(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169765
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】波力回収装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/18 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
F03B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081079
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】594178594
【氏名又は名称】株式会社ダ・ビンチ
(71)【出願人】
【識別番号】592192170
【氏名又は名称】東 謙治
(72)【発明者】
【氏名】東 謙治
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA04
3H074BB10
3H074CC10
3H074CC34
3H074CC35
(57)【要約】
【課題】解決しようとする課題は、波の穏やかな海域では発電に利用するのに十分な圧力や力が得られない点である。
【解決手段】本発明は、波の運動エネルギーを増幅して圧縮ポンプに伝達する増幅機構と、打ち寄せる波と戻る波の両方の運動エネルギーを回収する構成としたことを主要な特徴とする。
本発明では護岸壁に打ち寄せる波の運動エネルギーを効率よく回収して、圧縮空気を製造するために、護岸壁外向きに開口部を設けた波力回収装置であって、打ち寄せる波と戻る波の両方の運動エネルギーを回収する波受け部と、受け止めた波の運動エネルギーを増幅する増幅部、運動エネルギーを圧力に変換する圧縮ポンプ部、蓄圧タンク部を設けた構成とした。そして、蓄圧タンク部は陸上に設置できるので、蓄圧タンクに蓄えた圧縮空気による発電装置も同様に陸上に設置できる。それにより、波力による発電の設備コストを著しく引き下げることが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波力及び潮力の運動エネルギーを受け入れるための開口部(1)と、開口部(1)内に設置した力点となる波受け部(2)を有し、力点となる波受け部(2)と連動する支点となる回転軸(5)と、作用点となるポンプ加圧部(6)とで構成された増幅部(3)とポンプ加圧部(6)と間接的、もしくは直接的に接する2個の圧縮ポンプ部(4)と圧縮された空気を蓄圧する蓄圧タンク部(5)とで構成された事を特徴とする波力回収装置。
【請求項2】
前記の波受け部(2)の比重を海水よりも軽くしてフロートとして機能する構成としたフロート機能波受け部(2)と、それに連動する増幅部(3)にスライド部(9)を配置して、伸縮自在の構造としたことを特徴とする請求項1に記載の波力回収装置。
【請求項3】
前記の圧縮ポンプ部(4)が蛇腹構造のふいご型であることを特徴とする請求項1記載の波力回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波の運動エネルギーを圧力に変換する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より潮力や波力を利用して圧縮空気を製造し、その圧縮空気の圧力でタービン類を回転させて発電する研究がおこなわれてきた。 しかし、それらの多くは波の形状変化により空気室内に発生する圧力を利用したものであり、波が持つ運動エネルギーを十分に回収できていなかった。
【0003】
そして、波力により効率的に発電するためには波高が高い外洋での発電が求められた。 また、陸地から離れた場所での発電には海底ケーブルの埋設等が必要となり、送電設備や発電設備などの設備費の増大や流失などのリスクもあり投資回収が困難なであった。
【0004】
また、潮力による発電では、波の運動エネルギーを回転動力に変換して発電する形態の装置が多く開発されている。それら機器が潮力を有効に得るためには流速の早い水路等に設置する必要があり、設置場所が限定される問題があった。
【0005】
最近では護岸壁またはその近傍に設置可能な装置も開発されている。例として、波の運動エネルギーを受け止めて、その力により変形する弾性体と、変形により弾性体に充填した油等の作動媒体に圧力が生じて発電に利用する構成などがある。 しかし、湾岸部などの波の穏やかな海域では十分な波の運動エネルギーを得ることができないため、外洋に面した比較的に波高の高い海域に設置せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、波の穏やかな海域では発電に利用するのに十分な圧力や力が得られない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、波の運動エネルギーを増幅して圧縮ポンプに伝達する増幅機構と、打ち寄せる波と戻る波の両方の運動エネルギーを回収する構成としたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では護岸壁に打ち寄せる波の運動エネルギーを効率よく回収して、圧縮空気を製造するために、護岸壁外向きに開口部を設けた波力回収装置であって、打ち寄せる波と戻る波の両方の運動エネルギーを回収する波受け部と、受け止めた波の運動エネルギーを増幅する増幅部、運動エネルギーを圧力に変換する圧縮ポンプ部、蓄圧タンク部を設けた構成とした。そして、蓄圧タンク部は陸上に設置できるので、蓄圧タンクに蓄えた圧縮空気による発電装置も同様に陸上に設置できる。それにより、波力による発電の設備コストを著しく引き下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は波力回収装置の正面を示した説明図である。(実施例1、2)
【
図2】
図2は波力回収装置の右側面を示した説明図である。(実施例1、2)
【
図3】
図3は波力回収装置の斜視を示した説明図である。(実施例1、2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
波の穏やかな護岸壁に本発明の波力回収装置を設置しても、その波の運動エネルギーを増幅して圧縮ポンプ部に伝達することで、圧縮空気を作り蓄圧することで波力回収とそのエネルギーの保存が可能となった。そして蓄圧された空気の圧力でタービン類を稼働させて発電を行うことができる。
【実施例0013】
図1は、本発明装置の実施例の正面図、
図2は右側面図、
図3は斜視図である。 本発明装置は護岸壁に設置して、開口部(1)より波の流入と護岸壁に反射して流出する双方の波の運動エネルギーを利用するものである。
【0014】
開口部(1)より流入もしくは流出する波を波受け部(力点)(2)で受け止めて、回転軸(支点)(5)が支点となり増幅した力をポンプ加圧部(6)(作用点)に伝達する増幅部と、増幅した力を受け止めて圧縮ポンプ部(4)で運動エネルギーを圧力に変換して排気部(7)より圧縮空気を蓄圧タンク(図示せず)に送る圧縮部とで構成されている。
【0015】
波の方向が反転する毎に、交互に圧縮ポンプ部(4)の吸気部(8)より吸気し、排気部(7)より圧縮空気を蓄圧タンクに送る工程を反復する。図示していないが排気部(7)及び吸気部(8)には各々逆止弁が配置されている。
【0016】
波の穏やかな地域では、波のエネルギーを利用することが困難であったが、てこの原理を利用した増幅部の力点と支点と作用点との距離の比率を変えることで、小さな力を大きな力に増幅する。 その比率は設置する護岸壁の状況により任意に設定できる。
【0017】
本発明装置では開口部(1)より流入する波のエネルギーと護岸壁で反射して開口部(1)より流出する両方の波のエネルギーを利用できるばかりか、てこの原理を用いた増幅部の力を圧縮ポンプ部(4)に伝えることで、弱い波の力を増幅して圧力に変換できる効果がある。
本実施例2では増幅部(3)に挿入したスライド部(9)を備えて伸縮自在とした。 また、波受け部(2)の比重を海水よりも軽く構成してフロートとした。 フロートは別体として波受け部に設置してもよい。
そのことにより、潮位に応じてフロート部の浮力により、スライド部が伸縮して、波受け部(2)を波受けに適正な位置に維持することが可能となった。 よって、常に最適な状態で装置が稼働できる。
更に、スライド部(9)にワイヤー等を接続して、潮位センサー等で検出した波高さが台風等で異様に高まったときには、波受け部(2)の破損を防ぐためウインチ等で巻き上げ可能な構造としても良い。