(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169771
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】半導体加工用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231122BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231122BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20231122BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20231122BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09J7/38
C09J7/22
C09J133/14
C09J175/04
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081090
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【弁理士】
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】河野 広希
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F057
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD06
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4J004DB02
4J004FA08
4J040DF061
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4J040MB05
4J040MB09
4J040NA20
5F057AA31
5F057AA39
5F057BA11
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5F057EC18
5F057EC19
5F057FA28
5F057FA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】200℃以上加熱工程を含む半導体製造工程に用いられた場合であっても、半導体ウエハおよび半導体加工用粘着テープの反り及び粘着剤層のボイドの発生を抑制し得る、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供する。
【解決手段】半導体加工用粘着テープ100は、粘着剤層20と、緩和層30と、基材10と、をこの順に備える。緩和層のアウトガス量は4000μg/g以下であり、かつ、応力緩和率が70%以上である。また、基材の熱収縮率は3.0%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、緩和層と、基材と、をこの順に備え、
該緩和層のアウトガス量が4000μg/g以下であり、かつ、応力緩和率が70%以上であり、
該基材の熱収縮率が3.0%以下である、半導体加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記緩和層を形成する組成物がベースポリマーを含み、該ベースポリマーがアクリル酸の含有割合が5モル%以下であるモノマー組成物を重合して得られるポリマーである、請求項1に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記緩和層を形成する組成物が前記ベースポリマーに、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を付加重合させて得られるポリマーを含む、請求項2に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の付加量が5モル%以下である、請求項3に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項5】
前記緩和層を形成する組成物がベースポリマーを含み、該ベースポリマーがアクリル酸ブチルの含有割合が50モル%以上であるモノマー組成物を重合して得られるポリマーである、請求項1に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層が紫外線硬化型粘着剤により形成される層である、請求項1に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項7】
前記緩和層の引張弾性率が0.1MPa以上である、請求項1に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項8】
バックグラインド工程に用いられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項9】
真空、かつ、200℃以上の加熱工程を含む半導体製造工程に用いられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体は、電力変換およびモーター制御等の目的で広く用いられている。パワー半導体は大型であり、デバイスの特性を向上させるために厚みが100μm以下となるまで裏面を研削する場合がある。パワー半導体は、例えば、ウエハにバックグラインドテープを貼付して研削し、その後スパッタリングまたは蒸着により金属層を形成して電極を設けるバックメタル工程を行い作製される(特許文献1)。バックメタル工程は、高真空、かつ、200℃以上の高温領域で行われるため、薄く研削された半導体ウエハでは反りが発生し、ウエハの割れが生じる場合がある。また、バックグラインドテープにはバックラインド工程後に軽剥離となるよう紫外線硬化型粘着剤が用いられる。紫外線硬化型粘着剤は真空、かつ、高温環境では、粘着剤層にボイドが発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐熱性に優れた、半導体加工用粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の半導体加工用粘着テープは、粘着剤層と、緩和層と、基材と、をこの順に備える。この緩和層のアウトガス量は4000μg/g以下であり、かつ、応力緩和率は70%以上である。この基材の熱収縮率は3.0%以下である。
2.上記1.に記載の半導体加工用粘着テープにおいて、上記緩和層を形成する組成物はベースポリマーを含み、このベースポリマーはアクリル酸の含有割合が5モル%以下であるモノマー組成物を重合して得られるポリマーであってもよい。
3.上記2.の半導体加工用粘着テープにおいて、上記緩和層を形成する組成物は上記ベースポリマーに、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を付加重合させて得られるポリマーを含んでいてもよい。
4.上記3.の半導体加工用粘着テープにおいて、上記重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の付加量は5モル%以下であってもよい。
5.上記1.から4.のいずれかに記載の半導体加工用粘着テープにおいて、上記緩和層を形成する組成物はベースポリマーを含み、このベースポリマーはアクリル酸ブチルの含有割合が50モル%以上であるモノマー組成物を重合して得られるポリマーであってもよい。
6.上記1.から5.のいずれかに記載の半導体加工用粘着テープにおいて、上記粘着剤層は紫外線硬化型粘着剤により形成される層であってもよい。
7.上記1.から6.のいずれかに記載の半導体加工用粘着テープにおいて、上記緩和層の引張弾性率は0.1MPa以上であってもよい。
