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特開2023-169726止水プラグ、グラウトホール止水装置およびグラウトホール止水方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169726
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】止水プラグ、グラウトホール止水装置およびグラウトホール止水方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20231122BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
E21D11/40 B
E21D9/06 301K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081017
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522194647
【氏名又は名称】株式会社メガダイン
(71)【出願人】
【識別番号】506343704
【氏名又は名称】株式会社トーメック
(71)【出願人】
【識別番号】391019740
【氏名又は名称】三信建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正嘉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】山口 文男
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将美
(72)【発明者】
【氏名】大栗 雅明
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏之
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054AD22
2D155BA01
2D155BB01
(57)【要約】
【課題】高水圧下においても水圧によって移動することなく、止水性を維持することを可能とした止水プラグ、グラウトホール止水装置およびグラウトホール止水方法を提案する。
【解決手段】前後からの圧力により側方に拡張する止水部材41と、止水部材41の前面に添設された押圧部材42と、止水部材41の後面に添設された押え部材43と、押圧部材42を押え部材43に対して進退させる移動機構44とを備える止水プラグ40をセグメント1のグラウトホール11内に設置して止水する。押え部材43には、グラウトホール11の雌ネジ13のネジ山に係止可能な係止部45が形成されていて、抜け出しが防止されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントのグラウトホール内に設置される止水プラグであって、
前後からの圧力により側方に拡張する止水部材と、
前記止水部材の前面に添設された押圧部材と、
前記止水部材の後面に添設された押え部材と、
前記押圧部材を前記押え部材に対して進退させる移動機構と、を備え、
前記押え部材には、前記グラウトホールの雌ネジのネジ山に係止可能な係止部が形成されていることを特徴とする、止水プラグ。
【請求項2】
セグメントのグラウトホール内に設置される止水プラグであって、
前後からの圧力により側方に拡張する止水部材と、
前記止水部材の前面に添設された押圧部材と、
前記止水部材の後面に添設された押え部材と、
前記押圧部材を前記押え部材に対して進退させる移動機構と、
前記押え部材に添設された係止部材と、を備え、
前記係止部材には、前記グラウトホールの雌ネジのネジ山に係止可能な係止部が形成されていることを特徴とする、止水プラグ。
【請求項3】
前記移動機構は、前記押圧部材に固定されたボルトと、前記押え部材の後面において前記ボルトに螺合されたナットと、を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の止水プラグ。
【請求項4】
セグメントのグラウトホールに取り付けられたバルブと、
前記バルブに接続されたプリペンダーと、
前記プリペンダーおよび前記バルブに挿通されたロッドと、
前記ロッドの先端に前記移動機構が取り付けられた請求項1または請求項2に記載の止水プラグと、を備えることを特徴とする、グラウトホール止水装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の止水プラグを利用してセグメントのグラウトホールを止水するグラウトホール止水方法であって、
