(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169688
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】天板用スクレーパー
(51)【国際特許分類】
B27G 17/02 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
B27G17/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080963
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】391034880
【氏名又は名称】トキハ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松原 洋
(72)【発明者】
【氏名】正垣 巧
(72)【発明者】
【氏名】藤川 雄一朗
(57)【要約】 (修正有)
【課題】天板の上縁において刃を押し込むような状況を回避するとともに、作業者の技術レベルに依らずに、天板の上縁の直線部及び角部の切削量が一定になる構成とすることで、安定したスクレイピング加工を実施することができる天板用スクレーパーを提供する。
【解決手段】天板の上縁をスクレイピングすることで仕上げ状態を整える天板用スクレーパー1において、内側面2bが天板の天面に接触する水平部材2と、水平部材2の一方縁側から垂下され内側面3bが天板の側面に接触する鉛直部材3と、内側面2bと内側面3bが交差する部位に設けられ天板の上縁をスクレイピングする刃4と、側面を転動するように内側面3bに回動自在で且つ刃4の前後に取り付けられるベアリング14a、14bと、前後のベアリング14a、14bの間で鉛直部材3の内側面3bから内方に突出状に形成され側面に接触するガイド部材20を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の天面から側面へ切り替わる部位である上縁に沿って長手方向にスライドさせて前記上縁をスクレイピングすることで、当該上縁の仕上げの状態を整える天板用スクレーパーにおいて、
内側面が前記天板の天面に接触する水平部材と、
前記水平部材の一方縁側から垂下状に配設され且つ、内側面が前記天板の側面に接触する鉛直部材と、
前記水平部材の内側面と前記鉛直部材の内側面とが交差する部位に設けられ且つ、前記天板の上縁をスクレイピングする刃と、
前記天板の側面を転動するように前記鉛直部材の内側面に回動自在で且つ、前記刃の前側と後側に取り付けられるベアリングと、
前後一対の前記ベアリングの間で且つ前記鉛直部材の内側面から内方に張り出すように突出状に形成されるとともに、前記天板の側面に接触するガイド部材と、を有する
ことを特徴とする天板用スクレーパー。
【請求項2】
前記ガイド部材と前記刃は、前記鉛直部材の内側面においてスライドさせる方向に並ぶように配設されていて、
前記ガイド部材と前記ベアリングは、スライドさせる方向に並んで配設され且つ、前記鉛直部材の内側面からの内方向への突出量は同じである
ことを特徴とする請求項1に記載の天板用スクレーパー。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記天板の側面の角部に到達したとき、前後一対のうち一方の前記ベアリングとの二点支持となり、前記刃が所定の間隔で前記角部に接触する
ことを特徴とする請求項2に記載の天板用スクレーパー。
【請求項4】
前記天板の天面に接触する前記水平部材の内側面には、凸状の支持部が複数設けられていて、
前記支持部が前記天板の天面に接触し、当該前記支持部と隣り合う凹部と前記天板の天面との間には隙間が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の天板用スクレーパー。
【請求項5】
前記天板の側面に接触する前記鉛直部材の内側面には、凸状の縁材接触部が複数設けられていて、
前記縁材接触部は、少なくとも前記ガイド部材と前記ベアリングを含むものとされ、当該縁材接触部が前記天板の側面に接触する
ことを特徴とする請求項1に記載の天板用スクレーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板の上縁をスクレイピングする天板用スクレーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、天板など平板材は母材から切り出されて矩形状(長方形や四角形など)に成形される。その平板材の天面(水平面)から側面(垂直面)へと切り替わる上縁には、尖った角であったりバリ等が出ていたりする場合がある。この尖った角やバリ等は引っかかりの原因となるため、上縁を面取り加工して整える。
