(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016972
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ストレージシステム及びデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/06 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
G06F3/06 304P
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195555
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2020164002の分割
【原出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 直之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隆介
(72)【発明者】
【氏名】小山田 健一
(72)【発明者】
【氏名】平岩 友理
(72)【発明者】
【氏名】風間 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】孫 贇徳
(72)【発明者】
【氏名】小平 亮介
(57)【要約】
【課題】オープン環境の機能を利用することでメインフレーム環境の機能を拡張すること。
【解決手段】メインフレーム系の第1ストレージに外接されたオープン系の第2ストレージは、自ストレージの正論理デバイスに対応付けて生成されたオープン環境の第2正ボリュームと、自ストレージの副論理デバイスに対応付けて生成されたオープン環境の第2副ボリュームを備え、第1ストレージは、第2ストレージの正論理デバイスに対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1正ボリュームと、第2ストレージの副論理デバイスに対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1副ボリュームと、を備え、第1ストレージは、ホストからのデータの処理要求を受け付けた場合に、該処理要求を第2ストレージに反映させて処理完了とし、第1ストレージは、所定の機能の実行要求を受け付けた場合には、第2ストレージに機能を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシステム環境の第1ストレージに第2のシステム環境の第2ストレージが外接され、前記第1のシステム環境と前記第2のシステム環境とで保持可能なスナップショットの世代数が異なるストレージシステムであって、
前記第2ストレージは、自ストレージが有する正論理デバイスに対応付けて生成された前記第2のシステム環境の第2正ボリュームと、自ストレージが有する副論理デバイスに対応付けて生成された前記第2のシステム環境の第2副ボリュームを備え、
前記第1ストレージは、前記第2ストレージの前記正論理デバイスに対応付けて生成された前記第1のシステム環境の第1正ボリュームと、前記第2ストレージの前記副論理デバイスに対応付けて生成された前記第1のシステム環境の第1副ボリュームと、を備え、
前記第2ストレージは、前記第2正ボリュームのスナップショットを取得して前記第2副ボリュームに格納するスナップショット取得機能を有し、
前記第1ストレージは、ホストから前記第1正ボリュームのスナップショットを取得して前記第1副ボリュームに格納する機能の実行要求を受け付けた場合には、当該実行要求を前記第2正ボリュームのスナップショットを取得して前記第2副ボリュームに格納する実行要求に置き換えて、前記第2ストレージに前記スナップショット取得機能を実行させる、
ことを特徴とするストレージシステム。
【請求項2】
前記第1ストレージは、ホストから前記第1正ボリュームにデータを書き込む処理要求であるライト要求を受け付けた場合に、該ライト要求を前記第2ストレージの前記第2正ボリュームに対するライト要求に置き換えて、前記第2正ボリュームのデータに反映させた上で処理完了とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のストレージシステム。
【請求項3】
前記第2ストレージは、前記第2正ボリュームで世代管理を行って各世代のスナップショットデータを前記第2副ボリュームに格納し、