8.上記1.から7.のいずれかに記載の半導体加工用粘着テープにおいて、上記半導体加工用粘着テープは、バックグラインド工程に用いられてもよい。
9.上記1.から8.のいずれかに記載の半導体加工用粘着テープにおいて、上記半導体加工用粘着テープは、真空、かつ、200℃以上の加熱工程を含む半導体製造工程に用いられてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。本発明の実施形態の半導体加工用粘着テープは、真空、かつ、高温(例えば、200℃以上)加熱工程を含む半導体製造工程に用いられた場合であっても、半導体ウエハおよび半導体加工用粘着テープの反り、および、粘着剤層のボイドの発生を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による半導体加工用粘着テープの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.半導体加工用粘着テープの全体構成
図1は、本発明の実施形態による半導体加工用粘着テープの概略断面図である。半導体加工用粘着テープ100は、基材10と、緩和層30と、粘着剤層20と、をこの順に備える。基材10は熱収縮率が3.0%以下である。緩和層30は、アウトガス量が4000μg/g以下であり、かつ、応力緩和率が70%以上である。このような基材10および緩和層30を備えれば、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。このような基材および緩和層を有する半導体加工用粘着テープは、薄型に研削した半導体ウエハに貼り付けられたまま高温(例えば200℃以上)環境に置かれた場合であっても反りの発生が抑制され得る。また、粘着剤層を形成する粘着剤組成物として紫外線硬化型粘着剤を用いた場合であってもボイドの発生が抑制され得る。したがって、例えば、半導体ウエハに貼付してバックグラインド工程を行った後、他の粘着シートまたは支持体に貼り替えることなく、真空、かつ、高温(例えば、200℃以上)加熱工程(例えば、バックメタル工程)に供することができる。図示例では基材10は単一の層であるが、2層以上の積層体であってもよい。半導体加工用粘着テープは、使用に供するまでの間、粘着剤層を保護する目的で、粘着剤層の外側にセパレーターが設けられていてもよい。
【0009】
緩和層30はアウトガス量が4000μg/g以下であり、好ましくは3800μg/g以下であり、より好ましくは3100μg/g以下であり、さらに好ましくは3000μg/g以下であり、特に好ましくは2800μg/g以下である。アウトガス量が上記範囲であれば、粘着剤層のボイドの発生を抑制することができ、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。アウトガス量は少ないほど好ましく、例えば、1300μg/g以上である。本明細書において、緩和層のアウトガス量は有機成分のアウトガス量と水分のアウトガス量との合計をいう。本明細書において、有機成分のアウトガス量は、以下の方法により測定されたアウトガス量をいう。厚み50μmの緩和層の両側にセパレーターを積層した積層体から5cm2(1cm×5cm)を切り出し、両側のセパレーターを剥離して評価サンプルとし、秤量する。次いで、評価サンプルをバイアル瓶に入れて密栓する。次に、評価サンプルを入れたバイアル瓶を、ヘッドスペースサンプラー(HSS)を用いて加熱し、加熱状態のガス1mLを採取してガスクロマトグラフ(GC)に注入し、トータルのアウトガス量(μg/g)を測定する。本明細書において、水分のアウトガス量は、厚み50μmの緩和層の両側にセパレーターを積層した積層体から10cm2(1cm×5cmの試料を2枚)切り出し、緩和層の両側からセパレーターを剥離した評価サンプルのカールフィッシャー法により測定した水分量をいう。
【0010】
緩和層30の応力緩和率は70%以上であり、好ましくは71%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは78%以上であり、特に好ましくは80%以上である。緩和層の応力緩和率は、好ましくは95%以下である。応力緩和率が上記範囲であれば、高温環境に置かれた場合であっても基材の熱収縮を緩和し、反りの発生を抑制し得る。本明細書において、応力緩和率は以下の方法により測定された試験力から下記式により算出した値をいう。1対のポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーター間に、緩和層(厚み20μm)を形成し、乾燥機内で50℃、48時間エージングする。その後、セパレーターで挟持した緩和層を長さ50mm、幅30mmのサイズにカットする。次いで、セパレーターを剥離し、気泡が入らないように丸め、長さ30mm、直径1.13mmの棒状試料を作製する。棒状試料を引張試験機(例えば、ORIENTEC社製、製品名:「RTC-1150A」)を用いて、測定温度22度、チャック間距離10mm、速度10mm/分の条件下で、50%まで引張り、その後引っ張った状態で600秒間固定する。それぞれの試験力(N)から下記式により応力緩和率を算出する。
応力緩和率=((50%引張初期時の試験力)-(600秒後固定後の試験力))/(50%引張初期時の試験力)×100
【0011】
基材10の熱収縮率は3.0%以下であり、好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは1.0%以下である。基材の熱収縮率は小さいほど好ましく、例えば、0.1%以上である。基材の熱収縮率が上記範囲であれば、高温環境に置かれた場合であっても反りの発生を抑制し、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。本明細書において、熱収縮率は以下の方法により算出した値をいう。基材として用いるフィルム(10cm×10cm)を25℃3分間静置し、初期長さを計測する。次いで、フィルムを昇温装置に入れ、20℃/分で25℃から200℃まで昇温し、200℃の温度で10分間保持する。次いで、-20℃/分で25℃まで冷却する。その後、加熱後の長さを測定し、下記式から収縮率を算出する。
収縮率(%)=100-((加熱後長さ)/(初期長さ)×100)
【0012】
本発明の実施形態の半導体加工用粘着テープの厚みは任意の適切な厚みに設定され得る。半導体加工用粘着テープの厚みは、好ましくは70μm~900μmであり、より好ましくは80μm~800μmであり、さらに好ましくは90μm~750μmである。
【0013】
B.基材
上記のとおり、基材の熱収縮率は3.0%以下である。基材の熱収縮率が3.0%以下であれば、反りの発生を抑制し、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。基材の熱収取率の好ましい範囲は上記のとおりである。
【0014】
基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。基材を構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。好ましくはポリエステル系樹脂であり、より好ましくはポリエチレンナフタレートである。これらの樹脂を用いれば、高温環境に置かれた場合であっても反りの発生を抑制し得る基材を形成することができる。また、これらの樹脂は紫外線を透過するため、紫外線硬化型粘着剤を用いて粘着剤層を形成し、軽剥離性を有する半導体加工用粘着テープを提供することができる。
【0015】
基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて任意の適切な量で用いることができる。
【0016】
基材の厚みは、好ましくは30μm~200μmであり、より好ましくは40μm~180μmであり、さらに好ましくは45μm~180μmである。基材の厚みが上記範囲であれば、高温環境に置かれた場合であっても反りの発生を抑制し得る。
