(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169757
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】留め具打設用アダプタ及び打撃工具
(51)【国際特許分類】
B25D 17/28 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
B25D17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081068
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳宜
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA15
2D058BB27
2D058CA03
2D058CB07
(57)【要約】
【課題】打撃工具を用いて留め具を容易に打ち込み可能とする。
【解決手段】留め具打設用アダプタ1は、電動ハンマ50のツールホルダ70に装着可能なシャフト2と、シャフト2に同軸で外装されるスリーブ3と、スリーブ3を突出側へ付勢するコイルバネ4とを有し、スリーブ3の先端に、頭部と脚部とを有する線状又は棒状のピンの頭部が係止可能な係止溝25,25が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃工具のツールホルダに装着可能で、先端に、頭部と脚部とを有する線状又は棒状の留め具の前記頭部が係止可能な係止部を備えてなることを特徴とする留め具打設用アダプタ。
【請求項2】
前記ツールホルダに装着可能なシャフトと、前記シャフトに同軸で外装される筒状の保持部材と、を有し、
前記係止部は、前記保持部材の先端に形成された係止溝であることを特徴とする請求項1に記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項3】
前記係止部は、前記保持部材の軸線を中心とした点対称位置に2カ所設けられていることを特徴とする請求項2に記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項4】
前記係止部は、前記留め具の前記頭部と前記脚部とに跨がって係止可能であることを特徴とする請求項2又は3に記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項5】
前記脚部は2本であり、前記係止部は、前記頭部と各前記脚部とにそれぞれ係止可能であることを特徴とする請求項4に記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項6】
前記係止部に係止した前記頭部が前記保持部材の径方向に移動することを規制する規制部を備えることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項7】
前記係止部における少なくとも前記脚部との係止部分が、前記保持部材に対して着脱可能であることを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項8】
前記脚部との係止部分は、前記保持部材と異なる材質であることを特徴とする請求項7に記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項9】
前記保持部材の外面に、径方向へ突出する突起が設けられていることを特徴とする請求項2乃至8の何れかに記載の留め具打設用アダプタ。
【請求項10】
ツールホルダと、前記ツールホルダに装着されたビットを打撃可能な打撃機構とを備え、前記ツールホルダに、前記ビットに代えて請求項1乃至9の何れかに記載の留め具打設用アダプタを装着してなる打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ハンマやハンマドリル等の打撃工具を用いて、地面にピンやペグ等の線状又は棒状の留め具を打ち込むために使用される留め具打設用アダプタと、当該アダプタを装着した打撃工具とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、温暖化対策として太陽光発電設備の普及が進んでいる。この場合、設備敷地内での雑草による発電量の低下や故障等のリスクを回避するため、防草シートを施工することが多くなっている。また、太陽光発電設備以外にも、雑草対策として、空き地や中央分離帯等に防草シートを施工したり、人工芝を施工したりするケースが増えている。
