(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169749
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20231122BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231122BHJP
G02F 1/133 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 622A
G09G3/20 623A
G09G3/20 641P
G09G3/20 622D
G09G3/20 622K
G02F1/133 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081057
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 大樹郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 貴之
【テーマコード(参考)】
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZB02
2H193ZC21
2H193ZD21
2H193ZD31
2H193ZF13
2H193ZF22
5C006AA11
5C006AA22
5C006AC22
5C006AC25
5C006AF44
5C006AF46
5C006BA16
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BC16
5C006BF02
5C006EA01
5C006FA14
5C006FA29
5C080AA10
5C080CC03
5C080DD10
5C080EE01
5C080EE29
5C080FF09
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ05
5C080JJ06
5C080JJ07
(57)【要約】
【課題】高電圧駆動を行う画素に起因するゴーストを抑制することができる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、複数の画素が行列状に並ぶ表示領域を有する表示パネルと、行方向に並ぶ画素に接続された複数の走査線と、列方向に並ぶ画素に接続された複数の信号線と、複数の信号線に列方向に並ぶ画素の画素階調値に応じた階調信号を供給する信号線駆動回路と、走査線を選択する走査線駆動回路と、画素階調値を補正する信号処理回路と、を備える。第1走査線の選択期間の後半期間と第2走査線の選択期間の前半期間とが重複している。信号処理回路は、第1走査線に接続されるm列目の画素の画素階調値と、m列目に並ぶ画素の平均階調値との差分値が所定値よりも大きい場合に、第2走査線に接続されるm列目の画素の画素階調値を補正する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が行列状に並ぶ表示領域を有する表示パネルと、
行方向に並ぶ画素に接続された複数の走査線と、
列方向に並ぶ画素に接続された複数の信号線と、
複数の前記信号線に列方向に並ぶ画素の画素階調値に応じた階調信号を供給する信号線駆動回路と、
前記走査線を選択する走査線駆動回路と、
前記画素階調値を補正する信号処理回路と、
を備え、
第1走査線の選択期間の後半期間と第2走査線の選択期間の前半期間とが重複しており、
前記信号処理回路は、
前記第1走査線に接続されるm列目(mは自然数)の画素の画素階調値と、m列目に並ぶ画素の平均階調値との差分値が所定値よりも大きい場合に、前記第2走査線に接続されるm列目の画素の画素階調値を補正する、
表示装置。
【請求項2】
前記信号処理回路は、
前記第2走査線に接続されるm列目の画素の画素階調値から、前記差分値の半値を差し引く、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記所定値は、前記階調信号の最大階調における階調数の1/4である、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルは、
表示領域が列方向に2分割された第1分割領域と第2分割領域とを有し、
前記第1分割領域内の第1走査線の選択期間の後半期間と前記第2分割領域内の第2走査線の選択期間の前半期間とが重複し、
前記第2分割領域内の第1走査線の選択期間の後半期間と前記第1分割領域内の第2走査線の選択期間の前半期間とが重複している、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記走査線駆動回路は、
前記第1分割領域内の走査線を選択する第1走査線駆動回路と、
前記第2分割領域内の走査線を選択する第2走査線駆動回路と、
を含む、
請求項4に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1透光性基板と、第1透光性基板と対向して配置される第2透光性基板と、第1透光性基板と第2透光性基板との間に封入される高分子分散型液晶を有する液晶層と、第1透光性基板及び第2透光性基板の少なくとも1つの側面に対向して配置される少なくとも1つの発光部とを備える、いわゆる透明ディスプレイ(透過型ディスプレイ)と呼ばれる表示装置が記載されている。
【0003】
特許文献1の表示装置は、R,G,Bの3色の発光体を時分割で発光する、いわゆるフィールドシーケンシャル方式で駆動される。このフィールドシーケンシャル方式では、1フィールド期間内において、画素トランジスタのゲートスキャン期間に対して相対的に発光期間が長い方が好ましい。特許文献2には、ディスプレイの高精細化に伴い、複数のゲート線信号線に対して、ゲート信号オン期間をオーバーラップさせるゲートオーバーラップ駆動を行う表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-021974号公報
【特許文献2】特開2012-98400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィールドシーケンシャル方式の透明ディスプレイでは、全体的に低電圧で駆動する画面上において、高電圧駆動を行うテロップ等の文字情報を表示させることが想定される。この場合、ゲートオン期間がオーバーラップする画素間において、高電圧駆動を行う画素に供給される信号によって低電圧駆動を行う画素の液晶分子に高電位が印加されことにより、低電圧駆動を行う画素の液晶分子にチャージされた電荷が十分に放電されず、本来低電圧駆動を行う画素の電位が高電位に維持され、ゴーストが発生する場合がある。
【0006】