【0017】
C.緩和層
上記のとおり、緩和層はアウトガス量が4000μg/g以下であり、かつ、応力緩和率が70%以上である。このような緩和層を有する半導体加工用粘着テープは、高温環境に置かれた場合であっても基材の熱収縮を緩和し、反りの発生を抑制し得る。また、粘着剤層として紫外線硬化型粘着剤を用いた場合であっても、ボイドの発生を抑制し得る。その結果、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。
【0018】
緩和層の引張弾性率は好ましくは0.06MPa以上であり、より好ましくは0.1MPa以上であり、さらに好ましくは0.12MPa以上である。緩和層の引っ張り弾性率は好ましくは1.1MPa以下である。引っ張り弾性率が上記範囲であれば、反りの発生を抑制し得る。本明細書において、引っ張り弾性率は以下の方法により測定した値をいう。1対のポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーター間に、緩和層(厚み20μm)を形成し、乾燥機内で50℃、48時間エージングする。その後、セパレーターで挟持した緩和層を長さ50mm、幅30mmのサイズにカットする。次いで、セパレーターを剥離し、気泡が入らないように丸め、長さ30mm、直径1.13mmの棒状試料を作製する。引張試験機(例えば、ORIENTEC社製、商品名:RTC-1150A)を用いて、測定温度22度、チャック間距離10mm、速度10mm/分の条件下で、棒状試料のS-Sカーブを測定する。S-Sカーブの立ち上がりから初期弾性率を求め、この値を緩和層の引張弾性率とする。
【0019】
緩和層を形成する組成物(以下、緩和層形成組成物ともいう)は任意の適切なベースポリマーを含む。ベースポリマーとしては、好ましくは(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる。(メタ)アクリル系ポリマーを用いれば、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。また、緩和層の貯蔵弾性率および引っ張り弾性率を適切な値に調整し得る。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0020】
C-1.(メタ)アクリル系ポリマー
(メタ)アクリル系ポリマーは任意の適切な(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物を重合して得られるポリマーである。(メタ)アクリル系モノマーとしては任意の適切な(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。代表的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他の単量体成分をさらに用いてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;スクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
モノマー組成物のアクリル酸の含有割合は好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは4モル%以下であり、さらに好ましくは3モル%以下である。モノマー組成物のアクリル酸の含有割合が上記範囲であれば、緩和層のアウトガス量、特に水分に由来するアウトガス量を低減することができる。モノマー組成物のアクリル酸の含有割合は、例えば0モル%、すなわち、モノマー組成物がアクリル酸を含まなくてもよい。
【0023】
モノマー組成物は好ましくはアクリル酸ブチルを含む。アクリル酸ブチルを含むモノマー組成物を用いれば、緩和層のアウトガス量を低減し、耐熱性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。モノマー組成物のアクリル酸ブチルの含有割合は好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは60モル%~99モル%であり、さらに好ましくは70モル%~97モル%である。アクリル酸ブチルの含有割合が上記範囲であれば、緩和層のアウトガス量をより低減させることができる。
【0024】
モノマー組成物は好ましくは水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーをさらに含む。水酸基含有モノマーを含むことにより、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが得られ、この水酸基が任意の適切な置換基の導入点となり得る。また、モノマー組成物の水酸基含有モノマーの含有割合は好ましくは0.1モル%~8モル%であり、より好ましくは1モル%~7.5モル%である。水酸基含有モノマーの含有割合が上記範囲であれば、後述する重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の付加重合を良好に行うことができる。
【0025】
水酸基含有モノマーとしては、任意の適切なモノマーを用いることができる。例えば、2-ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等が挙げられる。好ましくは、2-ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが用いられる。これらのモノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
モノマー組成物のアクリル酸エチルおよびアクリル酸メチルの含有割合は好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは4モル%以下であり、さらに好ましくは3モル%以下である。モノマー組成物のアクリル酸エチルおよびアクリル酸メチルの含有割合が上記範囲であれば、緩和層のアウトガス量、特に水分に由来するアウトガス量を低減することができる。モノマー組成物のアクリル酸エチルおよびアクリル酸メチルの含有割合は、例えば、1モル%以上であり、モノマー組成物のアクリル酸エチルおよびアクリル酸メチルの含有割合が0モル%、すなわち、モノマー組成物がアクリル酸エチルおよびアクリル酸メチルを含まなくてもよい。
【0027】
1つの実施形態において、モノマー組成物はアクリル酸ブチルと、水酸基含有モノマーと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーと、を、これらのモノマー成分の合計が100モル%となるよう含むことが好ましい。これらのモノマー成分を組み合わせて用いればよりアウトガス量を低減することができ、反りの発生を抑制することが可能な半導体加工用粘着テープを提供することができる。
【0028】
1つの実施形態において、緩和層形成組成物(結果として形成される緩和層)は上記ベースポリマーに重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を付加重合させて得られるポリマー(以下、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマーともいう)を含む。緩和層が重合性炭素二重結合を有するポリマーを含む場合、反りの発生をより抑制することができる。重合性炭素-炭素二重結合はベースポリマーの側鎖に付加重合されていてもよく、末端に付加重合されていてもよく、側鎖および末端に付加重合されていてもよい。
【0029】
