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特開2023-169727路面標示の施工方法およびマスキングシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169727
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】路面標示の施工方法およびマスキングシート
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/20 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
E01C23/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081020
(22)【出願日】2022-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】591260513
【氏名又は名称】七王工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】金泥 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】杉原 正俊
(72)【発明者】
【氏名】増田 智司
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA28
2D053AB09
2D053AD01
2D053AD03
2D053EA01
2D053EA14
2D053EA17
(57)【要約】
【課題】減速路面標示などの路面標示を簡便に施工できる路面標示の施工方法を提供する。
【解決手段】マスキングシート1を用いて路面標示の非塗装領域をマスキングするマスキング工程、前記マスキング工程でマスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程を経て路面標示を施工する。前記マスキングシートはアスファルトを含んでいてもよい。前記塗料の温度は100℃以上であってもよい。前記マスキング工程において、前記マスキングシート1を粘着テープ2で路面に固定してもよい。前記マスキング工程において、路面標示を形成する領域に対して隙間をあけて前記マスキングシート1を載置し、前記粘着テープ2で前記隙間をマスキングするとともに、前記マスキングシート1を路面に固定してもよい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングするマスキング工程、前記マスキング工程でマスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程を含む路面標示の施工方法。
【請求項2】
前記マスキングシートがアスファルトを含む請求項1記載の施工方法。
【請求項3】
前記塗料の温度が100℃以上である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項4】
前記塗料が溶融型塗料である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項5】
前記マスキングシートが、アスファルトを含む繊維構造体である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項6】
前記路面表示が、湾曲部および/または非直角部を有する請求項1または2記載の施工方法。
【請求項7】
前記路面標示が車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺を有している請求項1または2記載の施工方法。
【請求項8】
前記路面標示が減速路面標示である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項9】
前記減速路面標示が、複数のドット部が車の流れ方向に沿って所定の間隔に並列した破線状であり、前記ドット部における車の流れ方向の上流端および下流端が、車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺である請求項8記載の施工方法。
【請求項10】
前記マスキング工程において、前記マスキングシートを粘着テープで路面に固定する請求項1または2記載の施工方法。
【請求項11】
前記マスキング工程において、路面標示の塗装領域に対して隙間を設けて前記マスキングシートを載置し、前記粘着テープで前記隙間をマスキングするとともに、前記マスキングシートを路面に固定する請求項10記載の施工方法。
【請求項12】
前記塗布工程において、スリット式開口部を有するフローコーター式施工機で前記塗料を塗布する請求項1または2記載の施工方法。
【請求項13】
車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺に対応するケガキ線を引くためのケガキ工程を含まない請求項7記載の施工方法。
【請求項14】
マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングするマスキング工程、前記マスキング工程でマスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程を含む路面標示の施工方法に用いられるマスキングシート。
【請求項15】
前記マスキングシートがアスファルトを含む請求項14記載のマスキングシート。
【請求項16】
前記マスキングシートの平面形状が、直角二等辺三角形状の本体部と、前記本体部の斜辺から突出し、前記斜辺と路面標示の輪郭との間に隙間を形成するための凸部とを有する形状である請求項14または15記載のマスキングシート。
【請求項17】
前記凸部が、斜辺の一方の端部から突出する直角三角形状の第1の凸部と、斜辺の他方の端部から突出する平行四辺形状の第2の凸部とで構成されている請求項16記載のマスキングシート。
【請求項18】
ケガキ線を引いた路面に対して位置決めするための切欠部が形成されている請求項16記載のマスキングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速路面標示などの路面標示を施工する方法およびこの方法に用いるマスキングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が通行する舗装された道路の路面には、交通の安全と円滑を促進するために、白色や黄色、青色などの色彩を有する路面標示が描かれている。路面標示のうち、減速を促す路面標示(減速路面標示)は、減速マークまたは減速レーンマークとも称されるが、破線型とマーク型とに大別でき、マーク型の減速路面標示は、下り勾配やカーブ進入時における減速効果を狙って、坂やカーブの路面に施工されることが多いのに対して、破線型の減速路面標示は、幅員(道幅)を狭く見せることにより減速効果を期待され、坂やカーブに加えて、交差点などの追突事故の多い区間で施工されることが多い。
【0003】
減速路面標示において、破線型の減速マークは、ドットライン(矢羽根型路面標示)とも称されるが、ドットラインの施工例について、図1を用いて説明する。
【0004】
図1は、ドットラインが施工された2車線の道路の一例である。図1において、一方の車線11と他方の車線12とからなる2車線の道路の路面には、道路の中央で車の流れ方向(車進行方向)に破線状に延びる中央線(センターライン)17と、道路の両側部で車の流れ方向に延び、かつ路側帯と車線とを区画するための一対の白線18,19とが施工されている。さらに、図1の道路では、一方の車線11の路面には、車線11の両側部で車の流れ方向に延びる一対のドットライン13,14が施工され、他方の車線12の路面には、車線12の両側部で車の流れ方向に延びる一対のドットライン15,16が施工されている。
【0005】
詳しくは、一方の車線11では、ドットライン13は、白線18側の側部において、白線18と間隔をおいて、白線18に沿って破線状に形成されており、このドットライン13と対をなすドットライン14は、中央線17側の側部において、中央線17と間隔をおいて、中央線17に沿って破線状に形成されている。ドットライン13,14の破線を構成する各ドット13a,14aの形状はいずれも平行四辺形であり、各ドット13a,14aはそれぞれ等間隔で破線状に配列されている。特に、減速路面標示では、ドット13aとドット14aとは、それぞれの平行四辺形の鋭角が車進行方向側において対向する向きで、前記進行方向の車線軸に対して対称に配列されている。ドット13aおよびドット14aが、このような向きで対称に配列されることにより、一対のドットライン13,14は、車線11を車で走行するドライバーに対して、車の進行方向に向かって車線を狭く見せる印象を与えることができる。