このようなシート材は、ピンやペグ等の線状又は棒状の留め具を複数箇所でシート材ごと地面に打ち込むことで施工される。従来の施工は、金槌等を用いて作業者が留め具を1本ずつ打ち込む手作業となっていた。よって、打ち込む本数が多い場合や地面が固い場合には作業者の負担が大きくなり、作業時間もかかっていた。
一方、電動ハンマやハンマドリル等の打撃工具は、ツールホルダに先端工具を装着して穿孔作業等を行う他、所定のアダプタを装着して特定の作業を行うために使用される場合がある。例えば特許文献1には、建築物に用いられるドリフトピンを打ち込むためのアダプタを打撃工具に装着する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような打撃工具及びアダプタを、シート材等を施工する留め具の打ち込みにも利用できれば作業者の負担は軽減される。しかし、上記アダプタはドリフトピン専用であり、留め具の打ち込みには使用できなかった。
【0005】
そこで、本開示は、打撃工具を用いて線状又は棒状の留め具を容易に打ち込むことができる留め具打設用アダプタ及び打撃工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、留め具打設用アダプタであって、打撃工具のツールホルダに装着可能で、先端に、頭部と脚部とを有する線状又は棒状の留め具の頭部が係止可能な係止部を備えてなることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、打撃工具であって、ツールホルダと、ツールホルダに装着されたビットを打撃可能な打撃機構とを備え、ツールホルダに、ビットに代えて第1の構成に記載の留め具打設用アダプタを装着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、打撃工具を用いて線状又は棒状の留め具を容易に打ち込むことができる。よって、シート材等を施工する際の作業者の負担が軽減されると共に、作業時間の短縮化も図られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】留め具打設用アダプタの中央縦断面図である。
【
図3】留め具打設用アダプタを上方から見た分解斜視図である。
【
図4】留め具打設用アダプタを下方から見た分解斜視図である。
【
図5】留め具打設用アダプタを装着した電動ハンマの中央縦断面図である。
【
図6】留め具の打ち込み前状態を示す説明図である。
【
図7】留め具の打ち込み完了状態を示す説明図である。
【
図8】変更例の留め具打設用アダプタの斜視図である。
【
図9】変更例の留め具打設用アダプタの底面図である。
【
図12】変更例の留め具打設用アダプタによる留め具の打ち込み前状態を示す説明図である。
【
図13】別の変更例の留め具打設用アダプタの斜視図である。
【
図14】別の変更例の留め具打設用アダプタの底面図である。
【
図17】フックを利用した留め具の引き抜き状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、留め具打設用アダプタは、ツールホルダに装着可能なシャフトと、シャフトに同軸で外装される筒状の保持部材と、を有し、係止部は、保持部材の先端に形成された係止溝であってもよい。
この構成によれば、留め具の頭部を係止溝へ簡単に係止させて打ち込みの際に留め具を支持可能となる。
本開示の一実施形態において、係止溝は、保持部材の軸線を中心とした点対称位置に2カ所設けられていてもよい。
この構成によれば、留め具を軸線回りで回り止めした状態で係止させることができる。
本開示の一実施形態において、係止溝は、留め具の頭部と脚部とに跨がって係止可能であってもよい。
この構成によれば、係止させた留め具の倒れ(座屈)防止が可能となる。
本開示の一実施形態において、脚部は2本であり、係止部は、頭部と各脚部とにそれぞれ係止可能であってもよい。
この構成によれば、頭部と2本の脚部とにそれぞれ跨がって係止する係止部により、係止させた留め具を安定して支持可能となる。
【0010】