側鎖または末端に重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、任意の適切な方法により得ることができる。例えば、上記ベースポリマーと、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを付加反応させることにより得られ得る。具体的には、任意の適切な官能基を有するモノマー由来の構成単位を有するベースポリマーを任意の適切な溶媒中で重合し、その後、該ベースポリマーの官能基と、該官能基と反応し得る重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させることにより、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマーを得ることができる。反応させる重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の量は、ベースポリマーの官能基のモル数に対し等モル以下となるよう用いられる。重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の量がベースポリマーの官能基のモル数を超える場合、有機成分由来のアウトガス量が増加する恐れがある。溶媒としては任意の適切な溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル、メチルチルケトン、トルエン等の各種有機溶剤が挙げられる。
【0030】
上記のようにしてベースポリマーと重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させる場合、ベースポリマーおよび重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物はそれぞれ、互いに反応可能な官能基を有することが好ましい。官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基/エポキシ基、カルボキシル基/アジリジン基、ヒドロキシル基/イソシアネート基等が挙げられる。これらの官能基の組み合わせの中でも、反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせが好ましい。
【0031】
上記重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、例えば、2-イソシアネートエチルメタクリレート、メタクリロイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
ベースポリマーの重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の付加量は好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは4モル%以下であり、さらに好ましくは3モル%以下である。付加量が5モル%を超えるとアウトガス量、特に有機成分に由来するアウトガス量が増加し、ボイドの発生を十分に抑制できない場合がある。
【0033】
C-2.架橋剤
緩和層形成組成物は好ましくは架橋剤をさらに含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の含有割合は、緩和層形成組成物に含まれるベースポリマー(重合性炭素-炭素二重結合を有する場合には、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマー)100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.02重量部~5重量部であり、さらに好ましくは0.025重量部~0.5重量部である。架橋剤の含有量が上記範囲であれば、反りの発生を抑制し得る。架橋剤の含有量が0.01重量部未満である場合、組成物がゾル状となり、緩和層を形成できないおそれがある。架橋剤の含有量が10重量部を超える場合、半導体ウエハ表面の凹凸への追従性が低下し得る。
【0034】
1つの実施形態においては、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。イソシアネート系架橋剤は、多種の官能基と反応し得る点で好ましい。特に好ましくは、イソシアネート基を3個以上有する架橋剤が用いられる。
【0035】
C-3.添加剤
緩和層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、溶剤等が挙げられる。
【0036】
1つの実施形態において、緩和層は紫外線硬化型の組成物で形成されていてもよい。緩和層形成組成物が紫外線硬化型の組成物である場合、この組成物は光重合開始剤をさらに含む。光重合開始剤としては任意の適切な開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、エチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフォナート、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1等のα―ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。好ましくは、アセトフェノン系化合物を用いることができる。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
光重合開始剤は任意の適切な量で用いられ得る。光重合開始剤の含有量は、上記ベースポリマー(重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物が付加されている場合には、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマー)100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。光重合開始剤の含有量が0.5重量部未満である場合、紫外線照射時に十分に硬化しないおそれがある。光重合開始剤の含有量が10重量部を超える場合、緩和層形成組成物の保存安定性が低下するおそれがある。
【0038】
緩和層の厚みは任意の適切な値に設定され得る。例えば、20μm~500μmであり、好ましくは30μm~400μmであり、より好ましくは40μm~300μmである。緩和層の厚みが上記範囲であれば、基材の熱収縮を緩和し、反りの発生が抑制された半導体加工用粘着テープを提供することができる。また、半導体ウエハ表面の凹凸埋め込み性に優れた半導体加工用粘着テープを提供することができる。
【0039】
D.粘着剤層
粘着剤層は任意の適切な粘着剤組成物を用いて形成される。1つの実施形態において、粘着剤層組成物(結果として形成される粘着剤層)は紫外線硬化型粘着剤を含む。紫外線硬化型粘着剤を含む場合、紫外線照射前は被着体に対する優れた粘着力を、紫外線照射後には優れた剥離性を有する粘着テープを提供することができる。また、上記の基材、および、緩和層を備えるため、真空、かつ、高温加熱工程に供された場合であっても、ボイドの発生を抑制し得る。
【0040】
D-1.紫外線硬化型粘着剤
紫外線硬化型粘着剤としては、任意の適切な粘着剤を用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等の任意の適切な粘着剤に紫外線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーを添加した粘着剤であってもよく、ベースポリマーとして重合性炭素-炭素二重結合を側鎖または末端に有するポリマーを用いた粘着剤であってもよい。
【0041】