【0006】
また、他方の車線12の両側部においても、白線19および中央線17に沿って、それぞれ、ドット15aが配列したドットライン15と、このドットライン15と対をなすドット16aが配列したドットライン16とが形成されており、ドットライン15およびドットライン16は、それぞれドットライン13および14に対応しており、同形状に形成されている。すなわち、他方の車線12でも、車の進行方向に向かって車線を狭く見せるドットライン15,16が形成されている。
【0007】
前記ドットライン13は、路面にドットラインの塗装領域を特定するためのケガキ線(けがき線)を引く第1のケガキ工程、路面上の汚れを除去する汚れ除去工程、ドットラインの塗装領域にプライマーを塗布するプライマー処理工程、合板を用いて残りのケガキ線を引く第2のケガキ工程、マスキング材を用いてドットラインの非塗装領域をマスキングするマスキング工程、マスキングした路面にドットラインを形成するための塗料を塗布する塗布工程、塗料が固化する前に塗料が塗布された前記マスキング材を除去するマスキング材除去工程、塗料を固化してドットラインを完成させる固化工程を経て得られる。このような従来のドットラインの施工方法について、図2を用いて説明する。
【0008】
第1のケガキ工程では、ドットライン13の塗装領域を特定するためのケガキ(下書き)を路面上に行う。詳しくは、図2(a)に示すように、ドット部13aの車の流れ方向の輪郭のうち、中央線側の輪郭に相当するケガキ線21(白線18に平行なケガキ線)を路面上に引くとともに、ドット部13aを施工する間隔に合わせて、白線18と直交する方向にケガキ線22を引く。
【0009】
汚れ除去工程では、路面に大きな汚れがある場合は、ブロアーで埃などを除去する。
【0010】
プライマー処理工程では、必要に応じて、ドットライン13の塗装領域にプライマーを塗布する。
【0011】
第2のケガキ工程では、各ドット部13aの車の流れ方向の輪郭は、白線18に対して45°の角度で交差する角度で形成されているため、図2(b)に示すように、平面形状が直角二等辺三角形である合板23を用いて、路面上にケガキを行う。詳しくは、合板23の平面形状は、直角二等辺三角形であるため、合板23の頂角を形成する一辺をケガキ線21またはケガキ線22に合わせることにより、ドット13aの車の流れ方向の輪郭(流れ方向と交差する輪郭)に相当するケガキ線24を引くことができる。なお、図2では示されていないが、ケガキ線24を引いた後には、合板23は取り除かれる。
【0012】
マスキング工程では、図2(c)に示すように、平行四辺形の平面形状を有するドット部13aを形成するために、ドットラインを形成するための塗料が塗装されない領域(非塗装部)に対して、塗装におけるマスキング材としてクラフトテープ25を貼付する。詳しくは、まず、ケガキ線24に沿って、クラフトテープ25(約400mm長×75mm幅程度)を貼付した後、塗料が非塗装部に浸入する隙間が生じないように端部同士を重ね合わせて、さらにクラフトテープを順次貼付し、上下各合計6枚のクラフトテープ25を貼付する。隙間が生じないように端部同士を重ねて貼付された6枚のクラフトテープ25は、ドットラインの塗装におけるマスキング材として機能する。この作業は、中腰で行われ、クラフトテープの隙間から塗料が路面に浸み込むことを防止するために、端部同士を厳密に合わせて何度も貼付する必要があり、作業者にとって煩雑な作業であるとともに、重労働である。
【0013】
塗布工程では、図2(d)に示すように、路面に貼付されたクラフトテープ25の上から、ドット部13aに相当する領域に、塗装機を用いて溶融型塗料を加熱して塗布し、ドット前駆体13bを路面上に形成する。溶融型塗料の温度は、土木工事共通仕様書(非特許文献1)において、常に180~220℃の温度で塗料を塗布できるように溶解層を管理する必要があると記載されている。
【0014】
マスキング材除去工程で、塗料が固化する前に、塗料が塗布された状態のクラフトテープ25を回収した後、固化工程で、路面上に残存した塗料を固化させると、図2(e)に示すように、路面にドット部13aが形成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】土木工事共通仕様書、国土交通省四国地方整備局、令和3年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
路面標示の施工は、野外で行われるため、天候に左右される上に、路面標示を形成するための塗料は高温で塗布する必要があるため、過酷な作業環境である。しかも、このような路面標示の施工は、全ての作業が人力で行われるため、作業者への負担を軽減することが要求される。しかし、従来の路面標示の施工方法では、工程数が多く、作業に長時間や多大な労力を要するため、作業者への負担が大きいという課題があった。また、ドットラインを施工するためには道路を封鎖する必要があるため、通行止めの期間を短縮する観点からも施工性を改善する必要があった。さらに、従来の施工方法では、マスキング材がクラフトテープのみで形成されているため、耐熱性および防水性が低く、高温の塗料や水分の影響を受け易く、道路状況や天候に左右されるため、マスキング材の取り扱い性も困難であり、施工性が低かった。
【0017】
従って、本発明の目的は、減速路面標示などの路面標示を簡便に施工できる路面標示の施工方法およびこの方法に用いるマスキングシートを提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、高温に晒されたり、水分の存在下であっても、取り扱い性に優れ、路面標示の施工性を向上できるマスキングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングした後、マスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布することにより、減速路面標示などの路面標示を簡便に施工できることを見出し、本発明を完成した。
【0020】
本開示の態様[1]としての路面標示の施工方法は、マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングするマスキング工程、前記マスキング工程でマスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程を含む。
【0021】
本開示の態様[2]は、前記態様[1]において、前記マスキングシートが、アスファルトを含む態様である。
【0022】
本開示の態様[3]は、前記態様[1]または[2]において、前記塗料の温度が100℃以上である態様である。
【0023】
本開示の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、前記塗料が溶融型塗料である態様である。
【0024】
本開示の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様において、前記マスキングシートが、アスファルトを含む繊維構造体である態様である。
【0025】
本開示の態様[6]は、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様において、前記路面表示が、湾曲部および/または非直角部を有する路面標示である態様である。
【0026】
本開示の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様において、前記路面標示が車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺を有している態様である。
【0027】
本開示の態様[8]は、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様において、前記路面標示が減速路面標示である態様である。
【0028】