このとき、スクレーパー(鉋)を用いて上縁に対してスクレイピングを実施して、上縁にR部を設けて仕上げる。上縁の面取り加工は、例えば、最終の製品となる前の仕上げ加工や、施設への取り付けなどの設置作業の前などに実施されている。なお、下縁に対して面取り加工を行う場合も上下逆さにして同様にスクレイピングを行う。
【0003】
平板材の面取りなどを行うためのスクレーパー(鉋)としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1は、カッター刃の切れ味を落とさずに石膏ボードの表裏に貼られている紙を綺麗に切ることができる操作性の良い石膏ボードの面取り用鉋を提供することを目的としている。
【0004】
具体的には、鉋台本体の下面に長手方向に案内溝が形成され、該鉋台本体の上面に鉋身が載置される傾斜面と該傾斜面に鉋身を締め付ける締付金具と該鉋台本体の下面の該案内溝に貫通する貫通孔とが設けられ、該貫通孔を介して前記案内溝に前記鉋身の刃先が突出した状態で前記鉋身を該締付金具で締め付け、該案内溝を石膏ボードの縁部に当接させて面取りを行う面取り用鉋であって、前記鉋身が締め付けられる傾斜面の角度は、前記鉋台本体の下面の水平面に対して10度~15度の範囲であることとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、家具などに用いられる天板の側面には、傷の保護や外観を良くすることを目的として、樹脂製(例えば、ABS樹脂製)の縁材が取り付けられている。これらを最終製品にするために、スクレーパーを用いて、縁材(天板の上縁)に存在する微細なバリなどを削り落とす面取り加工を行っている(例えば、
図8を参照)。
ところが、天板の面取り加工を行う作業者においては、技術のレベルに差が生じている。例えば、熟練の作業者であれば経験により、側面の直線部~角部(コーナー部)において、縁材の上部を一定量削り落とすことができるが、作業者の技術が一定レベルに達していないと、特に側面のコーナー部において、縁材に刃を押し込んでしまうような状況となり、縁材の上部のスクレイピングに不具合が生じることとなる。
【0007】
つまり、上縁の直線部では縁材の切削量は一定であるが、その一方でコーナー部では刃を押し込むような状況でスクレイピングしてしまうため、上縁のコーナー部では縁材の切削量は多くなってしまう。このように、天板の部位によって切削の量が異なると、微細な凹凸が生まれていまい、天板の外観(特に天板の上縁における外観)が良くなくなる。
例えば、特許文献1に開示された鉋を用いた場合、上記の課題(作業者によって天板のコーナー部において刃を押し込むような状況)が発生する可能性が高いため、作業者の技術レベルによっては、安定したスクレイピング加工を実施することができなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、天板の上縁において刃を押し込むような状況を回避するとともに、作業者の技術レベルに依らずに、天板の上縁の直線部及び角部の切削量が一定になる構成とすることで、安定したスクレイピング加工を実施することができる天板用スクレーパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる天板用スクレーパーは、天板の天面から側面へ切り替わる部位である上縁に沿って長手方向にスライドさせて前記上縁をスクレイピングすることで、当該上縁の仕上げの状態を整える天板用スクレーパーにおいて、内側面が前記天板の天面に接触する水平部材と、前記水平部材の一方縁側から垂下状に配設され且つ、内側面が前記天板の側面に接触する鉛直部材と、前記水平部材の内側面と前記鉛直部材の内側面とが交差する部位に設けられ且つ、前記天板の上縁をスクレイピングする刃と、前記天板の側面を転動するように前記鉛直部材の内側面に回動自在で且つ、前記刃の前側と後側に取り付けられるベアリングと、前後一対の前記ベアリングの間で且つ前記鉛直部材の内側面から内方に張り出すように突出状に形成されるとともに、前記天板の側面に接触するガイド部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記ガイド部材と前記刃は、前記鉛直部材の内側面においてスライドさせる方向に並ぶように配設されていて、前記ガイド部材と前記ベアリングは、スライドさせる方向に並んで配設され且つ、前記鉛直部材の内側面からの内方向への突出量は同じであるとよい。
