(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169747
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】濾過機および濾過方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/01 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
B01D29/04 520E
B01D29/04 510A
B01D29/04 520Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081053
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】久谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹井 一剛
(72)【発明者】
【氏名】田村 晴海
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA26
4D116BB10
4D116BC06
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4D116FF13B
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4D116QA25B
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4D116QA38E
4D116QC04
4D116QC19C
4D116QC34A
4D116QC39
4D116QC49
4D116SS01
4D116SS07
4D116VV11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率的な展延と濾過を実施することが容易な濾過機及び濾過方法を提供する。
【解決手段】固形物と液状物とを含む被処理液が収容される収容空間10aを備えた容器10を有し、容器の底部には被処理液を濾過する濾過部130が設けられ、被処理液の濾過によって固形物を含む堆積物Cが濾過部の上に堆積される濾過機であって、収容空間を加圧するか、濾過部を減圧するかの少なくとも一方を実施して堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置と、収容空間を通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物の展延を行う回転翼30と、回転翼を上下方向に移動させる昇降装置40と、昇降装置による回転翼の移動を制御する制御装置20を備え、制御が、収容空間内での堆積物の表面の位置を非接触方式で検出する検出器81から与えられる位置情報と、気圧についての圧力情報とに基づいて実施される濾過機である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物と液状物とを含む被処理液が収容される収容空間を備えた容器を有し、
該容器の底部には前記被処理液を濾過する濾過部が設けられ、
前記被処理液の濾過によって前記固形物を含む堆積物が前記濾過部の上に堆積される濾過機であって、
前記収容空間を加圧するか、前記濾過部を減圧するかの少なくとも一方を実施して前記堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置と、
前記収容空間を通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物の展延を行う回転翼と、
前記回転翼を上下方向に移動させる昇降装置と、
前記昇降装置による前記回転翼の移動を制御する制御装置と、が更に備えられ、
該制御装置による前記制御が、
前記収容空間内での前記堆積物の表面の位置を非接触方式で検出する検出器から与えられる前記表面についての位置情報と、
前記気圧についての圧力情報とに基づいて実施される濾過機。
【請求項2】
前記検出器が、前記堆積物にレーザー光を照射して前記表面の位置を検出するレーザー式検出器である請求項1記載の濾過機。
【請求項3】
固形物と液状物とを含む被処理液を濾過機で濾過し、該濾過によって濾物を得る濾過方法であって、
前記濾過機は、前記被処理液が収容される収容空間を備えた容器を有し、
該容器の底部には前記被処理液を濾過する濾過部が設けられ、
前記被処理液の濾過によって前記固形物を含む堆積物が前記濾過部の上に堆積されるように構成されており、
前記濾過機は、
前記収容空間を加圧するか、前記濾過部を減圧するかの少なくとも一方を実施して前記堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置と、
前記収容空間を通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物の展延を行う回転翼と、
前記回転翼を上下方向に移動させる昇降装置と、
前記昇降装置による前記回転翼の移動を制御する制御装置と、を更に備え、
該制御装置による前記制御が、
前記収容空間内での前記堆積物の表面の位置を非接触方式で検出する検出器から与えられる前記表面についての位置情報と、
前記気圧についての圧力情報とに基づいて実施されるように構成されており、
前記容器に収容された前記被処理液を前記濾過部で濾過して前記堆積物を前記濾過部の上に堆積させる濾過工程と、
前記堆積物の上方に配置した前記回転翼を該堆積物に向けて降下させるとともに前記回転翼を回転させて前記堆積物の展延を行う展延工程とを実施し、
前記濾過工程では、前記圧力装置で前記気圧を生じさせつつ前記堆積物の脱液を行い、
前記展延工程を前記圧力情報に基づいて実施し、且つ、該展延工程での前記回転翼の降下位置を前記位置情報に基づいて決定する濾過方法。
【請求項4】
前記検出器が、前記堆積物にレーザー光を照射して前記表面の位置を検出するレーザー式検出器である請求項3記載の濾過方法。
【請求項5】
前記展延工程では、
前記堆積物の上方から前記堆積物に向けて前記回転翼の位置を下げる第1降下と、
該第1降下の後に前記回転翼の位置を更に下げる第2降下とが実施され、
前記第1降下での前記回転翼の停止位置が前記位置情報に基づいて決定され、
前記第2降下での前記回転翼の降下速度よりも前記第1降下での前記回転翼の降下速度の方が高速である請求項3又は4記載の濾過方法。
