(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169716
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】トラクタトラックに設けるストッカボックス並びにこれを具えたトラクタトラック
(51)【国際特許分類】
B62D 33/04 20060101AFI20231122BHJP
B62D 53/06 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B62D33/04 A
B62D53/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081004
(22)【出願日】2022-05-17
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】508282270
【氏名又は名称】有限会社栄和自動車
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 武
(72)【発明者】
【氏名】飯田 泰教
(57)【要約】
【課題】充分な収納容積を得られる大型のトラクタトラック用のストッカボックスであっても、特にトレーラトラックの後退時において後方の視野を充分に確保できるようなストッカボックスを開発することを技術課題とした。
【解決手段】トラクタトラックTにおけるキャビン23と、トレーラ接続用のカプラ28との間の後部デッキ27上に設けられるストッカボックス1であって、立体枠状のフレーム10を強度部材として、これに区画パネル11を支持させ、複数の収納部を構成するものであり、且つキャビン23後方の後部窓25の高さ位置であって、操縦席23Aと反対の部位には、側周パネル11Aを配設しない後方確認スペースSを設けるものであり、更に前後2本の露見コラムフレーム10A、10Cは、操縦席23Aにおいて後方確認姿勢をとった操縦者の操縦者視点Pから見て重なり状に目視される位置に設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタトラックにおけるキャビンと、トレーラ接続用のカプラとの間の後部デッキ上に設けられるストッカボックスであって、
このストッカボックスは、立体枠状のフレームを強度部材として、これに区画パネルを支持させ、複数の収納部を構成するものであり、且つキャビン後方の後部窓の高さ位置であって、操縦席と反対の部位には、側周パネルを配設しない後方確認スペースを設けるものであり、更に後方確認スペースにおいて露見し、後方視界の妨げになる前後2本の露見コラムフレームは、操縦席において後方確認姿勢をとった操縦者の視点から見て重なり状に目視される位置に設けられていることを特徴とするトラクタトラック用のストッカボックス。
【請求項2】
前記後方確認スペースの下面を構成する確認支援平置パネルは、後方下りの傾斜状態に構成されていることを特徴とする請求項1記載のトラクタトラック用のストッカボックス。
【請求項3】
前記ストッカボックスの前後方向における投影外形は、キャビンの前後方向における投影外形から張り出さないように形成されていることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載のトラクタトラック用のストッカボックス。
【請求項4】
前記請求項1から3いずれか記載のストッカボックスを具えていることを特徴とするトラクタトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラトラックの装備に関するものであって、特にトレーラをけん引するトラクタトラックに設けるストッカボックス並びにこれを具えたトラクタトラックに係るものである。
【背景技術】
【0002】
物流システムの中でトレーラトラックが大きな役割を果たしている。このうち重量工作機械、大型電設装置、工事用重機等、重量のある貨物を運搬対象としたレーラトラックは、チェンブロック、玉掛用ワイヤ、油圧ジャッキ、ウインチ等の荷役用機材を常備して運行されることが多い。このような荷役用機材等を安全に保管するため、近時、大型のストッカボックスをトラクタトラックの操縦席キャビンとトレーラの接続機材であるカプラとの間のデッキスペースに設置することが行われている。このような大型のストッカボックスのサイズを見ると、幅寸法は車体幅寸法に近く、高さ寸法は操縦席のキャビン高さに近い寸法に構成され、諸機材の収納容積を充分大きくとる傾向にある。
【0003】
ところでトレーラトラックを操縦する場合において、特に後退時には、操縦者は、トレーラ後部位置を目視把握しながら、ステアリング操作を行っている。このとき国内仕様のトラクタトラックは、車輌右側に操縦席があることから、トレーラが右側に曲がりながら後退する場合には、操縦席右側のドア窓からその確認を行うことから可能となっている。一方トレーラが左曲がりで後退する場合には、キャビンの左側窓からは確認することができず、且つ後写鏡においても写像が得られないことから、キャビン後方の中央の窓から、トレーラ後方を目視確認して後退の操縦を行っている。
