IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人関西文理総合学園の特許一覧

<>
  • 特開-粒子状物質の捕集装置及び捕集方法 図1
  • 特開-粒子状物質の捕集装置及び捕集方法 図2
  • 特開-粒子状物質の捕集装置及び捕集方法 図3
  • 特開-粒子状物質の捕集装置及び捕集方法 図4
  • 特開-粒子状物質の捕集装置及び捕集方法 図5
  • 特開-粒子状物質の捕集装置及び捕集方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169740
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】粒子状物質の捕集装置及び捕集方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/12 20060101AFI20231122BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C12M1/12
C12M1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081045
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】503303466
【氏名又は名称】学校法人関西文理総合学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB02
4B029BB13
4B029CC03
4B029DG08
4B029GB05
4B029HA06
(57)【要約】
【課題】従来の衝突法の分析対象が易培養性細菌に限定されるという問題点や従来のフィルター法のコンタミ除去が困難という問題点を解決可能な粒子状物質の捕集装置及び捕集方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フィルター部1と、フィルター部1が脱着可能な筐体部11とを備え、筐体部11は、ブロア12と、ブロア12の駆動回路13と、ブロア12を内蔵する金属製の第一室170及び駆動回路13を内蔵する第二室171に分けられた筐体17とを備え、筐体17は、外部から第一室170内に空気を供給する給気部18と、第一室170内の空気を外部に排出する排気部19とを備え、フィルター部1は、給気部18に脱着可能な金属製の接続部材10と、接続部材10に分離可能に連結される連結部材2と、粒子状物質を捕集可能な金属製フィルター6とを備え、金属製フィルター6は厚みが2μm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に浮遊する粒子状物質を捕集するための捕集装置であって、
導入口から導出口に向かって内部を空気が流通可能なフィルター部と、前記フィルター部が取り外し可能に取り付けられる筐体部と、を備え、
前記筐体部は、ブロアと、前記ブロアを駆動するための駆動回路と、前記ブロアを内蔵する金属製の第一室及び前記駆動回路を内蔵する第二室に分けられた筐体と、を備え、
前記筐体は、前記ブロアの駆動時に該筐体外から前記第一室内に空気を供給する給気部と、前記第一室内に供給された空気を該筐体外に排出する排気部と、を備え、
前記フィルター部は、前記導出口を備えかつ前記給気部に取り外し可能に取り付けられる金属製の接続部材と、前記導入口を備えかつ前記接続部材に分離可能に連結される連結部材と、前記粒子状物質を捕集可能でありかつ前記接続部材及び前記連結部材の内部に収容される金属製フィルターと、を備え、
前記金属製フィルターは、厚みが2μm以下である、粒子状物質の捕集装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記第一室及び前記第二室が一体化されており、仕切りにより互いに空気の連通が不能な前記第一室及び前記第二室に分けられた一つの金属製の筐体からなり、
前記仕切りに、前記ブロアと前記駆動回路を接続する接続端子が気密に設けられている、請求項1に記載の粒子状物質の捕集装置。
【請求項3】
前記ブロアは、消費電力が3W以下のブロアであり、複数の前記ブロアが前記直列及び/又は並列に接続されている、請求項1に記載の粒子状物質の捕集装置。
【請求項4】
前記接続部材及び前記連結部材は、内部の前記金属製フィルターよりも前記導入口側において、前記金属製フィルターと比べて空気の通過可能面積が大きい樹脂製メンブレンフィルターを収容しており、
前記フィルター部は、前記接続部材及び前記連結部材と分離可能でありかつ前記樹脂製メンブレンフィルター及び前記金属製フィルターの間に位置して内部の空気が流れる流路を次第に縮小させる金属製の流路縮小部材をさらに備える、請求項1に記載の粒子状物質の捕集装置。
【請求項5】
前記金属製フィルターは、いずれも流入口から流出口に向かって内部を空気が流通可能な一対の挟持部材であって、一方の前記流出口と他方の前記流入口が隣接するように分離可能に連結された金属製の一対の挟持部材の間に挟み込まれた状態で、前記接続部材及び前記連結部材の内部に収容されている、請求項1に記載の粒子状物質の捕集装置。
【請求項6】
前記粒子状物質中の細菌及び/又はウイルスを採取するために使用される、請求項1に記載の粒子状物質の捕集装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の捕集装置を用いて空気中に浮遊する粒子状物質を捕集する捕集方法であって、
前記フィルター部を分解して、前記フィルター部を構成する複数の部材のうち金属製の部材を洗浄するフィルター部洗浄工程と、
前記フィルター部を組み立てて前記筐体部に取り付けた後、前記捕集装置を洗浄する装置洗浄工程と、
前記ブロアを駆動させて被処理空気を前記導入口から前記フィルター部に導入して前記フィルター部を通過させ、前記金属製フィルターにより被処理空気中に浮遊する粒子状物質を捕集する捕集工程と、を含み、
前記装置洗浄工程は、
前記ブロアを駆動させてオゾンガスを前記導入口から前記フィルター部に導入して前記フィルター部、前記給気部、前記第一室及び前記排気部を通過させる工程を含む、粒子状物質の捕集方法。
【請求項8】
前記フィルター部洗浄工程は、
前記フィルター部を構成する複数の金属製の部材を超純水中で超音波洗浄又は揺動洗浄する工程と、
前記複数の金属製の部材を脂溶性の有機溶媒中で超音波洗浄又は揺動洗浄する工程と、
前記複数の金属製の部材に付着した有機物を紫外線及び/又はオゾンで酸化分解する工程と、を含む、請求項7に記載の粒子状物質の捕集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に浮遊する粒子状物質を捕集するための捕集装置及び捕集方法に関する。特に本発明は、細菌やウイルスを原因とする疾病のうち、空気を介して人畜に感染する疾病の予防対策の分野で利用され、空気中の粒子状物質に含まれる細菌やウイルスの他、粒子状物質に付着した細菌やウイルスの採取に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中に浮遊する細菌の分析法として、「衝突法(インパクター方式)」が公定法(薬局方、NASA規格等)として利用されている。衝突法は、まず、寒天等の培地に空気を吹き付け、培地衝突時の気流の流線変化で生じる慣性力を利用して、空気中の細菌を培地に衝突・付着させ、その後、培地上で付着した細菌を培養してコロニーを計数するという方法である。例えば、Merck社製のRCSハイフロー等が、衝突法用のエアロゾル捕集装置として商品化されている。
【0003】
また、近年は「フィルター法」も利用されている。フィルター法は、樹脂製メンブレンフィルターを介して空気を吸引することで、空気中の細菌やウイルスをフィルターで捕集し、その後、捕集物を遺伝子解析技術等で分析する方法である。例えば、Research International社製のスマートエアサンプラー等が、フィルター法用のエアロゾル捕集装置として商品化されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衝突法では、培地による培養を前提にしているため、分析対象が易培養性細菌に限定されるという問題点がある。細菌全体で易培養性細菌の割合は1%未満(99%以上は難培養性細菌)と推定されており、この方法では、ごく一部の細菌しか評価できない。また、ウイルスは培養(コロニー形成)ができないため、衝突法では評価できない。
