(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169677
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】交通誘導システム及び交通誘導方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/07 20060101AFI20231122BHJP
E01F 9/00 20160101ALI20231122BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20231122BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G08G1/07 P
E01F9/00
G01S13/931
G01S13/58 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080945
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 沢樹
(72)【発明者】
【氏名】鹿倉 克之
【テーマコード(参考)】
2D064
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA21
2D064BA03
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB15
5H181CC01
5H181CC04
5H181CC12
5H181DD02
5H181DD03
5H181FF33
5H181GG03
5H181GG09
5H181GG12
5H181HH14
5H181HH15
5H181HH24
5H181JJ06
5H181JJ08
5H181JJ13
5H181JJ17
5H181JJ19
5H181JJ23
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD05
5J070AE01
5J070AF01
(57)【要約】
【課題】道路工事等に伴う交互通行区間へ接近する車両の車線変更を正確かつ効率的に検出して適正な交通誘導を行うことを課題とする。
【解決手段】
信号機25Aが進入許可状態である青信号の場合に、車両C1が交互通行区間に接近してきたならば、接近車両検知センサ29Aは、この車両C1を検知して車両C1の速度v及び距離xを計測する(S1)。車両C1が接近車両検知センサ29Aの検知範囲からはみ出した場合には、直近に計測した速度v、距離x及び交互通行区間距離dを用いて、車両C1が接近車両検知センサ29Aを通過するまでに必要な時間T1及び交互通行区間を通過するために必要な時間T2を算出する(S2)。T1が経過するまで信号機25Aの青信号を維持した後に進入禁止状態である赤信号に切り替え(S3)、T1+T2経過するまで信号機25Bの赤信号を維持した後に青信号に切り替える(S4)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互通行区間の両端部にそれぞれ配設された複数の信号機と、各信号機を制御する制御装置とを有する交通誘導システムであって、
前記制御装置は、
少なくとも前記交互通行区間の第1の端部に接近する走行中の車両の速度を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記車両が車線変更したと判定された場合に、前記車両が前記交互通行区間に進入するまでの時間を算定する算定手段と、
前記算定手段により算定された時間に基づいて、前記第1の端部に配設された第1の信号機の切替タイミングを制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする交通誘導システム。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記交互通行区間の第1の端部に配設され、車両の接近方向に複数のミリ波を送信するミリ波送信器と、前記車両により反射する複数のミリ波を受信するミリ波受信器とを有し、前記複数のミリ波の送受信結果に基づいて、前記交互通行区間の第1の端部に接近する走行中の車両の速度を検知することを特徴とする請求項1に記載の交通誘導システム。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記検知手段により検知された車両について、前記ミリ波受信器により受信した複数のミリ波から得られる方向および距離の分布範囲が縮小する推移に基づいて、当該車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の交通誘導システム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記検知手段により検知された車両について、前記ミリ波受信器により受信した複数のミリ波から得られる方向および距離の分布範囲の大きさに基づいて、当該車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したことを判定することを特徴とする請求項2に記載の交通誘導システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記算定手段により算定された時間を前記第1の信号機の青信号の延長時間とするよう制御することを特徴とする請求項1に記載の交通誘導システム。