重合性炭素-炭素二重結合を側鎖または末端に有するポリマーを用いた粘着剤を用いる場合、ベースポリマーとしては側鎖または末端に重合性炭素-炭素二重結合を有し、かつ、粘着性を有するポリマーが用いられる。このようなポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン-ジエンブロック共重合体等の樹脂に重合性炭素-炭素二重結合を導入したポリマーが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂に重合性炭素-炭素二重結合が導入された(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる。(メタ)アクリル系ポリマーを用いる場合、粘着剤層の貯蔵弾性率および引っ張り弾性率の調整がしやすく、また、粘着力と剥離性とのバランスに優れた粘着テープを得ることができる。さらに、粘着剤由来の成分による被着体の汚染が低減され得る。
【0042】
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を用いることができる。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルを1種または2種以上含むモノマー組成物を重合して得られる重合体が挙げられる。
【0043】
直鎖または分岐のアルキル基は、好ましくは炭素数が30個以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1個~20個のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数4個~18個のアルキル基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル系樹脂を形成するモノマー組成物は、任意の適切な他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;等の官能基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーを含む場合、重合性炭素-炭素二重結合が導入されやすい(メタ)アクリル系樹脂を得ることができる。官能基含有モノマーの含有割合は、モノマー組成物の全モノマー100重量部に対して、好ましくは4重量部~30重量部であり、より好ましくは6重量部~20重量部である。
【0045】
他のモノマーとして、多官能モノマーを用いてもよい。多官能モノマーを用いる場合、粘着剤の凝集力、耐熱性、接着性等を高めることができる。また、粘着剤層中の低分子量成分が少なくなるため、被着体を汚染し難い粘着テープを得ることができる。多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能モノマーの含有割合は、上記モノマー組成物の全モノマー100重量部に対して、好ましくは1重量部~100重量部であり、より好ましくは5重量部~50重量部である。
【0046】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30万以上であり、より好ましくは50万以上であり、さらに好ましくは80万~300万である。このような範囲であれば、低分子量成分のブリードを防止し、低汚染性の粘着テープを得ることができる。(メタ)アクリル系樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは1~20であり、より好ましくは3~10である。分子量分布の狭い(メタ)アクリル系樹脂を用いれば、低分子量成分のブリードを防止し、低汚染性の粘着テープを得ることができる。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めることができる。
【0047】
側鎖または末端に重合性炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、任意の適切な方法により得ることができる。例えば、任意の適切な重合方法により得られた樹脂と、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応(例えば、縮合反応、付加反応)させることにより得られ得る。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂を用いる場合、任意の適切な官能基を有するモノマー由来の構成単位を有する(メタ)アクリル系樹脂(共重合体)を任意の適切な溶媒中で重合し、その後、該アクリル系樹脂の官能基と、該官能基と反応し得る重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させることにより、上記樹脂を得ることができる。反応させる重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の量は、上記樹脂100重量部に対して、好ましくは4重量部~30重量部であり、より好ましくは4重量部~20重量部である。溶媒としては任意の適切な溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル、メチルチルケトン、トルエン等の各種有機溶剤が挙げられる。
【0048】
上記のようにして樹脂と重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させる場合、樹脂および重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物はそれぞれ、互いに反応可能な官能基を有することが好ましい。官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基/エポキシ基、カルボキシル基/アジリジン基、ヒドロキシル基/イソシアネート基等が挙げられる。これらの官能基の組み合わせの中でも、反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせが好ましい。
【0049】
上記重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、例えば、2-イソシアネートエチルメタクリレート、メタクリロイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
紫外線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーを添加した粘着剤を用いる場合、紫外線硬化性モノマーおよびオリゴマーとしては、任意の適切なモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。紫外線硬化性モノマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。紫外線硬化性のオリゴマーとしては、ウレタン系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、ポリカーボネート系オリゴマー、ポリブタジエン系オリゴマー等が挙げられる。オリゴマーとしては、好ましくは分子量が100~30000程度のものが用いられる。モノマーおよびオリゴマーは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
モノマーおよび/またはオリゴマーは、用いる粘着剤の種類に応じて、任意の適切な量で用いられ得る。例えば、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~500重量部、より好ましくは40重量部~150重量部用いられる。
【0052】
D-2.光重合開始剤
光重合開始剤としては、任意の適切な開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、エチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフォナート、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1等のα―ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。好ましくは、アセトフェノン系化合物を用いることができる。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