セグメントのグラウトホールにバルブおよびプリペンダーを取り付けるバルブ取付工程と、
ロッドの先端に取り付けた前記止水プラグを前記プリペンダーおよび前記バルブを通じて前記グラウトホールに挿入するプラグ挿入工程と、
前記止水部材を拡張させるプラグ拡張工程と、を備え、
前記プラグ挿入工程において、前記係止部が前記グラウトホールの雌ネジのネジ山に係止され、
前記プラグ拡張工程において、ロッドを利用して前記移動機構を操作して、前記止水部材に前後からの圧力を作用させて前記止水部材を拡張させることで、前記グラウトホールを遮蔽することを特徴とする、グラウトホール止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントのグラウトホールに用いる止水プラグ、グラウトホール止水装置およびグラウトホール止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法では、複数のセグメントを組み合わせることにより形成されたセグメントリングを掘進方向に連設することにより覆工を形成する。シールド掘削機による地山の切削は、シールド掘削機およびセグメントリングよりも大きな断面となるように、余掘り部分を含めた形で行う。余掘りにより形成される覆工と地山との間の隙間(セグメントの背面)には裏込め材を充填して、地山の崩落などを抑制する必要がある。セグメント背面への裏込め材の注入は、セグメントに形成されたグラウトホールから行う。
また、トンネル周囲の地盤改良や土質調査を行う場合において、グラウトホールを利用すれば、トンネルの覆工に新たな貫通孔を形成する必要がない。
グラウトホールから地盤改良や土質調査を実施した場合には、地盤改良や土質調査に使用した装具等を撤去して、グラウトホールにキャップを設置するまでの間、グラウトホールの止水を行う必要がある。グラウトホールの止水には、グラウトホールに挿入した止水プラグを利用する場合がある。例えば、特許文献1の止水プラグは、ゴム製の中空袋を備えており、この中空袋内に圧入した圧縮空気で拡張し、グラウトホールの内面に密着することで止水を行う。
ところが、上記止水プラグは、グラウトホールの内面との摩擦力のみで固定されているため、高水圧下においては、水圧によってグラウトホールからトンネル内空側に押し戻されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-82864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高水圧下においても水圧によって移動することなく、止水性を維持することを可能とした止水プラグ、グラウトホール止水装置およびグラウトホール止水方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の止水プラグは、セグメントのグラウトホール内に設置されるものであって、前後(グラウトホールの軸方向)から作用した圧力により側方(グラウトホールの径方向)に拡張する止水部材と、前記止水部材の前面に添設された押圧部材と、前記止水部材の後面に添設された押え部材と、前記押圧部材を前記押え部材に対して進退させる移動機構とを備えている。前記押え部材に、前記グラウトホールの雌ネジのネジ山に係止可能な係止部を形成してもよい。また、前記グラウトホールの雌ネジのネジ山に係止可能な係止部が形成された係止部材を前記押え部材に添設してもよい。
また、本発明のグラウトホール止水装置は、セグメントのグラウトホールに取り付けられたバルブと、前記バルブに接続されたプリペンダーと、前記プリペンダーおよび前記バルブに挿通されたロッドと、前記ロッドの先端に前記移動機構が取り付けられた前記止水プラグとを備えている。
さらに、本発明のグラウトホール止水方法は、止水プラグを利用してセグメントのグラウトホールを止水するものであって、セグメントのグラウトホールにバルブおよびプリペンダーを取り付けるバルブ取付工程と、ロッドの先端に取り付けた前記止水プラグを前記プリペンダーおよびバルブを通じて前記グラウトホールに挿入するプラグ挿入工程と、前記止水部材を拡張させるプラグ拡張工程とを備えている。前記プラグ挿入工程では前記係止部を前記グラウトホールのネジ山に係止させる。前記プラグ拡張工程では、ロッドを利用して前記移動機構を操作して、前記止水部材に前後からの圧力を作用させて前記止水部材を拡張させることで、前記グラウトホールを遮蔽する。