【請求項6】
前記算定手段は、
前記判定手段により前記車両が車線変更したと判定された場合に、前記車両の速度及び前項交互通行区間の距離に基づいて、前記車両が前記交互通行区間の第1の端部から第2の端部を通過するまでの時間を算定することを特徴とする請求項1に記載の交通誘導システム。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記算定手段により算定された時間を前記交互通行区間の前記第2の端部に配設された第2の信号機の赤信号の延長時間とするよう制御することを特徴とする請求項6に記載の交通誘導システム。
【請求項8】
交互通行区間の両端部にそれぞれ配設された複数の信号機と、各信号機を制御する制御装置とを有する交通誘導システムにおける交通誘導方法であって、
前記制御装置が、少なくとも前記交互通行区間の第1の端部に接近する走行中の車両の速度を検知する検知工程と、
前記制御装置が、前記検知工程により検知された車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したか否かを判定する判定工程と、
前記制御装置が、前記判定工程により前記車両が車線変更したと判定された場合に、前記車両が前記交互通行区間に進入するまでの時間を算定する算定工程と、
前記制御装置が、前記算定工程により算定された時間に基づいて、前記第1の端部に配設された第1の信号機の切替タイミングを制御する制御工程と
を含むことを特徴とする交通誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事等に伴う交互通行区間へ接近する車両の車線変更を正確かつ効率的に検出して適正な交通誘導を行うことができる交通誘導システム及び交通誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2車線以上の道路において道路工事等が行われる場合には、双方向に向かう車両を1つの車線で片側交互通行させる交通誘導が行われる。この際、交互通行区間の両端部に誘導員を配置して車両の通行を制御することとすると、必要な人員の数が多くなる。
【0003】
このため、交互通行区間の両端部に信号機を設置する従来技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両検出装置を交互通行区間の路肩に設置し、この車両検出装置により接近車両を検出し、一方の方向から交互通行区間に到達する車両の接近時間が遅く、他方向の車両が交互通行区間に早く接近する場合に、通過方向を変更するように信号機を制御して、渋滞が起きにくくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を用いたとしても、交互通行区間に差し掛かる車両が大型のバス、トラック又はトレーラーを牽引する車両である場合には、車両の接近を検知できない場合がある。その結果、思わぬ事故を招く可能性がある。
【0006】
例えば、工事がなされる道路が交互通行可能な2車線道であり、交互通行区間の信号機が青信号である場合には、車両は、ある程度の速度を保持したままの状態で事前に工事箇所を避けるように車線変更を行いつつ工事通行区間に接近する。この際、大型のバス、トラック又はトレーラーを牽引する車両ほど、より手前の位置から車線変更を緩やかに行わねばならないため、車両検出装置が車両を検出できなくなる状況を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上記の従来技術の課題を解消するためになされたものであって、道路工事等に伴う交互通行区間へ接近する車両の車線変更を正確かつ効率的に検出して適正な交通誘導を行うことができる交通誘導システム及び交通誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、交互通行区間の両端部にそれぞれ配設された複数の信号機と、各信号機を制御する制御装置とを有する交通誘導システムであって、前記制御装置は、少なくとも前記交互通行区間の第1の端部に接近する走行中の車両の速度を検知する検知手段と、前記検知手段により検知された車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記車両が車線変更したと判定された場合に、前記車両が前記交互通行区間に進入するまでの時間を算定する算定手段と、前記算定手段により算定された時間に基づいて、前記第1の端部に配設された第1の信号機の切替タイミングを制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記検知手段は、前記交互通行区間の第1の端部に配設され、車両の接近方向に複数のミリ波を送信するミリ波送信器と、前記車両により