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特開2023-169780統合三次元データ生成システム、統合三次元データ生成方法、及び配管竣工図作成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169780
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】統合三次元データ生成システム、統合三次元データ生成方法、及び配管竣工図作成システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20231122BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20231122BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20231122BHJP
【FI】
G06T19/00 600
F16L1/00 X
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081104
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貴大
【テーマコード(参考)】
5B050
5L049
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050BA13
5B050CA07
5B050CA08
5B050DA07
5B050DA10
5B050EA05
5B050EA06
5B050EA07
5B050EA13
5B050EA18
5B050EA19
5B050EA28
5B050FA02
5B050FA09
5B050GA08
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】敷設状況が経時的に進行して、覆土等により過去の配管の敷設状態が確認できない現場であっても、それまでに配設・施工した全体の配管を含む統合三次元データを自動的に生成する。
【解決手段】第1敷設状況において生成された三次元データと第2敷設状況において生成された三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する妥当性導出部S6と、複数の敷設状況から選択される異なる2つの敷設状況にて生成された三次元データの組のすべてに関し妥当性導出部S6にて妥当性を導出し、導出された妥当性に基づいて、複数の敷設状況にて生成された三次元データの夫々を、マーカーMを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の敷設状況にて生成された三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する統合三次元データ生成部S2とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の敷設工事が経時的に進行する現場において、進行する前記配管の敷設状況を反映した三次元データを生成する統合三次元データ生成システムであって、
マーカーが一端と他端に付された前記配管を撮影する撮像装置と、
所定の前記敷設状況にある場合において、第1地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第1地点敷設工事現場画像と、前記第1地点とは異なる第2地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第2地点敷設工事現場画像とを少なくとも含む現場画像データから、前記敷設状況にある前記現場の前記三次元データを生成する三次元データ生成部と、
前記敷設状況としての所定の第1敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーと、前記第1敷設状況とは異なる第2敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーとの地表面からの深さの一致度としての深さ一致度を導出する深さ一致度導出部と、
前記第1敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる継手を含む配管端部材料と、前記第2敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる前記配管端部材料の一致度としての配管端部材料一致度を導出する配管端部材料一致度導出部と、
前記深さ一致度導出部にて導出された前記深さ一致度と、前記配管端部材料一致度導出部にて導出された前記配管端部材料一致度とに基づいて、前記第1敷設状況において生成された前記三次元データと前記第2敷設状況において生成された前記三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する妥当性導出部と、
複数の前記敷設状況から選択される異なる2つの前記敷設状況にて生成された前記三次元データの組のすべてに関し前記妥当性導出部にて前記妥当性を導出し、導出された前記妥当性に基づいて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々を、前記マーカーを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する統合三次元データ生成部とを備える統合三次元データ生成システム。
【請求項2】
前記妥当性導出部は、前記深さ一致度導出部にて導出された前記深さ一致度が高いほど、前記繋ぎ合わせの前記妥当性を高くし、
前記統合三次元データ生成部は、前記妥当性導出部にて導出される前記妥当性が高いほど前記統合三次元データを信頼性が高いものとして生成する請求項1に記載の統合三次元データ生成システム。
【請求項3】
前記配管端部材料一致度導出部は、前記配管端部材料一致度の導出対象である一対の前記配管端部材料の前記三次元データ上の重なり度合が高いほど、前記配管端部材料一致度を高くすると共に、
前記妥当性導出部は、前記配管端部材料一致度導出部にて導出された前記配管端部材料一致度が高いほど、前記繋ぎ合わせの前記妥当性を高くし、
前記統合三次元データ生成部は、前記妥当性導出部にて導出される前記妥当性が高いほど前記統合三次元データを信頼性が高いものとして生成する請求項1又は2に記載の統合三次元データ生成システム。
【請求項4】