好ましくは、前記ガイド部材は、前記天板の側面の角部に到達したとき、前後一対のうち一方の前記ベアリングとの二点支持となり、前記刃が所定の間隔で前記角部に接触するとよい。
【0011】
好ましくは、前記天板の天面に接触する前記水平部材の内側面には、凸状の支持部が複数設けられていて、前記支持部が前記天板の天面に接触し、当該前記支持部と隣り合う凹部と前記天板の天面との間には隙間が形成されるとよい。
好ましくは、前記天板の側面に接触する前記鉛直部材の内側面には、凸状の縁材接触部が複数設けられていて、前記縁材接触部は、少なくとも前記ガイド部材と前記ベアリングを含むものとされ、当該縁材接触部が前記天板の側面に接触するとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天板の上縁において刃を押し込むような状況を回避するとともに、作業者の技術レベルに依らずに、天板の上縁の直線部及び角部の切削量が一定になる構成とすることで、安定したスクレイピング加工を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の天板用スクレーパーの概略を模式的に示した上方斜視図である。
【
図2】本発明の天板用スクレーパーの概略を模式的に示した下方斜視図である。
【
図3】本発明の天板用スクレーパーの概略を模式的に示した四面図である。
【
図4】本発明の天板用スクレーパーの概略を模式的に示した右側面図である。
【
図5】本発明の天板用スクレーパーの概略を模式的に示した底面図である。
【
図6】天板用スクレーパーの刃の周辺を拡大した前側面図であり、
図3のA部拡大図である。
【
図7】本発明の天板用スクレーパーの概略を模式的に示した分解図である。
【
図8】本発明の天板用スクレーパーの使用態様図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかる天板用スクレーパーの実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
本実施形態では、左手用の天板用スクレーパー1を例に挙げて説明する。本発明の天板用スクレーパー1については、以下に述べる構成を鏡像反転させて右手用に構成することも可能である。
【0015】
また、以降の説明においては、図面において示される方向を、天板用スクレーパー1を説明する際の方向とする。これは天板用スクレーパー1を使用する作業者U(使用者)から見た方向と一致する。なお、これらの方向については適宜図面中に矢印を用いて示している。
まず、スクレイピングの対象となる天板51について、簡単に説明する。
【0016】
天板51は、家具(例えば、テーブル等)などに用いられるものであり、天板51は、天面52(上面、水平面)と側面53(垂直面)からなる。側面53は、直線部53aと、角部53b(コーナー部)からなる。また、天板51は、母材から切り出された本体部54と、本体部54の側面53に取り付けられている縁材55と、を有している。
本体部54は、母材から矩形状に切り出されており、その矩形の角部53b(コーナー部)は鋭角ではなく、少し丸める加工(例えば、面取り半径2mm)が施されている。本体部54は、所定の面積と厚みを有する平板材である。本体部54の多くは、木材とされている。
【0017】
また、本体部54は、天面52側(上面)にデザイン性を備えるため、塗装されたり、シート材を張り付けて化粧されたものがある。また、本体部54は、木の素材を生かすため、ニスなどコート剤で吹き付けられたものもある。
縁材55は、本体部54の側面53とコーナー部53bに沿って、周回するように取り付けられている。縁材55は、その側面53とコーナー部53bを保護するものとなっている。縁材55の多くは、軟質の樹脂(例えば、ABS樹脂等)で形成されている。
【0018】
図1~
図8に、本発明にかかる天板用スクレーパー1の概要を示す。
図1~
図8などに示すように、本発明にかかる天板用スクレーパー1は、縁材55(例えば、ABS樹脂製)を側面53に貼り付けた製品(天板51)のR部56(上縁)を仕上げるための治具であり、製品(天板51)の外側面から天板用スクレーパー1を引き入れてR部56を仕上げるものである。
【0019】
