(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169653
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】内燃機関制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20231122BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20231122BHJP
F02D 41/22 20060101ALI20231122BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20231122BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D43/00 301B
F02D43/00 301H
F02D41/22
F02D29/02 K
F02P5/145 L
F02P5/145 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080900
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】吉廣 光
【テーマコード(参考)】
3G022
3G093
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G022EA08
3G022GA01
3G022GA07
3G022GA08
3G022GA09
3G022GA19
3G093AA02
3G093BA10
3G093CA09
3G093DA01
3G093DA03
3G093DA05
3G093DA06
3G093DA07
3G093DA11
3G093DB05
3G093EA05
3G093EA12
3G301HA01
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3G301KA23
3G301MA24
3G301NA08
3G301NC01
3G301PA07Z
3G301PA11Z
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3G301PE08Z
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3G384BA03
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3G384DA44
3G384EB10
3G384FA04Z
3G384FA08Z
3G384FA28Z
3G384FA40Z
3G384FA56Z
3G384FA58Z
3G384FA79Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内燃機関に設けられた2つの点火栓のいずれか一方に異常が発生した場合に、内燃機関の回転数が不要に上昇されることを抑制して、内燃機関における不安定な燃焼の発生を抑制することが可能な内燃機関制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関制御装置50では、点火制御部151が、点火栓10a及び10bの一方が正常状態であり、点火栓10a及び10bの他方が異常状態である場合に、内燃機関の回転数が第1の所定点火カット実施回転数よりも低い第2の所定点火カット実施回転数以上であるときに点火栓10a及び10bの一方による点火動作を停止させ、燃料供給制御部152が、点火栓10a及び10bの一方が正常状態であり、点火栓10a及び10bの他方が異常状態である場合に、内燃機関の回転数が第1の所定燃料カット実施回転数よりも低い第2の所定燃料カット実施回転数以上であるときに内燃機関に対する燃料の供給動作を停止させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の1つの気筒に対して設けられた第1の点火栓及び第2の点火栓による点火動作を制御する点火制御部と、前記内燃機関に対する燃料の供給動作を制御する燃料供給制御部と、を備えた内燃機関制御装置であって、
前記点火制御部は、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓が共に正常状態である場合には、前記内燃機関の回転数が第1の所定点火カット実施回転数以上であるときに前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓による前記点火動作を停止させ、かつ、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の一方が正常状態であり、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の他方が異常状態である場合に、前記内燃機関の前記回転数が前記第1の所定点火カット実施回転数よりも低い第2の所定点火カット実施回転数以上であるときに前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の前記一方による前記点火動作を停止させ、
前記燃料供給制御部は、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓が共に正常状態である場合には、前記内燃機関の前記回転数が第1の所定燃料カット実施回転数以上であるときに前記内燃機関に対する前記燃料の前記供給動作を停止させ、かつ、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の一方が正常状態であり、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の他方が異常状態である場合に、前記内燃機関の前記回転数が前記第1の所定燃料カット実施回転数よりも低い第2の所定燃料カット実施回転数以上であるときに前記内燃機関に対する前記燃料の前記供給動作を停止させることを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記第2の所定点火カット実施回転数は、前記第2の所定燃料カット実施回転数よりも高くなるように設定されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関の気筒毎に2つ設けられた点火栓の点火動作を制御すると共に、その気筒毎に設けられたインジェクタの燃料噴射動作を制御する内燃機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関において、燃焼室内に生成される混合気に対する点火性能を向上して、排気ガス特性や燃料消費特性等の諸特性を向上するために、1つの気筒に対して複数の点火栓を設けた構成が採用される場合がある。