本開示の一実施形態において、留め具打設用アダプタは、係止部に係止した頭部が保持部材の径方向に移動することを規制する規制部を備えていてもよい。
この構成によれば、脚部と係止部との係止が維持でき、留め具の座屈が効果的に防止可能となる。
本開示の一実施形態において、係止部における少なくとも脚部との係止部分が、保持部材に対して着脱可能に設けられていてもよい。
この構成によれば、留め具の形態に合わせて必要な場合にのみ脚部との係止部分を使用でき、使い勝手が良好となる。
本開示の一実施形態において、脚部との係止部分は、保持部材と異なる材質で形成されていてもよい。
この構成によれば、当該係止部分を透明又は半透明として、打ち込み位置を視認しやすくすることができる。
本開示の一実施形態において、保持部材の外面に、径方向へ突出する突起が設けられていてもよい。
この構成によれば、打ち込んだ留め具の引き抜き等に突起を利用でき、使い勝手の向上が期待できる。
【実施例0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
(留め具打設用アダプタの説明)
図1は、第1の構成に係る留め具打設用アダプタ(以下、単に「アダプタ」という。)1の一例を示す斜視図である。
図2は、アダプタ1の中央縦断面図である。なお、ここではスリーブ3の先端側(突出側)を下方として説明する。
アダプタ1は、シャフト2と、スリーブ3と、コイルバネ4とを含んでなる。
シャフト2は、横断面が円形となる金属製で、
図3及び
図4にも示すように、下軸部5と、中軸部6と、上軸部7とを備えている。下軸部5と上軸部7とは略同径で、中軸部6は、下軸部5及び上軸部7よりも大径に形成されている。中軸部6の周面には、半球状の嵌合凹部8が形成されている。嵌合凹部8には、ボール9の半分が嵌合している。
下軸部5と中軸部6との間には、中軸部6よりも大径で円盤状のストッパ部10が同軸で形成されている。ストッパ部10の外周には、リング状の凹溝11が形成されている。凹溝11には、Oリング12が外装されている。
上軸部7の上端外周には、上端面から下方へ延びる一対の溝13,13と、上下方向へ延びる一対の凹部14,14とが、互いに90°位相を変えた状態でそれぞれシャフト2の軸線Lを中心とした点対称位置に形成されている。
【0012】
スリーブ3は、シャフト2が遊挿される金属製の筒体で、下部に小径孔15、上部に大径孔16が同軸で形成されている。小径孔15は、シャフト2のストッパ部10の外径よりも小径となっている。小径孔15の中間部には、シャフト2の下軸部5が遊挿するさらに小径の絞り部17が、リング状に形成されている。絞り部17の内周面には、リング状の凹溝18が形成されている。凹溝18には、Oリング19が保持されている。Oリング19は、シャフト2の下軸部5に外装されている。
絞り部17よりも下側の小径孔15は、下方へ向かうに従って拡径するテーパ孔部20となっている。
【0013】
大径孔16は、シャフト2のストッパ部10よりも大径となっている。ストッパ部10の上方で大径孔16内には、金属製の内スリーブ21が上方から圧入されている。内スリーブ21の上側で大径孔16内には、サークリップ22が設けられて、内スリーブ21を抜け止めしている。内スリーブ21の内周面には、上下方向に係合溝23が設けられている。係合溝23には、シャフト2の中軸部6に嵌合するボール9が係合している。よって、シャフト2とスリーブ3とは、互いに回転規制される。また、スリーブ3は、内スリーブ21がストッパ部10に当接する下限位置と、小径孔15と大径孔16との間に形成される段部24がストッパ部10に当接する上限位置との間のストロークで、シャフト2に対して上下に相対移動可能となる。
スリーブ3の下端面において、軸線Lを中心とした点対称位置には、スリーブ3を径方向に貫通する一対の係止溝25,25が形成されている。係止溝25,25は、絞り部17の下面に至るまで形成されている。
【0014】
コイルバネ4は、スリーブ3の内部で下軸部5に外装されている。コイルバネ4の下端は、絞り部17に当接し、コイルバネ4の上端は、ストッパ部10に当接している。
よって、スリーブ3は、コイルバネ4によって、常態では内スリーブ21がストッパ部10に当接する下限位置に付勢されている。この下限位置で、シャフト2の下軸部5の下端面は、絞り部17よりも下方に位置してテーパ孔部20内に突出している。