本発明は、高電圧駆動を行う画素に起因するゴーストを抑制することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る表示装置は、複数の画素が行列状に並ぶ表示領域を有する表示パネルと、行方向に並ぶ画素に接続された複数の走査線と、列方向に並ぶ画素に接続された複数の信号線と、複数の前記信号線に列方向に並ぶ画素の画素階調値に応じた階調信号を供給する信号線駆動回路と、前記走査線を選択する走査線駆動回路と、前記画素階調値を補正する信号処理回路と、を備え、第1走査線の選択期間の後半期間と第2走査線の選択期間の前半期間とが重複しており、前記信号処理回路は、前記第1走査線に接続されるm列目(mは自然数)の画素の画素階調値と、m列目に並ぶ画素の平均階調値との差分値が所定値よりも大きい場合に、前記第2走査線に接続されるm列目の画素の画素階調値を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る表示装置の一例を表す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る表示装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、フィールドシーケンシャル方式において、光源が発光するタイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、画素電極への印加電圧と画素の散乱状態との関係を示す説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の表示装置の断面の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5の液晶層部分を拡大した拡大断面図である。
【
図8】
図8は、液晶層において非散乱状態を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、液晶層において散乱状態を説明するための断面図である。
【
図11】
図11は、比較例に係る走査線駆動例を示すタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態1に係る走査線駆動例を示すタイミングチャートである。
【
図13】
図13は、
図12に示す走査線駆動例における画素電極の電圧変化を示す概念図である。
【
図14】
図14は、
図12に示す走査線駆動例におけるゴーストの発生例を示す画像イメージである。
【
図15】
図15は、実施形態1に係る表示装置における画素階調値補正処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、
図12に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画素電極の電圧変化を示す概念図である。
【
図17】
図17は、
図12に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画像イメージである。
【
図18】
図18は、実施形態2に係る表示装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、実施形態2に係る走査線駆動例を示すタイミングチャートである。
【
図20】
図20は、
図19に示す走査線駆動例における画素電極の電圧変化を示す概念図である。
【
図21】
図21は、
図19に示す走査線駆動例におけるゴーストの発生例を示す画像イメージである。
【
図22】
図22は、
図19に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画素電極の電圧変化を示す概念図である。
【
図23】
図23は、
図19に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画像イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る表示装置の一例を表す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る表示装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図3は、フィールドシーケンシャル方式において、光源が発光するタイミングを説明するタイミングチャートである。
【0011】
図1に示すように、表示装置1は、表示パネル2と、光源3と、駆動回路4とを有する。ここで、表示パネル2の平面の一方向が第1方向PXとされ、第1方向PXと直交する方向が第2方向PYとされ、PX-PY平面に直交する方向が第3方向PZとされている。
【0012】
表示パネル2は、アレイ基板10と、対向基板20と、液晶層50(
図5参照)とを備えている。対向基板20は、アレイ基板10の表面に垂直な方向(
図1に示すPZ方向)に対向する。液晶層50(
図5参照)は、アレイ基板10と、対向基板20と、封止部18とで、後述する高分子分散型液晶LCが封止されている。
【0013】
図1に示すように、表示パネル2において、画像を表示可能な表示領域AAと、表示領域AAの外側の周辺領域FRと、がある。表示領域AAには、複数の画素Pixがマトリクス状に配置されている。なお、本開示において、行とは、一方向(第1方向PX)に配列されるM個の画素Pixを有する画素行をいう。また、列とは、行が配列される方向と直交する方向(第2方向PY)に配列されるN個の画素Pixを有する画素列をいう。そして、MとNとの値は、垂直方向の表示解像度と水平方向の表示解像度に応じて定まる。また、複数の走査線GLが行毎に配線され、複数の信号線SLが列毎に配線されている。
【0014】
光源3は、複数の発光部31を備えている。
図2に示すように、光源制御部32は、駆動回路4に含まれる。なお、発光部31及び光源制御部32は、駆動回路4の回路とは別の回路にしてもよい。発光部31と、光源制御部32とは、アレイ基板10内の配線で電気的に接続されている。また、発光部31及び光源制御回路32は、表示パネル2と別部材によって設けられる場合、光源制御回路32は駆動回路4とは独立して制御されるものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、駆動回路4は、アレイ基板10の表面に固定されている。
図2に示すように、駆動回路4は、信号処理回路41、画素制御回路42、第1ゲート駆動回路(第1走査線駆動回路)43_1、第2ゲート駆動回路(第2走査線駆動回路)43_2、ソース駆動回路(信号線駆動回路)44及び共通電位駆動回路45を備えている。アレイ基板10は、対向基板20よりもXY平面の面積が大きく、対向基板20から露出したアレイ基板10の張り出し部分に、駆動回路4が設けられる。
【0016】
信号処理回路41には、外部の上位制御部9の画像出力部91から、フレキシブル基板92を介して、入力信号(RGB信号など)VSが入力される。
【0017】
信号処理回路41は、入力信号解析部411と、記憶部412と、信号調整部413とを備える。
【0018】
入力信号解析部411は、外部から入力された第1入力信号VSに基づいて第2入力信号VCSを生成する。
【0019】
第1入力信号VSは、例えば、18bit(RGB各6bit)や24bit(RGB各8bit)のパラレルRGB信号である。第1入力信号VSは、RGB信号の色数に関する色深度情報を含む信号である。第1入力信号VSは、既知のデータフォーマットで外部の上位制御部9から送信される。