本開示の態様[9]は、前記態様[8]において、前記減速路面標示が、複数のドット部が車の流れ方向に沿って所定の間隔に並列した破線状(または点線状)であり、前記ドット部における車の流れ方向の上流端および下流端は、車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺である態様である。
【0029】
本開示の態様[10]は、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様のマスキング工程において、前記マスキングシートを粘着テープで路面に固定する態様である。
【0030】
本開示の態様[11]は、前記態様[10]のマスキング工程において、路面標示の塗装領域に対して隙間を設けて前記マスキングシートを載置し、前記粘着テープで前記隙間をマスキングするとともに、前記マスキングシートを路面に固定する態様である。
【0031】
本開示の態様[12]は、前記態様[1]~[11]のいずれかの態様の塗布工程において、スリット式開口部を有するフローコーター式施工機で前記塗料を塗布する態様である。
【0032】
本開示の態様[13]は、前記態様[7]~[12]のいずれかの態様において、車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺に対応するケガキ線を引くためのケガキ工程を含まない態様である。
【0033】
本開示には、態様[14]として、マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングするマスキング工程、前記マスキング工程でマスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程を含む路面標示の施工方法に用いられるマスキングシートも含まれる。
【0034】
本開示の態様[15]は、前記態様[14]において、前記マスキングシートが、アスファルトを含む態様である。
【0035】
本開示の態様[16]は、前記態様[14]または[15]において、前記マスキングシートの平面形状が、直角二等辺三角形状の本体部と、前記本体部の斜辺から突出し、前記斜辺と路面標示の輪郭との間に隙間を形成するための凸部とを有する形状である態様である。
【0036】
本開示の態様[17]は、前記態様[16]において、前記凸部が、斜辺の一方の端部から突出する直角三角形状の第1の凸部と、斜辺の他方の端部から突出する平行四辺形状の第2の凸部とで構成されている態様である。
【0037】
本開示の態様[18]は、前記態様[16]において、前記マスキングシートが、ケガキ線を引いた路面に対して位置決めするための切欠部が形成されている態様である。
【発明の効果】
【0038】
本開示では、マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングし、路面標示を形成するための塗料を路面に塗布すると、減速路面標示などの路面標示を簡便に施工できる。しかも、マスキングシートがアスファルトを含むと、耐熱性および防水性に優れるため、取り扱い性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、ドットラインが施工された2車線の道路の一例を示す概略平面図である。
図2図2は、従来のドットラインの施工方法を説明するための工程図である。
図3図3は、本開示のマスキングシートの一例を示す概略平面図である。
図4図4は、本開示の施工方法のマスキング工程において、図3のマスキングシートを用いてドットラインの非塗装領域をマスキングした状態を示す概略平面図である。
図5図5は、本開示の施工方法の塗布工程において、塗装機を用いて路面標示を形成するための塗料を路面に塗布している状態を示す概略斜視図である。
図6図6は、実施例1で用いたマスキングシートを示す平面図である。
図7図7は、マスキングシートの着火時間の測定方法を説明するための概略図である。
図8図8は、実施例2で用いたマスキングシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[路面標示の施工方法]
本開示の路面標示の施工方法は、マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングし、路面標示を形成するための塗料を路面に塗布する塗布工程を含むことを特徴とする。前記マスキングシートを用いて路面標示を施工すると、従来の施工方法に比べて、ケガキ線を引く作業やクラフトテープなどのマスキング材を固定する作業が大きく簡略化され、作業者の負担が軽減される。
【0041】
以下、このマスキングシートを用いた本開示の施工方法について、図面を参照して説明する。
【0042】
本開示の路面標示の施工方法は、例えば、路面に路面標示の塗装領域(路面標示を形成する領域)を特定するためのケガキ線を引くケガキ工程、路面上の汚れを除去する汚れ除去工程、路面標示の塗装領域にプライマーを塗布するプライマー処理工程、マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域(非塗装領域全体の一部の領域)をマスキングするマスキング工程、マスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程、塗料が固化する前に塗料が塗布された前記マスキングシートを除去するマスキングシート除去工程、塗料を固化して路面標示を完成させる固化工程を含む施工方法であってもよい。
【0043】
ケガキ工程、汚れ除去工程、プライマー処理工程および固化工程は、従来の施工方法における第1のケガキ工程、汚れ除去工程、プライマー処理工程および固化工程を利用できる。そのため、従来の施工方法と同様に、汚れ除去工程およびプライマー処理工程は、必要に応じて施工される任意の工程であり、路面の状況に応じて省略してもよい。
【0044】
本開示の施工方法では、従来の施工方法と異なり、合板を用いた第2のケガキ工程が必須の工程ではなく、マスキングシートの形状を第2のケガキ線に対応した形状に形成することにより、第2のケガキ工程を省略できる。従来の施工方法では、例えば、路面標示がドットライン(波線型の減速路面標示)である場合、白線および中央線(車の流れ方向)に対して平行するケガキ線と車の流れ方向に直交するケガキ線とを引く第1のケガキ工程に加えて、第2のケガキ線を引くための補助具または定規として、平面形状が直角二等辺三角形である合板を用いて、白線および中央線に対して斜めに交差する方向に延びる第2のケガキ線を引く第2のケガキ工程が必須の工程であった。これに対して、本開示の施工方法において、第2のケガキ線に対応した形状を有するマスキングシートをマスキング材として用いることにより、第2のケガキ工程を経ずに、マスキング工程に進むこともできる。
【0045】
(マスキング工程)
マスキング工程では、マスキングシートによって路面標示の非塗装領域をマスキングする(路面標示の輪郭の外側にマスキングシートを載置する)ことにより、次工程の塗布工程で前記マスキングシートの上から塗料を塗布することにより容易に路面上に路面標示の形状を形成できる。
【0046】
路面標示が破線型の減速マーク(平行四辺形状のドット部を有するドットライン)である場合、前記減速マークの施工方法におけるマスキング工程で用いるマスキングシートの一例を図3に示す。
【0047】
図3に示すように、マスキングシート1は、略直角三角形状の本体部1aと、この本体部1aの斜辺の両端部から、それぞれ突出する第1の凸部1bおよび第2の凸部1cとで構成されている。
【0048】
詳しくは、前記本体部1aは、直角三角形の直角部の頂点に相当する頂点1a-1から頂点1a-2まで延びる第1の辺(例えば、長さ400~440mm)と、前記頂点1a-1から、この第1の辺と直角に交差する方向に頂点1a-3まで延びる第2の辺(例えば、長さ400~440mm)とを有する略直角三角形状である。
【0049】
前記第1の凸部1bは、本体部1aの斜辺の第1の辺側の端部から、斜辺を共有して直角三角形状に突出しており、前記第1の凸部1bの頂点1b-1は、直角三角形の直角部の頂点に相当する。前記第1の凸部1bは、第1の頂点1b-1から本体部1aの第1の辺に沿って延び、本体部1aの斜辺に至る内側壁1b-2(例えば、長さ30~70mm)と、第1の頂点1b-1から第2の辺に沿って延び、本体部1aの頂点1a-2に至る外側壁1b-3(例えば、長さ50~90mm)とを備えている。
【0050】
