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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169669
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】直流遮断器、および遮断方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/087 20060101AFI20231122BHJP
   H01H 33/59 20060101ALI20231122BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20231122BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20231122BHJP
   H02H 3/093 20060101ALI20231122BHJP
   H02H 7/12 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H02H3/087
H01H33/59 B
H03K17/08
H02J1/00 309Q
H02H3/093 D
H02H7/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080924
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 義文
【テーマコード(参考)】
5G004
5G028
5G053
5G165
5J055
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA03
5G004DC14
5G004EA01
5G028AA03
5G028FB06
5G053AA01
5G053AA02
5G053CA01
5G053EC01
5G053EC03
5G165BB04
5G165BB08
5G165HA07
5G165JA07
5G165LA01
5G165LA02
5G165LA07
5G165NA04
5G165NA10
5J055AX33
5J055AX53
5J055BX16
5J055CX23
5J055DX09
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX42
5J055DX45
5J055DX54
5J055DX72
5J055DX80
5J055EZ17
5J055EZ42
5J055FX04
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX20
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX03
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】大電流が流れた際に、遮断が必要な場合、適切に電流を遮断する直流遮断器を実現する。
【解決手段】直流遮断器(1)は、直列接続された半導体スイッチ(2)および第1開閉器(3)と、半導体スイッチの2次側電圧を計測する第1電圧計(7)と、半導体スイッチに流れる電流を計測する電流計(6)と、を備え、電流計が所定の電流値以上を検出してから、所定時間経過した後まで、第1電圧計が所定の電圧値未満を検出していた場合に、半導体スイッチをオフにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流送電系統に適用される直流遮断器であって、
半導体スイッチと、
前記半導体スイッチの2次側電圧を計測する第1電圧計と、
前記半導体スイッチに流れる電流を計測する電流計と、
所定の条件が満たされたとき、前記半導体スイッチをオフにする制御部と、を備え、
前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第1時間経過した後まで、前記2次側電圧が所定の電圧値未満である状態が継続することを、第1条件として含む、直流遮断器。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記電流が所定の第2電流値以上であることを、第2条件として含み、
前記制御部は、前記第1条件および前記第2条件が満たされたとき、前記所定の条件が満たされたと判定する、請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第2時間経過した後まで、前記電流が前記第1電流値以上である状態が継続することを、第3条件として含み、
前記制御部は、前記第1条件および前記第3条件が満たされたとき、前記所定の条件が満たされたと判定する、請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項4】