【0003】
かかる状況下で、特許文献1は、内燃機関の点火時期制御装置に関し、各気筒に複数の点火栓を備える内燃機関の運転状態を計測して点火時期を決定し制御する際に、点火出力を選択的に遮断するか、又は点火時期を選択的に基準値から変化させ、その際の内燃機関の燃焼状態等によって点火系の異常を診断し、その診断結果に応じて点火時期を調整する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、内燃機関の燃焼状態等によって点火系の異常を診断し、その診断結果に応じて、点火時期を調整する構成については開示しているが、点火栓に異常が発生したときの内燃機関の出力の低下を補うべく、運転者がアクセル操作部材を開け方向に操作して強引に内燃機関の回転数を上昇させようとした場合には、内燃機関の燃焼状態が不安定な状態となる傾向が考えられて、改善の余地がある。また、内燃機関の機構等の保護や内燃機関の補機である触媒等の保護の観点から、内燃機関の回転数が所定回転数以上となるときに、内燃機関に対する点火動作や燃料噴射動作を禁止する点火カット制御や燃料カット制御を実行する構成が採用されることがあるが、かかる構成において点火栓に異常が発生した場合に、内燃機関の燃焼状態が不安定な状態になることを抑制するための実用的な構成についても、検討の余地がある。
【0006】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、内燃機関に設けられた2つの点火栓のうちのいずれかのみに異常が発生した場合に、内燃機関の回転数が不要に上昇されることを抑制して、内燃機関の回転数を適切な範囲に維持し、内燃機関における不安定な燃焼の発生を抑制することが可能な内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するべく、本発明は、内燃機関の1つの気筒に対して設けられた第1の点火栓及び第2の点火栓による点火動作を制御する点火制御部と、前記内燃機関に対する燃料の供給動作を制御する燃料供給制御部と、を備えた内燃機関制御装置であって、
前記点火制御部は、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓が共に正常状態である場合には、前記内燃機関の回転数が第1の所定点火カット実施回転数以上であるときに前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓による前記点火動作を停止させ、かつ、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の一方が正常状態であり、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の他方が異常状態である場合に、前記内燃機関の前記回転数が前記第1の所定点火カット実施回転数よりも低い第2の所定点火カット実施回転数以上であるときに前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の前記一方による前記点火動作を停止させ、前記燃料供給制御部は、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓が共に正常状態である場合には、前記内燃機関の前記回転数が第1の所定燃料カット実施回転数以上であるときに前記内燃機関に対する前記燃料の前記供給動作を停止させ、かつ、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の一方が正常状態であり、前記第1の点火栓及び前記第2の点火栓の他方が異常状態である場合に、前記内燃機関の前記回転数が前記第1の所定燃料カット実施回転数よりも低い第2の所定燃料カット実施回転数以上であるときに前記内燃機関に対する前記燃料の前記供給動作を停止させることを第1の局面とする。
【0008】
また、本発明の第1の局面に加え、本発明は、前記第2の所定点火カット実施回転数は、前記第2の所定燃料カット実施回転数よりも高くなるように設定されることを第2の局面とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、点火制御部が、第1の点火栓及び第2の点火栓が共に正常状態である場合には、内燃機関の回転数が第1の所定点火カット実施回転数以上であるときに第1の点火栓及び第2の点火栓による点火動作を停止させ、かつ、第1の点火栓及び第2の点火栓の一方が正常状態であり、第1の点火栓及び第2の点火栓の他方が異常状態である場合に、内燃機関の回転数が第1の所定点火カット実施回転数よりも低い第2の所定点火カット実施回転数以上であるときに第1の点火栓及び第2の点火栓の一方による点火動作を停止させ、燃料供給制御部が、第1の点火栓及び第2の点火栓が共に正常状態である場合には、内燃機関の回転数が第1の所定燃料カット実施回転数以上であるときに内燃機関に対する燃料の供給動作を停止させ、かつ、第1の点火栓及び第2の点火栓の一方が正常状態であり、第1の点火栓及び第2の点火栓の他方が異常状態である場合に、内燃機関の回転数が第1の所定燃料カット実施回転数よりも低い第2の所定燃料カット実施回転数以上であるときに内燃機関に対する燃料の供給動作を停止させることにより、内燃機関に設けられた2つの点火栓のうちのいずれかのみに異常が発生した場合に、内燃機関の回転数が不要に上昇されることを抑制して、内燃機関の回転数を適切な範囲に維持し、内燃機関における不安定な燃焼の発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の第2の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、第2の所定点火カット実施回転数が、第2の所定燃料カット実施回転数よりも高くなるように設定されることにより、内燃機関に設けられた2つの点火栓のうちのいずれかのみに異常が発生した場合に、燃料カットを先行して実施しながらそれと併行して点火カットを実施することができて、燃料の未燃焼部分が排気ガス中に含まれることを抑制しながら、内燃機関の回転数が不要に上昇されることを抑制して、内燃機関の回転数を適切な範囲に維持し、内燃機関の燃焼を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における内燃機関制御装置(以下、エンジン制御装置と記すことがある)の構成を、内燃機関(以下、エンジンと記すことがある)と共に示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるエンジン制御装置が点火カット制御及び燃料カット制御を実行する際のエンジン回転数の経時変化の一例を示すタイムチャートであり、
