(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169673
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20231122BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/13357
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080938
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川平 雄一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】三枝 良輔
(72)【発明者】
【氏名】坂井 彰
【テーマコード(参考)】
2H291
2H391
【Fターム(参考)】
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA25X
2H291FA25Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA42Z
2H291FA74Z
2H291FA82Z
2H291FA85Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FD09
2H291FD10
2H291FD12
2H291HA11
2H291HA15
2H291LA22
2H291LA25
2H291PA07
2H291PA25
2H291PA79
2H391AA01
2H391AB03
2H391AB04
2H391AC13
2H391AC25
2H391AC30
2H391EA13
2H391EA14
2H391EA16
(57)【要約】
【課題】正面コントラストの低下を抑え、かつ、斜めコントラストの低下を抑えることができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】観察面側から背面側に向かって順に、第一透過軸を有する第一偏光子と、液晶パネルと、第二透過軸を有する第二偏光子と、上記第二透過軸と平行な遅相軸を有する二軸位相差板と、上記第二透過軸と平行な第三透過軸を有する第三偏光子と、光源、及び、上記光源よりも上記観察面側に配置されたプリズムシートを有するバックライトと、を備え、上記プリズムシートは、上記観察面側の表面に複数列に並ぶプリズムを有し、上記プリズムの稜線に垂直な方向における白表示の輝度を極角に対してプロットした光拡散特性が、サイドローブを有さない、又は、サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比が1.35以下である液晶表示装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察面側から背面側に向かって順に、
第一透過軸を有する第一偏光子と、
液晶パネルと、
第二透過軸を有する第二偏光子と、
前記第二透過軸と平行な遅相軸を有する二軸位相差板と、
前記第二透過軸と平行な第三透過軸を有する第三偏光子と、
光源、及び、前記光源よりも前記観察面側に配置されたプリズムシートを有するバックライトと、を備え、
前記プリズムシートは、前記観察面側の表面に複数列に並ぶプリズムを有し、
前記プリズムの稜線に垂直な方向における白表示の輝度を極角に対してプロットした光拡散特性が、サイドローブを有さない、又は、サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比が1.35以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記二軸位相差板の遅相軸と平行な方向を方位角0°とするとき、
前記プリズムの前記稜線の方位角は、0°±3°であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記プリズムは、前記稜線に垂直な方向における断面形状が、観察面側に配置された頂角と、背面側に配置された一対の底角とを有する三角形状であり、
前記頂角は、80°以上、90°未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記バックライトは、更に、前記プリズムシートの観察面側に配置された拡散シートを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記拡散シートは、ヘイズが12%以上、85%以下であることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表示のために液晶組成物を利用する表示装置であり、その代表的な表示方式は、一対の基板間に封入された液晶組成物を含有する液晶層に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶組成物中の液晶分子の配向状態を変化させることにより、光の透過量を制御するものである。このような液晶表示装置は、薄型、軽量及び低消費電力といった特長を活かし、幅広い分野で用いられている。このような液晶表示装置には、コントラストの改善等を目的として光学素子が用いられることがある。
【0003】
液晶表示装置に関する技術として、特許文献1には、第一偏光子、複屈折層及び第二偏光子を備える光学素子であって、前記第一偏光子、前記複屈折層及び前記第二偏光子は、この順に積層され、前記第一偏光子の透過軸と、前記第二偏光子の透過軸とは、互いに平行であり、前記複屈折層の2軸性パラメータNZは、10≦NZ、又は、NZ≦-9を満たし、前記複屈折層の厚み方向位相差の絶対値|Rth|は、|Rth|≧200nmを満たす光学素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶表示装置は、液晶層への光の透過方法により、反射型と透過型に大別される。透過型の液晶表示装置は、光源を有するバックライトを備え、バックライトから出射された光が液晶層を透過することで表示を行う。透過型の液晶表示装置は、装置内に光源を有するため、暗い環境下でも視認性がよい。このような透過型の液晶表示装置が備えるバックライトには、光源からの光を正面に集光するために、光源の観察面側にプリズムシートが設けられる場合がある。プリズムシートを有するバックライトを備える液晶表示装置では、正面コントラスト(CR:Contrast Ratio)を高めることができる。
【0006】
ところで、車載用の液晶表示装置(車載用液晶ディスプレイともいう)は、センターディスプレイに代表されるように座席から斜め方向より視聴される機会が多く、正面CRよりも斜めCRが重要視される傾向がある。欧州においては、斜め輝度及び斜めCRについて厳しいOEM規格値が設けられている。しかしながら、プリズムシートを1枚備えるバックライトを搭載した車載用液晶ディスプレイに対して、黒表示における斜め方向の光漏れを抑制することができる偏光板ルーバーを適用すると、斜めCRが低下するという課題があった。
【0007】
上記偏光板ルーバー適用時に斜めCRが低下する要因の一つとして、プリズムシートによって発生するサイドローブの存在が挙げられる。サイドローブは、プリズムシートが有するプリズムの稜線に垂直な方位において、バックライトから出射された光のうち、極角の大きな成分がプリズムシートによって正面に集光されずに、更に深い極角でプリズムシートから出射されることにより生じる光成分(サイドローブ光)が原因で発生する現象である。サイドローブ光は本来不要な光成分であり、液晶パネル内で迷光になりやすく、これが黒表示における光漏れとなり、斜めCRを低下させる。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、正面コントラストの低下を抑え、かつ、斜めコントラストの低下を抑えることができる液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一実施形態は、観察面側から背面側に向かって順に、第一透過軸を有する第一偏光子と、液晶パネルと、第二透過軸を有する第二偏光子と、上記第二透過軸と平行な遅相軸を有する二軸位相差板と、上記第二透過軸と平行な第三透過軸を有する第三偏光子と、光源、及び、上記光源よりも上記観察面側に配置されたプリズムシートを有するバックライトと、を備え、上記プリズムシートは、上記観察面側の表面に複数列に並ぶプリズムを有し、上記プリズムの稜線に垂直な方向における白表示の輝度を極角に対してプロットした光拡散特性が、サイドローブを有さない、又は、サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比が1.35以下である、液晶表示装置。
【0010】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記二軸位相差板の遅相軸と平行な方向を方位角0°とするとき、上記プリズムの上記稜線の方位角は、0°±3°である、液晶表示装置。
【0011】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記プリズムは、上記稜線に垂直な方向における断面形状が、観察面側に配置された頂角と、背面側に配置された一対の底角とを有する三角形状であり、上記頂角は、80°以上、90°未満である、液晶表示装置。