前記第2電流値は、前記第1電流値よりも大きい値である、請求項2に記載の直流遮断器。
【請求項5】
前記半導体スイッチに対して直列に接続された機械式スイッチと、
前記半導体スイッチの1次側電圧を計測する第2電圧計と、をさらに備える、請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項6】
前記半導体スイッチおよび前記機械式スイッチがオフの状況において、前記1次側電圧と前記2次側電圧との電位差の絶対値が所定値以下であった場合に、前記機械式スイッチをオンにできなくする、請求項5に記載の直流遮断器。
【請求項7】
前記半導体スイッチがオンかつ前記機械式スイッチがオフの状況において、前記1次側電圧と前記2次側電圧との電位差の絶対値が所定値より大きい場合に、前記機械式スイッチをオンにできなくする、請求項5に記載の直流遮断器。
【請求項8】
前記機械式スイッチは、前記第1電圧計の2次側に接続される、請求項5から7のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項9】
前記半導体スイッチとして、互いに直列に接続され、かつ互いに逆極性の第1半導体スイッチおよび第2半導体スイッチを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項10】
前記機械式スイッチは、前記半導体スイッチの1次側に接続される、請求項5に記載の直流遮断器。
【請求項11】
直流送電系統に適用される直流遮断器の遮断方法であって、
前記直流遮断器は、半導体スイッチを備え、
前記半導体スイッチの2次側電圧を計測するステップと、
前記半導体スイッチに流れる電流を計測するステップと、
所定の条件が満たされたとき、前記半導体スイッチをオフにするステップと、を含み、
前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第1時間経過した後まで、前記2次側電圧が所定の電圧値未満である状態が継続することを、第1条件として含む、遮断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流送電では、短絡などの事故が発生した際に、電流が単調上昇を続けることになる。短絡電流が流れた際には遮断器によって電流が遮断されるが、遮断器は突入電流で誤って遮断することを防ぐために、応答性が適度に遅くなっている。そのため、遮断器は短絡電流をある程度の時間流すことになり、二次的な故障が発生することがある。
【0003】
また、短絡電流の大きさによっては、遮断器の接点が溶着してしまい、接点を開くことができず保護できないこともある。特許文献1には、半導体スイッチと機械式スイッチとを直列に接続し、半導体スイッチに限流器を並列に接続した遮断器であって、予め半導体スイッチをオフにすることで、機械式スイッチの開閉能力まで短絡電流を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号WO2017/134825A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、実際に短絡電流を遮断するのは機械式スイッチであるため、接点が溶着するリスクは残る。また、機械式スイッチによって電流遮断するため、応答性が遅い。
【0006】
本発明の一態様は、大電流が流れた際に、遮断が必要な場合に適切に電流を遮断する直流遮断器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る直流遮断器は、直流送電系統に適用される直流遮断器であって、半導体スイッチと、前記半導体スイッチの2次側電圧を計測する第1電圧計と、前記半導体スイッチに流れる電流を計測する電流計と、所定の条件が満たされたとき、前記半導体スイッチをオフにする制御部と、を備え、前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第1時間経過した後まで、前記2次側電圧が所定の電圧値未満である状態が継続することを、第1条件として含む。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る直流遮断器の遮断方法は、直流送電系統に適用される直流遮断器の遮断方法であって、前記直流遮断器は、半導体スイッチを備え、前記半導体スイッチの2次側電圧を計測するステップと、前記半導体スイッチに流れる電流を計測するステップと、所定の条件が満たされたとき、前記半導体スイッチをオフにするステップと、を含み、前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第1時間経過した後まで、前記2次側電圧が所定の電圧値未満である状態が継続することを、第1条件として含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、大電流が流れた際に、遮断が必要な場合に適切に電流を遮断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る直流遮断器の電気回路図である。