【0006】
かかる止水プラグ、グラウトホール止水装置およびグラウトホール止水方法によれば、止水部材が拡径することにより、グラウトホールの内周面に密着し、高い止水性を確保できる。また、係止部がグラウトホールのネジ山(螺旋溝)に係止されるため、高水圧下においても、止水プラグが押し戻される(グラウトホールから抜け出す)ことがない。
なお、前記移動機構が、先端が前記押圧部材に固定されたボルトと、前記押え部材の後面において前記ボルトに螺合されたナットとを備えていれば、ナットを回転させることにより、止水部材に押圧力を作用させて、止水部材を拡径させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の止水プラグ、グラウトホール止水装置およびグラウトホール止水方法によれば、高水圧下においても止水性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】シールドトンネル内からの土質調査状況の概要を示す断面図である。
図2】グラウトホールを示す図であって、(a)は断面図、(b)は(a)のA矢視図である。
図3】逆止弁回収装置を示す断面図である。
図4】逆止弁撤去治具を示す図であって、(a)は側面図、(b)は断面図である。
図5】逆止弁撤去治具を示す図であって、(a)は図4のB矢視図、(b)は図4のC矢視図である。
図6】グラウトホール止水装置を示す断面図である。
図7】止水プラグを示す図であって、(a)は図6のD矢視図、(b)は図6のE矢視図、(c)は図6のF矢視図である。
図8】係止部を示す拡大断面図である。
図9】本実施形態の土質調査方法の手順を示すフローチャートである。
図10】キャップ撤去工程を示す断面図である。
図11】器具取付工程を示す断面図である。
図12】逆止弁撤去工程を示す断面図であって、(a)は逆止弁撤去治具を設置時、(b)は逆止弁の切削時、(c)は逆止弁の切削終了時、(d)は逆止弁撤去治具の回収時である。
図13】試料採取工程の作業状況を示す断面図である。
図14】仮止水工程を示す断面図であって、(a)は止水プラグ挿入時、(b)は止水プラグ拡張時である。
図15】器具撤去工程を示す断面図である。
図16】キャップ復旧工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、シールドトンネル内から試料(ボーリングコア)を採取して、トンネル周囲の土質を調査する方法について説明する。図1に土質調査状況の概要を示す。トンネルT周囲の地盤Gからの試料採取は、セグメント1のグラウトホール11を利用する。本実施形態のセグメント1は鋼製セグメントであり、グラウトホール11は、セグメント1のスキンプレートに立設されている。グラウトホール11を利用した土質調査は、グラウトホール11から地中にサンプラー2を圧入し、サンプラー2内に取り込まれた試料を採取することにより行う。本実施形態では、ドリリング装置21を利用して、サンプラー2を地盤Gに圧入する。
【0010】
図2にグラウトホール11を示す。図2(a)および(b)に示すように、グラウトホール11には、裏込め注入時の裏込め材の逆流を防止するための逆止弁12が設置されている。そのため、グラウトホール11を利用して土質調査を行う場合には、逆止弁12を撤去する必要がある。一方、逆止弁12は、グラウトが付着していることから、手作業による回収作業は困難である。また、土質調査後のグラウトホール11は、逆止弁12が撤去されているため、サンプラー2を撤去した後のグラウトホール11から土砂が流入することを防止するための止水を行う必要がある。本実施形態では、逆止弁回収装置3を利用してグラウトホール11に設置された逆止弁12を撤去(回収)し、グラウトホール止水装置4を利用して土質調査後の止水を行う。
【0011】
図3に逆止弁回収装置3を示す。
逆止弁回収装置3は、図3に示すように、セグメント1のグラウトホール11に取り付けられたバルブ5と、バルブ5に接続されたプリペンダー6と、プリペンダー6およびバルブ5に挿通されたロッド7と、ロッド7に回転力を付与する回転力付与手段(図示せず)と、ロッド7の先端に取り付けられた逆止弁撤去治具30とを備えている。
【0012】
バルブ5は、グラウトホール11の端部に固定された中空部材を有する。バルブ5の両端は、グラウトホール11の内径よりも大きな径の開口を有していて、逆止弁撤去治具30を挿通可能である。また、バルブ5の内部には、開閉部材(図示せず)が設けられており、ハンドル51を操作することにより、前記空間を開閉可能である。