【0005】
一方、フィルター法では、空気中に浮遊する細菌やウイルスをフィルターで捕集して分析するため、捕集装置に対してコンタミ(意図せず付着した細菌やウイルス)を捕集前に除去しておく必要がある。コンタミの除去処理としては、樹脂製メンブレンフィルターをオートクレーブ、γ線、次亜塩素酸、エタノールで滅菌する処理や、捕集装置において空気が通過する空気流路を次亜塩素酸やエタノールを含む気流で洗浄する処理が従来では行われている。しかし、これらの処理で細菌を滅菌したり、ウイルスを不活化できたとしても、その残滓が残り、その残滓中の遺伝子がコンタミになるため、これらの処理は分析を遺伝子解析で行う場合には洗浄能力が全く不足している。さらに、樹脂製メンブレンフィルターで細菌やウイルスを捕集するため、フィルター内部に潜り込んでしまう細菌やウイルスが存在し、それらの回収が困難という問題点もある。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の粒子状物質の捕集装置及び捕集方法は、空気中に浮遊する細菌やウイルスをフィルターで捕集することで、全細菌・ウイルスをその後の分析対象とすることができ、従来の衝突法の分析対象が易培養性細菌に限定されるという問題点を解決することを目的とする。また、本発明の粒子状物質の捕集装置及び捕集方法は、フィルターや捕集装置において空気が通過する空気流路のコンタミ除去を紫外線(UV)やオゾンを用いた有機物分解技術により行うことで、遺伝子部を含めて細菌やウイルスの分解処理を可能とし、従来のフィルター法のコンタミ除去が困難という問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的の達成のため、以下の項1に記載の粒子状物質の捕集装置を包含する。
【0008】
項1.空気中に浮遊する粒子状物質を捕集するための捕集装置であって、
導入口から導出口に向かって内部を空気が流通可能なフィルター部と、前記フィルター部が取り外し可能に取り付けられる筐体部と、を備え、
前記筐体部は、ブロアと、前記ブロアを駆動するための駆動回路と、前記ブロアを内蔵する金属製の第一室及び前記駆動回路を内蔵する第二室に分けられた筐体と、を備え、
前記筐体は、前記ブロアの駆動時に該筐体外から前記第一室内に空気を供給する給気部と、前記第一室内に供給された空気を該筐体外に排出する排気部と、を備え、
前記フィルター部は、前記導出口を備えかつ前記給気部に取り外し可能に取り付けられる金属製の接続部材と、前記導入口を備えかつ前記接続部材に分離可能に連結される連結部材と、前記粒子状物質を捕集可能でありかつ前記接続部材及び前記連結部材の内部に収容される金属製フィルターと、を備え、
前記金属製フィルターは、厚みが2μm以下である、粒子状物質の捕集装置。
【0009】
上記項1において、粒子状物質は、空気中に浮遊する微小な(マイクロメートルの大きさの)液体又は固体の粒子であり、例えばマイクロ飛沫、飛沫核、無機粉じん、生物由来の粒子状物質(花粉、胞子、細菌やウイルス等の微生物、有機粉じん)を含む。
【0010】
また本発明は、上記項1に記載の粒子状物質の捕集装置の好ましい態様として、以下の項2に記載の粒子状物質の捕集装置を包含する。
【0011】
項2.前記筐体は、前記第一室及び前記第二室が一体化されており、仕切りにより互いに空気の連通が不能な前記第一室及び前記第二室に分けられた一つの金属製の筐体からなり、
前記仕切りに、前記ブロアと前記駆動回路を接続する接続端子が気密に設けられている、項1に記載の粒子状物質の捕集装置。
【0012】
また本発明は、上記項1及び項2に記載の粒子状物質の捕集装置の好ましい態様として、以下の項3に記載の粒子状物質の捕集装置を包含する。
【0013】
項3.前記ブロアは、消費電力が3W以下の小型かつ低出力のブロアであり、複数の前記ブロアが直列及び/又は並列に接続されている、項1又は2に記載の粒子状物質の捕集装置。
【0014】
また本発明は、上記項1から項3に記載の粒子状物質の捕集装置の好ましい態様として、以下の項4に記載の粒子状物質の捕集装置を包含する。
【0015】
項4.前記接続部材及び前記連結部材は、内部の前記金属製フィルターよりも前記導入口側において、前記金属製フィルターと比べて空気の通過可能面積が大きい樹脂製メンブレンフィルターを収容しており、
前記フィルター部は、前記接続部材及び前記連結部材と分離可能でありかつ前記樹脂製メンブレンフィルター及び前記金属製フィルターの間に位置して内部の空気が流れる流路を次第に縮小させる金属製の流路縮小部材をさらに備える、項1から3のいずれか一項に記載の粒子状物質の捕集装置。
【0016】
また本発明は、上記項1から項4に記載の粒子状物質の捕集装置の好ましい態様として、以下の項5に記載の粒子状物質の捕集装置を包含する。
【0017】
項5.前記金属製フィルターは、いずれも流入口から流出口に向かって内部を空気が流通可能な一対の挟持部材であって、一方の前記流出口と他方の前記流入口が隣接するように分離可能に連結された金属製の一対の挟持部材の間に挟み込まれた状態で、前記接続部材及び前記連結部材の内部に収容されている、項1から4のいずれか一項に記載の粒子状物質の捕集装置。
【0018】
また本発明は、上記項1から項5に記載の粒子状物質の捕集装置の好ましい態様として、以下の項6に記載の粒子状物質の捕集装置を包含する。
【0019】
項6.前記粒子状物質中の細菌及び/又はウイルスを採取するために使用される、項1から5のいずれか一項に記載の粒子状物質の捕集装置。
【0020】
また、本発明は、上記目的の達成のため、以下の項7に記載の粒子状物質の捕集方法を包含する。
【0021】
項7.項1から6のいずれか一項に記載の捕集装置を用いて空気中に浮遊する粒子状物質を捕集する捕集方法であって、
前記フィルター部を分解して、前記フィルター部を構成する複数の部材のうち金属製の部材を洗浄するフィルター部洗浄工程と、
前記フィルター部を組み立てて前記筐体部に取り付けた後、前記捕集装置を洗浄する装置洗浄工程と、
前記ブロアを駆動させて被処理空気を前記導入口から前記フィルター部に導入して前記フィルター部を通過させ、前記金属製フィルターにより被処理空気中に浮遊する粒子状物質を捕集する捕集工程と、を含み、
前記装置洗浄工程は、
前記ブロアを駆動させてオゾンガスを前記導入口から前記フィルター部に導入して前記フィルター部、前記給気部、前記第一室及び前記排気部を通過させる工程を含む、粒子状物質の捕集方法。
【0022】
また本発明は、上記項7に記載の粒子状物質の捕集方法の好ましい態様として、以下の項7から項8に記載の粒子状物質の捕集方法を包含する。
【0023】
項8.前記フィルター部洗浄工程は、
前記フィルター部を構成する複数の金属製の部材を脂溶性の有機溶媒中で超音波洗浄又は揺動洗浄する工程と、
前記複数の金属製の部材に付着した有機物を紫外線及び/又はオゾンで酸化分解する工程と、を含む、項7に記載の粒子状物質の捕集方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の粒子状物質の捕集装置及び捕集方法によれば、空気中に浮遊する粒子状物質をフィルターで捕集することで、粒子状物質に含まれる及び/又は粒子状物質に付着する全細菌・ウイルスをその後の分析対象とすることができ、従来の衝突法の分析対象が易培養性細菌に限定されるという問題点を解決することができる。また、本発明の粒子状物質の捕集装置及び捕集方法によれば、粒子状物質を捕集するフィルターや捕集装置において空気が通過する空気流路が金属製であるため、コンタミ除去を紫外線(UV)やオゾンを用いた有機物分解技術により行うことができ、遺伝子部を含めて細菌やウイルスの分解処理を可能となり、従来のフィルター法のコンタミ除去が困難という問題点を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】捕集装置の斜視図である。