反射する複数のミリ波を受信するミリ波受信器とを有し、前記複数のミリ波の送受信結果に基づいて、前記交互通行区間の第1の端部に接近する走行中の車両の速度を検知することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記判定手段は、前記ミリ波受信器により受信した複数のミリ波の投影面積が減少する推移に基づいて、前記検知手段により検知された車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記判定手段は、前記ミリ波受信器により受信した複数のミリ波の投影面積の大きさに基づいて、前記検知手段により検知された車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したことを判定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記制御手段は、前記算定手段により算定された時間を前記第1の信号機の青信号の延長時間とするよう制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記算定手段は、前記判定手段により前記車両が車線変更したと判定された場合に、前記車両の速度及び前項交互通行区間の距離に基づいて、前記車両が前記交互通行区間の第2の端部を通過するまでの時間を算定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記制御手段は、前記算定手段により算定された時間を前記交互通行区間の前記第2の端部に配設された第2の信号機の赤信号の延長時間とするよう制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、交互通行区間の両端部にそれぞれ配設された複数の信号機と、各信号機を制御する制御装置とを有する交通誘導システムにおける交通誘導方法であって、前記制御装置が、少なくとも前記交互通行区間の第1の端部に接近する走行中の車両の速度を検知する検知工程と、前記制御装置が、前記検知工程により検知された車両が前記第1の端部に至る前に車線変更したか否かを判定する判定工程と、前記制御装置が、前記判定工程により前記車両が車線変更したと判定された場合に、前記車両が前記交互通行区間に進入するまでの時間を算定する算定工程と、前記制御装置が、前記算定工程により算定された時間に基づいて、前記第1の端部に配設された第1の信号機の切替タイミングを制御する制御工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、道路工事等に伴う交互通行区間へ接近する車両の車線変更を正確かつ効率的に検出して適正な交通誘導を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る交通誘導システムの概要の説明図である。
【
図2】
図2は、交互通行区間の端部に設置する装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、交通誘導システムのシステム構成を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した通過管理装置の外観構成を示す図である。
【
図5】
図5は、
図3に示した通過管理装置の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3に示した誘導員端末装置の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に示した設定データの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、接近する車両に関するはみ出し判定の要領を示す図である。
【
図10】
図10は、管理装置における車線はみ出し車両に対する信号機制御の処理手順を示すフローチャート(その1)である。
【
図11】
図11は、管理装置における車線はみ出し車両に対する信号機制御の処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本実施形態に係る交通誘導システム及び交通誘導方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[実施形態]
<交通誘導システムの概要>
まず、本実施形態に係る交通誘導システムの概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る交通誘導システムの概要を説明するための説明図である。
図1では、片側1車線の2車線道からなる道路の図示した工事作業エリアで道路工事を行っており、この道路工事によって1車線が使用不能となっている。そこで、残りの1車線を用いて交互通行区間を設けている。なお、2車線道のそれぞれの車線を車線A及び車線Bと呼ぶこととする。
【0020】
交互通行区間における車両の通行を制御するため、交互通行区間の一方の端部(第1の端部)には信号機25A及び接近車両検知センサ29Aを設置し、他方の端部(第2の端部)には信号機25B及び接近車両検知センサ29Bを設置している。