【0012】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記バックライトは、更に、上記プリズムシートの観察面側に配置された拡散シートを備える、液晶表示装置。
【0013】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(4)の構成に加え、上記拡散シートは、ヘイズが12%以上、85%以下である、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、正面コントラストの低下を抑え、かつ、斜めコントラストの低下を抑えることができる液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図3】実施形態1に係る液晶表示装置が備えるTFT基板の画素構成を示す平面模式図である。
【
図4】実施形態1に係る液晶表示装置が備えるCF基板の画素構成を示す平面模式図である。
【
図5】
図3及び4中のX1-X2線に沿った実施形態1に係る液晶パネルの断面模式図である。
【
図6】
図3中のY1-Y2線に沿ったTFT基板の断面模式図である。
【
図7】本実施形態に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの斜視模式図である。
【
図8】プリズムシートが有するプリズムの断面形状について説明する断面模式図である。
【
図9】プリズムシートから光線が出射されず、バックライト方向に光線が戻されるケースについて説明する断面模式図の一例である。
【
図10】プリズムシートから光線が出射されず、バックライト方向に光線が戻されるケースについて説明する断面模式図の一例である。
【
図11】プリズムシートから光線が正面方向に集光されるケースについて説明する断面模式図の一例である。
【
図12】プリズムシートから光線がサイドローブとして出射されるケースについて説明する断面模式図の一例である。
【
図13】実施形態1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。
【
図14】実施形態2に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図15】実施形態2に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。
【
図16】比較例1に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図17】比較例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの斜視模式図である。
【
図18】比較例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。
【
図19】比較例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの、方位角90°-270°方向における白輝度の極角依存性を示す図である。
【
図20】欧州におけるOEM規格内にて定められるエリアAについて説明する図である。
【
図21】比較例1に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図22】比較例2に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図23】比較例2に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図24】比較例3に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図25】比較例3に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図26】実施例1に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図27】実施例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。
【
図28】実施例1に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図29】実施例2に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図30】実施例2に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図31】実施例3に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図32】実施例3に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図33】実施例4に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図34】実施例4に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図35】実施例5に係る液晶表示装置の断面模式図である。
【
図36】実施例5に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【
図37】サイドローブの極大値/極小値に対する斜めCRを示すグラフである。
【
図38】拡散シートのヘイズに対する正面CR及び斜めCRを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
[用語の定義]
本明細書において、偏光子は、無偏光(自然光)、部分偏光又は偏光から、特定方向にのみ振動する偏光(直線偏光)を取り出す機能を有するものを意味し、円偏光子(円偏光板)とは区別される。特に断りのない限り、本明細書中で「偏光子」というときは保護フィルムを含まず、偏光機能を有する素子だけを指す。吸収型偏光子とは、特定方向に振動する光を吸収し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。反射型偏光子とは、特定方向に振動する光を反射し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。
【0018】
本明細書中、複屈折層の面内位相差Re、厚み方向位相差Rth及びNz係数(2軸性パラメータ)は、複屈折層の厚さをd、屈折率楕円体における面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、それぞれ次式で定義される。
Re=(nx-ny)×d
Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×d
NZ=(nz-nx)/|ny-nx|
【0019】
なお、本明細書中で主屈折率、位相差、Nz係数等の光学パラメータの測定波長は、特に断りのない限り550nmとする。
【0020】
本明細書において、複屈折層とは、光学的異方性を有する層のことであり、位相差板と液晶パネルとを包含する概念である。複屈折層は、面内位相差Reと、厚み方向位相差Rthの絶対値とのいずれか一方が10nm以上の値を有するものを意味し、好ましくは、20nm以上の値を有するものを意味する。
【0021】
本明細書中、観察面側とは、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより近い側を意味し、背面側とは、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより遠い側を意味する。
【0022】
本明細書中、極角θとは、対象となる方向(例えば測定方向)と、液晶表示装置(液晶表示装置の画面)の法線に平行な方向とのなす角度を意味する。すなわち、液晶表示装置の法線に平行な方向は極角0°である。法線に平行な方向は法線方向ともいう。また、方位とは、対象となる方向を液晶表示装置(液晶表示装置の画面)上に射影したときの方向を意味し、基準となる方位との間のなす角度(方位角)で表現される。本明細書において、基準となる方位(方位角0°)は、上記第二偏光子の上記第二透過軸と平行な方向に設定される。すなわち、上記第二偏光子の上記第二透過軸と平行な方向は方位角0°である。角度及び方位(方位角)は、基準となる方位から反時計回りを正の角度、基準となる方位から時計回りを負の角度とする。反時計回り及び時計回りは、いずれも液晶表示装置の画面を観察面側(正面)から見たときの回転方向を表す。また、角度は、液晶表示装置を平面視した状態で測定された値を表し、2つの直線(軸、方向及び稜線を含む)が互いに直交するとは、液晶表示装置を平面視した状態で直交することを意味する。
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【0024】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る液晶表示装置の断面模式図である。本実施形態の液晶表示装置1は、