図2(a)は、第1の点火栓及び第2の点火栓がいずれも正常である場合のタイムチャートを示し、
図2(b)は、第1の点火栓及び第2の点火栓のいずれか一方のみが異常である場合のタイムチャートを示す。
【
図3】
図3は、本実施形態におけるエンジン制御装置の点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態におけるエンジン制御装置につき、詳細に説明する。
【0013】
<エンジンの構成>
まず、
図1を参照して、本実施形態におけるエンジン制御装置が適用されるエンジンの構成について、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態におけるエンジン制御装置の構成を、エンジンと共に示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、エンジン1は、典型的には、図示を省略する二輪自動車等の車両に搭載されて、1サイクルが4ストロークのレシプロ型の内燃機関であり、エンジン制御装置50によりその運転状態が制御されるもので、シリンダブロック2を備えている。なお、図中では、説明の便宜上、エンジン1を単数の気筒2aの構成を有するものとして示しているが、エンジン1は複数の気筒2aを有するものであってもよく、気筒2aの配列も直列、水平対向やV型等であってもよい。また、エンジン1は、典型的には水冷式であって、シリンダブロック2の側壁内の図示を省略する冷却水通路には、冷却水通路を流通する冷却水の温度を検出するための水温センサ101が設けられている。なお、エンジン1が空冷式である場合には、水温センサ101の代わりに、シリンダブロック2等にエンジン1の温度を検出自在な図示を省略する温度センサが設けられることになる。
【0016】
シリンダブロック2の内部には、ピストン4が配置されている。ピストン4は、コンロッド5を介してクランクシャフト6に連結されている。クランクシャフト6には、それと共に同軸に回転するリラクタ7が設けられている。リラクタ7の外周面には、その周方向に所定のパターンで並置された複数の歯部7aが立設されている。複数の歯部7aの近傍には、エンジン制御装置50がエンジン1の回転速度を検出するように、クランクシャフト6の回転角度を検出するクランク角センサ102が、シリンダブロック2の下部に装着され図示を省略するロアケース等に設けられている。
【0017】
シリンダブロック2の上部には、シリンダヘッド8が装着されている。シリンダブロック2の内壁面、ピストン4の上面、及びシリンダヘッド8の内壁面が協働して画成する内部空間は、燃焼室9となる。
【0018】
シリンダブロック2及びシリンダヘッド8には、1つの気筒2aに対して、その燃焼室9内で燃料及び空気から生成される混合気に点火する2つの点火栓10a及び10bが設けられている。点火栓10a及び10bの点火動作は、エンジン制御装置50により、各々の点火コイルL1及びL2への通電が制御されることによって制御される。点火栓10a及び10bは、典型的には同一の仕様の量産市販品の点火栓であって、図中では、それらの内の一方がシリンダブロック2に装着され、それらの内の他方がシリンダヘッド8に装着されるものとして例示するが、点火栓10a及び10bの装着部位は、燃焼室9内の混合気に実用上同等に点火することができるものであれば、特に限定的なものではなく、例えば、双方共に、シリンダブロック2又はシリンダヘッド8に設けられるものであってもよい。また、点火栓10a及び10bの各々の点火時期は、互いに等しく設定されていてもよいし、又は互いに相違して設定されていてもよい。
【0019】
シリンダヘッド8には、燃焼室9と吸気通路11aとを開閉自在に連通させる吸気バルブ12が設けられている。吸気通路11aは、シリンダヘッド8及びシリンダヘッド8に装着される吸気管11内に形成される。吸気管11には、吸気通路11a内に燃料を噴射する燃料噴射弁13、及び燃料噴射弁13の上流側に配置されると共に図示を省略するスロットル装置の構成部品であるスロットルバルブ14が設けられている。吸気管11には、吸気バルブ12及びスロットルバルブ14の間で、吸気管11内に流入する空気の圧力(吸気圧)を検出する吸気圧センサ103が設けられている。スロットルバルブ14に対しては、その開度を検出するスロットル開度センサ104が、スロットル装置の本体部に装着されている。燃料噴射弁13の燃料噴射動作(開弁動作)は、図示を省略するそのソレノイドバルブへの通電が制御されることにより制御される。なお、燃料噴射弁13は、燃焼室9内に直接燃料を噴射するものであってもよい。
【0020】
また、シリンダヘッド8には、吸気管11の反対側に排気管15が装着され、シリンダヘッド8及び排気管15内には、燃焼室9と連通する排気通路15aが形成されている。また、シリンダヘッド8には、燃焼室9と排気通路15aとを開閉自在に連通させ排気バルブ16が設けられている。排気管15には、排気バルブ16よりも下流側で、燃焼室9から排出される排気ガスの浄化を行う典型的には三元触媒である触媒109が設けられると共に、触媒109に近接したその上流側で、排気ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ110が設けられている。
【0021】
水温センサ101は、シリンダブロック2の側壁内の冷却水通路を流通する冷却水の温度に応じた電圧を呈する電気信号をエンジン制御装置50に出力する。クランク角センサ102は、クランクシャフト6の回転に伴って回転するリラクタ7の複数の歯部7a及びそれらの間の凹部に応じた高低の電圧を呈する電気信号をエンジン制御装置50に出力する。吸気圧センサ103は、吸気管11内に流入する空気の圧力(吸気圧)に応じた電圧を呈する電気信号をエンジン制御装置50に出力する。スロットル開度センサ104は、スロットルバルブ14の開度(スロットル開度)に応じた電圧を呈する電気信号をエンジン制御装置50に出力する。また、O2センサ110は、触媒109の上流側における排気ガス中の酸素濃度に応じた電圧を呈する電気信号をエンジン制御装置50に出力する。なお、符号120は、車両の従動輪である前輪の回転速度から車速を検出する車速センサ120を示し、車速センサ120は、車速に応じた電圧を呈する電気信号をエンジン制御装置50に出力する。
【0022】
<エンジン制御装置の構成>
次に、更に
図2をも参照して、本実施形態におけるエンジン制御装置50の構成について、詳細に説明する。
【0023】
