IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Beeの特許一覧

特開2023-169708分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法
<>
  • 特開-分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法 図1
  • 特開-分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法 図2
  • 特開-分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法 図3
  • 特開-分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法 図4
  • 特開-分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法 図5
  • 特開-分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169708
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20231122BHJP
   G06T 11/60 20060101ALI20231122BHJP
   G06T 7/55 20170101ALI20231122BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G06T11/60 300
G06T7/55
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080994
(22)【出願日】2022-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月30日にBulletin JASA 2022 Apr.Vol.081(一般社団法人 組込みシステム技術協会)にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】510068840
【氏名又は名称】株式会社Bee
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】塩路 直大
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁昭
(72)【発明者】
【氏名】米田 幸生
【テーマコード(参考)】
2C032
5B050
5L096
【Fターム(参考)】
2C032HA02
2C032HB05
2C032HB25
2C032HC08
2C032HC11
2C032HC17
2C032HD13
2C032HD26
5B050AA07
5B050BA06
5B050BA11
5B050BA17
5B050CA08
5B050DA07
5B050EA05
5B050EA12
5B050EA19
5B050GA08
5L096AA09
5L096FA09
5L096FA69
5L096FA76
5L096HA02
(57)【要約】
【課題】GPSおよびインターネットを利用できない場所の地図を作成できる分散型地図作成システムを提供する。
【解決手段】分散型地図作成システム1は、ローカルネットワークを形成する複数のデバイス100を備え、動的に、1つのデバイス100が親デバイス10となり他のデバイス100が複数の子デバイス20となり、複数の子デバイス20は、それぞれ、自身が有するカメラ21の撮影画像からエリア地図を作成するエリア地図作成部22と、作成したエリア地図を親デバイス10へ送信するエリア地図送信部23と、を備え、親デバイス10は、2以上の子デバイス20から受信した2以上のエリア地図のそれぞれの特徴点に基づいて、2以上のエリア地図を結合することで、結合地図を作成する結合地図作成部12と、作成した結合地図を子デバイス20へ配信する結合地図配信部13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスを備える分散型地図作成システムであって、
前記複数のデバイスは、それぞれ、カメラを有し、
前記複数のデバイスは、ローカルネットワークを形成し、
所定のアルゴリズムに基づいて、動的に、前記複数のデバイスのうちの1つのデバイスが親デバイスとなり、前記複数のデバイスのうちの他のデバイスが複数の子デバイスとなり、
前記複数の子デバイスは、それぞれ、
自身が有するカメラの撮影画像からエリア地図を作成するエリア地図作成部と、
作成した前記エリア地図を前記親デバイスへ送信するエリア地図送信部と、を備え、
前記親デバイスは、
前記子デバイスから前記エリア地図を受信するエリア地図受信部と、
2以上の前記子デバイスから受信した2以上の前記エリア地図のそれぞれの特徴点に基づいて、2以上の前記エリア地図を結合することで、結合地図を作成する結合地図作成部と、