プリペンダー6は、バルブ5の基端側の開口に接続された筒状部材である。プリペンダー6は、逆止弁撤去治具30およびロッド7を挿通可能な内径を有している。また、プリペンダー6には、ロッド7の外面とプリペンダー6の内面との隙間を遮蔽する止水手段61が設けられていて、逆止弁12の撤去後において、グラウトホール11からの土砂の流入や、土質調査時の処理水等の逆流などを抑制する。
ロッド7は、図示しない回転力付与手段(ドリリング装置等)から延設されている。ロッド7の先端には、逆止弁撤去治具30の接続部34と係合する連結部材71が固定されている。
【0013】
逆止弁撤去治具30は、セグメント1のグラウトホール11内に設置された逆止弁12を撤去するためのものである。図4および図5に逆止弁撤去治具30を示す。逆止弁撤去治具30は、図4(a)および(b)に示すように、本体部31と、複数の切削チップ32,32,…と、本体部31の内面に設けられた逆止弁保持部33と、本体部31の基端部に形成された接続部34とを備えている。
本体部31は、図3および図4(a)に示すように、グラウトホール11の内径よりも小さい外径を有した筒状部材であって、グラウトホール11に挿入可能である。本体部31の先端は開口している。本体部31の先端には、複数の切削チップ32,32,…が固定されている。また、本体部31の基端部には、回転力付与手段から延設されたロッド7と連結される接続部34が形成されている。本体部31の接続部34には、ロッド7の連結部材71を介して回転力付与手段の回転力が付与される。さらに、図4(b)に示すように、本体部31の内面には、逆止弁保持部33が設けられている。
【0014】
切削チップ32は、回転力付与手段により付与された回転力により本体部31が回転することで、逆止弁12の外縁部分を切削する。本実施形態の切削チップ32は、図4(b)および図5(a)に示すように、直方体状の金属部材である。複数の切削チップ32,32,…は、図5(a)に示すように、本体部31の先端において、周方向に間隔をあけて設けられている。各切削チップ32は、図4(a)に示すように、側面視で本体部31の中心軸に対して傾斜(例えば10°)している。また、切削チップ32は、図4(b)に示すように、本体部31の内面に対しても傾斜(例えば45°)している。さらに、切削チップ32は、図5(a)に示すように、正面視で中心軸を中心とした放射線に沿った向き(本体部31の径方向に沿った向き)で、本体部31に固定されている。
【0015】
逆止弁保持部33は、外縁部分が切削されて本体部31の内部に取り込まれた逆止弁12を本体部31から抜け出さないように保持する。図4(b)および図5(b)に示すように、本実施形態の逆止弁保持部33は、本体部31の軸方向に沿って複数の環状のブラシ33a,33bが並設されてなる。並設された複数の環状のブラシ33a,33bは、毛足の異なるものが交互に並設された状態となっている。
【0016】
接続部34は、本体部31の基端に固定されたナットである。図4(a)および(b)に示すように、本実施形態の本体部31は、有底であり、接続部34は、本体部31の底板35の外面(基端面)に固定されている。接続部34は、図3に示すように、ロッド7の先端に固定された連結部材71と係合し、ロッド7を介して伝達された回転力付与手段の回転力を本体部31に伝達する。本体部31は、接続部34を介して付与された回転力により回転し、切削チップ32により逆止弁12の外縁部分が切削される。
【0017】
図6および図7にグラウトホール止水装置4を示す。グラウトホール止水装置4は、図6に示すように、セグメント1のグラウトホール11に取り付けられたバルブ5と、バルブ5に接続されたプリペンダー6と、プリペンダー6およびバルブ5に挿通したロッド7と、ロッド7の先端に取り付けられた止水プラグ40とを備えている。
バルブ5,プリペンダー6およびロッド7には、逆止弁回収装置3と同じものを使用する。ロッド7の連結部材71は、止水プラグ40(移動機構44)に係合可能な部材に適宜変更するものとする。
【0018】
止水プラグ40は、図6に示すように、セグメント1のグラウトホール11内に設置されて、グラウトホール11の止水を行う。止水プラグ40は、前後からの圧力により側方に拡張(拡径)する止水部材41と、止水部材41の前面に添設された押圧部材42と、止水部材41の後面に添設された押え部材43と、押圧部材42を押え部材43に対して進退させる移動機構44とを備えている。