前記第1ストレージは、前記ホストから前記第1副ボリュームの所定の世代のデータに対するリード要求を受け付けた場合には、該リード要求を前記第2ストレージの前記第2副ボリュームの前記所定の世代のデータに対するリード要求に置き換えて、前記第2ストレージにリードを要求し、前記第2ストレージが読み出したデータをリード結果として前記ホストに提供する
ことを特徴とする請求項2に記載のストレージシステム。
【請求項4】
前記第1ストレージの前記第1正ボリュームは、前記第1のシステム環境の第3のストレージにおけるボリュームのリモートコピーに対応付けて作成される
ことを特徴とする請求項1記載のストレージシステム。
【請求項5】
前記第1ストレージは、複数の前記第1正ボリュームを有し、前記複数の第1正ボリュームは、所定の基準でグループに分けられ、同一のグループに属する第1正ボリュームについて一括してスナップショットの取得が可能であることを特徴とする請求項1に記載のストレージシステム。
【請求項6】
前記第1ストレージは、時刻毎にそれぞれ複数の第1正ボリュームを内包した時系列のグループを形成し、同一の時刻のグループに属する第1正ボリュームについて一括してスナップショットの取得が可能であることを特徴とする請求項5に記載のストレージシステム。
【請求項7】
前記第1ストレージは、自ストレージにおける対象ボリュームに対し前記第1のシステム環境に基づくローカルスナップショットを取得して第1正ボリュームを生成し、前記対象ボリューム毎にそれぞれ複数の第1正ボリュームを内包したローカルスナップショットのグループを形成し、同一の前記対象ボリュームのグループに属する第1正ボリュームについて一括してスナップショットの取得が可能であることを特徴とする請求項5に記載のストレージシステム。
【請求項8】
第1のシステム環境の第1ストレージに第2のシステム環境の第2ストレージが外接され、前記第1のシステム環境と前記第2のシステム環境とで保持可能なスナップショットの世代数が異なるストレージシステムにおけるデータ処理法であって、
前記第2ストレージが、自ストレージが有する正論理デバイスに対応付けて前記第2のシステム環境の第2正ボリュームを生成するとともに、自ストレージが有する副論理デバイスに対応付けて前記第2のシステム環境の第2副ボリュームを生成するステップと、
前記第1ストレージが、前記第2ストレージの前記正論理デバイスに対応付けて前記第1のシステム環境の第1正ボリュームを生成するとともに、前記第2ストレージの前記副論理デバイスに対応付けて前記第2のシステム環境の第1副ボリュームを生成するステップと、
前記第1ストレージが、ホストから前記第1正ボリュームのスナップショットを取得して前記第1副ボリュームに格納する機能の実行要求を受け付けた場合に、当該実行要求を前記第2正ボリュームのスナップショットを取得して前記第2副ボリュームに格納する実行要求に置き換えて、前記第2ストレージに前記スナップショットを取得する機能を実行させるステップと
を含むことを特徴とするデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージシステム及びデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ストレージシステムのデータ処理に関し、特表2014-507693号公報(特許文献1)に記載の技術がある。この公報には、「ストレージシステムは、メモリ領域と、キャッシュメモリ領域と、プロセッサとを有する。メモリ領域が、キャッシュメモリ領域に記憶されており論理領域に書き込むべきデータ要素と正ボリュームに対するスナップショット取得時点との時間的関係を示す時間関係情報を記憶する。プロセッサは、正ボリュームを指定したライト要求に従うライト先の論理領域に書き込むべきキャッシュメモリ領域のデータ要素についての時間関係情報を基に、キャッシュメモリ領域のデータ要素がスナップショット構成要素であるか否かを判定する。プロセッサは、その判定の結果が肯定的の場合、当該スナップショット構成要素を構成要素とするスナップショットイメージを保持するための副ボリュームに当該データ要素を退避させ、その後、書き込み対象のデータ要素をキャッシュメモリ領域に格納させる。」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、スナップショットなどのデータ処理を高機能化することができる。しかし、このような機能は、システム環境ごとに開発する必要がある。そのため、例えばメインフレーム環境では16世代までスナップショットを保持するのに対し、オープン環境では1024世代までスナップショットを保持できるといったように、環境による機能の差が発生するが、オープン環境と同等の機能を改めてメインフレーム環境で開発するのは費用や労力の負担が大きい。
【0005】
