IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169784
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】皮膚洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20231122BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231122BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20231122BHJP
   C11D 1/74 20060101ALI20231122BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20231122BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20231122BHJP
   C11D 3/18 20060101ALI20231122BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/10
A61K8/34
A61K8/02
A61K8/86
C11D1/68
C11D1/74
C11D17/08
C11D3/20
C11D3/18
C11D17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081110
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 ひろ子
(72)【発明者】
【氏名】田島 準
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC481
4C083AC482
4C083AD042
4C083BB02
4C083BB04
4C083CC23
4C083DD08
4C083DD47
4C083EE06
4C083EE07
4H003AA03
4H003AC10
4H003AC12
4H003BA12
4H003BA20
4H003DA02
4H003EB04
4H003EB06
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洗浄力が高く、温度安定性が良好で、使用後の肌がべたつかず、さらに、狭い面積から広い面積まで自在に洗浄することができ、勝手が良い、皮膚洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):(A)HLB13以上の特定のノニオン性界面活性剤の1種以上を50質量%以上含む、水溶性ノニオン性界面活性剤2~20質量%、(B)(b1)フェノキシエタノール0.3~1質量%、(b2)メチルパラベン0.1~0.4質量%、(b3)エチルパラベン0.05~0.2質量%から選ばれる1種以上の化合物、(C)(c1)1,3-ブチレングリコール、(c2)ジプロピレングリコール、(c3)エタノールから選ばれる1種以上の化合物、(D)水を含有し、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が5以上である水系液状の組成物であって、(Z)スプレー容器に収容される、皮膚洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれるHLB13以上のノニオン性界面活性剤の1種以上を50質量%以上含む、水溶性ノニオン性界面活性剤 2~20質量%、
(a1)ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
(a2)ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、
(a3)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル、
(B)(b1)、(b2)及び(b3)から選ばれる1種以上の化合物、
(b1)フェノキシエタノール 0.3~1質量%、
(b2)メチルパラベン 0.1~0.4質量%、
(b3)エチルパラベン 0.05~0.2質量%、
(C)(c1)、(c2)及び(c3)から選ばれる1種以上の化合物、
(c1)1,3-ブチレングリコール、
(c2)ジプロピレングリコール、
(c3)エタノール、
(D)水
を含有し、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が5以上である水系液状の組成物であって、
(Z)スプレー容器に収容される、皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記水系液状の組成物の5℃における粘度が、20mPa・s以下である請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
(Z)スプレー容器が、使用者の押圧動作に応じてミストを吐出するミスト吐出型スプレー容器であって、使用者が1回の完全押圧動作を行うときに吐出される組成物の液量(mL)の、噴口径(mm)に対する比が、0.6以上である請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
(Z)スプレー容器が、使用者の押圧動作に応じてミストを吐出するミスト吐出型スプレー容器であって、2/(使用者が2回/秒で5回の押圧動作を行うとき、平均して1回当たりに吐出される組成物の液量(mL))が、10以下である請求項1~3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項5】