作成した前記結合地図を前記複数の子デバイスのうちのいずれかの子デバイスへ配信する結合地図配信部と、を備える、
分散型地図作成システム。
【請求項2】
前記結合地図作成部は、1以上の前記子デバイスから受信した1以上の前記エリア地図と過去に作成した前記結合地図とを結合することで、新たな前記結合地図を作成する、
請求項1に記載の分散型地図作成システム。
【請求項3】
前記結合地図では、複数の前記エリア地図のそれぞれの特徴点が一致する部分が結合されている、
請求項1または2に記載の分散型地図作成システム。
【請求項4】
前記親デバイスは、さらに、前記結合地図における未知のエリアを含むエリア地図を作成するように、前記複数の子デバイスのうちのいずれかの子デバイスに移動指示をする移動指示部を備える、
請求項1または2に記載の分散型地図作成システム。
【請求項5】
前記移動指示部は、前記複数の子デバイスのうちの前記未知のエリアに最も近い子デバイスに移動指示をする、
請求項4に記載の分散型地図作成システム。
【請求項6】
前記複数の子デバイスは、それぞれ、さらに、受信した前記結合地図における未知のエリアを含むエリア地図を作成するように、前記子デバイスを移動させるための移動制御部を備える、
請求項1または2に記載の分散型地図作成システム。
【請求項7】
複数のデバイスを備える分散型地図作成システムにより実行される分散型地図作成方法であって、
前記複数のデバイスは、それぞれ、カメラを有し、
前記複数のデバイスは、ローカルネットワークを形成し、
所定のアルゴリズムに基づいて、動的に、前記複数のデバイスのうちの1つのデバイスが親デバイスとなり、前記複数のデバイスのうちの他のデバイスが複数の子デバイスとなり、
前記複数の子デバイスは、それぞれ、
自身が有するカメラの撮影画像からエリア地図を作成し、
作成した前記エリア地図を前記親デバイスへ送信し、
前記親デバイスは、
前記子デバイスから前記エリア地図を受信し、
2以上の前記子デバイスから受信した2以上の前記エリア地図のそれぞれの特徴点に基づいて、2以上の前記エリア地図を結合することで、結合地図を作成し、
作成した前記結合地図を前記複数の子デバイスのうちのいずれかの子デバイスへ配信する、
分散型地図作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型地図作成システムおよび分散型地図作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、データセンタが車両群から、車載カメラの撮影画像とGPS(Global Positioning System)などによる各車両の絶対位置情報とを移動体通信網または路車間通信などを用いて収集し、各車両の撮影画像を連結することで、地図を作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-109592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地下などのGPSを利用できない場所、森林地帯もしくは山岳地帯などのネットワークインフラが整っていない場所、または、セキュリティのために外部とのネットワークを遮断したい場所などについては、上記特許文献1に開示された技術を活用しても地図を作成することは難しいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、GPSおよびインターネットを利用できない場所の地図を作成できる分散型地図作成システムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る分散型地図作成システムは、複数のデバイスを備える分散型地図作成システムであって、前記複数のデバイスは、それぞれ、カメラを有し、前記複数のデバイスは、ローカルネットワークを形成し、所定のアルゴリズムに基づいて、動的に、前記複数のデバイスのうちの1つのデバイスが親デバイスとなり、前記複数のデバイスのうちの他のデバイスが複数の子デバイスとなり、前記複数の子デバイスは、それぞれ、自身が有するカメラの撮影画像からエリア地図を作成するエリア地図作成部と、作成した前記エリア地図を前記親デバイスへ送信するエリア地図送信部と、を備え、前記親デバイスは、前記子デバイスから前記エリア地図を受信するエリア地図受信部と、2以上の前記子デバイスから受信した2以上の前記エリア地図のそれぞれの特徴点に基づいて、2以上の前記エリア地図を結合することで、結合地図を作成する結合地図作成部と、作成した前記結合地図を前記複数の子デバイスのうちのいずれかの子デバイスへ配信する結合地図配信部と、を備える。
【0007】
これによれば、複数のデバイスはローカルネットワークを形成するため、インターネットに接続できない場所であっても、ローカルネットワークを介して互いに通信することができる。また、親デバイスが2以上の子デバイスから受信した2以上のエリア地図に特徴点が似ている部分があれば、2以上のエリア地図を結合することができる。つまり、2以上のエリア地図に対する絶対位置情報がなくても、特徴点から2以上のエリア地図の相対的な位置関係がわかるため、絶対位置情報を使用せずに結合地図を作成できる。したがって、GPSおよびインターネットを利用できない場所の地図を作成できる。