そこで、本発明では、オープン環境の機能を利用することでメインフレーム環境の機能を拡張することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、代表的な本発明のストレージシステム及びデータ処理方法の一つは、メインフレーム系の第1ストレージにオープン系の第2ストレージを外接したストレージシステムにおいて、前記第2ストレージは、自ストレージが有する正論理デバイスに対応付けて生成されたオープン環境の第2正ボリュームと、自ストレージが有する副論理デバイスに対応付けて生成されたオープン環境の第2副ボリュームを備え、前記第1ストレージは、前記第2ストレージの前記正論理デバイスに対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1正ボリュームと、前記第2ストレージの前記副論理デバイスに対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1副ボリュームと、を備え、前記第1ストレージは、ホストからのデータの処理要求を受け付けた場合に、該処理要求を前記第2ストレージに反映させた上で処理完了とし、前記第1ストレージは、所定の機能の実行要求を受け付けた場合には、前記第2ストレージに前記機能を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オープン環境の機能を利用することでメインフレーム環境の機能を拡張することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】ストレージシステムにおける通常ライトの処理の説明図。
【
図4】ストレージシステムにおける更新ライトの処理の説明図。
【
図5】ストレージシステムにおけるリードの処理の説明図。
【
図7】メインフレーム系のストレージの設定の説明図。
【
図9】環境によるデータ長の差異の補填についての説明図。
【
図11】スナップショット取得の処理手順を示すフローチャート。
【
図12】データ検証の処理手順を示すフローチャート。
【
図13】ライト処理の動作を説明するシーケンス図。
【
図14】リード処理の動作を説明するシーケンス図。
【
図17】用途ごとにグループを形成する場合の説明図。
【
図18】時系列でグループを形成する場合の説明図。
【
図19】ローカルスナップショットでグループを形成する場合の説明図。
【
図20】セキュリティでグループを形成する場合の説明図。
【
図21】Comp/Dedup設定ごとグループを形成する場合の説明図。
【
図22】暗号設定ごとグループを形成する場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例0010】
図1は、ストレージシステムの構成図である。
図1に示すストレージシステムは、ホストとしてのサーバ10がストレージ20に接続されており、ストレージ20にストレージ30が外接されている。ストレージ20は、メインフレーム(MF)系の第1ストレージ(Storage#1)である。ストレージ30は、オープン(OP)系の第2ストレージ(Storage#2)である。
【0011】
ストレージ20は、1番ポート(Port#1)と2番ポート(Port#2)をサーバ10との通信に用い、3番ポート(Port#3)と4番ポート(Port#4)をストレージ30との通信に用いる。ストレージ30は、5番ポート(Port#5)と6番ポート(Port#6)を備え、5番ポートがストレージ20の3番ポートに、6番ポートがストレージ20の4番ポートにそれぞれ接続されている。
【0012】
ストレージ30は、正論理デバイスとしてのParityGroup#1と、副論理デバイスとしてのParityGroup#2を有する。また、自ストレージが有する正論理デバイス(ParityGroup#1)に対応付けて生成されたオープン環境の第2正ボリューム(VOL#3)と、自ストレージが有する副論理デバイス(ParityGroup#2)に対応付けて生成されたオープン環境の第2副ボリューム(VOL#4)を備える。
【0013】
ストレージ20は、ストレージ30の正論理デバイス(ParityGroup#1)に対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1正ボリューム(VOL#1)と、第2ストレージの副論理デバイス(ParityGroup#2)に対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1副ボリューム(VOL#2)と、を備える。
【0014】
