(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169736
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】消音装置
(51)【国際特許分類】
B64F 1/26 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
B64F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081039
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 敦司
(72)【発明者】
【氏名】西村 龍太
(72)【発明者】
【氏名】平原 杏奈
(57)【要約】
【課題】機体の試験を適切に行い、既存の消音装置に対して容易に実装する。
【解決手段】消音装置は、エンジンを有する航空機の機体を配置する床部、機体の前後左右を囲う壁部及び機体の上方に配置される天井部により機体を収容する収容室を形成し、機体の前方に吸気口が形成され機体の後方に排気口が形成された機体収容部と、収容室に設けられ、前後方向で吸気口とエンジンとの間の使用位置に機体の前方から見て上下方向及び左右方向の少なくとも一方の中央部を空けて機体側を覆うように配置可能な気流調整部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する航空機の機体を配置する床部、前記機体の前後左右を囲う壁部及び前記機体の上方に配置される天井部により前記機体を収容する収容室を形成し、前記機体の前方に吸気口が形成され前記機体の後方に排気口が形成された機体収容部と、
前記収容室に設けられ、前後方向で前記吸気口と前記エンジンとの間の使用位置に前記機体の前方から見て上下方向及び左右方向の少なくとも一方の中央部を空けて前記機体側を覆うように配置可能な気流調整部材と
を備える消音装置。
【請求項2】
前記気流調整部材は、前記使用位置と、前記使用位置から退避した待機位置との間を移動可能に設けられる
請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記気流調整部材は、回動軸を介して取り付けられ、前記回動軸を中心として前記使用位置と前記待機位置との間を回動可能に設けられ、
前記待機位置は、前記気流調整部材が左右方向の両側の前記壁部、又は上下方向の両側の前記床部並びに前記天井部に沿って配置される位置であり、
前記使用位置は、前記気流調整部材が左右方向の両側の前記壁部、又は上下方向の両側の前記床部並びに前記天井部に対して傾いて配置される位置である
請求項2に記載の消音装置。
【請求項4】
前記気流調整部材は、巻き取り軸に巻き取り可能に設けられ、
前記待機位置は、前記気流調整部材が前記巻き取り軸に巻き取られる位置であり、
前記使用位置は、前記気流調整部材が前記巻き取り軸から繰り出される位置である
請求項2に記載の消音装置。
【請求項5】
前記気流調整部材は、前記使用位置において左右方向に対称となるように配置される
請求項1に記載の消音装置。
【請求項6】
前記気流調整部材は、前記収容室の左右方向の両側に配置される
請求項1に記載の消音装置。
【請求項7】
前記気流調整部材は、前記収容室の上下方向の両側に配置される
請求項1に記載の消音装置。
【請求項8】
前記吸気口は、前記天井部の前方端部に設けられる
請求項1に記載の消音装置。
【請求項9】
前記気流調整部材は、前後方向の傾きを調整可能である
請求項1に記載の消音装置。
【請求項10】
前記気流調整部材は、メッシュ状に形成される
請求項1に記載の消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体の運転試験を行うための消音装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような消音装置は、機体を収容する機体収容部を有し、エンジン駆動時に空気を吸入する吸気口と、エンジンから排出される気体を排出する排気口とが機体収容部に設けられた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の消音装置において、機体収容部は、機体全体を格納する際に翼が壁面や天井と干渉しないように十分な大きさに形成される。この構成では、機体と機体収容部の左右の壁部及び天井部との間に大きなスペースが形成されることになる。この場合、エンジン駆動時に吸気口から吸入される空気がこのスペースを機体、壁部、天井部に沿って流れることで旋回流が形成される。機体の機種によっては、当該旋回流によりエンジンの運転が不安定化する場合がある。