【0008】
また、エリア地図は、子デバイスが有するカメラの撮影画像から動的に作成されるため、災害などによる地形変化があった場合でも、地形変化後のエリア地図を結合することができ、地形変化にリアルタイムに対応可能な地図を作成できる。
【0009】
また、上記特許文献1のように、データセンタが各デバイスからデータを収集して地図を作成する場合に、データセンタに通信異常などが発生したときには、地図を作成できなくなる。一方で、本発明では、親デバイスおよび複数の子デバイスが動的に決まるため、複数のデバイスのそれぞれが親デバイスとなることができる。したがって、ある親デバイスに通信異常などが発生した場合でも、子デバイスとなっている他のデバイスが親デバイスとなり、引き続き地図を作成できる。
【0010】
例えば、前記結合地図作成部は、1以上の前記子デバイスから受信した1以上の前記エリア地図と過去に作成した前記結合地図とを結合することで、新たな前記結合地図を作成してもよい。
【0011】
これによれば、一度結合地図が作成された後も、新たに受信したエリア地図が結合されるため、結合地図を拡大していくことができる。
【0012】
例えば、前記結合地図では、複数の前記エリア地図のそれぞれの特徴点が一致する部分が結合されていてもよい。
【0013】
これによれば、親デバイスは、受信した複数のエリア地図のそれぞれの特徴点が一致する部分を結合することで、結合地図を作成できる。
【0014】
例えば、前記親デバイスは、さらに、前記結合地図における未知のエリアを含むエリア地図を作成するように、前記複数の子デバイスのうちのいずれかの子デバイスに移動指示をする移動指示部を備えていてもよい。
【0015】
これによれば、未知のエリアの地図を作成できる。
【0016】
例えば、前記移動指示部は、前記複数の子デバイスのうちの前記未知のエリアに最も近い子デバイスに移動指示をしてもよい。
【0017】
これによれば、未知のエリアに最も近い子デバイスによって、効率的に未知のエリアの地図を作成できる。
【0018】
例えば、前記複数の子デバイスは、それぞれ、さらに、受信した前記結合地図における未知のエリアを含むエリア地図を作成するように、前記子デバイスを移動させるための移動制御部を備えていてもよい。
【0019】
これによれば、子デバイスが自律的に移動することで、未知のエリアの地図を作成できる。
【0020】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る分散型地図作成方法は、複数のデバイスを備える分散型地図作成システムにより実行される分散型地図作成方法であって、前記複数のデバイスは、それぞれ、カメラを有し、前記複数のデバイスは、ローカルネットワークを形成し、所定のアルゴリズムに基づいて、動的に、前記複数のデバイスのうちの1つのデバイスが親デバイスとなり、前記複数のデバイスのうちの他のデバイスが複数の子デバイスとなり、前記複数の子デバイスは、それぞれ、自身が有するカメラの撮影画像からエリア地図を作成し、作成した前記エリア地図を前記親デバイスへ送信し、前記親デバイスは、前記子デバイスから前記エリア地図を受信し、2以上の前記子デバイスから受信した2以上の前記エリア地図のそれぞれの特徴点に基づいて、2以上の前記エリア地図を結合することで、結合地図を作成し、作成した前記結合地図を前記複数の子デバイスのうちのいずれかの子デバイスへ配信する。
【0021】
これによれば、GPSおよびインターネットを利用できない場所の地図を作成できる分散型地図作成方法を提供できる。
【0022】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、GPSおよびインターネットを利用できない場所の地図を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態における分散型地図作成システムの一例を示す構成図である。
図2】エッジクラウドの形成を説明するための図である。
図3】エッジクラウドの形成を説明するための図である。
図4】エッジクラウドの形成を説明するための図である。
図5】実施の形態における分散型地図作成システムの初期動作の一例を示すシーケンス図である。
図6】実施の形態における分散型地図作成システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態)
以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0026】
以下、実施の形態について、図1から図6を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、実施の形態における分散型地図作成システム1の一例を示す構成図である。
【0028】