前記第2の凸部1cは、本体部1aの斜辺の第2の辺側の端部から、斜辺を共有して平行四辺形状に突出している。前記第2の凸部1cは、前記本体部1aの頂点1a-3から本体部1aの第1の辺に沿って延び、鈍角部の頂点1c-1に至る外側壁1c-3(例えば、長さ50~90mm)と、前記頂点1c-1から前記本体部1aの斜辺に沿って延び、鋭角部の頂点1c-2に至る上部壁1c-4と、前記頂点1c-2から前記本体部1aの第1の辺に沿って延び、前記本体部1aの斜辺に至る内側壁1c-5とを備えている。
【0051】
このような形状を有するマスキングシート1には、路面に載置するマスキングシート1の位置決めを容易化して施工性を向上させるために、切欠部を形成してもよく、この例では5箇所に切欠部1d,1e,1f,1g,1hが形成されている。
【0052】
すなわち、第1の凸部1bの外側壁には、前記頂点1a-2の近傍に第1の切欠部1dが形成されている。詳しくは、前記第1の切欠部1dは、前記本体部1aの頂点1a-2から10~30mm程度の位置において、5~20mm程度の深さでV字状またはU字状に形成されている。
【0053】
前記本体部1aの第1辺には、前記第2の凸部1cの頂点1c-2と対向する部位に第2の切欠部1eが形成されている。すなわち、第2の切欠部1eは、前記本体部1aの頂点1a-1から100~140mm程度の位置において、5~20mm程度の深さでV字状またはU字状に形成されている。
【0054】
前記本体部1aの第2辺には、前記切欠部1dと対向する位置に第3の切欠部1fが形成され、前記第1の凸部1bの頂点1b-1と対向する位置に第4の切欠部1gが形成され、前記第2の凸部1cの頂点1c-2と対向する位置に第5の切欠部1hが形成されている。すなわち、第3の切欠部1fおよび第4の切欠部1gは、それぞれ前記頂点1a-1から10~30mm程度および50~90mm程度の位置において、5~20mm程度の深さでV字状またはU字状に形成され、第5の切欠部1hは、前記頂点1a-3から30~70mm程度の位置において、5~20mm程度の深さでV字状またはU字状に形成されている。
【0055】
さらに、このマスキングシート1において、略直角三角形状本体部1aの斜辺と第1の辺または第2の辺との角度は45°であり、頂点1a-3と切欠部1dと切欠部1fとを結ぶ線が直角二等辺三角形となる。すなわち、マスキングシート1の本体部1aは、厳密には、前記直角二等辺三角形において、切欠部1dと切欠部1fとを結ぶ辺から10~30mm程度幅の帯状部(長方形)が第1の辺側に延出した台形状である。
【0056】
マスキングシート1は、アスファルトを含んでいてもよく、この例ではアスファルト含浸紙である。マスキングシート1はアスファルトを含むため、耐熱性および防水性に優れており、取り扱い性を向上できる。
【0057】
マスキング工程では、このマスキングシート1を用いてドットラインの非塗装領域がマスキングされる。このマスキング工程では、ケガキ工程でケガキした路面において、ドットラインを構成するドット部の非塗装領域をマスキングシート1および粘着テープ2でマスキングした状態を図4に示す。
【0058】
図4では、両側に白線3aと白線3bとがそれぞれ施工された道路において、複数のドット部が破線状に配列したドットラインを両白線の内側にそれぞれ施工するために、車の流れ方向に平行に引かれたケガキ線および車の流れ方向に垂直に引かれたケガキ線に基づいて、前記マスキングシート1が載置され、粘着テープ2で前記マスキングシート1が固定されている。
【0059】
詳しくは、前記路面では、平行四辺形状であり、車の流れ方向の長さ(長辺の長さ)が1000mmであり、かつ幅(車の流れ方向に垂直な方向の高さ)が300mmの平行四辺形形状を有するドット部を施工するために、図4に示すように、白線3a,3bの内側(対向する車線側)輪郭から350mmの間隔をおいて、それぞれ車の流れ方向(白線3a,3b)に沿ったケガキ線4a,4bが引かれ、車の流れ方向に対して垂直な方向には、1000mmの間隔をおいて、ケガキ線5a,5bが引かれている。このようなケガキ線が引かれた路面に複数のマスキングシート1が載置されており、白線3aとケガキ線4aとケガキ線5aとケガキ線5bとで囲まれた第1の領域、白線3bとケガキ線4bとケガキ線5aとケガキ線5bとで囲まれた第2の領域のそれぞれの領域に対応した前記ドット部が施工される。
【0060】
第1の領域において、車の流れ方向の上流側では、ケガキ線5bを跨いだ状態でマスキングシート1が載置されている。詳しくは、図4に示されるように、前記マスキングシート1は、第1の凸部1bが下流側となる向きで切欠部1gおよび切欠部1eを、それぞれケガキ線4aおよびケガキ線5bに合わせることにより、第2の凸部1cの外側壁1c-3が白線3aの内側輪郭に一致した状態で載置されている。マスキングシート1をこのような配置で路面に載置することにより、第2の凸部1cの上部壁1c-4と、第1の凸部1bの頂点1b-1とを結ぶ直線が、車の流れ方向の上流側におけるドット部の輪郭(境界)と一致する。そのため、図4に示すように、この直線に沿って、粘着テープ2をマスキングシート1側に貼付することにより、前記直線(輪郭)とマスキングシート1との間の隙間(第1の凸部1bと第2の凸部1cとの間の領域)を、粘着テープ2によってマスキングできる。また、マスキングシート1の第1の凸部1b-1および第2の凸部1cを粘着テープ2で路面に固定することによって、マスキングシート1を路面に固定できる。さらに、マスキングシート1を路面に固定した状態で、粘着テープ2が路面と密着するため、次工程である塗布工程において、ドット部を形成するための塗料がマスキングシート1と路面との間に浸入するのを抑制できる。特に、粘着テープ2の幅を第1の凸部1b-1および第2の凸部1cの高さ(頂点1b-1、頂点1c-1または頂点1c-2から斜辺までの最短距離)よりも大きくすることにより、粘着テープ2とマスキングシート1とが重なり合って密着するため、粘着テープ2とマスキングシート1との隙間から前記塗料が侵入するのも有効に抑制できる。
【0061】
第1の領域において、車の流れ方向の下流側では、ケガキ線5aの下流側にマスキングシート1が載置されている。詳しくは、図4に示されるように、前記マスキングシート1は、ケガキ線5aの下流側において、第1の凸部1bが上流側となる向きで切欠部1dを白線3aの内側輪郭ケガキ線5aとの交点に合わせ、かつ切欠部1fを白線3aの内側輪郭に合わせることにより、第2の凸部1cの内側壁1c-5がケガキ線4aに一致し、かつ切欠部1hがケガキ線4aに一致した状態で載置されている。マスキングシート1をこのような配置で載置することにより、第1の凸部1bの頂点1b-1と、第2の凸部1cの上部壁1c-4とを結ぶ直線が、車の流れ方向の下流側におけるドット部の輪郭(境界)と一致する。そのため、図4に示すように、前記上流側と同様に、この直線に沿って、粘着テープ2をマスキングシート1側に貼付することにより、前記直線(輪郭)とマスキングシート1との間の隙間を、粘着テープ2によってマスキングできる。
【0062】
第2の領域では、図4に示されるように、車の流れ方向の上流側において、マスキングシート1は、第1の領域における上流側のマスキングシート1に対応する態様で載置されており、車線の中心軸に対して対向する両マスキングシート1は、前記中心軸に対して線対称に配置されている。一方、図4に示されるように、車の流れ方向の下流側においても、マスキングシート1は、第1の領域における下流側のマスキングシート1に対応する態様で載置されており、車線の中心軸に対して対向する両マスキングシート1は、前記中心軸に対して線対称に配置されている。
【0063】
この施工方法では、粘着テープ2が、車の流れ方向に対して斜めに交差する方向に延びるドット部の輪郭と一致するため、前記輪郭を特定するためのケガキ線を引くための第2のケガキ工程が不要となり、作業性を大きく向上できる。
【0064】
本開示の施工方法において、マスキング工程は、マスキングシートを用いて路面をマスキングする工程であればよく、路面標示の種類に応じて適宜選択でき、図4に示すように、路面に載置したマスキングシートを粘着テープで固定する工程に限定されない。
【0065】
マスキングシートを用いて路面をマスキングする方法は、マスキングシートを路面に固定することなく、路面に載置するだけの方法であってもよいが、風雨などの天候に左右されず、作業性に優れる上に、マスキングシートと路面との間への塗料の浸入を抑制できる点から、マスキングシートを路面に固定する方法が好ましい。
【0066】