【0005】
特許文献1に記載の消音装置は、機体収容部のうちエンジンの後方を左右方向の中央側に傾斜させることで徐々に狭くし、これにより旋回流の発生を抑制する構成である。しかしながら、この構成では、機体の試験を適切に行うことは可能であるが、消音装置の新設時に予め当該構成を実装しておく必要があり、既成の消音装置を改修して実装することが困難である。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、機体の試験を適切に行うことが可能であり、既存の消音装置に対して容易に実装することが可能な消音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る消音装置は、エンジンを有する航空機の機体を配置する床部、前記機体の前後左右を囲う壁部及び前記機体の上方に配置される天井部により前記機体を収容する収容室を形成し、前記機体の前方に吸気口が形成され前記機体の後方に排気口が形成された機体収容部と、前記収容室に設けられ、前後方向で前記吸気口と前記エンジンとの間の使用位置に前記機体の前方から見て上下方向及び左右方向の少なくとも一方の中央部を空けて前記機体側を覆うように配置可能な気流調整部材とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、機体の試験を適切に行うことが可能であり、既存の消音装置に対して容易に実装することが可能な消音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る消音装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る消音装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る消音装置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、比較例に係る消音装置の動作を示す図である。
【
図5】
図5は、比較例に係る消音装置の動作を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る消音装置の動作の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る消音装置の動作の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、他の例に係る消音装置を示す図である。
【
図9】
図9は、他の例に係る消音装置を示す図である。
【
図15】
図15は、本実施形態に係る消音装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る消音装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1から
図3は、本実施形態に係る消音装置100の一例を示す図である。
図1は上方から見た断面図、
図2は側方から見た断面図であり(
図1におけるA-A断面図)、
図3は前方から見た断面図(
図2におけるB-B断面図)である。
図1から
図3に示すように、消音装置100は、機体収容部10と、気流調整部材20とを備える。消音装置100は、機体収容部10の内部に航空機の機体Bを収容し、機体Bの試運転を行うための試験装置として用いられる。本実施形態において、消音装置100の方向を説明する場合、機体収容部10に収容される機体Bの収容状態における前後方向、左右方向及び上下方向を、消音装置100の前後方向、左右方向及び上下方向とする。本実施形態において、機体Bは、エンジンEGを有する。機体Bの試運転を行う際、エンジンEGを駆動する。エンジンEGは、前方から空気を吸入する。エンジンEGは、後方へ排気ガスを排出する。
【0012】
機体収容部10は、床部11と、壁部12と、天井部13とを有する。床部11、壁部12及び天井部13は、機体Bを収容する収容室Kを形成する。
【0013】
