(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169679
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】水底均し装置
(51)【国際特許分類】
E02D 15/10 20060101AFI20231122BHJP
B66C 3/02 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
E02D15/10
B66C3/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080947
(22)【出願日】2022-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和3年7月7日 販売先 株式会社丸工
(71)【出願人】
【識別番号】395023875
【氏名又は名称】ミノツ鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】桃田 正吾
【テーマコード(参考)】
2D045
3F004
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA02
2D045CA01
2D045CA31
3F004EA17
3F004PA09
3F004PB01
3F004PC26
(57)【要約】
【課題】グラブバケットと均し具とを連結して重錘として使用する水底均し装置において、均し具の底面の傾斜角度を水中捨石基礎の均し面の勾配に素早く対応させて、水中捨石基礎の圧密均し作業をスムーズかつ迅速に行うことができるようにする。
【解決手段】本発明の水底均し装置は、第1吊持ワイヤ25で吊持され開閉ワイヤ31でグラブ9が開閉されるグラブバケット3と、下面が平坦な底板43とを備える均し具4とを連結具42で連結して一体化することにより構成される。第1吊持ワイヤ25で吊持された水底均し装置は、グラブバケット3と第1吊持ワイヤ25の連結部分を支点にして、底板43が水平となる水平姿勢と、底板43が水平に対して傾く傾斜姿勢との間で吊持姿勢が変更できるようになっている。そして、均し具4の支持枠41に、吊持姿勢を変更するための第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吊持ワイヤ(25)で吊持されるアッパブロック(7)と、アッパブロック(7)の下方に配され開閉ワイヤ(31)が連結されるロアブロック(8)と、ロアブロック(8)に回動可能に連結され、開閉ワイヤ(31)によるロアブロック(8)の昇降により開閉される複数のグラブ(9)とを備えるグラブバケット(3)と、
グラブバケット(3)が載置される支持枠(41)と、支持枠(41)とグラブバケット(3)との連結を担う連結具(42)と、支持枠(41)の下端に固定された下面が平坦な底板(43)とを備える均し具(4)と、を備え、
グラブバケット(3)に均し具(4)を連結具(42)で連結して一体化することにより構成される水底均し装置であって、
第1吊持ワイヤ(25)で吊持された水底均し装置は、グラブバケット(3)と第1吊持ワイヤ(25)の連結部分を支点にして、底板(43)が水平となる水平姿勢と、底板(43)が水平に対して傾く傾斜姿勢との間で吊持姿勢が変更できるようになっており、
均し具(4)の支持枠(41)に、吊持姿勢を変更するための第2吊持ワイヤ(70)が連結されるワイヤ連結部(71)が設けられていることを特徴とする水底均し装置。
【請求項2】
支持枠(41)は、閉姿勢にある複数のグラブ(9)が上下方向に抜き差し可能な上フレーム(48)と、底板(43)の上面に固定される下フレーム(47)と、これら上下のフレーム(48・47)を一体に接続する支柱(49)と、上フレーム(48)よりも下方に配される状態で下フレーム(47)に固定され、上フレーム(48)に上方から差し込まれた閉姿勢の各グラブ(9)を受け止める複数のグラブ受け(44)とを含み、
上フレーム(48)に第2吊持ワイヤ(70)が連結されるワイヤ連結部(71)が設けられている請求項1に記載の水底均し装置。
【請求項3】
グラブバケット(3)は、アッパブロック(7)と各グラブ(9)とを連結する複数のロッド(10)を備え、各ロッド(10)は、グラブ(9)に下連結軸(18)で相対回動可能に連結されており、
連結具(42)は、各ロッド(10)と上フレーム(48)とを連結しており、
グラブ(9)に対してロッド(10)を一体的に固定するロッド固定手段(86)が設けられている請求項2に記載の水底均し装置。
【請求項4】
グラブ(9)と上フレーム(48)との間に設けられ、グラブ受け(44)で受け止められたグラブ(9)が、上フレーム(48)側に近接移動することを阻止する移動規制手段(93)が設けられている請求項3に記載の水底均し装置。
【請求項5】
均し具(4)に、水平面に対する底板(43)の傾斜角度を表示する角度指標体(103)が設けられている請求項1から4のいずれかひとつに記載の水底均し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防波堤等の水中捨石基礎の構築における圧密均しに用いられる重錘として使用される水底均し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、水中捨石基礎の圧密均しに使用される重錘としての機能と、不使用時におけるグラブバケットを起立姿勢で載置するためのバケット架台としての機能を兼ね備えるバケット装着具を先に提案している(特許文献1)。この特許文献1のバケット装着具(均し具)は、グラブバケットが載置される支持枠と、支持枠とグラブバケットとの連結を担う連結具と、支持枠の下端に固定された底板とを備えている。支持枠上にグラブバケットを載置したうえで、連結具によりグラブバケットにバケット装着具を連結して一体化し該グラブバケットごとバケット装着具を上下動させることで、一体化したグラブバケットおよびバケット装着具(水底均し装置)を、水中捨石に対して圧密均し作業を行う均し用重錘として使用することができる。