図2に示すスリーブ3の下限位置で、シャフト2の下端面とスリーブ3の下端面との軸方向の距離D1は、段部24とストッパ部10の下端面との軸方向の距離D2と等しくなっている。
【0015】
(電動ハンマの説明)
図5は、第2の構成に係る打撃工具の一例である電動ハンマ50を示している。電動ハンマ50は、本体ハウジング51と、モータハウジング52とを備えている。なお、電動ハンマ50単独では、ツールホルダ70が突出する
図5の左側を前方として説明する。
本体ハウジング51は、打撃機構53を収容して、打撃軸線方向となる前後方向に延びる。モータハウジング52は、本体ハウジング51の下側へ一体に結合され、出力軸55を上向きとしたブラシレスのモータ54を収容している。出力軸55は、本体ハウジング51内に突出している。
また、電動ハンマ50は、外側ハウジング56と、ハンドルハウジング57とをさらに備えている。外側ハウジング56は、前後方向に延びて本体ハウジング51の外側を覆っている。ハンドルハウジング57は、外側ハウジング56の後側へ一体に結合され、外側ハウジング56の後方からモータハウジング52の下方にかけて設けられている。
【0016】
ハンドルハウジング57は、ハンドル部58と、バッテリ装着部59と、コントローラ収容部60とを備えている。ハンドル部58は、上下方向に延び、前側に、連結部61を備えている。連結部61は、外側ハウジング56の後端に連結されて本体ハウジング51の後部を後方から覆う。ハンドル部58は、スイッチ62及びスイッチレバー63を備えている。バッテリ装着部59は、ハンドル部58の下端に形成されている。コントローラ収容部60は、バッテリ装着部59の前側に連続し、モータハウジング52の下側へ回り込んで形成されている。コントローラ収容部60の前面上端には、係止部64が後ろ向きに形成されている。モータハウジング52の前面下端には、係止部64が前方から係止する係止凹部65が形成されている。
バッテリ装着部59には、電源となるバッテリパック66が後方からスライド装着可能となっている。バッテリ装着部59には、バッテリパック66が電気的に接続される端子台67が設けられている。
コントローラ収容部60には、制御回路基板を備えたコントローラ68が、前部が後部よりも下側となる傾斜姿勢で収容されている。
【0017】
打撃機構53は、筒状のツールホルダ70及びシリンダ71を備えている。ツールホルダ70は、本体ハウジング51の前側に保持されて前後方向に延びている。シリンダ71は、本体ハウジング51の後側に保持されてツールホルダ70と同軸で前後方向に延びている。
本体ハウジング51内でシリンダ71の後側には、クランク軸72が上下方向に支持されている。クランク軸72の上部には、偏心ピン73が上向きに設けられ、クランク軸72の下部には、ギヤ74が設けられている。ギヤ74は、出力軸55の上端に設けたピニオン75と噛合している。
シリンダ71には、ピストン76が前後移動可能に収容されている。ピストン76は、コネクティングロッド77を介して偏心ピン73と連結されている。シリンダ71内でピストン76の前方には、空気室78を介してストライカ79が前後移動可能に収容されている。ストライカ79の前方でツールホルダ70内には、インパクトボルト80が設けられている。ツールホルダ70の前端には、一対のボール81,81が設けられている。ボール81,81は、アダプタ1の上軸部7に設けた凹部14,14に係合可能である。ツールホルダ70の前端には、前方へ付勢されて凹部14,14へのボール81,81の係合状態を維持する操作スリーブ82が設けられている。
【0018】
外側ハウジング56及びハンドルハウジング57は、本体ハウジング51及びモータハウジング52に対して前後へ相対移動可能に設けられている。
本体ハウジング51とハンドル部58との間には、第1コイルバネ83が前後方向に設けられている。第1コイルバネ83は、連結部61内で、本体ハウジング51の後面とハンドル部58の前面とにそれぞれ設けられた前ボス84と後ボス85とに跨がって両端が外装されている。第1コイルバネ83は、1つ又は複数を左右方向に並べて配置されている。
モータハウジング52とコントローラ収容部60との間にも第2コイルバネ86が設けられている。モータハウジング52の下面には、コントローラ収容部60内へ下向きに突出する突出片87が設けられている。コントローラ収容部60内には、突出片87の後方で立設される受けリブ88が設けられている。第2コイルバネ86は、突出片87と受けリブ88との間で前後方向に保持されている。