【0021】
この
図1に示した交通誘導システムでは、交互通行区間に接近する車両を検知して、この車両が安全に交互通行区間を通過できるようにするための信号機の切替制御を行う。
【0022】
図1に示すように、信号機25Aが進入許可状態である青信号の場合に、車両C1が交互通行区間に接近してきたならば、接近車両検知センサ29Aは、この車両C1を検知して車両C1の速度v、及び接近車両検知センサ29Aからの車両C1までの距離xを計測する(S1)。
【0023】
車両C1が、接近車両検知センサ29Aの検知範囲からはみ出し、接近車両検知センサ29Aによる車両C1の検知が不可能となった場合には、交通誘導システムは、直近に計測した車両C1の速度v、接近車両検知センサ29Aから車両C1までの距離x、及び交互通行区間距離dを用いて、接近車両検知センサ29Aによる車両C1の検知が不可能となった時点から、車両C1が交互通行区間への進入を始めるまでに必要な時間T1及び交互通行区間を通過するために必要な時間T2を算出する(S2)。
【0024】
そして、接近車両検知センサ29Aによる車両C1の検知が不可能となった時点からT1が経過するまで信号機25Aの青信号を維持した後に進入禁止状態である赤信号に切り替え(S3)、接近車両検知センサ29Aによる車両C1の検知が不可能となった時点からT1+T2経過後に、それまで赤信号であった信号機25Bを進入許可状態である青信号に切り替える(S4)。
【0025】
このように、本実施形態に係る交通誘導システムは、交互通行区間に接近する車両を検知した後、車両が検知範囲からはみ出した場合に、直近に計測した車両の速度、距離及び交互通行区間距離を用いて、車両が交互通行区間に進入するまでと通過するまでの時間を算出し、この算出した時間を用いて信号機の切替制御を行うよう構成したので、道路工事等に伴う交互通行区間へ接近する車両の車線変更を正確かつ効率的に検出して適正な交通誘導を行うことができる。
【0026】
<交通誘導システムの構成>
次に、本実施形態に係る交通誘導システムにおいて、交互通行区間の端部に設置する装置について説明する。
図2は、交互通行区間の端部に設置する装置の一例を示す図である。
図2に示すように、車両C2の荷台に通過管理装置20Aを搭載し、車両C2を交互通行区間の端部に駐車することで、通過管理装置20Aの設置を行っている。この通過管理装置20Aは、
図1に示した信号機25A及び接近車両検知センサ29Aの他、通過車両検知センサ22Aを含む装置である。また、通過管理装置20Aの手前には停止線を設け、停止線で停止した車両を接近車両検知センサ29Aにより検知する。さらに、ロードコーンを適宜配置することで車両が走行すべき経路を規定してもよい。
【0027】
なお、図示しない交互通行区間の他方の端部についても同様に、通過車両検知センサ22B、信号機25B及び接近車両検知センサ29Bを含む通過管理装置20Bを設置する。なお、通過管理装置20Aなどは、必ずしも車両に搭載した状態で使用する必要は無く、道路事情によっては車両から降ろして設置してもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係る交通誘導システムのシステム構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る交通誘導システムのシステム構成を示す図である。
図3に示すように、通過管理装置20A、通過管理装置20B及び誘導員端末装置30は、管理装置40と通信可能に接続される。管理装置40と他の装置との通信には無線通信を用い、管理装置40は他の装置と無線通信が可能な範囲内であれば任意の位置に設置することができる。
【0029】
<通過管理装置20の構成>
次に、
図3に示した通過管理装置20A及び通過管理装置20Bについて説明する。通過管理装置20A及び通過管理装置20Bは、同一の構成を有するので、通過管理装置20として説明を行う。
【0030】
図4は、
図3に示した通過管理装置20の外観構成を示す図である。
図4に示すように、通過管理装置20は、通過車両検知センサ22、表示部23、スピーカ24及び接近車両検知センサ29を有する本体部と、本体部に接続された信号機25と、本体部を支持する脚部を有し、脚部にはキャスター28とバッテリ27を設けている。
【0031】
通過車両検知センサ22は、交互通行区間に出入りする車両の通過の検知を行うデバイスである。通過車両検知センサ22は、光や電波を発射し、その反射波を受信することで交互通行区間に出入りする車両を検知する。
【0032】
表示部23は、LEDパネルなどの表示デバイスである。スピーカ24は、必要に応じて警告音やメッセージ音声を出力する音声出力デバイスである。表示部23及びスピーカ24は、例えば、停止線から少し離れて停止した車両に対して「少し前に進んで停止線でお待ち下さい」などのメッセージの報知などに用いられる。
【0033】
信号機25は、進入禁止状態において点灯制御される赤色灯と、進入許可状態において点灯制御される青色灯とを有する。なお、赤色灯と青色灯は、必要に応じて点滅させることも可能である。