図1に示すように、観察面側から背面側に向かって順に、第一透過軸を有する第一偏光子11と、液晶パネル30と、第二透過軸を有する第二偏光子12と、上記第二透過軸と平行な遅相軸を有する上記二軸位相差板としての背面側二軸位相差板40と、上記第二透過軸と平行な第三透過軸を有する第三偏光子13と、光源51、及び、光源51よりも上記観察面側に配置されたプリズムシート52を有するバックライト50と、を備える。このように、本実施形態のバックライト50はプリズムシート52を備えるため、正面コントラスト(CR:Contrast Ratio)を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態の液晶表示装置1が備えるプリズムシート52は、上記観察面側の表面に複数列に並ぶプリズムを有し、上記プリズムの稜線に垂直な方向における白表示の輝度を極角(-90°~90°)に対してプロットした光拡散特性(縦軸:白表示の輝度、横軸:極角)が、サイドローブを有さない、又は、サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比が1.35以下である。このような態様とすることにより、斜めCRの低下を抑制することができる。
【0026】
図2は、サイドローブについて説明する図である。上記サイドローブとは、
図2に示すように、プリズムシートが有するプリズムの稜線に垂直な方向における白表示の輝度を極角に対してプロットした光拡散特性において、最大の極大値を有する第一の極大点1PAに隣接する極小点1PBと、当該極小点1PBに隣接し、かつ、第一の極大点1PAよりも小さな極大値を有する第二の極大点2PAと、を含み、極小点1PB以外の極小点を含まず、第二の極大点2PA以外の極大点を含まないピーク部である。極小点1PBの輝度は、サイドローブの極小輝度ともいい、第二の極大点2PAの輝度は、サイドローブの極大輝度ともいう。
【0027】
液晶表示装置1がサイドローブを有する場合、サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比は、1.20以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、斜めCRの低下をより抑制することができる。サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比の下限値は特に限定されず、サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比は、例えば、1.00を超えればよい。サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比は、1.00を超え、1.35以下であることが好ましく、1.00を超え、1.20以下であることがより好ましい。なお、本明細書では、サイドローブを有さないとは、極大輝度と極小輝度とが同じ値であることを意味するため、サイドローブを有さない場合、サイドローブの極小輝度に対する極大輝度の比は1.00である。
【0028】
上記特許文献1では、偏光板ルーバーを適用した液晶パネルについて開示されている。特許文献1では、当該偏光板ルーバーによって正面CRを向上させることは検討されているが、斜めCRを向上させることは検討されていない。また、本実施形態のように、バックライトの配光特性を最適化することにより、偏光板ルーバーによるCR向上効果を斜め方向にも付与することができる点については、一切開示されていない。
【0029】
以下、本実施形態の液晶表示装置について詳細に説明する。
【0030】
本実施形態の液晶表示装置1は、
図1に示すように、観察面側から背面側に向かって順に、第一偏光子11、視野角補償用位相差フィルム20、液晶パネル30、第二偏光子12、背面側二軸位相差板40、第三偏光子13、及び、バックライト(BL)50を備える。視野角補償用位相差フィルム20は、観察面側から背面側に向かって順に、観察面側二軸位相差板21及びポジティブCプレート22を備える。
【0031】
第一偏光子11は、第一透過軸と、第一透過軸と直交する第一吸収軸又は第一反射軸とを有し、第二偏光子12は、第二透過軸と、第二透過軸と直交する第二吸収軸又は第二反射軸とを有し、第三偏光子13は、第三透過軸と、第三透過軸と直交する第三吸収軸又は第三反射軸とを有する。
【0032】
第二偏光子12及び第三偏光子13は、パラレルニコルに配置される。すなわち、第二偏光子12の第二透過軸(又は第二吸収軸若しくは第二反射軸)及び第三偏光子13の第三透過軸(又は第三吸収軸若しくは第三反射軸)は、平行である。
【0033】
ここで、本明細書中、2つの軸(方向)が平行であるとは、両者のなす角度(絶対値)が0±3°の範囲内であることを指し、好ましくは0±1°の範囲内であり、より好ましくは0±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは0°(完全に平行)である。また、本明細書中、2つの軸(方向)が互いに直交するとは、両者のなす角度(絶対値)が90±3°の範囲内であることを指し、好ましくは90±1°の範囲内であり、より好ましくは90±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは90°(完全に直交)である。上記軸としては、偏光子の透過軸及び位相差板の遅相軸が挙げられる。
【0034】
液晶表示装置1は、第二透過軸を有する第二偏光子12と、背面側二軸位相差板40と、第二透過軸と平行な第三透過軸を有する第三偏光子13と、を備えることから、バックライト50からの出射光の分布を、法線方向と、第二透過軸方向(第三透過軸方向)と、第二吸収軸又は第二反射軸方向(第三吸収軸又は第三反射軸方向)とに選択的に集中させるようなコリメーションができる(十字型の配光分布)。一方、方位角45°、135°、225°及び315°に代表されるその他の斜め方向、すなわち第二透過軸方向(第三透過軸方向)に対して略45°の角度をなす方向からの入射に対しては、背面側二軸位相差板40が第三偏光子13通過後の偏光状態を変化させるため、低い透過率が観測される。このように、第二偏光子12、背面側二軸位相差板40及び第三偏光子13を含む積層体は、光学的なルーバーとして機能するので、偏光板ルーバー70ともいう。偏光板ルーバー70は、通常、粘着層(図示せず)により液晶パネル30に貼付されている。
【0035】
第一偏光子11及び第二偏光子12は、クロスニコル又はパラレルニコルに配置される。高コントラストを得る観点からは、第一偏光子11及び第二偏光子12は、クロスニコルに配置されることが好ましい。第一偏光子11及び第二偏光子12がクロスニコルに配置されるとは、すなわち、第一偏光子11の第一透過軸(又は第一吸収軸若しくは第一反射軸)及び第二偏光子12の第二透過軸(又は第二吸収軸若しくは第二反射軸)が、互いに直交することをいう。また、第一偏光子11及び第二偏光子12がパラレルニコルに配置されるとは、すなわち、第一偏光子11の第一透過軸(又は第一吸収軸若しくは第一反射軸)及び第二偏光子12の第二透過軸(又は第二吸収軸若しくは第二反射軸)が、互いに平行であることをいう。
【0036】
第一偏光子11、第二偏光子12及び第三偏光子13としては、材料や光学的性能について特に限定されず、例えば、吸収型偏光子、反射型偏光子等を適宜用いることができる。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムに二色性を有するヨウ素錯体等の異方性材料を吸着配向させた吸収型偏光子の他、二種類の樹脂からなる共押出しフィルムを1軸延伸して得られる反射型偏光子(例えば、日東電工社製のAPCFや3M社製のDBEF)、金属ワイヤーの細線を周期的に配列させた反射型偏光子(所謂ワイヤーグリッド偏光子)等を適宜用いることができる。また、吸収型偏光子と反射型偏光子とを積層したものを用いることもできる。
【0037】
なかでも、第一偏光子11及び第二偏光子12としては、吸収型偏光子が好適であり、第三偏光子13としては、反射型偏光子が好適である。この場合、第一偏光子11は、第一透過軸と、第一透過軸と直交する第一吸収軸とを有し、第二偏光子12は、第二透過軸と、第二透過軸と直交する第二吸収軸とを有し、第三偏光子13は、第三透過軸と、第三透過軸と直交する第三反射軸とを有する。
【0038】
また、第三偏光子13とバックライト50との間には、拡散板が設けられていることが好ましい。このような態様とすることにより、バックライト50から出射される光の利用効率を高めることができる。
【0039】
また、偏光板ルーバー70では、第三偏光子13を複数とし、複数の第三偏光子13を積層して用いてもよい。この場合、複数の第三偏光子13の第三透過軸は、実質的に同じ方位に設定される。
【0040】
また、機械強度や耐湿熱性を確保するために、第一偏光子11、第二偏光子12及び第三偏光子13の観察面側及び背面側の少なくとも一方に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護フィルム(図示せず)がラミネートされてもよい。保護フィルムは、任意の適切な接着層(図示せず)を介して第一偏光子11、第二偏光子12及び第三偏光子13に貼り付けられる。
【0041】
また、保護フィルムが背面側二軸位相差板40の機能を兼ね備えてもよい。すなわち、背面側二軸位相差板40は、TACフィルム等の保護フィルム(ただし、面内位相差Reと、厚み方向位相差Rthの絶対値とのいずれか一方が10nm以上の値を有するもの)であってもよい。