図2】捕集装置の断面図である。
図3】フィルター部の分解斜視図である。
図4】フィルター部の断面図である。
図5】金属製フィルターを保持した第二保持部材の平面図及び一部拡大図である。
図6】金属製フィルターを保持した第二保持部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0027】
粒子状物質の捕集装置
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る粒子状物質の捕集装置(以下、単に「捕集装置」という。)の概略構成を示す。本実施形態の捕集装置は、空気中に浮遊する粒子状物質を捕集するための装置である。捕集装置により捕集される粒子状物質としては、空気中に浮遊する微小な例えばマイクロメートルの大きさの液体又は固体の粒子であり、特に限定されないが、例えばマイクロ飛沫、飛沫核、無機粉じん、生物由来の粒子状物質(花粉、胞子、細菌やウイルス等の微生物、有機粉じん)を挙げることができる。
【0028】
本実施形態の捕集装置は、例えば細菌やウイルスを原因とする疾病のうち、空気を介して人畜に感染する疾病の予防対策の分野で利用され、空気中の粒子状物質に含まれる細菌やウイルスの他、粒子状物質に付着した細菌やウイルスの採取に利用される。なお、本実施形態の捕集装置は、必ずしも上述した用途による使用に限定されない。
【0029】
本実施形態の捕集装置は、フィルター部1、及び、フィルター部1が取り外し可能に取り付けられる筐体部11を備える。
【0030】
フィルター部1は、互いに対向する導入口20及び導出口100を備え、導入口20から導出口100に向かって内部を空気が流通可能である。フィルター部1は、内部を流れる空気中に浮遊する粒子状物質を捕集可能な金属製フィルター6を内蔵している。
【0031】
筐体部11は、筐体部11外の空気(以下、「外気」ともいう。)を筐体部11内に供給するための給気部18、及び、筐体部11内に供給された空気を筐体部11外に排出するための排気部19を備えており、給気部18にフィルター部1が取り外し可能に取り付けられる。筐体部11は、フィルター部1の導入口20から空気を取り込んで金属製フィルター6を通過させかつ金属製フィルター6を通過した空気を導出口100及び給気部18から筐体部11内を経由して排気部19から排出する気流を生み出すためのブロア12を内蔵している。なお、筐体部11の給気部18や排気部19には、捕集装置の不使用時に、筐体部11内の汚染を防ぐために蓋や栓が取り外し可能に取り付けられる。
【0032】
捕集装置のサイズは、特に限定されないが、小型であることが好ましく、本実施形態では、筐体部11のサイズが102mm×60mm45mmであり、フィルター部1の筐体部2に装着された状態におけるサイズがφ40mm×26.2mmである。
【0033】
以下、本実施形態の捕集装置の各構成部材をより詳細に説明する。
【0034】
フィルター部
図2から図4に示すように、フィルター部1は、導入口20を備える金属製の連結部材2、樹脂製メンブレンフィルター3、樹脂製メンブレンフィルター3を保持する金属製の第一保持部材4、第一シール部材5、金属製フィルター6、金属製フィルター6を保持する金属製の第二保持部材7、第二シール部材8、金属製のねじれ抑制部材、及び、導出口100を備える金属製の接続部材10を備える。
【0035】
接続部材10は、筐体部11の給気部18に取り外し可能に取り付けられる。連結部材2は、接続部材10に分離可能に連結される。接続部材10は、樹脂製メンブレンフィルター3、第一保持部材4、第一シール部材5、金属製フィルター6、第二保持部材7、第二シール部材8及びねじれ抑制部材9が分離可能に収容される。これらの部材3-9を接続部材10に収容した状態で接続部材10及び連結部材2を連結し、収容した部材3-9を連結部材2及び接続部材10で上下から挟み込むことにより、フィルター部1の全ての構成部材2-10が一体化されて、フィルター部1が形成される。
【0036】
フィルター部1は、その構成部材2-10が後述する洗浄の際には全てが互いに分離可能であり、捕集装置に用いる場合に組み立てられて筐体部11に装着される。以下、フィルター部1の各構成部材2-10をより詳細に説明する。
【0037】
連結部材
図2から図4に示すように、連結部材2は、金属製であり、特に限定されないが、例えばステンレスやアルミニウム等の金属で形成される。連結部材2の内部には、互いに対向する平坦な上端面及び下端面の間を上下方向に延びる例えば横断面視円形状の貫通孔21が形成されており、上端面における開口が導入口20である。貫通孔21は、フィルター部1内を空気が流れるための流路を構成し、上下方向に均一の直径で延びている。連結部材2は、平面視で大きさの異なる上下二つの筒状の部材22,23が上下に連接された構造であり、上側部材22は下側部材23よりも大きく、下側部材23は接続部材10の上端面における開口(以下、「上端開口」という。)とほぼ同じ又は僅かに小さい。そのため、連結部材2の下側部材23は接続部材10の上端開口の内側に嵌まり込み、連結部材2の上側部材22は接続部材10の上端開口を覆いながら上端面の上側に位置する。
【0038】
連結部材2の下側部材23は、特に限定されないが、好ましくは横断面視円形状を呈しており、外周面に雄ねじ(図示は省略)が形成されている。接続部材10の上端開口側の内周面には雌ねじが形成されており、当該雌ねじは下側部材23の雄ねじと螺合する。これにより、連結部材2を接続部材10から容易に外れないよう両者を連結可能である。なお、連結部材2及び接続部材10を連結する手段は特に限定されず、その他の種々の公知の手段を用いることができる。
【0039】
接続部材
図2から図4に示すように、接続部材10は、金属製であり、例えばステンレスやアルミニウム等の金属で形成される。接続部材10の内部には、互いに対向する平坦な上端面及び下端面の間を上下方向に延びる例えば横断面視円形状の貫通孔101が形成されており、下端面における開口が導出口100である。貫通孔101は、フィルター部1内を空気が流れるための流路を構成する。接続部材10は、平面視で大きさの異なる上下二つの筒状の部材102,103が上下に連接された構造であり、上側部材102は下側部材103よりも大きく、下側部材103は給気部18の内側に嵌まり込む大きさである。そのため、接続部材10の下側部材103が給気部18の内側に嵌まり込むことで、接続部材10が給気部18に接続され、接続部材10の上側部材102は筐体部11の天井壁173の上側に位置する。
【0040】
接続部材10の下側部材103は、特に限定されないが、好ましくは横断面視円形状を呈しており、外周面に雄ねじ(図示は省略)が形成されている。給気部18の内周面には雌ねじが形成されており、当該雌ねじは下側部材103の雄ねじと螺合する。これにより、接続部材10を給気部18から容易に外れないよう両者を連結可能である。なお、接続部材10及び給気部18を連結する手段は特に限定されず、その他の種々の公知の手段を用いることができる。
【0041】
接続部材10の外周面には、特に限定されないが、好ましくは一対の平坦面105が形成されている。フィルター部1を筐体部11の給気部18にねじ込む際に、ユーザは接続部材10の一対の平坦面105を把持することで、フィルター部1を容易にねじ込むことができる。
【0042】
接続部材10の貫通孔101は、特に限定されないが、好ましくは上下方向の途中の三箇所において直径が狭まっている。接続部材10において、最も上方に位置する貫通孔101の直径が最も大きい内部空間に連結部材2の下側部材23が回転可能に収容され、上から二番目に位置する貫通孔101の直径が二番目に大きい内部空間に樹脂製メンブレンフィルター3及び第一保持部材4が回転可能に収容され、上から三番目に位置する貫通孔101の直径が三番目に大きい内部空間に第一シール部材5、金属製フィルター6、第二保持部材7、第二シール部材8及びねじれ抑制部材9の上側部材91が回転可能に収容され、最も下方に位置する貫通孔101の直径が最も小さい内部空間にねじれ抑制部材9の下側部材92が回転可能に収容される。