前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データにおいて、少なくとも2以上の前記配管端部材料が、前記配管の長手方向で同一の位置に重畳して検出された箇所を複雑領域として抽出する複雑領域抽出部を備え、
前記配管端部材料一致度導出部は、前記複雑領域に位置する前記配管端部材料を、前記配管端部材料一致度の導出の対象から除外する請求項1又は2に記載の統合三次元データ生成システム。
【請求項5】
前記撮像装置が、複数の衛星からの信号を受け取り、自身の位置を特定する衛星測位システムの受信機を有するものであり、
前記撮像装置により前記敷設工事の前記現場の画像を取得する際に、前記受信機にて受信した前記マーカーの絶対座標を、前記マーカーの夫々に紐付ける形で記憶する記憶部を備え、
前記妥当性導出部は、前記統合三次元データ生成部にて生成された前記統合三次元データにおいて、重畳された一対の前記マーカー同士の前記絶対座標のズレ量を、重畳された一対の前記マーカー毎に導出して足し合わせたズレ総和量が小さいほど、前記繋ぎ合わせの前記妥当性を高くし、
前記統合三次元データ生成部は、前記妥当性導出部にて導出される前記妥当性が高いほど前記統合三次元データを信頼性が高いものとして生成する請求項1又は2に記載の統合三次元データ生成システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の前記統合三次元データ生成部にて生成された前記統合三次元データから前記配管の配管竣工図を生成する配管竣工図生成部を備える配管竣工図作成システム。
【請求項7】
配管の敷設工事が経時的に進行する現場において、進行する前記配管の敷設状況を反映した三次元データを生成する統合三次元データ生成方法であって、
マーカーが一端と他端に付された前記配管を撮影する撮像装置を用いて、
所定の前記敷設状況にある場合において、第1地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第1地点敷設工事現場画像と、前記第1地点とは異なる第2地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第2地点敷設工事現場画像とを少なくとも含む現場画像データから、前記敷設状況にある前記現場の前記三次元データを生成する三次元データ生成工程と、
前記敷設状況としての所定の第1敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーと、前記第1敷設状況とは異なる第2敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーとの地表面からの深さの一致度としての深さ一致度を導出する深さ一致度導出工程と、
前記第1敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる継手を含む配管端部材料と、前記第2敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる前記配管端部材料の一致度としての配管端部材料一致度を導出する配管端部材料一致度導出工程と、
前記深さ一致度導出工程にて導出された前記深さ一致度と、前記配管端部材料一致度導出工程にて導出された前記配管端部材料一致度とに基づいて、前記第1敷設状況において生成された前記三次元データと前記第2敷設状況において生成された前記三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する妥当性導出工程と、
複数の前記敷設状況から選択される異なる2つの前記敷設状況にて生成された前記三次元データの組のすべてに関し前記妥当性導出工程にて前記妥当性を導出し、導出された前記妥当性に基づいて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々を、前記マーカーを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する統合三次元データ生成工程とを実行する統合三次元データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の敷設工事が経時的に進行する現場において、進行する前記配管の敷設状況を反映した三次元データを生成する統合三次元データ生成システム、統合三次元データ生成方法、及び当該統合三次元データ生成部を用いてそれまでに配設・施工した全体の配管竣工図を作成する配管竣工図作成システムに関する。
【0002】
昨今、ガス配管等の配管竣工図の作成を行う配管竣工図作成システムとして、特許文献1に示されるように、現場に配置された配管に貼付された管情報ラベルの撮影情報に基づいて配管情報を取得する管情報取得装置と、現場の位置情報を取得するGPS受信装置と、配管の継手部の画像を取得する画像取得装置とを介して得られた配管情報、位置情報、及び画像情報を通信手段により取得して記憶する施工管理情報サーバと、施工管理情報サーバから受信した配管情報、位置情報、及び画像情報に基づいて、地図上に竣工図を生成するマッピング処理部を有する情報処理端末と、を備えたものが知られている。
【0003】
当該配管竣工図作成システムでは、現場での作業者が配管情報をメモしたり、測量装置で位置を測量したり、撮影作業を行なうような労力を伴わずに、管情報、位置情報、及び画像情報が施工現場で収集されて施工管理情報サーバにアップロードされるので、場所を問わずに情報処理端末上で竣工図が生成できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-75927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、配管の敷設工事を実行する現場では、配管と配管は継手により接続されることになるが、当該継手は、種々の接続角度を有し、現場の敷設状況に合わせて接続されるため、現場の敷設状況を適切に反映した竣工図を作成するためには、その設置角度等を適切に把握する必要がある。しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、現場の撮影作業を行っておらず、現場における継手の設置角度等の情報が、施工管理情報サーバへ送信されていないため、現場の配管や継手の敷設状況を適切に反映した竣工図を作成できていない虞があった。
【0006】
