(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169658
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】多目的車両
(51)【国際特許分類】
B60R 22/20 20060101AFI20231122BHJP
B60R 22/18 20060101ALI20231122BHJP
B60R 22/22 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B60R22/20 107
B60R22/18 118
B60R22/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080907
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平井 豪
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018BA12
3D018CA05
3D018CA09
3D018CB02
3D018CB04
3D018CB05
3D018CB06
3D018CC00
3D018CD04
(57)【要約】
【課題】搭乗者の体格に合わせることができるシートベルト装置を備えた多目的車両を提供する。
【解決手段】走行機体と、走行機体に設けられた座席(11、12)と、座席(11、12)に着座する搭乗者を保護するシートベルト21と、シートベルト21の端部を固定するためのベルト端部固定具24と、が備えられ、ベルト端部固定具24は、走行機体の幅方向に沿ってスライド可能に支持されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体に設けられた座席と、
前記座席に着座する搭乗者を保護するシートベルトと、
前記シートベルトの端部を固定するためのベルト端部固定具と、が備えられ、
前記ベルト端部固定具は、前記走行機体の幅方向に沿ってスライド可能に支持されている多目的車両。
【請求項2】
前記座席の上方に設けられ、前記シートベルトを支持するショルダーアンカーが備えられ、
前記ショルダーアンカーは、前記走行機体の幅方向に沿ってスライド可能に支持されている請求項1に記載の多目的車両。
【請求項3】
前記シートベルトを引き出し操作可能に巻回収納するベルト巻回部が備えられ、
前記ベルト巻回部は、前記走行機体の幅方向に沿ってスライド可能に支持されている請求項2に記載の多目的車両。
【請求項4】
前記ショルダーアンカーと前記ベルト巻回部とは、一体的にスライドするように構成されている請求項3に記載の多目的車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に、搭乗者を保護するシートベルトが備えられた多目的車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な多目的車両においては、特許文献1に記載されているように、シートベルト装置として、座席の左右両側に位置するリトラクターと、各リトラクターに巻き取られた状態にあるシートベルトと、座席の左右方向での中央部で、左右のリトラクターから引き出された各シートベルトの端部を各別に固定可能な一対のバックルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の多目的車両では、リトラクターやバックル等は、搭乗者の体格に合わせることができるものではなかった。そのため、従来の多目的車両に備えられたシートベルトは、体格の小さな搭乗者にとっては緩過ぎるものであり、体格の大きな搭乗者にとっては窮屈なものであった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、搭乗者の体格に合わせることができるシートベルト装置を備えた多目的車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多目的車両は、走行機体と、前記走行機体に設けられた座席と、前記座席に着座する搭乗者を保護するシートベルトと、前記シートベルトの端部を固定するためのベルト端部固定具と、が備えられ、前記ベルト端部固定具は、前記走行機体の幅方向に沿ってスライド可能に支持されている。
【0007】
この発明によれば、シートベルトの端部を固定するためのベルト端部固定具を、幅方向に沿ってスライドすることで、シートベルトの端部の固定位置を変更することができる。例えば、体格の大きな搭乗者が座席に着座する場合には、搭乗者が着座する座席の座面の中央箇所から離れる方向にベルト端部固定具をスライドし、体格の小さな搭乗者が座席に着座する場合には、搭乗者が着座する座席の座面の中央箇所に近づく方向にベルト端部固定具をスライドすることで、搭乗者の体格に合わせて、シートベルトの端部の固定位置を変更することができる。
【0008】
本発明においては、前記座席の上方に設けられ、前記シートベルトを支持するショルダーアンカーが備えられ、前記ショルダーアンカーは、前記走行機体の幅方向に沿ってスライド可能に支持されていると好適である。