床部11は、航空機の機体Bを配置する。床部11は、水平面に沿って配置される。
【0014】
壁部12は、床部11上に配置される。壁部12は、機体Bの前後左右を囲うように、平面視で矩形の四辺に沿った状態で配置される。壁部12の少なくとも一部には、機体Bの試運転時に生じる音を吸収するための吸音材を配置することができる。壁部12は、前側壁部12a、後側壁部12b、左側壁部12c及び右側壁部12dを有する。前側壁部12aは、機体Bの前方、すなわち収容室Kの前部に配置される。後側壁部12bは、機体Bの後方、すなわち収容室Kの後部に配置される。後側壁部12bには、排気口15が設けられる。排気口15は、後側壁部12bを貫通して設けられる。左側壁部12cは、機体Bの左方、すなわち収容室Kの左部に配置される。右側壁部12dは、機体Bの右方、すなわち収容室Kの右部に配置される。
【0015】
天井部13は、機体Bの上方、すなわち収容室Kの上部に配置される。天井部13の前側端部には、吸気口14が設けられる。吸気口14は、天井部13を貫通して設けられる。吸気口14は、矩形状であり、左右方向の全体に亘って形成される。吸気口14は、吸気ダクト17に接続される。吸気ダクト17は、吸気口14から後方に延び、更に上方に屈曲される。吸気ダクト17の上端には開放口18が設けられる。吸気ダクト17は、内部の吸気通路17aが開放口18と吸気口14との間を接続する。また、吸気ダクト17は、収容室Kで機体Bの試運転を行う際、機体Bで発生する音を吸収可能な構成となっている。
【0016】
気流調整部材20は、収容室Kに設けられる。気流調整部材20は、収容室Kの空気の流れを調整する。具体的には、気流調整部材20は、吸気口14から吸入される空気の一部を遮蔽することで、当該気流調整部材20の後方に空気が流れることを抑制する。
【0017】
気流調整部材20は、例えば矩形状に形成される。気流調整部材20は、上下方向の寸法(高さ)が壁部12とほぼ同様となるように形成される。気流調整部材20は、メッシュ状に形成することができる。この場合、気流調整部材20は、例えば10メッシュ程度の金網を用いることができる。なお、気流調整部材20の網目の大きさは、10メッシュに限定されず、他の大きさであってもよい。例えば、機体Bの機種に応じて網目の大きさを変更してもよい。なお、気流調整部材20は、メッシュ状に限定されず、例えば網目が形成されない板状であってもよい。
【0018】
気流調整部材20は、収容室Kの左右方向の両端に配置される。気流調整部材20は、それぞれ例えば回動軸21を介して左側壁部12c及び右側壁部12dに取り付けられる。回動軸21は、上下方向に平行に配置される。気流調整部材20は、回動軸21を中心として回動可能に設けられる。気流調整部材20は、回動軸21を中心として回動することにより、使用位置P1と待機位置P2との間を移動可能となっている。
【0019】
使用位置P1は、前後方向で吸気口14と機体BのエンジンEGとの間の位置である。使用位置P1は、機体Bの試運転の際、エンジンEGの駆動により吸気口14から吸入されて後方に流れる気流を調整するための位置である。使用位置P1は、前後方向で吸気口14とエンジンEGとの間の位置であれば、機体BにおけるエンジンEGの位置及び大きさ等の諸元に応じて適宜設定することができる。使用位置P1については、例えば予め実験又はシミュレーションを行い、結果に基づいて設定することができる。本実施形態において、使用位置P1は、気流調整部材20が左右方向の両側の壁部12(左側壁部12c及び右側壁部12d)に対して傾いて配置される位置である。本実施形態において、使用位置P1は、気流調整部材20が左側壁部12c及び右側壁部12dに対して90°の角度で配置される位置である。なお、使用位置P1は、気流調整部材20が左側壁部12c及び右側壁部12dに対して90°とは異なる角度で傾いて配置される位置であってもよい。
【0020】
ここで、使用位置P1に配置された場合の気流調整部材20について説明する。使用位置P1において、気流調整部材20は、左右方向の中央部を空けて収容室Kの後方を覆うように配置される。気流調整部材20は、収容室Kの左右方向の両側を覆うように配置される。気流調整部材20は、左右方向について収容室Kの両端部から中央部側に向けて配置される。すなわち、気流調整部材20は、収容室Kの左右方向の両端部を覆うように配置される。また、気流調整部材20は、上下方向について収容室Kの上端部から下端部までに亘って設けられる。気流調整部材20は、左右方向に対称となるように配置される。