外側ハウジング56及びハンドルハウジング57は、常態では第1、第2コイルバネ83,86の付勢により、コントローラ収容部60の係止部64がモータハウジング52の係止凹部65に当接する
図5の後退位置へ弾性的に付勢される。
モータ54の後方でモータハウジング52の下部には、変速ダイヤル89が設けられている。コントローラ68は、変速ダイヤル89の回転操作によって選択された回転数(打撃数)でモータ54を駆動させる。
【0019】
(ピンの打ち込み)
以上の如く構成されたアダプタ1及び電動ハンマ50では、ツールホルダ70の前端で操作スリーブ82を後退させてボール81,81の押圧を解除する。この状態で、ビットに代えて、アダプタ1のシャフト2の上軸部7をツールホルダ70に挿入する。このとき、ツールホルダ70の内周面に図示しない一対の突条が形成されていれば、上軸部7の溝13,13を突条の位相に合わせて挿入する。すると、凹部14,14がボール81,81の内側にそれぞれ位置する。ここで操作スリーブ82の後退を解除して前進させると、操作スリーブ82がボール81,81をツールホルダ70の軸心側へ押圧する。よって、ボール81,81が凹部14,14に嵌合し、シャフト2は、抜け止め且つ回り止めされた状態でツールホルダ70へ同軸で装着される。但し、シャフト2は、凹部14,14内をボール81,81が相対移動するストロークで前後移動可能となる。
【0020】
ツールホルダ70の内周面に突条がない場合、シャフト2の上軸部7をツールホルダ70に挿入し、操作スリーブ82を前進させても、ボール81,81と凹部14,14との位相が合わない場合がある。この場合、アダプタ1を回転させれば、押圧されるボール81,81が凹部14,14に嵌合することになる。ここでシャフト2はボール9及び内スリーブ21を介してスリーブ3と回転方向で一体となっているので、スリーブ3を把持して回転させればシャフト2も追従して回転する。よって、シャフト2を直接把持しなくてもスリーブ3の操作で容易にシャフト2を回転させてボール81,81を凹部14,14に嵌合させることができる。
【0021】
打ち込みに使用するピン100は、
図6に示すように、金属製の線材をU字状に折り曲げて形成されている。ピン100は、直線状の頭部101と、頭部101の両端から延びる一対の脚部102,102とを有している。
このピン100の脚部102,102の先端を、地面Gにセットした防草シートSの所定の打ち込み位置で上方から貫通させ、地面Gにある程度差し込んで立設させる。
そして、電動ハンマ50を下向きにして、ピン100の頭部101に、アダプタ1のスリーブ3の下端の係止溝25,25を上方から係止させる。すると、各係止溝25には、ピン100の上端部、すなわち頭部101と脚部102とが繋がる左右の角部がそれぞれ係止する。よって、ピン100は、頭部101と直交する水平方向に傾くことなくスリーブ3に係止し、頭部101をシャフト2の下軸部5に当接させる。
ここでハンドル部58を把持する手で電動ハンマ50を下方へ押し込むと、シャフト2がツールホルダ70内で上方へ相対移動し、ボール81,81を凹部14,14の下端に係合させると共に、上軸部7がインパクトボルト80に当接する。続いて外側ハウジング56及びハンドルハウジング57が、第1、第2コイルバネ83,86の付勢力に抗して下降する。
【0022】
そして、スイッチレバー63を押し込んでスイッチ62をONさせると、コントローラ68は、モータ54を駆動させる。但し、コントローラ68は、起動時から変速ダイヤル89で設定された回転数でモータ54を駆動させず、立ち上がりの所定時間は低い回転数から徐々に回転数を上げていくソフトスタートを実行し、その後設定された回転数でモータ54を駆動させる。
なお、ハンドル部58には、スイッチレバー63を押し込み位置で保持するロックオンボタン90(
図5)が設けられている。よって、スイッチレバー63を押し込んだ状態でロックオンボタン90を押し込み操作すれば、その後はスイッチレバー63の押し込みを維持しなくてもモータ54の駆動は継続する。
【0023】
モータ54の出力軸55が回転すると、ピニオン75及びギヤ74を介してクランク軸72が回転する。よって、コネクティングロッド77を介してピストン76が往復動する。これにより、空気室78を介してストライカ79が連動して往復動する。ストライカ79が往復動してインパクトボルト80を打撃し、シャフト2を介して頭部101を打撃する。よって、ピン100は、スリーブ3の係止溝25,25に係止した状態で地面Gに打ち込まれる。