更に、配管の敷設工事の現場は、敷設状況が経時的に刻一刻と変化することになる。また、現場によっては、過去に敷設工事を行った箇所に覆土等がされるため、例えば、現時点までの配管の敷設状況を反映した竣工図を作成する場合、過去の敷設状況と現時点での敷設状況との双方の情報を、すり合わせしつつ適切に利用して竣工図を作成する必要がある。しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、経時的に変化する複数の敷設状況を用いて竣工図の作成を行うものではないため、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、敷設状況が経時的に進行して、覆土等により過去の配管の敷設状態が確認できない現場であっても、それまでに配設・施工した全体の配管を含む統合三次元データを自動的に生成することができる統合三次元データ生成システム、統合三次元データ生成方法、及び当該統合三次元データを用いてそれまでに配設・施工した全体の配管竣工図を作成する配管竣工図作成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための統合三次元データ生成システムは、
配管の敷設工事が経時的に進行する現場において、進行する前記配管の敷設状況を反映した三次元データを生成する統合三次元データ生成システムであって、その特徴構成は、
マーカーが一端と他端に付された前記配管を撮影する撮像装置と、
所定の前記敷設状況にある場合において、第1地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第1地点敷設工事現場画像と、前記第1地点とは異なる第2地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第2地点敷設工事現場画像とを少なくとも含む現場画像データから、前記敷設状況にある前記現場の前記三次元データを生成する三次元データ生成部と、
前記敷設状況としての所定の第1敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーと、前記第1敷設状況とは異なる第2敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーとの地表面からの深さの一致度としての深さ一致度を導出する深さ一致度導出部と、
前記第1敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる継手を含む配管端部材料と、前記第2敷設状況において前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる前記配管端部材料の一致度としての配管端部材料一致度を導出する配管端部材料一致度導出部と、
前記深さ一致度導出部にて導出された前記深さ一致度と、前記配管端部材料一致度導出部にて導出された前記配管端部材料一致度とに基づいて、前記第1敷設状況において生成された前記三次元データと前記第2敷設状況において生成された前記三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する妥当性導出部と、
複数の前記敷設状況から選択される異なる2つの前記敷設状況にて生成された前記三次元データの組のすべてに関し前記妥当性導出部にて前記妥当性を導出し、導出された前記妥当性に基づいて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々を、前記マーカーを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する統合三次元データ生成部とを備える点にある。
【0009】
上記目的を達成するための統合三次元データ生成方法は、
配管の敷設工事が経時的に進行する現場において、進行する前記配管の敷設状況を反映した三次元データを生成する統合三次元データ生成方法であって、その特徴構成は、
マーカーが一端と他端に付された前記配管を撮影する撮像装置を用いて、
所定の前記敷設状況にある場合において、第1地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第1地点敷設工事現場画像と、前記第1地点とは異なる第2地点から前記撮像装置にて前記マーカーを含む状態で撮影された前記敷設工事の前記現場の画像である第2地点敷設工事現場画像とを少なくとも含む現場画像データから、前記敷設状況にある前記現場の前記三次元データを生成する三次元データ生成工程と、
前記敷設状況としての所定の第1敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーと、前記第1敷設状況とは異なる第2敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーとの地表面からの深さの一致度としての深さ一致度を導出する深さ一致度導出工程と、
前記第1敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる継手を含む配管端部材料と、前記第2敷設状況において前記三次元データ生成工程にて生成された前記三次元データに含まれる前記マーカーの直近に設けられる前記配管端部材料の一致度としての配管端部材料一致度を導出する配管端部材料一致度導出工程と、
前記深さ一致度導出工程にて導出された前記深さ一致度と、前記配管端部材料一致度導出工程にて導出された前記配管端部材料一致度とに基づいて、前記第1敷設状況において生成された前記三次元データと前記第2敷設状況において生成された前記三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する妥当性導出工程と、
複数の前記敷設状況から選択される異なる2つの前記敷設状況にて生成された前記三次元データの組のすべてに関し前記妥当性導出工程にて前記妥当性を導出し、導出された前記妥当性に基づいて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々を、前記マーカーを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の前記敷設状況にて生成された前記三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する統合三次元データ生成工程とを実行する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、まずもって、所定の敷設状況にある時点において、三次元データの基礎データを取得するにあたり、三次元データ生成部(三次元データ生成工程)にて、第1地点から撮像装置にてマーカーを含む状態で撮影された敷設工事の現場の画像である第1地点敷設工事現場画像と、第1地点とは異なる第2地点から撮像装置にマーカーを含む状態で撮影された敷設工事の現場の画像である第2地点敷設工事現場画像とを少なくとも含む現場画像データから、敷設状況にある現場の三次元データを生成するから、種々の接続角度がある配管端部材料により複数の配管を様々な接続方向に接続する場合であっても、当該配管端部材料の接続角度や、接続された複数の配管の接続方向(接続状況)を、生成された三次元データにより良好に把握できる。