【0021】
待機位置P2は、気流調整部材20を使用しない場合に待機させる位置である。待機位置P2は、気流調整部材20が左右方向の両側の壁部12(左側壁部12c及び右側壁部12d)に沿って配置される位置である。つまり、気流調整部材20は、待機位置P2に配置された状態において、それぞれ左側壁部12c及び右側壁部12dに沿って配置される。
【0022】
気流調整部材20は、使用位置P1と待機位置P2との間を移動するため、例えば下部に不図示のキャスター等が設けられる。また、気流調整部材20は、使用位置P1及び待機位置P2において、回動方向への移動を規制可能な不図示のストッパ等が設けられてもよい。
【0023】
次に、上記のように構成された消音装置100の動作を説明する。消音装置100の動作を説明するにあたり、上記した気流調整部材20が設けられない消音装置200を比較例として説明する。
【0024】
図4及び
図5は、比較例に係る消音装置200の動作を説明するための図である。消音装置200には、上記した気流調整部材20に対応する構成が設けられない。この構成において、機体Bの試験を行う場合、機体収容部110の床部111に航空機の機体Bを配置して、機体BのエンジンEGを駆動させる。
【0025】
エンジンEGの駆動により、吸気口114から機体収容部110の収容室K2に空気が吸入される。収容室K2に吸入された空気は、エンジンEGに向けて後方に流れる。
図4及び
図5に示すように、収容室K2を流れる空気が機体B、収容室K2の左右両側の壁部112及び天井部113に沿って流れることにより、旋回流が発生する。機体Bの機種によっては、エンジンEGが旋回流を吸い込むことにより、運転が不安定化する可能性がある。
【0026】
図6及び
図7は、消音装置100の動作を説明するための図である。消音装置100において、航空機の機体Bの試験を行わない場合、気流調整部材20が待機位置P2に配置される。この状態から機体Bの試験を行う場合、機体収容部10の床部11に航空機の機体Bを配置し、気流調整部材20を待機位置P2から使用位置P1へと移動する。
【0027】
この状態から機体BのエンジンEGを駆動させる。エンジンEGの駆動により、開放口18から吸気ダクト17の内部の吸気通路17aに空気が吸入され、更に吸気口14から機体収容部10の収容室Kに空気が吸入される。なお、収容室Kの上方に配置される吸気口14から空気が吸入される場合、微小な渦が発生する場合があるが、この渦はエンジンEGに対して影響を及ぼさない。収容室Kに吸入された空気は、エンジンEGに向けて後方に流れる。本実施形態では、前後方向において吸気口14とエンジンEGとの間の使用位置P1に気流調整部材20が配置される。このため、収容室Kを流れる空気は、気流調整部材20を迂回して、左右方向の中央から後方に流れる。つまり、収容室Kを流れる空気は、左右の気流調整部材20の間のスペースから後方に流れる。したがって、空気が収容室Kの左側壁部12c及び右側壁部12dの側に流れることが抑制されるため、旋回流の発生が抑制される。また、本実施形態において、気流調整部材20は、左右方向に対称となるように配置されるため、気流の乱れが抑制される。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る消音装置100は、エンジンEGを有する航空機の機体Bを配置する床部11、機体Bの前後左右を囲う壁部12及び機体Bの上方に配置される天井部13により機体Bを収容する収容室Kを形成し、機体Bの前方に吸気口14が形成され機体Bの後方に排気口15が形成された機体収容部10と、収容室Kに設けられ、前後方向で吸気口14とエンジンEGとの間の使用位置P1に機体Bの前方から見て上下方向の中央部を空けて機体B側を覆うように配置可能な気流調整部材20とを備える。
【0029】
この構成では、気流調整部材20を使用位置P1に配置することにより、エンジンEGの駆動時において、収容室Kを流れる空気は、気流調整部材20を迂回して左右方向の中央から後方に流れる。したがって、空気が収容室Kの左右両側の壁部12側に流れることが抑制されるため、旋回流の発生が抑制される。これにより、エンジンEGの運転が不安定化することを抑制でき、機体Bの試験を適切に行うことが可能となる。また、気流調整部材20を使用位置P1に配置することで実現可能であるため、既存の消音装置に対しても容易に実装することができる。
