(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169649
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】外装部材及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20231122BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20231122BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H02G3/04 068
F16L57/00 A
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080895
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河口 智哉
(72)【発明者】
【氏名】前田 悠作
(72)【発明者】
【氏名】林野 耕平
【テーマコード(参考)】
3H024
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB01
3H024AC03
5G309AA10
5G309AA11
5G357DA03
5G357DA05
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD10
(57)【要約】
【課題】放熱性を向上できる外装部材及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス(10)は、電線部材(20)と、電線部材が貫通する筒状の外装部材(30)とを有する。外装部材は、外装部材の軸方向の全長にわたって平坦に形成された内周面(30A)を有する。外装部材の内周寸法は、電線部材の外周寸法以下に設定されている。外装部材の内周面は、電線部材の外周面に密着可能である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線部材が貫通する筒状の外装部材であって、
前記外装部材の軸方向の全長にわたって平坦に形成された内周面を有し、
前記外装部材の内周寸法は、前記電線部材の外周寸法以下に設定されており、
前記内周面は、前記電線部材の外周面に密着可能である外装部材。
【請求項2】
前記外装部材の内周寸法は、前記電線部材の外周寸法よりも小さい請求項1に記載の外装部材。
【請求項3】
前記外装部材の径方向において前記内周面と反対側に設けられた外周面を有し、
前記外装部材の前記外周面は、前記外装部材の軸方向に沿って山部と谷部とが並んで設けられる凹凸部を有している請求項1に記載の外装部材。
【請求項4】
前記山部は中実構造に形成されており、
前記谷部は中実構造に形成されており、
前記山部の厚みは、前記谷部の厚みよりも厚く形成されている請求項3に記載の外装部材。
【請求項5】
前記凹凸部は、複数の前記山部と複数の前記谷部とを有し、
前記凹凸部は、前記外装部材の軸方向に沿って前記山部と前記谷部とが1つずつ交互に連なって設けられる構造を有し、
前記複数の山部の各々は、前記外装部材の周方向に沿って1周する環構造に形成されており、
前記複数の谷部の各々は、前記外装部材の周方向に沿って1周する環構造に形成されている請求項3に記載の外装部材。
【請求項6】
前記内周面には、前記内周面と前記電線部材の前記外周面との摩擦係数を低減する摩擦係数低減部材が設けられている請求項1に記載の外装部材。
【請求項7】
前記外装部材は、油を含有した含油ゴムにより構成されている請求項6に記載の外装部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の外装部材と、
前記外装部材を貫通する前記電線部材と、を有するワイヤハーネス。
【請求項9】
前記電線部材は、複数の電線と、前記複数の電線の外周を一括して包囲する電磁シールド部材とを有し、
前記電磁シールド部材の内周面は、前記複数の電線の外周面に密着可能であり、
前記外装部材の前記内周面は、前記電磁シールド部材の外周面に密着可能である請求項8に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
複数の前記外装部材を有し、
前記複数の外装部材は、前記電線部材の長さ方向に沿って並んで設けられている請求項8に記載のワイヤハーネス。
【請求項11】
前記複数の外装部材を連結する連結部材を更に有し、
前記複数の外装部材の各々は、前記外装部材の軸方向の端部に設けられた突出部を有し、
前記突出部は、前記外装部材の径方向外側に突出するように形成されており、
前記連結部材は、前記複数の外装部材の前記突出部同士を連結するように設けられている請求項10に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外装部材及びワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスは、高電圧のバッテリやインバータ等の電気機器同士を電気的に接続する電線を備えている。この種のワイヤハーネスにおいては、電線の保護を目的として、電線の外周が筒状の外装部材によって覆われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようにハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に用いられる電気機器としては高電圧のバッテリやインバータ等があるため、電線に例えば数百アンペアの大電流が流れる場合がある。電線に大電流が流れると、電線の発熱量が増大して電線の温度が上昇しやすくなる。このため、電線及び外装部材を備えたワイヤハーネスにおける放熱性の向上が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、放熱性を向上できる外装部材及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の外装部材は、電線部材が貫通する筒状の外装部材であって、前記外装部材の軸方向の全長にわたって平坦に形成された内周面を有し、前記外装部材の内周寸法は、前記電線部材の外周寸法以下に設定されており、前記内周面は、前記電線部材の外周面に密着可能である。
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、前記外装部材と、前記外装部材を貫通する前記電線部材と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の外装部材及びワイヤハーネスによれば、放熱性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図(