更に、上記特徴構成にあっては、異なる敷設状況にて生成された異なる三次元データを繋ぎ合わせるのに際し、繋ぎ合わせの妥当性を導出し、当該繋ぎ合わせの妥当性に基づいて、三次元データを繋ぎ合わせて統合三次元データを生成する。
具体的には、深さ一致度導出部(深さ一致度導出工程)にて、異なる三次元データに含まれるマーカー同士で、地表面からの深さの一致度としての深さ一致度を導出すると共に、配管端部材料一致度導出部(配管端部材料一致度導出工程)にて、異なる三次元データに含まれるマーカーの直近に設けられる配管端部材料同士で、その種類や形状等の一致度としての配管端部材料一致度を導出し、妥当性導出部(妥当性導出工程)にて、当該深さ一致度及び配管端部材料一致度とに基づいて、異なる三次元データの繋ぎ合わせの妥当性を導出する。更に、導出された妥当性に基づいて、例えば、繋ぎ合わせの妥当性が高くなるような、三次元データの組み合わせにて統合三次元データを生成する。このように、異なる敷設状況に対応する三次元データの複数を繋ぎ合わせることで、妥当性の高い繋ぎ合わせによる統合三次元データを自動的に生成できる。
結果、敷設状況が経時的に進行して、覆土等により過去の配管の敷設状態が確認できない現場であっても、それまでに配設・施工した全体の配管を含む統合三次元データを自動的に生成することができる統合三次元データ生成システム、及び統合三次元データ生成方法を実現できる。
尚、ここで、配管端部材料としては、継手の他、配管同士を直結するソケット、配管の端部を封止するキャップ等を含むものとする。
【0011】
統合三次元データ生成システムの更なる特徴構成は、
前記妥当性導出部は、前記深さ一致度導出部にて導出された前記深さ一致度が高いほど、前記繋ぎ合わせの前記妥当性を高くし、
前記統合三次元データ生成部は、前記妥当性導出部にて導出される前記妥当性が高いほど前記統合三次元データを信頼性が高いものとして生成する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、妥当性導出部は、妥当性を導出するのに際し、深さ一致度導出部にて導出された深さ一致度が高いほど、繋ぎ合わせの妥当性を高くすることで、異なる三次元データにおけるマーカー同士の深さが近く、異なる三次元データ上でのマーカーが同一のものである可能性が高いと考えられるものほど、繋ぎ合わせの妥当性を高くできる。これにより、例えば繋ぎ合わせの妥当性が高くなるように複数の三次元データを繋ぎ合わせることで、生成された統合三次元データを、より実際の現場の状態に合致したものとできる。
尚、ここで、深さ一致度とは、一のマーカーの地表面からの深さと、他のマーカーの地表面からの深さとの一致の度合いを意味し、両者の深さの差異が小さいほど、一致度は高くなるものとする。
【0013】
統合三次元データ生成システムの更なる特徴構成は、
前記配管端部材料一致度導出部は、前記配管端部材料一致度の導出対象である一対の前記配管端部材料の前記三次元データ上の重なり度合が高いほど、前記配管端部材料一致度を高くすると共に、
前記妥当性導出部は、前記配管端部材料一致度導出部にて導出された前記配管端部材料一致度が高いほど、前記繋ぎ合わせの前記妥当性を高くし、
前記統合三次元データ生成部は、前記妥当性導出部にて導出される前記妥当性が高いほど前記統合三次元データを信頼性が高いものとして生成する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、妥当性導出部は、妥当性を導出するのに際し、配管端部材料の三次元データ上での配管端部材料の重なり度合いが高いほど、繋ぎ合わせの妥当性を高くすることで、異なる三次元データにおける配管端部材料の形状(種類)が類似しており、異なる三次元データ上での配管端部材料が同一のものである可能性が高いと考えられるものほど、繋ぎ合わせの妥当性を高くできる。これにより、例えば繋ぎ合わせの妥当性が高くなるように複数の三次元データを繋ぎ合わせることで、生成された統合三次元データを、より実際の現場の状態に合致したものとできる。
【0015】
統合三次元データ生成システムの更なる特徴構成は、
前記三次元データ生成部にて生成された前記三次元データにおいて、少なくとも2以上の前記配管端部材料が、前記配管の長手方向で同一の位置に重畳して検出された箇所を複雑領域として抽出する複雑領域抽出部を備え、
前記配管端部材料一致度導出部は、前記複雑領域に位置する前記配管端部材料を、前記配管端部材料一致度の導出の対象から除外する点にある。
【0016】
実際の配管の敷設工事が行われる現場では、複数の配管端部材料が密に存在する箇所が存在するが、このような箇所は、配管同士を接続する部位となる可能性は低い。
そこで、上記特徴構成では、複雑領域抽出部が、複数の配管端部材料が密に存在する箇所を複雑領域として抽出し、配管端部材料一致度導出部が、複雑領域に位置する配管端部材料を、配管端部材料一致度の導出の対象から除外することで、配管端部材料一致度導出部が不要な演算を実行することを防止できると共に、複雑領域を含む三次元データに関して妥当性導出部による妥当性が不要に低くなることを防止できる。
【0017】
統合三次元データ生成システムの更なる特徴構成は、
前記撮像装置が、複数の衛星からの信号を受け取り、自身の位置を特定する衛星測位システムの受信機を有するものであり、
前記撮像装置により前記敷設工事の前記現場の画像を取得する際に、前記受信機にて受信した前記マーカーの絶対座標を、前記マーカーの夫々に紐付ける形で記憶する記憶部を備え、
前記妥当性導出部は、前記統合三次元データ生成部にて生成された前記統合三次元データにおいて、重畳された一対の前記マーカー同士の前記絶対座標のズレ量を、重畳された一対の前記マーカー毎に導出して足し合わせたズレ総和量が小さいほど、前記繋ぎ合わせの前記妥当性を高くし、