【0034】
接近車両検知センサ29は、交互通行区間に接近する車両又は交互通行区間に進入する前に停車した車両の検知を行うデバイスであり、交互通行区間に進入する走行車線が検知範囲となるように設置する。接近車両検知センサ29は、ミリ波などの電波を発射して、その反射波を受信することで交互通行区間に接近する車両の方向、距離及び速度を検知する。あるいは、ステレオカメラなどのカメラで撮像した画像をパターンマッチングなどの画像処理を行うことにより、接近する車両の位置を検知する。本実施形態では、ミリ波を利用したセンサにより検知を行う場合について説明する。
【0035】
ミリ波センサは、走行する車両や人などの位置と速度を迅速に検知することができるセンサであり、直進性が強い、耐環境性に優れる(雨、霧、雪、汚れに強い)、アンテナの小型化が可能、情報伝送容量が大きいという性質を有する。このミリ波センサは、シンセサイザー等でミリ波の信号を生成し、送信アンテナからミリ波を送信し、車両で反射した反射波を受信アンテナで受信し、受信結果に基づいて車両との距離及び速度が検知される。ここでは、複数の送信アンテナからミリ波を送信し、複数の受信アンテナでそれぞれ複数の反射波を受信することとしている。方向と距離を平面座標上にプロットした場合には、電波を反射した車両の一部の位置に対応した分布形状の点群状のデータが得られる。
【0036】
バッテリ27は、通過管理装置20の電源として用いられる。キャスター28は、通過管理装置20を傾けた状態で接地して回転するよう設けられており、通過管理装置20の移動の補助に用いられる。
【0037】
図5は、
図3に示した通過管理装置20の構成を示す図である。
図5に示すように、通過管理装置20は、既に説明した通過車両検知センサ22、表示部23、スピーカ24、信号機25及び接近車両検知センサ29に加え、無線通信部21及び制御部26を有する。
【0038】
無線通信部21は、周知技術である特定小電力通信、無線LAN又はLTE(Long Term Evolution)通信等を用いて管理装置40との間で無線通信を行うための通信インタフェース部である。
【0039】
制御部26は、通過管理装置20の全体制御を行う制御部であり、接近検知部26a、通過検知部26b及び車両誘導部26cを有する。実際には、これらのプログラムをCPU(Central Processing Unit)にロードして実行することにより、接近検知部26a、通過検知部26b及び車両誘導部26cにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0040】
接近検知部26aは、交互通行区間に接近する車両の検知に関する処理を行う処理部である。接近検知部26aは、接近車両検知センサ29の出力を用いて、交互通行区間に接近する車両の方向、距離及び速度を検知し、検知結果を接近検知結果として管理装置40に送信する。なお、停止線で停止した車両は、速度0として送信される。
【0041】
通過検知部26bは、交互通行区間に出入りする車両の通過の検知に関する処理を行う処理部である。通過検知部26bは、通過車両検知センサ22の出力を用いて交互通行区間に出入りする車両の通過を検知し、検知結果を通過検知結果として管理装置40に送信する。
【0042】
車両誘導部26cは、信号機25の点灯制御を行う処理部である。車両誘導部26cは、信号機25の進入禁止状態と進入許可状態とを切り替えて点灯制御を行うことで、車両の通行を制御する。また、車両誘導部26cは、必要に応じて表示部23及びスピーカ24によるメッセージ出力を行うことで、停止位置の調整などの車両の誘導を行うことができる。
【0043】
<誘導員端末装置30の構成>
次に、
図3に示した誘導員端末装置30の構成について説明する。
図6は、
図3に示した誘導員端末装置30の構成を示す図である。
図6に示すように、誘導員端末装置30は、無線通信部31、表示部32、操作部33、スピーカ34及び制御部35を有する。
【0044】
無線通信部31は、周知技術である特定小電力通信、無線LAN又はLTE通信等を用いて管理装置40との間で無線通信を行うための通信インタフェース部である。表示部32は、液晶パネルなどの表示デバイスで構成され、誘導員に対する表示出力に用いられる。操作部33は、ボタン等の操作デバイスで構成され、誘導員からの操作の受付に用いられる。また、タッチパネルディスプレイなどを用い、表示部32と操作部33とを一体に構成してもよい。スピーカ34は、誘導員に対する音声出力に用いられる音声出力デバイスである。
【0045】
制御部35は、誘導員端末装置30の全体制御を行う制御部であり、信号報知部35a及びモード報知部35bを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、信号報知部35a及びモード報知部35bにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0046】
信号報知部35aは、管理装置40に接続された全ての通過管理装置20の信号機25の情報を誘導員に報知する処理を行う。信号報知部35aは、管理装置40から信号機25の情報を受信したならば、この情報を表示部32に表示する。なお、管理装置40から受信した情報の報知は、スピーカ34を用いて行うこともできる。