【0003】
特許文献1では、ハンガーブロックに吊持ロープが連結されたグラブバケットにバケット装着具を連結し、この状態でグラブバケットを吊持すると、バケット装着具の底板は水平姿勢とされ、この底板の姿勢で均し作業を行うことで均し面は水平面に仕上げられる。また、ハンガーブロックにグラブバケットを斜めに吊り下げるための連結ピースを介して吊持ロープを連結し、この状態でグラブバケットを吊持すると、バケット装着具の底板は傾斜姿勢とされ、この底板の姿勢で均し作業を行うことで均し面は一定の勾配の傾斜面に仕上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水中捨石基礎における均し面は水平面だけでなく勾配を有する傾斜面も存在する。また、傾斜面においても勾配は一定ではなく、傾斜面が複数の勾配で構成される場合もある。しかし、特許文献1のグラブバケットとバケット装着具とが連結された重錘では、複数の勾配で構成される傾斜面の均し作業を行う場合、グラブバケットを異なる傾き度合に吊持するための連結ピースを種々用意し、均し面の勾配に応じて連結ピースを適応するものに交換する必要がある。また、この連結ピースの交換は、グラブバケットとバケット装着具とを水中から引き揚げ、一旦甲板上に載置した状態で吊持ロープおよび連結ピースを分解したのち、再度これらを組み付けなければならず、一連の作業に手間と時間を要する。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、グラブバケットと均し具とを連結して重錘として使用する水底均し装置において、均し具の底面の傾斜角度を水中捨石基礎の均し面の勾配に素早く対応させて、水中捨石基礎の圧密均し作業をスムーズかつ迅速に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水底均し装置は、第1吊持ワイヤ25で吊持されるアッパブロック7と、アッパブロック7の下方に配され開閉ワイヤ31が連結されるロアブロック8と、ロアブロック8に回動可能に連結され、開閉ワイヤ31によるロアブロック8の昇降により開閉される複数のグラブ9とを備えるグラブバケット3と、グラブバケット3が載置される支持枠41と、支持枠41とグラブバケット3との連結を担う連結具42と、支持枠41の下端に固定された下面が平坦な底板43とを備える均し具4とを備え、グラブバケット3に均し具4を連結具42で連結して一体化することにより構成される。第1吊持ワイヤ25で吊持された水底均し装置は、グラブバケット3と第1吊持ワイヤ25の連結部分を支点にして、底板43が水平となる水平姿勢と、底板43が水平に対して傾く傾斜姿勢との間で吊持姿勢が変更できるようになっている。そして、均し具4の支持枠41に、吊持姿勢を変更するための第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71が設けられていることを特徴とする。
【0008】
支持枠41は、閉姿勢にある複数のグラブ9が上下方向に抜き差し可能な上フレーム48と、底板43の上面に固定される下フレーム47と、これら上下のフレーム48・47を一体に接続する支柱49と、上フレーム48よりも下方に配される状態で下フレーム47に固定され、上フレーム48に上方から差し込まれた閉姿勢の各グラブ9を受け止める複数のグラブ受け44とを含む。上フレーム48に第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71が設けられている。
【0009】
グラブバケット3は、アッパブロック7と各グラブ9とを連結する複数のロッド10を備え、各ロッド10は、グラブ9に下連結軸18で相対回動可能に連結されている。連結具42は、各ロッド10と上フレーム48とを連結している。グラブ9に対してロッド10を一体的に固定するロッド固定手段86が設けられている。
【0010】
グラブ9と上フレーム48との間に設けられ、グラブ受け44で受け止められたグラブ9が、上フレーム48側に近接移動することを阻止する移動規制手段93が設けられている。
【0011】
均し具4に、水平面に対する底板43の傾斜角度を表示する角度指標体103が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、第1吊持ワイヤ25で吊持された水底均し装置を、グラブバケット3と第1吊持ワイヤ25の連結部分を支点にして、底板43が水平となる水平姿勢と、底板43が水平に対して傾く傾斜姿勢との間で吊持姿勢が変更できるように構成し、均し具4の支持枠41に水底均し装置の吊持姿勢を変更するための第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71を設けた。これによれば、両吊持ワイヤ25・70で吊持されている水底均し装置が、その底板43が水平となる水平姿勢のとき、繰出されるワイヤ長さが一致するように両吊持ワイヤ25・70を繰出すことにより、水底均し装置を水平姿勢に維持したまま水底に降下させることができるので、水底均し装置で水底面を水平な均し面に仕上げることができる。また、前記の状態から第1吊持ワイヤ25をそのままに第2吊持ワイヤ70を巻上げると、均し具4を吊り上げてグラブバケット3と第1吊持ワイヤ25の連結部分を支点にして水底均し装置を傾けることができるので、水底均し装置を底板43が水平に対して傾斜する傾斜姿勢へと変更することができる。傾斜姿勢とされた水底均し装置は、繰出されるワイヤ長さが一致するように両吊持ワイヤ25・70を繰出すことにより、水底均し装置を傾斜姿勢に維持したまま水底に降下させることができるので、水底均し装置で水底面を勾配を有する均し面に仕上げることができる。底板43の傾斜角度は、第2吊持ワイヤ70の巻上げによる均し具4の吊り上げ量を調整することで自在に調整することができ、傾斜姿勢の水底均し装置は、第1吊持ワイヤ25をそのままに第2吊持ワイヤ70を繰出すことで、再び水平姿勢へと姿勢を変更することができる。