【0030】
本実施形態に係る消音装置100において、気流調整部材20は、使用位置P1と、壁部12及び天井部13の少なくとも一方に沿った待機位置P2との間を移動可能に設けられる。したがって、気流調整部材20を使用する場合には使用位置P1に配置し、使用しない場合に待機位置P2に待機させておくことができる。このため、例えば旋回流の影響を受けやすい機種の機体B、旋回流の影響を受けにくい機種の機体B等のように異なる機種の試験を行う場合、機種に応じて気流調整部材20の位置を切り替えることで、機種ごとに適した試験環境を容易に実現することができる。
【0031】
本実施形態に係る消音装置100において、気流調整部材20は、回動軸21を介して取り付けられ、回動軸21を中心として使用位置P1と待機位置P2との間を回動可能に設けられ、待機位置P2は、気流調整部材20が左右方向の両側の壁部12、又は上下方向の両側の床部11並びに天井部13に沿って配置される位置であり、使用位置P1は、気流調整部材20が左右方向の両側の壁部12、又は上下方向の両側の床部11並びに天井部13に対して傾いて配置される位置である。したがって、気流調整部材20を容易に使用位置P1と待機位置P2との間で移動させることができる。
【0032】
本実施形態に係る消音装置100において、気流調整部材20は、使用位置P1において左右方向に対称となるように配置される。したがって、旋回流の発生をより確実に抑制することができる。
【0033】
本実施形態に係る消音装置100において、気流調整部材20は、収容室Kの左右方向の両側に配置される。したがって、エンジンEGの駆動時において空気が収容室Kの左側壁部12cの側及び右側壁部12dの側に流れることを抑制することができる。
【0034】
本実施形態に係る消音装置100において、吸気口14は、天井部13の前方端部に設けられる。したがって、機体収容部10をコンパクトな構成とすることができる。また、壁部12に吸気口14が設けられないため、壁部12の周囲において空気の吸い込みによる気流の発生を抑制できる。このため、壁部12の周囲を通路等として使用することができる。
【0035】
本実施形態に係る消音装置100において、気流調整部材20は、メッシュ状に形成される。したがって、気流調整部材20の軽量化を図ることができる。また、気流調整部材20が受ける風圧を抑えることができる。
【0036】
図8から
図10は、他の例に係る消音装置100Aを示す図である。
図8は上方から見た断面図、
図9は側方から見た断面図、
図10は前方から見た断面図を示す。
図8から
図10に示すように、消音装置100Aは、機体収容部10と、気流調整部材20Aとを備える。機体収容部10については、上記実施形態と同様の構成とすることができる。
【0037】
消音装置100Aにおいて、気流調整部材20Aは、収容室Kの上下方向の両側に配置される。気流調整部材20Aは、それぞれ例えば回動軸21Aを介して床部11及び天井部13に取り付けられる。回動軸21Aは、左右方向に平行に配置される。気流調整部材20Aは、回動軸21Aを中心として回動可能に設けられる。気流調整部材20は、回動軸21Aを中心として回動することにより、使用位置P3と待機位置P4との間を移動可能となっている。
【0038】
使用位置P3は、上記実施形態と同様、前後方向で吸気口14と機体BのエンジンEGとの間の位置である。消音装置100Aにおいて、使用位置P3は、気流調整部材20が床部11及び天井部13に対して90°の角度で配置される位置である。なお、使用位置P3は、気流調整部材20が左側壁部12c及び右側壁部12dに対して90°とは異なる角度で傾いて配置される位置であってもよい。
【0039】
気流調整部材20は、使用位置P3に配置された状態において、収容室Kの後方を覆うように配置される。気流調整部材20は、使用位置P3に配置された状態において、前方から見て上下方向の中央部を空けるように配置される。本実施形態において、気流調整部材20は、例えば収容室Kの上下方向の両側を収容室Kの左右方向の寸法分だけ覆うように配置される。気流調整部材20は、使用位置P3に配置された状態において、左右方向に対称となるように設けられる。
【0040】