【0020】
第2入力信号VCSは、表示パネル2の各画素Pixにどのような階調値を与えるかを定める信号である。言い換えると、第2入力信号VCSは、各画素Pixの階調値に関する階調情報を含む信号である。
【0021】
信号調整部413は、第2入力信号VCSから第3入力信号VCSAを生成する。信号調整部413は、第3入力信号VCSAを画素制御回路42へ送出し、光源制御信号LCSAを光源制御部32へ送出する。光源制御信号LCSAは、例えば、画素Pixへの入力階調値に応じて設定される発光部31の光量の情報を含む信号である。例えば、暗い画像が表示される場合、発光部31の光量は小さく設定される。明るい画像が表示される場合、発光部31の光量は大きく設定される。また、発光部31の光量を一定とし、後述する液晶の散乱度を、例えば垂直駆動信号VDSの諧調信号、すなわち画素電極PEにかかる画素電圧により制御するものであってもよい。
【0022】
記憶部412は、第1入力信号VS及び第2入力信号VCSを一時記憶するバッファメモリである。
【0023】
本実施形態において、信号調整部413は、記憶部412に一時記憶された第2入力信号VCSを読み出し、所定の画像処理を行う。具体的に、信号調整部413は、第2入力信号VCSを、例えば後段の表示パネル2において表示可能なフォーマットに変更する。また、信号調整部413は、第1ゲート駆動回路43_1及び第2ゲート駆動回路43_2における走査線GLの選択順序に応じた処理を実行する。本実施形態において、信号調整部413は、例えば、走査線GLの選択順序に応じて、画素データの入れ替えや画素階調値の補正処理を実行する。本実施形態における画階調素値の補正処理については後述する。
【0024】
そして、画素制御回路42は、第3入力信号VCSAに基づいて水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSとを生成する。本実施形態では、フィールドシーケンシャル方式で駆動されるので、水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSとが発光部31が発光可能な色毎に生成される。
【0025】
本実施形態において、表示パネル2はアクティブマトリクス型パネルである。このため、平面視で第2方向PYに延在する信号(ソース)線SL及び第1方向PXに延在する走査(ゲート)線GLを有し、信号線SL(SLodd,SLeven)と走査線GLとの交差部にスイッチング素子Trを有する。表示領域AA内の各画素Pixは、それぞれスイッチング素子Trが設けられている。
【0026】
第1ゲート駆動回路43_1及び第2ゲート駆動回路43_2は、水平駆動信号HDSに基づき、1垂直走査期間(1V)内に表示パネル2の走査線GLを順次選択する。
【0027】
本実施形態において、表示領域AAは、列方向(第2方向PY)に2つの第1分割領域PAA1及び第2分割領域PAA2に分割されている。第1分割領域PAA1及び第2分割領域PAA2において、列方向(第2方向PY)に並ぶ画素Pixの数は、N/2とされる。すなわち、列方向(第2方向PY)にN個の画素Pixが並ぶ表示領域AAが2等分されている。第1ゲート駆動回路43_1は、第1分割領域PAA1に対応して設けられている。第2ゲート駆動回路43_2は、第2分割領域PAA2に対応して設けられている。すなわち、第1分割領域PAA1の走査線GL(1),GL(2),・・・,GL(N/2)は、第1ゲート駆動回路43_1によって選択され、第2分割領域PAA2の走査線GL(N/2+1),GL(N/2+2),・・・,GL(N)は、第2ゲート駆動回路43_2によって選択される。
【0028】
ソース駆動回路44は、垂直駆動信号VDSに基づき、1水平走査期間(1H)内に表示パネル2の各信号線SLodd,SLevenに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号を供給する。本実施形態において、信号線SLoddは、奇数行の画素Pixに接続され、信号線SLevenは、偶数行の画素Pixに接続されている。
【0029】
なお、信号処理回路41の構成は一例であって、上述した構成に限定されない。例えば、1つのゲート駆動回路で表示領域AAの走査線GLを選択する態様であっても良い。
【0030】
各画素Pixに設けられるスイッチング素子Trとして薄膜トランジスタが用いられる。薄膜トランジスタの例としては、ボトムゲート型トランジスタ又はトップゲート型トランジスタを用いてもよい。スイッチング素子Trとして、シングルゲート薄膜トランジスタを例示するが、ダブルゲートトランジスタでもよい。スイッチング素子Trのソース電極及びドレイン電極のうち一方は信号線SLに接続され、ゲート電極は走査線GLに接続され、ソース電極及びドレイン電極のうち他方は、後述する高分子分散型液晶LCの容量の一端に接続されている。高分子分散型液晶LCの容量は、一端がスイッチング素子Trに画素電極PEを介して接続され、他端が共通電極CEを介してコモン電位配線COMLに接続されている。また、画素電極PEと、コモン電位配線COMLに電気的に接続されている保持容量電極IOとの間には、保持容量HCが生じる。なお、コモン電位配線COMLは、共通電位駆動回路45より供給される。
【0031】
発光部31は、第1色(例えば、赤色)の発光体33Rと、第2色(例えば、緑色)の発光体33Gと、第3色(例えば、青色)の発光体33Bを備えている。光源制御部32は、光源制御信号LCSAに基づいて、第1色の発光体33R、第2色の発光体33G及び第3色の発光体33Bのそれぞれを時分割で発光するように制御する。このように、第1色の発光体33R、第2色の発光体33G及び第3色の発光体33Bは、フィールドシーケンシャル方式で駆動される。
【0032】
図3に示すR_Field期間において、第1色の発光期間RONで第1色の発光体33Rが発光するとともに、1垂直走査期間(1V)GateScan内に選択された画素Pixが光を散乱させて表示する。表示パネル2全体では、1垂直走査期間(1V)GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、第1色の発光期間RONにおいて第1色のみ点灯している。
【0033】
次に、G_Field期間において、第2色の発光期間GONで第2色の発光体33Gが発光するとともに、1垂直走査期間(1V)GateScan内に選択された画素Pixが光を散乱させて表示する。表示パネル2全体では、1垂直走査期間(1V)GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、第2色の発光期間GONにおいて第2色のみ点灯している。
【0034】
さらに、B_Field期間において、第3色の発光期間BONで第3色の発光体33Bが発光するとともに、1垂直走査期間(1V)GateScan内に選択された画素Pixが光を散乱させて表示する。表示パネル2全体では、1垂直走査期間(1V)GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、第3色の発光期間BONにおいて第3色のみ点灯している。