【請求項6】
前記第1降下での前記回転翼の降下位置を前記検出器で検出された前記表面の位置よりも上方とし、
前記第2降下を開始後に前記展延を実施する請求項5記載の濾過方法。
【請求項7】
前記第2降下では複数回に分けて段階的に前記回転翼を降下させ、且つ、複数の段階で展延を行いつつ前記圧力情報を入手し、
該展延工程では、
各段階で前記展延を行う時間について基準時間を設定し、
各段階で前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記堆積物に作用する前記気圧が上昇した場合は次の段階の降下に移行せずに引き続き該展延を継続し、
前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記堆積物に作用する前記気圧が上昇しない場合は、前記回転翼を一段階降下させて前記展延を実施する請求項5記載の濾過方法。
【請求項8】
前記第2降下を開始した後に前記展延を行いつつ前記圧力情報を入手し、
前記展延を行う時間について基準時間を設定するとともに前記堆積物に作用する前記気圧について基準圧力を設定し、
該展延工程は、
前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記気圧が前記基準圧力に達しない場合と、
前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記基準圧力に達したもののその後に前記気圧が前記基準圧力未満に低下した場合との何れかをもって終了する請求項5記載の濾過方法。
【請求項9】
前記第2降下は、前記回転翼の降下位置について下限値を設定して実施する請求項7記載の濾過方法。
【請求項10】
前記第2降下は、前記回転翼の降下位置について下限値を設定して実施する請求項8記載の濾過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過機と濾過方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリーなどのような固形物と液状物との混合物である被処理液を濾物と濾液とに濾別する濾過機が広く用いられている。該濾過機の一つとして、濾過を行うとともに濾物を乾燥して濾過乾燥物を作製する濾過乾燥機が各種の用途で用いられている(下記特許文献1参照)。濾過乾燥機は、被処理液を収容するための収容空間を備えた容器を有し、該容器の底部が前記被処理液を濾過するための濾過部となっている。該濾過部は、板面が略水平となるように配された多孔板である濾板と、該濾板に重ねられた濾布などとで構成されており、前記濾布の表面が濾過面となっている。そのため、該濾過部で被処理液を濾過した際には、濾物が一定高さの堆積物となって前記濾布の上に堆積される。
【0003】
濾過乾燥機では、重力の作用のみで被処理液の濾過を行うと濾過に時間が掛かってしまい、固形物とともに多くの液状物を含んだ堆積物が濾過部の上に堆積してしまうことになる。そうすると、その後の乾燥に際して大きな手間を発生させることになる。そのようなことから従来の濾過乾燥機は、被処理液の濾過に際して容器内に加圧用ガスを導入するなどして該容器内を加圧状態にできるようになっている。このように容器内を加圧状態にすると堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させることができるので濾過速度が向上するだけでなく堆積物に残存する液状物の脱液を促すことができ濾過乾燥物を効率良く製造することができる。
【0004】
濾過乾燥機では、堆積物からの脱液の進行に伴って堆積物に深いひび割れが生じて圧力が作用しなくなることがある。そのため、濾過乾燥機では、下記特許文献1(段落0046-0047など)にも記載されているように濾過開始から一定時間経過した後に堆積物の表面を均す展延工程が実施されたりしている。この展延工程には、被処理液の攪拌や乾燥時における堆積物の攪拌に用いられる回転翼が利用される。そして、下記特許文献2に記載されているように、展延工程を行うのに際しては堆積物の表面に回転翼が到達したことを検知するために回転翼を昇降させるための昇降装置の油圧をモニタリングすることが行われている。即ち、この種の濾過乾燥機では、回転翼を降下させた時に当該回転翼が堆積物から受ける反力を検知して展延工程が開始されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-171310号公報
【特許文献2】特開2007-029926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の濾過乾燥機では、堆積物が柔らかな状態である場合、回転翼が必要以上に堆積物に進入した状態で展延が行われるおそれがあり、堆積物に当接したことを検知できないおそれもある。回転翼が堆積物に必要以上に進入した状態で展延が開始されると回転翼を回転させるためのモーターに過大な負荷が発生したり、回転翼の回転によって堆積物にひび割れを発生させたりすることにもなり得る。また、濾過乾燥機では、常に同じ量の被処理液が導入されるとは限らず、固形物濃度や固形物の質が異なる被処理液が導入される場合もあるため、濾過面からの堆積物の表面までの高さや濾過開始から一定時間経過後の堆積物の硬さなどがバッチごとに変化する可能性がある。そのため、従来のように濾過開始からの時間経過に基づいて展延を開始すると堆積物に液状物がいまだ多く含まれている状態で展延が開始されるおそれもある。
【0007】
従来の濾過乾燥機では、濾過開始からの経過時間や回転翼の降下の際の反力の検知によって展延工程を自動的に開始させることが可能であり、その点では効率的であるとは言えるもののその場合には上記のように展延による脱液が効率的に行われないおそれがある。そして、効率的な展延を実施させることが容易な濾過乾燥機については、これまで見出されていない。尚、そのような問題は、濾過乾燥機に限らず、上記の濾過乾燥機と同様に展延が行われる濾過機全般に共通する。そこで、本発明は、効率的な展延を実施することが容易な濾過機を提供し、効率良く濾過することができる濾過方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、
固形物と液状物とを含む被処理液が収容される収容空間を備えた容器を有し、
該容器の底部には前記被処理液を濾過する濾過部が設けられ、
前記被処理液の濾過によって前記固形物を含む堆積物が前記濾過部の上に堆積される濾過機であって、