図2は、本実施形態におけるエンジン制御装置が点火カット制御及び燃料カット制御を実行する際のエンジン回転数の経時変化の一例を示すタイムチャートであり、
図2(a)は、第1の点火栓及び第2の点火栓がいずれも正常である場合のタイムチャートを示し、
図2(b)は、第1の点火栓及び第2の点火栓のいずれか一方のみが異常である場合のタイムチャートを示す。
【0024】
まず、
図1に示すように、エンジン制御装置50は、車両に搭載されてエンジン1の動作を制御する電子制御装置であるECU(Electronic Control Unit)150により構成されている。
【0025】
ECU150は、CPU(Central Processing Unit:中央処理ユニット)やメモリ等から成るマイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であり、図示を省略するメモリやタイマを有しており、かかるメモリには、必要な制御・処理プログラム及び制御・処理データが記憶されている。また、ECU150は、各種センサ類である水温センサ101、クランク角センサ102、吸気圧センサ103、スロットル開度センサ104、O2センサ110及び車速センサ120からの出力信号に基づくと共に、メモリから必要な制御・処理プログラム及び制御・処理データを読み出して、制御・処理プログラムを実行することによって、各種制御対象である点火栓10a及び10b、並びに燃料噴射弁13等の動作を制御することにより、エンジン1の運転状態を制御する。
【0026】
具体的には、ECU150は、点火コイルL1及びL2への通電を制御することにより、点火栓10a及び10bの点火動作を制御する点火制御部151と、燃料噴射弁13への通電を制御することにより、燃料噴射弁13の燃料噴射動作を制御する燃料噴射制御部152と、点火栓10a及び10bの点火異常の有無を判定する異常判定部153と、を備えている。なお、図中では、点火制御部151、燃料噴射制御部152及び異常判定部153は、制御・処理プログラムを実行する際の機能ブロックとして示す。
【0027】
点火制御部151は、メモリ内に記憶されている基本点火時期マップのデータを参照して、クランク角センサ102からの出力信号に基づいて算出されたエンジン1の回転数(エンジン回転数)及びスロットル開度センサ104からの出力信号に基づいて算出されたスロットル開度に応じた基本点火時期を、点火栓10a及び10bの各々について算出すると共に、メモリ内に記憶されている補正点火時期マップのデータを参照して、水温センサ101からの出力信号に基づいて算出されたエンジン温度等に応じた補正点火時期を点火栓10a及び10bの各々について算出する。そして、点火制御部151は、点火栓10a及び10bの各々についての基本点火時期及び補正点火時期から算出したこれらの点火時期に対応して、点火コイルL1及びL2に各々駆動信号を出力して通電することにより、点火栓10a及び10bを点火させる点火制御を実行する。
【0028】
燃料噴射制御部152は、メモリ内に記憶されている基本燃料噴射量マップのデータを参照して、クランク角センサ102からの出力信号に基づいて算出されたエンジン回転数及びスロットル開度センサ104からの出力信号に基づいて算出されたスロットル開度に応じた基本燃料噴射量を算出すると共に、メモリ内に記憶されている補正燃料噴射量マップのデータを参照して、水温センサ101からの出力信号に基づいて算出されたエンジン温度等に応じた補正燃料噴射量を算出する。そして、燃料噴射制御部152は、所定の燃料噴射時期に、基本燃料噴射量及び補正燃料噴射量から算出した燃料噴射量を吸気通路11a内に噴射させるように、燃料噴射弁13に駆動信号を出力して通電しそれを開弁させる燃料噴射制御を実行する。
【0029】
異常判定部153は、ECU150から点火コイルL1を経て点火栓10aに至る電気系の通電異常を検出することにより、点火栓10aの点火能力の異常(点火異常)の有無を判定すると共に、ECU150から点火コイルL2を経て点火栓10bに至る電気系の通電異常を検出することにより、点火栓10bの点火能力の異常(点火異常)の有無を判定する。このためには、異常判定部153は、実用的な観点から、点火コイルL1及びL2の各々の2次電圧側の電気系よりも低電圧である1次電圧側の電気系に断線や短絡等の通電異常が発生したか否かを検出することが好ましい。例えば、異常判定部153は、ECU150の各々図示を省略する点火栓10a用の駆動回路の出力端子と、点火コイルL1の各々図示を省略する1次コイルの入力端子と、を電気的に接続する電気配線W1の電圧又は電流を検出して、その電圧の検出値又は電流の検出値が、異常を示す所定範囲(典型的にはゼロに近い値以下の範囲)に入る場合に、点火コイルL1の1次電圧側の電気系に断線や短絡等の通電異常が発生したと判定して、点火栓10aの点火能力に異常が発生したと判定する。同様に、異常判定部153は、ECU150の各々図示を省略する点火栓10b用の駆動回路の出力端子と、点火コイルL2の各々図示を省略する1次コイルの入力端子と、を電気的に接続する電気配線W2の電圧又は電流を検出して、その電圧の検出値又は電流の検出値が、異常を示す所定範囲(典型的にはゼロに近い値以下の範囲)に入る場合に、点火コイルL2の1次電圧側の電気系に断線や短絡等の通電異常が発生したと判定して、点火栓10bの点火能力に異常が発生したと判定する。なお、点火栓10aの点火能力の異常とは、ECU150から点火コイルL1を経て点火栓10aに通電用の駆動信号を出力しても、点火栓10aが全く点火しない状態であることのみならず、点火栓10aが多少は点火したとしても混合気が着火するには至らないレベルの点火状態であることを含む意味である。同様に、点火栓10bの点火能力の異常とは、ECU150から点火コイルL2を経て点火栓10bに通電用の駆動信号を出力しても、点火栓10bが全く点火しない状態であることのみならず、点火栓10bが多少は点火したとしても混合気が着火するには至らないレベルの点火状態であることを含む意味である。
【0030】
ここで、
図2(a)に示すように、異常判定部153が点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常であると判定したとき、点火制御部151は、エンジン1の回転数が過剰に上昇してエンジン1の内部機構等が不要な影響を受けたり、排気ガス温度が高温になって触媒109の内部構造等が不要な影響を受ける事態を避けるために、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2以上にエンジン1の回転数が到達した場合に、点火栓10a及び10bに対する各々の駆動信号の出力を禁止し、点火栓10a及び10bを点火させる点火動作を停止する。図中では、時刻t2から時刻t3の間で、エンジン回転数は、断続的に所定の点火カット実施エンジン回転数NE2以上になっており、かかる期間が、点火栓10a及び10bを点火させる点火動作の実行がなされない場合のある期間である。なお、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値は、典型的には、メモリ内に記憶された点火カット実施エンジン回転数NE2の値のデータを参照して得られるものである。