図5における3-3線断面図)である。
【
図4】
図4は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略分解断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図(
図3における5-5線断面図)である。
【
図6】
図6は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、変更例の外装部材を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、変更例の外装部材を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、変更例の外装部材を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、変更例の外装部材を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、変更例の外装部材を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示の外装部材は、電線部材が貫通する筒状の外装部材であって、前記外装部材の軸方向の全長にわたって平坦に形成された内周面を有し、前記外装部材の内周寸法は、前記電線部材の外周寸法以下に設定されており、前記内周面は、前記電線部材の外周面に密着可能である。
【0011】
この構成によれば、外装部材の軸方向の全長にわたって、外装部材の内周面を電線部材の外周面に密着させることができる。これにより、外装部材の内周面と電線部材の外周面との間の隙間、つまり空気層を小さくできる。この結果、外装部材の内周面と電線部材の外周面との間の断熱層を減らすことができるため、外装部材の内周面と電線部材の外周面との間の熱抵抗を低くできる。このため、電線部材で発生した熱が外装部材の内部に籠もることが抑制され、電線部材で発生した熱を外装部材の外周面から効率良く大気中に放出することができる。これにより、電線部材で発生した熱を効率良く放熱させることができ、外装部材による放熱性を向上させることができる。
【0012】
ここで、本明細書における「A部材の内周寸法」とは、A部材の内周面をA部材の周方向に沿って一回りした長さをいう。また、本明細書における「A部材の外周寸法」とは、A部材の外周面をA部材の周方向に沿って一回りした長さをいう。
【0013】
[2]上記[1]において、前記外装部材の内周寸法は、前記電線部材の外周寸法よりも小さいことが好ましい。
この構成によれば、外装部材の内部に電線部材が挿入された際に、電線部材が、外装部材の内周に締め代を持って外装部材の内部に挿入される。これにより、外装部材の内周面と電線部材の外周面とを締め代を有する状態で接触させることができる。このため、外装部材の内周面を電線部材の外周面に好適に密着させることができる。この結果、外装部材の内周面と電線部材の外周面との間の熱抵抗を低くできるため、電線部材で発生した熱が外装部材の内部に籠もることを好適に抑制できる。
【0014】
[3]上記[1]又は[2]において、前記外装部材の径方向において前記内周面と反対側に設けられた外周面を有し、前記外装部材の前記外周面は、前記外装部材の軸方向に沿って山部と谷部とが並んで設けられる凹凸部を有していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、外装部材の外周面に凹凸部が設けられるため、外装部材の外周面の表面積を増大させることができる。これにより、外装部材による放熱性を向上させることができる。
【0016】
[4]上記[3]において、前記山部は中実構造に形成されており、前記谷部は中実構造に形成されており、前記山部の厚みは、前記谷部の厚みよりも厚く形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、山部及び谷部が中実構造に形成されるため、山部及び谷部の内部に空気層が形成されることを抑制できる。このため、山部及び谷部が中空構造に形成される場合に比べて、山部及び谷部の内部における空気層(つまり、断熱層)を減らすことができ、外装部材による放熱性を向上させることができる。
【0018】
[5]上記[3]又は[4]において、前記凹凸部は、複数の前記山部と複数の前記谷部とを有し、前記凹凸部は、前記外装部材の軸方向に沿って前記山部と前記谷部とが1つずつ交互に連なって設けられる構造を有し、前記複数の山部の各々は、前記外装部材の周方向に沿って1周する環構造に形成されており、前記複数の谷部の各々は、前記外装部材の周方向に沿って1周する環構造に形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、複数の山部の各々が環構造に形成されるとともに、複数の谷部の各々が環構造に形成される。ここで、本明細書における「環」は、全体がつながって切れ目がなく輪になっている構造、つまり始点と終点とが一致する無端状の構造を意味する。また、本明細書における「環」は、外縁形状が円形の円環、外縁形状が長円形の長円環、外縁形状が楕円形の環、外縁形状が多角形の環を含み、外縁形状が直線又は曲線で結ばれる任意の閉じた形状からなるものを言う。このため、複数の山部は互いに独立して形成されるとともに、複数の谷部は互いに独立して形成される。したがって、外装部材を屈曲させる際に、複数の山部の各々を個別に伸び縮みさせることができる。この結果、外装部材の屈曲性を好適に向上させることができる。
【0020】
[6]上記[1]から[5]のいずれか1つにおいて、前記内周面には、前記内周面と前記電線部材の前記外周面との摩擦係数を低減する摩擦係数低減部材が設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、外装部材の内周面に摩擦係数低減部材が設けられるため、外装部材の内周面と電線部材の外周面との摩擦係数を好適に低減することができる。これにより、外装部材の内部に電線部材を挿入する際に、外装部材の内周面に対して電線部材が滑りやすくなる。このため、外装部材の内部に電線部材を挿入する際の作業性を向上できる。
【0022】
[7]上記[6]において、前記外装部材は、油を含有した含油ゴムにより構成されていることが好ましい。
