第1支持部と第2支持部それぞれの温度を制御してワークの進退方向に変形させることで、ワイヤに対するワークのワイヤ並び方向の傾きを抑制することが可能となる。これにより、ワイヤに対するワークの傾きの変位を小さくして加工を行い、うねりやソリの小さい工作物を得ることが可能となり、加工精度に優れる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ワイヤに対するワークの傾きの変位を抑制することにより、加工精度及び加工効率に優れたワイヤソー及びそれを用いたワーク加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイヤソーの概略側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るワイヤソーの概略正面図である。
【
図3】ワイヤガイドの温度変化と変位量を示すグラフである。
【
図4】ワークにおけるワイヤ軌跡を説明するための模式図である。
【
図5】ワークにおけるワイヤ軌跡を説明するための模式図である。
【
図6】ワイヤソーの運転時間とワーク保持部の傾きを示すグラフである。
【
図7】ワークにおけるワイヤ軌跡を説明するための模式図である。
【
図8】ワークにおけるワイヤ軌跡を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るワイヤソーの構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るワーク加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るワイヤソー1を側面視した概略図であり、
図2は、概略正面図である。このワイヤソー1は、例えば半導体装置や太陽電池等の製造に用いられるシリコンインゴット等の被加工物(以下、ワークWという)を、複数箇所で同時に切断し、薄板状ウエハ等の工作物を得るために使用される。
【0023】
(ワイヤソーの全体構成)
図1及び
図2に示すように、ワイヤソー1は、それぞれが互いに平行な回転軸を有し、回転軸を中心に回転駆動される円柱状の一対のワイヤガイド2,2と、一対のワイヤガイド2,2間に巻回されたワイヤ3とを備える。本実施形態において、ワイヤガイド2,2の回転軸はワイヤソー1の前後方向に延び、ワイヤガイド2,2は左右に配置されている。ワイヤ3は、このような左右のワイヤガイド2,2に巻回されてワイヤ列を形成する。ワイヤ列の並び方向は、ワイヤガイド2の回転軸の延びる方向と平行な方向であり、本実施形態における前後方向である。
【0024】
ワイヤガイド2,2は、ベース10の上に立設するフレーム20に保持され、モータ4によって回転駆動される。ワイヤ3は、ワイヤガイド2,2の回転軸と略直交する方向に高速走行可能である。ワイヤソー1は、平行に並べられた一対のワイヤガイド2,2間に螺旋状に巻回されたワイヤ3を走行させながら、ワイヤ列にワークWを押し当てて、ワークWを切断加工するように構成されている。
【0025】
フレーム20は、ワイヤガイド2,2の前後及び上部を覆う。フレーム20は、ワイヤガイド2,2と、ワイヤガイド2,2間においてワークWを保持するワーク保持部5とを支持する。フレーム20は、温度の変化により弾性変形可能な第1支持部21及び第2支持部22を有する。第1支持部21は、ワイヤ列の並び方向におけるワーク保持部5の中間部よりも一方側に配置され、第2支持部22は、ワイヤ列の並び方向における第1支持部21よりも他方側に配置される。フレーム20は、ワイヤ列の並び方向における第1支持部21よりも他方側に、第2支持部22とワイヤガイド2,2を回転駆動するモータ4とを有する。本実施形態において、第1支持部21は、ワーク保持部5の前後方向中間部よりも前側(一方側)に配置され、第2支持部22は、第1支持部21よりも後側(他方側)に配置される。