【0035】
人間の眼には、時間的な分解能の制限があり、残像が発生するので、1フレーム(1Frame)期間に3色の合成された画像が認識される。フィールドシーケンシャル方式では、カラーフィルタを不要とすることができ、カラーフィルタでの吸収ロスが低減するので、高い透過率が実現できる。カラーフィルタ方式では、第1色、第2色、第3色毎に画素Pixを分割したサブピクセルで一画素を作るのに対し、フィールドシーケンシャル方式では、このようなサブピクセル分割をしなくてもよい。なお、第4サブフレームをさらに有し、第1色、第2色及び第3色とは異なる第4色を発光するようにしてもよい。
【0036】
図4は、画素電極への印加電圧と画素の散乱状態との関係を示す説明図である。
図5は、
図1の表示装置の断面の一例を示す断面図である。
図6は、
図1の表示装置の平面を示す平面図である。
図5は、
図6のV-V’断面である。
図7は、
図5の液晶層部分を拡大した拡大断面図である。
図8は、液晶層において非散乱状態を説明するための断面図である。
図9は、液晶層において散乱状態を説明するための断面図である。
【0037】
1垂直走査期間(1V)GateScan内に選択された画素Pixに、上述した各信号線SLに各画素Pixの出力階調値に応じた階調信号が供給されていれば、階調信号に応じて画素電極PEへの印加電圧が変わる。画素電極PEへの印加電圧が変わると、画素電極PEと、共通電極CEとの間の電圧が変化する。そして、
図4に示すように、画素電極PEへの印加電圧に応じて、画素Pix毎の液晶層50の散乱状態が制御され、画素Pix内の散乱割合が変化する。
【0038】
図4に示すように、画素電極PEへの印加電圧が飽和電圧Vsat以上となると、画素Pix内の散乱割合の変化が小さくなる。そこで、駆動回路4は、飽和電圧Vsatよりも低い電圧範囲Vdrにおいて、垂直駆動信号VDSに応じた画素電極PEへの印加電圧を変化させる。
【0039】
図5及び
図6に示すように、アレイ基板10は、第1主面10A、第2主面10B、第1側面10C、第2側面10D、第3側面10E及び第4側面10Fを備える。第1主面10Aと第2主面10Bとは、平行な平面である。また、第1側面10Cと第2側面10Dとは、平行な平面である。第3側面10Eと第4側面10Fとは、平行な平面である。
【0040】
図5及び
図6に示すように、対向基板20は、第1主面20A、第2主面20B、第1側面20C、第2側面20D、第3側面20E及び第4側面20Fを備える。第1主面20Aと第2主面20Bとは、平行な平面である。第1側面20Cと第2側面20Dとは、平行な平面である。第3側面20Eと第4側面20Fとは、平行な平面である。
【0041】
図5及び
図6に示すように、光源3は、対向基板20の第2側面20Dに対向する。光源3は、サイド光源と呼ばれることもある。
図5に示すように、光源3は、対向基板20の第2側面20Dへ光源光Lを照射する。光源3と対向する対向基板20の第2側面20Dは、光入射面となる。また、図示しないが、対向基板20の第1主面20Aにカバーガラスを設け、カバーガラスの側面に対向するように光源3を配置させる構造であってもよく、この場合は、カバーガラスの光源と向かい合う側面が光入光面となる。カバーガラスも対向基板20同様に、アレイ基板10に対向する基板である。
【0042】
図5に示すように、光源3から照射された光源光Lは、アレイ基板10の第1主面10A及び対向基板20の第1主面20Aで反射しながら、第2側面20Dから遠ざかる方向(第2方向PY)に伝播する。アレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aから外部へ光源光Lが向かうと、屈折率の大きな媒質から屈折率の小さな媒質へ進むことになるので、光源光Lがアレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aへ入射する入射角が臨界角よりも大きければ、光源光Lがアレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aで全反射する。
【0043】
図5に示すように、アレイ基板10及び対向基板20の内部を伝播した光源光Lは、散乱状態となっている液晶がある画素Pixで散乱され、散乱光の入射角が臨界角よりも小さな角度となって、放射光68、68Aがそれぞれ対向基板20の第1主面20A、アレイ基板10の第1主面10Aから外部に放射される。対向基板20の第1主面20A、アレイ基板10の第1主面10Aからそれぞれ外部に放射された放射光68、68Aは、観察者に観察される。以下、
図7から
図9を用いて、散乱状態となっている高分子分散型液晶と、非散乱状態の高分子分散型液晶とについて説明する。
【0044】
図7に示すように、アレイ基板10には、第1配向膜AL1が設けられている。対向基板20には、第2配向膜AL2が設けられている。第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、例えば、水平配向膜である。
【0045】
液晶とモノマーを含む溶液がアレイ基板10と対向基板20との間に封入されている。次に、モノマー及び液晶を第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2によって配向させた状態で、紫外線又は熱によってモノマーを重合させ、バルク51を形成する。これにより、網目状に形成された高分子のネットワークの隙間に液晶が分散されたリバースモードの高分子分散型液晶LCを有する液晶層50が形成される。一例として第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の配向方向は、第1方向PXに平行である。
【0046】
このように、高分子分散型液晶LCは、高分子によって形成されたバルク51と、バルク51内に分散された複数の微粒子52と、を有する。微粒子52は、液晶によって形成されている。バルク51及び微粒子52は、それぞれ光学異方性を有している。
【0047】
微粒子52に含まれる液晶の配向は、画素電極PEと共通電極CEとの間の電圧差によって制御される。画素電極PEへの印加電圧により、液晶の配向が変化する。液晶の配向が変化することにより、画素Pixを通過する光の散乱の度合いが変化する。
【0048】
例えば、
図8に示すように、画素電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されていない状態では、バルク51の光軸Ax1と微粒子52の光軸Ax2の向きは互いに等しい。微粒子52の光軸Ax2は、液晶層50のPZ方向と平行である。バルク51の光軸Ax1は、電圧の有無に関わらず、液晶層50のPZ方向と平行である。
【0049】