【0047】
モード報知部35bは、信号切替の制御モードを誘導員に報知する処理を行う。モード報知部35bは、管理装置40から信号切替の制御モードを受信したならば、この制御モードを表示部32に表示する。なお、管理装置40から受信した制御モードの報知は、スピーカ34を用いて行うこともできる。
【0048】
<管理装置40の構成>
次に、
図3に示した管理装置40の構成について説明する。
図7は、
図3に示した管理装置40の構成を示す図である。
図7に示すように、管理装置40は、無線通信部41、表示部42、操作部43、スピーカ44、記憶部45及び制御部46を有する。
【0049】
無線通信部41は、周知技術である特定小電力通信、無線LAN又はLTE通信等を用いて、通過管理装置20及び誘導員端末装置30との間で無線通信を行うための通信インタフェース部である。表示部42は、液晶パネルなどの表示デバイスで構成され、操作者に対する表示出力に用いられる。操作部43は、ボタン等の操作デバイスで構成され、操作者からの操作の受付に用いられる。また、タッチパネルディスプレイなどを用い、表示部42と操作部43とを一体に構成してもよい。スピーカ44は、操作者に対する音声出力に用いられる音声出力デバイスである。
【0050】
記憶部45は、ハードディスク装置又は不揮発性メモリなどからなる記憶デバイスであり、設定データ45a及び接近車両データ45bを記憶する。設定データ45aは、信号機25の制御を行うための各種設定の値を示すデータである。接近車両データ45bは、通過管理装置20から受信した接近検知結果に含まれる距離と方向を用いて、交互通行区間に接近する車両の外形の検知された部分の位置を平面座標上にプロットしたデータである。詳しくは後述する。
【0051】
制御部46は、管理装置40の全体制御を行う制御部であり、設定管理部46a、モード制御部46b、信号制御部46c、車両管理部46d及びはみ出し判定部46eを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、設定管理部46a、モード制御部46b、信号制御部46c、車両管理部46d及びはみ出し判定部46eにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0052】
設定管理部46aは、設定データ45aを管理する処理部である。設定管理部46aは、操作部43から上限設定時間及び切替設定時間を受け付けたならば、受け付けたデータを設定データ45aに記憶する。
【0053】
モード制御部46bは、信号機25の制御モードの切替制御を行う処理部である。制御モードには、時間制御モード、検知制御モード及び手動制御モードがあり、モード制御部46bは、操作部43からモード切替操作を受け付けたならば、受け付けた制御モードへの切替を行うとともに、誘導員端末装置30に対して切り替えた制御モードを通知する。
【0054】
時間制御モードは、所定の時間経過を条件に進入禁止状態と進入許可状態とを切り替える制御モードである。時間制御モードでは、交互通行区間に接近する車両が存在するか否か、又は、停止線近傍に停止する車両が存在するか否かに関わらず、信号機25の切替制御を行う。比較的交通量が多い場合には、特定の時点で車両が検知されなかったとしても進入許可状態が終了するまでには車両の進入が発生する可能性が高い。そのため、あらかじめ規定したタイミングで信号機25の状態を切り替えた方が全体としての待ち時間を減少させ、車両の通行を効率化することができる。
【0055】
検知制御モードは、信号機25を進入禁止状態として待機しつつ、交互通行区間に接近する車両又は停止線近傍の停止車両を検知したことを条件に信号機25を進入許可状態に切り替える制御モードである。信号機25を進入許可状態としても車両の進入が発生しなかったならば、他の信号機25での待機時間を不要に伸ばす事態となる。そこで、比較的交通量が少ない場合には、検知制御モードを用いて接近車両又は停止車両が存在する場合にのみ進入許可状態に切り替えることで、全体としての待ち時間を減少させ、車両の通行を効率化することができる。
【0056】
手動制御モードは、誘導員の操作に基づいて信号機25の状態を切り替えて交通誘導を行う制御モードである。この手動制御モードは、交互通行区間の状況や交通誘導システムの状態に異常が発生した場合などに用いられる。
【0057】
信号制御部46cは、交通誘導システムに含まれる全ての信号機25を制御する処理部である。例えば、交通誘導システムに通過管理装置20として、通過管理装置20A及び通過管理装置20Bが含まれる場合には、それぞれの通過管理装置20が有する信号機25A及び信号機25Bが制御対象となる。
【0058】
また、信号制御部46cは、時間制御モードにおいて次の処理を行う。信号機25A及び信号機25Bがともに進入禁止状態である状況において、例えば、信号機25Aを進入許可状態に切り替えたならば、設定データ45aの上限設定時間経過後に信号機25Aを進入禁止状態に切り替える。そして、設定データ45aの切替設定時間経過後に信号機25Bを進入許可状態に切り替える。信号制御部46cは、この制御を繰り返して行う。