打ち込みの際、ハンドル部58を把持する手は、シャフト2の軸線L(ツールホルダ70の軸線)上で上方に位置している。よって、作業者による下方への押圧力はロスなくシャフト2に伝わる。また、外側ハウジング56及びハンドルハウジング57が、第1、第2コイルバネ83,86の付勢力に抗して下降して本体ハウジング51及びモータハウジング52と接触していない。よって、打ち込み時に外側ハウジング56及びハンドルハウジング57に伝わる振動が抑制され、ハンドル部58を把持する手に伝わる振動が小さくなる。
【0024】
打ち込みが進むにつれて電動ハンマ50及びアダプタ1が下降すると、スリーブ3の下端が防草シートSの表面に当接する。すると、スリーブ3はそのままでシャフト2が打ち込みを続けながら下降する。そして、
図7に示すように、ピン100は、頭部101が防草シートSの表面に当接して地面Gに押圧するまで打ち込まれた状態となる。ここからさらに打ち込みを続けると、シャフト2のストッパ部10がスリーブ3の段部24に当接してそれ以上の打ち込みは規制される。ピン100の打ち込みを確認した作業者が電動ハンマ50の押し込みを解除すれば、打ち込み作業は終了する。
打ち込み作業の際、作業者は他方の手でアダプタ1を支えることができるが、コイルバネ4がスリーブ3の内側にあってスリーブ3の全体が露出しているため、スリーブ3を把持して容易に支持することができる。
【0025】
(アダプタ及びアダプタを装着した電動ハンマに係る発明の効果)
アダプタ1は、電動ハンマ50(打撃工具の一例)のツールホルダ70に装着可能で、先端に、頭部101と脚部102とを有する線状のピン100(留め具の一例)の頭部101が係止可能な係止溝25(係止部の一例)を備えてなる。
この構成によれば、電動ハンマ50を用いて線状のピン100を容易に打ち込むことができる。よって、防草シートSを施工する際の作業者の負担が軽減されると共に、作業時間の短縮化も図られる。
【0026】
アダプタ1は、ツールホルダ70に装着可能なシャフト2と、シャフト2に同軸で外装される筒状のスリーブ3(保持部材の一例)と、を有し、係止部は、スリーブ3の先端に形成された係止溝25である。
よって、ピン100の頭部101を係止溝25へ簡単に係止させて打ち込みの際にピン100を支持可能となる。
係止溝25は、スリーブ3の軸線(シャフト2の軸線L)を中心とした点対称位置に2カ所設けられている。
よって、ピン100を軸線L回りで回り止めした状態で係止させることができる。
係止溝25は、ピン100の頭部101と脚部102とに跨がって係止可能である。
よって、係止させたピン100の倒れ(座屈)防止が可能となる。
脚部102は2本であり、係止溝25,25は、頭部101と各脚部102とにそれぞれ係止可能である。
よって、頭部101と2本の脚部102,101とにそれぞれ跨がって係止する係止溝25,25により、係止させたピン100を安定して支持可能となる。
【0027】
(アダプタの変更例)
上記実施例において、アダプタの形態は適宜変更可能である。例えばスリーブは、円筒でなく角筒であってもよい。コイルバネは、位置を変えたり、省略したりすることができる。
係止溝は、複数組を位相を変えて設けてもよい。この場合、係止位置が増えてピンの係止がしやすくなる。
係止溝は、幅が異なる複数組を位相を変えて設けてもよい。この場合、線材の径が異なるピンに対応可能となる。
係止溝の深さは、適宜変更できる。
但し、係止部は、上記例の係止溝に限らない。例えば係止部は、保持部材の端面で下向きに突設した突起として、ピンの頭部を複数の突起で挟持させるようにしてもよい。
【0028】
図8は、スリーブ3の先端部にアタッチメント30を着脱可能に設けたアダプタ1を示す斜視図、
図9はその底面図である。アタッチメント30は、スリーブ3が挿入される挿入孔31を軸心に貫通形成した円形の筒体である。アタッチメント30の内部上側には、
図10に示すように、挿入孔31と連通する一対の貫通孔32,32が直径方向に形成されている。各貫通孔32における挿入孔31との連通部分には、ナット33がそれぞれ同軸で保持されている。各貫通孔32には、アタッチメント30の径方向外側から六角穴付きボルト34がそれぞれ挿入されて、ナット33に螺合している。アタッチメント30は、六角穴付きボルト34,34をナット33,33にねじ込んでスリーブ3の外周面を押圧することで、スリーブ3へ一体に取り付けられる。