この構成によれば、外装部材が含油ゴムにより構成されるため、外装部材の表面に油が染み出して外装部材の表面に油膜が形成される。この油膜により、外装部材の内周面と電線部材の外周面との摩擦係数を好適に低減することができる。これにより、外装部材の内部に電線部材を挿入する際に、外装部材の内周面に対して電線部材が滑りやすくなる。このため、外装部材の内部に電線部材を挿入する際の作業性を向上できる。
【0023】
[8]本開示のワイヤハーネスは、上記[1]から[7]のいずれか1つに記載の外装部材と、前記外装部材を貫通する前記電線部材と、を有する。
この構成によれば、上記の外装部材と同様の作用効果を奏することができる。これにより、外装部材及び電線部材を有するワイヤハーネスにおける放熱性を向上させることができる。
【0024】
[9]上記[8]において、前記電線部材は、複数の電線と、前記複数の電線の外周を一括して包囲する電磁シールド部材とを有し、前記電磁シールド部材の内周面は、前記複数の電線の外周面に密着可能であり、前記外装部材の前記内周面は、前記電磁シールド部材の外周面に密着可能であることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、電磁シールド部材の内周面が複数の電線の外周面に密着され、その電磁シールド部材の外周面に外装部材の内周面が密着される。これにより、外装部材の内周面と電線の外周面との間の空気層を小さくできる。この結果、外装部材の内周面と電線の外周面との間の断熱層を減らすことができるため、外装部材の内周面と電線の外周面との間の熱抵抗を低くできる。このため、電線で発生した熱が外装部材の内部に籠もることが抑制され、電線で発生した熱を、電磁シールド部材を通じて外装部材の外周面から効率良く大気中に放出することができる。これにより、電線で発生した熱を効率良く放熱させることができ、ワイヤハーネスにおける放熱性を向上させることができる。
【0026】
[10]上記[8]又は[9]において、複数の前記外装部材を有し、前記複数の外装部材は、前記電線部材の長さ方向に沿って並んで設けられていることが好ましい。
この構成によれば、複数の外装部材により電線部材の外周が包囲される。このため、外装部材の数を変更することによって、外装部材により包囲される電線部材の領域を容易に変更することができる。
【0027】
[11]上記[10]において、前記複数の外装部材を連結する連結部材を更に有し、前記複数の外装部材の各々は、前記外装部材の軸方向の端部に設けられた突出部を有し、前記突出部は、前記外装部材の径方向外側に突出するように形成されており、前記連結部材は、前記複数の外装部材の前記突出部同士を連結するように設けられていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、複数の外装部材が連結部材により連結されて一体化される。このため、例えば製造性の観点から外装部材を長尺に形成することが困難な場合であっても、複数の外装部材を連結することによって、電線部材の外周を包囲することのできる長さを容易に延ばすことができる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の外装部材及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」、「直交」や「垂直」は、厳密に平行、直交や垂直の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行、直交や垂直の場合も含まれる。本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両Vに搭載されるものである。ワイヤハーネス10は、2個以上の車載機器同士を電気的に接続する。車載機器は、車両Vに搭載された電気機器である。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの前後方向に延びるように長尺状に形成されている。ワイヤハーネス10は、例えば、ワイヤハーネス10の長さ方向の中間部分が車両Vの床下などの車室外を通るように車両Vに配索される。
【0031】
インバータ11は、例えば、車両走行の動力源となる図示しない車輪駆動用のモータと接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0032】
ワイヤハーネス10は、電線部材20を有している。ワイヤハーネス10は、例えば、電線部材20の両端部に取り付けられた一対のコネクタC1,C2と、電線部材20の外周を囲う筒状の外装部材30とを有している。電線部材20の長さ方向の一端部はコネクタC1を介してインバータ11と接続されるとともに、電線部材20の長さ方向の他端部はコネクタC2を介して高圧バッテリ12と接続されている。
【0033】
図2に示すように、外装部材30は、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材30の内部空間には、電線部材20が収容されている。外装部材30は、例えば、電線部材20の長さ方向の中間部分を内部に収容している。換言すると、外装部材30の内部には、電線部材20が貫通している。外装部材30は、例えば、内部に収容した電線部材20を飛翔物や水滴から保護する機能を有している。
【0034】
(電線部材20の構成)
図2及び
図3に示すように、電線部材20は、例えば、1本又は複数本の電線21を有している。本実施形態の電線部材20は、2本の電線21を有している。電線部材20は、例えば、複数本の電線21の外周を一括して包囲する編組部材25を有している。
【0035】
各電線21は、導電性を有する芯線22と、芯線22の外周を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆23とを有する被覆電線である。各電線21は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。各電線21は、例えば、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよい。本実施形態の各電線21は、ノンシールド電線である。
【0036】
芯線22としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線や単一の導体からなる単芯線などを用いることができる。単芯線としては、例えば、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。芯線22としては、撚線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線22の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0037】