前記統合三次元データ生成部は、前記妥当性導出部にて導出される前記妥当性が高いほど前記統合三次元データを信頼性が高いものとして生成する点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、一対の三次元データに関し、重畳させる一対のマーカーの絶対座標のズレ量に基づいて、三次元データ同志の繋ぎ合わせの妥当性を導出するから、その妥当性を数値的に評価できる。
更に、複数の三次元データについては、重畳させる一対のマーカー毎に、絶対座標のズレ量を導出し、それらの総和であるズレ総和量から妥当性を評価することで、複数の三次元データについて、その全体の繋ぎ合わせの妥当性についても、数値的に評価でき、客観的な繋ぎ合わせの妥当性の判断を行い易いものとなる。
【0019】
統合三次元データ生成システムの更なる特徴構成は、
請求項1又は2に記載の前記統合三次元データ生成部にて生成された前記統合三次元データから前記配管の配管竣工図を生成する配管竣工図生成部を備える点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、これまで説明してきたえ統合三次元データ生成システムが奏する作用効果を良好に奏する配管竣工図作成システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る統合三次元データ生成システム、及び配管竣工図作成システム概略構成図である。
図2】三次元データから統合三次元データを生成する過程を説明するための図である。
図3】マーカーの絶対座標を用いて繋ぎ合わせの妥当性を導出する過程を説明するための図である。
図4】配管に複数の継手等の配管端部材料が重畳して存在する複雑領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る統合三次元データ生成システム100、それを用いた統合三次元データ生成方法は、敷設状況が経時的に進行して、覆土等により過去の配管の敷設状態が確認できない現場であっても、それまでに配設・施工した全体の配管を含む統合三次元データを自動的に生成できるものであり、統合三次元データ生成システム100を用いた配管竣工図作成システム200は、統合三次元データを用いてそれまでに配設・施工した全体の配管竣工図を作成できるものである。
以下、図1~4に基づいて、実施形態に係る統合三次元データ生成システム100、及び配管竣工図作成システム200、及び統合三次元データ生成方法について説明する。
【0023】
実施形態に係る統合三次元データ生成システム100、及び配管竣工図作成システム200、及び統合三次元データ生成方法は、図1に示すように、配管Pの敷設工事が経時的に進行する現場において、進行する配管Pの敷設状況を反映した統合三次元データ、及び配管竣工図を作成するものであり、一端及び他端に管周方向の全周に亘って敷設されるマーカーMが付された配管P(例えば、都市ガス13Aを通流するガス配管)を敷設工事中に撮影する複眼カメラ(図示せず:当該実施形態ではデュアルカメラ)を有するスマートフォン端末T1(撮像装置の一例)と、統合三次元データ及び配管竣工図を生成するための各種演算処理を実行する処理サーバSと、当該処理サーバSにて生成された配管竣工図を生成・表示するための表示端末T2とを備えて構成されている。本実施形態においては、スマートフォン端末T1と、処理サーバSと、表示端末T2とは、光通信等のネットワークにより電気的に接続されており、夫々の端末は互いに情報の送受信可能に構成されている。ここで、配管Pの敷設工事は、直管と継手等の配管端部材料との接続による敷設工事を含むものである。
【0024】
当該実施形態においては、スマートフォン端末T1は、ハードウェアとソフトウェアとが協働して各種演算を実行する本体と、配管Pの敷設工事を撮影するためのデュアルカメラとは別体に設けられているものを採用している。
ちなみに、撮像装置としてのスマートフォン端末T1には、敷設工事を撮影している場合に、配管P及びその両端に付されるマーカーMとが画角内に正しく入っているか否かを判定し、入っていない場合に音声又は振動の少なくとも何れか一方により撮影者に知らせる報知機能部(図示せず)が設けられている。
【0025】
処理サーバSは、図1に示すように、所定の敷設状況にある場合において、第1地点からスマートフォン端末T1にてマーカーMを含む状態で撮影された敷設工事の現場の画像である第1地点敷設工事現場画像と、第1地点とは異なる第2地点からスマートフォン端末T1にてマーカーMを含む状態で撮影された敷設工事の現場の画像である第2地点敷設工事現場画像とを少なくとも含む現場画像データから、敷設状況にある現場の三次元データを生成する三次元データ生成部S1と、敷設状況としての所定の第1敷設状況において三次元データ生成部S1にて生成された三次元データ(例えば、図2(a))に含まれるマーカーMと、第1敷設状況とは異なる第2敷設状況において三次元データ生成部S1にて生成された三次元データ(例えば、図2(b))に含まれるマーカーMとの地表面からの深さの一致度としての深さ一致度を導出する深さ一致度導出部S4と、第1敷設状況において三次元データ生成部S1にて生成された三次元データに含まれるマーカーMの直近に設けられる継手を含む配管端部材料と、第2敷設状況において三次元データ生成部S1にて生成された三次元データに含まれるマーカーMの直近に設けられる配管端部材料の一致度としての配管端部材料一致度を導出する配管端部材料一致度導出部S5と、深さ一致度導出部S4にて導出された深さ一致度と、配管端部材料一致度導出部S5にて導出された配管端部材料一致度とに基づいて、第1敷設状況において生成された三次元データと第2敷設状況において生成された三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する妥当性導出部S6と、複数の敷設状況から選択される異なる2つの敷設状況にて生成された三次元データの組のすべてに関し妥当性導出部S6にて妥当性を導出し、導出された妥当性に基づいて、複数の敷設状況にて生成された三次元データの夫々を、マーカーMを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の敷設状況にて生成された三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する統合三次元データ生成部S2とを備える。
更に、処理サーバSは、統合三次元データ生成部S2にて生成された統合三次元データから配管Pの配管竣工図を生成する配管竣工図生成部S3を備える。
【0026】
