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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169680
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】点火コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/12 20060101AFI20231122BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01F30/12 F
F02P15/00 303H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080951
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 篤史
【テーマコード(参考)】
3G019
【Fターム(参考)】
3G019KC07
(57)【要約】
【課題】点火コイル内部の端子間の接触不良が防止された、点火コイルの提供。
【解決手段】この点火コイル2は、棒状端子22と、把持部40を有する受け端子38とを備える。前記把持部40が、平板が折り返された形状を呈しており、この折り返しにより前記把持部40に主部48と、前記主部48と重なり合う折返し部50とが形成されている。前記把持部40を前記把持部40の正面側から見たとき、前記主部48に、前記主部48の第一方向の側の辺に第一開口52を有し内側に向けて延びる第一スリット44が設けられている。前記折返し部50に、前記折返し部50の前記第一方向の側の辺に第二開口54を有し前記第一スリット44と実質的に同じ方向に延びる第二スリット46が設けられている。前記第一スリット44と前記第二スリット46とが重なりを有し、この重なり部分に前記棒状端子22が通されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状端子と、把持部を有する受け端子とを備え、
前記把持部が、平板が折り返された形状を呈しており、この折り返しにより前記把持部に、主部と、前記主部と重なり合う折返し部とが形成されており、
前記把持部を前記把持部の正面側から見たとき、
前記主部に、前記主部の第一方向の側の辺に第一開口を有し内側に向けて延びる第一スリットが設けられており、
前記折返し部に、前記折返し部の前記第一方向の側の辺に第二開口を有し前記第一スリットと実質的に同じ方向に延びる第二スリットが設けられており、
前記第一スリットと前記第二スリットとが重なりを有し、この重なり部分に前記棒状端子が通されている、点火コイル。
【請求項2】
前記把持部を前記把持部の正面側から見たとき、前記第一スリットの中心線と前記第二スリットの中心線とがずれている、請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
前記第一スリットの開口が前記折り返しにより形成された主部の辺に設けられており、前記第二スリットの開口が前記折り返しにより形成された折返し部の辺に設けられている、請求項1又は2に記載の点火コイル。
【請求項4】
前記第一スリットの開口が前記折り返しにより形成された主部の辺とは異なる辺に設けられており、前記第二スリットの開口が前記折り返しにより形成された折返し部の辺とは異なる辺に設けられている、請求項1又は2に記載の点火コイル。
【請求項5】
一次コイル、二次コイル及び入力端子を含むコイルアセンブリと、前記入力端子と接続するコネクタ端子及び外部端子を含むコネクタ部とを備え、
前記棒状端子が前記入力端子であり、前記受け端子が前記コネクタ端子である、請求項1又は2に記載の点火コイル。
【請求項6】
第一スリット及び第二スリットが形成された板状の把持部を備える受け端子を準備する工程、
第一方向側の辺に第一開口を有する前記第一スリットを備えた主部と、前記第一方向側の辺に第二開口を有する前記第二スリットを備えた折返し部とが形成され、前記第一スリットと前記第二スリットとが重なり、前記第一スリットの中心線と前記第二スリットの中心線とがずれるように、前記把持部を折り返す工程
及び
前記第一スリットと前記第二スリットとの重なり部分に、棒状端子を通す工程
を含む、点火コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の点火コイルは、外部とのインターフェース部であるコネクタ部、高電圧を発するコイルを内蔵するコイルアセンブリを備える。コネクタ部は、外部の制御装置と電気的に接続される複数の外部端子と、コイルアセンブリの入力端子と電気的に接続する複数のコネクタ端子とを備える。外部からの信号は、コネクタ部を介して、コイルアセンブリに伝えられる。
【0003】