バルク51と微粒子52の常光屈折率は互いに等しい。画素電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されていない状態では、あらゆる方向においてバルク51と微粒子52との間の屈折率差がゼロになる。液晶層50は、光源光Lを散乱しない非散乱状態となる。光源光Lは、アレイ基板10の第1主面10A及び対向基板20の第1主面20Aで反射しながら、光源3(発光部31)から遠ざかる方向に伝播する。液晶層50が光源光Lを散乱しない非散乱状態であると、アレイ基板10の第1主面10Aから対向基板20の第1主面20A側の背景が視認され、対向基板20の第1主面20Aからアレイ基板10の第1主面10A側の背景が視認される。
【0050】
図9に示すように、電圧が印加された画素電極PEと共通電極CEとの間では、微粒子52の光軸Ax2は、画素電極PEと共通電極CEとの間に発生する電界によって傾くことになる。バルク51の光軸Ax1は、電界によって変化しないため、バルク51の光軸Ax1と微粒子52の光軸Ax2の向きは互いに異なる。電圧が印加された画素電極PEがある画素Pixにおいて、光源光Lが散乱される。上述したように散乱された光源光Lの一部がアレイ基板10の第1主面10A又は対向基板20の第1主面20Aから外部に放射された光は、観察者に観察される。
【0051】
電圧が印加されていない画素電極PEがある画素Pixでは、アレイ基板10の第1主面10Aから対向基板20の第1主面20A側の背景が視認され、対向基板20の第1主面20Aからアレイ基板10の第1主面10A側の背景が視認される。そして、本実施形態の表示装置1は、画像出力部91から第1入力信号VSが入力されると、画像が表示される画素Pixの画素電極PEに電圧が印加され、第3入力信号VCSAに基づく画像が背景とともに視認される。このように、高分子分散型液晶が散乱状態にあるとき、表示領域において画像が表示される。
【0052】
電圧が印加された画素電極PEがある画素Pixにおいて光源光Lが散乱されて外部に放射された光によって表示された画像は、背景に重なり、表示されることになる。換言すると、本実施形態の表示装置1は、放射光68又は放射光68Aと、背景との組み合わせにより、画像を背景に重ね合わせて表示する。
【0053】
図10は、画素の概略構成を示す平面図である。
図10に示すように、画素Pixには、スイッチング素子Tr(Tr1,Tr2)が設けられている。本実施形態において、スイッチング素子Tr(Tr1,Tr2)は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタである。
【0054】
平面視において、信号線SL、走査線GL及びスイッチング素子Trに重なる領域に金属層TMが設けられている。これにより、金属層TMは、格子状となり、金属層TMで囲まれた開口部APができる。
【0055】
本実施形態において、画素Pixの構成は、
図10に示すように、隣り合う画素Pixの間に2つの信号線SLがある。一方の信号線SLは、1つ置きの画素Pixの走査線GLとの交差部分にあるスイッチング素子Tr1と電気的に接続される。他方の信号線SLは、スイッチング素子Tr1がある画素Pixを除いて1つ置きの画素Pixの走査線GLとの交差部分にあるスイッチング素子Tr2と電気的に接続される。
【0056】
これにより、第1ゲート駆動回路43_1及び第2ゲート駆動回路43_2は、隣り合う2つの走査線GLを同時に選択することができる。その結果、
図3に示す1垂直走査期間(1V)GateScanが短くなる。各1垂直走査期間(1V)GateScanが短くなると、各1垂直走査期間(1V)GateScanの後にある第1色の発光期間RON、第2色の発光期間GON及び第3色の発光期間BONを相対的に長くすることができる。
【0057】
図11は、比較例に係る走査線駆動例を示すタイミングチャートである。
図11では、1Field期間における1垂直走査期間(1V)GateScan及び発光期間RON,GON,BONを示している。
【0058】
比較例に係る走査線駆動例では、
図11に示すように、2水平走査期間(2H)において、順次、隣り合う2つの走査線GLが同時に選択される。これにより、1Field期間内の発光期間RON,GON,BONを相対的に長くすることができる。以下、第1ゲート駆動回路43_1又は第2ゲート駆動回路43_2によって選択されている期間を「ゲートオン期間」とも称する。
【0059】
図12は、実施形態1に係る走査線駆動例を示すタイミングチャートである。
図12では、
図11と同様に、1Field期間における1垂直走査期間(1V)GateScan及び発光期間RON,GON,BONを示している。
【0060】
図12に示す本実施形態に係る走査線駆動例では、
図11に示す比較例に係る走査線駆動例と同様に、2水平走査期間(2H)において、隣り合う2つの走査線GLが同時に選択される。さらに、
図12に示す本実施形態に係る走査線駆動例では、第1ゲート駆動回路43_1によって選択される走査線GLと、第2ゲート駆動回路43_2によって選択される走査線GLとで、ゲートオン期間がオーバーラップ(重複)する期間(以下、「オーバーラップ期間」とも称する)を設けている。
【0061】
具体的には、第1ゲート駆動回路43_1によって同時に選択される第1分割領域PAA1内の走査線GL(1),GL(2)のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)と、第2ゲート駆動回路43_2によって同時に選択される第2分割領域PAA2内の走査線GL(N/2+1),GL(N/2+2)のゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)とがオーバーラップしている。また、第2ゲート駆動回路43_2によって同時に選択される第2分割領域PAA2内の走査線GL(N/2+1),GL(N/2+2)のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)と、第1ゲート駆動回路43_1によって同時に選択される第1分割領域PAA1内の走査線GL(3),GL(4)のゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)とがオーバーラップしている。また、第1ゲート駆動回路43_1によって同時に選択される第1分割領域PAA1内の走査線GL(3),GL(4)のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)と、第2ゲート駆動回路43_2によって同時に選択される第2分割領域PAA2内の走査線GL(N/2+3),GL(N/2+4)のゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)とがオーバーラップしている。また、第1ゲート駆動回路43_1によって同時に選択される第1分割領域PAA1内の走査線GL(N/2-1),GL(N/2)のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)と、第2ゲート駆動回路43_2によって同時に選択される第2分割領域PAA2内の走査線GL(N-1),GL(N/2+4)のゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)とがオーバーラップしている。