図2】直流遮断器1の通電時の動作例を示すフローチャートである。
図3】直流遮断器1の遮断時の動作例を示すフローチャートである。
図4】短絡電流が流れた場合における電流と電圧のグラフである。
図5】突入電流が流れた場合における電流と電圧のグラフである。
図6】負荷投入直後にユーザ操作によって負荷開放した場合における電流と電圧のグラフである。
図7】実施形態2に係る直流遮断器の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図6を参照し、詳細に説明する。
【0012】
(直流遮断器1の構成)
図1は、実施形態1に係る直流遮断器1の電気回路図である。直流遮断器1は、直流電路の間に挿入され、電流を遮断する遮断器である。直流遮断器1は、半導体スイッチ2と、第1開閉器3と、第2開閉器4と、過電圧抑制回路5と、電流計6と、第1電圧計7と、第2電圧計8と、制御部9とを備える。
【0013】
直流遮断器1では、半導体スイッチ2と第1開閉器3とがこの順に直列で、1次側の正極と2次側の正極との間に接続されている。また、1次側の負極と2次側の負極との間に第2開閉器4が接続されている。
【0014】
半導体スイッチ2は、半導体を用いたスイッチであり、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FET(Field Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。半導体スイッチ2には、ダイオードが逆極性で並列に接続されていてもよい。第1開閉器3および第2開閉器4は、機械式スイッチであり、リレーまたは電磁接触器である。
【0015】
半導体スイッチ2には、並列に過電圧抑制回路5が接続されている。過電圧抑制回路5は、半導体スイッチ2に印加される過電圧を抑制する回路であり、例えば、スナバ回路、RC回路、またはサージアブソーバなどが一例として挙げられる。
【0016】
1次側正極と2次側正極との間には、電流計6が配置されており、当該電路に流れる電流を計測することができる。電流計6は、抵抗検出型または磁場検出型のセンサなどの任意の形態をとることができる。また、電流計6は、正極における電流を計測することに制限されず、負極における電流を計測しても構わない。
【0017】
第1電圧計7は、1次側負極の電位と、半導体スイッチ2と第1開閉器3との間の電位との電位差(半導体スイッチの2次側電圧)を計測するセンサである。また、第2電圧計8は、1次側負極の電位と1次側正極の電位との電位差(半導体スイッチの1次側電圧)を計測するセンサである。第1電圧計7および第2電圧計8は任意の電圧センサであってよい。
【0018】
制御部9は、直流遮断器1の各部を統括して制御する。具体的には、電流計6、第1電圧計7、および第2電圧計8によるそれぞれの計測値に基づき、半導体スイッチ2、第1開閉器3、および第2開閉器4を制御する。
【0019】
(短絡電流が発生した場合)
動作例の説明に先立ち、短絡事故が発生した場合における電流と電圧の挙動をまず整理する。短絡事故が発生した場合、電流は単調増加し、電圧は瞬時に0Vに低下する。
【0020】
一般的に遮断器は、所定の電流値を検出した段階で即時に遮断を開始するわけではなく、ある一定期間遅れて遮断を開始する。これは、大電流が流れる場合が短絡電流だけではなく、突入電流でも起こり得る事態であるため、意図的に応答性を遅らせている。そのため、遮断器が動作する段階では、十分に短絡電流の電流値が上昇しており、接点が溶着する可能性がある。
【0021】
(直流遮断器1の動作)
次に、直流遮断器1の動作を説明し、直流遮断器1では適切に短絡電流を遮断できることを示す。
【0022】
図2は、直流遮断器1の通電時の動作例を示すフローチャートである。
【0023】
(半導体スイッチ2の状態確認)
まずは、1次側から2次側に向けて電流を流す前に、半導体スイッチ2が正常に動作しているかを判定する。これにより、短絡事故が発生した際に、短絡電流を適切に遮断することができるようになる。
【0024】
制御部9は、半導体スイッチ2をオフにする(S101)。その後、制御部9は、第1開閉器3および第2開閉器4を開の状態にする(S102)。第1電圧計7は、半導体スイッチ2の2次側の電圧を第1電圧値として計測し、第2電圧計8は、半導体スイッチ2の1次側の電圧を第2電圧値として計測する(S103)。第1電圧計7および第2電圧計8は、計測した第1電圧値および第2電圧値をそれぞれ制御部9に出力する。
【0025】
制御部9は、第1電圧値と第2電圧値との電位差の絶対値が所定値以下であるかを判定する(S104)。S104においてYesの場合、制御部9は、半導体スイッチ2が短絡故障していると判断する(S105)。S104においてNoの場合、S106に処理を進める。