【0013】
以上のように、本発明によれば、第1吊持ワイヤ25および第2吊持ワイヤ70による吊持状態により水底均し装置の吊持姿勢を変更することで、均し具4の底板43(底面)の傾斜角度を自在に変更することができるので、底板43の傾斜角度を水中捨石基礎の均し面の勾配に素早く対応させて、水中捨石基礎の圧密均し作業をスムーズかつ迅速に行うことができる。また、本発明の水底均し装置は、均し具4が連結されていない状態では、捨石を水中に投入する荷役作業を行うグラブバケット3として使用することができるので、捨石の投入から圧密均しに至る水中捨石基礎の構築作業に複数の装置を使用する必要がない分、一連の構築作業を効率よく行うことができる。
【0014】
閉姿勢にある複数のグラブ9が上下方向に抜き差し可能な上フレーム48に第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71を設けると、一般にグラブバケット3の平面視における外形形状は複数のグラブ9によって規定されるので、第2吊持ワイヤ70で吊り上げて水底均し装置が傾いた場合でも、グラブバケット3に第2吊持ワイヤ70が干渉することを回避できる。従って、第2吊持ワイヤ70の巻上げあるいは繰出しによる底板43の角度調整をスムーズに行うことができる。また、上下のフレーム48・47およびこれらを接続する支柱49とで枠状の構造物として構成される支持枠41はグラブバケット3が載置される分剛性が高く、これに第2吊持ワイヤ70を連結することにより、第2吊持ワイヤ70による吊り上げで均し具4が破損することを防ぐことができる。
【0015】
グラブバケット3は、アッパブロック7と各グラブ9とを連結する複数のロッド10を備え、各ロッド10は、グラブ9に下連結軸18で相対回動可能に連結されており、連結具42は、各ロッド10と上フレーム48とを連結しており、グラブ9に対してロッド10を一体的に固定するロッド固定手段86が設けられている形態を採ることができる。このように、ロッド固定手段86によりグラブ受け44で支持されるグラブ9に対してロッド10を一体的に固定すると、軸と軸孔とで構成される下連結軸18において避けることのできない設計公差や組立公差に由来するがたつきに起因する、グラブ9に対するロッド10の遊動を規制することができる。従って、ロッド10が遊動することによって上フレーム48との位置関係が変化することを防いで、ロッド10と上フレーム48の間の連結具42に不要な外力が作用することを解消して、グラブバケット3と均し具4との連結具42による連結を適切に維持することができる。
【0016】
グラブ9と上フレーム48との間に設けられ、グラブ受け44で受け止められたグラブ9が、上フレーム48側に近接移動することを阻止する移動規制手段93が設けられていると、下連結軸18のまわりにグラブ9が開き方向に回動することによるグラブバケット3と均し具4との水平方向のずれ動きを移動規制手段93で規制できるので、上記のずれ動きに起因して、ロッド10と上フレーム48との位置関係が変化することをより防ぐことができる。
【0017】
本発明の水底均し装置は、底板43の傾斜角度を自在に変更することができるため、水平面に対する底板43の傾斜角度を表示する角度指標体103が設けられていると、底板43の傾斜角度を角度指標体103で容易に確認することができるので、所望する角度に底板43の傾斜角度を簡便に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る水底均し装置の正面図であり、底板が傾斜している状態を示している。
【
図2】同水底均し装置を使った圧密均し作業の模式図である。
【
図3】同水底均し装置の正面図であり、グラブバケットと均し具とが分離されている状態を示している。
【
図6】吊持ワイヤおよび開閉ワイヤの連結構造を示す側面図である。
【
図8】ワイヤ連結部の構造を示す分解正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態) 本発明に係る水底均し装置の実施形態を
図1ないし
図11に示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図3および
図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において水底均し装置は、防波堤等の水中捨石基礎の構築における圧密均しに使用される重錘として使用されるものであり、クレーン船1のクレーンのブーム2に吊下げられるグラブバケット3と、グラブバケット3に連結される均し具4とで構成される。
【0020】
図1および
図3に示すようにグラブバケット3は、オレンジピール型と称されるバケットである。このグラブバケット3は、アッパブロック7と、アッパブロック7の下方に配されるロアブロック8と、ロアブロック8で回動開閉自在に軸支される計6本のグラブ9と、アッパブロック7と各グラブ9とを連繋する計6本のロッド10と、アッパブロック7とロアブロック8との間に設けられる倍力機構11などで構成される。
図4に2点鎖線で示すように、6個のグラブ9は、ロアブロック8の周方向の等間隔位置に配置されている。
【0021】
各グラブ9は、「C」字形に湾曲する中空箱状のグラブフレーム14と、グラブフレーム14の下側内面に固定された掬い用のシェル15と、グラブフレーム14の回動先端に装着された爪16とで構成される。グラブフレーム14は、その上端がフレーム連結軸17を介してロアブロック8に回動可能に軸支されるとともに、上下方向の中途部外側が、ロッド10の下端に下連結軸18を介して相対回動可能に軸支されている。各ロッド10の上端は、上連結軸19を介してアッパブロック7に回動可能に軸支されている。