尚、当該実施形態においては、第1点敷設工事現場画像はスマートフォン端末T1のデュアルカメラの一方の眼にて撮像されたものとし、第2点敷設工事現場画像はスマートフォン端末T1のデュアルカメラの他方の眼にて撮像されたものとすることができる。つまり、この場合、第1地点は撮影時点でデュアルカメラの一方の眼が位置する地点であり、第2地点は撮影時点でデュアルカメラの他方の眼が位置する地点である。
このように、デュアルカメラを有するスマートフォン端末T1により上述の如く三次元データを生成することにより、単眼カメラにて視差のある状態で撮影した視差のある2つ以上の敷設工事現場画像から三次元データを生成する場合に比べて、三次元データの高精度化及び高速生成が可能となり、30m程度の配管Pに対して計測誤差1%以内を実現している。
【0027】
即ち、当該処理サーバSでは、所定の敷設状況にある場合において、第1地点からスマートフォン端末T1にてマーカーMを含む状態で撮影された敷設工事の現場の画像である第1地点敷設工事現場画像と、第1地点とは異なる第2地点からスマートフォン端末T1にてマーカーMを含む状態で撮影された敷設工事の現場の画像である第2地点敷設工事現場画像とを少なくとも含む現場画像データから、敷設状況にある現場の三次元データを生成する三次元データ生成工程と、敷設状況としての所定の第1敷設状況において三次元データ生成工程にて生成された三次元データ(例えば、図2(a))に含まれるマーカーMと、第1敷設状況とは異なる第2敷設状況において三次元データ生成工程にて生成された三次元データ(例えば、図2(b))に含まれるマーカーMとの地表面からの深さの一致度としての深さ一致度を導出する深さ一致度導出工程と、第1敷設状況において三次元データ生成工程にて生成された三次元データに含まれるマーカーMの直近に設けられる継手を含む配管端部材料と、第2敷設状況において三次元データ生成工程にて生成された三次元データに含まれるマーカーMの直近に設けられる配管端部材料の一致度としての配管端部材料一致度を導出する配管端部材料一致度導出工程と、深さ一致度導出工程にて導出された深さ一致度と、配管端部材料一致度導出工程にて導出された配管端部材料一致度とに基づいて、第1敷設状況において生成された三次元データと第2敷設状況において生成された三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する妥当性導出工程と、複数の敷設状況から選択される異なる2つの敷設状況にて生成された三次元データの組のすべてに関し妥当性導出工程にて妥当性を導出し、導出された妥当性に基づいて、複数の敷設状況にて生成された三次元データの夫々を、マーカーMを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の敷設状況にて生成された三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する統合三次元データ生成工程とを実行する。
【0028】
ちなみに、図1に示される当該実施形態におけるマーカーMは、比較的視認性の高い色(例えば、赤)であり、上述したように、端部に管周方向の全周に亘って敷設されている。これにより、晴天で太陽光が照射するような環境で、管周方向でマーカーMの一部が太陽光の反射により3敷設工事現場画像に写り難い状況であっても、管周方向でマーカーMの残部が写ることにより、三次元データにおいてマーカーMが認識できる程度に表わされる。尚、図2、3では、マーカーMを明確に示すため、配管Pの管周よりも太い状態で図示している。
【0029】
三次元データ生成部S1は、スマートフォン端末T1を用いて、三次元データを生成するのに際し、第1地点と当該第1地点とは異なる第2地点との少なくとも2地点から視差のある状態で、画像(又は動画)を複数の敷設工事現場画像として取得する点群計測を実行する。
その後、三次元データにおいて、点群計測において欠落した欠落面や、反射や吸収表面素材による計測欠損等を補足・補正すると共に、現場に含まれる路面切断箇所等のエッジ部分を再現したり、記憶部S8に記憶される既知の配管形状を利用したりして撮像対象の立体化を実行する。
更に、三次元データにおいて、現場に含まれる配管Pや路面等の構成部品に分離すべく、敷設工事現場画像に含まれる色と輝度を用いて構成部品毎に境界を分離し、境界のエッジを抽出して構成部品の形状の高精度化を図るセグメンテーションを実行する。
最後に、三次元データにおいて、セグメンテーションにて分離された構成部品を、意味を持つ物体として認識する物体認識を実行する。当該物体認識により、配管竣工図において重要な配管Pに係る専用処理が可能となる。
【0030】
さて、配管Pの敷設状況は、経時的に進行するため、三次元データを統合して生成する統合三次元データ、及び配管竣工図を生成するためには、三次元データ生成部S1にて一時点にて生成される三次元データを、異なる時点にて複数生成し、それらを足し合わせながら生成する必要がある。
更に、刻一刻と進行する配管Pの敷設状況に合わせて生成される三次元データは、比較的多く生成される場合があり、多くの三次元データを適切に繋ぎ合わせることを人為的に行うことは手間と時間を要するため、多くの三次元データの繋ぎ合わせの妥当性を判断しながら、自動的に繋ぎ合わせることができるシステムを実現するべく、当該実施形態に係る統合三次元データ生成システム100及び配管竣工図作成システム200は、以下の処理を実行する。以下、図1、2、4に基づいて、統合三次元データ、及び配管竣工図の生成方法について説明する。
【0031】
尚、図2に示す例では、1日目の配管Pの敷設状況に基づいて生成された第1三次元データ(図2(a))と、2日目の配管Pの敷設状況に基づいて生成された第2三次元データ(図2(b))と、3日目の配管Pの敷設状況に基づいて生成された第3三次元データ(図2(c))とから、統合三次元データ(図3(d))を生成する流れを図示している。ちなみに、図2(a)~図2(c)では、過去に敷設された配管Pは、覆土により覆われており、図示されていない状態を示している。
ここで、当該実施形態に係る統合三次元データ生成システム100では、三次元データを統合するのに際し、「配管PにおけるマーカーMの直近の配管端部材料」及び「マーカーMの地表面からの深さ」を用いる。図2に示す例におけるこれらの具体例を〔表1〕に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
統合三次元データ生成システム100は、まず、〔表2〕に示すように、一の三次元データ(第1三次元データ)に関し、一端のマーカーM(1A)及び他端のマーカーM(1B)と、他の三次元データ(第2三次元データ及び第3三次元データ)のマーカーM(2A)、マーカーM(2B)、マーカーM(3A)、マーカーM(3B)との組み合わせ(〔表2〕に示す8つの組)に関し、深さ一致度、及び配管端部材料一致度を導出する。