【0031】
また、
図2(b)に示すように、異常判定部153が点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生したと判定したとき、つまり、異常判定部153が点火栓10bの点火能力には異常が見られずに正常であると判定したが点火栓10aの点火能力には異常が発生したと判定したとき、又は異常判定部153が点火栓10aの点火能力には異常が見られずに正常であると判定したが点火栓10bの点火能力には異常が発生したと判定したときには、点火制御部151は、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’以上にエンジン1の回転数が到達した場合に、点火栓10a及び10bの内の正常であるものに対する駆動信号の出力を禁止し、点火栓10a及び10bの内の正常であるものを点火させる点火動作を停止する。図中では、時刻t2’から時刻t3’の間で、エンジン回転数は、断続的に所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’以上になっており、かかる期間が、点火栓10a及び10bの内の正常であるものを点火させる点火動作の実行がなされない場合のある期間である。なお、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値は、典型的には、メモリ内に記憶された点火カット実施エンジン回転数NE2’の値のデータを参照して得られる。また、点火カット実施エンジン回転数NE2’の値は、点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生した場合に、それらの正常時よりも早期に点火動作を停止する観点から、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値よりも小さな値(低回転の値)として、設定されたものである。また、点火栓10a及び10bの仕様や装着位置等の違いによる点火特性等の相違に応じ、点火栓10a及び10bのいずれに異常が発生したかによって、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値を相違させ各々個別に設定してもよい。
【0032】
また、
図2(a)に示すように、異常判定部153が点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常であると判定したとき、燃料噴射制御部152は、エンジン1の回転数が過剰に上昇してエンジン1の内部機構等が不要な影響を受けたり、排気ガス温度が高温になって触媒109の内部構造等が不要な影響を受ける事態を避けるために、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1以上にエンジン1の回転数が到達した場合に、燃料噴射弁13に対する駆動信号の出力を禁止し、燃料噴射弁13から吸気通路11aに燃料を噴射させる燃料噴射動作を停止する。図中では、時刻t1から時刻t4の間で、エンジン回転数は、断続的に所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1以上になっており、かかる期間が、燃料噴射弁13から吸気通路11aに燃料を噴射させる燃料噴射動作の実行がなされない場合のある期間である。なお、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値は、典型的には、メモリ内に記憶された燃料カット実施エンジン回転数NE1の値のデータを参照して得られる。また、点火栓10a及び10bを点火させる点火動作の停止の実行よりも、燃料噴射弁13から吸気通路11aに燃料を噴射させる燃料噴射動作の停止の実行を優先させる観点から、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値は、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値よりも小さな値として、設定されることが好ましいものである。
【0033】
また、
図2(b)に示すように、異常判定部153が点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生したと判定したとき、つまり、異常判定部153が点火栓10bの点火能力には異常が見られずに正常であると判定したが点火栓10aの点火能力には異常が発生したと判定したとき、又は異常判定部153が点火栓10aの点火能力には異常が見られずに正常であると判定したが点火栓10bの点火能力には異常が発生したと判定したときには、燃料噴射制御部152は、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’以上にエンジン1の回転数が到達した場合に、燃料噴射弁13に対する駆動信号の出力を禁止し、燃料噴射弁13から吸気通路11aに燃料を噴射させる燃料噴射動作を停止する。図中では、時刻t1’から時刻t4’の間で、エンジン回転数は、断続的に所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’以上になっており、かかる期間が、燃料噴射弁13から吸気通路11aに燃料を噴射させる燃料噴射動作の実行がなされない場合のある期間である。なお、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値は、典型的には、メモリ内に記憶された燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値のデータを参照して得られる。また、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値は、点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生した場合に、それらの正常時よりも早期に燃料噴射動作を停止する観点から、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値よりも小さな値として、設定されたものである。