【0029】
アタッチメント30の下面には、一対の連通溝35,35が形成されている。連通溝35,35は、挿入孔31を中心とした点対称位置で、
図11に示すように、アタッチメント30の径方向で挿入孔31と連通形成されている。連通溝35,35の径方向外側の端部は、アタッチメント30の外周面に貫通しておらず、閉塞部36,36となっている。連通溝35,35は、スリーブ3の係止溝25,25と同じ幅で形成されている。各連通溝35は、アタッチメント30の下面から上部まで形成されている。各連通溝35の深さは、係止溝25よりも大きくなっている。
アタッチメント30は、連通溝35,35が係止溝25,25の径方向外側に連続する位相でスリーブ3に固定される。ここでは係止溝25と連通溝35とを合わせて係止部が形成される。
アタッチメント30は、スリーブ3と異なる材質、例えば樹脂で形成される。
【0030】
スリーブ3のみの場合、スリーブ3の直径よりも頭部101が長いピン100であると、脚部102,101の上端が係止溝25に係止しない。よって、打ち込む際にピン100が頭部101を中心に回転してしまい、座屈するおそれがある。
しかし、このアタッチメント30を用いると、
図12に示すように、スリーブ3の直径よりも頭部101が長いピン100Aを使用しても、頭部101の両端及び脚部102,101の上端とを連通溝35,35に係止させることができる。このため、ピン100Aは、係止溝25を越えた角部が連通溝35にそれぞれ係止して回り止めされる。よって、座屈することなくピン100Aを打ち込むことができる。
また、連通溝35がアタッチメント30を貫通していないので、ピン100Aの頭部101が係止溝25から径方向にずれることがあっても、脚部102が閉塞部36に当接する。よって、頭部101の移動が規制される。
【0031】
このように、アタッチメント30を装着したアダプタ1は、係止溝25及び連通溝35に係止した頭部101がスリーブ3の径方向に移動することを規制する閉塞部36(規制部の一例)を備えている。
よって、脚部102と連通溝35との係止が維持でき、ピン100Aの座屈が効果的に防止可能となる。
また、アダプタ1では、係止部における脚部102との係止部分である連通溝35を有するアタッチメント30が、スリーブ3に対して着脱可能に設けられている。
よって、ピンの形態に合わせて必要な場合にのみアタッチメント30を使用でき、使い勝手が良好となる。
さらに、アタッチメント30は、スリーブ3と異なる材質で形成されている。
よって、アタッチメント30を透明又は半透明とすれば、大径であってもピン100Aや防草シートSへの打ち込み位置が視認しやすくなる。また、樹脂製とすれば、アタッチメント30を装着しても重量の増加は抑えられる。
【0032】
なお、この変更例において、アタッチメントは、上記例よりも軸方向に短くてもよい。アタッチメントは、外形が円形でなくてもよい。アタッチメントは、例えば係止溝の形成部分を含む扁平状等であってもよい。
アタッチメントをスリーブへ取り付ける構造も適宜変更できる。例えば取付構造は、六角穴付きボルトの数を変更したり、六角穴付きボルトに代えてピン結合やバヨネット結合を利用したりしてもよい。
【0033】
図13は、別体のアタッチメントではなく、スリーブ3の下部に外形が円形となる大径の係止盤40を一体に形成したアダプタ1Aを示している。係止盤40は、
図14にも示すように、係止部として、下面に、スリーブ3の軸線を中心とした点対称位置でそれぞれ径方向に延びる第1係止溝41,41と第2係止溝42,42とを備えている。第1、第2係止溝41,42は、互いに90度異なる位相でスリーブ3の小径孔15の下端と連通している。第2係止溝42は、第1係止溝41よりも幅が大きくなっている。第1、第2係止溝41,42の径方向外側の端部も、係止盤40を貫通しない閉塞部43となっている。
よって、このアダプタ1Aでは、
図15に示すように、頭部101の長さがスリーブ3の上部の外径よりも大きいピン100Aであっても、係止盤40に係止させることができる。この場合、頭部101の径に合わせて第1係止溝41,41と第2係止溝42,42との何れかを選択して係止させることができる。