待機位置P4は、床部11及び天井部13に沿った位置である。気流調整部材20は、待機位置P4に配置された状態において、それぞれ床部11及び天井部13に沿って配置される。
【0041】
消音装置100Aを用いて機体Bの試験を行う場合、エンジンEGの駆動により、吸気口14から機体収容部10の収容室Kに空気が吸入される。収容室Kに吸入された空気は、エンジンEGに向けて後方に流れる。本実施形態では、前後方向において吸気口14とエンジンEGとの間の使用位置P1に気流調整部材20Aが配置される。このため、収容室Kを流れる空気は、気流調整部材20Aを迂回して、上下方向の中央から後方に流れる。つまり、収容室Kを流れる空気は、上下の気流調整部材20Aの間のスペースから後方に流れる。したがって、空気が収容室Kの床部11側及び天井部13側に流れることが抑制されるため、旋回流の発生が抑制される。
【0042】
このように、消音装置100Aにおいて、気流調整部材20Aは、収容室Kの上下方向の両側に配置される。したがって、エンジンEGの駆動時において空気が収容室Kの床部11側及び天井部13側に流れることを抑制することができる。これにより、エンジンEGの運転が不安定化することを抑制でき、機体Bの試験を適切に行うことが可能となる。
【0043】
図11から
図13は、他の例に係る消音装置100Aを示す図である。
図11は上方から見た断面図、
図12は側方から見た断面図、
図13は前方から見た断面図を示す。
図11から
図13に示すように、消音装置100Bは、機体収容部10と、気流調整部材20Bとを備える。機体収容部10については、上記実施形態と同様の構成とすることができる。
【0044】
消音装置100Bにおいて、気流調整部材20Bは、収容室Kの左右方向の両側に配置される。気流調整部材20Bは、それぞれ例えば回動軸21Bを介して左側壁部12c及び右側壁部12dに取り付けられる。回動軸21Bは、上下方向に平行に配置される。気流調整部材20Bは、連結部22Bを介して回動軸21Bに取り付けられる。気流調整部材20Bは、回動軸21Bを中心として回動可能に設けられる。気流調整部材20Bは、回動軸21Bを中心として回動することにより、使用位置P5と待機位置P6との間を移動可能となっている。
【0045】
使用位置P5は、上記実施形態と同様、前後方向で吸気口14と機体BのエンジンEGとの間の位置である。ここで、使用位置P5に配置された場合の気流調整部材20Bについて説明する。使用位置P5において、気流調整部材20Bは、それぞれ左右方向の一部を覆うように配置される。使用位置P5において、気流調整部材20Bは、左右方向の両端部及び中央部を空けるように配置される。また、気流調整部材20Bは、上下方向について収容室Kの上端部及び下端部を空けるように配置される。気流調整部材20Bは、左右方向に対称となるように配置される。
【0046】
待機位置P6は、左側壁部12c及び右側壁部12dに沿った位置である。気流調整部材20Bは、待機位置P6に配置された状態において、それぞれ左側壁部12c及び右側壁部12dに沿って配置される。
【0047】
消音装置100Bを用いて機体Bの試験を行う場合、エンジンEGの駆動により、吸気口14から機体収容部10の収容室Kに空気が吸入される。収容室Kに吸入された空気は、エンジンEGに向けて後方に流れる。本実施形態では、前後方向において吸気口14とエンジンEGとの間の使用位置P5に気流調整部材20Bが配置される。このため、収容室Kを流れる空気は、気流調整部材20Bを迂回して後方に流れる。つまり、収容室Kを流れる空気は、一部が気流調整部材20Bによって遮られることになる。収容室Kを流れる空気の一部を遮ることにより、旋回流の発生が抑制される。
【0048】
図14は、他の例に係る消音装置100Cを示す図である。
図14は側方から見た断面図を示す。
図14に示すように、消音装置100Cは、機体収容部10と、気流調整部材20Cとを備える。機体収容部10については、上記実施形態と同様の構成とすることができる。
【0049】
気流調整部材20Cは、巻き取り軸21Cに巻き取り可能に設けられる。巻き取り軸21Cは、例えば天井部13の左右両側に設けられ、それぞれ左右方向に平行に配置される。巻き取り軸21Cを一方向に回転させることにより、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cに巻き取られる。巻き取り軸21Cを多方向に回転させることにより、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cから下方に繰り出される。気流調整部材20Cは、巻き取り軸21Cに巻き取られ、巻き取り軸21Cから繰り出されることにより、使用位置P7と待機位置P8との間を移動可能となっている。