ストレージ20は、サーバ10からのデータの処理要求を受け付けた場合に、該処理要求をストレージ30に反映させた上で処理完了とする。また、ストレージ20は、所定の機能(例えばスナップショット)の実行要求を受け付けた場合には、ストレージ30に機能を実行させる。
【0015】
ストレージ30は、VOL#3で世代管理を行っており、SnapshotPoolを利用して例えば1024世代までのスナップショットを保持することができる。ストレージ20は、スナップショット機能の実行要求を受け付けた場合には、VOL#1を介してストレージ30にスナップショット取得を要求する。ストレージ30は、ストレージ20からスナップショット取得の要求を受けたならば、指定されたスナップショットデータをVOL#3にマッピングし、VOL#4に対応づけられたストレージ20のVOL#2を介してスナップショットデータを提供する。なお、ストレージ20はキャッシュメモリCache#1を、ストレージ30はキャッシュメモリCache#2を備えており、データの処理時に適宜使用する。
【0016】
図2は、ストレージシステムの機能ブロック図である。
図2に示すように、ストレージ20は、キャッシュメモリ21、ディスク制御部22、制御部23及び共有メモリ24を有する。制御部23は、CPU(Central Processing Unit)などであり、所定のプログラムをメモリに展開して実行することで、メインフレーム通信部、スナップショット処理部、パス入出力制御部などの各種機能を実現する。メインフレーム通信部は、サーバ10との通信を行う処理部である。スナップショット処理部は、スナップショットの実行要求を受け付けた場合に、ストレージ30にスナップショットを実行させる処理を行う。パス入出力制御部は、ストレージ20とストレージ30との入出力を制御する。共有メモリ24は、スナップショットの世代を管理する情報などの格納に用いられる。
【0017】
ストレージ30は、キャッシュメモリ31、ディスク制御部32及びディスク装置33を有する。ディスク装置33は、物理ディスク(PDEV)を複数含む。ストレージ30は、複数のPDEVからParityGroupを組み、そこから複数のLDEVを論理デバイスとして切り出している。
図2では、3D1PのParityGroupを組み、1つのLDEVをスナップショット元のVOL(
図1のVOL#3)が属すParityGroup#1として使用し、2つのLDEVをSnapshotPool用のVOLが属するParityGroup#2として使用している。SnapshotPoolは、複数LDEVから作成したPoolであり、スナップショットの取得後に更新が発生した場合に、差分データを保存しておくために用いられる。
【0018】
次に、ストレージシステムのライト処理の動作を説明する。
図3は、ストレージシステムにおける通常ライトの処理の説明図である。
図4は、ストレージシステムにおける更新ライトの処理の説明図である。また、
図13は、ライト処理の動作を説明するシーケンス図である。ここでは、
図3及び
図4を中心に説明を行う。
図3では、まず、サーバ10は、メインフレーム(MF)系であるストレージ20のVOL#1に対してData Aのライト処理命令Write(A)を発行している。
【0019】
ストレージ20は、Write(A)を受けて、Cache#1にData Aを保存する(2)。その後、ストレージ20は、Data Aをストレージ30のCache#2に転送して保存させる(3)。この転送は、Port#3からPort#5を経由して行われる。ストレージ20は、ストレージ30のCache#2への転送が完了したならば、サーバ10にライト完了の応答を行う。
【0020】
また、
図3では、ストレージ20は、オープン(OP)系であるストレージ30のVOL#3に対してスナップショットの取得を指示している。このため、ストレージ30は、オープン環境の機能を用いて最新のスナップショットSnapshot1024を取得し(4)、Snapshot1024にVOL#4をマッピングしている(5)。
【0021】
図4では、サーバ10は、ストレージ20のMFVOL(VOL#1)におけるWrite(A)を発行した箇所に対し、Data Bのライト処理命令Write(B)を発行している(1)。
【0022】
ストレージ20は、Write(B)を受けて、Cache#1にData Bを保存する(2)。その後、ストレージ20は、Port#3からPort#5を経由し、Data Bをストレージ30のCache#2に転送して保存させるのであるが、この際、ストレージ30は、Data AをSnapshot1024に退避していなければ、転送前に退避する。退避において、Data A自体はSnapshotPoolが属するParityGroup#2に格納される(3)。退避している場合はData AをData Bで上書きする。退避後、ストレージ20は、Data Bをストレージ30のCache#2に転送して保存させ(4)、転送が完了したならば、サーバ10にライト完了の応答を行う。