なお、天板51の下縁に対して面取り加工を行う場合は、天板51を上下逆さにして、底面を上面側(天面52を下面側)にして同様のスクレイピングを行う。
すなわち、本発明にかかる天板用スクレーパー1は、天板51の天面52から側面53へ切り替わる部位である上縁56(縁材55の上部(R部))に沿って長手方向(前方から後方)にスライドさせて上縁56をスクレイピングすることで、当該上縁56の仕上げの状態を整えるものである。天板用スクレーパー1は、天板51の天面52に接触する水平部材2と、天板51の側面53に接触する鉛直部材3と、を有している。
【0020】
図1~
図7などに示すように、水平部材2は、左右の幅が手Hの甲の幅と略同じで且つ、長手方向(前後方向)の長さが左右の幅より長く、所定の厚みを有する矩形状の板片とされている。水平部材2の外側面2a(上面)には、使用者Uの手Hが接触する(握られる)ため、掌に沿うような凹凸が形成されている。なお、外側面2aの凹凸については、後ほど詳説する。
【0021】
水平部材2の内側面2b(下面)は、天板51の天面52に接触するため、略水平面となっている。ただし、その内側面2bには、微細な凹凸が複数形成されている。この内側面2bに形成された凹凸は、天板51の天面52に微細な凹凸が存在する場合があるため、天面52の凹凸に対応し、スクレイピング時の水平を保持するものとなっている。なお、内側面2bの凹凸については、後ほど詳説する。
【0022】
鉛直部材3は、水平部材2の一方縁側(本実施形態では、左縁側)から垂下状に配設されている。鉛直部材3は、上下の高さが天板51の側面53の高さ(天板51の厚み)より高く、長手方向(前後方向)の長さが水平部材2の長さと略同じで且つ、所定の厚みを有する矩形状の板片とされている。鉛直部材3の外側面3a(左面)には、使用者Uの手Hが接触する(握られる)ため、掌に沿うような凹凸が形成されている。なお、外側面3aの凹凸については、後ほど詳説する。
【0023】
鉛直部材3の内側面3b(右面)は、天板51の側面53に接触するため、略水平面となっている。ただし、その内側面3bには、凸部が複数形成されている。この内側面3bに形成された凸部は、縁材接触部23であり、天板51の側面53(縁材55)に擦り傷等を付けないため、その側面53に対して点接触となるようにするものである。なお、内側面2bの凸部(縁材接触部23)については、後ほど詳説する。
【0024】
すなわち、本実施形態の天板用スクレーパー1は、前方から見ると略L字形状となるように、水平部材2と鉛直部材3とが硬質の樹脂などで一体成型されている。
図2~
図6などに示すように、本発明の天板用スクレーパー1は、水平部材2の内側面
2bと鉛直部材3の内側面3bとが交差する部位に設けられ且つ、縁材55の上部(天板51の上縁56(R部))をスクレイピングする刃4を有している。
【0025】
刃4は、縁材55の上部にある微小のバリ等を削り取る刃先4aと、その刃先4aを備えた本体部4bからなるものである。刃4は、水平部材2と鉛直部材3が組み合わされるL字形状の内側で且つ、前後方向(長手方向)中途部に配備されている。
図6に示すように、刃先4aは、天板51の上縁56に沿うようにR形状(扇形状)となっており、面取り半径は、例えばR2mmとなっている。刃先4aの右端は、水平部材2の内側面2bと面一となるように配備されている。また、刃先4aの下端は、ベアリング14の突出部位(縁材55と接触する部位)と面一となるように配備されている。これにより、刃先4aは、天板51の上縁56に沿うように配備されている。このR形状の刃先4aにより、縁材55の上部にあるバリ等を削り取る。
【0026】
刃4は、使用するにつれて消耗したり、位置がずれたりするため、内方への突出量や位置を調整することができるようになっている。なお、水平部材2であって、刃4の反対側の位置(天板用スクレーパー1の外側)には、削り屑Kを外部へ排出する開口部5が設けられている。
図2~
図7などに示すように、刃4は、刃固定部6により天板用スクレーパー1に固定されている。刃固定部6は、固定ネジとされている。天板用スクレーパー1の後部に形成された貫通孔7より、ドライバーなどを使用して固定ネジ6を本体部4bの貫通孔4cに差し込んで、刃4を天板用スクレーパー1に固定する。
【0027】
刃4は、第1位置調整部8により左斜め下方から保持されている。第1位置調整部8は、刃4を保持するネジ8aと、ネジ8aの後方に配備されるバネ8bと、バネ8bをカバーするネジ8cと、を有している。第1位置調整部8は、バネ8bの反力で刃4を保持する。