マスキングシートを路面に固定する方法は、例えば、マスキングシート自体が粘着機能を有する場合などのように、粘着テープを用いることなく、マスキングシートを路面に固定する方法であってもよいが、簡便性などの点から、粘着テープでマスキングシートを路面に固定する方法が好ましい。
【0067】
(塗布工程)
塗布工程では、前記マスキング工程で、前述のようにマスキングシート1と粘着テープ2とを組み合わせて、ドット部の非塗装領域をマスキングした路面に、塗装機を用いて加熱した塗料を塗布する。塗装機は、加熱して溶融した塗料を貯留するための溶解槽と、溶解槽から送られる溶融塗料を路面に流下させて塗布するためのスリット状開口部とを備えており、フローコーター式施工機(スリッター式施工機)とも称される。塗料は、塗装機の溶解槽内で加熱溶融されており、180~220℃の温度で路面に塗布されるが、マスキングシート1はアスファルト含浸紙で形成されているため、耐熱性および不燃性に優れ、塗料の熱によって変形したり、燃焼するのを抑制できる。
【0068】
図5は、図4の第1の領域に対して、塗装機として、スリット開口部を有する手押し式のフローコーター式施工機(路面標示施工機)を用いてドットラインを形成するための塗料を路面に塗布している状態を示す概略斜視図である。図5に示すように、作業者6は、白線3a(車の流れ方向)に沿って、車の流れ方向とは逆行する方向に塗装機7を進行させて、スリット状開口部から前記塗料を塗布する。塗膜の幅は、ケガキ線4aから白線3a側に300mmの幅であり、厚みは1.5mm程度である。塗布は、マスキングシート1上において、ドット部を形成する領域(上流側の粘着テープ2の下流端とケガキ線4aとの交点)の手前から開始し、車の流れ方向に沿って塗装機を進行させて前記塗料を塗布し、ドット部を形成する領域が終了する箇所(下流側の粘着テープ2との境界)を通過した粘着テープ2またはマスキングシート1上で塗布を終了させる。下流側の粘着テープ2の上流端とケガキ線4aとの交点よりも車の流れ方向の下流側では、ケガキ線4aよりも内側(白線3b側)にマスキングシート1が70mm幅で延出(はみ出し)しているため、マスキングシート1上に塗布された塗料がマスキングシート1の積層されていない路面に流出するのを抑制できる。なお、図5では、塗装機の進行方向は、車の流れ方向に逆行する方向であるが、車の流れ方向であってもよい。第2の領域においても、第1の領域と同様の方法で塗料を塗布することができる。
【0069】
本開示の施工方法において、塗布工程は、塗料を路面に塗布して路面標示を形成する工程であればよく、路面標示の種類に応じて適宜選択でき、図5に示すように、手押し式のスリット状開口部を有するフローコーター式施工機を用いて、加熱溶融した塗料を塗布する工程に限定されない。
【0070】
塗料を路面に塗布する方法は、塗装機を用いることなく、刷毛などを用いて塗布する方法や、貼付式路面標示材を用いる方法でもよいが、生産性の点から、塗装機を用いる方法が好ましい。
【0071】
塗装機を用いて塗料を路面に塗布する方法としては、路面標示で慣用的に利用されている塗装機を用いることができ、車載式塗装機(車載式路面標示施工機)や噴射式施工機(スプレー式施工機)などであってもよいが、簡便性などの点から、スリット状開口部を有するフローコーター式施工機が好ましい。スリット状開口部を有するフローコーター式施工機は、手押し式塗装機であってもよい。
【0072】
塗料の温度(塗布温度)は、特に限定されず、塗料の種類に応じて適宜選択でき、常温であってもよいが、マスキングシートが耐熱性を有しており、加熱作業に適している点から、50℃以上であってもよく、100℃以上が好ましく、例えば120~250℃、好ましくは150~230℃、さらに好ましくは180~220℃である。
【0073】
塗料の種類は、特に限定されず、路面標示で利用されている慣用のトラフィックペイントを利用できる。トラフィックペイントとしては、例えば、常温型トラフィックペイント(ペイント式水性型、ペイント式溶剤型)、加熱型トラフィックペイント(ペイント式水性型、ペイント式溶剤型)、溶融型トラフィックペイントなどが挙げられる。トラフィックペイントは、JIS K5665で規定されている路面標示用塗料であってもよい。これらのうち、加熱型トラフィックペイント、溶融型トラフィックペイントが好ましく、路面標示を厚肉にでき、かつ作業性に優れる点から、溶融型トラフィックペイント(溶融型塗料)が特に好ましい。
【0074】
トラフィックペイントは、ホットメルト接着性樹脂を含んでいてもよく、ホットメルト接着性樹脂に加えて、ガラスビーズなどの無機フィラーを含んでいてもよい。
【0075】
無機フィラーとしては、例えば、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化チタンなどが挙げられる。これらのうち、ガラスビーズが好ましい。無機フィラーの平均粒径は、例えば0.05~5mm、好ましくは0.08~3mm、さらに好ましくは0.1~1mm程度である。
【0076】
ホットメルト接着性樹脂としては、例えば、エチレン-メタクリル酸共重合樹脂、ロジン変性樹脂、石油樹脂、エステル変性石油樹脂などが挙げられる。
【0077】
無機フィラーの割合は、ホットメルト接着性樹脂100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~30質量部程度である。
【0078】
特に好ましい塗布方法は、スリット状開口部を有するフローコーター式施工機を用いて溶融型塗料を路面に塗布する方法である。本開示のマスキングシートはアスファルトを含むため、塗料の温度に対する影響が少ない上に、前記マスキングシートを用いて複雑な形状の路面標示を容易に施工できる。
【0079】
(マスキングシート除去工程)
マスキングシート除去工程では、前記塗布工程において、粘着テープ2で固定したマスキングシート1を、塗料が塗布された状態で路面から、粘着テープ2とともに路面から剥離することにより、路面上に残存した塗料によってドット部の形態を形成できる。特に、加熱した状態で塗布された塗料が冷却されて固化する前に、マスキングシート1および粘着テープ2を路面から剥離することにより、作業の円滑性も向上する上に、図5に示すドット部8のように、マスクされた形態に忠実な形態を形成できる。
【0080】
(他の工程)
他の工程は、従来の施工方法と同様である。汚れ除去工程では、例えば、ブロアーなどの送風機を用いて埃を除去する方法などを利用できる。プライマー処理工程では、例えば、シリコーン系接着剤、オレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アスファルト系接着剤、ゴム系接着剤などの慣用の接着剤を、慣用の方法、例えば、ローラー塗装、機械塗装、スポンジ塗装する方法などを利用できる。マスキングシートの形状に応じて、必要であれば、第2のケガキ工程を設けて、車の流れ方向に対して斜めに交差する方向に延びるケガキ線などを引いてもよい。固化工程では、例えば、塗料が溶融型塗料である場合、塗料に散水することによって冷却してもよい。
【0081】
(路面標示)
本開示の施工方法において、路面標示の形状は、特に限定されないが、マスキングによる施工が効果的である点から、湾曲部および/または非直角部(直角でない屈曲部)を有する形状が好ましく、鋭角部や鈍角部などの非直角部を有する形状が特に好ましい。なかでも、作業性に優れるフローコーター式施工機や噴射式施工機などの塗装機を用いて施工する場合は、複雑な形状の路面標示を形成するのが困難であるため効果的である。さらに、スリット状開口部を有するフローコーター式施工機では、正方形状または長方形状の路面標示は、マスキング材を用いることなく、容易に施工できるため、車の流れ方向に対して斜めに交差する方向に延びる輪郭を有する形状、曲線状または湾曲状の輪郭を有する形状が好ましく、施工数が多く、作業が煩雑である点から、車の流れ方向に対して斜めに交差する方向に延びる輪郭を有する形状が特に好ましい。車の流れ方向に対して斜めに交差する方向に延びる輪郭を有する形状としては、例えば、平行四辺形状、菱形状、矢羽根形状、三角形状などが挙げられる。これらのうち、平行四辺形状、菱形状が好ましく、連続した作業によって作業効率を向上できる点から、平行四辺形状または菱形状が所定の間隔(特に、等間隔)で配列された破線型(または点線型)が特に好ましい。
【0082】