【0062】
このように、複数の走査線GLのゲートオン期間をオーバーラップさせるオーバーラップ期間を設けることで、
図11に示す比較例に係る走査線駆動例よりもさらに1Field期間内の発光期間RON,GON,BONを相対的に長くすることができる。以下、複数の走査線GLのゲートオン期間をオーバーラップさせて駆動する走査線駆動方式を、「ゲートオーバーラップ駆動」とも称する。
【0063】
図13は、
図12に示す走査線駆動例における画素電極の電圧変化を示す概念図である。
図14は、
図12に示す走査線駆動例におけるゴーストの発生例を示す画像イメージである。
【0064】
図13では、m列目(mは、1からMの自然数)の画素Pixに供給する階調信号SIG(m,n)を例示している。また、
図13では、各画素Pix(m,n)(nは、1からNの自然数)の画素電極PEの電圧変化を、
図12に示す各走査線GLの選択順に例示している。また、
図13に示す破線は、各走査線GL(n)のゲートオン期間において各画素Pix(m,n)に書き込まれる画素階調値によって生じる画素電極PEの電圧変化の理想値を示している。
【0065】
図14では、階調信号SIG(m,n)は、ビット深度が8ビット、すなわち画素階調値として「0」から「255」まで取り得る256階調である例を示している。また、
図14に示す走査線駆動例において、p+3行目の画素Pix(m,p+3)(pは、自然数)、及びN/2+p+5行目の画素Pix(m,N/2+p+5)に対応する画素階調値は「255」、p+5行目の画素Pix(m,p+5)に対応する画素階調値は「63」、それ以外の画素Pix(m,n)に対応する画素階調値は「127」である。
【0066】
図13では、第2ゲート駆動回路43_2によって選択される走査線GL(N/2+p+3)のゲートオン期間において、画素Pix(m,N/2+p+3)の画素階調値は、ゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)に設定される、本来の画素階調値「127」に対し、ゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)において、画素Pix(m,p+3)の画素階調値「255」によって、相対的に高電圧で駆動されることになる。これにより、画素Pix(m,N/2+p+3)の液晶分子が本来の画素階調値「127」よりも高い電圧でチャージされる。
【0067】
その後のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)において、本来の画素Pix(m,N/2+p+3)の画素階調値「127」によって相対的に低電圧で駆動されるが、ゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)において、画素Pix(m,p+3)の画素階調値「255」によって画素Pix(m,N/2+p+3)の液晶分子にチャージされた電荷が十分に放電されない場合がある。
図13では、本来の画素Pix(m,N/2+p+3)の画素階調値「127」よりも大きい、画素階調値「196」相当の電位となった例を示している。
【0068】
その結果として、
図14に示すように、表示領域AA内の第2分割領域PAA2の画素Pix(m,N/2+p+3)に対応する位置において、本来の入力信号には存在しない、いわゆるゴーストが視認される場合がある。
【0069】
また、
図13では、第1ゲート駆動回路43_1によって選択される走査線GL(7)のゲートオン期間において、画素Pix(m,p+7)は、ゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)に設定される、本来の画素Pix(m,p+7)の画素階調値「127」に対し、ゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)において、画素Pix(m,N/2+p+5)の画素階調値「255」によって、相対的に高電圧で駆動されることになる。これにより、画素Pix(m,p+7)の液晶分子が本来の画素階調値「127」よりも高い電圧でチャージされる。
【0070】
その後のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)において、本来の画素Pix(m,p+7)の画素階調値「127」によって相対的に低電圧で駆動されるが、ゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)において、画素Pix(m,p+5)の画素階調値である「255」によって画素Pix(m,p+7)の液晶分子にチャージされた電荷が十分に放電されない場合がある。
図13では、本来の画素Pix(m,p+7)の画素階調値「127」よりも大きい、画素階調値「196」相当の電位となった例を示している。
【0071】
その結果として、
図14に示すように、表示領域AA内の第1分割領域PAA1の画素Pix(m,7)に対応する位置においてゴーストが視認される場合がある。
【0072】
以下、ゲートオーバーラップ駆動を行う実施形態1に係る構成において、ゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)において高電圧駆動を行うことに起因するゴーストを低減可能な手法について、
図15を参照して説明する。
【0073】
図15は、実施形態1に係る表示装置における画素階調値補正処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態において、
図15に示す画素階調値補正処理は、1フレームごとに、信号処理回路41において実行される。
【0074】
信号処理回路41の信号調整部413は、記憶部412から第1入力信号VSの色深度情報を読み出し(ステップS101)、第1入力信号VSの色深度が所定の色深度(ここでは、6bit)以下であるか否か(色深度≦6bit)を判定する(ステップS102)。第1入力信号VSの色深度が所定の色深度(例えば、6bit)よりも大きい場合(ステップS102;No)、第2入力信号VCSに対して色深度変換処理を実行し(ステップS103b)、画素階調値補正処理を終了する。
【0075】
例えば風景画像等のような各画素Pixの画素階調値に法則性(規則性)がない自然画では、上述したようなゴーストが視認され難い。本開示では、第1入力信号VSの色深度が所定の色深度(ここでは、6bit)よりも大きい場合には(ステップS102;No)、画像が自然画であると見做し、ステップS103a以降の補正処理を行わない。
【0076】
第1入力信号VSの色深度が所定の色深度(例えば、6bit)よりも小さい場合(ステップS102;Yes)、第2入力信号VCSに対して色深度変換処理(ここでは、8bit)を実行する(ステップS103a)。
【0077】