コイルアセンブリの入力端子は棒状を呈しており、コネクタ端子はスリットを有する板状を呈している。入力端子をスリットに嵌め込むことで、入力端子とコネクタ端子とが電気的に接続されている。特開2012-174828公報及び実開平4-5622公報には、点火コイルの入力端子とコネクタ端子との接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-174828公報
【特許文献2】実開平4-5622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
点火コイルは、例えば自動車に搭載されると、周囲温度は大きく変動する。入力端子及びコネクタ端子が温度変化による膨張と収縮とを繰り返すことで変形し、入力端子とコネクタ端子との接触不良が発生することがある。
【0006】
本発明者の意図するところは、点火コイル内部の端子間の接触不良が防止された、点火コイルの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る点火コイルは、棒状端子と、把持部を有する受け端子とを備える。前記把持部が、平板が折り返された形状を呈しており、この折り返しにより前記把持部に、主部と、前記主部と重なり合う折返し部とが形成されている。前記把持部を前記把持部の正面側から見たとき、前記主部に、前記主部の第一方向の側の辺に第一開口を有し内側に向けて延びる第一スリットが設けられている。前記折返し部に、前記折返し部の前記第一方向の側の辺に第二開口を有し前記第一スリットと実質的に同じ方向に延びる第二スリットが設けられている。前記第一スリットと前記第二スリットとが重なりを有し、この重なり部分に前記棒状端子が通されている。
【発明の効果】
【0008】
この点火コイルでは、把持部の主部に第一スリットが形成され、主部と重なり合う折返し部に第二スリットが形成されている。第一スリットと第二スリットとが重なりを有し、この重なり部分に棒状端子が通されている。棒状端子は、第一スリットと第二スリットに通されているため、棒状端子と把持部との接触面積が大きくなる。さらに主部と折返し部とは重なっているため、この把持部は変形しにくい。これらにより、棒状端子と受け端子との接触不良が効果的に防止される。この点火コイルでは、点火コイル内部の端子間の接触不良が防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る点火コイルが示された断面図である。
図2図2は、図1の点火コイルのコネクタ部がコイルアセンブリの入力端子と共に示された斜視図である。
図3図3(A)は、図2のコネクタ端子及び入力端子が示された斜視図であり、図3(B)は、図3(A)のコネクタ端子の把持部が折り返される前の状態の状態が示された斜視図であり、図3(C)は、図2のコネクタ端子及び入力端子が示された正面図である。
図4図4は、入力端子が通される前の図3のコネクタ端子の把持部が示された正面図である。
図5図5(A)は、他の実施形態に係るコネクタ端子及び入力端子が示された斜視図であり、図5(B)は、図5(A)のコネクタ端子の把持部が折り返される前の状態の状態が示された斜視図であり、図5(C)は、図5(A)のコネクタ端子及び入力端子が示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0011】
図1は、一実施形態に係る点火コイル2が示された断面図である。図1において、矢印Xはこの点火コイル2の前方を表す。この逆が後方である。矢印Zはこの点火コイル2の上方を表す。この逆が下向である。この点火コイル2は、内燃機関用である。図1に示されるように、この点火コイル2は、コイルアセンブリ4、コネクタ部6及び出力部8を備える。図1には、この点火コイル2に装着されたプラグブーツ10及びスプリング12も、併せて示されている。
【0012】
コイルアセンブリ4は、ケース14、一次コイル16、二次コイル18及び鉄芯20を備える。図1では隠れて見えないが、コイルアセンブリ4は、入力端子22をさらに備えている。一次コイル16、二次コイル18、鉄芯20は、ケース14に格納されている。鉄芯20の周りにワイヤを巻きまわすことで一次コイル16が形成され、一次コイル16の外側にワイヤを巻き回すことで二次コイル18が形成されている。二次コイル18のワイヤの巻き数は、一次コイル16のワイヤの巻き数より大幅に大きい。これにより、一次コイル16の電流を変化させることで、二次コイル18に高電圧が発生する。一次コイル16のワイヤ及び二次コイル18のワイヤは、典型的には銅線である。
【0013】
図2は、コイルアセンブリ4の入力端子22のみが、コネクタ部6とともに示された斜視図である。入力端子22は、複数存在する。それぞれの入力端子22は、コイルアセンブリ4において、コネクタ部6側に向けて延びている。入力端子22は、棒状である。入力端子22は、典型的には、一次コイル16のワイヤの先端が引き出されることで形成されている。入力端子22が、ワイヤとは異なる部材で形成されていてもよい。