【0026】
制御部9は、半導体スイッチ2をオンにする(S106)。第1電圧計7は、半導体スイッチ2の2次側の電圧を第1電圧値として計測し、第2電圧計8は、半導体スイッチ2の1次側の電圧を第2電圧値として計測する(S107)。第1電圧計7および第2電圧計8は、計測した第1電圧値および第2電圧値をそれぞれ制御部9に出力する。
【0027】
制御部9は、第1電圧値と第2電圧値との電位差の絶対値が所定値より大きいかを判定する(S108)。S108においてYesの場合、制御部9は、半導体スイッチ2が開放故障していると判断する(S109)。S108においてNoの場合、S111に処理を進める。
【0028】
半導体スイッチ2が短絡故障または開放故障していた場合、当該直流遮断器1は故障したものと、制御部9は判断する(S110)。そのため、当該直流遮断器1は電源投入されないようにソフト的にロックされてもよい。また、当該直流遮断器1が故障したことをLED(Light Emitting Diode)またはブザーなどでユーザに報知してもよい。
【0029】
以上のS101~S110の工程によって、制御部9は半導体スイッチ2の状態を確認している。そのため、半導体スイッチ2が短絡故障または開放故障していないことを確認したうえで、2次側回路に1次側回路の電源を接続することができる。そのため、必要なときに直流電流を遮断でき、信頼性が高い直流遮断器1となる。
【0030】
(2次側回路の状態確認)
以降の処理は、1次側の電源から2次側の負荷に対し電力を供給している際の判定処理である。そのため、電力を供給している間は常にこれ以降の判定処理が繰り返し行われる。
【0031】
第1開閉器3および第2開閉器4を閉の状態にする(S111)。この際、一度半導体スイッチ2をオフにしたうえで、第1開閉器3および第2開閉器4を閉の状態にし、その後で半導体スイッチ2をオンにしてもよい。これは、電流を流している最中に第1開閉器3および第2開閉器4を閉の状態に移行すると、チャタリング等を起こすために、生じたアークによって接点溶着するリスクを低減するための処置である。
【0032】
第1電圧計7は、半導体スイッチ2の2次側の電圧を第1電圧値として計測し、電流計6は、半導体スイッチ2に流れる電流を電流値として計測する(S112)。第1電圧計7および電流計6は、計測した第1電圧値および電流値をそれぞれ制御部9に出力する。
【0033】
制御部9は、電流値が所定の第1過電流整定値I1以上かを確認する(S113)。S113においてNoの場合、制御部9は後述する第1継続時間t1および第2継続時間t2のカウントをリセットする(S114)。その後、S112に処理を戻し、1次側回路に接続された電源を、2次側回路に接続し続ける。
【0034】
S113においてYesの場合、制御部9は第1継続時間t1および第2継続時間t2をカウントアップする(S115)。第1継続時間t1は、電流値が予め定めた第1過電流整定値I1以上となってからの継続時間である。また、第2継続時間t2は、電流値が予め定めた第1過電流整定値I1以上となってから、第1電圧値が後述する整定電圧値V1未満である継続時間である。
【0035】
制御部9は、電流値が所定の第2過電流整定値I2以上かを判定する(S116、第2条件)。S116においてYesの場合、S118に処理を進める。
【0036】
この制御部9での判定は、大電流が第2過電流整定値I2よりも大きくなっているか否かでもって、当該大電流が突入電流なのか、短絡電流なのかを判断する処理である。2次側回路が短絡している場合は、上述したように電流値は単調増加を続けるため、時間が十分に経過した場合、第2過電流整定値I2(第1過電流整定値I1よりも大きい値)を超過する。対して、突入電流の場合は、2次側回路のコンデンサ等を充電するための瞬間的な電流であり、電流値は単調増加せずに、振動しながら収束していくことが一般的に知られている。すなわち、制御部9においてこの処理は、大電流が突入電流なのか短絡電流なのかを判断するための一つの指標である。この判定を「第2過電流判定」と称する。
【0037】
S116においてNoの場合、第1継続時間t1が第1整定時間T1以上かを判定する(S117)。つまり、電流値が第1過電流整定値I1以上となった時点から、第1整定時間T1経過した後まで、電流値が第1過電流整定値I1以上である状態が継続するかを判定する(第3条件)。
【0038】
S117においてYesの場合、S118に処理を進める。S118においてNoの場合、S112に処理を戻す。その後、S112に処理を戻し、1次側回路に接続された電源を、2次側回路に接続し続ける。
【0039】