天板用スクレーパー1の左斜め下方から右斜め上方に向かって形成された貫通孔9より、ネジ8aを差し込み、そのあとバネ8bを挿入し、ドライバーなどを使用してネジ8cを差し込んで、刃4を保持する。
【0028】
刃4は、第2位置調整部10により右斜め上方から保持されている。第2位置調整部10は、第1位置調整部8と対向する位置に設けられていて、刃4を調整する調整ネジとされている。調整ネジ10には、つまみが設けられていて、簡単に調整が可能となっている。第2位置調整部10は、調整ネジを締めこんだり緩めたりして刃4を調整・保持する。
天板用スクレーパー1の右斜め上方から左斜め下方に向かって形成された貫通孔11より、調整ネジ10を差し込み、その調整ネジ10を締めこんだり緩めたりして刃4を調整・保持する。また、第1位置調整部8と第2位置調整部10は、刃4を右斜め下方に案内するものとなっている。
【0029】
刃4は、突出量調整部12により左斜め上方から保持されている。突出量調整部12は、刃4の突出量を調整する調整ネジとされている。調整ネジ12には、つまみが設けられていて、簡単に調整が可能となっている。突出量調整部12は、調整ネジを締めこんだり緩めたりして刃4(刃4a)の突出量を調整・保持する。
天板用スクレーパー1の左斜め上方から右斜め下方に向かって形成された貫通孔13より、調整ネジ12を差し込み、その調整ネジ12を締めこんだり緩めたりして刃4の突出量を調整・保持する。
【0030】
なお、刃4(刃4a)の突出量などを調整するに際しては、天板用スクレーパー1を前方又は後方から見て、略L字形状の内側(内側面2bと内側面3bとが切り替わる部位)に設けられている調整窓12aより覗いて、刃4(刃4a)の調整を行う。
本発明の天板用スクレーパー1は、鉛直部材3の内側面3bに回動自在のベアリング14が取り付けられている。ベアリング14は、天板51の側面53を前後方向(スライド方向)に転動するものである。
【0031】
ベアリング14は、前後方向(スライドさせる方向)に並んで配設されている。ベアリング14a,14bは、天板51の側面53の縁材55と平行に(スライドさせる前後方向に沿って)同時に接触するため、鉛直部材3の内側面3bからの内方向への突出量は同
じである。
前側のベアリング14aは、刃4の前側であって、鉛直部材3の内側面3bのやや前側に回動自在に取り付けられている。ベアリング14aは、鉛直部材3の内側面3bのやや前側に設けられ且つ、右側方が開口された孔部15に挿入される。また、鉛直部材3には、軸心が上下方向を向く貫通孔16が設けられている。
【0032】
この貫通孔16は、孔部15と連通している。孔部15にベアリング14aが挿入され、貫通孔16より軸部17が挿入されることにより、ベアリング14aが軸部17を介して回動自在に支持される。
後側のベアリング14bは、刃4の後側であって、鉛直部材3の内側面3bの前後方向中途部に回動自在に取り付けられている。ベアリング14bは、鉛直部材3の内側面3bの前後方向中途部に設けられ且つ、右側方が開口された孔部18に挿入される。また、鉛直部材3には、軸心が上下方向を向く貫通孔19が設けられている。
【0033】
この貫通孔19は、孔部18と連通している。孔部18にベアリング14bが挿入され、貫通孔19より軸部17が挿入されることにより、ベアリング14bが軸部17を介して回動自在に支持される。
図2~
図5などに示すように、本発明の天板用スクレーパー1は、天板51の側面53(直線部53a、コーナー部53b)に接触するガイド部材20を有している。
【0034】
さて、直線部53aの縁材55においては、前側のベアリング14aと、後側のベアリング14bで鉛直部材3を支持し、前側のベアリング14aが抜けて離脱した時に、刃4がコーナー部53bの縁材55に食い込むことを防止するために、ガイド部材20(センターガイド)を設けるようにし、終端のR部56に倣わないようにR部56以上の幅(距離)を持たせることで、R部56付きの最終製品(天板51)でも仕上げができるようになっている。
【0035】
つまり、ガイド部材20(センターガイド)は、鉛直部材3の内側面3b側で且つ、前後一対のベアリング14a,14bの間に設けられていて、天板51の側面53に接するものである。
ガイド部材20は、鉛直部材3の内側面3bから内方に向かって張り出すように突出状に形成されている。ガイド部材20は、内側面3bから内方に向かって張り出すように形成された台形状の部材である。ガイド部材20の内方を向く側には、縁材55と接触するベアリング14の接触面より大きい平面20aが設けられている。平面20aは、縁材55と接触するため、前後方向(スライドさせる方向)に沿って配設されている。