【0026】
ワイヤガイド2,2の前方には、ベース10の上に支持壁23が立設している。支持壁23は、ワイヤガイド2,2の軸心の前端部を支持する。支持壁23は、正面視して左右のワイヤガイド2,2が隠れるほどの大きさの直方体である。支持壁23の上端部は、ワイヤガイド2,2の上端よりも少し高い位置である。第1支持部21は、支持壁23の上部に立設している。第1支持部21は、上下方向に延びている。
【0027】
第1支持部21は、ワイヤ3の軸方向におけるワーク保持部5の中間部より一方側に一方側第1支持部21R及びワイヤ3の軸方向におけるワーク保持部5の中間部より他方側に他方側第1支持部21Lを有する。本実施形態において、ワイヤ3の軸方向とは左右方向であり、ワーク保持部5を間に挟み、左右に離間して、右側第1支持部21Rと左側第1支持部21Lが設けられている。
【0028】
第2支持部22は、第1支持部21よりも後側に立設している。第2支持部22は、ワイヤガイド2,2の後方に立設する筐体部22aと、筐体部22aの上部から前方に向かって延伸するワーク支持部22bとを有する。筐体部22aは、ワイヤガイド2,2の軸心の後端部及びワイヤガイド2,2を駆動するモータ4を支持する。ワーク支持部22bは、ワーク保持部5を介してワークWを支持する。
【0029】
第2支持部22は、ワイヤ3の軸方向におけるワーク保持部5の中間部より一方側に一方側第2支持部(不図示)及びワイヤ3の軸方向におけるワーク保持部5の中間部より他方側に他方側第2支持部(不図示)を有する。図示は省略したが、本実施形態において、ワーク保持部5を間に挟み、左右に離間して、右側第2支持部と左側第2支持部が設けられている。
【0030】
(フレームの温調通路)
第1支持部21及び第2支持部22は、互いに独立して形成される温調通路31,32をそれぞれ有する。第1支持部21及び第2支持部22は、温調通路31,32へ供給される温調媒体によって温度変化することで、ワークの進退方向にそれぞれ弾性変形可能に構成されている。
【0031】
具体的には、第1支持部21に形成される第1温調通路31は、上下方向に延びて形成される。ワイヤソー1は、第1温調通路31へ供給される温調媒体の温度を昇降する第1温調器41R,41L(
図9参照)を有する。第1温調通路31へ供給される温調媒体は第1温調器41R,41Lを介して循環する。第1支持部21は、第1温調通路31へ供給される温調媒体の温度が昇降されることで、上下方向に伸縮可能である。
【0032】
第1支持部21は、右側第1支持部21Rと左側第1支持部21Lのそれぞれに独立した第1温調通路31R,31Lが形成されていてもよい。右側の第1温調通路31Rに供給される温調媒体は、右側第1温調器41Rによって温度を昇降される。右側第1温調器41Rによって、右側第1支持部21Rは独立して上下方向に伸縮可能である。左側の第1温調通路31Lに供給される温調媒体は、左側第1温調器41Lによって温度を昇降される。左側第1温調器41Lによって、左側第1支持部21Lは独立して上下方向に伸縮可能である。
【0033】
第2支持部22の第2温調通路32は、筐体部22a内において上下方向に延び、筐体部22aの上部からワーク支持部22b内へ連続して前方へ延びている。ワーク支持部22b内において、第2温調通路32は、前後方向2箇所において上下方向に延び、その間で前後方向に延びている。ワイヤソー1は、第2温調通路32へ供給される温調媒体の温度を昇降する第2温調器を有する。第2温調通路32へ供給される温調媒体は第2温調器を介して循環する。第2支持部22は、第2温調通路32へ供給される温調媒体の温度が昇降されることで、前後方向に変位可能、かつ、上下方向に伸縮可能である。
【0034】