【0050】
使用位置P7は、上記実施形態と同様、前後方向で吸気口14と機体BのエンジンEGとの間の位置である。使用位置P7は、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cから繰り出される位置である。使用位置P7に配置された場合の気流調整部材20Cは、例えば上記した気流調整部材20、20A、20Bと同様の範囲を覆う構成とすることができる。気流調整部材20Cは、使用位置P7において、下端部を不図示の固定部により床部11に固定することができる。
【0051】
待機位置P8は、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cに巻き取られる位置である。巻き取り軸21Cは、収容ケース22Cで囲まれている。収容ケース22Cは、巻き取り軸21Cに巻き取られる気流調整部材20Cを収容する。気流調整部材20Cは、待機位置P8において、巻き取り軸21Cに巻き取られて収容ケース22Cに収容される。
【0052】
消音装置100Cにおいて、気流調整部材20Cは、巻き取り軸21Cに巻き取り可能に設けられ、待機位置P8は、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cに巻き取られる位置であり、使用位置P7は、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cから繰り出される位置である。この構成によれば、回動軸回りに回動させる構成とは異なる構成により、気流調整部材20Cを使用位置P7と待機位置P8との間で移動させることができる。
【0053】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、使用位置において気流調整部材の前後方向の傾きを一定とする構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0054】
図15は、消音装置100の使用態様の他の例を示す図である。
図15に示すように、使用位置P1において、気流調整部材20の前後方向の傾きを調整可能な構成としてもよい。この場合、作業者が手動で気流調整部材20の傾きを変更することで調整してもよいし、不図示の駆動機構により気流調整部材20の傾きを変更することで自動的に調整してもよい。この構成により、エンジンEGの駆動時における空気の流れを微調整することができる。
【0055】
以上説明したように、本開示において、第1態様に係る消音装置は、エンジンEGを有する航空機の機体Bを配置する床部11、機体Bの前後左右を囲う壁部12及び機体Bの上方に配置される天井部13により機体Bを収容する収容室Kを形成し、機体Bの前方に吸気口14が形成され機体Bの後方に排気口15が形成された機体収容部10と、収容室Kに設けられ、前後方向で吸気口14とエンジンEGとの間の使用位置P1、P3、P5、P7に機体Bの前方から見て上下方向及び左右方向の少なくとも一方の中央部を空けて機体B側を覆うように配置可能な気流調整部材20、20A、20B、20Cとを備える。
【0056】
この構成では、気流調整部材20、20A、20B、20Cを使用位置P1、P3、P5、P7に配置することにより、エンジンEGの駆動時において、収容室Kを流れる空気は、気流調整部材20、20A、20B、20Cを迂回して左右方向の中央から後方に流れる。したがって、空気が収容室Kの左右両側の壁部12側に流れることが抑制されるため、旋回流の発生が抑制される。これにより、エンジンEGの運転が不安定化することを抑制でき、機体Bの試験を適切に行うことが可能となる。また、気流調整部材20、20A、20B、20Cを使用位置P1、P3、P5、P7に配置することで実現可能であるため、既存の消音装置に対しても容易に実装することができる。
【0057】