(Z)スプレー容器が、使用者の押圧動作に応じてミストを吐出するミスト吐出型スプレー容器であって、使用者が1回の完全押圧動作を行うときに吐出される組成物の液量(mL)に対する、使用者が2回/秒で5回の押圧動作を行うとき平均して1回当たりに吐出される組成物の液量(mL)の割合が、50%以上である請求項1~4のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項6】
成分(B)が、(b1)と、(b2)及び(b3)から選ばれる1種以上とを含み、(b2)及び(b3)の合計量に対する(b1)の質量割合(b1)/((b2)+(b3))が、0.5~5である請求項1~5のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項7】
成分(A)以外に、(E)HLB10未満のノニオン性界面活性剤を含有し、成分(E)に対する成分(A)の質量割合(A)/(E)が、5以上である請求項1~6のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物を、皮膚に吹き付けた後、ふき取るか又は洗い流す、皮膚の洗浄方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物を、皮膚に吹き付けた後、なじませてから、ふき取るか又は洗い流す、皮膚の洗浄方法。
【請求項10】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれるHLB13以上のノニオン性界面活性剤の1種以上を50質量%以上含む、水溶性ノニオン性界面活性剤 2~20質量%、
(a1)ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
(a2)ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、
(a3)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル、
(B)(b1)、(b2)及び(b3)から選ばれる1種以上の化合物、
(b1)フェノキシエタノール 0.3~1質量%、
(b2)メチルパラベン 組成物中に0.1~0.4質量%、
(b3)エチルパラベン 組成物中に0.05~0.2質量%、
(C)(c1)、(c2)及び(c3)から選ばれる1種以上の化合物、
(c1)1,3-ブチレングリコール、
(c2)ジプロピレングリコール、
(c3)エタノール、
(D)水
を含有し、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が5以上である水系液状の組成物と、
(Z)前記組成物を収容するスプレー容器とを含む、
皮膚洗浄用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧水のように低粘度の洗浄剤を手に取って対象になじませるという行為には、いくつかの問題点があった。粘度が低くて、手に取ってもつけるまでにこぼれ落ちて周りを汚してしまう。また、広い面積に均一につけられず、均一に汚れを落とすことができない。それらの課題に対し、従来は、先にシートやコットンなどの担体に含浸させておいて、それでふき取るという方法が用いられてきた。また、泡にする、高分子などで保型性を持たせるなどの製剤化が行われてきた。
例えば、特許文献1には、水と、非イオン性界面活性剤と、ポリアミノプロピルグアニドと、多価アルコールとを含み、エタノールを含まないか、又はエタノールを5質量%以下で含む、クレンジング用組成物をシート基材に含浸させたクレンジングシートが、ファンデーションに対する高いクレンジング力と優れた防腐力を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/125332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ファンデーションや日焼け止めといった製品は、その効果が長時間持続する性能を求められており、耐水、耐皮脂性の高い塗膜を形成する技術開発が行われている。それらの技術的発想は共通しており、トリメチルシロキシケイ酸(TMS)に代表されるような被膜形成性のポリマーを処方中に配合することにより、塗布後に撥水・撥油性の高い堅牢な塗膜を形成するというものである。
このような被膜形成ポリマーは油溶性であるため、一度肌の上で塗膜を形成すると、洗顔料のような水系洗浄剤で落とすことは難しくなる。従って、オイル系のクレンジング剤で落とすことが一般的には推奨されている。しかしながら、油剤を洗浄基材としたクレンジング剤では、ぬるついて洗い流しに時間がかかったり、洗い流した後にもべたつきが残ることが多かった。
【0005】
実生活中ではファンデーションや日焼け止めが塗布されるのは顔だけではない。化粧時に手の甲に一時的にとったファンデーションや、首や腕などにつけた日焼け止めなど、落としにくい汚れは手や体にも存在し、整髪後に手についたワックスなども実際に落ちにくい汚れとして、認識されている。
殊にこれまで、身体の大きな面積に、落としにくい被膜形成成分を含むウォータープルーフタイプの日焼け止めを日常的につけるといった状況はあまりなかったが、最近では気候の温暖化や紫外線の悪影響が周知されるに伴い、大人から子供まで、外出時には日焼け止めを塗るといった習慣が定着してきている。特に気温上昇に伴い、汗で流れない耐水性の高い持続性の製剤が使われる場面が増えており、それらが簡単に落とせないという不満が増えている。
【0006】
このような状況下で、手や体につかえる洗浄剤は、ボディーシャンプーやハンドソープなどの一般的な洗浄剤である。それらはアニオン性界面活性剤主体の処方であるため、持続性の高いファンデーションや日焼け止めを十分に落とす洗浄力を有するものではない。一方、オイルタイプのクレンジング剤は使用中、使用後もぬるついて顔以外に使うのに適した使用感ではない。また、従来の洗浄剤は水で洗い流せるところでしか使えないという場所の制限もあった。