第2支持部22は、右側第2支持部と左側第2支持部にそれぞれ独立した第2温調通路32が形成されていてもよい。右側の第2温調通路32に供給される温調媒体は、右側第2温調器42R(
図9参照)によって温度を昇降される。右側第2温調器42Rによって、右側第2支持部は独立して上下方向に伸縮可能である。左側の第2温調通路32に供給される温調媒体は、左側第2温調器42L(
図9参照)によって温度を昇降される。左側第2温調器42Lによって、左側第2支持部は独立して上下方向に伸縮可能である。
【0035】
第1支持部21は、第2支持部22よりも大きな線膨張係数を有する材料から構成される。本実施形態において、第2支持部22は、第1支持部21の線膨張係数の1/2以下の線膨張係数を有する低熱膨張合金から構成される。例えば、第2支持部22の線膨張係数は、10μm/K以下である。フレーム20のうち、ワイヤソー1の筐体部分を構成する第2支持部22よりも第1支持部21の方がワイヤ3とワークWとの相対変位に影響を与えやすいため、第1支持部21の線膨張係数を大きくすることで、第2支持部22よりも第1支持部21を容易に変位可能とし、効率的に加工精度を高めることが可能となる。
【0036】
(ワイヤガイドの温調通路)
ワイヤガイド2,2は、筐体部22a及び支持壁23によって両持ち支持される軸心に対して、回転可能な外筒が取り付けられて構成されている。ワイヤガイド2,2は、軸心内部に温調媒体を供給可能なガイド温調通路33が形成されている。ガイド温調通路33は、軸心に沿って回転軸の延伸方向に延びるように形成されている。
【0037】
ガイド温調通路33は、支持壁23及び筐体部22aの内部を通り、温調媒体の温度を昇降可能なガイド温調器を介して循環する。ワイヤガイド2,2は、ガイド温調通路33へ供給される温調媒体の温度が昇降されることで、前後方向に弾性変位可能である。
【0038】
左右のワイヤガイド2,2にはそれぞれ独立したガイド温調通路33R、33Lが形成されていてもよい。右側のワイヤガイド2内のガイド温調通路33Rに供給される温調媒体は、右側ガイド温調器43R(
図9参照)によって温度を昇降され、左側のワイヤガイド2内のガイド温調通路33Lに供給される温調媒体は、左側ガイド温調器43L(
図9参照)によって温度を昇降される。
【0039】
ワイヤガイド2,2の間において、ワイヤ列の上方に、ワーク支持部22bが位置する。ワーク支持部22bには、ワーク保持部5が設けてある。
【0040】
ワーク保持部5は、ワイヤガイド2,2間へ向かってワークWを進退可能に保持し、ワイヤ列へワークWを押し当てる。ワーク保持部5は、第2支持部22のワーク支持部22bからワイヤガイド2,2間へ向かって延びている。
【0041】
ワーク保持部5の下端部には、スライスベース6が固定されている。スライスベース6の下部には、例えば半導体インゴット等のワークWが着脱可能に取り付けられる。ワーク保持部5は、図示しない駆動モータによって、ワイヤガイド2,2間へ向かう方向、すなわち、本実施形態では上下方向へワークWを移動させ、ワイヤ列へワークWを押し当てる。
【0042】
ワーク保持部5には、ワーク保持部5の傾き変位を検出する傾斜センサ51が設置されている。傾斜センサ51は、ワーク保持部5の傾斜角度を検出することで、ワイヤ3に対してワークWがどれほど傾いているかを検出可能とする。ワイヤ3に対するワークWの傾きとは、ワイヤ列の並び方向の傾きであり、つまり本実施形態においては、前後方向の傾きである。傾斜センサ51は、前後方向だけでなく、前後左右の傾きを検出可能なものであってもよい。
【0043】
(ワイヤガイドの変位)
ワイヤガイド2,2の外筒、又は、ワイヤガイド2,2の外筒及び軸心は、回転熱又は軸心内部の温調媒体によって回転軸の延伸方向(前後方向)に膨張及び収縮する。