【0009】
この構成によれば、ショルダーアンカーの位置を変更することで、搭乗者の肩や首等の位置に合わせて、シートベルトの配置を変更することができる。
【0010】
本発明においては、前記シートベルトを引き出し操作可能に巻回収納するベルト巻回部が備えられ、前記ベルト巻回部は、前記走行機体の幅方向に沿ってスライド可能に支持されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、搭乗者が着席する座席の座面に対して、ベルト端部固定具とは反対側に設けられるベルト巻回部の位置を変更することができる。ベルト端部固定具の位置変更とベルト巻回部の位置変更とを組み合わせることにより、シートベルトの固定箇所を搭乗者の体格に合わせることができるだけでなく、座席における搭乗者の着座位置を変更することができる。
【0012】
本発明においては、前記ショルダーアンカーと前記ベルト巻回部とは、一体的にスライドするように構成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、ショルダーアンカーとベルト巻回部とのいずれかをスライドさせることにより、ショルダーアンカーとベルト巻回部との両方の位置を変更することができることから、これらの位置変更をより簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0016】
〔全体構成について〕
図1には、多目的車両を示している。多目的車両には、車体フレーム3を有する走行機体TBが備えられている。車体フレーム3の前部に、右及び左の前輪1が支持され、車体フレーム3の後部に、右及び左の後輪2が支持されている。走行機体TBにおいて、前輪1と後輪2との間に搭乗者が搭乗可能な搭乗部4が備えられている。搭乗部4の前方に車体フレーム3の前部の上方を覆うフロントリッド5が備えられている。フロントリッド5の前方にフロントバンパー6が備えられている。搭乗部4の後側に荷台7が備えられている。
【0017】
〔搭乗部について〕
搭乗部4は、走行機体TBが転倒した場合に搭乗者を保護するロプスフレーム10を備える。ロプスフレーム10は、棒状部材を折曲げることにより成形され、搭乗部4の前部から後部に亘るように配置されている。
【0018】
また、搭乗部4は、前輪1を操向操作するステアリングホイール13と、ステアリングホイール13を操縦する搭乗者が着座可能な運転座席11(座席に相当する)を備える。運転座席11は、搭乗部4の左側部分に配置されている。
図2に示すように、搭乗部4のうちの運転座席11の右方に、運転座席11に横並び状態で設けられ、2人の搭乗者が着座可能な搭乗席12(座席に相当する)が備えられている。
【0019】
〔シートベルト装置について〕
図2に示すように、搭乗部4には、運転座席11や搭乗席12に着座する搭乗者を保護する複数(本実施形態では3つ)のシートベルト装置20が備えられている。本実施形態では、シートベルト装置20は、シートベルト21と、シートベルト21を引き出し操作可能に巻回収納するリトラクター22(ベルト巻回部に相当する)と、運転座席11や搭乗席12の上方に設けられ、シートベルト21を支持するショルダーアンカー23と、シートベルト21の端部を固定するためのベルト端部固定具24とを備える。
【0020】
本実施形態では、リトラクター22は、3つ備えられており、運転座席11の左方に設けられた第一リトラクター22aと、搭乗席12の右方に設けられた第二リトラクター22bと、搭乗席12の中央箇所に設けられた第三リトラクター22cとが備えられている。すべてのリトラクター22は、左右の車体フレーム3のうちの搭乗部4に対応する部分に備えられた左右の運転部フレーム部3a(
図1参照)の後側部分において、左右の運転部フレーム部3aに亘って設けられている横向きフレーム部3bに支持されている。
【0021】
図2に示すように、3つのリトラクター22のうち、搭乗席12の幅方向中間に位置する箇所に設けられた第三リトラクター22cは、横向きフレーム部3bと相対的に走行機体TBの幅方向に沿ってスライド移動させるスライド機構25を介して、横向きフレーム部3bに支持されている。この構成により、第三リトラクター22cは、走行機体TBの幅方向に沿ってスライド可能に構成されている。
【0022】
スライド機構25は、第三リトラクター22cを支持するスライド体25aと、横向きフレーム部3bに固定され、スライド体25aをスライド可能に支持する基部25bとから構成されている。
【0023】
本実施形態では、ショルダーアンカー23は、リトラクター22と同様に、3つ備えられており、運転座席11の左方に設けられた第一ショルダーアンカー23aと、搭乗席12の右方に設けられた第二ショルダーアンカー23bと、搭乗席12の幅方向中央に位置する箇所に設けられた第三ショルダーアンカー23cとが備えられている。すべてのショルダーアンカー23は、ロプスフレーム10の後側部分のうち、高さ方向中間箇所において、左右のロプスフレーム10に亘って設けられている横向き支持部材10aに支持されている。