この制御部9での判定は、大電流がどの程度続いているかを判断している処理である。2次側回路が短絡していない場合は、突入電流によって大電流が流れることになるが、突入電流は2次側回路のコンデンサ等の充電まで続くだけであり、長くは続かない。対して、2次側回路が短絡している場合は、短絡電流が流れているため、大電流が電流を遮断するまで続くことになる。すなわち、制御部9においてこの処理は、大電流が突入電流なのか短絡電流なのかを判断するための一つの指標である。この判定を「第1過電流判定」と称する。
【0040】
次に、第1電圧値が整定電圧値V1未満かを判定する(S118)。つまり、電流値が第1過電流整定値I1以上となった時点から、第1整定時間T1経過した後まで、第1電圧値が整定電圧値V1未満である状態が継続しているかを判定する(第1条件)。
【0041】
S118においてNoの場合、制御部9は第2継続時間t2のカウントをリセットする(S119)。その後、S112に処理を戻し、1次側回路に接続された電源を、2次側回路に接続し続ける。対して、S118においてYesの場合、S120に処理を進める。
【0042】
この制御部9での判定は、2次側回路が短絡していないかを判断している処理である。2次側回路が短絡していない場合は、第1電圧値にある程度の電圧が印加されることになるが、2次側回路が短絡している場合は、第1電圧値が0Vに近い値までになる。制御部9は、この状態の差異を利用して2次側回路の状態を判断している。
【0043】
S116~S118の処理の後、制御部9は、第2継続時間t2が所定の第2整定時間T2以上であるかを判定する(S120)。S120においてNoの場合、S112に処理を戻し、1次側回路に接続された電源を、2次側回路に接続し続ける。なお、第1整定時間と第2整定時間とは任意の所定の値であり、大小関係が制限されない。また、S116およびS117のステップは、省略し、S115の後に、S118を処理しても構わない。また、S116(第2条件)およびS117(第3条件)のステップのいずれか一方を省略してもよい。つまり、第1条件は必須であり、第2条件および第3条件は任意の条件である。
【0044】
S120においてYesの場合、制御部9は半導体スイッチ2に流れている電流が短絡電流であり、2次側回路において直流事故が発生したものと判断する(S121)。この判定を「電圧低下継続判定」と称する。すなわち、第1条件および第2条件が満たされた場合、または、第1条件および第3条件が満たされた場合、制御部9は2次側回路において直流事故が発生したものと判断してもよい。あるいは、第2条件、第3条件の判定を省略し、第1条件が満たされた場合に、制御部9は2次側回路において直流事故が発生したものと判断してもよい。
【0045】
半導体スイッチが短絡故障または開放故障するか、2次側回路にて直流事故が発生していた場合、制御部9は半導体スイッチをオフにする(S122)。その後、第1開閉器3および第2開閉器4を開の状態にする(S123)。この際に、電流値を確認し、所定のゼロ電流整定値未満であることを判定してから第1開閉器3および第2開閉器4を開の状態にしてもよい。これは、第1開閉器3および第2開閉器4において発生するアークによる接点溶着を防ぐための処置である。
【0046】
(電流の遮断手順)
図3は、直流遮断器1の遮断時の動作例を示すフローチャートである。
【0047】
制御部9は、半導体スイッチ2をオフにする(S201)。その後、電流計6は、半導体スイッチ2に流れる電流を電流値として計測する(S202)。電流計6は、計測した電流値を制御部9に出力する。
【0048】
制御部9は、電流値が所定のゼロ電流整定値未満であるかを確認する(S203)。S203においてNoの場合、S202に処理を戻し、電流を遮断し切るのを待つ。S203においてYesの場合、制御部9は、第1開閉器3および第2開閉器4を開の状態にする(S204)。
【0049】
(電流および電圧の時系列変化)
図4は、短絡電流が流れた場合における電流と電圧のグラフである。2次側回路において短絡が発生した場合に短絡電流が流れる。上述したように短絡電流は単調増加を続けるが、図4においては0.2秒において2次側回路が短絡し、短絡電流が流れ始めた。このタイミングに合わせて、電圧は0Vに低下する。
【0050】
電流値が第1過電流整定値I1を超過したタイミングで第1継続時間t1と第2継続時間t2とのカウントアップを開始する。第1継続時間t1が第1整定時間T1を超過した時刻t3から、制御部9は第1過電流判定と判定する。また、電流値が第2過電流整定値I2を超過した時刻t4から、制御部9は第2過電流判定と判定する。さらに、第2継続時間t2が第2整定時間T2を超過した時刻t5から、制御部9は電圧低下継続判定と判定する。
【0051】
制御部9は、電圧低下継続判定と判定することによって、2次側回路が短絡していると判断し、直流遮断器1の遮断動作を開始する(ただし図4では、遮断動作を行わない場合を示す)。
【0052】
図5は、突入電流が流れた場合における電流と電圧のグラフである。突入電流が流れた場合は、2次側回路におけるRC回路などによって、電流と電圧が振動する現象がみられる。図5は、当該電流と電圧との振動の一部を拡大した図でもある。