信号調整部413は、画素階調値補正対象とする列mの値を初期化し(ステップS104)、画素階調値補正対象列mをインクリメントして(ステップS105)、当該画素階調値補正対象列mの画素Pix(m,n)の画素階調値Pix(m,1)~Pix(m,N)を読み出し(ステップS106)、当該画素階調値Pix(m,1)~Pix(m,N)の平均階調値Pave(m)を算出する(ステップS107)。平均階調値Pave(m)は、例えば下記(1)式により算出される。
【0078】
Pave(m)={P(m,1)+P(m,2)+・・・+P(m,N)}/N
・・・(1)
【0079】
信号調整部413は、画素階調値補正対象とする行をn+1として、行nの値を初期化する(ステップS108)。
【0080】
続いて、信号調整部413は、n<Nであるか否かを判定し(ステップS109)、n<Nであれば(ステップS109;Yes)、行nの値をインクリメントして(ステップS110)、画素Pix(m,n)の画素階調値P(m,n)を読み出し(ステップS111)、画素階調値P(m,n)と平均階調値Pave(m)との差分値が所定値(ここでは、階調信号SIG(m,n)の最大階調における階調数「256」の1/4)を超えたか否かを判定する(ステップS112)。ステップS112の処理における判定式は、下記(2)式で表せる。
【0081】
P(m,n)-Pave(m)>256/4・・・(2)
【0082】
画素階調値P(m,n)と平均階調値Pave(m)との差分値が所定値(ここでは、256/4=64)以下である場合(ステップS112;No)、信号調整部413は、m=Mであるか否かを判定し(ステップS115)、m<Mであれば(ステップS115;No)、ステップS109の処理に戻る。
【0083】
画素階調値P(m,n)と平均階調値Pave(m)との差分値が所定値(ここでは、256/4=64)を超えた場合(ステップS112;Yes)、信号調整部413は、画素階調値P(m,n)を平均階調Paveに基づいて補正した値を、画素階調値補正対象画素Pix(m,n+1)の画素階調値P(m,n+1)として算出し(ステップS113)、記憶部412に一時記憶された画素階調値P(m,n+1)を更新する(ステップS114)。画素階調値補正対象画素Pix(m,n+1)の画素階調値P(m,n+1)は、例えば下記(3)式により算出される。
【0084】
P(m,n+1)=P(m,n+1)-{P(m,n)-Pave(m)}/2
・・・(3)
【0085】
ステップS115の処理においてm<Mであり(ステップS115;No)、且つ、ステップS109の処理においてn=Nである場合(ステップS109;No)、ステップS105以降の処理を繰り返し実行する。
【0086】
ステップS115の処理においてm=Mとなると(ステップS115;Yes)、信号調整部413は、全てのField、すなわち、R_Field、G_Field、B_FieldにおいてステップS104~S115の処理が終了したか否かを判定する(ステップS116)。未処理のFieldがある場合(ステップS116;Yes)、画素階調値補正処理対象Fieldを更新して(ステップS117)、ステップS104~S115の処理を繰り返し実行する。
【0087】
未処理のFieldがない場合(ステップS116;No)、すなわち、R_Field、G_Field、B_FieldにおいてステップS104~S115の処理が終了すると、画素階調値補正処理を終了する。
【0088】
図16は、
図12に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画素電極の電圧変化を示す概念図である。
図17は、
図12に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画像イメージである。
図16及び
図17は、それぞれ
図13及び
図14に対応している。
【0089】
上述した画素階調値補正処理により、平均階調値Pave(m)は、上記(1)式を変形した下記(4)式で表せる。
【0090】
Pave(m)={127×(N-3)+255×2+63×1}/N・・・(4)
【0091】
上記(4)式において、例えばN=480としたとき、平均階調値Pave(m)は127.4となる。このとき、画素Pix(m,p+3)の画素階調値である「255」は、上記(2)式に示すステップS112の条件式を満たす(ステップS112;Yes)。このとき、画素階調値補正対象行n+1に該当する画素Pix(m,N/2+p+3)の画素階調値P(m,N/2+p+3)は、上記(3)式により「63.2」となる。
【0092】
信号調整部413は、上記(3)式による算出結果から、画素Pix(m,N/2+p+3)の画素階調値を「63」に更新する。これにより、
図16に示すように、画素Pix(m,N/2+p+3)の電位は、本来の画素階調値である画素階調値「127」相当の電位となる。
【0093】
その結果として、
図17に示すように、表示領域AA内の第2分割領域PAA2の画素Pix(m,N/2+p+3)に対応する位置で視認されるゴーストを抑制することができる。
【0094】
また、画素Pix(m,N/2+p+5)の画素階調値である「255」は、上記(2)式に示すステップS112の条件式を満たす(ステップS112;Yes)。このとき、画素階調値補正対象行n+1に該当する画素Pix(m,p+7)の画素階調値P(m,p+7)は、上記(3)式により「63.2」となる。
【0095】
信号調整部413は、上記(3)式による算出結果から、画素Pix(m,p+7)の画素階調値を「63」に更新する。これにより、
図16に示すように、画素Pix(m,p+7)の電位は、本来の画素Pix(m,p+7)の画素階調値「127」相当の電位となる。
【0096】
その結果として、
図17に示すように、表示領域AA内の第1分割領域PAA1の画素Pix(m,7)に対応する位置で視認されるゴーストを抑制することができる。
【0097】
(実施形態2)
図18は、実施形態2に係る表示装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図19は、実施形態2に係る走査線駆動例を示すタイミングチャートである。なお、実施形態1と同一の構成部には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0098】
本実施形態では、表示領域AAを2つの第1分割領域PAA1及び第2分割領域PAA2に分割し、第1分割領域PAA1内の走査線GLを選択する第1ゲート駆動回路(第1走査線駆動回路)43_1、及び、第2分割領域PAA2内の走査線GLを選択する第2ゲート駆動回路(第2走査線駆動回路)43_2を設けた実施形態1とは異なり、1つのゲート駆動回路(走査線駆動回路)43で表示領域AA内の走査線GLを選択する態様を例示している。
【0099】
また、本実施形態では、奇数行の画素Pixに接続される信号線SLodd、及び、偶数行の画素Pixに接続される信号線SLevenを設けた実施形態1とは異なり、各信号線SLが各行の画素Pixに接続された態様を例示している。
【0100】