【0043】
樹脂製メンブレンフィルター
図2から図4に示すように、樹脂製メンブレンフィルター3は、特に限定されないが、例えばナイロン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン等の親水性を有する樹脂で形成された多孔性ろ過膜である。樹脂製メンブレンフィルター3は、特に限定されないが、好ましくは平面視円形状であり、後述する金属製フィルター6よりも大きな外形(本実施形態では円形)を呈する。そのため、樹脂製メンブレンフィルター3は金属製フィルター6と比べて空気の通過可能面積が大きい。
【0044】
樹脂製メンブレンフィルター3は厚みが厚いため、その分、空気が樹脂製メンブレンフィルター3を通過する際の圧力損失が大きくなる。一方で、空気の通過可能面積に比例して圧力損失が低下するため、空気の通過可能面積を大きくすることで圧力損失を低減している。これに対して、金属フィルター3は、後述するが厚みが薄いため、空気の通過可能面積が小さくても圧力損失を低減することができる。
【0045】
樹脂製メンブレンフィルター3の外径は、特に限定されないが、空気が樹脂製メンブレンフィルター3を通過する際の圧力損失を低減するためには空気の通過可能面積が大きいことが好ましく、例えば20mm以上47mm以下である。また、樹脂製メンブレンフィルター3の厚みは、特に限定されないが、空気が樹脂製メンブレンフィルター3を通過する際の圧力損失を低減するためには厚みが薄いことが好ましく、例えば20μm以上200μm以下である。
【0046】
樹脂製メンブレンフィルター3は、金属製フィルター6による捕集対象の粒子状物質とは異なる空気中の粒子状物質を捕集して空気中から取り除くために、フィルター部1に内蔵されている。樹脂製メンブレンフィルター3による捕集対象の粒子状物質は、金属製フィルター6による捕集対象の粒子状物質よりも粒径が大きく、例えば粒径が約10μm以上の粒子状物質とすることができる。
【0047】
樹脂製メンブレンフィルター3としては、この種の装置において従来から使用されている公知のものを用いることができ、例えば外径が25mmで孔サイズが10μmの多孔構造を有するmillpore社製のナイロンネットフィルターやアイソポアを使用することができる。なお、樹脂製メンブレンフィルター3は、低圧損であり無菌や滅菌が保障されているものであれば、上述した例に限られない。また、樹脂製メンブレンフィルター3の外径や孔サイズは、適時変更しても構わない。
【0048】
第一保持部材
図2から図4に示すように、第一保持部材4は、金属製であり、特に限定されないが、例えばステンレスやアルミニウム等の金属で形成される。第一保持部材4は、樹脂製メンブレンフィルター3を保持するため、本実施形態では、樹脂製メンブレンフィルター3を挟持する上側のカバー部材40及び下側の流路縮小部材41を備える。カバー部材40及び流路縮小部材41は互いに分離可能であり、カバー部材40及び流路縮小部材41の間に樹脂製メンブレンフィルター3が挟み込まれている。
【0049】
カバー部材40は、上端面及び下端面が平坦でありかつ中央に例えば横断面視円形状の貫通孔400が形成された板状を呈している。カバー部材40は、特に限定されないが、好ましくは横断面視円形状であり、カバー部材40の外周面が接続部材10の内周面に接触している。貫通孔400は、フィルター部1内を空気が流れるための流路を構成し、貫通孔400の上端は空気の流入口であり、貫通孔400の下端は空気の流出口である。貫通孔400は、連結部材2の貫通孔20とほぼ等しい直径で上下方向に延びている。
【0050】
カバー部材40の下端面(流路縮小部材41と向かい合う側の面)の外周縁部には、特に限定あれないが、好ましくは周方向に沿って一周にわたり下方に突き出る凸部401が設けられている。
【0051】
流路縮小部材41は、上端面及び下端面が平坦でありかつ中央に例えば横断面視円形状の貫通孔410が形成された板状を呈している。流路縮小部材41は、特に限定されないが、好ましくは横断面視円形状であり、流路縮小部材41の外周面が接続部材10の内周面に接触している。貫通孔410は、フィルター部1内を空気が流れるための流路を構成し、貫通孔410の上端は空気の流入口であり、貫通孔410の下端は空気の流出口である。
【0052】
流路縮小部材41の貫通孔410は、特に限定されないが、好ましくは、下方に向かうに連れて縮径する上側部分411、及び、均一な直径で上下方向に延びる下側部分412を備える。上側部分411の上端の流入口の直径は、カバー部材40の貫通孔400の直径とほぼ等しく、上側部分411はフィルター部1内の空気が流れる流路を次第に縮小させる機能を有する。下側部分412の直径は、上側部分411の下端における直径とほぼ等しい。
【0053】
流路縮小部材41よりも上流側の樹脂製メンブレンフィルター3と、流路縮小部材41よりも下流側の金属製フィルター6とでは外径が異なる。そのため、流路縮小部材41は、樹脂製メンブレンフィルター3及び流路縮小部材41の間においてフィルター部1内の空気が流れる流路を次第に縮小させるために、フィルター部1に内蔵されている。流路縮小部材41の貫通孔410の上側部分411がテーパ状であり下方に向かうに連れて徐々に縮径しているため、空気中の粒子状物質を流路縮小部材41内で滞留させることなくスムーズに下方の金属製フィルター6の方に誘導することができる。
【0054】
流路縮小部材41の上端面(カバー部材40と向かい合う側の面)の外周縁部には、特に限定されないが、好ましくは周方向に沿って一周にわたり下方にへこむ凹部413が設けられている。凹部413にカバー部材40の凸部401が嵌まり合うことで、流路縮小部材41上にカバー部材40を位置ずれしないようにセット可能であるとともに、樹脂製メンブレンフィルター3の外周縁部が凸部401及び凹部413により強く挟まれて、樹脂製メンブレンフィルター3をカバー部材40及び流路縮小部材41に一体化することができる。
【0055】
なお、第一保持部材4は、樹脂製メンブレンフィルター3を保持できれば、上述した本実施形態の例に限定されない。
【0056】
第一シール部材
図2から図4に示すように、第一シール部材5は、第一保持部材4及び第二保持部材7により上下に挟まれており、第一保持部材4及び第二保持部材7により押しつぶされることで生ずる反発力によって、フィルター部1内を流れる空気が第一保持部材4及び第二保持部材7の間から漏れ出さないように密封する。第一シール部材5は、例えばシリコン製のOリング等の従来から公知のパッキンを用いることができる。第一シール部材5は、中央に例えば横断面視円形状の貫通孔50が形成されており、貫通孔50の直径は、流路縮小部材41の貫通孔410の下側部分412の直径とほぼ等しい。
【0057】
金属製フィルター
図2から図6に示すように、金属製フィルター6は、特に限定されないが、例えばステンレスやニッケル等の金属で形成される。金属製フィルター6は、特に限定されないが、好ましくは平面視円形状を呈しており、樹脂製メンブレンフィルター3よりも小さな大きな外形(本実施形態では円形)を呈する。そのため、金属製フィルター6は樹脂製メンブレンフィルター3と比べて空気の通過可能面積が小さい。
【0058】
金属製フィルター6は、特に限定されないが、好ましくは薄膜状のメッシュ材で形成されている。金属製フィルター6は、互いに対向する平坦な上端面及び下端面の間を上下方向に真っ直ぐ延びる複数の貫通孔60が形成されている。金属製フィルター6において、複数の貫通孔60は水平面の一方向及び当該一方向に直交する他方向に均等な間隔をあけて整列している。
【0059】
貫通孔60は特に限定されないが、例えば平面視円形状又は矩形状の細孔(微小な孔)である。貫通孔60の孔サイズは、捕集装置が捕集する標的の粒子状物質の粒径に応じて設定される。金属製フィルター6による捕集対象の粒子状物質の粒径が例えば1μm以上10μm以下である場合、複数の貫通孔60の孔サイズは例えば1μm以上3μm以下である。
【0060】