分散型地図作成システム1は、複数のデバイス100を備えるシステムである。複数のデバイス100は、それぞれ、カメラを有するデバイスであり、例えば、IoT(Internet of Things)端末などのエッジデバイスである。例えば、複数のデバイス100は、スマートフォン、タブレット端末、車両またはドローンなどであるが、カメラを有するデバイスであれば特に限定されない。
【0029】
なお、複数のデバイス100は、ローカルネットワークを形成する。ローカルネットワークは、例えば、エッジクラウドである。ローカルネットワークでは、固定サーバを介さずに複数のデバイス100間で直接通信を行うことができる。このため、複数のデバイス100は、インターネットを利用できない場所であっても、ローカルネットワークによって互いに通信が可能となっている。
【0030】
所定のアルゴリズムに基づいて、動的に、複数のデバイス100のうちの1つのデバイス100が親デバイス10となり、複数のデバイス100のうちの他のデバイス100が複数の子デバイス20となる。所定のアルゴリズムは、特に限定されないが、例えば、ブロックチェーン技術を利用したアルゴリズムであってもよく、始めに台帳に記載されたデバイス100が親デバイス10となることができる。なお、所定のアルゴリズムは、あるデバイス100が起動した際に、ローカルネットワークへの参加要求をブロードキャストにより送信し、返信がなかった場合には親デバイス10となり、すでに親デバイス10となっている他のデバイス100から返信があった場合には子デバイス20となるアルゴリズムであってもよい。
【0031】
親デバイス10は、複数のデバイス100の中で中心となって動作するデバイスであり、複数の子デバイス20のそれぞれは、親デバイス10へ子デバイス20が生成したエリア地図(詳細は後述する)を提供する。
【0032】
複数の子デバイス20は、それぞれ、カメラ21、エリア地図作成部22、エリア地図送信部23、記憶部24および移動制御部25を備える。
【0033】
カメラ21は、例えば、単眼カメラである。なお、カメラ21は、複眼カメラまたは深度カメラなどであってもよい。
【0034】
エリア地図作成部22は、子デバイス20自身が有するカメラ21の撮影画像からエリア地図を作成する。例えば、エリア地図作成部22は、撮影画像に対して解像度の変更および歪み補正を行うとともに、自己位置推定および環境地図作成を実行するSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いてエリア地図を作成する。エリア地図は、子デバイス20が現在いる位置の周辺の撮影画像から作成された地図であり、エリア地図には、当該エリア地図を作成した子デバイス20の相対位置情報が含まれる。エリア地図作成部22が作成したエリア地図は、記憶部24に記憶される。エリア地図は、EMAPとも呼ばれる。子デバイス20が移動することで、新たな場所の撮影画像からエリア地図が作成され、記憶部24に記憶されたエリア地図が更新されていく。
【0035】
エリア地図送信部23は、エリア地図作成部22が作成したエリア地図を親デバイス10へ送信する。エリア地図を送信するタイミングは、特に限定されず、任意のタイミングでよい。
【0036】
移動制御部25は、受信した結合地図における未知のエリアを含むエリア地図を作成するように、子デバイス20を移動させるための処理を行う。移動制御部25については後述する。
【0037】
親デバイス10は、エリア地図受信部11、結合地図作成部12、結合地図配信部13および移動指示部14を備える。
【0038】
エリア地図受信部11は、子デバイス20からエリア地図を受信する。エリア地図受信部11が受信したエリア地図は、記憶部(図示せず)に記憶される。
【0039】
結合地図作成部12は、2以上の子デバイス20から受信した2以上のエリア地図のそれぞれの特徴点に基づいて、2以上のエリア地図を結合することで、結合地図を作成する。例えば、結合地図では、複数のエリア地図のそれぞれの特徴点が一致する部分が結合されている。ある子デバイス20がある場所を含む撮影画像からエリア地図を作成し、別の子デバイス20が同じ場所を含む撮影画像からエリア地図を作成した場合、これらのエリア地図には、特徴点が一致する部分が含まれる。したがって、結合地図作成部12は、これらのエリア地図を回転などすることで結合することができ、エリア地図が結合された大きな結合地図を作成することができる。結合地図作成部12は、複数のエリア地図のぞれぞれの特徴点から複数のエリア地図を結合することができるため、エリア地図の結合に複数の子デバイス20の絶対位置情報を必要としない。なお、結合地図は、複数のエリア地図からなる大きなエリア地図(EMAP)であるといえる。
【0040】
また、例えば、結合地図作成部12は、1以上の子デバイス20から受信した1以上のエリア地図と過去に作成した結合地図とを結合することで、新たな結合地図を作成してもよい。この場合も、エリア地図および結合地図のそれぞれの特徴点に基づいて、エリア地図および結合地図が結合される。これにより、一度結合地図が作成された後も、新たに受信したエリア地図が結合されるため、結合地図を拡大していくことができる。