【0022】
倍力機構11は、アッパブロック7の下面に配された複数枚のシーブからなる上シーブ群20と、ロアブロック8の上面に配された複数枚のシーブからなる下シーブ群21と、これら上下のシーブ群20・21に交互に巻き掛けられる2本の巻掛ワイヤ22とで構成されている。上下のシーブ群20・21に巻き掛けられた各巻掛ワイヤ22は、一端がアッパブロック7に固定され、他端がアッパブロック7の上方へと連出される。
【0023】
グラブバケット3は、基端が吊下ウインチ(図示していない)に連結され先端側がブームの先端から垂下される2本の吊下げワイヤ(第1吊持ワイヤ)25・25(
図2参照)により吊下げられている。
図3および
図6に示すように、各吊下げワイヤ25の先端には吊持ハンガー26が固定されており、吊持ハンガー26は、アッパブロック7の上面左右中央の前縁と後縁に設けられる吊持ブロック27に前後方向に伸びる吊持ピン28で連結されている。吊持ピン28で連結される吊持ハンガー26と吊持ブロック27とは、前後の水平軸まわりに相対的に回動可能であり、これにより、グラブバケット3は、吊下げワイヤ25に対して吊持ピン28を支点に左右に傾動できる。吊下ウインチにより各吊下げワイヤ25を巻取りあるいは繰出すことで、グラブバケット3を上下動させることができる。
【0024】
グラブバケット3の一群のグラブ9は、基端が開閉ウインチ(図示していない)に連結され先端側がブームの先端から垂下される2本の開閉ワイヤ31・31(
図2参照)により開閉される。
図3および
図6に示すように、各開閉ワイヤ31の先端には連結ハンガー32が固定されており、連結ハンガー32は、アッパブロック7の上方に連出される各巻掛ワイヤ22の端部に固定される連結ブラケット33に前後方向に伸びる連結ピン34で連結されている。これにより、開閉ワイヤ31は倍力機構11を介してロアブロック8に連結される。開閉ウインチにより各開閉ワイヤ31を巻取りあるいは繰出すことで、アッパブロック7に対して倍力機構11を介してロアブロック8を上下動させることができる。当該ロアブロック8の上下動は、下連結軸18を支点とする各グラブ9の回動に変換され、
図1に示す閉姿勢と、
図3に示す開姿勢との間で、一群のグラブ9を開閉操作することができる。
【0025】
連結ピン34は、フランジ部を有する丸軸状のピン本体35と、ピン本体35の雄ねじ部にねじ込まれるナット体36とで構成されている。連結ハンガー32および連結ブラケット33は、それぞれ先端側に開口するコ字状に形成されており、連結ハンガー32には一対のハンガー通孔37が前後貫通状に形成され、連結ブラケット33には一対のブラケット通孔38が前後貫通状に形成されている。これら両通孔37・38にピン本体35を挿通したのち雄ねじ部にナット体36をねじ込んで締め操作することで、連結ハンガー32と連結ブラケット33とは、前後の水平軸まわりに相対回動可能に連結される。
【0026】
図1、
図3、および
図4において、均し具4は、グラブ9を囲むように構成される支持枠41と、支持枠41とグラブバケット3との連結を担う連結具42と、支持枠41の下端に固定された底板43と、グラブ9の下面を受けるグラブ受け44とを備える。本実施形態の水底均し装置は、連結具42によりグラブバケット3に均し具4を連結して両者3・4を一体化することにより、水底均し装置として構成される。また、本実施形態の水底均し装置においては、単体のグラブバケット3は、捨石等の荷役に使用することができ、クレーン船1の甲板上に載置された単体の均し具4は、支持枠41でグラブ9が閉姿勢にあるグラブバケット3を支持することにより、グラブバケット3を起立姿勢で載置するための架台として利用できる。
【0027】
図4および
図5に示すように、支持枠41は、底板43に溶接固定される下フレーム47と、下フレーム47の上方に配される上フレーム48と、これら上下のフレーム48・47を一体に接続する上下方向に伸びる支柱49とで構成される。下フレーム47および上フレーム48は、それぞれ角パイプを正六角枠状に溶接固定して形成されており、各支柱49は、上下のフレーム48・47の向かい合う各コーナー部どうしを接続するように溶接固定されている。これら上下のフレーム48・47および支柱49により、支持枠41は枠状の構造物として構成される。下フレーム47で囲まれる内方には、下フレーム47の中心から同フレーム47の各辺の中央部に向かって放射状に伸びる内補強枠50が設けられ、下フレーム47の前後の外方には、下フレーム47の左右の枠部を含めて前後に長い四角枠状に形成されるコ字状の外補強枠51がそれぞれ設けられている。内外の補強枠50・51は、角パイプを溶接固定して形成されており、下フレーム47よりも内方および外方の底板43を補強しその変形を防いでいる。
【0028】
底板43は鋼板からなり、外補強枠51を含む下フレーム47よりも一回り大きな前後に長い四角板状に形成されている。底板43には、下フレーム47および内外の補強枠50・51で覆われていない部分に、丸孔状の16個の水抜き孔52が貫通状に形成されている。このように、底板43に水抜き孔52を形成すると、水底均し装置を水底に向かって降下させる際、あるいは圧密均し作業時に、水が水抜き孔52を通過できるようにすることで、底板43に作用する水の抵抗を小さくすることができるので、水底均し装置をよりスムーズに捨石上に降下させるとともに、スムーズに圧密均し作業を進めることが可能となる。
【0029】
図1に示すように、グラブ受け44はグラブ9を受け止め支持するためのものであり、支持枠41を構成する下フレーム47の各辺の中央部に固定されている。具体的には、
図4および
