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  • -罫書装置 図1
  • -罫書装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169650
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】罫書装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
G01B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080897
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 崇
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062EE01
2F062EE63
2F062FF02
2F062FF12
2F062LL01
(57)【要約】
【課題】層間変形に関わらず、安定して罫書を描ける罫書装置を提供する。
【解決手段】上部構造物12と下部構造物14の間に設けられた免震層16の変位を記録するための罫書装置10であって、前記上部構造物12に対してスライダを一方向にスライドさせるスライド機構18と、前記スライダに設けられ、前記免震層12内で前記一方向に尖った罫書針22と、前記下部構造物14に設けられ、前記罫書針22を前記一方向に挟んで前記罫書針22の両側に当接配置される一対の罫書板24とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物と下部構造物の間に設けられた免震層の変位を記録するための罫書装置であって、
前記上部構造物または前記下部構造物に対してスライダを一方向にスライドさせるスライド機構と、前記スライダに設けられ、前記免震層内で前記一方向に尖った罫書針と、前記下部構造物または前記上部構造物に設けられ、前記罫書針を前記一方向に挟んで前記罫書針の両側に当接配置される一対の罫書板とを備えることを特徴とする罫書装置。
【請求項2】
前記スライダ機構は、前記スライダを水平な一方向にスライドさせるものであり、前記罫書板は、鉛直面からなる罫書面を有することを特徴とする請求項1に記載の罫書装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震層における変位軌跡を記録するための罫書装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、強震動を受けた免震建物の損傷調査には、免震建物の地震応答解析が有効である。罫書による免震層の層間変位の記録は、そのような応答解析の妥当性確認において重要である(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図2は、層間変位を記録する従来の罫書装置の一例である。この図に示すように、罫書装置1は、免震層2の下部構造物3の上面3a(ないしは上部構造物4の下面4a)に固定された鉛直面からなる罫書面5aを有する罫書板5と、上部構造物4の下面4a(ないしは下部構造物3の上面3a)から鉛直方向に延びる束材6と、束材6から罫書面5aに向けて水平に延びる罫書針7と、罫書針7を罫書面5aに押し当て付勢するバネ8とを備えている。この罫書装置1によれば、地震時に罫書針7が罫書面5aに沿って移動して罫書を行うことで、免震層2の鉛直面内の層間変位を記録することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-068751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の罫書装置1では、罫書面5aの法線方向(水平方向)の層間変形で罫書の筆圧が変化し、軌跡の線の太さが安定しないという問題があった。また、罫書面5aの法線方向で罫書針7から離れる方向に大きく層間変形すると、バネ8が伸びきって針圧がなくなり罫書を残せないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、層間変形に関わらず、安定して罫書を描ける罫書装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る罫書装置は、上部構造物と下部構造物の間に設けられた免震層の変位を記録するための罫書装置であって、前記上部構造物または前記下部構造物に対してスライダを一方向にスライドさせるスライド機構と、前記スライダに設けられ、前記免震層内で前記一方向に尖った罫書針と、前記下部構造物または前記上部構造物に設けられ、前記罫書針を前記一方向に挟んで前記罫書針の両側に当接配置される一対の罫書板とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の罫書装置は、上述した発明において、前記スライダ機構は、前記スライダを水平な一方向にスライドさせるものであり、前記罫書板は、鉛直面からなる罫書面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る罫書装置によれば、上部構造物と下部構造物の間に設けられた免震層の変位を記録するための罫書装置であって、前記上部構造物または前記下部構造物に対してスライダを一方向にスライドさせるスライド機構と、前記スライダに設けられ、前記免震層内で前記一方向に尖った罫書針と、前記下部構造物または前記上部構造物に設けられ、前記罫書針を前記一方向に挟んで前記罫書針の両側に当接配置される一対の罫書板とを備えるので、免震層の層間変形に関わらず、安定して罫書を描くことができるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明に係る他の罫書装置によれば、前記スライダ機構は、前記スライダを水平な一方向にスライドさせるものであり、前記罫書板は、鉛直面からなる罫書面を有するので、水平方向の層間変形に関わらず、安定して罫書を描くことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る罫書装置の実施の形態を示す図であり、(1)は正断面図、(2)は側断面図である。