深さ一致度導出部S4は、図示は省略するが、三次元データから地表面とマーカーMとの鉛直方向での距離を導出し、例えば、比較するマーカーM同士の深さが大凡一致する(〔表2〕で〇)、少しズレている(〔表2〕で△)、大きくズレている(〔表2〕で×)等として、深さ一致度を導出する。ここで、深さ一致度は、その差異を数値的に表すものであっても構わない。〔表2〕に示す例では、マーカーM(1B)とマーカーM(2A)の組み合わせと、マーカーM(1B)とマーカーM(3B)の組み合わせとが、その深さが大凡一致する。
【0034】
【表2】
【0035】
配管端部材料一致度導出部S5は、上述のマーカーMの組み合わせの夫々に関し、マーカーMの直近に設けられ、且つ配管端部材料一致度の導出対象である一対の配管端部材料の三次元データ上での重なり度合が高いほど、換言すれば、形状の一致度が高いほど、配管端部材料一致度を高く導出する。当該配管端部材料一致度は、〔表2〕に示すように、大凡一致(〔表2〕で〇)、異なる(〔表2〕で×)等として導出することができるが、その形状の差異を数値的に表すものであっても構わない。〔表2〕に示す例では、マーカーM(1A)とマーカーM(3B)の組み合わせと、マーカーM(1B)とマーカーM(2A)の組み合わせとが、その配管端部材料の形状が大凡一致する。ちなみに、図2には、垂直エルボVEXが図示されているが、これはマーカーMの直近の配管端部材料でないため、配管端部材料一致度の導出対象とはならない。
【0036】
尚、実際の配管Pの敷設工事が行われる現場では、複数の配管端部材料が密に存在する箇所が存在する。例えば、図4に示すように、配管Pの長手方向で同一の位置に、第1エルボL1、第2エルボL2、第3エルボL3、チーズTが、重畳して存在する場合がある。ただし、このような箇所は、配管同士を接続する部位となる可能性は低い。
そこで、統合三次元データ生成システム100は、三次元データ生成部S1にて生成された三次元データにおいて少なくとも2以上の配管端部材料が配管Pの長手方向で同一の位置に重畳して検出された箇所を複雑領域として抽出する複雑領域抽出部S7を備えており、配管端部材料一致度導出部S5は、複雑領域に位置する配管端部材料を、配管端部材料一致度の導出の対象から除外している。
【0037】
妥当性導出部S6は、上述の如く、導出された深さ一致度と配管端部材料一致度とに基づいて、第1敷設状況において生成された第1三次元データと、第2敷設状況において生成された第2三次元データと、第3敷設状況において生成された第3三次元データとの繋ぎ合わせの妥当性を導出する。例えば、妥当性導出部S6は、深さ一致度が高いほど、且つ配管端部材料一致度が高いほど、繋ぎ合わせの妥当性が高いと導出する。妥当性導出部S6は、深さ一致度と配管端部材料一致度の何れを優先するかに応じて、夫々の一致度に重み付けして、繋ぎ合わせの妥当性を導出する。
図2及び〔表1〕に示す例では、〔表2〕に示すように、マーカーM(1B)とマーカーM(2A)の組み合わせが、繋ぎ合わせの妥当性が最も高いと導出する。これにより、第1三次元データのマーカーM(1B)と、第2三次元データのマーカーM(2A)を繋ぎ合わせることが決定したので、次に、〔表3〕に示すように、第1三次元データのマーカーM(1B)と、第2三次元データのマーカーM(2A)とにおいて、残りの組み合わせに関し、配管端部材料一致度と深さ一致度とから、繋ぎ合わせの妥当性を導出する。〔表3〕の例では、2回目の妥当性の導出では、マーカーM(2B)とマーカーM(3A)の組み合わせが、繋ぎ合わせの妥当性が高いと導出される。
【0038】
【表3】
【0039】
統合三次元データ生成部S2は、導出された妥当性に基づいて、複数の敷設状況(当該実施形態では3つ)にて生成された三次元データの夫々を、マーカーMを重畳させる形態で繋ぎ合わせて、複数の敷設状況にて生成された三次元データの夫々が含む情報を有する統合三次元データを生成する。このとき、統合三次元データ生成部S2は、妥当性導出部S6にて導出される妥当性が高いほど統合三次元データの信頼性が高いものとして生成する。
尚、当該統合三次元データ生成部S2は、統合三次元データにおいて、第1敷設状況に対応する三次元データに含まれる現場での直線形状部位(例えば、地表面におけるアスファルトの切断面)を有する第1被撮影物と、第2敷設状況に対応する三次元データに含まれる現場での直線形状部位(例えば、地表面におけるアスファルトの切断面)を有する第2被撮影物とが、同一のものか否かを、処理サーバSに設けられる記憶部S8に記憶される被撮影物情報に基づいて判定すると共に、同一である場合に、両者の直線形状部位を重畳させる形態で、第1敷設状況に対応する三次元データと第2敷設状況に対応する三次元データとの角度補正を行うことができる。
【0040】
配管竣工図生成部S3は、以上の如く、統合三次元データ生成部S2にて生成された統合三次元データから配管Pの配管竣工図を生成する。
尚、当該実施形態においては、スマートフォン端末T1が、複数の衛星からの信号を受け取り、自身の位置を特定する衛星測位システムの受信機Jを有するものであり、スマートフォン端末T1により敷設工事の現場の画像を取得する際に、受信機Jにて受信したマーカーMの絶対座標を、マーカーMの夫々に紐付ける形で記憶する記憶部S8に記憶する。これにより、配管竣工図生成部S3は、記憶部S8に記憶されるマーカーMの絶対座標を、地図上の絶対座標に対応させる形態で、配管竣工図を複合地図システムに表示させることができる。
また、配管竣工図生成部S3は、統合三次元データに含まれる現場の建物等を、複合地図システムの建物等に重畳させる形態で、配管竣工図を複合地図システムに表示させることができる。
【0041】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態は、撮像装置として、ハードウェアとソフトウェアとの協働により各種演算処理を実行可能なスマートフォン端末T1を用いる例を示したが、撮像機能を有するデジタルカメラやデジタルビデオ等、種々のものを採用可能である。
また、上記実施形態では、スマートフォン端末T1は、デュアルカメラ(2眼)を有するものを採用して、一のカメラと他のカメラとにより視差のある状態で画像(又は動画)を撮像し、三次元データを生成する構成を示した。