【0059】
また、信号制御部46cは、検知制御モードにおいて次の処理を行う。信号機25A及び信号機25Bがともに進入禁止状態である状況において、例えば、接近車両検知センサ29Aが接近する車両を検知したならば、信号機25Aを進入許可状態に切り替え、設定データ45aの上限設定時間経過後に信号機25Aを進入禁止状態に切り替える。この間に接近車両検知センサ29Bが接近する車両を検知したならば、信号機25Aを進入禁止状態に切り替えた後、設定データ45aの切替設定時間経過後に信号機25Bを進入許可状態に切り替える。なお、接近車両検知センサ29Bが接近する車両を最初に検知した場合には、信号機25Aと信号機25Bを逆にして、上記と同様の制御を行う。
【0060】
また、信号制御部46cは、信号機25(例えば、信号機25A)を進入許可状態にした後の上限設定時間経過中において、はみ出し判定部46eからはみ出し通知を受け取ったならば、次の処理を行う。
【0061】
信号制御部46cは、車両管理部46dから受け取った直近の接近通知に含まれる速度v及び距離xを用いて、はみ出し判定部46eからはみ出し通知を受け取ってから車両が交互通行区間の一方の端部に達するまでに必要な時間T1を算出し、T1が経過するまで信号機25Aの進入許可状態を維持し、T1経過後に信号機25Aを進入禁止状態に切り替える。信号制御部46cは、速度v及び交互通行区間距離dを用いて、車両が交互通行区間の両端部の間を通過するために必要な時間T2を算出し、はみ出し判定部46eからはみ出し通知を受け取ってからT1+T2経過後に、それまで進入禁止状態であった信号機25Bを進入許可状態に切り替える。
【0062】
車両管理部46dは、接近車両データ45bを管理する処理部である。車両管理部46dは、通過管理装置20から接近検知結果を受信したならば、この接近検知結果に含まれる速度v及び距離xを接近通知として信号制御部46cに受け渡す。
【0063】
また、車両管理部46dは、通過管理装置20から受信した接近検知結果に含まれる方向及び距離、具体的には、接近車両検知センサ29が検知した、交互通行区間に接近する車両の外形の一部までの距離と方向を、接近車両検知センサ29の検知範囲を含む平面を表す平面座標上(本実施形態では、原点は接近車両検知センサ29の位置を表し、当該センサから見た正面奥行き方向を縦軸、縦軸に直角な左右方向を横軸とする)にプロットしたデータである接近車両データ45bを生成する。
【0064】
はみ出し判定部46eは、交互通行区間に接近する車両が、走行車線から反対車線にはみ出したか否かを判定する処理部である。はみ出し判定部46eは、接近車両データ45bが生成されたならば、この生成に続けて生成される接近車両データ45bを時系列に比較する。はみ出し判定部46eは、この時系列の比較において、接近車両データ45bが接近車両検知センサ29の検知範囲の境界付近に移動した後、消失したならば、交互通行区間に接近する車両が走行車線から反対車線にはみ出したと判定し、はみ出し通知を信号制御部46cに受け渡す。
【0065】
次に、
図7に示した管理装置40の記憶部45が記憶するデータの一例について説明する。
図8は、
図7に示した設定データ45aの一例を示す図である。
【0066】
図8に示す設定データ45aは、上限設定時間が「60秒」、切替設定時間が「10秒」である状態を示している。
【0067】
<接近する車両に関するはみ出し判定の要領>
次に、接近する車両に関するはみ出し判定の要領について説明する。
図9は、接近する車両に関するはみ出し判定の要領を示す図である。
図9に示すように、接近する車両に関するはみ出し判定は、接近車両データ45bを時系列に比較することにより行う。なお、
図9に示した接近車両データ45bでは、説明の便宜上、接近する車両の外形のイメージを破線で図示することとしたが、実際の接近車両データ45bには車両の外形のイメージは表示されない。
【0068】
具体的には、
図9(a)に示すように、座標にプロットされた複数の点の塊(以下、「点群データ」という。)が、時刻Tにおける車両の外形の一部の位置を表しており、横方向「-1mから1m」の付近に車両が存在すると認識することができる。
【0069】
図9(b)に示すように、Δtを所定の時間差とした場合に、時刻T+Δtでは、横方向「-2mから1m」の付近に車両が存在すると認識できる。この点群データが
図9(a)の点群データよりも横方向に長くなっているのは、走行車線を走行する車両が反対車線に移動するために、通過管理装置20から見て車両が斜めに見えるからである。つまり、
図9(a)では接近車両検知センサ29から送信したミリ波が車両の前面部分に反射することで、点群データが車幅に近い長さで座標上の横方向にプロットされるが、
図9(b)では通過管理装置20が車両を斜め方向で検知するため、車両を正面で検知したときより横方向に長くなって座標上にプロットされることになる。
【0070】