図5に示すように、正六角枠状の下フレーム47の6つの辺のそれぞれに、グラブ9に対応して計6個のグラブ受け44が固定されている。各グラブ受け44は、2個のベースブロック55と、対のベースブロック55の上端どうしを接続する受けブロック56と、受けブロック56の上面に固定される四角ブロック状の木製の緩衝材57とで構成される。ベースブロック55および受けブロック56はともに角パイプからなり、ベースブロック55の下端は、下フレーム47を形成する角パイプの外形形状と一致するように切欠きが施されている。グラブ受け44は、両ベースブロック55の間に内補強枠50が位置するように下フレーム47に切欠きをあてがった状態で、下フレーム47および底板43に溶接固定される。緩衝材57は、締結部材(図示していない)で受けブロック56の上面に固定される。
【0030】
図7に示すように、支持枠41とグラブバケット3との連結を担う連結具42は、支持枠41の上フレーム48に固定される第1ブラケット60と、ロッド10の外面に固定される第2ブラケット61と、これら両ブラケット60・61を連結するターンバックル状の連結体62とで構成される。各ロッド10には、一対の第2ブラケット61が設けられ、上フレーム48の各辺には、これら第2ブラケット61に対応して一対の第1ブラケット60が設けられる。従って、6本のロッド10のそれぞれが一対の連結具42により上フレーム48に連結されており、全体として計12個の連結具42で、グラブバケット3と均し具4とが一体的に連結される。
【0031】
連結体62は、第1ブラケット60に連結される、下端にコ字状の連結片63を有する第1ボルト64と、第2ブラケット61に連結される、上端にコ字状の連結片65を有する第2ボルト66と、両ボルト64・66を繋ぐブレース67とで構成される。第1および第2ボルト64・66のうち、一方は右ねじで構成され、他方は左ねじで構成される。ブレース67は、上下に長い環体の上下端に雌ねじ孔が形成された金属成形品からなり、下側の雌ねじ孔に第1ボルト64がねじ込まれ、上側の雌ねじ孔に第2ボルト66がねじ込まれる。両ボルト64・66の回転を規制した状態でブレース67を回転させると、両ボルト64・66を引き寄せる方向、或いは離れる方向へ操作することができる。
図7において符号68は、第1ブラケット60と第1ボルト64の連結片63、および第2ブラケット61と第2ボルト66の連結片65を連結するための、ボルトおよびナットからなる締結体であり、符号69は、ブレース67の不用意な回転を規制するロックナットである。
【0032】
上記の連結具42でグラブバケット3と均し具4と連結して一体化することにより、水中捨石基礎の圧密均しに用いられる重錘として使用される水底均し装置として構成される。
図1に示すように、均し具4の支持枠41には、第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71が設けられている。本実施形態の水底均し装置では、ワイヤ連結部71に第2吊持ワイヤ70を連結し、該第2吊持ワイヤ70を巻上げあるいは繰出すことにより、水平面に対する底板43の傾斜角度を変更でき、
図2に示すような水平面および傾斜面を有する水中捨石基礎の圧密均しに使用できる。
【0033】
ワイヤ連結部71は2個で1組として構成されており、支持枠41の上フレーム48の左辺部分、および右辺部分にそれぞれ1組ずつのワイヤ連結部71・71が設けられている(
図4参照)。各ワイヤ連結部71は、上フレーム48の上面に固定される内外一対のベースブラケット72と、ベースブラケット72に対してベース軸73で回動自在に軸支されるハンガーブラケット74とで構成される。各ベースブラケット72には、ベース軸73が挿通されるベース通孔75が設けられている。本実施形態では、一対の開閉ワイヤ31を第2吊持ワイヤ70として利用しており、各巻掛ワイヤ22から開閉ワイヤ31を分離し、分離された開閉ワイヤ31をワイヤ連結部71に連結する。
【0034】
図8に示すようにハンガーブラケット74は、四角ブロック状の下連結ブロック76と、下連結ブロック76の上側に一体に設けられるコ字型ブロック状の上連結ブロック77とで構成される。下連結ブロック76にはベース軸73が挿通される第1通孔78が形成され、上連結ブロック77には連結ハンガー32を連結するための連結ピン34が挿通される2個の第2通孔79が形成されている。ベース軸73は丸軸体からなり、一端にフランジ部80が設けられ、他端寄りにロックピン81が挿入される貫通状のピン孔82が形成されている。ロックピン81はその一端にリングを有する。
図8において符号83は、内側のベースブラケット72に一体に固定されて、下連結ブロック76とベースブラケット72との隙間を埋めつつ、ベース軸73を支持するボスである。
【0035】
ここで、グラブバケット3と均し具4との連結手順を説明する。まず開閉ワイヤ31を巻上げて一群のグラブ9を
図3に実線で示す開姿勢から2点鎖線で示す閉姿勢としたうえで、クレーン船1の甲板上に載置された均し具4に対して、グラブバケット3を載置する。このとき、吊下げワイヤ25を繰出して一群のグラブ9が上フレーム48の内方に侵入するように降下させることにより、各グラブ9の下面がグラブ受け44の緩衝材57の上面に受け止められる。
【0036】
次に、連結具42を構成する連結体62を用意し、ブレース67に対して第1および第2のボルト64・66を回転させて上下の連結片63・65の間隔寸法が、第1および第2ブラケット60・61の間隔寸法と略同一となるように、ブレース67に対する両ボルト64・66の突出寸法を調整する。続いて、第1ブラケット60と第1ボルト64の連結片63、および第2ブラケット61と第2ボルト66の連結片65をボルトとナットからなる締結体68でそれぞれ連結し、さらにこの状態でブレース67を回転させ、両ボルト64・66を互いに引き寄せて連結体62を緊張状態とする。最後に、ブレース67に圧接するようにロックナット69を締め付けて、ブレース67を両ボルト64・66に対して回り止めする。これにて、連結具42によりグラブバケット3に均し具4を連結して、両者3・4を一体化することができる。