【0036】
また、ガイド部材20は、鉛直部材3の内側面3bにおいて、刃4(刃先4a)と垂下方向(上下方向)に並ぶように配設されている。つまり、鉛直部材3の内側面3bにおいて、上側に刃4(刃先4a)が配備され、その下側にガイド部材20(平面20a)が配備されている。
ガイド部材20は、ベアリング14a,14bとスライドさせる前後方向(長手方向)に並んで配設されている。また、ガイド部材20は、鉛直部材3の内側面3bからの内方向への突出量が、ベアリング14a,14bの突出量と同じである。この突出量と同じであることは、ガイド部材20とベアリング14a,14bが、天板51の側面53(直線部53a)の縁材55と平行に(スライドさせる方向に沿って)同時に接触するためである。
【0037】
天板用スクレーパー1を後方へ引いて、ベアリング14bが縁材55との接触から離脱して、ガイド部材20が天板51の側面53の角部53b(コーナー部)に到達したとき、前後一対のうち一方(前側)のベアリング14aとの二点支持となり、刃4が所定の間隔で、天板51のコーナー部53bの縁材55に接触する。
このように、ガイド部材20は、ベアリング14bが縁材55との接触から離脱しても、ベアリング14aと二点で支持できる。そのため、ガイド部材20はベアリング14aに近い側に設けられるとよい。
【0038】
天板51の上縁56(縁材55の上部)において、天板用スクレーパー1を前側から後側に引いて、縁材55の上部をスクレイピングしているとき、天板51の側面53の直線
部53aから後方のコーナー部53bに移動する際には、後側のベアリング14bが側面53から抜けて離脱して非接触となる。
そのとき、ガイド部材20は、コーナー部53bの縁材55まで接触し続け、前側のベアリング14aとの支持が安定した二点支持となり、刃先4a(刃4)がコーナー部53bの縁材55に食い込むことを防ぎ、縁材55の上部(上縁56)と刃先4aの距離が一定となる。
【0039】
すなわち、刃先4a(刃4)が所定の間隔で、コーナー部53bにおいて縁材55の上部に接触することができ、直線部53aの縁材55とコーナー部53bの縁材55における刃先4a(刃4)の切り込み(スクレイピング)量が一定になる。
さて、
図2、
図3などに示すように、水平部材2の内側面2bには、凸状の支持部21と凹部22がスライドさせる前後方向(長手方向)に交互に複数設けられている。
【0040】
なお、本実施形態では、わかりやすくするため、図面において、支持部21(凸部)と凹部22を示す領域に着色を行っている。支持部21(凸部)については、濃いグレーに着色して領域を示している。また、凹部22については、薄いグレーに着色して領域を示している。
製品表面(天面52)に、より正確に沿うように、天面52に接する支持部21を二点にすることで、天面52の凹凸に対応して、未仕上げ部分が残らないようにする。
【0041】
支持部21aは、水平部材2の内側面2b前端に設けられている。支持部21aは、左右方向(幅方向)に長い帯状で且つ、下方へ張り出した低山状の膨出部とされている。この支持部21aの後側に、上方へ窪んだ凹部22aが設けられている。凹部22aは、支持部21aから刃4までの範囲とされている。
支持部21bは、凹部22aの後側であって、前後方向(長手方向)中途部に設けられている。詳しくは、支持部21bは、左右方向(幅方向)において刃4とガイド部材20に対応する(並ぶ)位置に設けられている。支持部21bは、左右方向(幅方向)に長い帯状で且つ、下方へ張り出した低山状の膨出部とされている。支持部21bの後側に、上方へ窪んだ凹部22bが設けられている。凹部22bは、支持部21bから水平部材2の内側面2b後端までの範囲とされている。
【0042】
支持部21a,21bは、天板51の天面52と平行に(スライドさせる方向に沿って)同時に接触するため、水平部材2の内側面2bからの下方向への突出量は同じである。これら支持部21と凹部22の高低差は、微細な差とされている。この高低差は、凹部22a,22bの深さであり、例えばおよそ1mm以下となっている。なお、支持部21aと支持部21bの左右方向(幅方向)は、略同じである。
【0043】
そのため、支持部21a,21bが天板51の天面52に接触し、当該支持部21a,21bと隣り合う凹部22a,22bと、天板51の天面52との間には、微細な隙間Zが形成される。隙間Zは、例えば、およそ1mm以下(=凹部22a,22bの深さ)となっている。