絶縁被覆23は、例えば、芯線22の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆23は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
各電線21の長さ方向と直交する平面によって電線21を切断した断面形状、つまり各電線21の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。各電線21の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状、扁平形状等に形成することができる。
図3に示すように、本実施形態の各電線21の横断面形状は、円形状に形成されている。なお、本明細書において、「扁平形状」には、長方形、長円形や楕円形などが含まれる。本明細書における「長方形」は、長辺と短辺とを有するものであり、正方形を除いたものである。
【0038】
図3及び
図4に示すように、編組部材25は、例えば、全体として複数の電線21の外周を一括して包囲する筒状をなしている。編組部材25は、例えば、複数の電線21の外周を周方向全周にわたって包囲している。編組部材25の内周面は、例えば、複数の電線21の外周面に接触している。編組部材25は、例えば、編組部材25の内周面が複数の電線21の外周面に密着するように形成されている。編組部材25は、例えば、可撓性を有している。編組部材25としては、例えば、複数の金属素線が編成された編組線や、金属素線と樹脂素線とを組み合わせて編成された編組線を用いることができる。金属素線の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。図示は省略するが、編組部材25の長さ方向の両端部は、例えば、コネクタC1,C2(
図1参照)などにおいてアース接続されている。このような編組部材25は、電磁シールド部材として機能する。
【0039】
編組部材25の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。編組部材25の内周面及び外周面の横断面形状は、例えば、円形状、多角形状、扁平形状等に形成することができる。本実施形態の編組部材25の内周面及び外周面の横断面形状は、長円形状に形成されている。ここで、本明細書における「長円形」は、2つの略等しい長さの平行線と2つの半円形からなる角丸長方形状である。本明細書における「長円形」は、平行線が延びる長辺と、2つの平行線が並ぶ方向に延びる短辺とを有している。本実施形態では、2本の電線21が、長円形状をなす編組部材25の長辺に沿って並んで設けられている。本実施形態の2本の電線21は、互いに外周面の一部同士が接触するように並んで設けられている。そして、本実施形態の編組部材25は、編組部材25の内周面のうち各半円形をなす部分が各電線21の外周面に密着するように形成されている。
【0040】
(外装部材30の構成)
外装部材30は、電線部材20の外周を周方向全周にわたって包囲する筒状をなしている。外装部材30は、複数の電線21の外周を周方向全周にわたって包囲している。外装部材30は、編組部材25の外周を周方向全周にわたって包囲している。外装部材30は、例えば、外装部材30の周方向全周にわたって連続して周壁が形成されている。外装部材30は、例えば、外装部材30の周方向全周にわたって密閉されている。
【0041】
外装部材30は、内周面30Aと、外装部材30の径方向において内周面30Aと反対側に設けられた外周面30Bとを有している。内周面30Aは、外装部材30の内部に挿入された電線部材20の外周面と対向している。
【0042】
図5に示すように、外装部材30の内周面30Aは、外装部材30の軸方向の全長にわたって平坦に形成されている。すなわち、外装部材30の内周面30Aは、外装部材30の軸方向の全長にわたって、凹凸の無い平坦な面に形成されている。換言すると、外装部材30の内周面30Aは、外装部材30の軸方向の全長にわたってフラットに形成されている。外装部材30の内部空間の横断面積は、外装部材30の軸方向の全長にわたって一定に形成されている。
【0043】
図3に示すように、外装部材30の内周面30Aは、外装部材30の周方向全周にわたって平坦に形成されている。すなわち、外装部材30の内周面30Aは、外装部材30の周方向全周にわたって、凹凸の無い平坦な面に形成されている。
【0044】
外装部材30の内周面30Aは、電線部材20の外周面に接触している。外装部材30は、例えば、外装部材30の内周面30Aが電線部材20の外周面の大部分に密着するように形成されている。外装部材30は、例えば、外装部材30の周方向全周にわたって、外装部材30の内周面30Aが電線部材20の外周面に密着するように形成されている。本実施形態の外装部材30は、外装部材30の周方向全周にわたって、外装部材30の内周面30Aが編組部材25の外周面に密着するように形成されている。
【0045】
外装部材30の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。外装部材30の内周面30Aの横断面形状は、例えば、電線部材20の外周面、本実施形態では編組部材25の外周面と同様の形状に形成することができる。本実施形態の外装部材30の内周面30Aの横断面形状は、長円形状に形成されている。
【0046】
図4に示すように、外装部材30の内周寸法は、電線部材20(本実施形態では、編組部材25)の外周寸法以下に設定されている。例えば、電線部材20が内部に挿入される前における外装部材30の内周寸法は、電線部材20の外周寸法以下に設定されている。例えば、電線部材20が内部に挿入される前における外装部材30の内周面30Aにおける長辺の長さL1は、電線部材20の外周面における長辺の長さL2以下に設定されている(L1≦L2)。例えば、電線部材20が内部に挿入される前における外装部材30の内周面30Aにおける短辺の長さL3は、電線部材20の外周面における短辺の長さL4以下に設定されている(L3≦L4)。本実施形態では、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との間に締め代が設けられている。すなわち、本実施形態では、電線部材20が内部に挿入される前における外装部材30の内周寸法が、電線部材20の外周寸法よりも小さく設定されている。本実施形態の外装部材30の長さL1は、電線部材20の長さL2よりも小さく設定されている(L1<L2)。本実施形態の外装部材30の長さL3は、電線部材20の長さL4よりも小さく設定されている(L3<L4)。
【0047】