路面標示のうち、施工数が多く、作業性を向上できる点から、減速路面標示(減速マークまたは減速レーンマーク)が好ましい。減速路面標示は、マーク型路面標示であってもよいが、作業性を向上できる点から、破線型路面標示が好ましい。
【0083】
[マスキングシート]
本開示のマスキングシートの形状は、路面標示の形状に応じて選択でき、図3に示す形状に限定されない。そのため、路面標示が湾曲した輪郭を有する場合は、湾曲した輪郭を有するマスキングシートであってもよい。
【0084】
本開示のマスキングシートは、路面標示が破線型減速路面標示である場合、ケガキ線や白線または中央線を基準にマスキングシートを載置することにより、前記路面標示の車の流れ方向に対して斜めに交差する方向に延びる輪郭と一致する線を特定できる形状であれば特に限定されない。例えば、図3に示すように、路面標示を形成する領域(境界)に対して隙間を形成できるマスキングシートに限定されず、隙間を形成せずにマスキングシート単独で路面標示を形成する領域をマスキングできるマスキングシートであってもよい。このようなマスキングシートは、裏面に路面に固定するための粘着層を有していてもよい。
【0085】
マスキングシートが、路面標示を形成する領域(境界)に対して隙間を形成し、粘着テープで路面に固定するマスキングシートである場合であっても、マスキングシートの平面形状は、図3に示す形状に限定されず、略台形状などであってもよい。また、マスキングシートの平面形状が直角三角形状である場合であっても、直角二等辺三角形状に限定されず、路面標示の形状に応じた鋭角を有する直角非二等辺三角形状などであってもよい。さらに、マスキングシートは、図3および図4に示すような一枚のマスキングシートを用いる態様に限定されず、複数枚の形状の異なるマスキングシートを用いる態様であってもよく、特に、マスキングシートの形状が直角二等辺三角形でない場合は、形状の異なる複数枚のマスキングシートを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0086】
これらのうち、平行四辺形状または菱形状のドット部を有するドットラインの施工においては、1枚のマスキングシートによって施工できる点から、平面形状が直角三角形状であるマスキングシートが好ましく、作業性に優れる点から、平面形状が、直角二等辺三角形状の本体部と、前記本体部の斜辺から突出する凸部とを有する形状であるマスキングシート(凸部を有する直角三角形状マスキングシート)が特に好ましい。この凸部を有する直角三角形状マスキングシートでは、前記凸部によって、前記斜辺と路面標示の輪郭との間に隙間を形成でき、前記凸部と前記隙間とを利用して粘着テープで路面に固定することにより、高い作業性でマスキングできる。
【0087】
前記凸部を有する直角三角形状マスキングシートは、路面標示の輪郭に対応する線を特定できる凸部が形成されていればよく、図3に示す形状に限定されない。
【0088】
凸部の数は、斜辺において、1以上であればよいが、路面上で位置決めし易く、マスキング材と路面との間に塗料が浸入するのを抑制し易い点から、2以上が好ましく、2が特に好ましい。凸部の位置は、斜辺の中央部などであってもよいが、マスキング材と路面との間に塗料が浸入するのを抑制し易い点から、斜辺の端部が好ましく、斜辺の両端部が特に好ましい。
【0089】
凸部の形状は、路面標示の輪郭に対応する線を特定できる凸部が形成されていればよく、図3に示す形状に限定されない。凸部の組み合わせは、例えば、三角形状凸部同士の組み合わせや、平行四辺形状凸部同士の組み合わせであってもよく、正方形状凸部や長方形状凸部なども含めた2種以上の凸部の組み合わせであってもよい。減速路面標示のドット部が45°の鋭角を有する平行四辺形状または菱形状である場合、形状の異なる複数枚のマスキングシートを用いることなく、1枚のマスキングシートを用いて簡便に、路面標示を形成する領域をマスキングできる点から、図3に示すような直角三角形状の凸部と平行四辺形状の凸部との組み合わせが好ましい。
【0090】
凸部の大きさは、斜辺からの凸部の高さが粘着テープの幅よりも小さくなるように調整するのが好ましい。凸部の高さを粘着テープの幅よりも小さく調整することにより、凸部の頂部に沿って粘着テープでマスキングシートを固定した場合、粘着テープとマスキングシートとが重なり合うため、塗料の浸入を抑制できる。
【0091】
本開示のマスキングシートは、ケガキ線を引いた路面に位置決めするための目印を設けるのが好ましく、図3に示すような端部の切欠部に限定されず、線や点などの目印であってもよい。
【0092】
マスキングシートの平均厚みは0.01~5mm程度の範囲から選択でき、作業性の点から3mm以下が好ましく、例えば0.1~3mm、好ましくは0.3~2mm、さらに好ましくは0.4~1mm、より好ましくは0.4~0.8mmである。マスキングシートの厚みが薄すぎると、耐熱性および防水性が低下する虞があり、逆に厚すぎると、作業性が低下する虞がある。
【0093】
マスキングシートは、一方の面に粘着層が積層されていてもよく、粘着層を有するマスキングシートを用いる場合は、粘着テープを用いることなく、マスキングシートを路面に固定できる。これらのうち、マスキングシート自体の生産性が高い上に、粘着テープで路面に固定することにより、高い作業性で路面にマスキングシートを位置決めできる点から、粘着層を有していないマスキングシートが好ましい。
【0094】
本開示のマスキングシートの材質は、特に限定されず、有機材料、無機材料のいずれであってもよい。有機材料で形成されたマスキングシートとしては、例えば、プラスチックシート、紙類や不織布などの繊維構造体などが挙げられる。無機材料で形成されたマスキングシートとしては、例えば、鉄板、ステンレス板などの金属板、セラミックスシートなどが挙げられる。マスキングシートは、燃え易い材質で形成されたシートあってもよいが、高い溶融温度で加熱される前記塗料による影響を受け難い点から、燃え難い材料で形成されたシートが好ましく、着火時間が15秒以上である材料で形成されたシートが特に好ましい。さらに、燃え難い材料で形成されたシートの中でも、着火時間が15秒以上であるマスキングシートが特に好ましい。
【0095】
本開示において、マスキングシートの着火時間は、バーナーの炎が着火する時間で測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0096】
着火時間が15秒以上であるマスキングシートとしては、鉄板などの金属板であってもよいが、取り扱い性などの点から、難燃剤を含むマスキングシートが好ましく、アスファルトを含むマスキングシートが特に好ましい。なかでも、耐熱性および防水性が高く、かつ柔軟であるため、道路状況や天候に左右されることなく利用でき、かつ施工性にも優れる点から、マスキングシートは、アスファルトを含む繊維構造体であるのが最も好ましい。
【0097】
アスファルトとしては、例えば、天然アスファルト(レイクアスファルト、ロックアスファルト、オイルサンド、アスファルトタイトなど)、石油アスファルト(ストレートアスファルト、ブローンアスファルトなど)などが挙げられる。これらのアスファルトは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ストレートアスファルトなどの石油アスファルトなどが汎用される。
【0098】
アスファルトの針入度(1/10mm)は、特に限定されないが、JIS K2207-1996に準拠した方法において、0~300程度の範囲から選択でき、例えば10~280、好ましくは20~250、さらに好ましくは50~200である。
【0099】
アスファルトの割合は、繊維構造体100質量部に対して、例えば10~300質量部、好ましくは30~200質量部、さらに好ましくは50~150質量部である。
【0100】
前記アスファルトは、改質剤と組み合わせることにより、改質アスファルト(アスファルト系粘着剤)として使用してもよい。改質剤には、有機系改質剤、無機系改質剤が含まれる。
【0101】
有機系改質剤としては、例えば、ポリオレフィン、ビニル系重合体(例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体など)、ポリアミド、ポリエステル、合成ゴムまたはエラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体など)、天然ゴム、粘着付与剤(例えば、テルペン樹脂、天然ロジンや変性ロジンなどのロジン樹脂、石油樹脂、変性オレフィン重合体など)、油脂類(例えば、ナフテン系原料油など)などが挙げられる。これらの有機系改質剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機系改質剤のうち、熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、油脂類が好ましく、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体などのスチレン-ジエン系共重合体が特に好ましい。