【0014】
図1に示されるように、出力部8は、コイルアセンブリ4の下方に位置している。出力部8は、コイルアセンブリ4から下方に延びる筒状を呈している。図1で示されるように、出力部8には、プラグブーツ10及びスプリング12が装着されている。出力部8は、内部に棒状の抵抗器28を備えている。二次コイル18で発生した高電圧は抵抗器28に入力され、抵抗器28からスプリング12に送られる。プラグブーツ10が内燃機関に装着されたとき、スプリング12は点火プラグと接続する。
【0015】
図1に示されるように、コネクタ部6は、コイルアセンブリ4の前方に位置している。図1及び2に示されるように、コネクタ部6は、筒部30、外部端子32、イグナイタ34、ケース36及びコネクタ端子38を備える。コネクタ部6のケース36は、コイルアセンブリ4のケース14と一体として形成されている。なお図2では、ケース36は省略されている。
【0016】
筒部30は、前方が開口した筒状を呈する。複数の外部端子32が、筒部30の内部に位置する。外部端子32の一部は、対応するコネクタ端子38に直接繋がっている。外部端子32の一部は、イグナイタ34に繋がっている。イグナイタ34は、筒部30の後方に位置している。イグナイタ34の出力は、対応するコネクタ端子38に繋がっている。イグナイタ34は、外部からの信号により、一次コイル16の電流の導通及び遮断を制御するスイッチである。ケース14は、イグナイタ34の周囲を覆っている。図2に示されるように、複数のコネクタ端子38が、イグナイタ34より後方に突出している。
【0017】
図3(A)は、図2のコネクタ端子38の一つが、コイルアセンブリ4の入力端子22と共に示された斜視図である。図3(A)に示されるように、コネクタ端子38は、把持部40とアーム42とを備える。把持部40には、コイルアセンブリ4の入力端子22が接触している。アーム42は、把持部40から延びる。アーム42は、イグナイタ34の出力端子又は外部端子32と繋がっている。
【0018】
図3(A)に示されたとおり、把持部40は平板が折り返された形状を呈している。図3(B)に、折り返す前の把持部40が示されている。折り返す前の把持部40は、中央に第一スリット44及び第二スリット46を備える。第一スリット44と第二スリット46とは、繋がっている。第一スリット44と第二スリット46とで、折り返す前の把持部40には、表側面から裏側面までを貫通する孔が形成されている。
【0019】
図3(B)において、点線Mは折り返し位置を表す、折り返し線である。折り返し線Mは、第一スリット44と第二スリット46との境界線と重なって延びている。把持部40を折り返し線Mで折り返すことで、図3(A)に示された主部48と折返し部50とが形成される。第一スリット44は主部48に位置し、第二スリット46は折返し部50に位置している。第一スリット44の開口52は、折り返しにより形成された主部48の辺(この実施形態では、主部48の上辺)に設けられている。第二スリット46の開口54は、折り返しにより形成された折返し部50の辺(この実施形態では、折返し部50の上辺)に設けられている。主部48と折返し部50とは、重なり合っている。主部48と折返し部50とは、接触している。
【0020】
図3(C)は、把持部40を把持部40の正面側から見た図である。この図では、折返し部50及び折返し部50に設けられた第二スリット46が見えている。第二スリット46は、折返し部50の上辺の開口54から下辺側に向けて延びている。この実施形態では、第二スリット46の幅は、開口54の位置から先端まで、徐々に狭くなっている。図3(B)及び図3(C)に示されるように、第二スリット46は、開口54から延びる受け入れ部46aと、受け入れ部46aに連続して延び幅の変化率が受け入れ部46aより小さい保持部46bとを備えている。受け入れ部46aの幅が開口54の位置から下側に向けて徐々に狭くなっており、保持部46bが実質的に等幅で延びていてもよい。
【0021】
図3(C)では隠れているが、第一スリット44は、主部48の上辺の開口52から下辺側に向けて延びている。図3(B)で示されるように、この実施形態では、第一スリット44の幅は、開口52の位置から先端まで、徐々に狭くなっている。第一スリット44は、開口52から延びる受け入れ部44aと、受け入れ部44aに連続して延び幅の変化率が受け入れ部44aより小さい保持部44bとを備えている。受け入れ部44aの幅が開口52の位置から下側に向けて徐々に狭くなっており、保持部44bが実質的に等幅で延びていてもよい。
【0022】