金属製フィルター6の厚みは、空気が金属製フィルター6を通過する際の圧力損失を低減するためには厚みが薄いことが必要であるため、2μm以下とされており、好ましくは1μm以下である。金属製フィルター6の厚みが薄いために金属製フィルター6において生じる圧力損失が極めて低くなると、ブロア12の耐圧要求が低くなり、ブロア12に使い捨て可能なレベルの小型かつ低出力のブロアの使用が可能になる。これにより、捕集装置の小型化かつ低消費電力化を実現できる。そのうえ、詳細は後述するが、捕集装置の洗浄において、オゾンガスを捕集装置内に流通させた際に、オゾンガスがブロア12を通過することでブロア12に劣化が生じる問題が起きるが、ブロア12に使い捨て可能な小型かつ低出力のブロアを使用することで、ブロア12の交換が容易となり、上述したブロア12の劣化の問題を解決できる。
【0061】
さらに厚みの薄い金属製フィルター6を用いることで、金属製フィルター6で捕集した粒子状物質の回収が容易となる。従来例で用いられている樹脂製メンブレンフィルターは厚みが数十から数百μmであり、樹脂製メンブレンフィルターの内部に潜り込んでしまう粒子状物質が存在し、また細孔が入り組んでいるため、樹脂製メンブレンフィルターの内部に潜り込んだ粒子状物質の回収が困難である。これに対して、金属製フィルター6では、捕集した粒子状物質はフィルター上にほぼ水平面上に並ぶため、粒子状物質の回収が容易となる。そのうえ、金属製フィルター6は厚みが薄くてかつ貫通孔61が真っ直ぐ延びるため、詳細は後述するが、フィルター部1の洗浄や捕集装置の洗浄の際に、金属製フィルター6に付着したコンタミの除去が容易となる。例えば、フィルターの厚みが大きくかつ細孔が入り組んでいると、フィルター内部まで紫外線やオゾンが届かないおそれがある。
【0062】
金属製フィルター6としては、例えば外径が8.2mm、厚みが1μm、孔サイズが1.9μmの多孔構造を有する村田製作所製の金属メッシュデバイスやオプトニクス精密社製の絶対寸法フィルターを使用することができる。なお、金属製フィルター6は、低圧損でありかつ捕集装置が捕集する標的の粒子状物質を捕集できれば、上述した例に限られない。また、金属製フィルター6の外径や孔サイズは、適時変更しても構わない。
【0063】
第二保持部材
第二保持部材7は、金属製であり、例えばステンレスやアルミニウム等の金属で形成される。第二保持部材7は、金属製フィルター6を保持するため、本実施形態では、金属製フィルター6を挟持する一対の挟持部材70,71(以下、「上側挟持部材70及び下側挟持部材71」という。)を備える。上側挟持部材70及び下側挟持部材71は互いに分離可能に連結されており、上側挟持部材70及び下側挟持部材71の間に金属製フィルター6が挟み込まれている。
【0064】
上側挟持部材70は、上端面及び下端面が平坦でありかつ中央に例えば横断面視円形状の貫通孔700が形成された板状を呈している。上側挟持部材70は、特に限定されないが、好ましくは横断面視円形状であり、上側挟持部材70の外周面が接続部材10の内周面に接触している。貫通孔700は、フィルター部1内を空気が流れるための流路を構成し、貫通孔700の上端は空気の流入口であり、貫通孔700の下端は空気の流出口である。貫通孔700の上端の流入口の直径は第一シール部材5の貫通孔50の直径とほぼ等しい。貫通孔700は、特に限定されないが、好ましくは下方に向かうに連れて縮径している。
【0065】
上側挟持部材70の貫通孔700の周囲の部分には、上側挟持部材70及び下側挟持部材71を連結するためのボルト72の挿入孔701が周方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。
【0066】
上側挟持部材70の下端面(下側挟持部材71と向かい合う側の面)には、特に限定されないが、好ましくは貫通孔700と隣接する部分に、周方向に沿って一周にわたり下方に突き出る押圧部702が設けられている。
【0067】
下側挟持部材71は、上端面及び下端面が平坦でありかつ中央に例えば横断面視円形状の貫通孔710が形成された板状を呈している。下側挟持部材71は、特に限定されないが、好ましくは横断面視円形状であり、下側挟持部材71の外周面が接続部材10の内周面に接触している。貫通孔710は、フィルター部1内を空気が流れるための流路を構成し、貫通孔710の上端は空気の流入口であり、貫通孔710の下端は空気の流出口である。貫通孔710の上端の流入口の直径は上側挟持部材70の貫通孔700における下端の流出口の直径とほぼ等しい。貫通孔710は、特に限定されないが、好ましくは下方に向かうに連れて拡径している。
【0068】
下側挟持部材71の貫通孔710の周囲の部分には、上側挟持部材70の挿入孔701と連通するねじ孔711が周方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。上側挟持部材70及び下側挟持部材71は、上側挟持部材70の流出口と下側挟持部材71の流入口が隣接するように配置され、挿入孔701からボルト72をねじ孔711にねじ込むことで、下側挟持部材71から上側挟持部材70が容易に外れないよう連結可能である。なお、上側挟持部材70及び下側挟持部材71を連結する手段は特に限定されず、その他の種々の公知の手段を用いることができる。
【0069】
下側挟持部材71の上端面(上側挟持部材70と向かい合う側の面)には、特に限定されないが、好ましくは貫通孔710と隣接する部分に、周方向に沿って一周にわたり下方にへこむ収容部712が設けられている。収容部712には金属製フィルター6が収容される。収容部712に収容された金属製フィルター6の外周縁部を上方から第一挟持部材70の押圧部702が押圧することで、金属製フィルター6は上側挟持部材70及び下側挟持部材71に挟持され、動くことが規制されている。
【0070】
なお、第二保持部材7は、金属製フィルター6を保持できれば、上述した本実施形態の例に限定されない。
【0071】
第二シール部材
第二シール部材8は、第二保持部材7及びねじれ抑制部材9により上下に挟まれており、第二保持部材7及びねじれ抑制部材9により押しつぶされることで生ずる反発力によって、フィルター部1内を流れる空気が第二保持部材7及びねじれ抑制部材9の間から漏れ出さないように密封する。第二シール部材8は、例えばシリコン製のOリング等の従来から公知のパッキンを用いることができる。第二シール部材8は、中央に例えば横断面視円形状の貫通孔80が形成されており、貫通孔80の直径は、第二保持部材7の下側挟持部材71の貫通孔710における下端の流出口の直径とほぼ等しい。
【0072】
ねじれ抑制部材
ねじれ抑制部材9は、金属製であり、例えばステンレスやアルミニウム等の金属で形成される。ねじれ抑制部材9は、上端面及び下端面が平坦でありかつ中央に例えば横断面視円形状の貫通孔90が形成された板状を呈している。ねじれ抑制部材9は、特に限定されないが、好ましくは横断面視円形状であり、ねじれ抑制部材9の外周面が接続部材10の内周面に接触している。貫通孔90は、フィルター部1内を空気が流れるための流路を構成し、上下方向に均一の直径で延びている。貫通孔90の上端は空気の流入口であり、貫通孔90の下端は空気の流出口である。
【0073】
ねじれ抑制部材9は、特に限定されないが、好ましくは平面視で大きさの異なる上下二つの部材91,92が上下に連接された構造であり、上側部材91は下側部材92よりも大きく、下側部材91は接続部材10の導出口100とほぼ同じ又は僅かに小さい。そのため、ねじれ抑制部材9の下側部材92は、接続部材10の導出口100の内側(接続部材10の内周面の下端側の一部分であって内側に突き出る突出部分104の内側)に嵌まり込み、ねじれ抑制部材9の上側部材91は突出部分104の上側に位置する。
【0074】
ねじれ抑制部材9は、フィルター部1を一体化するために連結部材2を接続部材10にねじ込む際に発生するねじれ(応力)を逃がすために接続部材10に収容されている。連結部材2を接続部材10にねじ込む際に、第一シール部材5及び第二シール部材8を介して互いに密着する第一保持部材4、第二保持部材7及びねじれ抑制部材9が回転することでねじれ(応力)を逃がすことができる。
【0075】
筐体部