【0102】
無機系改質剤としては、例えば、鉄、銅、錫、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼などの金属粒子(粉末);酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、フェライト、酸化錫、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化銅、酸化アルミニウムなどの金属酸化物粒子;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウムなどの金属塩粒子;製鋼スラグ、スレートチップ、マイカ、クレー、タルク、ウォラストナイト、けい藻土、けい砂、軽石粉、シリカバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーンなどの鉱物粒子;ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維などが挙げられる。これらの無機系改質剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機系改質剤のうち、鉄粒子、各種酸化鉄粒子、製鋼スラグ粒子、タルク、(重)炭酸カルシウム粒子などの粒子状改質剤が好ましい。粒子状改質剤の平均粒径は0.01~0.5mm(特に0.05~0.2mm)である。
【0103】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計を用いて体積基準で測定された中心粒径(D50)を意味する。
【0104】
有機系改質剤と無機系改質剤とは、耐熱性および防水性を向上させるために、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
アスファルトと改質剤との質量割合は、例えば、アスファルト/改質剤=100/0~30/70程度の範囲から選択でき、例えば99/1~40/60、好ましくは98/2~50/50、さらに好ましくは95/5~60/40程度の範囲から選択できる。改質剤が有機系改質剤である場合は、両者の質量割合は、例えば、アスファルト/有機系改質剤=100/0~70/30、好ましくは99/1~80/20、さらに好ましくは95/5~85/15程度である。改質剤の割合が少なすぎると、改質効果が発現せず、多すぎると、粘性が上がり加工が困難となる上に、経済性も低下する虞がある。
【0106】
有機系改質剤と無機系改質剤とを組み合わせる場合、両者の質量割合は、例えば、有機系改質剤/無機系改質剤=99/1~1/99程度の範囲から選択でき、例えば90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは70/30~30/70である。
【0107】
改質剤で改質された改質アスファルトの針入度(1/10mm)は、0~100程度の範囲から選択でき、例えば5~80、好ましくは10~50、さらに好ましくは20~30である。
【0108】
繊維構造体を構成する繊維としては、例えば、天然繊維(綿、麻などのセルロース繊維など)、再生繊維(レーヨンなど)、半合成繊維(セルロースエステル繊維など)、合成繊維[ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維など)、スチレン系繊維、ポリテトラフルオロエチレン系繊維、アクリル系繊維、ビニルアルコール系繊維(エチレンビニルアルコール系繊維など)、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレン-アリレート系繊維、液晶ポリエステル繊維などの全芳香族ポリエステル系繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド6、ポリアミド66などの脂肪族ポリアミド系繊維、アラミド繊維などの全芳香族ポリアミド系繊維など)、ポリウレタン系繊維など]、無機繊維(炭素繊維やガラス繊維など)などが例示できる。前記合成繊維は、異種の樹脂成分を組み合わせた複合繊維であってもよい。これらの繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの繊維のうち、ポリオレフィン系繊維やポリエステル系繊維などの合成繊維や無機繊維などが汎用されるが、紫外線に対する耐光性などの点から、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリC2-4アルキレン-アリレート系繊維が好ましい。
【0109】
繊維構造体には、織布、編布、不織布、ネット、紙などが含まれる。これらのうち、アスファルト含浸性などに優れる点から、紙、不織布が好ましく、紙が特に好ましい。
【0110】
紙(または原紙)は、少なくともパルプを含んでいる。パルプとしては、材質の点から、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、非木材パルプ(ラグパルプ、リンターパルプ、リネンパルプ、楮・三椏・雁皮パルプ、ワラパルプ、バガスパルプ、ケナフパルプ、竹パルプなど)、合成繊維パルプ、古紙パルプ(再生紙など)などが例示できる。また、パルプは、パルプ化手段の点から、機械パルプであってもよく、強度の点から、化学パルプ(クラフトパルプ、サルファイトパルプなど)であってもよい。さらに、パルプは、未漂白パルプであってもよく、漂白パルプであってもよい。
【0111】
紙は、パルプに加えて、パルプ以外の繊維を含んでいてもよい。また、紙は、慣用の添加剤、例えば、充填剤(クレー、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタンなど)、サイズ剤(ロジンなどの酸性サイズ剤;アルキルテケンダイマーなどの中性サイズ剤など)、紙力増強剤(デンプン、ポリアクリルアミドなど)、顔料(または染料)、消泡剤などを含んでいてもよい。
【0112】
紙は、慣用の方法、例えば、必要により叩解したパルプと水とを含む組成物(スラリー)を湿式抄造することにより調製できる。湿式抄造は、慣用の抄紙機、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機などを用いて行ってもよい。
【0113】
[粘着テープ]
粘着テープは、繊維シートの一方の面に粘着層が積層されていれば、特に限定されず、紙の一方の面に粘着層が積層された粘着テープ、布帛の一方の面に粘着層が積層された粘着テープなどであってもよい。これらのうち、容易に切断でき、作業性などに優れる点から、紙の一方の面に粘着層が積層された粘着テープが好ましく、クラフトテープが特に好ましい。
【0114】
粘着テープの幅は、路面標示を形成する領域に対して隙間を設けマスキングシートを載置し、粘着テープで前記隙間をマスキングするとともに、前記マスキングシートを路面に固定する場合、前記隙間をマスキングできる幅でよいが、粘着テープとマスキングシートとの隙間から塗料が侵入するのを抑制できる点から、粘着テープの幅を前記隙間の幅よりも大きくするのが好ましい。粘着テープの幅を前記隙間の幅よりも大きくすることにより、粘着テープによる固定箇所において、マスキングシートと粘着テープとが重なり合うことにより、塗料の浸入を抑制できる。
【0115】
粘着テープの幅は、前記隙間の幅に対して1.05倍以上であってもよく、例えば1.05~5倍、好ましくは1.1~3倍、さらに好ましくは1.2~2倍、より好ましくは1.3~1.7倍である。
【実施例0116】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0117】
実施例1
ドットラインを以下の工程に準じて施工した。まず、マスキングシートを載置するために、図4に示すケガキ線を車線の路面に引いた。
【0118】
次に、ブロアーを用いて、路面の埃を除去した後、ドットラインの施工領域に、プライマー散布機を用いて、プライマーを塗布した。