前記収容空間を加圧するか、前記濾過部を減圧するかの少なくとも一方を実施して前記堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置と、
前記収容空間を通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物の展延を行う回転翼と、
前記回転翼を上下方向に移動させる昇降装置と、
前記昇降装置による前記回転翼の移動を制御する制御装置と、が更に備えられ、
該制御装置による前記制御が、
前記収容空間内での前記堆積物の表面の位置を非接触方式で検出する検出器から与えられる前記表面についての位置情報と、
前記気圧についての圧力情報とに基づいて実施される濾過機、を提供する。
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、また、
固形物と液状物とを含む被処理液を濾過機で濾過し、該濾過によって濾物を得る濾過方法であって、
前記濾過機は、前記被処理液が収容される収容空間を備えた容器を有し、
該容器の底部には前記被処理液を濾過する濾過部が設けられ、
前記被処理液の濾過によって前記固形物を含む堆積物が前記濾過部の上に堆積されるように構成されており、
前記濾過機は、
前記収容空間を加圧するか、前記濾過部を減圧するかの少なくとも一方を実施して前記堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置と、
前記収容空間を通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物の展延を行う回転翼と、
前記回転翼を上下方向に移動させる昇降装置と、
前記昇降装置による前記回転翼の移動を制御する制御装置と、を更に備え、
該制御装置による前記制御が、
前記収容空間内での前記堆積物の表面の位置を非接触方式で検出する検出器から与えられる前記表面についての位置情報と、
前記気圧についての圧力情報とに基づいて実施されるように構成されており、
前記容器に収容された前記被処理液を前記濾過部で濾過して前記堆積物を前記濾過部の上に堆積させる濾過工程と、
前記堆積物の上方に配置した前記回転翼を該堆積物に向けて降下させるとともに前記回転翼を回転させて前記堆積物の展延を行う展延工程とを実施し、
前記濾過工程では、前記圧力装置で前記気圧を生じさせつつ前記堆積物の脱液を行い、
前記展延工程を前記圧力情報に基づいて実施し、且つ、該展延工程での前記回転翼の降下位置を前記位置情報に基づいて決定する濾過方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率的な展延を実施することが容易な濾過機が提供され、効率良く濾過することが可能な濾過方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、スラリーを収容した状態での濾過乾燥機の様子を示した概略側面図である。
【
図2】
図2は、スラリーを濾過した後の濾過乾燥機の様子を示した概略側面図である。
【
図3】
図3は、
図2の破線IIIの部分を拡大して示した拡大図である。
【
図4】
図4は、上面視における回転翼の様子を示した図(
図2のIV-IV線矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の濾過機や濾過方法の一実施の形態について図を参照しつつ説明する。本実施形態においては、固形物と液状物とを含む被処理液として細かな粒子状の固形物(粉末)が、該固形物が難溶又は不溶な分散媒(例えば、水など)に分散されているスラリーを例に濾過機や濾過方法について説明する。また、本実施形態においては濾過機が濾過乾燥機である場合を例にし、当該濾過乾燥機を用いた濾過方法が濾過乾燥物の製造のために実施される場合を例にして本発明の実施の形態について説明する。まず、濾過乾燥機について説明する。
【0013】
図1に示すように本実施形態における濾過乾燥機100は、前記スラリーSを収容する容器10を有する。本実施形態の容器10は、
図2に示すように前記スラリーSを濾過して前記分散媒の多くを外部に排出した後に前記粉末と一部の分散媒とを含んだ堆積物Cを生じさせ得るように構成されている。
【0014】
本実施形態の容器10は、上下方向に円筒状に延びる側壁部11と、該側壁部11の上端部を塞ぐ天井部12と、前記側壁部11の下端部を塞ぐ下蓋部13とを備えている。本実施形態の容器10は、ドーム型であり、前記天井部12が上方に膨らんで曲面状となっている。一方で前記下蓋部13は直板状であり、平面視における形状が前記側壁部11の内径(直径)よりも大きな直径を有する円板状である。前記下蓋部13は、板面が略水平となるよう前記側壁部11の下端部を塞いでいる。本実施形態の容器10は、側壁部11、天井部12、及び、下蓋部13で囲われた略円柱状の内部空間を有し、該内部空間を前記スラリーSを収容するための収容空間10aとして利用できるようになっている。
【0015】
前記容器10は、前記側壁部11がジャケット構造を有している。即ち、側壁部11は、内壁111と該内壁111を外側から覆う外壁112との二重壁となっていて、該内壁111と外壁112との間に温熱媒や冷熱媒を流通させて内壁111に接するスラリーSを加温したり冷却したりできるようになっている。また、側壁部11は、スラリーSを濾過した後に収容空間10aに残る濾物の乾燥に際しても内壁111からの伝熱(加熱)を実施することができるように構成されている。
【0016】
前記容器10の前記下蓋部13は、
図3に示すように、蓋本体131と、濾板132と、濾布133とを備える。下蓋部13は、下側から前記蓋本体131、前記濾板132、前記濾布133の順に積層された積層構造を有し、前記濾板132と前記蓋本体131とが上下方向に僅かな隙間を設けて積層されている。
【0017】
前記下蓋部13は、上面側に僅かに突出した突出部を備える。該突出部は下蓋部13の中央部に位置し、該突出部には前記濾布133と前記濾板132とが配されている。前記突出部は、前記側壁部11の下端部の開口よりも一回り小さい。したがって、本実施形態の下蓋部13は、該側壁部11の下端部の開口を閉塞した状態において前記濾布133と前記濾板132とを当該側壁部11の内側に突入させ得るように構成されている。
【0018】