【0053】
制御部9における第1過電流判定と第2過電流判定に関する判定は、上述した2次側回路が短絡した場合と同一である。また、2次側回路のコンデンサ等が充電されることによって、第1電圧値が上昇していき、整定電圧値V1以上に、時刻t6でなっていることがわかる。そのため、この場合は、第2継続時間t2のカウントがリセットされるようになるため、第2継続時間t2が第2整定時間T2を超過することはない。すなわち、制御部9が電圧低下継続判定をすることがなく、その結果、制御部9は、直流遮断器1に流れた大電流が突入電流であったと判断し、当該大電流を遮断しない。
【0054】
図6は、負荷投入直後にユーザ操作によって負荷開放した場合における電流と電圧のグラフである。制御部9における第1過電流判定に関する判定は、上述した2次側回路が短絡した場合と同一である。また、直流遮断器1を開放したことによって、第1電圧値が上昇したために、時刻t7において整定電圧値V1以上になっている。そのため、この場合は、第2継続時間t2のカウントがリセットされるようになるため、第2継続時間t2が第2整定時間T2を超過することはない。
【0055】
さらに、図6では、直流遮断器1を開放したことによって、電流値も急低下していることがわかる。そのため、電流値が第2過電流整定値I2を超過しなかったために、制御部9は第2過電流判定をしない。
【0056】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0057】
図7は、実施形態2に係る直流遮断器1aの電気回路図である。直流遮断器1aは、直流遮断器1と異なり、半導体スイッチ2に代えて、第1半導体スイッチ2aおよび第2半導体スイッチ2bを備える。また、直流遮断器1aは、直流遮断器1と異なり、過電圧抑制回路5に代えて、第1過電圧抑制回路5aおよび第2過電圧抑制回路5bを備える。また、制御部9aは、制御部9と基本的な機能は同一だが、半導体スイッチ2の操作をする際に、第1半導体スイッチ2aおよび第2半導体スイッチ2bの操作をする。
【0058】
第1半導体スイッチ2aおよび第2半導体スイッチ2bは互いに対し逆極性となっている。また、第1半導体スイッチ2aおよび第2半導体スイッチ2bには、ダイオードがそれぞれ並列に、第1半導体スイッチ2aおよび第2半導体スイッチ2bの極性に対し逆向きに接続されている。結果として、当該2個のダイオードは互いに逆極性となっている。
【0059】
第1過電圧抑制回路5aは、第1半導体スイッチ2aに対し並列に接続されている。第2過電圧抑制回路5bは、第2半導体スイッチ2bに対し並列に接続されている。
【0060】
ここで、実施形態1に係る直流遮断器1では、1次側正極に直流電源の正極を、2次側負極に直流電源の負極を接続しなければならなかった。対して、実施形態2に係る直流遮断器1aでは、1次側第1極および1次側第2極に接続する電源の極性の制限はない。すなわち、1次側第1極に直流電源の負極を接続しても構わなく、この場合実施形態1の逆極性の動作をすることになる。
【0061】
第1半導体スイッチ2aおよび第2半導体スイッチ2bが逆極性で直列に接続されているため、電流が流れる際には、一方の半導体スイッチが電流を流し、他方のダイオードが電流を流すことになる。接続される電源の極性が反転した場合は、電流を流す半導体スイッチとダイオードとの関係が逆転する。すなわち、直流遮断器1aでは、双方向で電流を流せるようになっている。
【0062】
〔変形例〕
実施形態1および2では、第1開閉器3および第2開閉器4として2個の開閉器を備える構成を示したが、これに限定されず、電源の正極のみを遮断する構成でも構わない。すなわち、第2開閉器4を備えていなく、半導体スイッチ2、2a、2bと第1開閉器3とによって電流を遮断するだけであっても構わない。
【0063】
さらに、実施形態1および2では、第1開閉器3および第2開閉器4は、半導体スイッチ2、2a、2bの2次側に配置されたが、これに限定されない。すなわち、第1開閉器3および第2開閉器4は、半導体スイッチ2、2a、2bの1次側に配置されてもよい。
【0064】
また、短絡電流に関して示したが、任意の他の事故電流であっても構わない。
【0065】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る直流遮断器は、直流送電系統に適用される直流遮断器であって、半導体スイッチと、前記半導体スイッチの2次側電圧を計測する第1電圧計と、前記半導体スイッチに流れる電流を計測する電流計と、所定の条件が満たされたとき、前記半導体スイッチをオフにする制御部と、を備え、前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第1時間経過した後まで、前記2次側電圧が所定の電圧値未満である状態が継続することを、第1条件として含む。