次に、筐体部11について詳細に説明する。図1及び図2に示すように、筐体部11は、ブロア12、ブロア12を駆動するための駆動回路13、並びに、ブロア12及び駆動回路13を内蔵する筐体17を備える。ブロア12及び駆動回路13は、配線及び接続端子14を介して電気的に接続されている。駆動回路13には、配線及び電源接続端子15を介して例えばモバイルバッテリー等の電源装置(図示は省略)に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、電源装置は捕集装置と別体とされているが、筐体部11に電源装置が内蔵され、充電用端子や電源スイッチ等を筐体部11に設けてもよい。
【0076】
筐体
図1及び図2に示すように、筐体17は、例えば直方体型の箱体であり、ブロア12を内蔵する第一室170及び駆動回路13を内蔵する第二室171に分けられている。筐体17は、特に限定されないが、好ましくは第一室170及び第二室171が一体化されている。つまり、筐体17は、一つの金属製の箱体で構成されており、箱体が箱体内に設けられた仕切り172よって互いに空気の連通が不能な左右二つの金属製の室(第一室170及び第二室171)に分けられている。筐体17は、金属製であり、特に限定されないが、例えばステンレスやアルミニウム等の金属で形成される。
【0077】
筐体17の仕切り172には、ブロア12及び駆動回路13を接続する接続端子14が気密に設けられている。また、筐体17の四つの側壁の中の一つの側壁175には、駆動回路13及び電源装置を接続する電源接続端子15が設けられている。また、筐体17の第一室170の内部空間は支持板177により上下二つの空間に仕切られており、支持板177上に複数(図示例では四つ)のブロア12が設置されている。支持板177には、少なくとも一つの貫通孔178が形成されており、支持板177の上面において貫通孔178を覆うようにブロア12を例えば両面テープ等を用いて固定することで、第一室170内において支持板177の上側の空間から下側の空間へ空気を吸引するようになっている。なお、支持板177の下面にブロア12を例えば両面テープ等を用いて固定してもよい。
【0078】
筐体17は、筐体17外から第一室170内に空気を供給するための給気部18を備えている。給気部18は、特に限定されないが、本実施形態では、筐体17の天井壁173の下面に連接されている。給気部18は、中央に例えば横断面視円形状の貫通孔180が形成された板状を呈しており、貫通孔180は天井壁173に形成された貫通孔176と連通している。給気部18の内周面には、給気部18に取り付けられる接続部材10の下側部材103の外周面に形成された雄ねじが螺合する雌ねじ(図示は省略)が形成されている。
【0079】
筐体17は、第一室170に供給された空気を筐体17外に排出するための排気部19を備えている。排気部19は、特に限定されないが、本実施形態では、筐体17の第一室170を構成する三つの側壁の中の一つの側壁174に形成された貫通孔で構成されている。なお、排気部19は筐体17に複数設けられていてもよい。
【0080】
ブロア
図2に示すように、ブロア12は、一方から空気を吸引しかつ他方から空気を吐き出すエアポンプであり、特に限定されないが、好ましくは小型でかつ消費電力が3W以下の低消費電力の小型かつ低出力のブロア(エア吸引ポンプ)が用いられる。本実施形態では、金属製フィルター6の圧力損失が低いため、ブロア12に使い捨て可能なレベルの小型かつ低出力のブロアの使用が可能であり、これにより、捕集装置の小型化が可能である。小型かつ低出力のブロアとしては、例えば村田製作所製のマイクロブロア MZB1001T02を用いることができる。なお、小型かつ低出力のブロアであれば、上述した例に限定されない。
【0081】
また、ブロア12は、特に限定されないが、駆動時に発生する稼働音が小さいことが好ましい。これにより、捕集装置によって設置箇所の空気中の粒子状物質を捕集する際に、捕集装置を静音で動作させることができ、捕集装置が小型であることも相まって、捕集装置を使用するユーザ(顧客)の事業を妨げずに粒子状物質の捕集が可能である。ブロア12の稼働音は、捕集装置から50cm離れた地点で好ましくは45dB以下であり、より好ましくは30dB以下である。
【0082】
ブロア12は、特に限定されないが、好ましくは複数が直列及び/又は並列に接続される。本実施形態では、四つのブロア12が直列かつ並列に接続されている。ブロア12を直列に接続することで、耐圧の向上が可能であり、ブロア12を並列に接続することで空気の流量を増やすことが可能である。なお、ブロア12の数は、要求性能に応じて適時変更可能である。ブロア12を直列に接続する場合は、特に限定されないが、耐圧の向上のため、隣接するブロア12の間にスペーサ16を配置して、複数のブロア12を固定することが好ましい。
【0083】
駆動回路
図2に示すように、駆動回路13は、昇降電圧回路、電圧安定化回路、AC/DC変換回路、スイッチ回路等から構成されており、電源接続端子15を介して電源装置から供給される電力をブロア12の駆動に必要な直流電圧に変換する。第二室171内の駆動回路13は第一室170内のブロア12と隔離されているため、駆動回路13で変換された駆動電力は、仕切り172に設けられた接続端子14を介して第一室170内のブロア12に供給される。
【0084】
捕集装置内の空気の流れ
次に、上述した本実施形態の捕集装置において、空気が流れる流路について説明する。捕集装置は、ブロア12の駆動により、フィルター部1の導入口20から空気が取り込まれ、取り込まれた空気がフィルター部1内を導出口100に向かって下方に流れる。この際、空気が樹脂製メンブレンフィルター3を通過することで、捕集装置による捕集対象でない空気中の粒子状物質が樹脂製メンブレンフィルター3によって捕集されて空気中から除去される。
【0085】
そして、樹脂製メンブレンフィルター3を通過した空気が流路縮小部材41及び第一挟持部材70により縮径された流路を通って金属製フィルター6を通過することで、捕集装置による捕集対象の空気中の粒子状物質が金属製フィルター6によって捕集されて空気中から除去される。
【0086】
そして、金属製フィルター3を通過した空気が第二挟持部材71により拡径された流路を通って導出口100から給気部18を介して筐体17外から第一室170内に供給され、その後、ブロア12を経由して第一室170内から排気部19を介して筐体17外に排出される。
【0087】
捕集装置による粒子状物質の捕集方法
次に、上述した本実施形態の捕集装置を用いて空気中に浮遊する粒子状物質を捕集する捕集方法(以下、単に「捕集方法」という。)について説明する。
【0088】
捕集方法は、以下の(1)から(3)の工程を含む。
(1)フィルター部1を分解して、フィルター部1を構成する複数の部材を洗浄するフィルター部洗浄工程。
(2)フィルター部1を組み立てて筐体部2に取り付けた後、捕集装置を洗浄する装置洗浄工程。
(3)ブロア12を駆動させて被処理空気を導入口20からフィルター部1に導入してフィルター部1を通過させ、金属製フィルター6により被処理空気中に浮遊する粒子状物質を捕集する捕集工程。
【0089】
また上記(2)の装置洗浄工程は、以下の(2-1)及び(2-2)の工程を含む。
(2-1)ブロア12を駆動させて清浄空気を導入口20からフィルター部1に導入してフィルター部1、給気部18、第一室170及び排気部19を通過させる工程。
(2-2)ブロア12を駆動させてオゾンガスを導入口20からフィルター部1に導入してフィルター部1、給気部18、第一室170及び排気部19を通過させる工程。
【0090】
また上記(1)のフィルター部洗浄工程は、特に限定されないが、好ましくは以下の(1-1)から(1-3)の工程を含むことが好ましい。
(1-1)フィルター部1を構成する複数の金属製の部材2,4,6,7,9,10を超純水中で超音波洗浄又は揺動洗浄する工程。
(1-2)複数の金属製の部材2,4,6,7,9,10を脂溶性の有機溶媒中で超音波洗浄又は揺動洗浄する工程。
(1-3)複数の金属製の部材2,4,6,7,9,10に付着した有機物を紫外線及び/又はオゾンで酸化分解する工程。
【0091】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0092】