図3は、ワイヤガイドの温度変化と変位量を示すグラフであり、横軸にワイヤガイド温度、縦軸にワイヤガイドの軸心の前後方向の伸び量(変位)を示す。ワイヤガイド2,2の軸心は、
図3に示すように、加工中に加工熱や回転熱等によって外筒や軸心の温度が上がるにつれて、回転軸の延伸方向に伸長する。
【0044】
図4及び
図5は、ワークにおけるワイヤ軌跡を説明するための模式図である。
図4は、ワーク保持部5が下降して、ワークWの下端がワイヤ3に接触した切込み量0の加工開始状態を示す。
図5は、ワイヤガイドの変位のみを考慮した場合の切込量A時点の状態を示す。なお、
図4,5及び後述する
図7,8では、説明の便宜のため、前後方向に並ぶワイヤ列のうち1列のみのワイヤ3の移動を示している。加工開始後、切込量A時点では、ワイヤガイド2,2がワイヤ3は加工熱や回転熱等によって回転軸の延伸方向に伸長することにより、ワークWにおけるワイヤ軌跡3aが前方に向かって湾曲する。このようなワイヤガイド2,2の変位によるワイヤ軌跡3aの湾曲を抑制するために、ワイヤガイド2内のガイド温調通路33に供給される温調媒体の温度が制御される。
【0045】
ワイヤガイド2,2の上方には、ワイヤ3へ砥粒を含んだスラリを供給する加工液供給部(不図示)や、外周に砥粒を保持させたワイヤ3に対して加工液を供給する加工液供給部(不図示)を備えてもよい。ワイヤガイド2,2の変位によるワイヤ軌跡3aの湾曲を抑制するために、スラリの温度を制御してもよい。
【0046】
(フレームの変位)
フレーム20は、加工負荷、加工熱、ワイヤソー1の稼働時の発熱等の要因で、ワイヤ3に対して、ワークWの進退方向(上下方向)や、ワイヤ3の軸方向(左右方向)に傾く。
図6は、ワイヤソーの運転時間とワーク保持部の傾きを示すグラフであり、横軸にワイヤソーの運転時間、縦軸にワーク保持部の傾きを示す。ワイヤソー1の運転が開始されると、稼働時の発熱や加工熱等によりフレーム20が傾くことによって、ワーク保持部5が傾き、ワーク保持部5とともにワークWも傾く。
【0047】
図7は、ワークにおけるワイヤ軌跡を説明するための模式図である。
図7は、フレームの傾きのみを考慮した場合の切込量A時点の状態を示す。加工開始後、切込量A時点では、フレーム20が加工熱や稼働時の装置の発熱等によって前後方向に傾くことで、ワークWにおけるワイヤ軌跡3aが前方に向かって湾曲する。このようなフレーム20の傾き変位によるワイヤ軌跡3aの湾曲を抑制するために、第1支持部21及び第2支持部22内に形成された第1温調通路31及び第2温調通路32に供給される温調媒体の温度が制御される。
【0048】
図5及び
図7では、ワイヤガイド2,2の変位とフレーム20の傾きによるワイヤ軌跡への影響をそれぞれ示したが、実際の加工では、ワイヤガイド2,2の変位及びフレーム20の傾きの両方がワイヤ軌跡に影響する。
【0049】
図8は、加工完了時の状態であり、ワイヤガイド2,2の変位及びフレーム20の傾きの両方の影響によるワイヤ軌跡3aを示す。ワイヤガイド2,2の変位のみならず、フレーム20の傾きが加工精度に影響するため、うねりやソリの小さい工作物を得るためには、ワイヤガイド2,2の変位及びフレーム20の傾き変位の両方を抑制することが必要となる。
【0050】
(ワイヤソーの温調制御)
図9は本発明の実施形態に係るワイヤソーの温調制御の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、ワイヤソー1は、傾斜センサ51及びワイヤガイド変位センサ52を備える。
【0051】
傾斜センサ51は、加工中のワイヤ3に対するワーク保持部5の傾きを検出し、検出した傾きの変位量を判定部53へ出力する。
【0052】
ワイヤガイド変位センサ52は、フレーム20に設置されている。ワイヤガイド変位センサ52は、加工中のワイヤガイド2,2の回転軸の延伸方向の変位を検出し、検出した変位量を判定部53へ出力する。