このように長さL1,L2,L3,L4が設定されることにより、電線部材20が、外装部材30の内周に締め代を持って外装部材30の内部に挿入される。これにより、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面とが締め代を有する状態で接触する。すなわち、外装部材30の内部に収容された電線部材20は、外装部材30の内周面30Aによって外装部材30の径方向内側に常に押圧された状態で保持される。このため、外装部材30の内周面30Aを電線部材20の外周面に好適に密着させることができる。これにより、外装部材30と電線部材20との間の隙間、つまり空気層を小さくできる。この結果、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との間の空気層、つまり断熱層を減らすことができるため、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との間の熱抵抗を低くできる。
【0048】
外装部材30は、可撓性を有している。外装部材30は、例えば、電線部材20よりも可撓性に優れている。外装部材30は、例えば、電線部材20よりも柔軟性に優れている。外装部材30は、例えば、電線部材20よりも高い屈曲性を有している。外装部材30は、例えば、外装部材30の内部に挿入された電線部材20を曲げる際に、その電線部材20の曲げを阻害しない程度に柔軟性に優れている。
【0049】
外装部材30の材料としては、空気層よりも熱伝導率の高い材料を用いることができる。外装部材30の材料としては、例えば、ゴムやエラストマ等の弾性材料を用いることができる。外装部材30の材料としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、アクリルゴムやシリコーンゴムなどのゴム材料を用いることができる。
【0050】
図5に示すように、外装部材30の外周面30Bは、外装部材30の軸方向に沿って山部33と山部33よりも外形の小さい谷部34とが並んで設けられる凹凸部32を有している。凹凸部32は、複数の山部33と複数の谷部34とを有している。凹凸部32は、例えば、外装部材30の軸方向に沿って複数の山部33と複数の谷部34とが1つずつ交互に連なって設けられた凹凸構造に形成されている。山部33及び谷部34の各々は、例えば、外装部材30の周方向に沿って1周する環構造に形成されている。本実施形態の山部33及び谷部34の各々は、長円環構造に形成されている。山部33及び谷部34の各々は、外装部材30の周方向全周にわたって周壁が継ぎ目なく連続して延びるように形成されている。各山部33と各谷部34とは、互いに独立して形成されている。複数の山部33の各々は、互いに独立して形成されている。すなわち、各山部33は、他の山部33と繋がらずに個別に形成されている。複数の谷部34の各々は、互いに独立して形成されている。すなわち、各谷部34は、他の谷部34と繋がらずに個別に形成されている。
【0051】
各山部33の外形は、各谷部34の外形よりも大きい。各山部33の外周寸法は、各谷部34の外周寸法よりも大きい。各山部33の内周寸法は、各谷部34の内周寸法と等しい。
【0052】
各山部33は、例えば、谷部34の底部から、電線部材20から離れる方向、つまり外装部材30の径方向外側に向かって突出している。各谷部34は、例えば、山部33の頂部から、電線部材20に近づく方向、つまり外装部材30の径方向内側に向かって凹んでいる。凹凸部32の断面形状は、任意の形状とすることができる。例えば、外装部材30の軸方向と平行な平面によって外装部材30を切断した縦断面における凹凸部32の形状、つまり凹凸部32の縦断面形状は、任意の形状とすることができる。
【0053】
図6に示すように、本実施形態の凹凸部32の縦断面形状は、波形状に形成されている。各山部33及び各谷部34の外周面の縦断面形状は、例えば、曲面に形成されている。各山部33及び各谷部34の外周面の縦断面形状は、例えば、放物線や楕円などの二次曲線状に湾曲した曲面や円弧状に湾曲した曲面に形成されている。本実施形態の各山部33の外周面の縦断面形状は、放物線状に湾曲した曲面に形成されている。本実施形態の各谷部34の外周面の縦断面形状は、放物線状に湾曲した曲面に形成されている。各山部33の頂部における曲率半径は、各谷部34の底部における曲率半径と等しくてもよく、各谷部34の底部における曲率半径と異なっていてもよい。本実施形態では、各山部33の頂部における曲率半径が、各谷部34の底部における曲率半径よりも大きくなるように設定されている。
【0054】
凹凸部32は、例えば、中実構造に形成されている。各谷部34は、例えば、中実構造に形成されている。各谷部34は、例えば、谷部34の内周面30Aから谷部34の外周面までが中実構造に形成されている。各山部33は、例えば、中実構造に形成されている。各山部33は、山部33の内周面30Aから山部33の外周面までが中実構造に形成されている。例えば、各谷部34の底部から外装部材30の径方向外側に突出する部分が中実構造に形成されている。各山部33の厚み(肉厚)は、例えば、各谷部34の厚み(肉厚)よりも厚く形成されている。各山部33の内周面30Aから各山部33の頂部の外周面までの厚みT1は、例えば、各谷部34の内周面30Aから各谷部34の底部の外周面までの厚みT2よりも厚く形成されている。
【0055】
図2に示すように、外装部材30の外周面30Bは、外装部材30の軸方向の両端部に設けられた一対の突出部35と、各突出部35と凹凸部32との間に設けられた平坦部36とを有している。
【0056】
図6に示すように、各平坦部36は、凹凸の無い平坦な面に形成されている。すなわち、各平坦部36は、フラットに形成されている。各平坦部36の外周寸法は、例えば、各山部33の外周寸法よりも小さい。各平坦部36の外周寸法は、例えば、各谷部34の底部における外周寸法と等しい。各平坦部36の厚みは、例えば、厚みT2と等しい。
【0057】
各突出部35は、平坦部36の外周面から外装部材30の径方向外側に向かって突出している。各突出部35の縦断面形状は、任意の形状とすることができる。本実施形態の各突出部35の縦断面形状は、矩形状に形成されている。各突出部35は、例えば、中実構造に形成されている。各突出部35の厚み(肉厚)は、例えば、各平坦部36の厚みよりも厚く形成されている。各突出部35の厚みは、例えば、各谷部34の厚みよりも厚く形成されている。各突出部35の厚みは、例えば、各山部33の厚みよりも厚く形成されている。例えば、各突出部35の内周面30Aから各突出部35の頂部までの厚みT3は、厚みT1よりも厚く形成されている。換言すると、各谷部34の底部からの各突出部35の突出量は、各谷部34の底部からの各山部33の突出量よりも大きい。すなわち、各突出部35は、山部33の頂部よりも外装部材30の径方向外側に突出するように形成されている。