他の構成として、単眼のスマートフォン端末T1を用いて、異なる地点から撮像した視差のある2つの画像により三次元データを生成する構成を採用しても構わない。つまり、単眼のスマートフォン端末T1による点群計測では、スマートフォン端末T1にて画像(又は動画)を撮影しながら、作業者がスマートフォン端末T1の位置を、少なくとも第1地点と第2地点とで異なる位置に移動させる。
【0042】
(2)上記実施形態では、統合三次元データ及び配管竣工図を生成するための各種演算処理は、処理サーバSにて実行される構成例を示したが、撮像装置としてスマートフォン端末T1を採用する場合、これらの演算処理は、スマートフォン端末T1側で実行する構成を採用しても構わない。
【0043】
(3)上記実施形態では、統合三次元データ生成システム100、及び配管竣工図作成システム200を一のシステムとして備えた構成例を示したが、統合三次元データ生成システム100のみを備えるものであっても構わない。
【0044】
(4)上記実施形態では、3つの三次元データを繋ぎ合わせて統合三次元データを生成する例を示したが、3つより多い三次元データを繋ぎ合わせても構わない。
また、2つの三次元データを繋ぎ合わせることもでき、この場合、一対の三次元データに関し、一方の三次元データに表示されるマーカーMと、他方の三次元データに表示されるマーカーMとを一致させる形態で、一の繋ぎ合わせ状態を決定する。
【0045】
(5)上記実施形態では、複雑領域抽出部S7にて抽出された複雑領域に位置する配管端部材料は、配管端部材料一致度の導出の対象から除外する構成を例示したが、除外しない構成を採用しても構わない。
【0046】
(6)上記実施形態では、統合三次元データ生成部S2は、第1敷設状況に係る三次元データと、第2敷設状況に係る三次元データと、第3敷設状況に係る三次元データとに関し、一の繋ぎ合わせを決定し一の統合三次元データのみを生成したが、複数の統合三次元データを生成しても構わない。
この場合、複数の統合三次元データの夫々に関し、繋ぎ合わせの妥当性に基づく信頼性を紐付ける形態で、生成することが好ましい。
尚、当該統合三次元データに紐付く信頼性は、必ずしも生成しなくても構わない。
【0047】
(7)統合三次元データ生成システム100では、記憶部S8が、スマートフォン端末T1にて配管Pの敷設工事の現場の画像を取得する際に、受信機Jにて受信したマーカーMの絶対座標を、マーカーMの夫々に紐付ける形で記憶している。
妥当性導出部S6は、以下に示すように、上述した深さ一致度と配管端部材料一致度に加え、当該マーカーMの絶対座標を用いて、三次元データの繋ぎ合わせの妥当性を導出する構成を採用しても構わない。
説明を追加すると、妥当性導出部S6は、統合三次元データ生成部S2にて生成された統合三次元データにおいて、重畳された一対のマーカーM同士の絶対座標のズレ量を、重畳された一対のマーカーM毎に導出して足し合わせたズレ総和量が小さいほど、繋ぎ合わせの妥当性を高くし、統合三次元データ生成部S2は、妥当性導出部S6にて導出される妥当性が高いほど統合三次元データを信頼性が高いものとして生成する。
具体的には、図2に示した第1三次元データと、第2三次元データと、第3三次元データとを繋ぎ合わせる場合において、マーカーM(1B)とマーカーM(2A)とを繋ぎ合わせると共にマーカーM(2B)とマーカーM(3A)とを繋ぎ合わせる例(図3(a)に例示)と、マーカーM(1A)とマーカーM(3B)とを繋ぎ合わせると共にマーカーM(3A)とマーカーM(2B)とを繋ぎ合わせる例(図3(b)に例示)とを考える。
尚、図3において、丸印で示しているのが、各マーカーMの絶対座標を意味するものである。
図3(a)に示す繋ぎ合わせの例では、マーカーM(1B)とマーカーM(2A)との絶対座標のズレ量はXαであり、マーカーM(2B)とマーカーM(3A)との絶対座標のズレ量はXβであり、その絶対座標のズレ総和量はXα+Xβ=10cmである。
一方、図3(b)に示す繋ぎ合わせの例では、マーカーM(1A)とマーカーM(3B)との絶対座標のズレ量はXγであり、マーカーM(3A)とマーカーM(3B)との絶対座標のズレ量はXδであり、その絶対座標のズレ総和量はXγ+Xδ=1500cmである。
これにより、妥当性導出部S6は、絶対座標を用いた繋ぎ合わせの妥当性については、図3(b)に示す繋ぎ合わせよりも、図3(a)に示す繋ぎ合わせのほうが、妥当性が高いと導出する。
【0048】
(8)実施形態に係る統合三次元データ生成システム100、及び配管竣工図作成システム200は、以下の補助機能部(図示せず)を好適に備えることができる。
例えば、記憶部S8に配管端部材料の三次元形状を記憶しておき、三次元データ(又は統合三次元データ)上において、記憶部S8に記憶される三次元形状の配管端部材料と一致するものを自動で抽出し、三次元形状毎(種類毎)に数え上げる補助機能部を備えることができる。
また、補助機能部には、三次元データ(又は統合三次元データ)上において、配管の長さや、配管端部と配管端部との間の距離等を、自動で算出機能を持たせることもできる。
更に、当該補助機能を用いて、掘削予定箇所の平面図における掘削予定面積や、掘削予定深さを算出すると共に、当該掘削予定面積と掘削予定深さを積算することで、掘削予定土量を算出することもできる。
【0049】
(9)上記実施形態では、配管としてガス配管を例として説明したが、本発明は、上下水道配管等の他の配管の施工工事についても効果的に適用可能である。
【0050】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の統合三次元データ生成システム、統合三次元データ生成方法、及び配管竣工図作成システムは、敷設状況が経時的に進行して、覆土等により過去の配管の敷設状態が確認できない現場であっても、それまでに配設・施工した全体の配管を含む統合三次元データを自動的に生成することができる統合三次元データ生成システム、統合三次元データ生成方法、及び当該統合三次元データを用いてそれまでに配設・施工した全体の配管竣工図を作成する配管竣工図作成システムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 :統合三次元データ生成システム
200 :配管竣工図作成システム
J :受信機
M :マーカー
P :配管
S :処理サーバ
S1 :三次元データ生成部
S2 :統合三次元データ生成部
S3 :配管竣工図生成部
S4 :深さ一致度導出部
S5 :配管端部材料一致度導出部
S6 :妥当性導出部
S7 :複雑領域抽出部
S8 :記憶部
T1 :スマートフォン端末
T2 :表示端末
図1
図2
図3
図4