【0053】
判定部53は、傾斜センサ51及びワイヤガイド変位センサ52から出力された変位量を入力し、その変位量が所定の値よりも大きいか否かを判定する。変位量の所定の値は、ワイヤガイド2,2の軸方向の変位量及びワーク保持部5の傾き変位量のそれぞれに対して予め定められている。判定部53は、ワイヤガイド変位センサ52から受信したワイヤガイド2,2の軸方向の変位量が所定の値を超えていると判定した場合、及び、傾斜センサ51から受信したワーク保持部5の傾きの変位量が所定の値を超えていると判定した場合、温調制御が必要であると判定し、制御装置54へその変位量を出力する。
【0054】
制御装置54は、傾斜センサ51が及びワイヤガイド変位センサ52が検知した変位量に基づいて、第1支持部21、第2支持部22、ワイヤガイド2,2へそれぞれ供給する温調媒体の温度又は流量を調整する。制御装置54は、ワイヤ列の並び方向に対するワーク保持部5の傾き変位又はワイヤガイド2,2の回転軸の延伸方向の変位を抑制するように第1支持部21、第2支持部22又はワイヤガイド2,2の変形量をそれぞれ制御する。
【0055】
具体的には、制御装置54は、判定部53から送信された変位量が入力されると、その変位の種類と変位量に基づいて、その変位を抑制するために、第1温調制御部61、第2温調制御部62、ガイド温調制御部63及びスラリ温調制御部64のいずれの制御がどの程度必要であるかを推定する。制御装置54は、第1温調制御部61、第2温調制御部62、ガイド温調制御部63及びスラリ温調制御部64の少なくとも1つへ、それぞれ推定された変位指数を出力する。
【0056】
第1温調制御部61、第2温調制御部62、ガイド温調制御部63及びスラリ温調制御部64は、制御装置54から入力された変位指数に基づいて、制御を必要とする温調器を駆動させる。
【0057】
第1温調制御部61は、左右の第1温調通路31内に供給する温調媒体の温度をそれぞれ昇降させる右側第1温調器41R及び左側第1温調器41Lを制御する。
【0058】
第2温調制御部62は、左右の第2温調通路32内に供給する温調媒体の温度をそれぞれ昇降させる右側第2温調器42R及び左側第2温調器42Lを制御する。
【0059】
ガイド温調制御部63は、左右のガイド温調通路33内に供給する温調媒体の温度をそれぞれ昇降させる右側ガイド温調器43R及び左側ガイド温調器43Lを制御する。
【0060】
スラリ温調制御部64は、ワイヤ3へ供給するスラリの温度を昇降させるスラリ温調器44を制御する。
【0061】
次いで、ワイヤソー1の温調制御の具体的な流れについて、
図10に基づいて説明する。
【0062】
まず、ワイヤソー1を駆動し、ワークWの加工を開始する(ステップS01)と、ワイヤ巻取装置(不図示)が回転駆動されることにより、ワイヤ3が走行開始する(ステップS02)。また、昇降モータ(不図示)によってワーク保持部5が駆動され、下降することにより、ワークWへの切込みが開始される(ステップS03)。
【0063】
ワークWの加工中、ステップS04において、傾斜センサ51は、ワーク保持部5の傾斜角度を検出し、判定部53は、その傾斜角度が予め設定された目標値であるか否かを判定する。
【0064】
判定部53の判定結果が、YESの場合は次のステップに進むが、NOの場合は、制御装置54が第1温調制御部61及び第2温調制御部62へ制御信号を出力する。第1温調制御部61及び第2温調制御部62は、制御信号に基づいて、前後左右の温調器41R,41L,42R,42Lのうち、傾斜角度を目標値へ戻すために必要な温調器を駆動させ、温調媒体の温度を上昇又は下降させる(ステップS05)。
【0065】