(1)フィルター部洗浄工程
捕集装置は、粒子状物質の捕集前にコンタミ(装置内に意図せず残留している細菌やウイルス)を除去するために洗浄が行われる。第一の洗浄工程として、フィルター部1の洗浄を行う。フィルター部1の洗浄を行うにあたっては、まず、フィルター部1を図3に示すように複数の構成部材2-10に分解する。なお、第二保持部材7も第一挟持部材70及び第二挟持部材71に分解して金属製フィルター6を分離する。
【0093】
そして、フィルター部1の複数の構成部材2-10のうち、樹脂製メンブレンフィルター3並びに第一及び第二シール部材5,8を除いた金属製の構成部材2,4,6,7,9,10を全て溶媒洗浄する。溶媒洗浄は、特に限定されないが、好ましくは3種類の溶媒を用い、初めに超純水、次に溶媒置換してエタノール、最後に溶媒置換してアセトンの順番で、各溶媒に金属製の構成部材2,4,6,7,9,10を浸漬させた状態で、超音波洗浄、又は、揺動洗浄を例えば10分から30分程度行う。なお、溶媒の順番は変更してもよく、時間も適宜調整可能である。
【0094】
そして、溶媒洗浄後の複数の金属製の構成部材2,4,6,7,9,10をクリーンベンチ内で風乾した後、アッシング専用装置内に入れて、紫外線及びオゾンのいずれか一方あるいは両方により、金属製の構成部材2,4,6,7,9,10の表面のアッシングを例えば2時間から4時間程度行う。なお、時間は装置能力やコンタミ量により適宜調整可能である。
【0095】
上述したフィルター部1の洗浄において、アッシングで金属製の構成部材2,4,6,7,9,10の表面に付着した大きな有機物を除去するには時間がかかるため、予備洗浄によりコンタミの減量を図ることを目的に溶媒洗浄が予め行われる。超純水による洗浄は、金属製の構成部材2,4,6,7,9,10の表面に付着した付着したコンタミのうち剥離しやすいものを除去するのが目的である。アセトン等の脂溶性の有機溶媒による洗浄は、残ったコンタミの細胞膜やエンベロープなどを破壊して、剥離又は溶出により除去するのが目的である。アッシングによる洗浄は、超純水や脂溶性の有機溶媒による洗浄で最終的に残ったコンタミを紫外線及び/又はオゾンでアッシングすることにより、コンタミを完全に除去するのが目的である。
【0096】
本実施形態の捕集装置で粒子状物質の捕集に金属製フィルター6を採用している理由は、フィルター部洗浄工程の各工程に対応するためである。樹脂製メンブレンフィルターでは、脂溶性の有機溶媒による洗浄時と紫外線及び/又はオゾンによるアッシング時にフィルターを構成する樹脂が破壊されてしまうため、これらの工程を行うことができない。本実施形態の捕集装置は、フィルター部1のコンタミ除去を紫外線及び/又はオゾンを用いた有機物分解技術で行うため、遺伝子部を含めて細菌やウイルスを分解処理が可能となり、従来のフィルター法のコンタミ除去が困難という問題点を解決可能である。
【0097】
(2)装置洗浄工程
フィルター部1の洗浄が終了すると、次に、第二の洗浄工程として、捕集装置の洗浄を行う。捕集装置の洗浄を行うにあたっては、まず、アッシング後の金属製の構成部材2,4,6,7,9,10と、別途に無菌や滅菌処理された樹脂製メンブレンフィルター3、さらに別途に純水及びエタノールで超音波洗浄を行い風乾した第一及び第二シール部材5,8とを用いてクリーンベンチ内でフィルター部1を組み立てる。そして、クリーンベンチ内で、別途に無菌や滅菌処理された筐体部11の給気部18にフィルター部1を取り付ける。
【0098】
そして、筐体部11の電源接続端子15に例えば充電済のモバイルバッテリーを接続する。その後、ブロア12を駆動させて、捕集装置に対して例えば流量1.45L/minで約1時間から2時間程度、クリーンベンチ内の清浄空気の吸排気を行うことで、清浄空気により捕集装置における空気が通過する空気流路の洗浄を行う。具体的には、清浄空気をフィルター部1の導入口20からフィルター部1に導入し、フィルター部1、筐体部11の給気部18、筐体17の第一室170、及び排気部19の順に清浄空気を通過させて、これらの内部空間について清浄空気による洗浄を行う。なお、流量や時間は装置能力やコンタミ量により適宜調整可能である。
【0099】
そして、クリーンベンチ内での清浄空気による洗浄が終了した捕集装置に対して、フィルター部1の導入口20においてオゾン発生器からオゾンを発生させ、例えば流量1.45L/minで約1時間から2時間程度、オゾンを含む清浄空気の吸排気を行うことで、オゾンにより捕集装置における空気が通過する空気流路の洗浄を行う。具体的には、オゾンをフィルター部1の導入口20からフィルター部1に導入し、フィルター部1、筐体部11の給気部18、筐体17の第一室170、及び排気部19の順にオゾンを通過させて、これらの内部空間についてオゾンによる洗浄を行う。なお、流量や時間は装置能力やコンタミ量により適宜調整可能である。
【0100】
上述した装置洗浄工程は、筐体部11を含めた捕集装置全体をオゾンでアッシングすることにより、主に筐体部11の空気が流れる流路に付着したコンタミを完全に除去することを目的に行われる。
【0101】
ここで、上述したフィルター部洗浄工程及び装置洗浄工程による洗浄効果を示す。例1-5の計5条件で各洗浄工程の有無により洗浄を行った際の洗浄後の金属製フィルターに残るコンタミ量(細菌由来の遺伝子量)の多寡を調べた。全洗浄工程後、クリーンベンチ内でフィルター部1を解体し、金属製フィルターを取り出し、DNA抽出キット(例えばタカラバイオ社製のNucleospin Soil)に付属しているセラミックビーズ入りチューブ(約2mLL)に入れ、以降、キットの手順に従って、コンタミとして残る細菌由来のDNA抽出を行った。なお、金属製フィルター6は、これらキットのチューブに入れられるように8mmφの大きさのものを用いた。得られたDNA抽出液とプライマーセット(16SrのV3、V4領域用)とマスターミックス(例えば日本ジェネティクス社製のKAPA HiFi HS ReadyMix)を用いてPCR増幅(40サイクル)を行い、アガロース電気泳動を用いて増幅後DNA断片のバンド(550bp)確認を行った。得られたバンド画像を画像処理ソフト(Image-J)で処理し、バンド強度を数値化し、その結果を表1に示す。これらの結果から、洗浄工程が進むにつれて、コンタミが減少していくことが分かった。
【0102】
【表1】
【0103】
(3)粒子状物質を捕集する捕集工程
フィルター部1や捕集装置全体の洗浄が終了すると、次に、捕集装置を所望の捕集場所(例えば、屋外、居室、研究室、オフィス、学校、病院、銀行、ホテル、公官庁等)に設置し、筐体部11の電源接続端子15に例えば充電済のモバイルバッテリーを接続する。その後、ブロア12を駆動させて、捕集装置に対して例えば流量1.45L/minで所定時間(例えば16時間程度)、捕集場所の空気(被処理空気)の吸引を行うことで、被処理空気中の粒子状物質を捕集する。具体的には、被処理空気をフィルター部1の導入口20からフィルター部1に導入してフィルター部1内を通過させ、金属製フィルター6により被処理空気中に浮遊する粒子状物質を捕集する。時間は、捕集場所の空気中に浮遊する粒子状物質の濃度を予め測定し、濃度に応じて、金属製フィルター6が目詰まりしないように調整する。
【0104】
被処理空気の吸引後、クリーンベンチ内でフィルター部1を解体し、粒子状物質を捕集した金属製フィルター6を取り出し、捕集された細菌やウイルスのDNA抽出を行う。これにより、被処理空気中に含まれている細菌やウイルスの分析が可能である。
【0105】