図9(c)に示すように、時刻T+2Δtでは、横方向「-2mから-1m」の付近に車両が存在すると認識できるが、点群データの分布範囲が極めて小さくなっている。これは、車両の大半が接近車両検知センサ29の検知範囲外にはみ出してしまったためである。その後、接近車両データ45bから点群データが消失したならば、交互通行区間に接近する車両が走行車線から反対車線にはみ出したと判定する。
【0071】
<管理装置における車線はみ出し車両に対する信号機制御の処理手順>
次に、管理装置における車線はみ出し車両に対する信号機制御の処理手順について説明する。
図10及び
図11は、管理装置における車線はみ出し車両に対する信号機制御の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、信号機25Aにおける車線はみ出し車両に対する信号機制御の処理手順について説明する。
【0072】
図10及び
図11に示すように、管理装置40は、信号機25Aを進入許可状態に切り替えたならば(ステップS101)、設定データ45aの上限設定時間を用いた上限タイマをオンにし(ステップS102)、上限タイマの残時間が0となったならば(ステップS103;Yes)、切替タイマに設定データ45aの切替設定時間をセットして(ステップS112)、ステップS113に移行する。
【0073】
上限タイマの残時間が残っている状態で(ステップS103;No)、通過管理装置20Aから接近検知結果を受信したならば(ステップS104;Yes)、上限タイマの残時間が残っている限り(ステップS117;No)、接近する車両が車線からはみ出したか否かを判定する(ステップS105)。
【0074】
接近する車両が車線からはみ出していないと判定した場合は(ステップS105;No)、ステップS117に移行する。また、接近する車両が車線からはみ出したと判定した場合に(ステップS105;Yes)、通過管理装置20Aから後続の車両の接近検知結果を受信したならば(ステップS106;Yes)、ステップS117に移行する。
【0075】
通過管理装置20Aから後続の車両の接近検知結果を受信していないならば(ステップS106;No)、直近の接近検知結果に含まれる速度v及び距離xを用いて、車両が通過管理装置20Aを通過するまでに必要な時間T1を算出し、通過タイマに算出した時間T1をセットする(ステップS107)。さらに、速度v及び交互通行区間距離dを用いて、車両が交互通行区間を通過するために必要な時間T2を算出し、切替タイマに算出した時間T2をセットする(ステップS108)。
【0076】
その後、ステップS107においてセットされた時間を用いて通過タイマをオンにし(ステップS109)、通過タイマの残時間が0となったならば(ステップS110;Yes)、上限タイマの残時間を確認する(ステップS111)。上限タイマの残時間が残っているならば(ステップS111;No)、ステップS104に移行する。
【0077】
上限タイマの残時間が0となったならば(ステップS111;Yes)、信号機25Aを進入禁止状態に切り替え(ステップS113)、ステップS108またはステップS112においてセットされた時間を用いて切替タイマをオンにする(ステップS114)。
【0078】
そして、切替タイマの残時間を確認し(ステップS115)、残時間が0でなければ(ステップS115;No)、再びステップS115へ移行し、残時間が0となったならば(ステップS115;Yes)、信号機25Bを進入許可状態に切り替え(ステップS116)、処理を終了する。
【0079】
上述してきたように、本実施形態に係る交通誘導システムは、交互通行区間に接近する車両を検知した後、車両が検知範囲からはみ出した場合に、直近に計測した車両の速度、距離及び交互通行区間距離を用いて、車両が交互通行区間に進入するまでの時間と通過するまでの時間を算出し、この算出した時間を用いて信号機の切替制御を行うよう構成したので、道路工事等に伴う交互通行区間へ接近する車両の車線変更を正確かつ効率的に検出して適正な交通誘導を行うことができる。
【0080】
なお、上記の実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る交通誘導システム及び交通誘導方法は、道路工事等に伴う交互通行区間へ接近する車両の車線変更を正確かつ効率的に検出して適正な交通誘導を行う場合に適している。
【符号の説明】
【0082】
20、20A、20B 通過管理装置
21 無線通信部
22、22A、22B 通過車両検知センサ
23 表示部
24 スピーカ
25、25A、25B 信号機
26 制御部
26a 接近検知部
26b 通過検知部
26c 車両誘導部
27 バッテリ
28 キャスター
29、29A、29B 接近車両検知センサ
30 誘導員端末装置
31 無線通信部
32 表示部
33 操作部
34 スピーカ
35 制御部
35a 信号報知部
35b モード報知部
40 管理装置
41 無線通信部
42 表示部
43 操作部
44 スピーカ
45 記憶部
45a 設定データ
45b 接近車両データ
46 制御部
46a 設定管理部
46b モード制御部
46c 信号制御部
46d 車両管理部
46e はみ出し判定部
C1、C2 車両