第2態様に係る消音装置は、第1態様に係る消音装置において、気流調整部材20、20A、20B、20Cが、使用位置P1、P3、P5、P7と、壁部12及び天井部13の少なくとも一方に沿った待機位置P2、P4、P6、P8との間を移動可能に設けられる。例えば旋回流の影響を受けやすい機種の機体B、旋回流の影響を受けにくい機種の機体B等のように異なる機種の試験を行う場合、機種に応じて気流調整部材20、20A、20B、20Cの位置を使用位置P1、P3、P5、P7と待機位置P2、P4、P6、P8とで切り替えることで、機種ごとに適した試験環境を容易に実現することができる。
【0058】
第3態様に係る消音装置は、第2態様に係る消音装置において、気流調整部材20、20A、20Bが、回動軸21、21A、21B、21Dを介して取り付けられ、回動軸21を中心として使用位置P1、P3、P5と待機位置P2、P4、P6との間を回動可能に設けられ、待機位置P2、P4、P6が、気流調整部材20、20A、20Bが左右方向の両側の壁部12、又は上下方向の両側の床部11並びに天井部13に沿って配置される位置であり、使用位置P1、P3、P5が、気流調整部材20、20A、20Bが左右方向の両側の壁部12、又は上下方向の両側の床部11並びに天井部13に対して傾いて配置される位置である。したがって、気流調整部材20、20A、20Bを容易に使用位置P1、P3、P5と待機位置P2、P4、P6との間で移動させることができる。
【0059】
第4態様に係る消音装置は、第2態様に係る消音装置において、気流調整部材20Cが、巻き取り軸21Cに巻き取り可能に設けられ、待機位置P8が、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cに巻き取られる位置であり、使用位置P7が、気流調整部材20Cが巻き取り軸21Cから繰り出される位置である。この構成によれば、回動軸回りに回動させる構成とは異なる構成により、気流調整部材20Cを使用位置P7と待機位置P8との間で移動させることができる。
【0060】
第5態様に係る消音装置は、第1態様から第4態様のいずれかに係る消音装置において、気流調整部材20、20A、20B、20Cが、使用位置P1、P3、P5、P7において左右方向に対称となるように配置される。したがって、旋回流の発生をより確実に抑制することができる。
【0061】
第6態様に係る消音装置は、第1態様から第5態様のいずれかに係る消音装置において、気流調整部材20、20B、20Cが、収容室Kの左右方向の両側に配置される。したがって、エンジンEGの駆動時において空気が収容室Kの左側壁部12cの側及び右側壁部12dの側に流れることを抑制することができる。
【0062】
第7態様に係る消音装置は、第1態様から第5態様のいずれかに係る消音装置において、気流調整部材20Aが、収容室Kの上下方向の両側に配置される。
【0063】
第8態様に係る消音装置は、第1態様から第7態様のいずれかに係る消音装置において、吸気口14が、天井部13の前方端部に設けられる。したがって、機体収容部10をコンパクトな構成とすることができる。また、壁部12に吸気口14が設けられないため、壁部12の周囲において空気の吸い込みによる気流の発生を抑制できる。このため、壁部12の周囲を通路等として使用することができる。
【0064】
第9態様に係る消音装置は、第1態様から第8態様のいずれかに係る消音装置において、気流調整部材20Dが、前後方向の傾きを調整可能である。この構成により、エンジンEGの駆動時における空気の流れを微調整することができる。
【0065】
第10態様に係る消音装置は、第1態様から第9態様のいずれかに係る消音装置において、気流調整部材20、20A、20B、20Cが、メッシュ状に形成される。したがって、気流調整部材20、20A、20B、20Cの軽量化を図ることができる。また、気流調整部材20が受ける風圧を抑えることができる。
【符号の説明】
【0066】
10,110 機体収容部
11,111 床部
12 壁部
12a 前側壁部
12b 後側壁部
12c 左側壁部
12d 右側壁部
13 天井部
14,114 吸気口
15 排気口
17 吸気ダクト
17a 吸気通路
18 開放口
20,20A,20B,20C,20D 気流調整部材
21,21A,21B,21D 回動軸
21C 巻き取り軸
22B 連結部
22C 収容ケース
100,100A,100B,100C,200 消音装置
B 機体
EG エンジン
K,K2 収容室
P1,P3,P5,P7 使用位置
P2,P4,P6,P8 待機位置