【0023】
図5は、ストレージシステムにおけるリードの処理の説明図である。また、
図14は、リード処理の動作を説明するシーケンス図である。ここでは、
図5を中心に説明を行う。
図5では、サーバ10は、
図4の更新ライト処理が完了した状態でストレージ20のMFVOL(VOL#2)に対してリード処理命令Readを発行している(1)。ストレージ30は、Data AをParityGroup#2からCache#2にステージングし、格納する(2)。その後、ストレージ30は、Data Aをストレージ20のCache#1にPort#6及びPort#4経由で転送し、保存させる(3)。ストレージ20は、Cache#1に保存されたData Aをサーバ10に転送する(4)。また、ストレージ30は、Data BをVOL#3が属すParityGroup#1に格納する(5)。
【0024】
次に、ストレージシステムの設定について説明する。ストレージシステムの設定は、オープン環境のストレージ30の設定を行った後、メインフレーム環境のストレージ20の設定を行う。
【0025】
図6は、オープン系のストレージ30の設定の説明図である。
図6に示すように、まず、オープン環境のストレージ30は、ParityGroup#1及びParityGroup#2を作成する(1)。次に、ストレージ30は、ParityGroup#1からVOL#3を作成し、ParityGroup#2からVOL#4を作成する(2)。この際、メインフレーム環境で作成するVOLと同じサイズで作成することが好ましい。その後、ストレージ30は、SnapshotPoolを作成し(3)、設定を終了する。
【0026】
図7は、メインフレーム系のストレージ20の設定の説明図である。
図6に示すように、まず、メインフレーム環境のストレージ20は、ストレージ30との外接パス(Port#3とPort#5, Port#4とPort#6)を接続する(1)。その後、ストレージ20は、外接先としてParityGroup#1及びParityGroup#2を登録する(2)。ストレージ20は、外接先として登録したParityGroup#1からVOL#1を作成する(3)とともに、外接先として登録したParityGroup#2からVOL#2を作成して(4)、設定を終了する。
【0027】
図8は、環境属性テーブルの説明図である。環境(OP/MF)属性テーブルは、ストレージシステムのボリュームの管理に用いられるテーブルである。環境(OP/MF)属性テーブルは、システム構築時(ストレージ20にストレージ30を外接したとき)に作成され、例えばストレージ20の共有メモリ24に格納される。また、システムの構成が変更された場合には、変更後の構成に合わせて環境(OP/MF)属性テーブルは更新される。
図8では、VOLの番号にParityGroupの番号と環境属性(OP又はMF)が対応付けられている。具体的には、VOL#1にParityGroup#1とMFが対応付けられ、VOL#2にParityGroup#2とMFが対応付けられ、VOL#3にParityGroup#1とOPが対応付けられ、VOL#4にParityGroup#2とOPが対応付けられた状態を示している。
【0028】
図9は、環境によるデータ長の差異の補填についての説明図である。
図9の例では、メインフレーム環境のSLOTサイズは64KBであり、オープン環境のSLOTサイズは256KBである。このデータ長の差異を補填するため、ストレージシステムは、64KBの「Segment」を用いる。Segmentサイズは、最も小さいSLOTサイズ以下とし、全てのSLOTサイズの公約数となることが好適である。
【0029】
図9の例では、64KBをSegmentサイズとして採用している。このため、メインフレーム環境ではSLOTとSegmentが1対1に対応し、オープン環境では4つのSegmentが1つのSLOTに対応する。このようにSegmentを定義し、ストレージ20とストレージ30がキャッシュ上においてSegment単位でデータを管理することで、環境によるSLOTサイズの差異を補填し、外接元と外接先の変換が可能となる。
【0030】
図10は、Segmentによる変換の具体例である。
図10に示したSegmentテーブルは、共有メモリ24に格納されており、ストレージ20は、ストレージ30に処理を要求するときにSegmentテーブルを参照してデータのアドレスを変換する。