【0037】
グラブバケット3と均し具4との連結後は、開閉ワイヤ31(第2吊持ワイヤ70)の付替えを行う。具体的には、連結ピン34のナット体36を緩め操作して分離しピン本体35を連結ハンガー32および連結ブラケット33から抜き取り、巻掛ワイヤ22から開閉ワイヤ31を分離する。フリーとなった連結ブラケット33が固定された巻掛ワイヤ22の遊端側は、グラブ9で囲まれる空間内に押し込む等して、他物と絡まないように処理をしておく。必要に応じて番線等で巻掛ワイヤ22をグラブバケット3に固定してもよい。
【0038】
次に、ハンガーブラケット74を用意し、同ブラケット74の第1通孔78と、上フレーム48の右辺にある各ベースブラケット72のベース通孔75とを位置合わせしたうえで、上フレーム48の外側にあるベースブラケット72側からベース軸73を両通孔75・78に挿通し、上フレーム48の内側にあるベースブラケット72から突出したベース軸73の先端のピン孔82にロックピン81を差し込む。この状態におけるベース軸73は、フランジ部80とロックピン81とでベースブラケット72に対して移動が規制されて抜け止めされ、ベースブラケット72とハンガーブラケット74とが連結される。続いて、開閉ウインチで開閉ワイヤ31を繰出し、ハンガーブラケット74の第2通孔79と連結ハンガー32のハンガー通孔37とを位置合わせしたうえで、両通孔37・79にピン本体35を挿通する。最後に、ピン本体35の雄ねじ部にナット体36をねじ込んで締め操作することにより、連結ピン34でワイヤ連結部71に開閉ワイヤ31を連結することができる。これを上フレーム48の右辺にある前後のワイヤ連結部71で行う。
【0039】
本実施形態の水底均し装置は、グラブバケット3と均し具4とが一体的に連結された状態において、その重心位置は平面視におけるアッパブロック7の中央と、底板43の中央を通る中心線上に位置している。また、吊下げワイヤ25は、アッパブロック7の上面左右中央の前縁と後縁に設けられる。これらの条件により、開閉ワイヤ31(第2吊持ワイヤ70)が均し具4を吊り上げていない、すなわち、吊下げワイヤ25のみで水底均し装置を吊持すると、吊下げワイヤ25の連結部分(吊持ピン)の下方に重心位置が位置する状態で安定し、水底均し装置は底板43が水平な水平姿勢となる。
【0040】
また、上記の状態から、吊下げワイヤ25はそのままに開閉ウインチで開閉ワイヤ31(第2吊持ワイヤ70)を巻き上げると、均し具4は上方に吊り上げられ、吊下げワイヤ(第1吊持ワイヤ)25とグラブバケット3との連結部、つまり吊持ハンガー26と吊持ブロック27とを連結する吊持ピン28を支点に水底均し装置の下部が右方に傾動する。これにて、水底均し装置は底板43が水平に対して傾斜する傾斜姿勢となる。底板43の傾斜角度は、開閉ワイヤ31の巻き上げ量を調整することで自在に変更することができる。なお、上フレーム48の左辺にある前後のワイヤ連結部71に開閉ワイヤ31を連結した場合には、開閉ウインチで開閉ワイヤ31を巻き上げると、水底均し装置は吊持ピン28を支点に下部が左方に傾動する。
【0041】
上記とは逆に、開閉ワイヤ31(第2吊持ワイヤ70)はそのままに吊下ウインチで吊下げワイヤ25を繰出すと、水底均し装置の上部が左方に傾動する。この方法によっても、水底均し装置を傾斜姿勢とすることができ、吊下げワイヤ(第1吊持ワイヤ)25の連結部分である吊持ピン28を支点にして、水底均し装置の吊持姿勢が変更される点は同じである。
【0042】
グラブ受け44で支持されるグラブ9と、連結具42が連結されるロッド10とは軸と軸孔からなる下連結軸18で連結されている。このような下連結軸18では、設計公差や組立公差に由来するがたつきが存在するので、当該がたつきによりグラブ9またはロッド10がずれ動くと、バケット連結具42を構成する連結体62の緊張の度合いが変化するおそれがある。この連結体62の緊張の度合いの変化は、グラブバケット3と均し具4の一体化が不安定になることを意味する。
【0043】
そこで、下連結軸18のがたつきに起因してグラブバケット3と均し具4の一体化が不安定になることを回避するため、グラブ9とロッド10とを一体的に固定するためのロッド固定手段86が設けられている。
図9に示すようにロッド固定手段86は、グラブ9のグラブフレーム14の側面に固定される板状のグラブ締結片87と、ロッド10の側面に固定される板状のロッド締結片88と、これら両締結片87・88を締結固定するボルト89およびナット90からなる締結具とで構成される。グラブ締結片87およびロッド締結片88は、ともにボルト89が挿通される通孔を有し、グラブ9を閉姿勢としたとき、ロッド締結片88が上側に配されかつ互いに平行になるようにグラブフレーム14およびロッド10に溶接固定されている。ロッド固定手段86は1組のグラブ9とロッド10に対して各側面に設けられており、従って、全体として計12組のロッド固定手段86が設けられている。
【0044】
グラブ9を閉姿勢とした状態でグラブ締結片87とロッド締結片88との通孔にボルト89を挿通し、該ボルト89にナット90をねじ込んで両締結片87・88を締結固定すると、グラブ9はロッド10に対して開姿勢の方向へは回動することはできず、また締結によりグラブ9とロッド10とは互いに引き寄せられて、下連結軸18の公差に由来するがたつきも抑えられる。ロッド固定手段86は、グラブバケット3と均し具4とを連結具42で連結する前後いずれにおいても構築することが可能であるが、下連結軸18のがたつきを抑えたうえで両者3・4を連結できる分、連結具42による両者3・4の連結前に構築することが好ましい。
【0045】