本実施形態での前記濾板132と前記濾布133とは前記スラリーを濾過するための濾過部130を構成している。該濾過部130は、収容空間10aの底面を画定している。本実施形態では、前記収容空間10aの底面を前記濾布133が画定しており、該濾布133の上面が濾過部130での濾過面130aを構成している。
【0019】
前記のように前記濾板132と前記蓋本体131との間には隙間が設けられており、本実施形態では、該隙間が、濾過部130を通過した濾液を一次貯留する集液室134となっている。本実施形態における前記容器10は、前記スラリーSを前記収容空間10aに導入するための供給口10bが前記天井部12に開口しているとともに前記濾過部130を通過した濾液を排出するための排出口10cが前記蓋本体131に設けられている。前記供給口10bは、前記収容空間10aの上端部に向けて開口している。前記排出口10cは前記集液室134に向けて開口している。
【0020】
本実施形態における濾過乾燥機100は、前記供給口10bを通じて前記収容空間10aに前記スラリーSを導入するための導入配管91と、前記集液室134から濾液を排出するための排出配管92とを備えている。
【0021】
本実施形態における前記容器10は、前記スラリーSの濾過に際して前記粉末を含む濾物を前記濾過面130aで捕集できるようになっている。即ち、容器10は、
図2、
図3に示すように、スラリーSを濾過して濾過面130a(濾布133)の上に前記粉末と前記分散媒とを含んだ湿潤状態の堆積物Cを形成させることができるようになっている。
【0022】
本実施形態における濾過乾燥機100での前記容器10は、前記堆積物Cの表面CS(上面)を容器外から視認できるように窓部121が設けられている。本実施形態の窓部121は、前記天井部12に設けられた開口12aと、該開口12aの外周縁より上方に筒状となって短く延びる管部1211と、該管部1211の先端部を蓋部1212とで構成されている。本実施形態の前記窓部121は、前記蓋部1212の一部がガラス板で構成されており、該ガラス板を通じて前記堆積物Cの表面CSを容器外から視認できるようになっている。
【0023】
本実施形態における濾過乾燥機100は、前記収容空間10a内での前記堆積物Cの表面CSの位置を非接触方式で検出する検出器を有している。より詳しくは、本実施形態における濾過乾燥機100は、窓部121の外側(外気側)に前記堆積物Cにレーザー光LBを照射して前記表面CSの位置を検出するレーザー式検出器81を備えている。
【0024】
本実施形態の前記検出器は、例えば、レーダー式検出器や超音波式検出器などであってもよい。また、本実施形態においては、複数の検出器を組み合わせて用いてもよい。さらに本実施形態においては、光源の異なる複数のレーザー式検出器を併用してもよい。レーザー式検出器が位置情報を得るために発射するレーザー光は、例えば、ルビーレーザーやYAGレーザーなどの固体レーザー;色素レーザーなどの液体レーザー;ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、炭酸ガスレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザーなどのガスレーザー;半導体レーザー;自由電子レーザー;化学レーザーなどが挙げられる。レーザー式検出器81は、位置検出に半導体レーザーを用いるタイプのものが好ましい。
【0025】
本実施形態のレーザー式検出器81は、レーザーの照射位置を変更できるように前記窓部121に対する角度を変更可能に設けられていてもよい。
【0026】
本実施形態における濾過乾燥機100は、前記収容空間10aを加圧して正圧にするか、前記濾過部130(集液室)を減圧して負圧にするかの少なくとも一方を実施して前記堆積物Cに対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置(図示せず)を更に備える。即ち、本実施形態の圧力装置は、前記堆積物Cの上流側と下流側とに圧力差を生じさせて前記堆積物Cに対して前記濾過部130に向けた気圧を作用させ得るように構成されている。
【0027】
このような圧力装置を有することで本実施形態の濾過乾燥機100は、濾過部130に向けた方向が正の方向となるように堆積物Cに対して気圧を作用させることができるので、単に重力の作用のみで濾過を行う場合よりも固形物濃度の高い堆積物Cを形成することができる。また、本実施形態の濾過乾燥機100は、堆積物Cからの脱液を促すだけでなく、スラリーSに対しても濾過部130に向けた圧力を作用させることができ重力の作用のみで濾過を行う場合よりも迅速に濾過を行うことができる。
【0028】
本実施形態の圧力装置は、規定量のスラリーSを収容し終えた後に前記導入配管91及び前記供給口10bを通じて前記収容空間10aに窒素ガスなどの加圧用ガスを導入し得るように構成されている。本実施形態の圧力装置は、容器10内を0.1MPa(ゲージ圧)以上に加圧可能であることが好ましく、0.15MPa(ゲージ圧)以上に加圧可能であることがより好ましい。圧力装置は、容器10内の圧力を1.0MPa(ゲージ圧)以下の何れかの圧力に調節可能であることが好ましい。容器10内の圧力は、0.5MPa(ゲージ圧)以下の何れかの圧力に調節可能であってもよく、0.19MPa(ゲージ圧)以下の何れかの圧力に調節可能であることが好ましい。
【0029】
本実施形態における濾過乾燥機100は、前記収容空間10aの内部の圧力を測定する圧力計PGを備えており、該圧力計PGによって堆積物Cにどの程度の気圧が作用しているかを検知し得るように構成されている。
【0030】
本実施形態における濾過乾燥機100は、圧力計PGによって得られた気圧の情報(圧力情報)と、前記レーザー式検出器81によって得られた堆積物Cの表面CSに関する位置情報とを展延工程に活用するための制御装置20をさらに備えている。本実施形態においては該制御装置20を備えることで、展延工程を開始するタイミングや展延工程の具体的な手順を自動化しても堆積物Cからの脱液が効率良く実施され得る。
【0031】
前記収容空間10aの内部を正圧にすることなく前記排出配管92を通じて集液室134を吸引して該集液室134を負圧にする場合、前記圧力計PGは、当該集液室134(濾過部130)の圧力が測定できるように配置すればよい。また、収容空間10a側からの加圧と、集液室134側からの減圧との両方を実施する場合は、両方に圧力計PGを配置すればよい。前記収容空間10aの圧力値を「P1(MPa)」(ゲージ圧)とし、前記集液室134(濾過部130)の圧力値を「P2(MPa)」(ゲージ圧)とした場合、堆積物Cに作用する気圧の大きさは「P1-P2」として算出することができ、当該算出値を圧力情報として制御装置20に伝達することができる。なお、「P1」や「P2」の値は、実測することなく予見できる場合がある。そのため気圧についての圧力情報は「P1」に基づく情報のみを用いてもよく「P2」に基づく情報のみを用いても良い。