【0042】
なお、本明細書において、「接着層」とは、隣り合う光学素子の面と面とを接合し、実用上充分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、アンカーコート剤が挙げられる。接着層は、被着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層であってもよい。
【0043】
また、本明細書において、「粘着層」とは、「接着層」と同様に、隣り合う光学素子の面と面とを接合し、実用上充分な接着力と接着時間で一体化させるものをいうが、接着層との違いは、そのもの自体が粘り気と弾性を持つことであり、水、溶剤、熱等をきっかけとした化学変化を起こすことで接合するのではなく、常温で短時間、かつわずかな圧力を加えるだけで接合することである。また、一度接合したら剥がすことができないのが接着層であるのに対して、剥がすことができるのが粘着層でもある。粘着層を形成する材料としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の樹脂材料や、ゴム材料が挙げられる。
【0044】
観察面側二軸位相差板21及びポジティブCプレート22から構成される視野角補償用位相差フィルム20は、FFS(Fringe Field Switching)モードの液晶表示装置の視野角を補償する機能を有する。
【0045】
二軸位相差板(観察面側二軸位相差板21及び背面側二軸位相差板40)は、互いに直交するx、y、z軸方向に3つの主屈折率nx、ny、nzを有し、nx>nz>nyであり、かつ、(nx-nz)/|nx-ny|=0.1の関係を有する。
【0046】
観察面側二軸位相差板21及び背面側二軸位相差板40の材料としては特に限定されず、例えば、ポリマーフィルムを延伸したもの、液晶性材料の配向を固定したもの、無機材料から構成される薄板等を用いることができる。
【0047】
観察面側二軸位相差板21及び背面側二軸位相差板40の形成方法としては特に限定されない。ポリマーフィルムから形成される場合、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出し法等を用いることができる。共押出し法により、複数の位相差板を同時に形成する方法を用いてもよい。所望の位相差が発現しさえすれば、無延伸であってもよいし、延伸が施されてもよい。延伸方法も特に限定されず、ロール間引張り延伸法、ロール間圧縮延伸法、テンター横一軸延伸法、斜め延伸法、縦横二軸延伸法の他、熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に延伸を行う特殊延伸法等を用いることができる。
【0048】
また、液晶性材料から形成される場合、例えば、配向処理を施した基材フィルムの上に液晶性材料を塗布し、配向固定する方法等を用いることができる。所望の位相差が発現しさえすれば、基材フィルムに特別な配向処理を行わない方法や、配向固定した後、基材フィルムから剥がして別のフィルムに転写加工する方法等であってもよい。更に、液晶性材料の配向を固定しない方法を用いてもよい。また、非液晶性材料から形成される場合も、液晶性材料から形成される場合と同様の形成方法を用いてもよい。
【0049】
ポジティブCプレート22としては、例えば、固有複屈折が負の材料を成分として含むフィルムを縦横二軸延伸加工したもの、ネマチック液晶等の液晶性材料を塗布したもの等を適宜用いることができる。
【0050】
第二偏光子12の第二透過軸と平行な方向を方位角0°とするとき、第一偏光子11の第一透過軸の方位角は適宜設定することができるが、90°±3°の範囲内に設定されることが好ましく、90°±1°の範囲内に設定されることがより好ましく、90°±0.5°の範囲内に設定されることが更に好ましく、90°に設定されることが特に好ましい。また、背面側二軸位相差板40の遅相軸の方位角及び第三偏光子13の第三透過軸の方位角は、それぞれ独立に、0°±3°の範囲内に設定され、0°±1°の範囲内に設定されることが好ましく、0°±0.5°の範囲内に設定されることがより好ましく、0°に設定されることが特に好ましい。液晶層300の遅相軸の方位角は、90°±3°の範囲内に設定され、90°±1°の範囲内に設定されることが好ましく、90°±0.5°の範囲内に設定されることがより好ましく、90°に設定されることが特に好ましい。
【0051】
観察面側二軸位相差板21の遅相軸及び背面側二軸位相差板40の遅相軸は、互いに直交することが好ましい。
【0052】
図3は、実施形態1に係る液晶表示装置が備えるTFT基板の画素構成を示す平面模式図である。
図4は、実施形態1に係る液晶表示装置が備えるCF基板の画素構成を示す平面模式図である。
図5は、
図3及び4中のX1-X2線に沿った実施形態に係る液晶パネルの断面模式図である。
図6は、
図3中のY1-Y2線に沿ったTFT基板の断面模式図である。
図3及び
図4は、それぞれ、観察面側から見た平面模式図である。
【0053】
図1及び
図5に示すように、本実施形態の液晶パネル30は、背面側から観察面側に向かって順に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)基板100、第一配向膜61、液晶層300、第二配向膜62、カラーフィルタ(CF:Color Filter)基板200を備える。
【0054】
図3及び
図6に示すように、TFT基板100は、液晶表示装置1の画素のオン・オフをスイッチングするために用いられるスイッチング素子である薄膜トランジスタ104が設けられた基板である。本実施形態では、FFSモード用のTFT基板100の構成を説明するが、他の横電界モードにおいても有効であり、例えば、IPS(In-Plane-Switching)モードに適用してもよい。
【0055】
TFT基板100は、TFT104を有し、背面側から観察面側に向かって順に、支持基板110と、ゲート線101と、ゲート絶縁膜120と、ソース線102と、ソース絶縁膜140と、平坦化膜150と、共通電極160と、層間絶縁膜170と、画素電極(信号電極)180と、を備える。このような構成によれば、一対の電極を構成する共通電極160及び画素電極180の間に電圧を印加することによって液晶層300に横電界(フリンジ電界)を発生させることができる。よって、共通電極160と画素電極180との間に印加する電圧を調整することにより、液晶層300中の液晶分子の配向を制御することができる。
【0056】
TFT基板100は、支持基板110上に、互いに平行に延設された複数のゲート線101と、ゲート絶縁膜120を介して各ゲート線101と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線102と、を備える。複数のゲート線101及び複数のソース線102は、各画素を区画するように全体として格子状に形成されている。各ゲート線101と各ソース線102との交点にはスイッチング素子としてのTFT104が配置されている。
【0057】
各TFT104は、複数のゲート線101及び複数のソース線102のうちの対応するゲート線101及びソース線102に接続され、対応するゲート線101から突出した(ゲート線101の一部である)ゲート電極101G、対応するソース線102から突出した(ソース線102の一部である)ソース電極102S、複数の画素電極180のうちの対応する画素電極180と接続されたドレイン電極102D、及び、薄膜半導体層103を有する三端子スイッチである。ソース電極102S及びドレイン電極102Dは、ソース線102と同じソース配線層130に設けられる電極であり、ゲート電極101Gはゲート線101と同じゲート配線層に設けられる電極である。各画素電極180は、層間絶縁膜170、共通電極160、平坦化膜150及びソース絶縁膜140に設けられたコンタクトホール104CHを介して、ドレイン電極102Dに接続されている。
【0058】
各TFT104の薄膜半導体層103は、例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン等からなる高抵抗半導体層と、アモルファスシリコンにリン等の不純物をドープしたn+アモルファスシリコン等からなる低抵抗半導体層とによって構成される。また、薄膜半導体層103として、酸化亜鉛等の酸化物半導体層を用いてもよい。
【0059】
TFT104は、既知の構成であって、例えば酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物半導体材料によって形成された半導体層からなるチャネル部等を有する。
【0060】
支持基板110は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0061】
ゲート絶縁膜120、ソース絶縁膜140及び層間絶縁膜170は、例えば、無機絶縁膜である。無機絶縁膜としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiO2)等の無機膜(比誘電率ε=5~7)や、それらの積層膜を用いることができる。ゲート絶縁膜120及びソース絶縁膜140は、例えば、酸化珪素の無機膜である。層間絶縁膜170は、例えば、窒化珪素の無機膜であり、膜厚170Wは、例えば、0.2μmである。