【0004】
このような操縦実態を考慮すると、先に述べたような正面投影面積が操縦席のキャビンに近いような大型のストッカボックスが後方に存在する場合には特に左曲がりの後退時には視野を妨げることは否めない。
因みに前述した大型重量荷物の場合、特に荷下ろし地点は必ずしも大型のトレーラトラックの進入を考慮した充分の広さが確保されているとは限らず、極めて狭隘な場合が多い。このため、荷下ろし地点へのトレーラトラックの後退進入は高度な操縦スキルを要求されるものであり、そのためにも左後方視野については可能な限り妨げられないことが好ましい。当然ながら後退のみならず道路上を前進走行する場合にも、ストッカボックスが後写鏡による後方視界の確認を妨げるものではあってはならない(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7-12319
【特許文献2】特表2010-530335
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景を考慮してなされたものであって、充分な収納容積を得られる大型のトラクタトラック用のストッカボックスであっても、特にトレーラトラックの後退時において後方の視野を充分に確保できるようなストッカボックスを開発することを技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載のトラクタトラック用のストッカボックスは、トラクタトラックにおけるキャビンと、トレーラ接続用のカプラとの間の後部デッキ上に設けられるストッカボックスであって、このストッカボックスは、立体枠状のフレームを強度部材として、これに区画パネルを支持させ、複数の収納部を構成するものであり、且つキャビン後方の後部窓の高さ位置であって、操縦席と反対の部位には、側周パネルを配設しない後方確認スペースを設けるものであり、更に後方確認スペースにおいて露見し、後方視界の妨げになる前後2本の露見コラムフレームは、操縦席において後方確認姿勢をとった操縦者の視点から見て重なり状に目視される位置に設けられていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のトラクタトラック用のストッカボックスは、前記要件に加え、前記後方確認スペースの下面を構成する確認支援平置パネルは、後方下りの傾斜状態に構成されていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載のトラクタトラック用のストッカボックスは、前記要件に加え、前記ストッカボックスの前後方向における投影外形は、キャビンの前後方向における投影外形から張り出さないように形成されていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載のトラクタトラックは、前記請求項1から3いずれか記載のストッカボックスを具えていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の要件を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1または4記載の発明によれば、トラクタトラックのキャビン後方に、後方視界の妨げになりがちなストッカボックスを設けながらも、ストッカボックスに後方確認スペースを設け、且つ後方視で死角を作ってしまう二本のコラムフレームを視覚上一本に重なるように配置したものであり、これによりトレーラが屈曲後退している状態であっても、充分な確保視野が得られ、操縦者によるトレーラ後方の確認が充分になされる。
【0012】
また請求項2または4記載の発明によれば、トラクタトラックのキャビン後方に、後方視界の妨げになりがちなストッカボックスを設けながらも、ストッカボックスに後方確認スペースを設け、且つ後方視で死角を作ってしまう平置きパネルは後方下がりの傾斜状態としたものであり、これによりトレーラが屈曲後退している状態であっても、充分な確保視野が得られ、操縦者によるトレーラ後輪の接地位置の確認が充分になされる。
【0013】
また請求項3または4記載の発明によれば、トラクタトラックのキャビン後方に、後方視界の妨げになりがちなストッカボックスを設けながらも、その前後方向における投影外形はキャビンの前後方向における投影外形から張り出さないように形成したものであり、前進走行時における後写鏡による後方視界を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のストッカボックス並びにこれを具えたトラクタトラックを示す斜視図並びに視界確保の状態を併せ示す説明図である。
【
