(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169683
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】塩化第一鉄水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 49/10 20060101AFI20231122BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C01G49/10
C25B1/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080956
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】522195183
【氏名又は名称】株式会社プロトンシステム
(71)【出願人】
【識別番号】522194603
【氏名又は名称】山本 恵理子
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 恵理子
【テーマコード(参考)】
4G048
4K021
【Fターム(参考)】
4G048AA06
4G048AB02
4K021AB07
4K021BA03
4K021DB36
(57)【要約】
【課題】塩化水素又は塩素を発生させること無く塩化第一鉄水溶液を製造する方法を提案する。
【解決手段】炭素を含有する鉄材を塩化ナトリウム水溶液の電気分解により生じた強酸性の電解水に接触させることを特徴とする塩化第一鉄水溶液の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を含有する鉄材を塩化ナトリウム水溶液の電気分解により生じた強酸性の電解水に接触させることを特徴とする塩化第一鉄水溶液の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塩化第一鉄水溶液の製造方法において、
前記強酸性の電解水の水素イオン濃度はpH=1~2であることを特徴とする塩化第一鉄水溶液の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塩化第一鉄水溶液の製造方法において、
前記鉄材に含有された炭素の含有率は1~10質量%であることを特徴とする塩化第一鉄水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化第一鉄水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化第一鉄水溶液の製造方法としては板片状又は粒状の金属鉄と塩酸を反応させる方法が知られている。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の金属鉄と塩酸とを反応させる方法では、塩酸から発生した塩化水素又は塩素により作業の際に健康被害を受けたり、設備が腐食したりする不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる不都合を解消して、塩化水素又は塩素を発生させること無く塩化第一鉄水溶液を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の塩化第一鉄水溶液の製造方法は、炭素を含有する鉄材を塩化ナトリウム水溶液の電気分解により生じた強酸性電解水に接触させることを特徴とする。
【0007】
本発明の塩化第一鉄水溶液の製造方法では、まず、原水に塩化ナトリウム等の塩化物を添加することにより調製された塩化物水溶液を対向配置された1対の電極間にイオン透過性の隔膜を備える電気分解装置で電気分解することにより、強酸性の電解水を得る。
【0008】
次いで、前記強酸性の電解水に炭素を含有する鉄材を接触させることで該強酸性の電解水中の次亜塩素酸と鉄が反応し、塩化第一鉄となることで塩化第一鉄水溶液が生成する。
【0009】
この結果、塩化水素又は塩素を発生させること無く、塩化第一鉄水溶液を製造することができる。
【0010】
また、本発明の塩化第一鉄水溶液の製造方法において、前記強酸性の電解水の水素イオン濃度はpH=1~2であることが好ましい。
【0011】
このような構成とすることにより、効率良く塩化第一鉄水溶液を製造することができる。
【0012】
尚、前記強酸性の電解水の水素イオン濃度がpH=2超である場合、該強酸性の電解水と前記鉄材の反応が起こらず、塩化第一鉄水溶液が生成されないことがある。
【0013】
さらに、前記鉄材に含有される炭素の含有率は1~10質量%であることが好ましい。
【0014】
このような構成とすることにより、さらに効率良く塩化第一鉄水溶液を製造することができる。
【0015】
尚、前記鉄材に含有される炭素の含有率が1質量%未満の場合、該鉄材と前記強酸性の電解水との反応が起こらず、塩化第一鉄水溶液が生成されないことがある。
【0016】
また、前記鉄材に含有された炭素の含有率を10質量%超とすることは技術的に難しい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の塩化第一鉄溶液の製造方法を示すフローチャート。
【
図2】本発明の電気分解に用いる装置構成の一例を示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
本実施形態の塩化第一鉄溶液の製造方法は、炭素を含有する鉄材を塩化ナトリウム水溶液の電気分解により生じた強酸性の電解水に接触させる方法である。
【0020】
本実施形態の塩化第一鉄溶液の製造方法では、
図1に示すように、STEP1で塩化ナトリウム水溶液を電気分解することでSTEP2の強酸性の電解水を得る。次いで、前記強酸性の電解水とSTEP3の炭素を含有する鉄材とを、STEP4で接触させて、該鉄材の少なくとも一部を前記強酸性の電解水に溶解させることで塩化第一鉄水溶液を得ることができる。
【0021】
前記強酸性電解水を得るための電気分解は、
図2に示す電気分解装置1により実施することができる。
【0022】
本実施形態の電気分解装置1は、陽極側電極53、陰極側電極73が対向配置された電解槽30を備え、電解槽30は陽極側電極53、陰極側電極73の間に配置されたイオン透過性の隔膜31により、陽極側電極53を備える陽極電解室51と、陰極側電極73を備える陰極電解室71とに分離されている。陽極電解室51には酸性水取出管55が備えられている。隔膜31としては例えばイオン交換膜を用いることができる。
【0023】
また、電気分解装置1は塩化物水溶液貯留槽10を備え、塩化物水溶液貯留槽10は、途中にポンプ35を備える塩化物水溶液供給管33を介して陽極電解室51と、陰極電解室71とに接続されている。
【0024】
次に電気分解装置1による本実施形態の電気分解方法について説明する。
【0025】
電気分解装置1では、塩化物水溶液貯留槽10に貯留されている塩化物水溶液を塩化物水溶液供給管33から陽極電解室51と、陰極電解室71とに導入し、陽極側電極53と、陰極側電極73とに、電流を印加することにより、電気分解を行う。前記塩化物水溶液は、例えば、純水に塩化ナトリウム等の塩化物を2~5質量%添加することにより調製される。
【0026】
このようにすると、陰極電解室71では塩化ナトリウムが塩化物イオン、ナトリウムイオンとなり、水酸化ナトリウムが生成し、塩化物イオンは隔膜31を透過して陽極電解室51に移動する。陽極電解室51では生成した塩素が塩酸、次亜塩素酸となり、STEP2の強酸性の電解水が生成する。
【0027】
次に本実施形態の反応方法について説明する。本実施形態では、
図1に示すように、STEP2の強酸性の電解水と、STEP3の前記炭素を含有する鉄材とを、電解水:鉄材=1001:1900の割合(質量比)で接触させて、5~40℃の温度で、30秒~9時間反応させる。すると、強酸性の電解水と炭素を含有する鉄材とが接触する面では、次式のような反応が起こり、塩化第一鉄水溶液を得ることができる。
【化1】
前記炭素を含有する鉄材としては炭素鋼や鋳鉄を挙げることができる。前記鉄材は具体的には鉄を90~99質量%、炭素を1~10質量%有する鉄材であり、例えば、鉄を93.8%、炭素を3.75%含む鉄材が好適である。
【符号の説明】
【0028】
10…塩化物水溶液保管槽、30…電解槽、31…隔膜、33…塩化物水溶液供給管、35…ポンプ、51…陽極電解室、53…陽極側電極、55…酸性水取出管、71…陰極電解室、73…陰極側電極