【0041】
例えば、結合地図には、当該結合地図の作成に用いられたエリア地図を作成した子デバイス20を識別するための識別情報などが含まれる。例えば、子デバイス20は、作成したエリア地図に自身の識別情報を含めて、当該エリア地図を親デバイス10へ送信することで、親デバイス10は、子デバイス20の識別情報を含む結合地図を作成できる。
【0042】
結合地図作成部12が結合地図を作成するタイミングは、特に限定されず、任意のタイミングでよい。例えば、結合地図は、一定時間ごとに作成されてもよいし、一定数以上のエリア地図を受信するごとに作成されてもよい。結合地図作成部12が作成した結合地図は、記憶部(図示せず)に記憶される。
【0043】
なお、それぞれ独立した複数の結合地図が作成されてもよい。例えば、3つの子デバイス20が作成した3つのエリア地図にそれぞれ特徴点が一致する部分が含まれている場合に、当該3つのエリア地図が結合されて1つの結合地図が作成されてもよい。また、上記3つの子デバイス20とは別の2つの子デバイス20が作成した2つのエリア地図に特徴点が一致する部分が含まれており、かつ、上記3つのエリア地図と特徴点が一致する部分が含まれていない場合に、当該2つのエリア地図が結合されて1つの結合地図が作成されてもよい。なお、複数の結合地図が作成され得る場合に、最も大きい結合地図のみが作成されてもよい。例えば、上記2つのエリア地図が結合された結合地図、および、上記3つのエリア地図が結合された結合地図が作成され得る場合に、上記2つのエリア地図が結合された結合地図が作成されず、上記3つのエリア地図が結合された結合地図が作成されてもよい。
【0044】
結合地図配信部13は、結合地図作成部12が作成した結合地図を複数の子デバイス20のうちのいずれかの子デバイス20へ配信する。例えば、結合地図配信部13は、親デバイス10と同じローカルネットワークに属する全ての子デバイス20に結合地図を配信してもよいし、結合地図に含まれる識別情報が示す子デバイス20にのみ結合地図を配信してもよい。また、複数の結合地図が作成された場合には、結合地図の作成に用いられたエリア地図を作成した子デバイス20に、対応する結合地図が配信されてもよい。
【0045】
子デバイス20は、配信された結合地図を記憶部24に記憶する。なお、子デバイス20は、過去に作成された結合地図を記憶している場合には、新たに配信された結合地図で過去に作成された結合地図を更新する。ただし、子デバイス20は、配信された結合地図に自身の識別情報が含まれていない場合には、配信された結合地図を破棄し、記憶された結合地図を更新しない。
【0046】
また、結合地図配信部13は、親デバイス10がインターネットを利用できる場所にある場合には、クラウドサーバなどへ結合地図を配信してもよい。
【0047】
移動指示部14は、結合地図における未知のエリアを含むエリア地図を作成するように、複数の子デバイス20のうちのいずれかの子デバイス20に移動指示をする。各エリア地図は、各子デバイス20の相対位置情報が含まれているため、移動指示部14は、各エリア地図が結合された結合地図における各子デバイス20の相対位置がわかり、結合地図における未知のエリアと子デバイス20との位置関係がわかる。したがって、子デバイス20を未知のエリアに向かわせることで、未知のエリアを含むエリア地図を作成でき、結合地図を拡大することができる。また、例えば、移動指示部14は、複数の子デバイス20のうちの未知のエリアに最も近い子デバイス20に移動指示をする。これにより、未知のエリアに最も近い子デバイスによって、効率的に未知のエリアの地図を作成できる。
【0048】
例えば、子デバイス20の移動制御部25は、親デバイス10の移動指示部14からの指示に基づいて、結合地図における未知のエリアへ子デバイス20を移動させるための処理を行う。例えば、子デバイス20がドローンまたは自動運転車などである場合には、移動制御部25は、子デバイス20を未知のエリアへ移動させる制御を行ってもよい。例えば、子デバイス20が手動運転車両、スマートフォンまたはタブレット端末などである場合には、移動制御部25は、子デバイス20を操作するユーザに対して子デバイス20を未知のエリアへ移動させることを促す提示を行ってもよい。
【0049】
なお、移動制御部25は、親デバイス10からの指示がない場合であっても、親デバイス10から配信された結合地図の未知のエリアへ自律的に子デバイス20を移動してもよい。子デバイス20が自律的に移動することによっても、未知のエリアの地図を作成できる。
【0050】
また、親デバイス10は、子デバイス20と同じように自身が有するカメラの撮影画像からエリア地図を作成してもよく、当該エリア地図も用いて結合地図を作成してもよい。
【0051】
図1では、親デバイス10については親デバイス10に必要となる構成要素のみが示され、子デバイス20については子デバイス20に必要となる構成要素のみが示されているが、デバイス100は、親デバイス10にも子デバイス20にもなり得るため、親デバイス10は子デバイス20が備える構成要素も備えており、子デバイス20は親デバイス10が備える構成要素も備えている。