図3(C)で示されるように、第一スリット44と第二スリット46とは重なっている。入力端子22は、第一スリット44と第二スリット46との重なり部分に通されている。入力端子22は、第一スリット44の保持部44bと、第二スリット46の保持部46bとに通されている。これにより、入力端子22は、把持部40に固定されている。換言すれば、第一スリット44及び第二スリット46の幅は、入力端子22がこれらの所定の位置に通されたとき、入力端子22が把持部40に固定されるように、決められている。
【0023】
図3(C)において、一点鎖線Lmは、第一スリット44の中心線を表す。ここでは、中心線Lmは、第一スリット44の保持部44bの中心線である。一点鎖線Lrは、第二スリット46の中心線を表す。ここでは、中心線Lrは、第二スリット46の保持部46bの中心線である。第一スリット44と第二スリット46とは、実質的に同じ方向に延びている。詳細には、中心線Lmと中心線Lrとがなす角度は5°以下である。この実施形態では、中心線Lmと中心線Lrとがなす角度は、0°である。入力端子22が通された状態で、把持部40の正面側から見たとき、中心線Lmと中心線Lrとは重なっている。
【0024】
この点火コイル2の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)コネクタ端子38を準備する工程
(2)把持部40を折り返す工程
(3)コネクタ部6(ケース36を除く部分)を組み立てる工程
(4)コイルアセンブリ4(ケース14を除く部分)を組み立てる工程
(5)コネクタ端子38とコイルアセンブリ4の入力端子22とを接続する工程
(6)ケース14、36を被せる工程
【0025】
上記(1)の工程では、図3(B)で示された、折り返す前の板状の把持部40を備えるコネクタ端子38が準備される。
【0026】
上記(2)の工程では、図3(B)のコネクタ端子38の把持部40が折り返される。図4に、折り返された後の把持部40が示されている。前述のとおり、この折り返しにより、第一スリット44を有する主部48と、第二スリット46を有する折返し部50とが形成される。図4に示されるように、この状態では、把持部40の正面側から見たとき、第一スリット44と第二スリット46とは、横方向(図4の左右方向)にずれている。第一スリット44の中心線Lmと第二スリット46の中心線Lrとは、横方向にずれている。換言すれば、把持部40を折り返し線Mで折り返したとき、中心線Lmと中心線Lrとがずれるように、第一スリット44、第二スリット46の形状及び折り返し線Mが決められている。
【0027】
上記(3)の工程では、コネクタ端子38を使用して図2で示されたコネクタ部6(ケース36を除く部分)が組み立ててられる。(4)の工程では、コイルアセンブリ4(ケース14を除く部分)が、出力部8上に配置される。
【0028】
上記(5)の工程では、図4で示されるように、入力端子22が第一スリット44及び第二スリット46の開口52、54側から、第一スリット44及び第二スリット46に嵌め込まれる。図4の矢印Vは、このときの入力端子22の移動方向を表す。入力端子22が、第一スリット44及び第二スリット46に通された状態となる。入力端子22が通されたことにより、主部48及び折返し部50が変形する。中心線Lmと中心線Lrとが重なり、把持部40は、図3(C)で示される状態となる。これにより、入力端子22がコネクタ端子38に堅固に固定される。
【0029】
上記(6)の工程では、コイルアセンブリ4のケース14及びコネクタ部6のケース36が被せられる。図1で示された点火コイル2が形成される。
【0030】
以下では、本実施形態の作用効果が説明される。
【0031】
この実施形態では、主部48に第一スリット44が形成され、折返し部50に第二スリット46が形成されている。第一スリット44と第二スリット46とが重なりを有し、この重なり部分にコイルアセンブリ4の入力端子22が通されている。入力端子22は、第一スリット44及び第二スリット46に通されているため、入力端子22と把持部40との接触面積が大きくなる。これにより、入力端子22と把持部40との接触不良が効果的に防止される。この点火コイル2では、点火コイル2内部の端子間の接触不良が防止されている。
【0032】
この実施形態では、第一スリット44が形成された主部48と、第二スリット46が形成された折返し部50とは、重なっている。このため、把持部40は変形しにくい。これにより、入力端子22と把持部40との接触不良が効果的に防止される。この点火コイル2では、点火コイル2内部の端子間の接触不良が防止されている。
【0033】
把持部40が折り返され、入力端子22が通されていない状態で、把持部40の正面側から見たとき、第一スリット44の中心線Lmと第二スリット46の中心線Lrとはずれているのが好ましい。入力端子22が通されることにより、中心線Lmと中心線Lrとが一致する方向に主部48と折返し部50とに力が加わる。入力端子22には、主部48からの反力、及び折返し部50からの反力が負荷される。これらの反力は、入力端子22と把持部40との接触圧を大きくする。これにより、入力端子22と把持部40との接触不良が効果的に防止される。この点火コイル2では、点火コイル2内部の端子間の接触不良が防止されている。