【0062】
ゲート配線層及びソース配線層130は、例えば、銅、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の金属、又は、それらの合金の、単層又は複数層である。ゲート線101、ソース線102及びTFT104を構成する各種配線及び電極は、スパッタリング法等により、銅、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の金属、又は、それらの合金を、単層又は複数層で成膜し、続いて、フォトリソグラフィ法等でパターニングを行うことで形成することができる。これら各種配線及び電極は、同じ層に形成されるものについては、それぞれ同じ材料を用いることで製造が効率化される。
【0063】
平坦化膜150は、TFT基板100に設けられたTFT104の液晶層300側の面を平坦化するものであり、例えば、有機絶縁膜(比誘電率ε=3~4)を用いることができ、具体的にはアクリル樹脂が挙げられる。平坦化膜150は、例えば、光硬化性の樹脂を塗布し、紫外線照射及び焼成を行うことにより形成される。
【0064】
共通電極160は、画素の境界に関わらず、画素電極180とドレイン電極102Dとの接続部(コンタクトホール104CH)等の特定部分を除いて、ほぼ一面に形成された電極である。共通電極160に対しては一定値に保たれた共通信号が供給され、共通電極160は一定の電位に保たれる。
【0065】
画素電極180は、互いに隣接する2本のゲート線101と互いに隣接する2本のソース線102とに囲まれた各領域に配置された電極である。画素電極180は、TFT104が備える薄膜半導体層103を介して対応するソース線102と電気的に接続されている。画素電極180は、対応するTFT104を介して供給されるデータ信号に応じた電位に設定される。単一の画素電極180が設けられる各画素の幅1Wは、例えば、28μmである。
【0066】
図3及び
図5に示すように、画素電極180には、互いに平行な複数のスリット180Sが設けられている。スリット180Sは、液晶分子の初期配向方位に対して傾斜して設けられている。液晶分子の初期配向方位に対して画素電極180に設けられたスリット180Sに角度を持たせることで、液晶分子を一定方向へ回転させることができ、電圧制御によって液晶分子の配向を制御することが可能となっている。画素電極180の幅Lとスリットの幅Sの比L/Sは、例えば、L/S=3μm/4μmである。
【0067】
共通電極160及び画素電極180の材料としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等が挙げられる。
【0068】
第一配向膜61及び第二配向膜62は、液晶層300に含まれる液晶分子の配向を制御する機能を有する。第一配向膜61及び第二配向膜62は、液晶層300への印加電圧が閾値電圧未満(電圧無印加を含む)のときには、主に第一配向膜61及び第二配向膜62の働きによって、液晶層300中の液晶分子の長軸が第一配向膜61及び第二配向膜62に対して水平方向を向くように制御されることが好ましい。
【0069】
ここで、液晶層300中の液晶分子の長軸が第一配向膜61及び第二配向膜62に対して水平方向を向くとは、液晶分子のチルト角(プレチルト角を含む)が、第一配向膜61及び第二配向膜62に対して0~5°であることを意味し、好ましくは0~3°、より好ましくは0~1°であることを意味する。液晶分子のチルト角は、液晶分子の長軸(光軸)が第一偏光子11及び第二偏光子12の表面に対して傾斜する角度を意味する。
【0070】
第一配向膜61及び第二配向膜62は、液晶分子の配向を制御するための配向処理がなされた層であり、ポリイミド等の液晶表示装置の分野で一般的な配向膜を用いることができる。第一配向膜61及び第二配向膜62の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリシロキサン等の主鎖を有するポリマーが挙げられ、主鎖又は側鎖に光反応部位(官能基)を有する光配向膜材料が好適に用いられる。
【0071】
液晶層300は、一対の電極を構成する共通電極160及び画素電極180の間に印加された電圧により液晶層300内に発生する電界に応じて液晶分子の配向が変化することにより、光の透過量を制御するものである。液晶層300中の液晶分子は、TFT基板100に設けられた一対の電極間に電圧が印加されていない状態(電圧無印加時)では第一配向膜61及び第二配向膜62の規制力によって水平配向することが好ましい、すなわち、液晶分子の長軸が第一配向膜61及び第二配向膜62に対して水平方向を向くように制御されることが好ましい。液晶層300中の液晶分子は、一対の電極間に電圧が印加された状態(電圧無印加時)では液晶層300内に発生した横電界に応じて面内方向に回転する。液晶層300の膜厚であるセルギャップ300Wは、例えば、3μmである。
【0072】
上記液晶分子は、下記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。本実施形態の液晶層300は、Δεが負の値を有する液晶分子を含むことが好ましい。なお、正の誘電率異方性を有する液晶分子はポジ型液晶ともいい、負の誘電率異方性を有する液晶分子はネガ型液晶ともいう。なお、液晶分子の長軸方向が遅相軸の方向となる。
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率) (L)
【0073】
液晶層300の遅相軸は、視野角補償用位相差フィルム20側に配置された偏光子の透過軸と平行に設定されることが好ましい。これにより、第一偏光子11の透過軸の方位と第二偏光子12の透過軸の方位と液晶層300の遅相軸の方位とが決定される。本実施形態では、視野角補償用位相差フィルム20が第一偏光子11に隣接しているため、液晶層300の遅相軸は第一偏光子11の透過軸と平行に設定されることが好ましい。また、背面側二軸位相差板40の遅相軸は、第二偏光子12の透過軸と平行に配置されることが好ましい。
【0074】
本実施形態では視野角補償用位相差フィルム20が第一偏光子11に隣接して設けられているが、視野角補償用位相差フィルム20は、第二偏光子12に隣接して設けられてもよい。この場合、液晶層300の遅相軸は第二偏光子12の透過軸と平行に設定されることが好ましい。
【0075】
図4及び
図5に示すように、CF基板200は、観察面側から背面側に向かって順に、支持基板210、ブラックマトリクス層220、CF層230、及び、平坦化膜240を備える。
【0076】
支持基板210は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0077】
ブラックマトリクス層220は、支持基板210上に、ゲート線101及びソース線102に対応するように格子状に設けられており、画素領域外に配置されている。ブラックマトリクス層220の材料は、遮光性を有するものである限り特に限定されないが、黒色顔料を含有した樹脂材料、又は、遮光性を有する金属材料が好適に用いられる。ブラックマトリクス層220は、例えば、黒色顔料を含む感光性樹脂を塗布して成膜し、露光及び現像等を行うフォトリソグラフィ法により形成される。
【0078】
CF層230は、赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bが面内に並べられ、ブラックマトリクス層220で区画された構成を有する。赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bは、例えば、顔料を含有する透明樹脂で構成されている。通常、すべての画素に赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bの組み合わせが配置され、赤色カラーフィルタ230R、緑色カラーフィルタ230G及び青色カラーフィルタ230Bを透過する色光の量を制御しつつ混色させることで各画素において所望の色が得られる。
【0079】
平坦化膜240は、CF層230の液晶層300側の表面を覆う。平坦化膜240は、CF層230の液晶層300側の表面が平坦でない場合に、第二配向膜62の下地を平坦化する機能を有する。また、平坦化膜240によりCF層230中の不純物が液晶層300側へ溶出することを防止できる。例えば、有機絶縁膜(比誘電率ε=3~4)を用いることができ、具体的にはアクリル樹脂が挙げられる。平坦化膜240は、例えば、光硬化性の樹脂を塗布し、紫外線照射及び焼成を行うことにより形成される。
【0080】
液晶パネル30の液晶モードは特に限定されず、液晶層中の液晶分子を基板面に垂直に配向させることで黒表示を行うものであってもよいし、液晶層中の液晶分子を基板面に平行又は垂直でも平行でもない方向に配向させることで黒表示を行うものであってもよい。また、液晶パネルの駆動形式としては、TFT方式(アクティブマトリクス方式)のほか、単純マトリクス方式(パッシブマトリクス方式)、プラズマアドレス方式等であってもよい。液晶パネルの構成としては、例えば、一方に画素電極及び共通電極が形成された一対の基板間に液晶層を狭持し、画素電極及び共通電極の間に電圧を印加して液晶層に横電界(フリンジ電界を含む)を印加することで表示を行うもの、一方に画素電極、他方に共通電極が形成された一対の基板間に液晶層を狭持し、画素電極及び共通電極の間に電圧を印加して液晶層に縦電界を印加することで表示を行うものが挙げられる。より具体的には、横電界方式としては、電圧無印加時に液晶層中の液晶分子が基板面に対して平行に配向する、FFSモードやIPSモードが挙げられ、縦電界方式としては、電圧無印加時に液晶層中の液晶分子が基板面に対して垂直に配向する、垂直配向(VA:Vertical Alignment)が挙げられる。