また、点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生した場合においても、異常判定部153が点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常である場合と同様に、点火栓10a及び10bの内の正常なものを点火させる点火動作の停止の実行よりも、燃料噴射弁13から吸気通路11aに燃料を噴射させる燃料噴射動作の停止の実行を優先させる観点から、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値は、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値よりも小さな値として、設定されることが好ましいものである。また、点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生した場合には、点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常である場合よりも、燃料噴射動作の停止に加えて点火動作の停止をも早期に行うべきであるので、点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生した場合における所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値と所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値との差は、点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常である場合における所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値と所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値との差よりも小さく設定されることが好ましい。また、点火栓10a及び10bの仕様や装着位置等の違いによる点火特性等の相違に応じ、点火栓10a及び10bのいずれに異常が発生したかによって、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値を相違させて各々個別に設定してもよい。
【0034】
以上説明してきた構成を有するエンジン制御装置50は、以下に示す異常判定処理を含む点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理を実行することによって、点火栓10a及び10bのいずれか一方のみの点火能力に異常が発生したと判定したときに、正常な点火栓の点火動作を停止し、かつ燃料噴射動作を停止するための点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数を算出する。以下、更に
図3をも参照して、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理を実行する際のエンジン制御装置50の動作について説明する。
【0035】
<点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理>
図3は、本実施形態におけるエンジン制御装置の点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0036】
図3に示すフローチャートは、図示を省略するイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態となり、ECU150が起動すると開始されるもので、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理は、ステップS1の処理に進む。かかる点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理は、ECU150が起動状態である間、メモリから必要な制御・処理プログラム及び制御・処理データを読み出して所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお、便宜上、点火栓10aを第1の点火栓とし、点火栓10bを第2の点火栓をとして、説明をするが、点火栓10bを第1の点火栓とし、点火栓10aを第2の点火栓としても同様である。
【0037】
ステップS1の処理では、異常判定部153が、点火栓10aに点火異常が発生したか否かを判定する。具体的には、異常判定部153が、電気配線W1に印加されている電圧又は電気配線W1を流れている電流を検出して、その電圧の検出値又は電流の検出値が、異常を示す所定範囲に入る場合に、点火コイルL1の1次電圧側の電気系に断線や短絡等の通電異常が発生したと判定して、点火栓10aの点火能力に異常が発生したと判定する。判定の結果、点火栓10aに点火異常が発生した場合には、異常判定部153は、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理をステップS2の処理に進める。一方で、判定の結果、点火栓10aに点火異常が発生していない場合には、異常判定部153は、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理をステップS3の処理に進める。なお、かかる異常を示す所定範囲のデータは、メモリに記憶されているものを参照した。
【0038】
ステップS2の処理では、異常判定部153が、点火栓10bに点火異常が発生したか否かを判定する。具体的には、異常判定部153が、電気配線W2に印加されている電圧又は電気配線W2を流れている電流を検出して、その電圧の検出値又は電流の検出値が、異常を示す所定範囲に入る場合に、点火コイルL2の1次電圧側の電気系に断線や短絡等の通電異常が発生したと判定して、点火栓10bの点火能力に異常が発生したと判定する。判定の結果、点火栓10bに点火異常が発生した場合には、異常判定部153は、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理をステップS4の処理に進める。一方で、判定の結果、点火栓10bに通電異常が発生していない場合には、異常判定部153は、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理をステップS5の処理に進める。なお、かかる異常を示す所定範囲のデータは、メモリに記憶されているものを参照した。
【0039】