【0024】
3つのショルダーアンカー23のうち、搭乗席12の中央箇所に設けられた第三ショルダーアンカー23cは、横向き支持部材10aと相対的に走行機体TBの幅方向に沿ってスライド移動させるスライド機構26を介して、横向き支持部材10aに支持されている。この構成により、第三ショルダーアンカー23cは、走行機体TBの幅方向に沿ってスライド可能に構成されている。
【0025】
スライド機構26は、第三ショルダーアンカー23cを支持するスライド体26aと、横向き支持部材10aに固定され、スライド体26aをスライド可能に支持する基部26bとから構成されている。
【0026】
本実施形態では、ベルト端部固定具24は、リトラクター22等と同様に、3つ備えられており、運転座席11の右方に設けられた第一ベルト端部固定具24aと、搭乗席12の幅方向中央に位置する箇所に設けられた第二ベルト端部固定具24bと、第一ベルト端部固定具24aの右方に設けられた第三ベルト端部固定具24cとが備えられている。すべてのベルト端部固定具24は、それぞれ、運転座席11や搭乗席12を支持する左右の支持フレーム3cに亘って設けられている連結部材3dに支持されている。
【0027】
すべてのベルト端部固定具24は、それぞれ、連結部材3dと相対的に走行機体TBの幅方向に沿ってスライド移動させるスライド機構27を介して、連結部材3dに支持されている。この構成により、すべてのベルト端部固定具24は、走行機体TBの幅方向に沿ってスライド可能に構成されている。
【0028】
スライド機構27は、ベルト端部固定具24を支持するスライド体27aと、横向きフレーム部3bに固定され、スライド体27aをスライド可能に支持する基部27bとから構成されている。
【0029】
上述の構成により、運転座席11に着座した搭乗者は、第一ベルト端部固定具24aをスライド移動させることにより、シートベルト21の固定位置を、自身の体格に合わせて調節することができる。
【0030】
また、搭乗席12のうち右側部分に着座した搭乗者は、第二ベルト端部固定具24bをスライド移動させることにより、シートベルト21の固定位置を、自身の体格に合わせて調節することができる。搭乗席12のうち右側部分に着座した搭乗者は、第三リトラクター22c、第三ショルダーアンカー23c、及び第三ベルト端部固定具24cをスライド移動させることにより、着座位置を変更し、シートベルト21の固定位置を、自身の体格に合わせて調節することができる。
【0031】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。
【0032】
(1)上記実施形態では、シートベルト装置20は、いわゆる三点式シートベルトとして構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、シートベルト装置20は、ショルダーアンカー23を必要としない二点式シートベルトとして構成されていてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態では、シートベルト装置20は、リトラクター22を備える構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、リトラクター22を備えず、直接スライド機構25又は横向きフレーム部3bに固定される構成を備えるものであってもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では、ショルダーアンカー23とリトラクター22とは、それぞれ独立してスライド可能に構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、ショルダーアンカー23とリトラクター22とは、一体的にスライド移動する構成としてもよい。
【0035】
(4)上記実施形態では、運転座席11と搭乗席12とを備える構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、さらにシートベルト装置20を有する後部座席を備える構成としてもよく、また、運転座席11のみを備える構成としてもよい。
【0036】
(5)上記実施形態では、第一リトラクター22a、第二リトラクター22b、第一ショルダーアンカー23a、及び第二ショルダーアンカー23bは、スライドしない構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、これらもスライド可能に構成されていてもよい。
【0037】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、人員の移動や荷物の運搬、レクリエーション等に使用される多目的車両に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
TB 走行機体
11 運転座席(座席)
12 搭乗席(座席)
21 シートベルト
22 リトラクター(ベルト巻回部)
23 ショルダーアンカー
24 ベルト端部固定具