【0081】
図1に示されるバックライト50は、光源51と、光源51の観察面側に配置されたプリズムシート52と、を備える。バックライト50は、液晶パネル30に対して光を照射するものであれば特に限定されず、直下型やエッジ型やその他のどの方式でもよい。
【0082】
光源51は、可視光を含む光を発するものであれば特に限定されず、可視光のみを含む光を発するものであってもよく、可視光及び紫外光の両方を含む光を発するものであってもよい。液晶表示装置1によるカラー表示を可能とするためには、白色光を発する光源が好適に用いられる。光源の種類としては、例えば、冷陰極蛍光灯(CCFL)、発光ダイオード(LED)等が好適に用いられる。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長380nm以上、800nm未満の光(電磁波)を意味する。
【0083】
図7は、本実施形態に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの斜視模式図である。プリズムシート52は、観察面側の表面に複数列に並ぶプリズム52Xを有する。すなわち、プリズムシート52は、観察面側の表面に、互いに平行に延設された複数列のプリズム52Xを有する。プリズム52Xの稜線52aは、プリズム52Xの凸部の頂点が線状に連続したものであり、いずれも直線状である。
【0084】
プリズム52Xの稜線52aの方位角は、0°±3°であることが好ましい。ここで、プリズムシートは、斜め光線を正面方向に集光する機能を有するため、稜線に垂直な方位の配光が狭くなる。したがって、プリズム52Xの稜線52aの方位角が0°±3°であることにより、水平方位(方位角0°-180°方向)におけるプリズムシート52での集光が垂直方位(方位角90°-270°方向)よりも抑えられ、水平方位において斜めの輝度を高めることが可能となり、広い視野角を実現することができる。このような態様は、水平方位において広い輝度視野角が求められているOEM規格に対して、特に好適に用いられる。
【0085】
次に、プリズムシート52の集光・サイドローブ発生原理と実施形態における好ましい形状について説明する。
図8は、プリズムシートが有するプリズムの断面形状について説明する断面模式図である。稜線52aに垂直な方向の断面形状において、プリズム52Xの頂角をθ
t、底角をそれぞれθ
b1及びθ
b2とする。また、プリズムシート基材の屈折率をn
prism、空気層の屈折率をn
airと定義する。
【0086】
(1)プリズムシートから光線が出射されず、バックライト方向に戻されるケース
図9及び
図10は、プリズムシートから光線が出射されず、バックライト方向に光線が戻されるケースについて説明する断面模式図の一例である。プリズムシート52への入射角をθ
inとし、各屈折角、入射角及び反射角を
図9のように定義した場合、
図9に示されるθ
2が、プリズムシート52の屈折率と空気層の屈折率で決まる臨界角θ
c以上となると、光線はプリズムシート52/空気層界面で全反射される。全反射された光線は、反対側のプリズムシート52/空気層界面に入射角θ
3で入射され、θ
3は幾何学的にθ
3=θ
t-θ
2で表される。θ
3>θ
cであれば、上記反対側のプリズムシート52/空気層界面でも全反射されて背面側(光源51側)に戻っていくことになる。
図10に示される場合ついても、
図9と同様にプリズムシート52へ入射した光が全反射により背面側へ戻っていくことになる。
【0087】
(2)プリズムシートから光線が正面方向に集光されるケース
図11は、プリズムシートから光線が正面方向に集光されるケースについて説明する断面模式図の一例である。
図11に示すように、θ
2<θ
cのとき、光線は正面方向に集光される。
【0088】
(3)プリズムシートから光線がサイドローブとして出射されるケース
図12は、プリズムシートから光線がサイドローブとして出射されるケースについて説明する断面模式図の一例である。
図12に示すように、θ
2>θ
cかつθ
3<θ
cのとき、光線はサイドローブとなる。
【0089】
図13は、実施形態1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。
図13に示すように、プリズム52Xは、稜線52aに垂直な方向における断面形状が、観察面側に配置された頂角θ
tと、背面側に配置された一対の底角θ
b1、θ
b2とを有する三角形状であり、頂角θ
tは80°以上、90°未満である。このような態様とすることにより、上記サイドローブ条件を充分に満たすことが可能となり、斜めCRの低下を効果的に抑制することができる。
【0090】
プリズム52Xは、一対の底角θb1及びθb2の角度が互いに異なる。このような態様とすることにより、上記サイドローブ条件を充分に満たすことが可能となり、斜めCRの低下を効果的に抑制することができる。一般的なプリズムの断面形状は直角二等辺三角形であるが、本実施形態のプリズム52Xの断面形状は、直角二等辺三角形から崩した形状である。
【0091】
プリズム52Xは、一対の底角θb1及びθb2の角度の差が5°以上、15°以下であることが好ましく、7°以上、13°以下であることがより好ましい。このような態様とすることにより、上記サイドローブ条件を充分に満たすことが可能となり、斜めCRの低下を効果的に抑制することができる。
【0092】
本実施形態の液晶表示装置1は、上述の部材の他、TCP(テープ・キャリア・パッケージ)、PCB(プリント配線基板)等の外部回路;視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルム;ベゼル(フレーム)等の複数の部材により構成されるものであり、部材によっては、他の部材に組み込まれていてもよい。既に説明した部材以外の部材については特に限定されず、液晶表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができるので、説明を省略する。
【0093】
(実施形態2)
上記本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、バックライト50の構成が異なることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
【0094】
図14は、実施形態2に係る液晶表示装置の断面模式図である。
図15は、実施形態2に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。
図14及び
図15に示すように、本実施形態の液晶表示装置1が備えるバックライト50は、背面側から観察面側に向かって順に、光源51と、プリズムシート53と、拡散シート55と、を備える。このような態様とすることによっても、正面CRの低下を抑え、かつ、斜めCRの低下を抑えることができる。
【0095】
プリズムシート53は、観察面側の表面に複数列に並ぶプリズム53Xを有する。すなわち、プリズムシート53は、観察面側の表面に、互いに平行に延設された複数列のプリズム53Xを有する。プリズム53Xの稜線53aは、プリズム53Xの凸部の頂点が線状に連続したものであり、いずれも直線状である。
【0096】
プリズム53Xの稜線53aの方位角は、0°±3°であることが好ましい。ここで、プリズムシートは、斜め光線を正面方向に集光する機能を有するため、稜線に垂直な方位の配光が狭くなる。したがって、プリズム52Xの稜線52aの方位角が0°±3°であることにより、水平方位(方位角0°-180°方向)におけるプリズムシート52での集光が垂直方位(方位角90°-270°方向)よりも抑えられ、水平方位において斜めの輝度を高めることが可能となり、広い視野角を実現することができる。このような態様は、水平方位において広い輝度視野角が求められているOEM規格に対して、特に好適に用いられる。
【0097】
プリズム53Xは、頂角θtが90°であり、一対の底角θb1及びθb2の角度がいずれも45°である。すなわち、本実施形態のプリズム53Xの断面形状は、直角二等辺三角形であり、一般的なプリズムと同様の構成を有する。
【0098】
拡散シート55は、光を拡散する機能を有する。拡散シート55は、ヘイズが12%以上、82%以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、上記サイドローブ条件を充分に満たすことが可能となり、斜めCRの低下を効果的に抑えることができる。拡散シート55は、ヘイズが20%以上、70%以下であることがより好ましく、ヘイズが25%以上、60%以下であることが更に好ましい。
【0099】
本明細書において、ヘイズは、拡散シートに完全平行光を入射した場合に、シート透過後に直進する成分の透過率をTp、シート透過後の直進成分以外の拡散成分の透過率Td(直進成分以外の光を積分球で積分することで測定される)としたときに、ヘイズ=Td/(Tp+Td)にて定義される値である。