ステップS3の処理では、異常判定部153が、点火栓10bに点火異常が発生したか否かを判定する。具体的には、異常判定部153が、電気配線W2に印加されている電圧又は電気配線W2を流れている電流を検出して、その電圧の検出値又は電流の検出値が、異常を示す所定範囲に入る場合に、点火コイルL2の1次電圧側の電気系に断線や短絡等の通電異常が発生したと判定して、点火栓10bの点火能力に異常が発生したと判定する。判定の結果、点火栓10bに点火異常が発生した場合には、異常判定部153は、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理をステップS6の処理に進める。一方で、判定の結果、点火栓10bに通電異常が発生していない場合には、異常判定部153は、点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理をステップS7の処理に進める。なお、かかる異常を示す所定範囲のデータは、メモリに記憶されているものを参照した。
【0040】
ステップS4の処理では、点火栓10a及び10bの双方に異常が発生した場合であるので、点火制御部151が、点火栓10a及び10bの双方への駆動信号による通電を停止してそれらの点火動作を強制的に停止すると共に、燃料噴射制御部152が、燃料噴射弁13への駆動信号による通電を停止してその燃料噴射動作を強制的に停止することにより、エンジン1の運転を強制的に停止させる。これにより、ステップS4の処理は完了し、今回の一連の点火カット実施エンジン回転数及び燃料カット実施エンジン回転数算出処理は終了する。
【0041】
ステップS5の処理では、点火栓10aのみに点火異常が発生した場合であるので、点火制御部151が、メモリ内に記憶された点火カット実施エンジン回転数NE2’の値のデータを参照して、その値を所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値に設定すると共に、燃料噴射制御部152が、メモリ内に記憶された燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値のデータを参照して、その値を所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値として設定する。所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値は、点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常である場合の所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値よりも小さいものであるから、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値は、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値から低下された値として算出されることになり、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値は、点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常である場合の所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値よりも小さいものであるから、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値は、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値よりも低下された値として算出されることになる。そして、点火制御部151は、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値を所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値に持ち替えて、クランク角センサ102からの出力信号に基づいて算出されたエンジン回転数の値が所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値以上となる場合に、点火栓10bの点火動作を停止することになる。また、燃料噴射制御部152は、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値を所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値に持ち替えて、クランク角センサ102からの出力信号に基づいて算出されたエンジン回転数の値が所定の点火カット実施エンジン回転数NE1’の値以上となる場合に、燃料噴射弁13の燃料噴射動作を停止することになる。
【0042】
ステップS6の処理では、点火栓10bのみに点火異常が発生した場合であるので、ステップS6の処理と同様に、点火制御部151が、メモリ内に記憶された点火カット実施エンジン回転数NE2’の値のデータを参照して、その値を所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値に設定すると共に、燃料噴射制御部152が、メモリ内に記憶された燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値のデータを参照して、その値を所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値として設定する。所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値は、点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常である場合の所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値よりも小さいものであるから、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値は、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値から低下された値として算出されることになり、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値は、点火栓10a及び10bの双方の点火能力に異常が発生しておらず双方共に正常である場合の所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値よりも小さいものであるから、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値は、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値よりも低下された値として算出されることになる。