光重合開始剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、IGM Resins社製の商品名:Omnirad 127、Omnirad 369およびOmnirad 651が挙げられる。
【0054】
光重合開始剤は任意の適切な量で用いられ得る。光重合開始剤の含有量は、上記紫外線硬化型粘着剤100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。光重合開始剤の含有量が0.5重量部未満である場合、紫外線照射時に十分に硬化しないおそれがある。光重合開始剤の含有量が10重量部を超える場合、粘着剤の保存安定性が低下するおそれがある。
【0055】
D-3.添加剤
上記粘着剤層形成組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、溶剤等が挙げられる。
【0056】
粘着剤層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは2μm~500μmであり、より好ましくは3μm~300μmであり、さらに好ましくは5μm~250μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲であれば、被着体に対し十分な粘着力を発揮し得る。
【0057】
E.半導体加工用粘着テープの製造方法
本発明の実施形態の半導体加工用粘着テープは、任意の適切な方法により製造され得る。例えば、セパレーターに緩和層形成組成物、または、粘着剤溶液(紫外線硬化型粘着剤)をそれぞれ塗布し、乾燥させて、セパレーター上に緩和層、または、粘着剤層を形成した後、それらを基材に順次貼り合せる方法により得られ得る。また、基材上に、緩和層形成組成物、および、粘着剤層形成組成物をそれぞれ塗布し、乾燥させて、半導体加工用粘着テープを得てもよい。粘着剤層形成組成物の塗布方法としては、バーコーター塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、リバースロール塗布、リップ塗布、ダイ塗布、ディップ塗布、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。乾燥方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
【0058】
F.半導体加工用粘着テープの用途
本発明の実施形態の半導体加工用粘着テープは半導体製造プロセスに好適に用いることができる。好ましくはバックグラインドテープとして用いられる。上記のとおり、本発明の実施形態の半導体加工用粘着テープは耐熱性に優れるため、バックグラインド工程後に加熱工程を含む半導体製造プロセスに用いられる場合、他の粘着シートまたは支持体に貼り替えることなく、加熱工程に用いることができる。
【0059】
上記のとおり、本発明の実施形態の半導体加工用粘着テープは耐熱性に優れる。そのため、半導体ウエハに貼り付けてバックグラインド工程を行い、次いで真空、かつ、200℃以上の高温に加熱される工程(例えば、バックメタル工程)に供された場合であっても、反りの発生を抑制し、半導体ウエハのワレの発生を抑制し得る。また、粘着剤層を紫外線硬化型粘着剤を用いて形成した場合であっても、ボイドの発生を抑制し得る。したがって、バックグラインド工程の後、真空、かつ、200℃以上の高温に加熱される工程に供する前に、耐熱性を有する他の粘着テープ、または、他の支持体に貼り替えることなく、真空、かつ、200℃以上の高温に加熱される工程に供することができる。そのため、パワー半導体等の半導体ウエハの製造を効率よく行うことができる。なお、本明細書において、真空とは圧力が大気圧未満であることをいう。
【実施例0060】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0061】
[合成例1]Polymer1の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer1を合成した。
具体的には、アクリル酸-2-エチルヘキシル(2EHA)30重量部と、メタクリル酸メチル(MA)70重量部と、アクリル酸(AA)10重量部と、重合開始剤(過酸化ベンゾイル(BPO))0.2重量部と、溶媒(トルエン)と、を混合してモノマー組成物を調製した。このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂(Polymer1)溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。
【0062】
【0063】
[合成例2]Polymer2の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer2を合成した。
具体的には、アクリル酸ブチル(BA)50重量部と、アクリル酸エチル(EA)50重量部と、アクリル酸(AA)5重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1重量部と、重合開始剤(過酸化ベンゾイル(BPO))0.1重量部と、溶媒(トルエン)と、を混合してモノマー組成物を調製した。このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂(Polymer2)溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。
【0064】
[合成例3]Polymer3の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer3を合成した。
具体的には、アクリル酸ブチル(BA)100重量部と、アクリル酸(AA)3重量部と、重合開始剤(2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN))0.2重量部と、溶媒(酢酸エチル)と、を混合してモノマー組成物を調製した。このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂(Polymer3)溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。
【0065】
[合成例4]Polymer4の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer4を合成した。
具体的には、アクリル酸ブチル(BA)100重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)7重量部と、重合開始剤(2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN))0.3重量部と、溶媒(酢酸チエル)と、を混合してモノマー組成物を調製した。このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂(Polymer4)溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。
【0066】
[合成例5]Polymer5の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer5を合成した。
具体的には、アクリル酸ブチル(BA)100重量部と、メタクリル酸ブチル(BMA)37重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)6重量部と、重合開始剤(2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN))0.3重量部と、溶媒(酢酸チエル)と、を混合してモノマー組成物を調製した。
このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂(Polymer5)溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。
【0067】
[合成例6]Polymer6の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer6を合成した。
具体的には、アクリル酸ブチル(BA)100重量部と、メタクリル酸ブチル(BMA)37重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)6重量部と、重合開始剤(2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN))0.3重量部と、溶媒(酢酸チエル)と、を混合してモノマー組成物を調製した。このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。次いで、冷却した樹脂溶液に、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物として、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)2重量部を加えた。さらに、ジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)0.1重量部を添加し、空気雰囲気下、50℃で24時間攪拌し、樹脂(Polymer6)溶液を得た。
【0068】
[合成例7]Polymer7の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer7を合成した。
具体的には、アクリル酸ブチル(BA)100重量部と、メタクリル酸ブチル(BMA)37重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)6重量部と、重合開始剤(2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN))0.3重量部と、溶媒(酢酸チエル)と、を混合してモノマー組成物を調製した。このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。次いで、冷却した樹脂溶液に、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物として、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)5重量部を加えた。さらに、ジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)0.1重量部を添加し、空気雰囲気下、50℃で24時間攪拌し、樹脂(Polymer7)溶液を得た。
【0069】
[合成例8]Polymer8の合成
表1に記載のモノマー成分を用いてPolymer8を合成した。
具体的には、アクリル酸ブチル(BA)100重量部と、メタクリル酸ブチル(BMA)37重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)6重量部と、重合開始剤(2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN))0.3重量部と、溶媒(酢酸チエル)とを混合してモノマー組成物を調製した。このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。次いで、冷却した樹脂溶液に、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物として、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)8重量部を加えた。さらに、ジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)0.1重量部を添加し、空気雰囲気下、50℃で24時間攪拌し、樹脂(Polymer8)溶液を得た。
【0070】
[製造例1~10]緩和層形成組成物の調製
ポリマー(樹脂溶液)と、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)と、を表3に記載の部数で混合し、緩和層形成組成物を得た。
【0071】
[製造例11]粘着剤組成物の調製
アクリル酸ブチル(BA)100重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)7重量部と、重合開始剤(2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN))0.3重量部と、溶媒(酢酸チエル)とを混合してモノマー組成物を調製した。
このモノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で2時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、60℃下で8時間保持して重合し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は室温まで冷却した。
次いで、冷却した樹脂溶液に、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物として、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)5重量部を加えた。さらに、ジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)0.1重量部を添加し、空気雰囲気下、50℃で24時間攪拌し、重合性炭素二重結合を有する樹脂を含む樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液の樹脂100重量部に対して、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)0.50重量部と、光重合開始剤(チバジャパン社製、商品名「イルガキュア369」)1重量とを添加、混合し、粘着剤組成物を得た。
【0072】
[実施例1]
一方の面にコロナ処理を施した厚み50μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人フィルムソリューション社製、商品名「テオネックス(登録商標)フィルムQ51」)のコロナ処理面に、緩和層形成組成物1を塗布し、120℃で3分間、乾燥機で乾燥させ、厚み50μmの緩和層を形成した。
別途、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーター(三菱ケミカル社製、商品名「ダイヤホイルMRF38」)の離型処理面側に製造例11で得られた粘着剤層形成組成物を塗布し、120℃で3分間、乾燥機で乾燥させ、厚み6μmの粘着剤層を形成した。
次いで、緩和層と粘着剤層とを気泡が入らぬようにハンドローラーで貼り合せた。次いで、遮光した状態で、50℃に設定した乾燥機内で48時間放置後、乾燥機から取り出し、粘着テープを得た。
【0073】
[実施例2~8]
緩和層形成組成物を表3に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
【0074】
(比較例1)
緩和層形成組成物を表3に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
【0075】
(比較例2)
ポリエチレンナフタレートフィルムに変えてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製、商品名「ルミラー♯50 ES-10」)を用いたこと、および、緩和層形成組成物を表3に記載のものとしたこと以外は粘着テープを得た。