図10では、VOL#1に対するR/W箇所がSLOT#1である場合を示している。R/W対象のVOL#1は、OP/MF属性テーブルによればMF属性のため、SLOT#1は、Segment#1となる。次に、VOL#1の所属するParityGroupはOP/MF属性テーブルより、ParityGroup#1である。また、OP/MF属性テーブルより、外接先のVOLは、同一ParityGroup#1を有するVOL#3となる。そして、VOL#3がOP/MF属性テーブルよりOP属性のため、Segment#1は、SLOT#0。つまり、外接先VOL#3へのR/W箇所SLOT#はSLOT#0となる。
【0031】
図11は、スナップショット取得の処理手順を示すフローチャートである。
図11では、まず、メインフレーム環境のホスト(MF Host)がリモートでのスナップショット取得を実行する(ステップS101)。メインフレーム環境のホストは、
図11では、スナップショット取得を要求する主体であり、例えばストレージ20である。リモートでのスナップショット取得は、具体的には、オープン環境のホスト(Open Host)に対してスナップショットの取得を要求する処理となる。オープン環境のホストは、
図11では、スナップショットの実行主体であり、ストレージ30である。オープン環境のホストは、MF Hostからの要求を受けてスナップショットを取得し(ステップS102)、最も古いスナップショットを除去する(ステップS103)。そして、スナップショットの管理テーブル(共有メモリ24の世代管理情報)を更新し(ステップS104)、処理を終了する。
図11のスナップショット取得手順は、例えば定期的に行ってもよいし、ストレージ20が所定の条件の成立を検知した場合に実行してもよい。また、サーバ10からの要求により実行することもある。なお、
図11に示したAdminは、ストレージ20を介さずにストレージ30に接続され、管理者からの操作を受け付ける端末である。管理者は、Adminを用いることでストレージ30を直接管理可能であるが、スナップショットの実行にはこのような直接の介入は不要である。一方で、データ検証を行う場合には、管理者がAdminを操作して処理を開始することになる。
【0032】
図12は、データ検証の処理手順を示すフローチャートである。
図12では、まず、管理者からの操作を受け付けたAdmin端末が、検証の対象となるデータIDを選択する(ステップS201)。オープン環境のホスト(Open Host)は、選択されたデータについて、必要であればアンマップを行い、スナップ―オン―スナップを取得して、マップする(ステップS202)。
【0033】
次に、Admin端末が、オンラインへの変更などの操作を受け付けると(ステップS203)、メインフレーム環境のホスト(MF Host)がUVMへの再接続と、オンラインへの変更を実行する(ステップS204)。その後、Admin端末が、データの変更(ステップS205)と、オフラインへの変更などの操作を受け付けると(ステップS206)、メインフレーム環境のホスト(MF Host)は、オフラインへの変更を実行し、UVMとの接続解除を行って(ステップS207)、処理を終了する。
【0034】
(変形例)
図15は、ストレージシステムの第1の変形例である。この変形例では、MF-HOSTであるサーバ10aにストレージ20aが接続されている。ストレージ20aはメインフレーム環境のストレージであり、MF-Vol1(PVOL)とMF-Vol2(PVOL)を有している。これらのボリュームは、リモートコピーの対象となっており、同じくメインフレーム環境のストレージであるストレージ20bにMF-Vol1(Replica)とMF-Vol2(Replica)が作成されている。さらに、ストレージ20bは、MF-Vol1(PVOL)とMF-Vol2(PVOL)について、自ストレージ内部での複製であるMF-Vol1(SI)とMF-Vol2(SI)を作成し、MF-Vol1(SI)とMF-Vol2(SI)をV-Volとしてグループ化し、グループで世代管理している。
【0035】
また、ストレージ20bには、オープン環境のストレージ30が外接されている。ストレージ30は、V-Volのスナップショットを1024世代まで取得することができる。このスナップショットは、MF-HOSTからはアクセスができないデータ保護領域内部に格納される。例えば、MF-Vol1(PVOL)やMF-Vol2(PVOL)にコンピュータウイルス感染が発生したときには、ストレージ30に接続された端末OP(Verify)を用い、データ保護領域内の各世代の感染を確認することができる。そして、安全であるとの確認が済んだ世代をストレージ20bにマウントし、MF-HOSTであるサーバ10bに提供することができる。