止水部材41は、図6および図7(b)に示すように、弾力性を有した円柱状部材からなり、中央に貫通孔41aが形成されている。本実施形態の止水部材41は、環状のゴム材により構成されている。止水部材41は、通常時はグラウトホール11の内径以下の外径を有していて、前後(グラウトホール11の軸方向)から圧力が作用することで側方(グラウトホール11の直径方向)に拡径する。なお、止水部材41は、中空の環状部材であってもよい。
【0019】
押圧部材42は、図6および図7(a)に示すように、止水部材41の前面に添設された正面視円形の板材(例えば、鋼板)である。押圧部材42は、グラウトホール11の内径よりも小さい外径を有している。押圧部材42は、止水部材41に押し付けられた状態で密着している。なお、押圧部材42は、必要に応じて止水部材41に固定してもよい。
押え部材43は、図6および図7(c)に示すように、止水部材41の後面に添設された板材(例えば鋼板)である。本実施形態の押え部材43は、4つの板片43a,43a,…が組み合わされた正面視十字状を呈しているが、押え部材43は円形であってもよい。押え部材43の中央には貫通孔が形成されていて、移動機構44(ボルト46)を挿通可能に構成されている。押え部材43の各板片43aの先端には、グラウトホール11の雌ネジ13のネジ山に係止可能な係止部45が形成されている。係止部45は、押え部材43の外縁(板片43aの先端)に一体形成された金属片である。図8に係止部45を示す。図8に示すように、係止部45は、断面弧状に湾曲しており、押え部材43の外縁から外側(グラウトホール11の内壁側)に向かって張り出しているとともに、後方(トンネル内空側)に向かって延出している。係止部45の先端は、グラウトホール11の雌ネジ13の谷部分に入り込むことで、雌ネジ13に係止される。これにより、グラウトホール11内に挿入された止水プラグ40の抜け出しが防止されている。押え部材43は、止水部材41に押し付けられた状態で密着している。押え部材43は、必要に応じて止水部材41に固定してもよい。
【0020】
移動機構44は、図6に示すように、押圧部材42に固定されたボルト46と、押え部材43の後面においてボルト46に螺合されたナット47とを備えている。
ボルト46は、いわゆる寸切りボルトからなり、一端が押圧部材42の内面(トンネル内空側の面)に固定(溶接)されていて、他端部がナット47に螺合されている。ボルト46は、止水部材41の貫通孔41aおよび押え部材43の貫通孔を貫通している。
ナット47は、図6に示すように、止水部材41および押え部材43を貫通したボルト46に螺合されている。ナット47は、ロッド7の先端に固定された連結部材71と係合し、ロッド7を介して伝達された回転力付与手段の回転力により回転する。ナット47の回転に伴ってボルト46が軸方向に移動することで、押圧部材42が押え部材43側に引き寄せられる。これにより、止水部材41に前後方向の押圧力が作用し、止水部材41が拡径してグラウトホール11の内面に当接し、グラウトホール11の止水が可能となる。
【0021】
以下、グラウトホール11を利用した土質調査方法について説明する。図9に土質調査方法の手順を示す。地盤改良方法は、図9に示すように、キャップ撤去工程S1と、器具取付工程S2と、逆止弁撤去工程S3と、試料採取工程S4、仮止水工程S5と、器具撤去工程S6と、キャップ復旧工程S7とを備えている。
キャップ撤去工程S1は、図10に示すように、グラウトホール11に取り付けられたキャップ14を撤去する工程である。キャップ14は、グラウトホール11の雌ネジ13に螺着されているため、回転させることで撤去できる。グラウトホール11内には、逆止弁12が取り付けられている。
【0022】
器具取付工程S2は、図11に示すように、グラウトホール11にバルブ5およびプリペンダー6を取り付ける工程である。バルブ5は、グラウトホール11の孔口を覆うように取り付けられた取付スリーブ52を介して、グラウトホール11に取り付ける。本実施形態の取付スリーブ52は、グラウトホール11に周設したくさびリング52aに、スリーブ本体52bを螺合することにより、グラウトホール11に固定されるように構成されている。プリペンダー6は、バルブ5のグラウトホール11と反対側の端部に取り付ける。
【0023】
逆止弁撤去工程S3は、グラウトホール11に設置された逆止弁12を撤去する工程である。逆止弁撤去工程S3は、図9に示すように、装置挿入工程S31と、切削工程S32と、装置回収工程S33とを備えている。逆止弁12は、逆止弁撤去治具30を利用して撤去する。図12に逆止弁撤去工程の作業状況を示す。