グラブバケット3と均し具4とは連結具42で連結されているものの、重錘として使用されるためその重量は大きく慣性も大きい。そこで、連結具42に加え、グラブ受け44で受け止められたグラブ9が、グラブ9の外方にある上フレーム48側に近接移動すること、すなわち均し具4とグラブバケット3とが水平方向にずれ動くことを阻止する移動規制手段93が設けられている。移動規制手段93は、支持枠41の上フレーム48に設けられており、上フレーム48の上面に固定される内外一対の支持ブラケット94と、それぞれの支持ブラケット94に形成されたピン通孔95に挿通され固定される規制ピン96とで構成されている。規制ピン96は丸軸体からなり、一端にフランジ部97が設けられ、他端寄りにロックピン98が挿入される貫通状のピン孔99が形成されている。ロックピン98はその一端にリングを有する。
図10において、符号100は、内側の支持ブラケット94に一体に固定されて、規制ピン96を支持するボスである。
【0046】
連結具42によりグラブバケット3に均し具4を連結したのち、上フレーム48の外側にある支持ブラケット94側から規制ピン96を両ピン通孔95・95およびボス100に挿通し、上フレーム48の内側にある支持ブラケット94から突出した規制ピン96の先端のピン孔99にロックピン98を差し込む。この状態における規制ピン96は、フランジ部97とロックピン98とで支持ブラケット94に対して移動が規制されて抜け止めされ、一対の支持ブラケット94に規制ピン96が連結される。
【0047】
支持ブラケット94に規制ピン96を連結すると、規制ピン96の先端は、水平方向からグラブフレーム14に僅かな隙間を介して近接している。これにより、グラブ受け44で支持されているグラブ9が上フレーム48側へ移動しようとしても、グラブフレーム14が規制ピン96に接触することでその移動が規制される。
【0048】
ワイヤ連結部71を構成する部材と、移動規制手段93を構成する部材とは、部品が共通化されている。具体的には、ベースブラケット72と支持ブラケット94、ベース軸73と規制ピン96、およびボス83とボス100は同一部品で構成されている。このように部品が共通化されていると、水底均し装置を構成する部品数を減らしてコストの低減化を図ることができる。
【0049】
均し具4には、開閉ワイヤ31(第2吊持ワイヤ70)で傾斜姿勢とされた水底均し装置の底板43の傾斜角度を表示する角度指標体103が設けられている。角度指標体103は、支持枠41の前側中央に配される支柱49の上端に設けられており、前記支柱49に固定される下半円板状の表示板104と、表示板104の上端左右中央に設けられ前後に伸びる水平軸からなる垂下軸105と、垂下軸105で回動自在に軸支される支持棒106とを備えている。支持棒106は、一端(上端)が垂下軸105で軸支され自重で垂直軸に沿う姿勢を維持している。表示板104には、垂下軸105を中心とする同心円状に、複数の円弧帯状の指標帯107が形成される。本実施形態では5重の指標帯107が形成されている。
【0050】
最内の指標帯107は、底板43が左右にそれぞれ1:3.0(約18度)の勾配で傾斜したとき、支持棒106がその帯端を指すような円弧帯として形成されている。指標帯107は外側に行くにしたがって、1:2.5(約22度)、1:2.0(約27度)、1:1.7(約30度)の勾配に対応しており、最外の指標帯107は、底板43が左右にそれぞれ1:1.5(約34度)の勾配で傾斜したとき、支持棒106がその帯端を指すような円弧帯として形成されている。
【0051】
勾配が1:3.0である傾斜面の均密均しを行う場合には、水底均し装置を水上に引き上げた状態で、角度指標体103を確認しつつ開閉ワイヤ31を巻上げ、支持棒106が最内の指標帯107の端部を指し示したときに開閉ワイヤ31の巻上げを停止すると、底板43が約18度の傾斜角度になるように水底均し装置を傾けることができる。この状態で、吊下げワイヤ(第1吊持ワイヤ)25と開閉ワイヤ31(第2吊持ワイヤ70)とを同じ繰出し量(吊下ウインチと開閉ウインチから繰出されるワイヤ長が同じになるように制御しつつ繰出す)で水中を降下させることで、水底均し装置はその姿勢を維持したまま降下するので、水中に投下した捨石を目的の勾配に均すことができる。上昇させる際も吊下げワイヤ25と開閉ワイヤ31との巻上げ量を同じとすることで、水底均し装置はその姿勢が維持される。異なる勾配の傾斜面を均す場合には、一旦水底均し装置を水上に引き上げて、先と同様の作業で傾斜角度を変更すればよい。
【0052】
以上のように、本実施形態の水底均し装置では、吊下げワイヤ25の連結部分である吊持ピン28を支点にして、底板43が水平となる水平姿勢と、底板43が水平に対して傾く傾斜姿勢との間で吊持姿勢が変更できるように構成し、均し具4の支持枠41に吊持姿勢を変更するための第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71を設けた。これによれば、両吊持ワイヤ25・70で吊持されている水底均し装置が、その底板43が水平となる水平姿勢のとき、繰出されるワイヤ長さが一致するように両ワイヤ25・70を繰出すことにより、水底均し装置を水平姿勢に維持したまま水底に降下させることができるので、水底均し装置で水底面を水平な均し面に仕上げることができる。また、前記の状態から吊下げワイヤ25をそのままに第2吊持ワイヤ70を巻上げると、均し具4を吊り上げてグラブバケット3と吊下げワイヤ25の連結部分を支点にして水底均し装置を傾けることができるので、水底均し装置を底板43が水平に対して傾斜する傾斜姿勢へと変更することができる。傾斜姿勢とされた水底均し装置は、繰出されるワイヤ長さが一致するように両ワイヤ25・70を繰出すことにより、水底均し装置を傾斜姿勢に維持したまま水底に降下させることができるので、水底均し装置で水底面を勾配を有する均し面に仕上げることができる。底板43の傾斜角度は、第2吊持ワイヤ70の巻上げによる均し具4の吊り上げ量を調整することで自在に調整することができ、傾斜姿勢の水底均し装置は、吊下げワイヤ25をそのままに第2吊持ワイヤ70を繰出すことで、再び水平姿勢へと姿勢を変更することができる。