このように、水平部材2の内側面2bに、支持部21a,21bと凹部22a,22bを設けることで、天面52に微細な凹凸がある天板51の上縁56(縁材55の上部)を前後方向にスライドさせてスクレイピングする場合、その支持部21a,21bと凹部22a,22bが、その天面52の凹凸に対応して接触することにより、水平部材2の前後方向(スライド方向)の動きを水平方向に一定にすることで、スクレイピング時の水平を保持することが可能となり、天板51の上縁56(縁材55の上部)の仕上げの状態を整えることができるようになる。
【0044】
図2~
図5などに示すように、鉛直部材3の内側面3bには、凸状の縁材接触部23が複数設けられている。
縁材接触部23は、鉛直部材3の内側面3bの前端と後端に設けられている。縁材接触部23は、左右方向(幅方向)に長く且つ、内方へ張り出した膨出部とされている。縁材接触部23は、スクレイピング時に天板51の側面53に接触するものである。
【0045】
また、縁材接触部23は、少なくともガイド部材20と、前後のベアリング14a,14bを含むものとされている。
本実施形態においては、縁材接触部23は、鉛直部材3の前端と後端の膨出部と、ガイド部材20と、前後のベアリング14a,14bとされ、縁材55の接触部分が平坦である場合に、内側面3bが縁材55に面で摺動すると、その縁材55の傷やテカリの原因となるため、可能な限り少ない接地面にしておいて、スライドさせる方向に真っ直ぐに仕上げができるようにする部位である。
【0046】
スクレイピング時に、縁材接触部23(ガイド部材20と、前後のベアリング14a,14bを含む)が天板51の側面53(縁材55)に接触することで、天板51の側面53(縁材55)に対して、鉛直部材3が内側面3bの全面が非接触、一部のみが接触した状態になる。つまり、縁材接触部23(ガイド部材20と、前後のベアリング14a,14bを含む)により、鉛直部材3の内側面3bが天板51の側面53(縁材55)に対して点接触となる。
【0047】
このように、鉛直部材3の内側面3bに、縁材接触部23(ガイド部材20と、前後のベアリング14a,14bを含む)を設けることで、天板51の側面53(縁材55)に対して接触した状態を可能が限り減ることとなり、天板51の側面53(縁材55)に擦り傷等が付かなくなる。
さて、
図1~
図7などに示すように、天板用スクレーパー1の外側面(水平部材2の外側面2aと、鉛直部材3の外側面3a)には、作業者Uが握りやすいように、掌と指に沿った凹部が形成されている。
【0048】
具体的には、第1凹部24は、親指を置くことができる部位であり、天板用スクレーパー1の前部右側に設けられている。つまり、第1凹部24は、水平部材2の外側面2a(上面)の右側で且つ、第2位置調整部10の近傍に設けられている。
第2凹部25は、人差し指を置くことができる部位であり、天板用スクレーパー1の前部左上側に設けられている。つまり、第2凹部25は、水平部材2と鉛直部材3が切り替わる前部上側で且つ、突出量調整部12より前方に設けられている。
【0049】
第3凹部26は、中指を置くことができる部位であり、天板用スクレーパー1の前部左下側に設けられている。つまり、第3凹部26は、鉛直部材3の前部下側で且つ、第1位置調整部8より前方に設けられている。
第4凹部27は、薬指を置くことができる部位であり、天板用スクレーパー1の右側で且つ前後方向(長手方向)中途部に設けられている。つまり、第4凹部27は、鉛直部材3の右側で且つ、第1位置調整部8より後方に設けられている。
【0050】
第5凹部28は、小指を置くことができる部位であり、天板用スクレーパー1の後部左側に設けられている。つまり、第5凹部28は、鉛直部材3の右側で且つ、第4凹部27より後方に設けられている。
右傾斜部29は、右側の掌を置くことができる部位であり、天板用スクレーパー1の後部右側に設けられている。つまり、右傾斜部29は、水平部材2の外側面2a(上面)の後部右側で且つ、第2位置調整部10より後方に設けられている。
【0051】
左傾斜部30は、左側の掌を置くことができる部位であり、天板用スクレーパー1の後部左側に設けられている。つまり、左傾斜部30は、水平部材2と鉛直部材3が切り替わる後部上側で且つ、開口部10(突出量調整部12)より後方に設けられている。
このように、第1凹部24~第5凹部28、左右の傾斜部29,30を、天板用スクレーパー1の外側面(外側面2aと外側面3a)に設けることにより指と掌が沿うこととなり、作業者Uの手Hが握りやすくフィットするようになり、スクレイピング作業が行いやすくなる。