【0034】
図5(A)は、他の実施形態にかかるコネクタ端子60が、コイルアセンブリの入力端子62と共に示された斜視図である。図5(A)に示されるように、コネクタ端子60は、把持部64とアーム66とを備える。把持部64には、コイルアセンブリの入力端子62が接触している。把持部64は平板が折り返された形状を呈している。
【0035】
図5(B)に、折り返す前の把持部64が示されている。把持部64は、それぞれが上辺に開口を有する、第一スリット68及び第二スリット70を備える。第一スリット68及び第二スリット70は、並列して延びている。点線Mは、折り返し線を表す。折り返し線Mは、第一スリット68と第二スリット70との間に位置する。把持部64を折り返し線Mで折り返すことで、図5(A)に示された主部72と折返し部74とが形成される。第一スリット68は主部72に位置し、第二スリット70は折返し部74に位置している。第一スリット68の開口76は、主部72の上辺に設けられている。第一スリット68の開口76は、折り返しにより形成された辺には形成されていない。第二スリット70の開口78は、折返し部74の上辺に設けられている。第二スリット70の開口78は、折り返しにより形成された辺には形成されていない。主部72と折返し部74とは、重なり合っている。主部72と折返し部74とは、接触している。
【0036】
図5(C)は、把持部64を把持部64の正面側から見た図である。この図では、折返し部74及び折返し部74に設けられた第二スリット70が見えている。第二スリット70は、折返し部74の上辺から下辺側に向けて延びている。この実施形態では、第二スリット70の幅は、開口78の位置から先端まで、幅が徐々に狭くなっている。第二スリット70は、開口78から延びる受け入れ部70aと、受け入れ部70aに連続して延び幅の変化率が受け入れ部70aより小さい保持部70bとを備えている。受け入れ部70aの幅が開口78の位置から下側に向けて徐々に狭くなっており、保持部70bが実質的に等幅で延びていてもよい。
【0037】
第一スリット68は、主部72の上辺から下辺側に向けて延びている。この実施形態では、第一スリット68の幅は、開口76の位置から先端まで、幅が徐々に狭くなっている。第一スリット68は、開口76から延びる受け入れ部68aと、受け入れ部68aに連続して延び幅の変化率が受け入れ部68aより小さい保持部68bとを備えている。受け入れ部68aの幅が開口76の位置から下側に向けて徐々に狭くなっており、保持部68bが実質的に等幅で延びていてもよい。
【0038】
第一スリット68と第二スリット70とは重なっている。入力端子62は、第一スリット68と第二スリット70との重なり部分に通されている。入力端子62は、第一スリット68の保持部68bと、第二スリット70の保持部70bとに通されている。これにより、入力端子62は、把持部64に固定されている。換言すれば、第一スリット68及び第二スリット70の幅は、入力端子62がこれらの所定の位置に通されたとき、入力端子62が把持部64に固定されるように、決められている。
【0039】
図5(C)において、一点鎖線Lmは、第一スリット68の中心線を表す。一点鎖線Lrは、第二スリット70の中心線を表す。このコネクタ端子60では、第一スリット68と第二スリット70とは、実質的に同じ方向に延びている。図5(C)に示されるように、この実施形態では、入力端子62が通された状態で、把持部64の正面側から見たとき、中心線Lmと中心線Lrとは、ずれている。
【0040】
この点火コイルの製造方法は、図3で示されたコネクタ端子38を備える点火コイル2と同様に、前述の(1)から(6)の工程を備える。(2)の工程で把持部64が折り返された状態において、図4と同様に、第一スリット68の中心線Lmと第二スリット70の中心線Lrとは、横方向にずれている。(5)の工程で入力端子62が第一スリット68及び第二スリット70に通されたことにより、主部72及び折返し部74が変形する。この変形により、中心線Lmと中心線Lrとのずれの量が小さくなる。すなわち、把持部64を折り返した状態での中心線Lmと中心線Lrのずれ量は、図5(C)での中心線Lmと中心線Lrとのずれ量より大きい。
【0041】
この実施形態では、第一スリット68が形成された主部72と、第二スリット70が形成された折返し部74とは、重なっている。このため、把持部64は変形しにくい。これにより、入力端子62と把持部64との接触不良が効果的に防止される。この点火コイルでは、点火コイル内部の端子間の接触不良が防止されている。