装置挿入工程S31は、図12(a)に示すように、逆止弁撤去治具30をグラウトホール11に挿入する工程である。逆止弁撤去治具30は、ロッド7(連結部材71)の先端に取り付けた状態で、プリペンダー6およびバルブ5を通じてグラウトホール11に挿入し(図3参照)、切削チップ32を逆止弁12に当接させる。
【0024】
切削工程S32は、図12(b)および(c)に示すように、逆止弁撤去治具30により逆止弁12を切削・撤去する工程である。切削工程S32では、切削チップ32を逆止弁12に当接させた状態で、ロッド7を回転させるとともに、ロッド7を押し込むことにより、逆止弁12を切削する。グラウトホール11内に設置された逆止弁12は、図12(a)に示すように、回転した逆止弁撤去治具30によりの外縁部分が切削される。逆止弁12の外縁部分を切削しながらロッド7を押し込むと、外縁部分が切削された逆止弁12の残りの部分が、図12(c)に示すように、本体部31内に取り込まれる。本体部31内に取り込まれた逆止弁12は、逆止弁保持部33によって保持された状態となる。
装置回収工程S33は、図12(d)に示すように、逆止弁撤去治具30を回収する工程である。逆止弁撤去治具30は、ロッド7(連結部材71)を引き出すことにより、グラウトホール11から回収する。このとき、本体部31に取り込まれた逆止弁12(切削片)は、ブラシ33a,33bに絡みついた状態で逆止弁保持部33によって保持されているため、逆止弁撤去治具30とともに回収される。
【0025】
試料採取工程S4は、グラウトホール11を利用して、地盤Gから試料を採取する工程である。図13に試料採取工程の作業状況を示す。試料の採取は、図13に示すように、グラウトホール11からサンプラー2を地盤に圧入し、サンプラー2の内部に試料を取り込む。サンプラー2には、ドリリング装置21が取り付けられている。サンプラー2を地盤に圧入する際には、ドリリング装置21によりサンプラー2を回転させる。所定の深さまでサンプラー2を圧入したら、サンプラー2を回収する。これによりサンプラー2内に取り込まれた試料を採取する。
試料採取により形成された掘削孔は、モルタルやグラウトなどを注入することにより遮蔽する。
【0026】
止水工程S5は、サンプラー2を回収した後のグラウトホール11を止水する工程である。逆止弁12が撤去されているため、グラウトホール11から地下水や土砂などが流入するおそれがある。そのため、本実施形態では、グラウトホール11を止水プラグ40により止水する。止水工程S5は、図9に示すように、プラグ挿入工程S51とプラグ拡張工程S52を備えている。図14に止水工程S5を示す。
プラグ挿入工程S51では、図14(a)に示すように、止水プラグ40をグラウトホール11に挿入する。止水プラグ40は、ロッド7の先端に取り付けた状態で、プリペンダー6およびバルブ5を通じてグラウトホール11に挿入する。止水プラグ40をグラウトホール11に挿入すると、係止部45がグラウトホール11の雌ネジ13のネジ山に係止される(図8参照)。これにより、止水プラグ40に地盤G側から力が作用した場合であっても、止水プラグ40がグラウトホール11から内空側に押し戻されることが防止される。
プラグ拡張工程S52では、図14(b)に示すように、止水プラグ40の止水部材41を拡張させて、グラウトホール11の止水を行う(グラウトホール11を遮蔽する)。止水部材41の拡張は、ロッド7を利用して、ナット47を回転させることで、ボルト46を軸方向に移動させ、押圧部材42を押え部材43側に移動させる。こうすることで、止水部材41に前後からの圧力が作用し、止水部材41が拡張する。このとき、押圧部材42および押え部材43は、止水部材41との間の摩擦力により、ナット47の回転に伴って回転することが抑制されている。
【0027】
器具撤去工程S6は、グラウトホール11からバルブ5、プリペンダー6およびロッド7を撤去する工程である。図15の器具撤去工程を示す。グラウトホール11からバルブ5、プリペンダー6およびロッド7を撤去すると、図15に示すように、止水プラグ40がグラウトホール11内に残置された状態となる。グラウトホール11は、止水プラグ40により遮蔽されているため、グラウトホール11から土砂や地下水などの流入が抑制されている。
キャップ復旧工程S7は、グラウトホール11にキャップ14を取り付ける工程である。図16にキャップ復旧工程S7示す。キャップ14は、図16に示すように、グラウトホール11の雌ネジ13に螺合することによりグラウトホール11に固定する。