[作動態様]
次いで、本発明の天板用スクレーパー1の作動態様について、図を参照しながら説明する。
【0052】
図8に、本発明の天板用スクレーパー1の使用態様図を示す。
図8に示すように、作業者Uは、本発明の天板用スクレーパー1を持ち、天板51の上縁56(縁材55の上部)に天板用スクレーパー1を当てる。その天板用スクレーパー1を後方へスライドさせて、縁材55の上部をスクレイピングする。
なお、天板51の底面(下面)側の下縁(縁材55の下部)をスクレイピングするときは、底面が上になるように、上下を反対にして行うとよい。
【0053】
縁材55(側面53)上を前後のベアリング14a,14bが転動し且つ、ガイド部材20が摺動する。これら、前後のベアリング14a,14bとガイド部材20を含む縁材接触部23が揃って直線部53aの縁材55に接することで、一定の距離で鉛直部材3が支持されることなり、刃4は直線部53aの縁材55からの距離を一定に保持しつつ、直線部53aにおける縁材55の上部(上縁56)をスクレイピングする。
【0054】
天板用スクレーパー1を後方へ引き続けて、天板51の終端、つまりコーナー部53bに来ると、後側のベアリング14bは、縁材55(側面53)から抜けて離脱した状態(非接触)となっている。
このとき、前側のベアリング14aは直線部53aの縁材55に接し且つ、ガイド部材20(センターガイド)はコーナー部53bの縁材55に接しており、安定した二点支持となっている。
【0055】
この二点支持により、刃先4a(刃4)がコーナー部53bに食い込むことを防ぎ、縁材55の上部(上縁56)と刃先4aの距離が一定となる。
すなわち、ガイド部材20と前側のベアリング14aの支持より、コーナー部53bにおける縁材55の上部(上縁56)と刃先4aの距離が、直線部53aの縁材55での距離と同じ一定の距離となっている。そのため、刃先4a(刃4)がコーナー部53bの縁材55に食い込んでしまうことを防ぎ、刃先4a(刃4)の切り込み(スクレイピング)量を一定することができる。
【0056】
このように、前後のベアリング14a,14bの間に設けられたガイド部材20により、コーナー部53bの縁材55に対する刃先4a(刃4)の食い込みを防止し、天板51の側面53(縁材55)の直線部53aとコーナー部53bにおける、刃先4a(刃4)の削り取る量が一定になる。
すなわち、側面53の直線部53aからコーナー部53bにかけての上縁56(縁材55の上部)の仕上げの状態を、様々な技術レベルの作業者Uにおいても安定して整えることができるようになる。
【0057】
以上、本発明の天板用スクレーパー1によれば、鉛直部材3の内側面3bに配設された前後のベアリング14a,14bの間に、天板51の側面53に接するガイド部材20(センターガイド)を設けることで、天板51の上縁56(R部)において刃4(刃先4a)を押し込むような状況を回避するとともに、作業者Uの技術レベルに依らずに、天板51の上縁56(縁材55の上部)の直線部53a及び角部53b(コーナー部)の切削量が一定になる構成とすることで、安定したスクレイピング加工を実施することができる。
【0058】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、作動条件や操作条件、構成物の寸法、重量などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【符号の説明】
【0059】
1 天板用スクレーパー
2 水平部材
2a 外側面
2b 内側面
3 鉛直部材
3a 外側面
3b 内側面
4 刃
4a 刃先
4b 本体部
4c 貫通孔
5 開口部
6 刃固定部
7 貫通孔
8 第1位置調整部
8a ネジ
8b バネ
8c ネジ
9 貫通孔
10 第2位置調整部
11 貫通孔
12 突出量調整部
12a 調整窓
13 貫通孔
14 ベアリング
14a ベアリング(前側)
14b ベアリング(後側)
15 孔部
16 貫通孔
17 軸部
18 孔部
19 貫通孔
20 ガイド部材
20a 平面
21 支持部(凸部)
22 凹部
23 縁材接触部
24 第1凹部
25 第2凹部
26 第3凹部
27 第4凹部
28 第5凹部
29 右傾斜部
30 左傾斜部
51 天板
52 天面
53 側面
53a 直線部
53b 角部(コーナー部)
54 本体部
55 縁材
56 上縁(R部)
U 作業者(使用者)
H 手
K 削り屑