【0032】
圧力計PGから制御装置20への圧力情報の伝達は、有線であってもよく無線であってもよい。前記レーザー式検出器81から制御装置20への位置情報の伝達についても有線であってもよく無線であってもよい。圧力情報や位置情報の制御装置20への入力は連続的なものであっても断続的なものであってもよい。また、要すれば、圧力情報や位置情報の制御装置20への入力は手入力であってもよい。圧力情報や位置情報の入力される前記制御装置20は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(シーケンサー(商品名))などであってもよい。
【0033】
本実施形態における濾過乾燥機100は、前記収容空間10aを通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物Cの表面を均す(展延を行う)ための回転翼30を備えている。本実施形態における濾過乾燥機100は、前記回転翼30を軸心周りに回転させるための回転軸31を有する。本実施形態では前記軸心が前記収容空間10aの中心軸に一致しており、前記回転軸31は前記軸心に沿って垂直方向に延びて前記天井部12から回転自在に吊下げられている。前記回転翼30は、前記回転軸31とともに回転すべく当該回転軸31の下端部に固定されている。
【0034】
本実施形態における濾過乾燥機100は、この回転軸31を正転方向と逆転方向との両方に回転し得るように構成されている。濾過乾燥機100は、この回転軸31を正逆両方向に回転させるための駆動装置33と、前記回転軸31を介して前記回転翼30を上下方向に移動させる昇降装置40とを備えている。
【0035】
前記回転翼30は、前記回転軸31の下端部より径方向に放射状になって延びる複数枚の羽根30aを備えている。本実施形態のそれぞれの羽根30aは、
図4にも示されているように上面視における形状が径方向Dに直線的に延びてはおらずカーブしている。より詳しくは、前記羽根30aは、回転軸31との接続部から径方向Dに延ばした仮想直線VLと当該羽根30aとの周方向Rでの距離が回転軸31から離れて径方向D外側に向かうに従って大きくなるようにカーブしている。正転方向CWをプラス方向R
+、逆転方向CCWをマイナス方向R
-とした場合、それぞれの羽根30aは、前記仮想直線VLからマイナス方向R
-に離れるようにカーブしている。
【0036】
前記回転翼30のそれぞれの羽根30aは、径方向に長い板状で、下端縁が略水平となっている。羽根30aは、垂直方向に立った状態にはなっておらず下端縁が上端縁よりもプラス方向R+に位置している。言い換えるとそれぞれの羽根30aは、逆転方向CCWに傾いた状態となって配されている。
【0037】
本実施形態における濾過乾燥機100は、回転翼30の回転速度を変更可能に構成されているとともに前記昇降装置40による回転翼30の上下への移動速度も変更可能になっている。本実施形態における濾過乾燥機100は、回転翼30の移動速度や展延を実施する際の回転翼30の上下方向での位置などを前記制御装置20で制御し得るように構成されている。
【0038】
以下に上記のような濾過乾燥機100を運転して濾過乾燥物を製造する方法について一例を挙げて説明する。
【0039】
本実施形態の濾過乾燥物を製造方法では、固形物と液状物とを含む被処理液である前記スラリーSが前記濾過乾燥機100で濾過されるとともに該濾過によって得られた濾物が前記濾過乾燥機100で乾燥される。
【0040】
前記濾過乾燥機100は、前記のように前記スラリーSが収容される収容空間10aを備えた容器10を有し、該容器10の底部には前記スラリーSを濾過する濾過部130が設けられ、前記スラリーSの濾過によって前記固形物を含む堆積物Cが前記濾過部130の上に堆積されるように構成されている。また、前記濾過乾燥機100は、前記収容空間10aを加圧するか、前記濾過部130を減圧するかの少なくとも一方を実施して前記堆積物Cに対して脱液する方向に気圧を作用させるための圧力装置と、前記収容空間10aを通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物Cの展延を行う回転翼30と、前記回転翼30を上下方向に移動させる昇降装置40と、前記昇降装置40による前記回転翼30の移動を制御する制御装置20と、を更に備えている。そして、前記濾過乾燥機100は、前記制御装置20による前記制御が、前記収容空間10a内での前記堆積物Cの表面CSの位置を非接触方式で検出する検出器(レーザー式検出器81)から与えられる前記表面CSについての位置情報と、前記気圧についての圧力情報とに基づいて実施されるように構成されている。
【0041】
本実施形態の濾過乾燥物を製造方法では、上記のような濾過乾燥機100を用いて、前記容器10に収容された前記スラリーSを前記濾過部130で濾過して前記堆積物Cを前記濾過部130の上に堆積させる濾過工程と、前記堆積物Cの上方に配置した前記回転翼30を該堆積物に向けて降下させるとともに前記回転翼30を回転させて前記堆積物Cの展延を行う展延工程と、該展延工程後の堆積物C(濾物)を乾燥させる乾燥工程とを実施する。
【0042】
前記濾過工程では、前記圧力装置で前記気圧を生じさせつつ前記堆積物Cの脱液が行われる。前記スラリーSの濾過を行う場合、前記収容空間10aが0.1MPa(ゲージ圧)~0.19MPa(ゲージ圧)の何れかの圧力となるように加圧してもよい。濾過工程では、濾過が進行するに従って濾過部130の上に堆積する前記堆積物Cの高さが高くなり、逆にスラリーSの液面が低下する。このとき堆積物Cの高さは濾過部130の全域で均一になるとは限らず、多くの場合、場所によって堆積高さが異なる。即ち、堆積物Cの表面CSには僅かなうねりが認められる状態になる。
【0043】