【0053】
上記のように本実施形態の水底均し装置によれば、吊下げワイヤ25および第2吊持ワイヤ70による吊持状態により水底均し装置の吊持姿勢を変更することで、均し具4の底板43(底面)の傾斜角度を自在に変更することができるので、底板43の傾斜角度を水中捨石基礎の均し面の勾配に素早く対応させて、水中捨石基礎の圧密均し作業をスムーズかつ迅速に行うことができる。また、本実施形態の水底均し装置は、均し具4が連結されていない状態では、捨石を水中に投入する荷役作業を行うグラブバケット3として使用することができるので、捨石の投入から圧密均しに至る水中捨石基礎の構築作業に複数の装置を使用する必要がない分、一連の構築作業を効率よく行うことができる。
【0054】
閉姿勢にある複数のグラブ9が上下方向に抜き差し可能な上フレーム48に第2吊持ワイヤ70が連結されるワイヤ連結部71を設けた。これによれば、一般にグラブバケット3の平面視における外形形状は複数のグラブ9によって規定されるので、グラブ9よりも外側に配される上フレーム48にワイヤ連結部71を設けることで、第2吊持ワイヤ70で吊り上げて水底均し装置が傾いた場合でも、グラブバケット3に第2吊持ワイヤ70が干渉することを回避できる。従って、第2吊持ワイヤ70の巻上げあるいは繰出しによる底板43の角度調整をスムーズに行うことができる。また、上下のフレーム48・47およびこれらを接続する支柱49とで枠状の構造物として構成される支持枠41はグラブバケット3が載置される分剛性が高く、これに第2吊持ワイヤ70を連結することにより、第2吊持ワイヤ70による吊り上げで均し具4が破損することを防ぐことができる。
【0055】
グラブ9に対して下連結軸18で回動可能に連結されるロッド10を一体的に固定するロッド固定手段86を設けたので、軸と軸孔とで構成される下連結軸18において避けることのできない設計公差や組立公差に由来するがたつきに起因する、グラブ9に対するロッド10の遊動を規制することができる。従って、ロッド10が遊動することによって上フレーム48との位置関係が変化することを防いで、ロッド10と上フレーム48の間の連結具42に不要な外力が作用することを解消して、グラブバケット3と均し具4との連結具42による連結を適切に維持することができる。
【0056】
グラブ9と上フレーム48との間に設けられ、グラブ受け44で受け止められたグラブ9が、上フレーム48側に近接移動することを阻止する移動規制手段93を設けたので、下連結軸18のまわりにグラブ9が開き方向に回動することによるグラブバケット3と均し具4との水平方向のずれ動きを移動規制手段93で規制して、上記のずれ動きに起因してロッド10と上フレーム48との位置関係が変化することをより防ぐことができる。
【0057】
均し具4に、水平面に対する底板43の傾斜角度を表示する角度指標体103を設けたので、底板43の傾斜角度を角度指標体103で容易に確認することができ、所望する角度に底板43の傾斜角度を簡便に一致させることができる。
【0058】
上記の実施形態では、開閉ワイヤ31を第2吊持ワイヤ70として利用したが、ブーム2の先端か吊下げワイヤ25および開閉ワイヤ31に加え、その他のワイヤが垂下されているクレーン船1の場合には、その他のワイヤを第2吊持ワイヤ70とすることができる。この場合には、開閉ワイヤ31の分離作業が必要ない分、水中捨石基礎の構築における一連の作業をよりスムーズに行うことができる。
【0059】
また、上記ではアッパブロック7の上面左右中央の前縁と後縁に吊持ブロック27を設けたが、アッパブロック7の上面前後中央の左縁と右縁に吊持ブロック27を設けることができる。この場合には、グラブバケット3は前後方向に傾動できるので、ワイヤ連結部71は上フレーム48の前側の2辺および後側の2辺に設ける。この時移動規制手段93の構成は、ワイヤ連結部71と同一の構成とされているため、一対の支持ブラケット94をベースブラケット72として利用し、規制ピン96をベース軸73として利用してハンガーブラケット74を連結することができる。これにより、ベースブラケット72とベース軸73とを省略することができる。
【0060】
また、吊下げワイヤ25のみで吊持されている水底均し装置の底板43が、例えば左端が高く右端が低くなる状態で傾斜する場合がある。この場合には、上フレーム48の右辺にあるワイヤ連結部71に開閉ワイヤ31(第2吊持ワイヤ70)を連結し開閉ワイヤ31を巻き上げると、底板43は一旦水平姿勢とされ、さらに開閉ワイヤ31を巻き上げると、底板43は傾斜姿勢とされる。
【0061】
本発明に係る水底均し装置のグラブバケット3は、実施形態に示したような6個のグラブ9を備えるグラブバケットに限られず、例えば、2本~5本のグラブを備えるグラブバケットにも適用できる。また、本発明に係る水底均し装置のグラブバケット3は、実施形態に示したような所謂オレンジピール型と称される荷役用のグラブバケットに限られず、2個のグラブを備える浚渫用のグラブバケットであってもよい。また、本発明に係る均し具4を構成する支持枠41の形態は、実施形態で示したような正六角形状に限られず、四角形状などの多角形状とすることができる。底板43の形状も、実施形態に示した長方形状に限られない。
【符号の説明】
【0062】
3 グラブバケット
4 均し具
7 アッパブロック
8 ロアブロック
9 グラブ
10 ロッド
18 下連結軸
25 第1吊持ワイヤ(吊下げワイヤ)
31 開閉ワイヤ
41 支持枠
42 連結具
43 底板
44 グラブ受け
47 下フレーム
48 上フレーム
49 支柱
70 第2吊持ワイヤ
71 ワイヤ連結部
86 ロッド固定手段
93 移動規制手段
103 角度指標体