【0100】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
(比較例1)
図16は、比較例1の液晶表示装置の断面模式図である。
図16に示す角度は、方位角を表す。
図17は、比較例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの斜視模式図である。
図18は、比較例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。
【0102】
通常FFSモードの液晶表示装置として、
図16に示す比較例1の液晶表示装置1Rを作製した。液晶パネル30の構成は、
図3~
図6と同様であった。液晶駆動モードはFFSモードであり、TFT104はIGZOによって形成された薄膜半導体層103を有し、ゲート絶縁膜120及びソース絶縁膜140はSiO
2の無機絶縁膜であり、平坦化膜150、240はアクリル樹脂であり、層間絶縁膜170は膜厚170Wが0.2μmであるSiNxの無機絶縁膜であり、共通電極160及び画素電極180はIGZO膜であった。液晶層300は、Δε=+2.5であるポジ型液晶を含み、Δn=0.11であった。液晶層300のセルギャップ300Wは3μmであり、画素電極180の幅Lとスリットの幅Sの比L/S=3μm/4μm、単一の画素電極180が設けられる各画素の幅1Wは28μmであった。
【0103】
比較例1の第一偏光子11の第一透過軸の方位角、及び、液晶層300の遅相軸の方位角は、90°であり、第二偏光子12の第二透過軸の方位角及び第三偏光子13の第三透過軸の方位角は、0°であった。第一偏光子11及び第二偏光子12には吸収型偏光板を用い、第三偏光子13には拡散付反射型偏光板を用いた。なお、拡散付反射型偏光板とは、反射型偏光子の背面側に拡散板を備える偏光板である。
【0104】
また、比較例1では、光源51と、光源51の観察面側に配置され、かつ、
図17及び
図18に示す構造を有するプリズムシート53を備えるバックライト50Rを用いた。プリズムシート53は、一般的に用いられる通常のプリズムシートであった。
【0105】
[正面輝度及び正面CRの測定]
比較例1の液晶表示装置について、白表示及び黒表示におけるそれぞれの正面輝度をトプコン社製輝度計SR-UL1にて測定した。正面CRは、白表示における正面輝度(正面白輝度)を黒表示における正面輝度(正面黒輝度)で除することにより(正面CR=正面白輝度/正面黒輝度)で算出した。
【0106】
[斜め輝度及び斜めCRの測定]
比較例1の液晶表示装置1Rについて、白表示及び黒表示におけるそれぞれの斜め輝度(方位角:0°-360°/極角:0°-88°)をELDIM社製EZ-Contrastにて測定した。なお、方位角の0°は図面におけるx軸正方向と定義し、極角の0°は図面におけるz軸正方向と定義する。斜めCRは、正面CR同様に、白表示における斜め輝度(斜め白輝度)を黒表示における斜め輝度(斜め黒輝度)で除することにより(斜めCR=斜め白輝度/斜め黒輝度)で算出した。
【0107】
また、稜線の方位角が0°のプリズムシートの場合、方位角90°-270°方向(垂直方位)にサイドローブが現れることから、プリズムシート由来のサイドローブの程度を評価するために、方位角90°-270°方向における白輝度の極角依存性を示すグラフにおいてサイドローブの極大値と極小値を
図19のように定義し、それらの値を読み取り、極大値を極小値で割った値を指標として算出した。
図19は、比較例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの、方位角90°-270°方向における白輝度の極角依存性を示す図である。
図19では、正面輝度を100%として規格化し、方位角90°-270°方向における白輝度を示した。
【0108】
さらに、欧州におけるOEM規格内にて定められるエリアAは
図20の破線で囲った範囲(方位角0°:極角+40°/方位角180°:極角-40°/方位角90°:極角+20°/方位角270°:極角-10°)で定義され、本エリアA内における最小輝度が450cd/m
2以上、最小CRが650:1(白輝度:黒輝度)以上になる必要があるとされる。そのため、上記斜め輝度の評価結果から本エリアA内における最小輝度と最小CRを読み取り、規格を満たすか否かの確認を行った。結果を、下記表1及び
図21に示す。
図20は、欧州におけるOEM規格内にて定められるエリアAについて説明する図である。
図21は、比較例1に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。
【0109】
【0110】
(比較例2)
図22は、比較例2に係る液晶表示装置の断面模式図である。
図22に示す比較例2の液晶表示装置を作製した。具体的には、比較例1の液晶パネル裏面の吸収型偏光板(第二偏光子12)と拡散付反射型偏光板(第三偏光子13)との間に、シクロオレフィンポリマー(COP)を延伸して作製される二軸位相差層(背面側二軸位相差板40)を設けたこと以外は、比較例1と同様にして比較例2の液晶表示装置1Rを作製した。比較例2の液晶表示装置1Rは、偏光板ルーバー70付き液晶表示装置であった。本比較例では、上記二軸位相差層として、NZ1.6/Re260nmの二軸位相差フィルムを用いたが、二軸位相差層はこれに限定されるものではなく、Rthが200nm以上の位相差層であればよい。
【0111】
比較例2の液晶表示装置1Rを比較例1と同様に評価した。結果を下記表2及び
図23に示す。
図23は、比較例2に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。表2及び
図23に示すように、比較例2では、方位角:45°/極角:60°における黒輝度は小さくなっており、黒表示における光漏れは小さくなっている。しかしながら、斜めCRが比較例1に対して92%と小さくなった。これが偏光板ルーバー適用時の課題となっている。同様に、欧州OEM規格におけるエリアA内の最小CRも比較例1に対して小さくなった。
【0112】
【0113】
(比較例3)
図24は、比較例3に係る液晶表示装置の断面模式図である。
図24に示す比較例3の液晶表示装置1Rを作製した。プリズムシート53を設けないこと以外は、比較例2と同様にして比較例3の液晶表示装置1Rを作製した。
【0114】
比較例3の液晶表示装置1Rを比較例1と同様に評価した。結果を下記表3及び
図25に示す。
図25は、比較例3に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。表3及び
図25に示すように、比較例3では、プリズムシートの除去により、方位角90°-270°方向におけるプリズムシート由来のサイドローブが消失していることが確認できた。また、比較例2で課題としていた方位角:45°/極角:60°におけるCR(斜めCR)が、比較例1に対して116%と、比較例1及び比較例2よりも大きくなった。その一方で、正面CRが比較例1に対して85%と大きく低下した。これは、プリズムシートの機能であるバックライト光を正面に集光する機能がなくなってしまったためであると考えられる。ここで、一般的に、バックライト光の斜め光を除去し、正面方向へ集光すればするほど正面CRは高くなることが知られている。
【0115】
【0116】
(実施例1)
図26は、実施例1に係る液晶表示装置の断面模式図である。
図27は、実施例1に係る液晶表示装置が備えるプリズムシートの断面模式図である。比較例2におけるプリズムシート53を、
図27に示す形状を有するプリズムシート52に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、
図26に示す実施例1の液晶表示装置を作製した。実施例1の液晶表示装置1は、実施形態1の液晶表示装置1に相当する。実施例1では、
図27に示すように、プリズム52Xの断面形状を、頂角θ
t:80°/底角θ
b1:45°:/底角θ
b2:55°に設定し、直角二等辺三角形から崩したものに変更したものである。
【0117】
実施例1の液晶表示装置1を比較例1と同様に評価した。結果を下記表4及び
図28に示す。
図28は、実施例1に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。表4及び
図28に示すように、実施例1では、プリズムシートのプリズム形状の非対称化により、プリズムシート由来のサイドローブが小さくなっていることが確認できた。具体的には、サイドローブの極大値/極小値は、比較例1が1.427だったのに対し、実施例1では1.032であった。これにより、方位角:45°/極角:60°におけるCRが、比較例1に対して110%と向上した。また、比較例3において、大きく低下してしまった正面CRは比較例1に対して96%と5%以内の低下に留った。欧州OEM規格におけるエリアA内の最小CRも比較例1よりも大幅に向上していた。
【0118】
【0119】
ここで、比較例2で用いたプリズムシート及び実施例1で用いたプリズムシートのそれぞれについて、プリズムシートから光線が出射されずバックライト方向に戻されるケース(
図9及び
図10に示されるケース)を検討するために、θ
2=θ
cを満たす入射角θ