濾過工程の終盤では、まずは堆積物Cの堆積高さの高い部分がスラリーSの液面より露出する。やがて、濾過部130の全面において堆積物Cの表面CSが露わになる。この段階では、堆積物Cの表面CS上に液状物が観測されないものの堆積物Cの内部では粉体どうしの隙間に分散媒が充満している状態であるため、加圧用ガスが濾過部130側に漏洩することがなく、堆積物Cに作用する気圧はスラリーSの液面が見られなくなる前と大きく変化はしない。堆積物Cに作用する気圧は、粉体どうしの隙間に存在する分散媒を下方に追い出すべく機能する。堆積物Cの表層部(上層部)では、いち早く分散媒が無くなり粉体同士が凝集し易くなって表面CSにひび割れが形成され、該ひび割れが堆積物Cの深さ方向に進行した時点で加圧用ガスが濾過部130側に漏洩し始め、前記圧力情報(例えば、P1―P2)として得られる気圧の値が、例えば、0.04MPa(ゲージ圧)以下に低下する。本実施形態では、このような圧力低下が認められた時点で前記展延工程が開始される。
【0044】
展延工程は、前記気圧の値が0.03MPa(ゲージ圧)以下に低下したタイミングで開始してもよく、前記気圧の値が0.02MPa(ゲージ圧)以下に低下したタイミングで開始してもよい。
【0045】
濾過の速度は毎回同じとは限らないため展延工程を従来のように濾過開始からの経過時間を基準に実施するとスラリーSの液面が消え去る前に展延が行われる可能性がある。また、そのような状況では堆積物Cが分散液を多く含んで柔らかな状態にあるため従来のように降下させた回転翼30が受ける反力を利用して回転翼30の降下位置を決定すると回転翼30を必要以上に降下させることにもなりかねない。また、このような場合とは逆に濾過開始からの経過時間に基づいて展延工程を開始すると開始が遅れるおそれがある。そのように展延の開始が遅れると加圧用ガスが無駄に消費されることにもなりかねない。
【0046】
本実施形態では前記展延工程が前記圧力情報に基づいて実施されるため、展延開始が早過ぎたり遅過ぎたりするということにはならない。また、本実施形態では、展延工程での前記回転翼30の降下位置を前記位置情報に基づいて決定するため、回転翼30を降下し過ぎることも回避できる。本実施形態では、前記検出器が、前記堆積物Cにレーザー光を照射して前記表面CSの位置を検出するレーザー式検出器81であるのでより高精度に表面CSの位置を検出することができる。また、展延工程では堆積物Cの表面CSの位置を元に回転翼30を降下する位置を設定することができる。本実施形態では圧力の低下が起こったことを圧力情報として得た後にレーザー式検出器81による前記表面CSの計測を行うことができる。このことによって、堆積物Cの表面CSに液面が形成されていない状態で計測でき、正確に前記表面CSの位置を検出することができる。
【0047】
図1に示されるように本実施形態では濾過開始前は回転翼30が容器10の上部に配されており、前記回転翼30は展延工程に際して下方に移動される。このとき表面CSの位置が高い精度で把握できているため、回転翼30を堆積物Cの表面CS近くに高速で降下させることが可能になる。そして、表面CS近くに到達した回転翼30を徐々に降下させて展延工程を実施すれば、堆積物Cを過度に掻き取るようなことが起こり難くなる。
【0048】
前記展延工程では、前記堆積物Cの上方から前記堆積物に向けて前記回転翼30の位置を下げる第1降下と、該第1降下の後に前記回転翼30の位置を更に下げる第2降下とを実施し、前記第1降下での前記回転翼の降下位置(羽根30aの下端の位置)を前記位置情報として得られた前記表面CSの位置よりも上方とし、前記第2降下の開始後に前記展延を実施するようにしてもよい。ここでの第1降下は、展延の準備のための回転翼30の降下となる。また、第2降下は展延を行う位置を下方に移動するための降下となる。
【0049】
前記展延工程では、前記堆積物Cの上方から前記堆積物に向けて前記回転翼30の位置を下げる第1降下と、該第1降下の後に前記回転翼30の位置を更に下げる第2降下とを実施し、前記第1降下での前記回転翼30の降下地点を前記位置情報に基づいて決定し、前記第2降下での前記回転翼30の降下速度よりも前記第1降下での前記回転翼30の降下速度の方を高速にできる。そのため展延の準備が速やかに完了し、展延の必要性が生じた際に速やかに展延を実施することができる。
【0050】
上記のように第1降下での回転翼30の降下位置は、前記検出器で検出された前記位置情報に基づいて設定することができる。一方、第2降下は、回転翼30の降下位置について予め下限値を設定して実施できる。尚、第2降下では、後段において詳述するように前記下限値に達するまで回転翼30を降下させる必要はない。第2降下は、例えば、前記第1降下での前記回転翼30の停止位置から前記下限値までを複数段に区切って段階的に回転翼30を降下させ、前記下限値に到達する前に降下を終了させるようにしてもよい。
【0051】
上記のように本実施形態では、第1降下をスピーディーに行うことができるため濾過工程後に速やかに堆積物Cの展延を行うことができ、しかも、堆積物Cの表面CSの位置を検出して第1降下を実施するため展延を適切な位置から開始することができる。また、本実施形態では、下限を定めて段階的に回転翼30を低下させて展延を行うことで非効率的な展延が行われることを抑制することができる。
【0052】
前記第1降下での降下速度は、例えば、0.1m/min以上とすることができる。第1降下での降下速度は、0.3m/min以上であってもよく、0.5m/min以上であってもよく、0.7m/min以上であってもよく、0.9m/min以上であってもよい。前記第1降下での降下速度は、例えば、10m/min以下とすることができる。第1降下での降下速度は、5m/min以下であってもよく、3m/min以下であってもよく、2m/min以下であってもよい。
【0053】
前記第1降下での回転翼30の停止位置(羽根30aの下端の停止位置)は、前記検出器で検出された表面CSの位置から上方25mmまでの範囲内の何れかとすることができる。即ち、表面CSの高さ位置を「h」とした場合、第1降下は、羽根30aの下端が「h~(h+25mm)」の範囲内の何れかに停止するように設定することができる。回転翼30の停止位置は、表面CSから20mm以内(h~(h+20mm))であってもよく、表面CSから15mm以内(h~(h+15mm))であってもよく、表面CSから10mm以内(h~(h+10mm))であってもよい。第1降下での回転翼30の停止位置は、表面CSの手前(上方)1mm以上((h+1mm)~)としてもよい。1降下での回転翼30の停止位置は、表面CSの手前(上方)2mm以上((h+2mm)~)としてもよく、表面CSの手前(上方)3mm以上((h+3mm)~)としてもよい。
【0054】