ステップS05において、温調が制御されることにより第1支持部21及び第2支持部22は、それぞれ独立して上下方向に伸縮し、ワーク保持部5の傾きが補正される。補正されたワーク保持部5の傾斜角度が目標値となるまでステップS04とステップS05が繰り返される。
【0066】
また、ワークWの加工中、ステップS06において、ワイヤガイド変位センサ52は、ワイヤガイド2,2の回転軸の延伸方向の伸び量を検出し、判定部53は、その伸び量が予め設定された目標値であるか否かを判定する。
【0067】
判定部53の判定結果が、YESの場合は次のステップに進むが、NOの場合は、制御装置54がガイド温調制御部63及びスラリ温調制御部64へ制御信号を出力する。ガイド温調制御部63及びスラリ温調制御部64は、制御信号に基づいて、左右のガイド温調器43R,43L及びスラリ温調器44のうち、傾斜角度を目標値へ戻すために必要な温調器を駆動させ、温調媒体の温度を上昇又は下降させる(ステップS07)。
【0068】
ステップS07において、温調が制御されることによりワイヤガイド2,2の軸心は、回転軸の伸長方向に伸縮し、伸び量が補正される。補正された延び量が目標値となるまでステップS06とステップS07が繰り返される。
【0069】
傾斜センサ51及びワイヤガイド変位センサ52によって、ワイヤガイド2,2の軸心の伸び量と、ワーク保持部5の傾きが監視されつつ、加工完了の位置までワーク保持部5は下降を継続し、ワークWの切込みを行う(ステップS08、ステップS09)。
【0070】
ワーク保持部5が完了位置に到達したと判定されたとき、ワーク保持部5は切込みを完了し(ステップS10)、ワイヤ3の走行が停止され(ステップS11)、加工が終了される(ステップS12)。
【0071】
なお、上記温調制御の流れは一例であり、これに限られない。例えば、ステップS04とステップS06はこの順である必要はなく、逆でもよいし、同時に進行しても良い。
【0072】
(発明の作用効果)
このようなワイヤソー1によれば、温度の変化により弾性変形可能な第1支持部21と第2支持部22を、第1支持部21を前側及び第2支持部22をその後側に配置し、第1支持部21と第2支持部22それぞれの温度を独立して制御することで、ワイヤ3に対するワークWの前後方向の傾きを抑制することが可能となる。これにより、ワイヤ3に対するワークWの傾きの変位を小さくして加工を行い、うねりやソリの小さい工作物を得ることが可能となり、加工精度に優れる。
【0073】
また、ワイヤ並び方向の両側及びワイヤ軸方向の両側、つまり、本実施形態において前後左右に、右側第1支持部21R、左側第1支持部21L、右側第2支持部及び左側第2支持部を設け、それぞれの支持部に独立した温調通路が形成されることで、前後左右のワークWの傾きをより精密に制御することが可能となり、加工精度をより高めることができる。
【0074】
また、ワークWの加工中、傾斜センサ51及びワイヤガイド変位センサ52によって、ワイヤガイド2,2の軸心の伸び量とワーク保持部5の傾きを監視しながら温調を制御し、ワイヤガイド2,2の軸心の伸び量とワーク保持部5の傾きを補正するため、ワーク形状や加工条件に拠らず工作物のソリやうねりを制御可能であり、加工精度を更に高めることができる。
【0075】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0076】
1 ワイヤソー
2 ワイヤガイド
3 ワイヤ
4 モータ
5 ワーク保持部
10 ベース
20 フレーム
21 第1支持部
22 第2支持部
31 第1温調通路
32 第2温調通路
33 ガイド温調通路
41R 右側第1温調器
41L 左側第1温調器
42R 右側第2温調器
42L 左側第2温調器
43R 右側ガイド温調器
43L 左側ガイド温調器
44 スラリ温調器
51 傾斜センサ
52 ワイヤガイド変位センサ
W ワーク