【0058】
外装部材30は、例えば、単一層により形成されている。凹凸部32における山部33及び谷部34は、例えば、単一層により形成されている。例えば、凹凸部32における中実構造は、単一層により形成されている。凹凸部32と平坦部36と突出部35とは、例えば、単一層により形成されている。外装部材30は、例えば、凹凸部32と平坦部36と突出部35とが連続して一体に形成された単一部品である。
【0059】
ここで、外装部材30の内部に電線部材20を挿入する際には、例えば、拡径機(図示略)によって拡径された外装部材30の内部空間に電線部材20が挿入される。そして、拡径機による拡径が解除されると、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面とが締め代を有する状態で接触する。これにより、外装部材30の内周面30Aを電線部材20の外周面に好適に密着させることができる。
【0060】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)外装部材30は、外装部材30の軸方向の全長にわたって平坦に形成された内周面30Aを有する。外装部材30の内周寸法は、電線部材20の外周寸法以下に設定されている。外装部材30の内周面30Aは、電線部材20の外周面に密着可能に形成されている。
【0061】
この構成によれば、外装部材30の軸方向の全長にわたって、外装部材30の内周面30Aを電線部材20の外周面に密着させることができる。これにより、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との間の隙間、つまり空気層を小さくできる。この結果、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との間の断熱層を減らすことができるため、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との間の熱抵抗を低くできる。このため、電線部材20で発生した熱が外装部材30の内部に籠もることが抑制され、電線部材20で発生した熱を外装部材30の外周面30Bから効率良く大気中に放出することができる。これにより、電線部材20で発生した熱を効率良く放熱させることができ、外装部材30による放熱性を向上させることができる。ひいては、外装部材30及び電線部材20を有するワイヤハーネス10における放熱性を向上させることができる。
【0062】
(2)また、外装部材30の内周寸法が電線部材20の外周寸法以下に設定されているため、外装部材30が大型化することを好適に抑制できる。
(3)さらに、外装部材30の内周寸法を、電線部材20の外周寸法よりも小さく設定した。この構成によれば、外装部材30の内部に電線部材20が挿入された際に、電線部材20が、外装部材30の内周に締め代を持って外装部材30の内部に挿入される。これにより、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面とを締め代を有する状態で接触させることができる。このため、外装部材30の内周面30Aを電線部材20の外周面に好適に密着させることができる。この結果、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との間の熱抵抗を低くできるため、電線部材20で発生した熱が外装部材30の内部に籠もることを好適に抑制できる。
【0063】
(4)外装部材30の外周面30Bは、外装部材30の軸方向に沿って山部33と谷部34とが並んで設けられる凹凸部32を有する。この構成によれば、外装部材30の外周面30Bに凹凸部32が設けられるため、外装部材30の外周面30Bの表面積を増大させることができる。これにより、外装部材30による放熱性を向上させることができる。また、外装部材30の外周面30Bに山部33が設けられるため、外装部材30の外周面30Bがフラットに形成される場合に比べて、他の部材との接触等に起因する外装部材30の損傷や摩耗を低減することができる。
【0064】
(5)山部33及び谷部34が中実構造に形成される。このため、山部33及び谷部34の内部に空気層が形成されることを抑制できる。このため、山部33及び谷部34が中空構造に形成される場合に比べて、山部33及び谷部34の内部における空気層(つまり、断熱層)を減らすことができ、外装部材30による放熱性を向上させることができる。
【0065】
(6)複数の山部33の各々が環構造に形成されるとともに、複数の谷部34の各々が環構造に形成される。このため、複数の山部33は互いに独立して形成されるとともに、複数の谷部34は互いに独立して形成される。したがって、外装部材30を屈曲させる際に、複数の山部33の各々を個別に伸び縮みさせることができる。この結果、外装部材30の屈曲性を好適に向上させることができる。
【0066】
(7)外装部材30は、電線部材20よりも高い屈曲性を有している。このため、外装部材30の内部に挿入された電線部材20を曲げる際に、外装部材30の存在に起因して電線部材20の曲げが阻害されることを好適に抑制できる。
【0067】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・
図7に示すように、外装部材30における突出部35を省略してもよい。
・上記実施形態の外装部材30における平坦部36を省略してもよい。
・上記実施形態の外装部材30における凹凸部32の形状は適宜変更することができる。
【0069】
・
図8に示すように、各谷部34の底部に平面部40を設けるようにしてもよい。平面部40は、例えば、平面状に形成されている。平面部40は、例えば、外装部材30の軸方向に延びるように形成されている。平面部40は、例えば、外装部材30の周方向に平行に広がるように形成されている。平面部40は、例えば、外装部材30の軸方向に隣接する2つの山部33の間に設けられている。各山部33は、平面部40から外装部材30の径方向外側に突出するように形成されている。
【0070】
・
図9に示すように、凹凸部32の縦断面形状を、三角波状に形成してもよい。本変更例における各山部33及び各谷部34の外周面の縦断面形状は、三角形状に形成されている。本変更例における各山部33の頂部の縦断面形状は、針状に尖った形状に形成されている。本変更例における各谷部34の底部の縦断面形状は、針状に尖った形状に形成されている。
【0071】
本変更例においても、凹凸部32は中実構造に形成されている。各山部33は、中実構造に形成されている。各山部33は、三角形状の断面を有している。各山部33の厚みは、各谷部34の厚みよりも厚く形成されている。