【0052】
デバイス100は、例えば、プロセッサ(マイクロプロセッサ)、メモリおよび通信インタフェースなどからなるコンピュータである。メモリは、ROM、RAMなどであり、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶することができる。通信インタフェースは、通信回路およびアンテナなどからなるインタフェースである。例えばプロセッサがプログラムに従って動作することにより、エリア地図受信部11、結合地図作成部12、結合地図配信部13、移動指示部14、エリア地図作成部22、エリア地図送信部23および移動制御部25が実現される。エリア地図受信部11、結合地図配信部13およびエリア地図送信部23は、通信インタフェースを介して情報の送受信を行う。
【0053】
ここで、ローカルネットワークの形成について、図2から図4を用いて説明する。なお、ここでは、ローカルネットワークとしてエッジクラウドを例にあげて説明する。
【0054】
図2から図4は、エッジクラウドの形成を説明するための図である。
【0055】
図2の(a)に示されるように、本発明の分散型地図作成システム1を構成することができるデバイス100が複数台存在している場合に、図2の(b)に示されるように、所定のアルゴリズムに基づいて親子関係が決まり、エッジクラウドが形成される。以降、図2の(c)に示されるように、このエッジクラウドに他のデバイス100が子デバイス20として参加していく。なお、図2の(d)に示されるように、親デバイス10がネットワークから離脱した場合には、所定のアルゴリズムに基づいて、このエッジクラウドを形成する複数の子デバイス20のうちのいずれかの子デバイス20が親デバイス10に切り替わってもよい。
【0056】
また、図3の(a)に示されるように、エッジクラウドに参加していた子デバイス20が離脱し、図3の(b)に示されるように、移動後の場所付近に分散型地図作成システム1を構成することができるデバイス100が複数台存在している場合には、図3の(c)に示されるように、図3の(a)のエッジクラウドとは別のエッジクラウドが形成されてもよい。
【0057】
また、図4の(a)に示されるように、異なるエッジクラウドの親デバイス10同士が接近するなどして互いに通信を行うことができるようになった場合には、図4の(b)に示されるように、これらのエッジクラウドが融合して1つのエッジクラウドが形成されてもよい。
【0058】
次に、分散型地図作成システム1の動作について、図5および図6を用いて説明する。
【0059】
図5は、実施の形態における分散型地図作成システム1の初期動作の一例を示すシーケンス図である。
【0060】
まず、分散型地図作成システム1は、所定のアルゴリズム(親決めアルゴリズム)により複数のデバイス100の親子関係を構築する(ステップS11)。ここでは、説明を簡単にするために、1つの親デバイス10と2つの子デバイス20(子デバイス20aおよび20bと呼ぶ)に着目して説明する。
【0061】
親デバイス10は、エリア地図結合機能を起動し(ステップS12)、結合地図を作成するために、エリア地図を作成する子デバイス20からのエリア地図NWへの参加要求を待つ。エリア地図NWは、エリア地図を結合して結合地図を作成するためのネットワークであり、具体的にはエッジクラウドである。
【0062】
子デバイス20aは、エリア地図NWへの参加要求を送信する(ステップS13)。例えば、子デバイス20aは、エリア地図NWへの参加要求をブロードキャストにより送信することで、親デバイス10は、当該参加要求を受信することができる。
【0063】
親デバイス10は、子デバイス20aをエリア地図NWへ追加し(ステップS14)、エリア地図NWへの参加承認を子デバイス20aへ送信する(ステップS15)。これにより、子デバイス20aは、エリア地図NWにおいて情報の送受信が可能となる。
【0064】
子デバイス20bについても子デバイス20aと同様に、子デバイス20bはエリア地図NWへの参加要求を送信し(ステップS16)、親デバイス10は子デバイス20bをエリア地図NWへ追加し(ステップS17)、エリア地図NWへの参加承認を子デバイス20bへ送信する(ステップS18)。これにより、子デバイス20bは、エリア地図NWにおいて情報の送受信が可能となる。
【0065】
図6は、実施の形態における分散型地図作成システム1の動作の一例を示すシーケンス図である。図6は、分散型地図作成システム1の初期動作後の動作を示す。
【0066】
まず、子デバイス20aは、自身のカメラ21の撮影画像からエリア地図を作成する(ステップS21)。
【0067】
次に、子デバイス20aは、作成したエリア地図を親デバイス10へ送信し、親デバイス10は、エリア地図を受信する(ステップS22)。
【0068】