【0028】
以上のとおり、本実施形態によれば、逆止弁撤去治具30を使用して逆止弁12の周縁を切削し、切削された逆止弁12を本体部31に取り込んで回収するため、逆止弁12や逆止弁12の切削片がグラウトホール11内や地中に残置されることない。そのため、逆止弁12を撤去した後のグラウトホール11を利用した土質調査において、逆止弁12が調査の妨げになることを防止できる。
また、逆止弁12は、切削チップ32によって周縁を切削して回収するため、逆止弁12に固着した裏込め材(グラウト等)によって逆止弁12が回転不能になっている場合であっても、逆止弁12を回収できる。
【0029】
逆止弁撤去治具30は、本体部31内に取り込まれた逆止弁12が抜け出すことがないように保持する機能(逆止弁保持部33)を有しているため、逆止弁12が地中に残置されることが防止されている。
また、逆止弁保持部33は、毛足の異なるブラシ33a,33bを交互に並設することにより構成されているため、逆止弁12を本体部31内に取り込みやすく、かつ、逆止弁12を抜け出し難い状態で保持することができる。また、毛足の異なるブラシ33a,33bにより逆止弁保持部33が構成されているので、切削途中で逆止弁12に割れや欠けが生じて発生した様々な大きさの切削片を回収することも可能である。
【0030】
また、切削チップ32は、直方体状の超硬チップを本体部31に対して傾斜させるとともに、正面視で本体部31の中心軸を中心とした放射線に沿った向きで本体部31に固定されているため、切削チップ32の角部が逆止弁12に食い込み、効率的に逆止弁12を切削できる。また、切削チップ32が本体部31の内面に対して傾斜しているため、縁部分が切削された逆止弁12が本体部31の内部に誘導されやすい。
また、切削チップ32が間隔をあけて配設されているため、逆止弁12が本体部31内に誘導されやすい。
【0031】
また、止水プラグ40により土質調査後のグラウトホール11を止水するため、バルブ5を取り外した後も、グラウトホール11から地下水や土砂などが流入することはなく、キャップ14を復旧しやすい。
止水プラグ40は、止水部材41が拡径することにより、グラウトホール11の内周面に密着し、高い止水性を確保できる。
また、係止部45がグラウトホール11のネジ山(螺旋溝)に係止されるため、高水圧下においても、止水プラグ40が押し戻される(グラウトホール11から抜け出す)ことがない。
さらに、移動機構44は、先端が押圧部材42に固定されたボルト46と、押え部材43の後面においてボルト46に螺合されたナット47とにより構成されているため、ナット47を回転させることにより、押圧部材42を引き寄せて止水部材41に押圧力を作用させて、止水部材41を拡径させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、グラウトホール11を利用した土質調査について説明したが、本実施形態のグラウトホール止水装置4の用途は、土質調査に限定されるものではなく、例えば、グラウトホール11を利用した地盤改良に使用してもよい。
また、止水プラグ40は、トンネル坑内から地盤に向けて補助工法を行った際の削孔の止水に使用してもよい。
止水部材41は、密実であってもよいし、中空であってもよい。
前記実施形態では、押え部材43に係止部45が形成されている場合について説明したが、係止部45は必ずしも押え部材43に形成されている必要はない。例えば、押え部材43とは別に、グラウトホール11の雌ネジ13のネジ山に係止可能な係止部45が形成された係止部材を、押え部材43の前面または後面に添設してもよい。
移動機構44の構成は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。例えば、ナット47を回転させた際に、押え部材43の回転を抑制する機構を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 セグメント
11 グラウトホール
12 逆止弁
2 サンプラー
3 逆止弁回収装置
30 逆止弁撤去治具
31 本体部
32 切削チップ
33 逆止弁保持部
34 接続部
4 グラウトホール止水装置
40 止水プラグ
41 止水部材
42 押圧部材
43 押え部材
44 移動機構
45 係止部
5 バルブ
51 ハンドル
6 プリペンダー
7 ロッド
71 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16