【0119】
図4に示すように、図6に示す平面形状を有するマスキングシート(厚み0.6mm、ラグ原紙に、針入度60~80のアスファルトを113質量%の割合で含浸させたアスファルト含浸紙)を路面に載置し、幅75mm、長さ400mmのクラフトテープで固定した。
【0120】
図5に示すように、スリット状開口部を有する手押し式のフローコーター式施工機を用いて、車の流れ方向に平行なケガキ線に沿って、マスキングシートの上から、幅300mmおよび厚み1.5mmで溶融塗料を塗工した。
【0121】
塗工後、塗料が固化する前に、塗料が塗布されたマスキングシートおよびクラフトテープを回収した。
【0122】
図7に示すように、マスキングシート31を燃焼試験箱の底面32に対して45°の角度で設置し、バーナー33は炎の高さを65mmに調整し、炎の先端がマスキングシートに触れる状態で焙り、着火時間を確認した結果、約54秒であった。
【0123】
実施例2
ドットラインを以下の工程に準じて施工した。まず、マスキングシートを載置するために、図4に示すケガキ線を車線の路面に引いた。
【0124】
次に、ブロアーを用いて、路面の埃を除去した後、ドットラインの施工領域に、プライマー散布機を用いて、プライマーを塗布した。
【0125】
図4で示されているケガキ線に加えて、平面形状が直角二等辺三角形状の合板を用いて、マスキングシートをクラフトテープで固定する箇所を示す斜めのケガキ線を引いた。
【0126】
図8に示す平面形状を有するマスキングシート(厚み0.6mm、ラグ原紙に、針入度60~80のアスファルトを113質量%の割合で含浸させたアスファルト含浸紙)を、直角三角形の斜辺と前記斜めのケガキ線との間隔が50mmとなるように調整して路面に載置した(マスキングシートの配置は図4と同様)。幅75mm、長さ400mmのクラフトテープを前記ケガキ線に沿ってマスキングシート側に貼付し、前記マスキングシートを路面に固定した。
【0127】
実施例1と同様の方法で塗工した後、塗料が固化する前に、塗料が塗布されたマスキングシートおよびクラフトテープを回収した。
【0128】
比較例1
ドットラインを以下の工程に準じて施工した。まず、路面をマスキングするために、図4に示すケガキ線を車線の路面に引いた。
【0129】
次に、ブロアーを用いて、路面の埃を除去した後、ドットラインの施工領域に、プライマー散布機を用いて、プライマーを塗布した。
【0130】
図4で示されているケガキ線に加えて、平面形状が直角二等辺三角形状の合板を用いて、図2に示すように、クラフトテープでマスキングする箇所を示すケガキ線を引いた。
【0131】
前記ケガキ線に沿って、実施例1および実施例2と同様の箇所に、幅75mm、長さ400mmのクラフトテープを貼付した後、図2に示すように、実施例1および実施例2ではマスキングシートが載置される領域に対して、比較例1ではクラフトテープを順次貼付し、合計6本のクラフトテープで塗料の非塗装領域をマスキングした。
【0132】
図5に示すように、手押し式のスリッター式施工機を用いて、車の流れ方向のケガキ線に沿って、マスキングシートの上から、幅300mmおよび厚み1.5mmで溶融塗料を塗工した。
【0133】
実施例1と同様の方法で塗工した後、塗料が固化する前に、塗料が塗布されたクラフトテープを回収した。
【0134】
実施例および比較例のそれぞれの施工において、作業員2名で作業し、20カ所以上にドット部を施工し、1カ所のドット部の領域を特定するための作業時間(プライマー処理後から塗料を塗布できる状態にするまでの時間)の平均値を比較した。実施例1では19.6秒であったのに対して、実施例2および比較例1では23.1秒であった。比較例1では、実施例に比べて溶融塗料や天候の影響を受け易い上に、実施例1よりも作業性も低かった。また、比較例1では、クラフトテープを中腰で貼付する作業を複数回繰り返す必要があり、実施例1および実施例2に比べて、作業者の肉体的な負担も大きかった。
【0135】
マスキングシートの代わりに、クラフトテープの着火時間について、実施例と同様の方法で測定した結果、約6秒であり、実施例1の約54秒と比較すると、大幅に短かった。実施例1で使用したマスキングシートでは、比較例1のクラフトテープに比べ、着火しにくく、安全に作業ができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本開示のマスキングシートは、減速路面標示などの路面標示を形成するための塗料を路面に塗布する塗布工程において、路面標示の非塗装領域をマスキングするために用いられ、破線型の減速マークまたは減速レーンマークの施工に特に有用である。
【符号の説明】
【0137】
1…マスキングシート
1a…本体部
1b…第1の凸部
1c…第2の凸部
1d~1h…切欠部
2…粘着テープ
3a,3b…白線
4a,4b,5a,5b…ケガキ線
6…作業者
7…塗装機
8…ドット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングするマスキング工程、前記マスキング工程でマスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程を含む路面標示の施工方法であって、
前記マスキングシートの平面形状が、直角二等辺三角形状の本体部と、前記本体部の斜辺から突出し、前記斜辺と路面標示の輪郭との間に隙間を形成するための凸部とを有する形状である施工方法
【請求項2】
前記マスキングシートがアスファルトを含む請求項1記載の施工方法。
【請求項3】
前記塗料の温度が100℃以上である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項4】
前記塗料が溶融型塗料である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項5】
前記マスキングシートが、アスファルトを含む繊維構造体である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項6】
前記路面表示が、湾曲部および/または非直角部を有する請求項1または2記載の施工方法。
【請求項7】
前記路面標示が車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺を有している請求項1または2記載の施工方法。
【請求項8】
前記路面標示が減速路面標示である請求項1または2記載の施工方法。
【請求項9】
前記減速路面標示が、複数のドット部が車の流れ方向に沿って所定の間隔に並列した破線状であり、前記ドット部における車の流れ方向の上流端および下流端が、車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺である請求項8記載の施工方法。
【請求項10】
前記マスキング工程において、前記マスキングシートを粘着テープで路面に固定する請求項1または2記載の施工方法。
【請求項11】
前記マスキング工程において、路面標示の塗装領域に対して隙間を設けて前記マスキングシートを載置し、前記粘着テープで前記隙間をマスキングするとともに、前記マスキングシートを路面に固定する請求項10記載の施工方法。
【請求項12】
前記塗布工程において、スリット式開口部を有するフローコーター式施工機で前記塗料を塗布する請求項1または2記載の施工方法。
【請求項13】
車の流れ方向に対して斜め方向に交差する方向に延びる斜辺に対応するケガキ線を引くためのケガキ工程を含まない請求項7記載の施工方法。
【請求項14】
マスキングシートを用いて路面標示の非塗装領域をマスキングするマスキング工程、前記マスキング工程でマスキングした路面に路面標示を形成するための塗料を塗布する塗布工程を含む路面標示の施工方法に用いられ、かつ
平面形状が、直角二等辺三角形状の本体部と、前記本体部の斜辺から突出し、前記斜辺と路面標示の輪郭との間に隙間を形成するための凸部とを有する形状であるマスキングシート。
【請求項15】
前記マスキングシートがアスファルトを含む請求項14記載のマスキングシート。
【請求項16】
前記凸部が、斜辺の一方の端部から突出する直角三角形状の第1の凸部と、斜辺の他方の端部から突出する平行四辺形状の第2の凸部とで構成されている請求項14または15記載のマスキングシート。
【請求項17】
ケガキ線を引いた路面に対して位置決めするための切欠部が形成されている請求項14または15記載のマスキングシート。