【0042】
把持部64が折り返され、入力端子62が通されていない状態での中心線Lmと中心線Lrとのずれ量は、入力端子62が通された後の中心線Lmと中心線Lrとのずれ量より大きいのが好ましい。入力端子62が通されることにより、中心線Lmと中心線Lrとのずれ量が小さくなる方向に、主部72と折返し部74とに力が加わる。入力端子62には、主部72からの反力、及び折返し部74からの反力が負荷される。これらの反力は、入力端子62と把持部64との接触圧を大きくする。これにより、入力端子62と把持部64との接触不良が効果的に防止される。この点火コイルでは、点火コイル内部の端子間の接触不良が防止されている。
【0043】
以上説明された実施形態では、第一スリットの開口は主部の上辺に設けられ、第二スリットの開口は、折返し部の上辺に設けられていた。第一スリットの開口は、主部の下辺に設けられていてもよく、右辺又は左辺に設けられていてもよい。第二スリットの開口は、折返し部の下辺に設けられていてもよく、右辺又は左辺に設けられていてもよい。第二スリットの開口は、第一スリットの開口と、同じ方向の辺に設けられていればよい。
【0044】
以上説明された実施形態では、コネクタ端子と入力端子について、接触不良を防止する端子の構造が説明された。上記で説明された端子の構造が、点火コイルの他の端子に適用されてもよい。
【0045】
以上説明されたとおり、本実施形態によれば、点火コイル内部の端子間の接触不良が防止された点火コイルが得られる。このことから、本実施形態の優位性は明らかである。
【0046】
[開示項目]
以下の項目は、好ましい実施形態の開示である。
【0047】
[項目1]
棒状端子と、把持部を有する受け端子とを備え、
前記把持部が平板が折り返された形状を呈しており、この折り返しにより前記把持部に、主部と、前記主部と重なり合う折返し部とが形成されており、
前記把持部を前記把持部の正面側から見たとき、
前記主部に、前記主部の第一方向の側の辺に第一開口を有し内側に向けて延びる第一スリットが設けられており、
前記折返し部に、前記折返し部の前記第一方向の側の辺に第二開口を有し前記第一スリットと実質的に同じ方向に延びる第二スリットが設けられており、
前記第一スリットと前記第二スリットとが重なりを有し、この重なり部分に前記棒状端子が通されている、点火コイル。
【0048】
[項目2]
前記把持部を前記把持部の正面側から見たとき、前記第一スリットの中心線と前記第二スリットの中心線とがずれている、項目1に記載の点火コイル。
【0049】
[項目3]
前記第一スリットの開口が前記把持部の折り返しにより形成された主部の辺に設けられており、前記第二スリットの開口が前記把持部の折り返しにより形成された折返し部の辺に設けられている、項目1又は2に記載の点火コイル。
【0050】
[項目4]
前記第一スリットの開口が前記把持部の折り返しにより形成された主部の辺とは異なる辺に設けられており、前記第二スリットの開口が前記把持部の折り返しにより形成された折返し部の辺とは異なる辺に設けられている、項目1又は2に記載の点火コイル。
【0051】
[項目5]
一次コイル、二次コイル及び入力端子を含むコイルアセンブリと、前記入力端子と接続するコネクタ端子及び外部端子を含むコネクタ部とを備え、
前記棒状端子が前記入力端子であり、前記受け端子が前記コネクタ端子である、項目1から4のいずれかに記載の点火コイル。
【0052】
[項目6]
第一スリット及び第二スリットが形成された板状の把持部を備える受け端子を準備する工程、
第一方向側の辺に第一開口を有する前記第一スリットを備えた主部と、前記第一方向側の辺に第二開口を有する前記第二スリットを備えた折返し部とが形成され、前記第一スリットと前記第二スリットとが重なり、前記第一スリットの中心線と前記第二スリットの中心線とがずれるように、前記把持部を折り返す工程
及び
前記第一スリットと前記第二スリットとの重なり部分に、棒状端子を通す工程
を含む、点火コイルの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明された点火コイルは、種々の内燃機関に使用される。
【符号の説明】
【0054】
2・・・点火コイル
4・・・コイルアセンブリ
6・・・コネクタ部
8・・・出力部
10・・・プラグブーツ
12・・・スプリング
14、36・・・ケース
16・・・一次コイル
18・・・二次コイル
20・・・鉄芯
22、62・・・入力端子
28・・・抵抗器
30・・・筒部
32・・・外部端子
34・・・イグナイタ
38、60・・・コネクタ端子
40、64・・・把持部
42、66・・・アーム
44、68・・・第一スリット
46、70・・・第二スリット
48、72・・・主部
50、74・・・折返し部
52、76・・・第一スリットの開口
54、78・・・第二スリットの開口
図1
図2
図3
図4
図5