【0036】
図16は、ストレージシステムの第2の変形例である。この変形例では、メインフレーム環境のストレージ20は、キャッシュを保持しない。例えば、サーバ10がメインフレーム(MF)系であるストレージ20のVOL#1に対してWrite(A)発行すると(2)、ストレージ20は、Cache#1にData Aを保存せず(2)、直接Data Aをストレージ30のCache#2にPort#3及びPort#5経由で転送して保存し(3)、サーバ10にGood応答する。そして、メインフレーム(OP)系であるストレージ30は、VOL#3に対してSnapshotを取得する(5)。このため「Data A」が反映されたSnapshotが取得できる。
【0037】
この変形例では、外接元のキャッシュを使用せずに、外接先のキャッシュを使用する。具体的には、外接元へのIOを契機に、同期で外接先へのキャッシュへの書き込みを保証してから、外接元でServerに対してGood応答を実施する。本変形例に係るストレージシステムは、外接先への転送処理オーバーヘッドが生ずるので、Write処理のトータル処理オーバーヘッドを削減するために、直接外接先のキャッシュを使用することにより、外接元へのキャッシング処理を減らし処理オーバーヘッドの減少を実現している。この方式により、スナップショット取得前のディスコネクトやスナップショット取得後のリコネクト操作が不要となる。
【0038】
次に、MFの複数のボリュームと単一の外接ボリュームとをマッピングする変形例について説明する。ストレージシステムは、任意の基準で選択したMFの複数のボリュームをグループとして、外接したOPのボリュームにグループのスナップショットを取得し、マッピングすることができる。
【0039】
図17は、用途ごとにグループを形成する場合の説明図である。用途は、例えば業務などである。
図17では、メインフレーム環境のストレージ20が、業務A、業務B、業務Cについてそれぞれ複数のボリュームを内包したVol-Groupを形成している。そして、ストレージ20に外接されたオープン環境のストレージ30は、例えば業務AのVol-Groupについてスナップショットを取得し、管理する。
【0040】
図18は、時系列でグループを形成する場合の説明図である。
図18では、メインフレーム環境のストレージ20が、時刻t1、時刻t2についてそれぞれ複数のボリュームを内包したVol-Groupを形成している。そして、ストレージ20に外接されたオープン環境のストレージ30は、例えば時刻t2のVol-Groupについてスナップショットを取得し、管理する。
【0041】
図19は、ローカルスナップショットでグループを形成する場合の説明図である。
図19では、メインフレーム環境のストレージ20は、業務A0のボリュームと業務A1のボリュームを備え、それぞれについて適宜スナップショットを取得している。そして、同一のボリュームから取得したスナップショットのボリュームを内包するVol-Groupを形成している。ストレージ20に外接されたオープン環境のストレージ30は、例えば業務A
1のボリュームについて取得されたスナップショットのVol-Groupについてスナップショットを取得し、管理する。
【0042】
図20は、セキュリティでグループを形成する場合の説明図である。
図20では、セキュリティレベルやセキュリティソフトなどの差異でグループ化を行う。具体的には、メインフレーム環境のストレージ20が、セキュリティレベル1~3について、それぞれ複数のボリュームを内包したVol-Groupを形成している。そして、ストレージ20に外接されたオープン環境のストレージ30は、例えばセキュリティレベル1のVol-Groupについてスナップショットを取得し、管理する。
【0043】
図21は、Comp/Dedup(圧縮/重複除外)設定ごとグループを形成する場合の説明図である。
図21では、メインフレーム環境のストレージ20が、「Comp」に設定されたボリュームを内包するVol-Groupと、「非Comp」に設定されたボリュームを内包するVol-Groupと、「Dedup」に設定されたボリュームを内包するVol-Groupと形成している。そして、ストレージ20に外接されたオープン環境のストレージ30は、例えば「Comp」のVol-Groupについてスナップショットを取得し、管理する。
【0044】
図22は、暗号設定ごとグループを形成する場合の説明図である。
図22では、メインフレーム環境のストレージ20が、「暗号A」で暗号化されたボリュームを内包するVol-Groupと、「暗号B」で暗号化されたボリュームを内包するVol-Groupと、暗号化されていない「非暗号」のボリュームを内包するVol-Groupと形成している。そして、ストレージ20に外接されたオープン環境のストレージ30は、例えば「暗号A」のVol-Groupについてスナップショットを取得し、管理する。