図2図2は、従来の罫書装置の一例を示す図であり、(1)は正断面図、(2)は側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る罫書装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る罫書装置10は、上部構造物12と下部構造物14の間に設けられた免震層16の変位を記録するための装置であり、スライド機構18と、束材20(スライダ)と、罫書針22と、罫書板24とを備える。上部構造物12の下面12Aと下部構造物14の上面14Aは、いずれも水平な面である。
【0014】
スライド機構18は、上部構造物12に対して束材20を水平なX方向(一方向)にスライドさせる機構であり、上部構造物12の下面12Aに沿ってX方向に直線状に固定されたガイドレール26を備える。ガイドレール26は、下方に開口した略C字状断面の凹溝28を有しており、凹溝28には、束材20の上端に形成されたT字状断面の係合部30が嵌まり込んでいる。凹溝28の内面と係合部30の間の隙間には、図示しない複数個の転動体が配置されており、係合部30は、凹溝28の延長方向(X方向)に沿って移動自在である。
【0015】
束材20は、スライド機構18のガイドレール26に対して移動可能に設けられる。この束材20は、ガイドレール26の凹溝28に係合するT字状断面の係合部30(スライダ)と、係合部30から鉛直下方向(Y方向)に延びる棒状の支持部32を有する。支持部32は、その下端において罫書針22を支持する。支持部32の上側のX方向両側には、束材20の曲げを防ぐための補強板20Aが設けられている。補強板20Aは必須ではなく省略可能である。図1(1)の例では、直角三角形状の補強板20Aを支持部32の上側のX方向両側に設けた場合を示しているが、X方向片側にのみ設けてもよい。また、補強板20Aの形状は直角三角形状に限るものではない。
【0016】
罫書針22は、束材20の支持部32の下端に固定された針本体34と、針本体34からX方向両側に尖った罫書用の針部36を有する。
【0017】
罫書板24は、下部構造物14の上面14Aに設けられた基部38から鉛直上方向(Y方向)に延びる板であり、罫書針22をX方向に挟んでX方向に間隔をあけて2枚設けられる。罫書板24は、X方向を法線方向とする鉛直面からなる罫書面24Aを有する。罫書面24Aは、罫書針22の両側の針部36に当接配置される。罫書板24の位置は、当接した針部36に罫書板24からの接触圧が常時作用するように設定することが望ましい。
【0018】
上記の構成によれば、地震時に2枚の罫書板24から受けるX方向の圧力が罫書針22の針圧となるため、免震層16のX方向の層間変形によらず針圧が安定し、罫書針22の軌跡が安定する。したがって、罫書面24Aに安定して罫書を描くことができ、地震時に確実に変位軌跡を記録することができる。罫書面24Aの法線方向(X方向)の層間変形は、束材20がスライド機構18のガイドレール26をX方向に移動することで吸収することができる。
【0019】
上記の罫書装置10を既設の免震層16内に設置する場合には、例えば、以下の手順で施工することができる。
まず、スライド機構18のガイドレール26を上部構造物12の下面12Aに設置する。続いて、束材20の係合部30をガイドレール26の凹溝28に嵌め込み、束材20の支持部30の下端に罫書針22を設置する。罫書針22は、針部36がX方向に向くように配置する。その後、罫書針22を挟んで2枚の罫書板24を設置する。罫書板24は、罫書針22が変位軌跡を安定して描けるように、罫書針22に圧力がかかるような位置に配置する。このようにすれば、上記の罫書装置10を免震層16内に容易に設置することができる。
【0020】
なお、上記の実施の形態においては、スライド機構18が上部構造物12の下面12Aに設置されるとともに、罫書板24が下部構造物14の上面14Aに設置される場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、スライド機構18が下部構造物14の上面14Aに設置されるとともに、罫書板24が上部構造物12の下面12Aに設置される構成であってもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0021】
以上説明したように、本発明に係る罫書装置によれば、上部構造物と下部構造物の間に設けられた免震層の変位を記録するための罫書装置であって、前記上部構造物または前記下部構造物に対してスライダを一方向にスライドさせるスライド機構と、前記スライダに設けられ、前記免震層内で前記一方向に尖った罫書針と、前記下部構造物または前記上部構造物に設けられ、前記罫書針を前記一方向に挟んで前記罫書針の両側に当接配置される一対の罫書板とを備えるので、免震層の層間変形に関わらず、安定して罫書を描くことができる。
【0022】
また、本発明に係る他の罫書装置によれば、前記スライダ機構は、前記スライダを水平な一方向にスライドさせるものであり、前記罫書板は、鉛直面からなる罫書面を有するので、水平方向の層間変形に関わらず、安定して罫書を描くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明に係る罫書装置は、免震層において変位軌跡を記録する罫書装置に有用であり、特に、層間変形に関わらず、安定して罫書を描くのに適している。
【符号の説明】
【0024】
10 罫書装置
12 上部構造物
12A 下面
14 下部構造物
14A 上面
16 免震層
18 スライド機構
20 束材
22 罫書針
24 罫書板
24A 罫書面
26 ガイドレール
28 凹溝
30 係合部(スライダ)
32 支持部
34 針本体
36 針部
38 基部
図1
図2