図3】トラクタトラックのキャビンと、トレーラ接続用のカプラとの間の後部デッキ上に設けられるストッカボックス及び操縦者視点を示す側面図である。
【
図5】ストッカボックス並びにこれを具えたトラクタトラック並びに操縦者視点を示す平面図である。
【
図6】ストッカボックス並びにこれを具えたトラクタトラック並びに操縦者視点を示す側面図である。
【
図7】トラクタトラックに具えられる左右の後写鏡による写像状態を示す説明図である。
【
図8】後方確認スペースを含むストッカボックスの搭載状態を示す斜視図並びに操縦席からの後方視野状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態は、以下述べる実施例を好ましい実施の形態の一例とすると共に、本発明の技術思想の中において種々の改変例をも含むものである。
【実施例0016】
以下本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
本発明のトレーラトラックT用のストッカボックス1(以下ストッカボックス1と言う)は、トレーラトラックTのけん引車輌であるトラクタトラック2に設置され、必要な荷役用機材等を収納する。そしてこのストッカボックス1はトレーラトラックTの操縦において不可欠な後方視界、特に左側後方視界を充分確保するための、後方確認スペースSを具えることを特徴とする。
【0017】
まずストッカボックス1の詳細な説明の前に、トラクタトラック2と、このものがけん引するトレーラ3からなるトレーラトラックTについて概説する。
【0018】
まずトラクタトラック2は適宜のシャシ(図示略)を基本的な骨格部材として、エンジン(図示略)や前方の走行輪20、駆動輪である後輪21、更にキャビン23を主要部材として具える。キャビン23は一例として国内仕様即ち左通行の車輌である場合には、その右側に操縦席23Aを具える。このキャビン23は左右の扉上方に側部窓24を具えると共に、後方には後部窓25を具え、更に前方左右に後写鏡26を具える。またキャビン23の後方には後部デッキ27を具えると共に、更にその後方にはトレーラ3を接続するためのカプラ28が具えられている。もちろんこれ以外に、トレーラ3に対して制御系であるエア配管、油圧配管、電気配管等が具えられている。
【0019】
一方、トレーラ3は、荷台30を主要部材としてその後方にトレーラ車輪31を具え、更に前方には前記カプラと接続されるキングピン32を具える。この荷台30は、
図1に示すようにその中央部に積荷物35を積載する。
なお
図1に示す実施例では、荷台30はフラットデッキタイプを開示したが、重量のある積荷物35を対象としたトレーラトラックTとしては、一例として荷台30は、中央部が路面側に下がったような状態の低床タイプのものも好ましい。
因みにこのような低床タイプの構成とすることにより、積荷物35の高さ寸法が高い場合であっても、法制上許容される走行時の高さ寸法の限界を超えないようにすることができる。
【0020】
このようなトレーラトラックTの特に後退時における操縦形態について簡単に説明する。トレーラ3が左側に屈曲して後退する場合、曲がり始めた段階では左側の後写鏡26がトレーラ3の後部を写し、運転手はこれを確認できるものの、屈曲角度が増すにつれ後写鏡26ではトレーラ3の後部位置が目視把握できなくなる。このためこの状態では運転手は、トラクタトラック2のキャビン23における後部窓25からトレーラ3の後方にあるトレーラ車輪31の位置を確認しながらステアリング操作を行う。このような操作を妨げないように、本発明のストッカボックス1は種々の構成が採られている。
【0021】
以下、ストッカボックス1について説明する。ストッカボックス1は全体としては箱状のものであり、例えばその幅方向の寸法はキャビン23の幅方向寸法に近く、またその高さ寸法はキャビン23の高さ寸法にほぼ近いような形態を採る。その構成としては、荷役機材等がかなりの重量であることに因み、強度部材として適宜の金属素材を組み合わせたフレーム10を立体枠状に構成し、そこに区画パネル11を張付状に支持させて収納部(下段収納部13、中段収納部14、上段収納部15)を適宜の数構成するものである。
【0022】
フレーム10については、概ねストッカボックス1の外形を形成するような立体枠状であり、更に収納部を構成するために棚受け状にビーム状のフレームや柱状のコラムフレームを組み合わせて構成する。このフレーム10における構成部材については、本発明の特徴部位である後方確認スペースSに関与する部材のみ参照符号を付する。即ち後方確認スペースSを囲む位置の前方中央部の露見コラムフレーム10Aと前方外側の露見コラムフレーム10Bと、後方外側の露見コラムフレーム10Cとの3本のフレーム10に参照符号を付す。
【0023】