前記第2降下での前記回転翼30の降下速度は、例えば、0.3m/min未満とすることができる。第2降下での降下速度は、例えば、0.2m/min以下であってもよい。第2降下での前記回転翼30の降下速度は、例えば、0.001m/min以上とすることができる。第2降下での降下速度は、0.003m/min以上であってもよく、0.005mm/min以上であってもよい。
【0055】
前記第2降下の終点の下限値は、例えば、第1降下での降下地点や表面CSの位置(h)を基準に設定することもでき、濾過面130aからの高さを基準に設定することもできる。前記下限値は、濾過面130aの高さを基準とする場合、具体的には濾過面130aまでの距離が10mm~20mmとなる位置とすることができる。また、第1降下を基準とした場合、第1降下の位置から10mm~30mm下方の位置を第2降下の終点とすることができる。第2降下を段階的に実施する場合、一段階での降下距離は、例えば1mm~10mmとすることができる。
【0056】
前記第2降下では複数回に分けて段階的に前記回転翼30を降下させ、且つ、各段階で展延を行いつつ前記圧力情報を入手するようにしてもよい。また、第2降下は各段階で前記展延を行う時間について基準時間を予め設定した上で実施してもよい。そして、第2降下では該基準時間内に堆積物Cに作用する気圧が上昇すれば展延が有効に作用していると判断し、基準時間内に気圧が上昇しなければ展延が有効に作用していないと判断するようにしてもよい。即ち、前記基準時間は、各段階で展延を行いつつ当該展延の有効性を判断するための最小待機時間として設定される。
【0057】
本実施形態においては、前記第1降下の速度や第2降下の速度、及び、基準時間等を前記制御装置に設定することで展延工程の自動化を図ることができ、しかも、展延が効率良く実施され得る。
【0058】
各段階における展延は、前記回転翼30を逆回転させるようにして実施することができる。前記のように本実施形態での回転翼30の羽根30aは、この場合の進行方向となる逆転方向CCWに傾いた形状を有するため、展延に際して堆積物Cを下方(濾過部130)に向けて押し付けるように回転する。また、本実施形態の羽根30aは、上面視における形状がカーブしており、且つ、径方向外側に向かうに従って進行方向に前進するようにカーブしている。そのため、本実施形態の羽根30aは、当該羽根30aの周回する領域よりも外側に掻き取った堆積物Cが散逸してしまうのを防ぐことができ、より多くの堆積物Cを下方に向けて押し付けることができる。このようにして本実施形態では、ひび割れが生じた堆積物Cが展延によってひび割れの無い状態に修復される。
【0059】
各段階における展延では、当該段階での展延開始から前記基準時間が終了するまでの間に前記堆積物に作用する前記気圧が上昇した場合、回転翼30を降下させずに引き続き展延を継続し、当該段階での展延開始から前記基準時間が終了するまでの間に前記堆積物に作用する前記気圧が上昇しない場合は、前記回転翼30を一段階降下させて改めて展延を実施すればよい。
【0060】
前記基準時間が終了するまでの間に前記堆積物に作用する前記気圧が上昇したもののその後で再び気圧が低下に転じた場合は、基準時間内に気圧の上昇が見られなかった場合と同様に回転翼30を一段階降下させてその位置で再び展延を行うようにすればよい。そして、この一段降下した位置での展延においても基準時間内で気圧が上昇するかどうかを見極めて更にもう一段降下して展延を行うべきかどうかを判断させることができる。このように前記第2降下では、下限値まで降下と展延の有効性判断とを繰り返すようにしてもよい。なお、堆積物に作用する気圧が上昇した後に再び気圧が低下に転じた場合に再度下降と展延を行うことなく、1回の展延で展延工程を終了させてもよい。
【0061】
各段階における前記基準時間は、全ての段階で共通していてもよく、段階ごとに異なっていてもよい。前記基準時間は、例えば、10秒以上1分以下の範囲内の何れかとすることができる。
【0062】
各段階での基準時間を超えての展延の継続は、単に気圧が上昇したというだけで行われるのではなく、基準となる圧力を超えて気圧が上昇した場合に行われることが望ましい。そこで、前記第2降下では前記展延を行いつつ前記圧力情報を入手し、前記展延を行う時間について基準時間を設定するとともに前記堆積物Cに作用する前記気圧について基準圧力を設定し、各段階での展延開始から前記基準時間が終了するまでの間に前記基準圧力に達しない場合と、各段階での展延開始から前記基準時間が終了するまでの間に前記基準圧力に達したもののその後に前記基準圧力未満に低下した場合との何れかをもって展延工程を終了するようにしてもよい。このような基準圧力としては、例えば、0.02MPa以上の値に設定してもよく、0.03MPa以上、更には0.04MPa以上としてもよい。基準圧力は、例えば、0.9MPa以下の値に設定することができる。基準圧力の設定値は、0.8MPa以下であってもよい。前記容器10は、第2種圧力容器に非該当であってもよい。その場合、前記基準圧力は、例えば、0.15MPa以下に設定することができる。該基準圧力の設定値は0.12MPa以下であってもよく、0.09MPa以下であってもよい。
【0063】
第2降下は、上記のように段階的なものでなく回転翼30をゆっくりと連続的に降下させるものであってもよい。その場合も、第2降下では前記展延を行いつつ前記圧力情報を入手し、前記展延を行う時間について基準時間を設定するとともに前記堆積物Cに作用する前記気圧が上昇するかどうかを確認し展延開始から前記基準時間が終了するまでの間に前記気圧が上昇しない場合と、展延開始から前記基準時間が終了するまでの間に前記気圧が上昇したもののその後に低下した場合との何れかをもって展延工程を終了するようにしてもよい。なお、この場合も第2降下を段階的に行う場合と同様に基準圧力を設定して基準圧力に達したもののその後に前記基準圧力未満に低下したこと、又は基準時間が終了するまでの間に基準圧力に達しない場合、のいずれかをもって展延工程を終了するようにしても良い。
【0064】
前記基準圧力は、展延工程に入る前の気圧より大きい値が設定さればよく、例えば、0.02MPa以上0.1MPa以下の範囲の何れかの値に設定することができ、0.03MPa以上、更には0.04MPa以上としてもよい。また、前記基準時間は、10秒以上6分以下の範囲内の何れかとすることができる。
【0065】