図18に示す実施形態2に係る構成においても、実施形態1に係る構成と同様にフィールドシーケンシャル方式で駆動され、水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSとが発光部31が発光可能な色毎に生成される。
【0101】
また、本実施形態においても、実施形態1と同様のゲートオーバーラップ駆動によって、
図19に示すように、1Field期間内の発光期間RON,GON,BONを相対的に長くすることができる。具体的に、
図19に示す本実施形態に係る走査線駆動例では、走査線GL(p+1)(pは、自然数)のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)と、走査線GL(p+2)のゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)とがオーバーラップしている。また、走査線GL(p+2)のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)と、走査線GL(p+3)のゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)とがオーバーラップしている。また、走査線GL(p+3)のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)と、走査線GL(p+4)のゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)とがオーバーラップしている。
【0102】
図20は、
図19に示す走査線駆動例における画素電極の電圧変化を示す概念図である。
図21は、
図19に示す走査線駆動例におけるゴーストの発生例を示す画像イメージである。
【0103】
図20では、m列目の画素Pixに供給する階調信号SIG(m,n)を例示している。また、
図20では、各画素Pix(m,n)の画素電極PEの電圧変化を、
図19に示す各走査線GLの選択順に例示している。なお、各走査線GL(p+1),GL(p+2),GL(p+3),GL(p+4)の選択順序と、表示領域AA内における並び順序とは、必ずしも一致していなくても良い。また、
図13に示す破線は、各走査線GL(n)のゲートオン期間において各画素Pix(m,n)に書き込まれる画素階調値によって生じる画素電極PEの電圧変化の理想値を示している。
【0104】
図21では、階調信号SIG(m,n)は、実施形態1と同様に、ビット深度が8ビット、すなわち画素階調値として「0」から「255」まで取り得る256階調である例を示している。また、
図21に示す走査線駆動例において、p+2行目の画素Pix(m,p+2)に対応する画素階調値は「255」、それ以外の画素Pix(m,n)に対応する画素階調値は「127」である。なお、
図21において、各走査線GL(p+1),GL(p+2),GL(p+3),GL(p+4)の選択順序と、表示領域AA内における並び順序とは、一致していない。
【0105】
図20では、ゲート駆動回路43によって選択される走査線GL(p+3)のゲートオン期間において、画素Pix(m,N/2+p+3)の画素階調値は、ゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)に設定される、本来の画素階調値「127」に対し、ゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)において、画素Pix(m,p+2)の画素階調値「255」によって、相対的に高電圧で駆動されることになる。これにより、画素Pix(m,p+3)の液晶分子が本来の画素階調値「127」よりも高い電圧でチャージされる。
【0106】
その後のゲートオン期間の後半の1水平走査期間(1H)において、本来の画素Pix(m,p+3)の画素階調値「127」によって相対的に低電圧で駆動されるが、ゲートオン期間の前半の1水平走査期間(1H)において、画素Pix(m,p+2)の画素階調値「255」によって画素Pix(m,p+3)の液晶分子にチャージされた電荷が十分に放電されない場合がある。
図20では、本来の画素Pix(m,p+3)の画素階調値「127」よりも大きい、画素階調値「196」相当の電位となった例を示している。
【0107】
その結果として、
図21に示すように、表示領域AA内の画素Pix(m,p+3)に対応する位置においてゴーストが視認される場合がある。
【0108】
本実施形態においても、実施形態1において説明した画素階調値補正処理により、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0109】
図22は、
図19に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画素電極の電圧変化を示す概念図である。
図23は、
図19に示す走査線駆動例において画素階調値補正処理を適用した場合の画像イメージである。
【0110】
具体的には、実施形態1において説明した画素階調値補正処理により、平均階調値Pave(m)は、実施形態1の(1)式を変形した下記(5)式で表せる。
【0111】
Pave(m)={127×(N-1)+255×1}/N・・・(5)
【0112】
上記(5)式において、例えばN=480としたとき、平均階調値Pave(m)は127.3となる。このとき、画素Pix(m,p+2)の画素階調値である「255」は、実施形態1の(2)式に示す条件式(255-127.3>256/4)を満たす。このとき、画素階調値補正対象行n+1に該当する画素Pix(m,p+3)の画素階調値P(m,p+3)は、実施形態1の(3)式により「63.1」となる。
【0113】
信号調整部413は、実施形態1の(3)式による算出結果から、画素Pix(m,p+3)の画素階調値を「63」に更新する。これにより、
図22に示すように、画素Pix(m,p+3)の電位は、本来の画素階調値である画素階調値「127」相当の電位となる。
【0114】
その結果として、
図23に示すように、表示領域AA内の画素Pix(m,p+3)に対応する位置で視認されるゴーストを抑制することができる。
【0115】
以上、好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0116】
1 表示装置
2 表示パネル
3 光源
4 駆動回路
9 上位制御部
10 アレイ基板
20 対向基板
31 発光部
41 信号処理回路
42 画素制御回路
43 ゲート駆動回路(走査線駆動回路)
43_1 第1ゲート駆動回路(第1走査線駆動回路)
43_2 第2ゲート駆動回路(第2走査線駆動回路)
44 ソース駆動回路(信号線駆動回路)
45 共通電位駆動回路
50 液晶層
AP 開口部
CE 共通電極
COML コモン電位配線
FR 周辺領域
GateScan 1垂直走査期間(1V)
GL 走査線
GON 発光期間
HC 保持容量
HDS 水平駆動信号
IO 保持容量電極
LC 高分子分散型液晶
PE 画素電極
Pix 画素
SIG 階調信号
TM 金属層
Tr、Tr1,Tr2 スイッチング素子