細菌やウイルスの分析方法は特に限定されるものではなく、公知の種々の分析方法を用いることができる。例えば、細菌の分析は、粒子状物質を捕集した金属製フィルター6をDNA抽出キットに付属しているセラミックビーズ入りチューブに入れ、以降、キットの手順に従って、捕集された粒子状物質中の細菌や粒子状物質に付着した細菌のDNA抽出を行う。得られたDNA抽出液と1st-PCR用プライマーセット(16SrのV3、V4領域用)とマスターミックスを用い、メタゲノム解析に用いるDNA領域のPCR増幅(30サイクル)を行う。磁気ビーズ精製後、さらに、精製後溶液と2nd-PCR用プライマーセット(ライブラリー用インデックス付加)とマスターミックスを用い、NGS(次世代シーケンサー)用ライブラリーをPCR増幅(8サイクル)で作製する。磁気ビーズ精製後、DNA濃度を調整した後、プーリングサンプルを作製し、NGS装置(例えばイルミナ社製のMiseq)を用いて配列解析を行う。得られた配列データを用い、データベース(例えばGreengenes等)を参照することで、捕集された浮遊細菌菌叢の系統学的組成を決定する。表2は分析結果の一例である。表2中の「リード数」は、配列解析したフラグメントのうち、系統学的組成決定に使用した有効リード数(フラグメント数)を示す。「分類数」は、系統学的組成を7階層(界、門、網、目、科、属、種)で分類した時に本分析で出現した分類数を示す。「病原性種」は、前記分類数のうち、BSL(バイオセーフティレベル)1-4に分類される病原性細菌種の出現数を示す。これらの結果から、捕集装置で捕集した粒子状物質に含まれていた浮遊細菌菌叢が明らかになる。
【0106】
【表2】
【0107】
また、ウイルス(例えば新型コロナウイルス)の分析は、粒子状物質を捕集した金属製フィルター6をRNA抽出キット(例えばタカラバイオ社製のNicleospin RNA Virus)に付属しているCollection Tubes (2ml)に入れ、以降、キットの手順に従って捕集された浮遊ウイルスのRNA抽出を行う。なお、金属製フィルター6は、新型コロナウイルスの自宅療養者の居室に、発病後4、6、8日後にそれぞれ捕集装置を設置して空気中の粒子状物質を捕集したものである。得られたRNA抽出液とコロナウイルス用プライマーセットと逆転写試薬キット(例えばタカラバイオ社製のPrimeScript Reverse Transcriptate)を用い、遺伝子特異的プライマーによる逆転写反応を行う。さらに、得られたDNA溶液とコロナウイルス用プライマーセットとマスターミッスクを用い、PCR増幅(40サイクル)を行い、磁気ビーズ精製後、アクリルアミド電気泳動によりコロナウイルス由来のバンド(121bp)確認を行う。得られたバンド画像を画像処理ソフトで処理し、バンド強度を数値化する。表3は分析結果の一例である。これらの結果から、捕集装置で捕集した粒子状物質に含まれていた浮遊コロナウイルス量が明らかになる。
【0108】
【表3】
【0109】
捕集装置及び捕集方法の作用効果
上述した本実施形態の捕集装置及び捕集方法によれば、空気中に浮遊した粒子状物質を金属製フィルター6で捕集し、これにより採取した細菌やウイルスを遺伝子解析技術などにより分析する。そのため、分析対象を全細菌・ウイルスとすることができ、従来の衝突法の分析対象が易培養性細菌に限定されるという問題点を解決することができる。
【0110】
加えて、本実施形態の捕集装置及び捕集方法によれば、フィルター部1が主に金属製である。また、筐体部11の空気が通過する空気流路(給気部18、第一室170及び排気部19)も主に金属製である。そのため、捕集装置において空気が通過する空気流路のコンタミ除去を紫外線やオゾンを用いた有機物分解技術により行うことができ、これにより、遺伝子部を含めて細菌やウイルスの分解処理が可能であるため、従来のフィルター法のコンタミ除去が困難という問題点を解決することができる。なお、フィルター部1の非金属製の構成部材である樹脂製メンブレンフィルター3や、第一及び第二シール部材5,8は装置の稼働毎に新品に交換可能なものである。また、筐体部11の第一室170内にあるブロワ12は使い捨て可能な小型かつ低出力のブロアを使用しており、オゾン洗浄による性能劣化が認められれば、新品に交換可能なものである。
【0111】
加えて、本実施形態の捕集装置及び捕集方法によれば、金属製フィルター6の厚みが2μm以下であり、フィルター部1で生じる圧力損失が極めて小さい。そのため、ブロア12の小型化・低出力化(例えば消費電力が3W以下の小型かつ低出力のブロアの使用)が可能となる。そのため、捕集装置の小型化かつ低消費電力化を実現でき、従来のフィルター法による粒子状物質の捕集装置が大型かつ高消費電力化であるという問題を解決することができる。また、上述したフィルター部1の洗浄工程において、紫外線やオゾンが金属製フィルター6の内部まで到達しやすいため、アッシングによるコンタミの除去を効果的に行うことができる。
【0112】
加えて、本実施形態の捕集装置及び捕集方法によれば、ブロア12の小型化・低出力化に伴い静音で稼働するブロア12の使用が可能である。そのため、捕集装置が小型であることも相まって、捕集装置を使用するユーザ(顧客)の事業を妨げずに粒子状物質を捕集することができる。
【0113】
加えて、本実施形態の捕集装置及び捕集方法によれば、金属製フィルター6により粒子状物質を捕集するため、捕集した粒子状物質は、フィルター上にほぼ水平面上に並ぶ。そのため、粒子状物質の回収が容易となる。
【0114】
捕集装置及び捕集方法の変形例
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上述した実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。以下、本発明の他の実施形態について説明する。以下に説明する他の実施形態についても、本発明の目的を達成することができる。
【0115】
例えば、上記実施形態においてフィルター部1が一つの金属製フィルター6を内蔵しているのに変えて、他の実施形態の捕集装置では、フィルター部1が孔サイズの異なる複数の金属製フィルター6を内蔵しており、空気が流れる方向に向かって孔サイズが小さくなるように、複数の金属製フィルター6が配置されていてもよい。この実施形態では、粒子状物質の分画捕集が可能である。
【0116】
例えば、上記実施形態においてフィルター部1が樹脂製メンブレンフィルター3を内蔵しているのに変えて、他の実施形態の捕集装置では、樹脂製メンブレンフィルター3を金属製フィルターに変更されていてもよい。この実施形態では、樹脂製メンブレンフィルター3から変更される金属製フィルターは、もともとの金属製フィルター6と同じサイズであり、孔サイズを大きくしたものである。この実施形態では、上記実施形態のように流路縮小部材41で空気流路を縮小する必要がなく、フィルター部1の構造を簡略化できる。また、樹脂製メンブレンフィルター3はフィルター部洗浄工程が不可であるため、コンタミの除去を完全にはできなかったが、金属製にすることで洗浄工程が可能となり、コンタミの除去を完全におこなうことができる。
【0117】
例えば、上記実施形態において筐体17が一つの箱体で構成されていて、第一室170及び第二室171が一体化されているのに変えて、他の実施形態の捕集装置では、筐体17を二つの箱体で構成し、ブロア12を内蔵する第一室170と駆動回路13を内蔵する第二室171とを別々に分けてもよい。この実施形態では、第二室171にモバイルバッテリーを一体化することで、第一室を空気吸引モジュールとし、第二室171を第一室170において空気を吸引させるための駆動電源モジュールとすることができる。あるいは、さらに他の実施形態の捕集装置として、第一室170を第二室171に内包し、装置洗浄工程に第一室170を第二室171から取り出せるようにしてもよい。
【0118】
例えば、上記実施形態において筐体17の第一室170内にあるブロワ12が装置洗浄工程におけるオゾンによる洗浄での劣化が懸念されるため、他の実施形態として、第一室170の排気部19にガス流量計(例えば浮き子式等)を設置し、捕集装置で粒子状物質の捕集を始める前に筐体17の排気部19に設置した流量計により流量確認を行い、性能劣化が認められた場合にブロア12を交換するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 フィルター部
2 連結部材
20 導入口
3 樹脂製メンブレンフィルター
4 第一保持部材
41 流路縮小部材
6 金属製フィルター
7 第二保持部材
70 上側挟持部材
71 下側挟持部材
10 接続部材
100 導出口
11 筐体部
12 ブロア
13 駆動回路
14 接続端子
17 筐体
170 第一室
171 第二室
図1
図2
図3
図4
図5
図6