in及びθ
3=θ
cを満たす入射角θ
inを計算した。また、頂角θ
t、底角θ
b1及び底角θ
b2を下記表5のように設定した参考例のプリズムシートについても同様に計算した。結果を表5に示す。表5では、θ
2=θ
cを満たす入射角θ
inとθ
3=θ
cを満たす入射角θ
inとの差分を、光線閉じ込め角度範囲Δとして算出した。
【0120】
【0121】
表5に示した光線閉じ込め角度範囲Δが大きいほど、光線を正面方向に集光する能力は高くなり、偏光解消されない光線が正面方向に集まりやすくなるが、その一方で、偏光解消されやすいサイドローブ光が斜め方向に発生しやすくなった。すなわち、光線閉じ込め角度範囲Δが大きいほど、正面CRは高まるが、斜めCRは下がることが分かった。
【0122】
光線閉じ込め角度範囲Δは、頂角θtの大きさでほぼ決まり、表5より、実施例1の頂角θt=80°で最も小さな値となった。なお、頂角θtが80°未満では光線を閉じ込めることはできなくなるため、比較例1や比較例2に対して正面CRが大きく低下してしまう(比較例3と類似の結果となる)。したがって、プリズム52Xの、稜線52aに垂直な方向における断面形状としては頂角θtが80°以上、90°未満のものが、斜めCRを向上させ正面CRを維持する効果が得られる点で好ましいことが分かった。
【0123】
(実施例2)
図29は、実施例2に係る液晶表示装置の断面模式図である。比較例2におけるプリズムシート53と拡散付反射型偏光板(第三偏光子13)との間にヘイズ82%の拡散シート55を追加したこと以外は、比較例2と同様にして、
図29に示す実施例2の液晶表示装置1を作製した。実施例2の液晶表示装置1は、実施形態2の液晶表示装置1に相当する。
【0124】
実施例2の液晶表示装置1を比較例1と同様に評価した。結果を下記表6及び
図30に示す。
図30は、実施例2に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。表6及び
図30に示すように、実施例2では、ヘイズの大きな拡散シートの追加により、プリズムシート由来のサイドローブが消失していることが確認できた。これにより、方位角:45°/極角:60°におけるCRが、比較例1に対して114%と向上した。正面CRについても、低下することなく、比較例1と同等の値を維持していた。欧州OEM規格におけるエリアA内の最小CRも比較例1よりも大幅に向上していた。
【0125】
【0126】
(実施例3)
図31は、実施例3に係る液晶表示装置の断面模式図である。比較例2におけるプリズムシート53と拡散付反射型偏光板(第三偏光子13)との間にヘイズ58%の拡散シート55を追加したこと以外は、比較例2と同様にして、
図31に示す実施例3の液晶表示装置1を作製した。実施例3の液晶表示装置1は、実施形態2の液晶表示装置1に相当する。
【0127】
実施例3の液晶表示装置1を比較例1と同様に評価した。結果を下記表7及び
図32に示す。
図32は、実施例3に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。表7及び
図32に示すように、実施例3では、実施例2に対して拡散シートのヘイズが小さくなったことにより、プリズムシート由来のサイドローブがわずかに存在することが確認できた。これにより、方位角:45°/極角:60°におけるCRが、比較例1に対して111%と向上するも、実施例1の114%からはやや減少した。その一方で、正面CRについては、比較例1に対して101%とわずかながらに向上しており、実施例1の100%からやや向上した。追加する拡散シートのヘイズが適度に小さくすることで、比較例1である通常の液晶表示装置に対して、正面CRと斜めCRの両方をバランス良く向上することが可能となった。欧州OEM規格におけるエリアA内の最小CRも比較例1よりも大幅に向上していた。
【0128】
【0129】
(実施例4)
図33は、実施例4に係る液晶表示装置の断面模式図である。比較例2におけるプリズムシート53と拡散付反射型偏光板(第三偏光子13)との間にヘイズ41%の拡散シート55を追加したこと以外は、比較例2と同様にして、
図33に示す実施例4の液晶表示装置1を作製した。実施例4の液晶表示装置1は、実施形態2の液晶表示装置1に相当する。
【0130】
実施例4の液晶表示装置1を比較例1と同様に評価した。結果を下記表8及び
図34に示す。
図34は、実施例4に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。表8及び
図34に示すように、実施例4は、実施例3同様に、比較例1に対して、正面CRと斜めCR両方が向上した。結果を細かく見ると、拡散シートのヘイズが実施例3に対して小さくなった分、実施例3に対しては、正面CRはわずかに向上し、斜めCRはわずかに低下した。欧州OEM規格におけるエリアA内の最小CRも比較例1よりも大幅に向上していた。
【0131】
【0132】
(実施例5)
図35は、実施例5に係る液晶表示装置の断面模式図である。比較例2におけるプリズムシート53と拡散付反射型偏光板(第三偏光子13)との間にヘイズ26%の拡散シート55を追加したこと以外は、比較例2と同様にして、
図35に示す実施例5の液晶表示装置1を作製した。実施例5の液晶表示装置1は、実施形態2の液晶表示装置1に相当する。
【0133】
実施例5の液晶表示装置1を比較例1と同様に評価した。結果を下記表9及び
図36に示す。
図36は、実施例5に係る液晶表示装置の、垂直方位における極角に対する白表示の輝度を示す図である。表9及び
図36に示すように、実施例5も、実施例4同様に、比較例1に対して、正面CRと斜めCR両方が向上した。結果を細かく見ると、拡散シートのヘイズが実施例4に対して小さくなった分、実施例4に対しては、正面CRはわずかに向上し、斜めCRはわずかに低下した。欧州OEM規格におけるエリアA内の最小CRも比較例1よりも大幅に向上していた。
【0134】
【0135】
以上の実施例1~5及び比較例1~3より、プリズムシートによって生じる不要な光成分であるサイドローブ光を減らすため、通常用いられるレンズシートよりも集光が弱い特殊なプリズムシートを用いる(実施例1)ことや、拡散シートを追加する(実施例2~実施例5)ことにより、偏光板ルーバー適用時の斜めCRが改善できることが分かった。サイドローブは実施例2のように完全になくすことが好ましいが、厳密には、サイドローブらしき形状を有していても、サイドローブの輝度の極大値の極小値に対する比が1.00に近い(実施例1~実施例5の結果より1.35以下)であれば斜めCRは向上することが分かった。ただし、比較例3より、プリズムシートを除去してしまうと、プリズムシート由来のサイドローブはなくなり、斜めCRは確かに改善するが、正面CRが大きく低下してしまうため、好ましくないことが分かった。
【0136】
以上の実施例1~5及び比較例1~3について、サイドローブの極大値を極小値で除した値(極大値/極小値)、拡散シートのヘイズ、斜めCR、正面CR及び正面輝度を下記表10にまとめて記載する。斜めCRは、方位角45°、極角60°におけるCRである。
【0137】
【0138】
表10におけるサイドローブの極大値/極小値を横軸に、斜めCRを縦軸にとり、実施例1~実施例5及び比較例2~比較例3の結果をプロットした結果を
図37に示す。斜めCRは、比較例1の斜めCRを100%として規格化した。
図37は、サイドローブの極大値/極小値に対する斜めCRを示すグラフである。
図37に示すように、サイドローブの極大値/極小値が1.35以下であれば、斜めCRを向上させることができると分かった。
【0139】
表10における拡散シートのヘイズを横軸に、正面CR及び斜めCRを縦軸にとり、比較例2及び実施例2~実施例5の結果をプロットした結果を
図38に示す。
図38は、拡散シートのヘイズに対する正面CR及び斜めCRを示すグラフである。
図38に示すように、実施例2~実施例5のように拡散シートを配置する場合、拡散シートのヘイズは、12%以上、82%以下が好ましいことが分かった。
【符号の説明】
【0140】
1、1R:液晶表示装置
1PA、2PA:極大点
1PB:極小点
1W、L、S:幅
11:第一偏光子
12:第二偏光子
13:第三偏光子
20:視野角補償用位相差フィルム
21:観察面側二軸位相差板
22:ポジティブCプレート
30:液晶パネル
40:背面側二軸位相差板
50、50R:バックライト
51:光源
52、53:プリズムシート
52a、53a:稜線
52X、53X:プリズム
55:拡散シート
61:第一配向膜
62:第二配向膜
70:偏光板ルーバー
100:薄膜トランジスタ(TFT)基板
101:ゲート線
101G:ゲート電極
102:ソース線
102D:ドレイン電極
102S:ソース電極
103:薄膜半導体層
104:薄膜トランジスタ(TFT)
104CH:コンタクトホール
110、210:支持基板
120:ゲート絶縁膜
130: ソース配線層
140:ソース絶縁膜
150、240:平坦化膜
160:共通電極
170:層間絶縁膜
170W:膜厚
180:画素電極(信号電極)
200:カラーフィルタ(CF)基板
220:ブラックマトリクス層
230:カラーフィルタ(CF)層
230B:青色カラーフィルタ
230G:緑色カラーフィルタ
230R:赤色カラーフィルタ
300:液晶層
300W:セルギャップ