【0076】
(比較例3)
緩和層形成組成物を表3に記載のものとしたこと以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
【0077】
<評価>
実施例および比較例で得られた粘着テープ、基材、および、緩和層形成組成物を用いて下記評価を行った。結果を表3に示す。
1.加熱収縮率
実施例および比較例で基材として用いたフィルム(10cm×10cm)を25℃3分間静置し、初期サンプル長さを計測した。次いで、フィルムを昇温装置に入れ、20℃/分で25℃から200℃まで昇温し、200℃の温度で10分間保持した。次いで、-20℃/分で25℃まで冷却した。その後加熱後の長さを測定し、下記式から収縮率を算出した。
収縮率(%)=100-((加熱後長さ)/(初期長さ)×100)
【0078】
2.アウトガス(有機成分)
PETセパレーター(三菱ケミカル社製、商品名「ダイヤホイルMRF38」)の離型処理面に実施例および比較例で用いた緩和層形成組成物を塗布し、PETセパレーター上で120℃3分間、乾燥機で乾燥させ、厚み50μmの緩和層を形成した。次いで、緩和層のPETセパレーターと接していない面に、別のPETセパレーター(三菱ケミカル社製、商品名「ダイヤホイルMRF38」)の離型処理面側を、気泡を噛ませず貼り合わし、50℃に設定された乾燥機内で48時間放置し、積層体を得た。
積層体から5cm2(1cm×5cm)を切り出し、両側のセパレーターを剥離して評価サンプルとし、評価サンプルの秤量を行った。次いで、評価サンプルをバイアル瓶に入れて密栓した。次に、評価サンプルを入れたバイアル瓶を、ヘッドスペースサンプラー(HSS)を用いて下記の条件で加熱を行った。加熱状態のガス1mLを採取し、ガスクロマトグラフ(GC)に注入して測定を行い、トータルのアウトガス量(μg/g)を求めた。
<分析装置>
HSS:島津製作所製、製品名「HS-20」
GC:島津製作所製、製品名「QP2010Ultra」
<条件>
<<HSS>>
オーブン温度:200℃
加熱時間:15分
サンプルループ温度:240℃
トランスファーライン温度:250℃
加圧時間:0.50分
ループ充填時間:0.50分
ループ平衡時間:0.10分
注入時間:0.50分
<<GC>>
カラム:DB-17(0.250mmφ×30m、df=0.5μm)
カラム温度:40℃(3分)→10℃/分→280℃(13分)
カラム圧力:49.7kPa(40℃)
キャリアーガス:He(1.0mL/分(40℃)、定線速度モード)
線速度:36.1cm/秒
注入口温度:250℃
注入方式:スプリット(20:1)
検出器:FID
検出器温度:250℃
【0079】
3.アウトガス(水分)
カールフィッシャー法により緩和層のアウトガス(水分)を測定した。
PETセパレーター(三菱ケミカル社製、商品名「ダイヤホイルMRF38」)の離型処理面に実施例および比較例で用いた緩和層形成組成物を塗布し、PETセパレーター上で120℃3分間、乾燥機で乾燥させ、厚み50μmの緩和層を形成した。次いで、緩和層のPETセパレーターと接していない面に、別のPETセパレーター(三菱ケミカル社製、商品名「ダイヤホイルMRF38」)の離型処理面側を、気泡を噛ませず貼り合わし、50℃に設定された乾燥機内で48時間放置し、積層体を得た。
積層体を10cm2(1cm×5cmの試料を2枚)に切り出し、両面のセパレーターを剥離した後アルミ箔に転写し、秤量した。秤量後の試料を加熱気化装置(三菱ケミカルアナリテック社製、製品名「VA-200型」)に入れ、150℃で発生したガスを電量滴定式水分測定装置(三菱ケミカルアナリテック社製、製品名「CA-200型」)の滴定セル内に導入し、水分量(μg/g)を測定した。
【0080】
4.引張弾性率
1対のポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーター(三菱ケミカル社製、商品名「ダイヤホイルMRF38」)間に、各実施例および比較例で用いた組成物を用いて緩和層(厚み20μm)を形成し、乾燥機内で50℃、48時間エージングした。その後、セパレーターで挟持した緩和層を長さ50mm、幅30mmのサイズにカットした。次いで、セパレーターを剥離し、気泡が入らないように丸め、長さ30mm、直径1.13mmの棒状試料を作製した。
引張試験機(ORIENTEC社製、商品名:RTC-1150A)を用いて、測定温度22度、チャック間距離10mm、速度10mm/分の条件下で、上記棒状試料のS-Sカーブを測定した。S-Sカーブの立ち上がりから初期弾性率を求め、この値を緩和層の引張弾性率とした。測定は3回行い、その平均値を引張弾性率の値として用いた。なお、引張弾性率は紫外線照射前、および、紫外線照射(50mW/cm2、20秒、1000mJ/cm2)後のそれぞれについて測定した。
【0081】
5.応力緩和率
1対のポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーター(三菱ケミカル社製、商品名「ダイヤホイルMRF38」)間に、各実施例および比較例で用いた組成物を用いて緩和層(厚み20μm)を形成し、乾燥機内で50℃、48時間エージングした。その後、セパレーターで挟持した緩和層を長さ50mm、幅30mmのサイズにカットした。次いで、セパレーターを剥離し、気泡が入らないように丸め、長さ30mm、直径1.13mmの棒状試料を作製した。
引張試験機(ORIENTEC社製、製品名:「RTC-1150A)を用いて、測定温度22度、チャック間距離10mm、速度10mm/分の条件下で、棒状試料を50%まで引張り、その後引っ張った状態で600秒間固定した。それぞれの試験力(N)から下記式により応力緩和率を算出した。
応力緩和率=((50%引張初期時の試験力)-(600秒後の試験力))/(50%引張初期時の試験力)×100
【0082】
6.反り量
実施例および比較例で得られた粘着テープを、以下の条件でSiミラーウエハに貼り付けした。
貼付装置:DR 3000III(日東精機製)
貼付設定:8インチ
貼付テープ:実施例・比較例のもの
貼付ウエハ:8インチSiウエハ(未研削)
貼付テーブル:23℃
貼付圧力:0.4MPa
貼付速度:3mm/秒
カッター温度:180℃
カット速度:200mm/秒
カッター刃:アートナイフ替え刃XB10(オルファ製)
次いで、Siミラーウエハの粘着テープが貼り付けられていない面をバックグラインド装置(Disco社製、製品名「DGP8760」)を用いて、表2に記載の条件で、最終仕上げ厚みが100μmとなるよう研削した。
【0083】
【0084】
研削したウエハと粘着テープとの積層体をオーブンに入れ、200℃で15分間加熱し、その後室温まで冷却し、オーブンから取り出した。取り出した試料を平坦な机に粘着テープが上、Siミラーウエハが下となるよう(Siミラーウエハが机と接するよう)机に置き、Siミラーウエハが接地している中心部を0とし、端部の高さを反り量として測定とした。最大の高さとなった部分を各試料の反り量とした。
【0085】
7.ボイド
反り量を測定した試料を目視で観察し、1mm以上のボイドの個数を計測し、以下の基準で評価した。
〇:ボイド0個
△:ボイド1個~50個
×:ボイドが50個を超える
【0086】
8.剥離強度および糊残り
上記反り量を測定した試料の粘着テープ面側から下記条件で紫外線を照射した。次いで、貼付装置(日東精機社製、製品名「DR-9000」、テーブル温度:60℃、剥離速度:3mm/秒)を用いて粘着テープを剥離した。剥離後のSiミラーウエハの粘着テープを貼り付けた面を目視で確認し、糊残りがある場合は×、糊残りがない場合は〇とした。
<紫外線照射条件>
紫外線照射装置:日東精機社製、商品名:UM810
光源:高圧水銀灯
照射強度:50mW/cm2(測定機器:ウシオ社製、製品名「紫外線照度計UT-101」)
照射時間:20秒
積算光量:2000mJ/cm2
【0087】