上記のように本実施形態では、展延の有効性を確認しつつ第2降下が実施されるため分散媒の残存量が少ない濾物を効率良く得ることができる。このような分散媒の残存量が少ない濾物が得られると、その後の乾燥工程で当該濾物を乾燥させるためのエネルギーを削減することができ、効率よく濾過乾燥物を製造することができる。尚、乾燥工程は、従来の方法と同様の方法を採用することができる。
【0066】
本実施形態の濾過乾燥物の製造方法では、上記のように効率良く展延が実施でき、当該展延によって堆積物Cからの脱液が効率的に実施される。そのため、本実施形態では濾過乾燥物を効率良く製造することができる。
【0067】
尚、本実施形態における濾過乾燥機100や濾過乾燥物を製造方法についての例示はあくまでも限定的なものであり、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。本発明の濾過機は、濾過乾燥物の製造に用いられる濾過乾燥機に限定されるものではない。即ち、濾過乾燥機以外の濾過機についても本発明の意図する範囲であり、濾過乾燥物を製造するための濾過方法以外の濾過方法についても本発明の意図する範囲である。
【0068】
そして、上記の例示には、以下のような開示を含む。
【0069】
(1)
固形物と液状物とを含む被処理液が収容される収容空間を備えた容器を有し、
該容器の底部には前記被処理液を濾過する濾過部が設けられ、
前記被処理液の濾過によって前記固形物を含む堆積物が前記濾過部の上に堆積される濾過機であって、
前記収容空間を加圧するか、前記濾過部を減圧するかの少なくとも一方を実施して前記堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置と、
前記収容空間を通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物の展延を行う回転翼と、
前記回転翼を上下方向に移動させる昇降装置と、
前記昇降装置による前記回転翼の移動を制御する制御装置と、が更に備えられ、
該制御装置による前記制御が、
前記収容空間内での前記堆積物の表面の位置を非接触方式で検出する検出器から与えられる前記表面についての位置情報と、
前記気圧についての圧力情報とに基づいて実施される濾過機。
【0070】
(2)
前記検出器が、前記堆積物にレーザー光を照射して前記表面の位置を検出するレーザー式検出器である(1)の濾過機。
【0071】
(3)
固形物と液状物とを含む被処理液を濾過機で濾過し、該濾過によって濾物を得る濾過方法であって、
前記濾過機は、前記被処理液が収容される収容空間を備えた容器を有し、
該容器の底部には前記被処理液を濾過する濾過部が設けられ、
前記被処理液の濾過によって前記固形物を含む堆積物が前記濾過部の上に堆積されるように構成されており、
前記濾過機は、
前記収容空間を加圧するか、前記濾過部を減圧するかの少なくとも一方を実施して前記堆積物に対して脱液する方向に気圧を作用させる圧力装置と、
前記収容空間を通って上下方向に延びる軸心の周りに回転して前記堆積物の展延を行う回転翼と、
前記回転翼を上下方向に移動させる昇降装置と、
前記昇降装置による前記回転翼の移動を制御する制御装置と、を更に備え、
該制御装置による前記制御が、
前記収容空間内での前記堆積物の表面の位置を非接触方式で検出する検出器から与えられる前記表面についての位置情報と、
前記気圧についての圧力情報とに基づいて実施されるように構成されており、
前記容器に収容された前記被処理液を前記濾過部で濾過して前記堆積物を前記濾過部の上に堆積させる濾過工程と、
前記堆積物の上方に配置した前記回転翼を該堆積物に向けて降下させるとともに前記回転翼を回転させて前記堆積物の展延を行う展延工程とを実施し、
前記濾過工程では、前記圧力装置で前記気圧を生じさせつつ前記堆積物の脱液を行い、
前記展延工程を前記圧力情報に基づいて実施し、且つ、該展延工程での前記回転翼の降下位置を前記位置情報に基づいて決定する濾過方法。
【0072】
(4)
前記検出器が、前記堆積物にレーザー光を照射して前記表面の位置を検出するレーザー式検出器である(3)の濾過方法。
【0073】
(5)
前記展延工程では、
前記堆積物の上方から前記堆積物に向けて前記回転翼の位置を下げる第1降下と、
該第1降下の後に前記回転翼の位置を更に下げる第2降下とが実施され、
前記第1降下での前記回転翼の停止位置が前記位置情報に基づいて決定され、
前記第2降下での前記回転翼の降下速度よりも前記第1降下での前記回転翼の降下速度の方が高速である(3)、(4)の濾過方法。
【0074】
(6)
前記第1降下での前記回転翼の降下位置を前記検出器で検出された前記表面の位置よりも上方とし、
前記第2降下を開始後に前記展延を実施する(5)の濾過方法。
【0075】
(7)
前記第2降下では複数回に分けて段階的に前記回転翼を降下させ、且つ、複数の段階で展延を行いつつ前記圧力情報を入手し、
該展延工程では、
各段階で前記展延を行う時間について基準時間を設定し、
各段階で前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記堆積物に作用する前記気圧が上昇した場合は次の段階の降下に移行せずに引き続き該展延を継続し、
前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記堆積物に作用する前記気圧が上昇しない場合は、前記回転翼を一段階降下させて展延を実施する請求項(5)、(6)の濾過方法。
【0076】
(8)
前記第2降下を開始した後に前記展延を行いつつ前記圧力情報を入手し、
前記展延を行う時間について基準時間を設定するとともに前記堆積物に作用する前記気圧について基準圧力を設定し、
該展延工程は、
前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記気圧が前記基準圧力に達しない場合と、
前記展延を開始してから前記基準時間が終了するまでの間に前記基準圧力に達したもののその後に前記気圧が前記基準圧力未満に低下した場合との何れかをもって終了する(5)、(6)の濾過方法。
【0077】
(9) 前記第2降下は、前記回転翼の降下位置について下限値を設定して実施する(5)、(6)、(7)、(8)の濾過方法。
【符号の説明】
【0078】
10:容器、10a:収容空間、11:側壁部、12:天井部、13:下蓋部、
20:制御装置、
30:回転翼、30a:羽根、31:回転軸、
40:昇降装置、
81:レーザー式検出器、
100:濾過乾燥機、
130:濾過部、130a:濾過面、134:集液室、
C:堆積物、CS:(堆積物の)表面、
PG:圧力計