また、ここでの小径孔15の下部は、
図15にも示すように、小径の上側孔部44と、大径の下側孔部45とが同軸で形成される二段径となっている。これは
図16に示すように、頭部が円盤状となって脚部102が1本となる釘型のピン100Bを用いる場合、頭部の径に合わせて、小径の頭部103は上側孔部44に、大径の頭部104は下側孔部45にそれぞれ嵌合させて係止可能としたものである。
【0034】
係止盤40の外周には、フック46が設けられている。フック46は、係止盤40の径方向外側に突出した後、下方へ折曲するL字状に形成されている。フック46は、係止盤40の外周にボルト47によって固定されている。
このフック46は、例えば
図17に示すように、バールや釘抜きと同様の使い方で、打ち込んだピン100を取り外すために用いられる。ここではフック46の先端を頭部101の下側に差し込んで、電動ハンマ50ごと、或いはアダプタ1単独で矢印方向へ倒せば、頭部101を介してピン100を上方へ引き抜くことができる。
このように、アダプタ1Aでは、係止盤40の外面に、径方向へ突出するフック46(突起の一例)が設けられている。
よって、打ち込んだピン100の引き抜き等にフック46を利用でき、使い勝手の向上が期待できる。
【0035】
なお、この変更例において、係止盤は、軸方向に長くしてもよい。係止盤は、外形が円形でなくてもよい。係止盤は、例えば係止溝の形成部分のみをスリーブから径方向外側に突出させた十字状等としてもよい。
係止溝は、幅が異なる3種類以上を異なる位相で設けてもよい。小径孔の下部は、3段階以上に孔径を変えてもよいし、このような多段径でなくてもよい。
係止盤に設ける突起は、上記例のフック形状でなくてもよい。突起は省略することもできる。
【0036】
上記各例において、留め具は、上記各例のピンに限らない。ピンは、頭部が直線状でなく曲線状(半円状等)であってもよい。ピンは、上記変更例での釘型の他、脚部が1本となる逆L字状に形成されるものであってもよい。ピンは、一部が線材で形成され、他の部分(例えば頭部)が線材以外で形成されるものであってもよい。ピンは、一部又は全部が金属製でなくてもよい。ピンは、脚部が貫通する押さえ(黒丸)を備えるものであってもよい。
上記各例の留め具は、防草シートへの打設用となっているが、本開示のアダプタで打設する留め具は、防草シート用に限らない。例えば留め具は、人工芝への打設用のピンであってもよいし、テントやロープ等の設置用に用いられるペグ等の棒状であってもよい。
アダプタには、
図8,
図13に例示したように、形態が異なる複数の留め具に対応する係止部を設ければよい。
アダプタは、上記各例のようにシャフトとスリーブとを含むものに限らない。例えば、アダプタは、保持部材及びコイルバネをなくして、シャフトの先端に留め具の係止部を設けたものとしてもよい。
【0037】
電動ハンマの構成も上記実施例に限らない。例えば、電動ハンマは、第1、第2コイルバネによる防振機構がないものであってもよい。電動ハンマは、バッテリパックを使用しないAC機であってもよい。
本開示の打撃工具は、アダプタを装着可能であれば、電動ハンマに限らない。打撃工具は、ハンマモードで使用できるハンマドリルも含まれる。打撃工具は、電動でなくエア駆動であってもよい。
1・・留め具打設用アダプタ、2・・シャフト、3・・スリーブ、4・・コイルバネ、5・・下軸部、6・・中軸部、7・・上軸部、10・・ストッパ部、15・・小径孔、16・・大径孔、20・・テーパ孔部、21・・内スリーブ、24・・段部、25・・係止溝、30・・アタッチメント、31・・挿入孔、32・・貫通孔、33・・ナット、34・・六角穴付きボルト、35・・連通溝、36,43・・閉塞部、40・・係止盤、41・・第1係止溝、42・・第2係止溝、44・・上側孔部、45・・下側孔部、46・・フック、50・・電動ハンマ、51・・本体ハウジング、52・・モータハウジング、53・・打撃機構、54・・モータ、55・・出力軸、56・・外側ハウジング、57・・ハンドルハウジング、58・・ハンドル部、62・・スイッチ、63・・スイッチレバー、68・・コントローラ、70・・ツールホルダ、79・・ストライカ、80・・インパクトボルト、82・・操作スリーブ、100,100A,100B・・ピン、101,103,104・・頭部、102・・脚部、L・・シャフトの軸線、S・・防草シート、G・・地面。