【0066】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る直流遮断器の遮断方法は、直流送電系統に適用される直流遮断器の遮断方法であって、前記直流遮断器は、半導体スイッチを備え、前記半導体スイッチの2次側電圧を計測するステップと、前記半導体スイッチに流れる電流を計測するステップと、所定の条件が満たされたとき、前記半導体スイッチをオフにするステップと、を含み、前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第1時間経過した後まで、前記2次側電圧が所定の電圧値未満である状態が継続することを、第1条件として含む。
【0067】
上記の構成によれば、大電流が流れた際の電圧値を監視することによって、当該大電流が短絡電流なのか突入電流なのかを判断することができ、短絡電流の場合のみ電流を遮断することができる。
【0068】
前記所定の条件は、前記電流が所定の第2電流値以上であることを、第2条件として含み、前記制御部は、前記第1条件および前記第2条件が満たされたとき、前記所定の条件が満たされたと判定してもよい。
【0069】
前記第2電流値は、前記第1電流値よりも大きい値であってもよい。
【0070】
上記の構成によれば、流れている大電流の電流値が上昇していることを検出することができる。そのため、流れている大電流が短絡電流であると判断できる。
【0071】
前記所定の条件は、前記電流が所定の第1電流値以上となった時点から、所定の第2時間経過した後まで、前記電流が前記第1電流値以上である状態が継続することを、第3条件として含み、前記制御部は、前記第1条件および前記第3条件が満たされたとき、前記所定の条件が満たされたと判定してもよい。
【0072】
上記の構成によれば、流れている大電流が短時間ではないことがわかる。そのため、流れている大電流が短絡電流であると判断できる。
【0073】
前記半導体スイッチに対して直列に接続された機械式スイッチと、前記半導体スイッチの1次側電圧を計測する第2電圧計と、をさらに備えてもよい。
【0074】
上記の構成によれば、半導体スイッチの1次側電圧をさらに計測することができ、2次側電圧と合わせて半導体スイッチの状態を判断することができる。
【0075】
前記半導体スイッチおよび前記機械式スイッチがオフの状況において、前記1次側電圧と前記2次側電圧との電位差の絶対値が所定値以下であった場合に、前記機械式スイッチをオンにできなくしてもよい。
【0076】
上記の構成によれば、半導体スイッチが短絡故障していないかを判断することができる。
【0077】
前記半導体スイッチがオンかつ前記機械式スイッチがオフの状況において、前記1次側電圧と前記2次側電圧との電位差の絶対値が所定値より大きい場合に、前記機械式スイッチをオンにできなくしてもよい。
【0078】
上記の構成によれば、半導体スイッチが開放故障していないかを判断することができる。
【0079】
前記機械式スイッチは、前記第1電圧計の2次側に接続されてもよい。
【0080】
上記の構成によれば、半導体スイッチの状態を確認してから、機械式スイッチに電圧を印加することができる。
【0081】
前記半導体スイッチとして、互いに直列に接続され、かつ互いに逆極性の第1半導体スイッチおよび第2半導体スイッチを含んでもよい。
【0082】
上記の構成によれば、直流遮断器に印加する電圧の極性が制限されない。
【0083】
前記機械式スイッチは、前記半導体スイッチの1次側に接続されてもよい。
【0084】
上記の構成によれば、半導体スイッチの1次側に機械式スイッチを接続することができる。
【0085】
〔ソフトウェアによる実現例〕
直流遮断器1、1aの制御部9(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0086】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0087】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0088】
また、上記装置の機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記装置として機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記装置の機能を実現することも可能である。
【0089】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1、1a 直流遮断器
2 半導体スイッチ
2a 第1半導体スイッチ
2b 第2半導体スイッチ
3 第1開閉器(機械式スイッチ)
4 第2開閉器
5 過電圧抑制回路
5a 第1過電圧抑制回路
5b 第2過電圧抑制回路
6 電流計
7 第1電圧計
8 第2電圧計
9 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7