そして、点火制御部151は、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値を所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値に持ち替えて、クランク角センサ102からの出力信号に基づいて算出されたエンジン回転数の値が所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値以上となる場合に、点火栓10aの点火動作を停止することになる。また、燃料噴射制御部152は、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値を所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値に持ち替えて、クランク角センサ102からの出力信号に基づいて算出されたエンジン回転数の値が所定の点火カット実施エンジン回転数NE1’の値以上となる場合に、燃料噴射弁13の燃料噴射動作を停止することになる。
【0043】
ステップS7の処理では、点火栓10a及び10bの双方に異常が発生していない場合であるので、点火制御部151が、メモリ内に記憶された点火カット実施エンジン回転数NE2の値のデータを参照して、その値を所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値に設定すると共に、燃料噴射制御部152が、メモリ内に記憶された点火カット実施エンジン回転数NE1の値のデータを参照して、その値を所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値に設定する。なお、ステップS7の処理では、点火制御部151が、所定の点火カット実施エンジン回転数NE2の値の代わりに所定の点火カット実施エンジン回転数NE2’の値を設定することはないし、燃料噴射制御部152が、所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1の値の代わりに所定の燃料カット実施エンジン回転数NE1’の値を設定することはない。
【0044】
以上の本実施形態における内燃機関制御装置50では、点火制御部151が、第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aが共に正常状態である場合には、内燃機関1の回転数が第1の所定点火カット実施回転数以上NE2であるときに第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aによる点火動作を停止させ、かつ、第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aの一方が正常状態であり、第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aの他方が異常状態である場合に、内燃機関1の回転数が第1の所定点火カット実施回転数NE2よりも低い第2の所定点火カット実施回転数NE2’以上であるときに第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aの一方による点火動作を停止させ、燃料供給制御部152が、第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aが共に正常状態である場合には、内燃機関1の回転数が第1の所定燃料カット実施回転数NE1以上であるときに内燃機関1に対する燃料の供給動作を停止させ、かつ、第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aの一方が正常状態であり、第1の点火栓10a、10b及び第2の点火栓10b、10aの他方が異常状態である場合に、内燃機関1の回転数が第1の所定燃料カット実施回転数NE1よりも低い第2の所定燃料カット実施回転数NE1’以上であるときに内燃機関1に対する燃料の供給動作を停止させることにより、内燃機関1に設けられた2つの点火栓10a、10bのうちのいずれかのみに異常が発生した場合に、内燃機関1の回転数が不要に上昇されることを抑制して、内燃機関1の回転数を適切な範囲に維持し、内燃機関1における不安定な燃焼の発生を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態における内燃機関制御装置50では、第2の所定点火カット実施回転数NE2’が、第2の所定燃料カット実施回転数NE1’よりも高くなるように設定されることにより、内燃機関1に設けられた2つの点火栓10a、10bのうちのいずれかのみに異常が発生した場合に、燃料カットを先行して実施しながらそれと併行して点火カットを実施することができて、燃料の未燃焼部分が排気ガス中に含まれることを抑制しながら、内燃機関1の回転数が不要に上昇されることを抑制して、内燃機関1の回転数を適切な範囲に維持し、内燃機関1の燃焼を安定化させることができる。
【0046】
本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明においては、内燃機関に設けられた2つの点火栓のうちのいずれかのみに異常が発生した場合に、内燃機関の回転数が不要に上昇されることを抑制して、内燃機関の回転数を適切な範囲に維持し、内燃機関における不安定な燃焼の発生を抑制することが可能な内燃機関制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から自動二輪車の内燃機関制御装置に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0048】
1…エンジン(内燃機関)
2…シリンダブロック
2a…気筒
4…ピストン
5…コンロッド
6…クランクシャフト
7…リラクタ
7a…歯部
8…シリンダヘッド
9…燃焼室
10a、10b…点火栓
11…吸気管
11a…吸気通路
12…吸気バルブ
13…燃料噴射弁
14…スロットルバルブ
15…排気管
15a…排気通路
16…排気バルブ
50…エンジン制御装置(内燃機関制御装置)
100…エンジン制御装置
101…水温センサ
102…クランク角センサ
103…吸気圧センサ
104…スロットル開度センサ
109…触媒
110…O2センサ
120…車速センサ
150…ECU
151…点火制御部
152…燃料噴射制御部(燃料供給制御部)
153…異常判定部
L1、L2…点火コイル
W1、W2…電気配線