【0072】
・
図10に示すように、各山部33の外周面の縦断面形状を、台形状に形成してもよい。本変更例における各山部33の頂部は、山側平面部41を有している。山側平面部41は、例えば、平面状に形成されている。山側平面部41は、例えば、外装部材30の軸方向に延びるように形成されている。山側平面部41は、例えば、外装部材30の周方向に平行に広がるように形成されている。本変更例における各山部33の外周面は、例えば、谷部34の底部と山側平面部41との間に設けられた突出部42,43を有している。各突出部42,43は、谷部34の底部から山側平面部41に向かって外装部材30の径方向外側に突出するように形成されている。突出部42は、例えば、谷部34の底部から山側平面部41に向かうに連れて、外装部材30の軸方向において突出部43に近づくように傾斜している。突出部42は、山側平面部41と交差する平面上に広がるように形成されている。突出部43は、例えば、谷部34の底部から山側平面部41に向かうに連れて、外装部材30の軸方向において突出部42に近づくように傾斜している。突出部43は、山側平面部41と交差する平面上に広がるように形成されている。
【0073】
また、各谷部34の外周面の縦断面形状を、台形状に形成してもよい。本変更例における各谷部34の底部は、谷側平面部44を有している。谷側平面部44は、例えば、平面状に形成されている。谷側平面部44は、例えば、外装部材30の軸方向に延びるように形成されている。谷側平面部44は、例えば、外装部材30の周方向に平行に広がるように形成されている。谷側平面部44は、例えば、山側平面部41と平行に広がるように形成されている。谷側平面部44の外装部材30の軸方向に沿う長さ寸法は、例えば、山側平面部41の外装部材30の軸方向に沿う長さ寸法と同じであってもよいし、山側平面部41の長さ寸法と異なっていてもよい。本変更例では、谷側平面部44の長さ寸法が、山側平面部41の長さ寸法よりも短く設定されている。
【0074】
本変更例においても、凹凸部32は中実構造に形成されている。各山部33は、中実構造に形成されている。各山部33は、台形状の断面を有している。各山部33の厚みは、各谷部34の厚みよりも厚く形成されている。
【0075】
・
図11に示すように、凹凸部32の縦断面形状を、矩形波状に形成してもよい。本変更例における各山部33及び各谷部34の外周面の縦断面形状は、矩形状に形成されている。本変更例における各山部33の頂部は、山側平面部41を有している。本変更例における各谷部34の底部は、谷側平面部44を有している。本変更例では、谷側平面部44の長さ寸法が、山側平面部41の長さ寸法と同じ長さに設定されている。
【0076】
本変更例における各山部33の外周面は、例えば、谷側平面部44と山側平面部41との間に設けられた一対の突出部45を有している。各突出部45は、谷側平面部44から山側平面部41に向かって外装部材30の径方向外側に突出するように形成されている。各突出部45は、例えば、外装部材30の縦断面において、山側平面部41及び谷側平面部44に対して垂直に延びるように形成されている。各突出部45は、山側平面部41及び谷側平面部44と直交する平面上に広がるように形成されている。一対の突出部45は、互いに平行に広がるように形成されている。
【0077】
本変更例においても、凹凸部32は中実構造に形成されている。各山部33は、中実構造に形成されている。各山部33は、矩形状の断面を有している。各山部33の厚みは、各谷部34の厚みよりも厚く形成されている。
【0078】
・上記実施形態及び上記各変更例では、凹凸部32を中実構造に形成したが、凹凸部32を中空構造に形成してもよい。例えば、山部33を中空構造に形成してもよい。例えば、山部33において、各谷部34の底部から外装部材30の径方向外側に突出する部分を中空構造に形成してもよい。
【0079】
・上記実施形態の外装部材30における凹凸部32を省略してもよい。
・上記実施形態では、外装部材30の内周寸法を電線部材20の外周寸法よりも小さくしたが、外装部材30の内周寸法を電線部材20の外周寸法と等しくしてもよい。
【0080】
・
図12に示すように、ワイヤハーネス10は、複数の外装部材30を有していてもよい。複数の外装部材30は、例えば、電線部材20の長さ方向に沿って並んで設けられる。このとき、複数の外装部材30を、電線部材20の長さ方向において、互いに離れるように設けてもよいし、互いに接触するように設けてもよい。
【0081】
この構成によれば、複数の外装部材30により電線部材20の外周が包囲される。このため、外装部材30の数を変更することによって、外装部材30により包囲される電線部材20の領域を容易に変更することができる。したがって、外装部材30による被覆が必要な電線部材20の領域の長さが変更された場合であっても、その変更に対して外装部材30の数を変更することによって容易に対応することができる。
【0082】
・
図12に示すように、複数の外装部材30を連結するようにしてもよい。例えば、複数の外装部材30を、連結部材50により連結するようにしてもよい。連結部材50は、例えば、複数の外装部材30の突出部35同士を連結するように設けられている。連結部材50は、例えば、2つの突出部35を、電線部材20の長さ方向の両側から挟み込むように形成されている。連結部材50は、例えば、環構造に形成されている。連結部材50は、例えば、突出部35の外周を周方向全周にわたって包囲する環構造に形成されている。連結部材50は、例えば、縦断面形状がU字状に形成されている。
【0083】
連結部材50は、例えば、基部51と、基部51の両側縁に設けられた一対の係合部52とを有している。連結部材50は、例えば、基部51と一対の係合部52とが連続して一体に形成された単一部品である。基部51は、例えば、外装部材30の長さ方向に沿って延びるとともに、外装部材30の周方向に沿って延びている。基部51は、例えば、連結部材50の周方向全周にわたって延びるように形成されている。基部51は、例えば、2つの突出部35を外装部材30の径方向外側から覆うように設けられている。基部51は、例えば、突出部35に対向する対向面51Aを有している。対向面51Aは、例えば、2つの突出部35の外周面に接触するように設けられている。一対の係合部52は、基部51の対向面51Aのうち連結部材50の軸方向の両端部に設けられている。各係合部52は、対向面51Aから外装部材30の径方向内側に向かって突出するように形成されている。各係合部52は、例えば、連結部材50の周方向全周にわたって延びるように形成されている。各係合部52は、外装部材30の軸方向において、突出部35と係合するように設けられている。なお、連結部材50の材料としては、例えば、ゴムやエラストマ等の弾性材料や合成樹脂などを用いることができる。