次に、親デバイス10は、子デバイス20aから受信したエリア地図を、子デバイス20a以外の子デバイス20からすでに受信しているエリア地図、または、過去に作成した結合地図に結合し、結合地図を作成する(ステップS23)。例えば、ここでは、子デバイス20bなどが過去に作成したエリア地図によって結合地図が作成されており、当該結合地図に子デバイス20aから受信したエリア地図が結合されることで、より大きな結合地図が作成されるとする。
【0069】
次に、親デバイス10は、作成した結合地図を子デバイス20aおよび20bに配信する(ステップS24およびステップS25)。
【0070】
子デバイス20aは、配信された結合地図を用いて、過去に作成され配信された結合地図を更新する(ステップS26)。なお、子デバイス20aは、過去に作成された結合地図を記憶していない場合には、配信された結合地図を記憶する。
【0071】
子デバイス20bは、配信された結合地図を用いて、過去に作成され配信された結合地図を更新する(ステップS27)。
【0072】
これにより、子デバイス20aおよび20bは、自身が作成したエリア地図よりも大きな結合地図を用いて、様々な処理を行うことができる。
【0073】
例えば、子デバイス20bが前回エリア地図を親デバイス10へ送信した後場所を移動し、移動後の場所の撮影画像からSLAMを用いて最新のエリア地図を作成しているとする。子デバイス20bは、最新のエリア地図を親デバイス10へ送信する(ステップS28)。
【0074】
次に、親デバイス10は、子デバイス20bから受信したエリア地図を、過去に作成した結合地図(ステップS23で作成した結合地図)に結合し、結合地図を拡大する(ステップS29)。なお、親デバイス10は、1つのエリア地図を受信するごとに、当該1つのエリア地図を過去に作成した結合地図に結合しなくてもよく、複数の子デバイス20から複数のエリア地図を受信した後、当該複数のエリア地図を過去に作成した結合地図に結合してもよい。
【0075】
次に、親デバイス10は、作成した結合地図を子デバイス20aおよび20bに配信する(ステップS30およびステップS31)。
【0076】
子デバイス20aおよび20bは、配信された結合地図を用いて、過去に作成され配信された結合地図を更新する(ステップS32およびステップS33)。
【0077】
これにより、子デバイス20aおよび20bは、前回配信された結合地図よりも大きな結合地図を用いて、様々な処理を行うことができる。
【0078】
以上説明した通り、複数のデバイス100はローカルネットワーク(例えばエッジクラウド)を形成するため、インターネットに接続できない場所であっても、ローカルネットワークを介して互いに通信することができる。また、親デバイス10が2以上の子デバイス20から受信した2以上のエリア地図に特徴点が似ている部分があれば、2以上のエリア地図を結合することができる。つまり、2以上のエリア地図に対する絶対位置情報がなくても、特徴点から2以上のエリア地図の相対的な位置関係がわかるため、絶対位置情報を使用せずに結合地図を作成できる。したがって、GPSおよびインターネットを利用できない場所の地図を作成できる。
【0079】
また、エリア地図は、子デバイス20が有するカメラ21の撮影画像から動的に作成されるため、災害などによる地形変化があった場合でも、地形変化後のエリア地図を結合することができ、地形変化にリアルタイムに対応可能な地図を作成できる。
【0080】
また、上記特許文献1のように、データセンタが各デバイスからデータを収集して地図を作成する場合に、データセンタに通信異常などが発生したときには、地図を作成できなくなる。一方で、本発明では、親デバイス10および複数の子デバイス20が動的に決まるため、複数のデバイス100のそれぞれが親デバイス10となることができる。したがって、ある親デバイス10に通信異常などが発生した場合でも、子デバイス20となっている他のデバイス100が親デバイス10となり、引き続き地図を作成できる。
【0081】
次に、配信された結合地図を用いた応用例について説明する。
【0082】
例えば、複数のデバイス100のそれぞれは、作成された結合地図における相対的な自己位置を特定することができるため、これらの相対位置情報を用いることで群制御を行うことができる。例えば、上述した子デバイス20を未知のエリアへ移動させる制御は、群制御の一例である。
【0083】
例えば、災害時に、地形が変化したり、ネットワークインフラが途絶したりした状態であっても、上述したように、ローカルネットワークにおいて、地形変化にリアルタイムに対応可能な地図を作成できる。このため、災害時の救助および物資の運搬などに結合地図を利用することができる。
【0084】
例えば、工場内では刻々と状況が変化する場合があるが、工場内の状況変化にリアルタイムに対応可能な工場内の結合地図を用いて、工場内の部品搬送車などの最適なルートをリアルタイムで探索できる。
【0085】
例えば、歩道では障害物(例えば路上駐輪されている自転車など)によって状況が変化する場合があるが、歩道の状況変化にリアルタイムに対応可能な歩道の結合地図を用いて、視覚障碍者への経路誘導、歩道での危険予測などをリアルタイムで行うことができる。
【0086】