そしてこのフレーム10に対して支持される区画パネル11は、複数の縦配置される側周パネル11Aと、収納部の床乃至は天井部を構成する複数の平置きパネル11Bとからなり、これらによって複数の収納部を形成している。そして特に後方確認スペースSに関与する部位には、後方確認スペースSの空間を囲む位置では、中央寄りの部位に側周パネル11Aが設けられ、他の3面、即ち前面、後面及び側面については、側周パネル11Aは設けられていない。結果的にこのように側周パネル11Aを設けないことにより実質的に後方確認スペースSが形成されている。
【0024】
そして後方確認スペースSを構成する上下2枚の平置きパネル11Bのうち下方の平置きパネルについては、確認支援平置きパネル11Sとして後ろ下がりに傾斜状態に構成される。なおこの実施例においては、この確認支援平置きパネル11Sについては、ここをその下方の下段ボックス収納部13Aにアクセスできるよう、開閉自在のハッチとしている。
また側周パネル11Aの内、ストッカボックス1の両側側面を構成するものについてはその中央から上方よりの範囲を側面傾斜部11Cとして、上窄まり状に傾斜した構成を採る。この構成によりストッカボックス1の前後方向における投影外形をトラクタトラック2のキャビン23の前後方向の投影外形からはみ出さないような形態としている。
【0025】
次にこのような後方確認スペースSを具えたストッカボックス1における収納部について更に説明する。前記後方確認スペースSは、キャビン23の後部窓25の高さ位置に配置されるものでありその下方に下段収納部13が設けられる。この下段収納部13は、側周パネル11Aで囲まれた下段ボックス収納部13Aを左右に具えると共にその中央部位は開放状態として開放収納部13Bとする。
そしてこの開放収納部13Bの上方にはガイドダクト13Cが具えられ、ここにトラクタトラック2からトレーラ3に対する制御系の配管、配線等を配置支持させるような用い方がされる。
【0026】
この下段収納部13の上方は、中段収納部14となるものであり、中段収納部14にあっては、中段ボックス収納部14Aが操縦席23A側に設けられると共に、後方確認スペースSにおける運転席寄りの一部の部位を利用して開放トレー部14Bが一例として設けられている。
【0027】
更に中段収納部14の上方には上段収納部15が設けられており、上段収納部15では全幅にわたって上段ボックス収納部15Aが適宜に区画されて形成されている。更にこの上段収納部15の上方には、上部開放荷台16が具えられている。
【0028】
本発明は以上述べたような構成を有するものであり、このストッカボックス1を利用して種々の荷役用機材をトラクタトラック2に搭載して積荷物の運送を行う。
まず一般の道路での前進走行時にあっては、
図8(a)に示すようにフレーム10を含む区画パネル11における側面の側周パネル11Aは、側面傾斜部11Cが上窄まり状の形状であり、キャビン23より張り出していない。このためキャビン23に具えられた後写鏡26の写像をストッカボックス1が妨げない状態で運行がなされる。結果的に
図7に示すように、後写鏡26はトレーラ3後部及びその積荷物35を含む後方を十分に写像した状態で運行がなされる。
【0029】
そして例えば
図1に示すように、目的地点の荷下ろし位置にトレーラトラックTを後退移動させるときには、前述のとおり曲がりはじめ当初は、左側の後写鏡26でトレーラ3の後部を確認する。そしてトレーラ3の屈曲角が大きくなったときには、後写鏡26の写像はトレーラ3の後部を捉えきれなくなる一方、トレーラ3の後部は操縦者視点Pから見て、後部窓25を通して目視できるようになる。
【0030】
このとき
図5に示すように、露見コラムフレーム10A、10B、10Cのうち、前方側方の露見コラムフレーム10Bは、もともと後部窓25を通した視界からは外れているが、前方中央の露見コラムフレーム10Aと後方側方の露見コラムフレーム10Cとの2本が、操縦者の視野を妨げるような状態となる。しかしながら本発明では、前方中央寄りの露見コラムフレーム10Aと、後方側方の露見コラムフレーム10Cとは、
図8(b)に示すように操縦者視点Pから見るとちょうど重なり合う状態となっている。これにより視界を妨げるおそれのある2本の露見コラムフレーム10Aと露見コラムフレーム10Cとが存在していたとしても、あたかもこれらは1本のみのコラムフレームがその視界を遮るだけであり、充分な確保視界Vが得られる。結果的に操縦者にとってのステアリング操作に当っての煩わしさがほとんどない状態で後退操作ができる。
【0031】
またこのとき後方確認スペースSの床面を形成している平置きパネル11Bのうちの確認支援平置きパネル11Sは後方下がりに傾斜しており、この部位についても充分な確保視界Vが得られ操縦者による後方確認の妨げになることを回避している。
このように本発明にあってはストッカボックス1による荷役機材等の収容スペースを充分に確保しながらも、特に後退時の運転操作に支障のない構成が得られている。因みにこのようなストッカボックス1は、既に述べたように、重量のある積荷物を運搬するトレーラトラックTに有用であるが、他の一般物流のトレーラトラックにおけるトラクタトラックに適用できることは云うまでもない