【0045】
上述してきたように、本実施例に開示したストレージシステム及びデータ処理方法によれば、メインフレーム系の第1ストレージ(Storage#1)にオープン系の第2ストレージ(Storage#2)を外接したストレージシステムにおいて、第2ストレージは、自ストレージが有する正論理デバイス(ParityGroup#1)に対応付けて生成されたオープン環境の第2正ボリューム(VOL#3)と、自ストレージが有する副論理デバイス(ParityGroup#2)に対応付けて生成されたオープン環境の第2副ボリューム(VOL#4)を備える。
また、前記第1ストレージは、前記第2ストレージの前記正論理デバイスに対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1正ボリューム(VOL#1)と、前記第2ストレージの前記副論理デバイスに対応付けて生成されたメインフレーム環境の第1副ボリューム(VOL#2)と、を備える。
そして、前記第1ストレージは、ホストからのデータの処理要求を受け付けた場合に、該処理要求を前記第2ストレージに反映させた上で処理完了とし、前記第1ストレージは、所定の機能の実行要求を受け付けた場合には、前記第2ストレージに前記機能を実行させる。
かかる構成及び動作により、第2ストレージは常に最新のデータを保持し、第1ストレージは第2ストレージが有するオープン環境の機能を利用することでメインフレーム環境の機能を拡張することができる。
【0046】
また、前記第2ストレージは、前記第2正ボリュームで世代管理を行い、前記第1ストレージは、スナップショット機能の実行要求を受け付けた場合には、前記第1正ボリュームを介して前記第2ストレージにスナップショット取得を要求し、前記第2ストレージは、前記スナップショット取得の要求を受けたならば、指定されたスナップショットデータを前記第2副ボリュームにマッピングし、更に前記第2副ボリュームに対応づけられた前記第1副ボリュームを介してスナップショットデータを提供する。このため、メインフレーム系の第1ストレージは、オープン系の第2のストレージのスナップショット機能を利用することができる。
【0047】
また、前記第1ストレージ又は前記第2ストレージは、前記第1ストレージのボリュームと前記第2ストレージのボリュームとの対応関係に基づいてデータの出力先となるボリュームを特定した上で、前記メインフレーム環境と前記オープン環境におけるデータ長の差異を補填してキャッシュ格納し、データを転送する。このため、データ長の異なるボリューム間で容易にデータ転送を実現することができる。
【0048】
また、本実施例のストレージシステムは、複数の前記第1正ボリュームが単一の前記第2正ボリュームにマッピングされ、ホストからの前記第2正ボリュームに対する単一のスナップショット取得要求によって複数の前記第1正ボリュームのスナップショットデータを取得する構成とすることができる。かかる構成及び動作によれば、複数のボリュームを一括して管理することができる。
【0049】
また、本実施例のストレージシステムでは、前記第1ストレージは、前記ホストからデータのライト要求を受け付けた場合に、指定されたデータを自ストレージのキャッシュに格納し、該データを前記第2ストレージにデータ転送し、該データが前記第2ストレージのキャッシュに格納された後、前記ホストにライト完了の応答を返す。
また、前記第1ストレージが前記ホストからデータのライト要求を受け付けた場合に、前記第2ストレージのキャッシュにデータが残っているならば、ライト要求に係るデータを第1ストレージのキャッシュに格納し、第2ストレージに残ったデータを前記副論理デバイスに退避した後、前記ライト要求に係るデータを前記第2ストレージにデータ転送し、該データが前記第2ストレージのキャッシュに格納された後、前記ホストにライト完了の応答を返す。
かかる動作により、ストレージシステムは、ライト要求をリアルタイムで第2ストレージに反映させることができる。
【0050】
また、前記第1ストレージは、前記ホストからデータのライト要求を受け付けた場合に、指定されたデータを直ちに前記第2ストレージにデータ転送し、該データが前記第2ストレージのキャッシュに格納された後、前記ホストにライト完了の応答を返す構成としてもよい。かかる構成では、ライト完了までに要する時間を短縮することができる。
【0051】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。