【0084】
この構成によれば、複数の外装部材30が連結部材50により連結されて一体化される。このため、例えば製造性の観点等から外装部材30を長尺に形成することが困難な場合であっても、複数の外装部材30を連結することによって、電線部材20の外周を包囲することのできる長さを容易に延ばすことができる。
【0085】
また、複数の外装部材30の各々に突出部35が設けられ、その突出部35が山部33の頂部よりも径方向外側に突出するように形成されている。そして、連結部材50には、外装部材30の軸方向において突出部35と係合する係合部52が設けられている。この構成によれば、突出部35と係合部52とが係合する領域を容易に広く形成できるため、連結部材50による複数の外装部材30の連結を安定して行うことができる。
【0086】
・
図12に示した変更例において、連結部材50の構造は適宜変更することができる。例えば、連結部材50は環構造を有していなくてもよい。この場合には、突出部35の周方向の一部のみに連結部材50が設けられる。例えば、連結部材50を、外装部材30の軸方向の端面同士を接着する接着剤に具体化してもよい。
【0087】
・
図13に示すように、外装部材30の内周面30Aに、その内周面30Aと電線部材20の外周面との摩擦係数を低減する摩擦係数低減部材60を設けるようにしてもよい。摩擦係数低減部材60は、例えば、外装部材30の内周面30A全面を被覆するように形成されている。摩擦係数低減部材60は、例えば、外装部材30の内周面30Aを周方向全周にわたって被覆するように形成されている。摩擦係数低減部材60は、例えば、外装部材30の内周面30Aを外装部材30の軸方向の全長にわたって被覆するように形成されている。本変更例の摩擦係数低減部材60は、外装部材30の表面全面を被覆するように形成されている。すなわち、本変更例の摩擦係数低減部材60は、外装部材30の内周面30A全面と、外装部材30の外周面30B全面と、外装部材30の軸方向の端面全面とを被覆するように形成されている。なお、摩擦係数低減部材60としては、例えば、油膜やフッ素樹脂コーティングを用いることができる。摩擦係数低減部材60として油膜を用いる場合には、例えば、外装部材30の表面に潤滑油を塗布することによって摩擦係数低減部材60を形成することができる。また、摩擦係数低減部材60としてフッ素樹脂コーティングを用いる場合には、例えば、外装部材30の表面にフッ素樹脂を塗布することによって摩擦係数低減部材60を形成することができる。
【0088】
本変更例では、外装部材30を、油を含有した含油ゴムによって構成するようにした。含油ゴムによって構成される外装部材30では、その外装部材30の表面に油が染み出して外装部材30の表面に油膜61が形成され、その油膜61によって摩擦係数低減部材60が形成される。
【0089】
この構成によれば、外装部材30の内周面30Aに摩擦係数低減部材60が設けられるため、外装部材30の内周面30Aと電線部材20の外周面との摩擦係数を好適に低減することができる。これにより、外装部材30の内部に電線部材20を挿入する際に、外装部材30の内周面30Aに対して電線部材20が滑りやすくなる。このため、外装部材30の内部に電線部材20を挿入する際の作業性を向上できる。また、外装部材30が含油ゴムによって構成されるため、外装部材30の表面に油が染み出して外装部材30の表面に油膜61が形成される。この油膜61により摩擦係数低減部材60が形成されるため、外装部材30の内周面30A全面を被覆する摩擦係数低減部材60を好適に形成することができる。さらに、外装部材30の表面に潤滑油やフッ素樹脂を塗布する工程を省略できるため、外装部材30の製造コストを低減できる。
【0090】
・
図13に示した変更例では、摩擦係数低減部材60を、外装部材30の表面全面を被覆するように形成したが、これに限定されない。例えば、摩擦係数低減部材60を、外装部材30の表面のうち内周面30Aのみを被覆するように形成してもよい。この場合であっても、摩擦係数低減部材60を、内周面30A全面を被覆するように形成することが好ましい。
【0091】
・上記実施形態及び上記各変更例の電線部材20では、電磁シールド部材を編組部材25に具体化したが、これに限定されない。例えば、電線部材20における電磁シールド部材を金属箔に具体化してもよい。
【0092】
・
図14に示すように、電線部材20における編組部材25を省略してもよい。この場合の電線部材20は、電線21のみにより構成される。この場合の外装部材30の内周面30Aは、電線21の外周面に密着可能に形成されている。
【0093】
・上記実施形態及び上記各変更例において、電線部材20が有する電線21の本数は、特に限定されるものではなく、車両Vの仕様に応じて電線21の本数は変更することができる。例えば、電線部材20が有する電線21の本数は、1本であってもよく、3本以上であってもよい。例えば、電線部材20が有する電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。
【0094】
・上記実施形態では、電線21を高圧電線に具体化したが、電線21を低圧電線に具体化してもよい。
・車両Vにおけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両Vの構成に応じて適宜変更してもよい。
【0095】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10によって接続される車載機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続するワイヤハーネスに採用してもよい。すなわち、車両Vに搭載される車載機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【0096】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
10 ワイヤハーネス
11 インバータ
12 高圧バッテリ
20 電線部材
21 電線
22 芯線
23 絶縁被覆
25 編組部材(電磁シールド部材)
30 外装部材
30A 内周面
30B 外周面
32 凹凸部
33 山部
34 谷部
35 突出部
36 平坦部
40 平面部
41 山側平面部
42,43 突出部
44 谷側平面部
45 突出部
50 連結部材
51 基部
51A 対向面
52 係合部
60 摩擦係数低減部材
61 油膜
C1,C2 コネクタ
L1,L2,L3,L4 長さ
T1,T2,T3 厚み
V 車両