例えば、地下工事では、GPSおよびインターネットを利用できないが、地下工事現場の結合地図を用いて地下工事の状況を監視することができる。
【0087】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る分散型地図作成システム1について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0088】
例えば、上記実施の形態では、親デバイス10(デバイス100)が移動指示部14を備える例を説明したが、親デバイス10は、移動指示部14を備えていなくてもよい。
【0089】
例えば、上記実施の形態では、子デバイス20(デバイス100)が移動制御部25を備える例を説明したが、子デバイス20は、移動制御部25を備えていなくてもよい。
【0090】
例えば、本発明は、分散型地図作成システム1として実現できるだけでなく、分散型地図作成システム1を構成する構成要素が行うステップ(処理)を含む分散型地図作成方法として実現できる。
【0091】
分散型地図作成方法は、複数のデバイス100を備える分散型地図作成システム1により実行される分散型地図作成方法であって、複数のデバイス100は、それぞれ、カメラ21を有し、複数のデバイス100は、ローカルネットワークを形成し、所定のアルゴリズムに基づいて、動的に、複数のデバイス100のうちの1つのデバイス100が親デバイス10となり、複数のデバイス100のうちの他のデバイス100が複数の子デバイス20となり、図6に示されるように、複数の子デバイス20は、それぞれ、自身が有するカメラ21の撮影画像からエリア地図を作成し(ステップS21)、作成したエリア地図を親デバイス10へ送信し(ステップS22)、親デバイス10は、子デバイス20からエリア地図を受信し(ステップS22)、2以上の子デバイス20から受信した2以上のエリア地図のそれぞれの特徴点に基づいて、2以上のエリア地図を結合することで、結合地図を作成し(ステップS23)、作成した結合地図を複数の子デバイス20のうちのいずれかの子デバイス20へ配信する(ステップS24)。
【0092】
例えば、分散型地図作成方法におけるステップは、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本発明は、分散型地図作成方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。
【0093】
さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD-ROMなどである非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0094】
例えば、本発明が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリおよび入出力回路などのハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリまたは入出力回路などから取得して演算したり、演算結果をメモリまたは入出力回路などに出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0095】
また、上記実施の形態の分散型地図作成システム1に含まれる各構成要素は、専用または汎用の回路として実現されてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態の分散型地図作成システム1に含まれる各構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。
【0097】
また、集積回路はLSIに限られず、専用回路または汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内部の回路セルの接続および設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
【0098】
さらに、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、分散型地図作成システム1に含まれる各構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【0099】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の分散型地図作成システムなどは、GPSおよびインターネットを利用できない場所の地図を作成するためのシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 分散型地図作成システム
10 親デバイス
11 エリア地図受信部
12 結合地図作成部
13 結合地図配信部
14 移動指示部
20 子デバイス
21 カメラ
22 エリア地図作成部
23 エリア地図送信部
24 記憶部
25 移動制御部
100 デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6