そこで、例えば上述の水系クレンジング用組成物を含浸させたクレンジングシートを、顔以外の手や体の洗浄用に用いることが考えられる。
【0007】
しかしながら、従来の水系のクレンジング用組成物は、被膜形成性の高いファンデーション等に対しては十分な洗浄力を発揮することができなかった。
また、日常生活で体に落ちにくい汚れがついてしまう状況を想定した場合、シートでは、メイク時についた指先のファンデーションを落としたいときでもシート1枚を使わなければならないというのでは、非経済的である。逆に、コットンに含浸して使用するのでは腕など体の広い面積につけた日焼け止めを落としたいときには何枚も使わなければならず、面倒である。
このように、洗浄液をシートやコットンに含浸させて使用するのは、手軽で便利なことではあるが、使用場面や場所の大きさが変化するボディー用の洗浄用途を考えた場合、合理的な製品形態であるとは言い難い。
一方、シートやコットンに含浸させて使用しない、増粘した製剤では、広い面積に伸び広がらない、後肌がべたついて、洗い流したくなる、といった課題がある。
このように本発明者らは、ぬるつかない使用感で、手や体についた落としにくい汚れを一本で、過不足なく簡単に落としたいという潜在的なニーズがあることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、HLB13以上の特定のノニオン性界面活性剤に、特定の防腐剤化合物等を組み合わせることで、持続性を高めたファンデーションや日焼け止めに対して(特異的に)高い洗浄効果を発揮し、実使用に適した温度安定性を保ちながら、使用後の良好な肌感触を有する水系の皮膚洗浄剤組成物を提供しうることを見出した。さらに、その皮膚洗浄剤組成物を、スプレー容器に収容して用いることにより、指先から腕、体といった、狭い面積から広い面積までを自在に、効率良く洗浄することができ、使い勝手が良いことを見出した。
【0009】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれるHLB13以上のノニオン性界面活性剤の1種以上を50質量%以上含む、水溶性ノニオン性界面活性剤 2~20質量%、
(a1)ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
(a2)ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、
(a3)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル、
(B)(b1)、(b2)及び(b3)から選ばれる1種以上の化合物、
(b1)フェノキシエタノール 0.3~1質量%、
(b2)メチルパラベン 0.1~0.4質量%、
(b3)エチルパラベン 0.05~0.2質量%、
(C)(c1)、(c2)及び(c3)から選ばれる1種以上の化合物、
(c1)1,3-ブチレングリコール、
(c2)ジプロピレングリコール、
(c3)エタノール、
(D)水
を含有し、
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、5以上である水系液状の組成物であって、
(Z)スプレー容器に収容される、皮膚洗浄剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記皮膚洗浄剤組成物を、皮膚に吹き付けた後、ふき取るか又は洗い流す、皮膚の洗浄方法に関する。
また、本発明は、前記皮膚洗浄剤組成物を、皮膚に吹き付けた後、なじませてから、ふき取るか又は洗い流す、皮膚の洗浄方法に関する。
【0011】
また、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれるHLB13以上のノニオン性界面活性剤の1種以上を50質量%以上含む、水溶性ノニオン性界面活性剤 2~20質量%、
(a1)ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
(a2)ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、
(a3)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル、
(B)(b1)、(b2)及び(b3)から選ばれる1種以上の化合物、
(b1)フェノキシエタノール 0.3~1質量%、
(b2)メチルパラベン 組成物中に0.1~0.4質量%、
(b3)エチルパラベン 組成物中に0.05~0.2質量%、
(C)(c1)、(c2)及び(c3)から選ばれる1種以上の化合物、
(c1)1,3-ブチレングリコール、
(c2)ジプロピレングリコール、
(c3)エタノール、
(D)水
を含有し、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が5以上である水系液状の組成物と、
(Z)前記組成物を収容するスプレー容器とを含む、
皮膚洗浄用物品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、被膜形成成分を含有する持続性の高いファンデーションや日焼け止めなど(被膜形成汚れ)に対して、ヌルつくことなく使えて、高い洗浄力(除去ポテンシャル)を有し、温度安定性が良好なものである。また、スプレー容器に収容し、皮膚に直接吹き付けて使用することにより、指先から全身まで自在に、かつ均一にスプレー(塗布)して、効率よく洗浄することができ、使い勝手の良いものである。
【0013】
本発明において、除去ポテンシャルとは、例えば、実施例中の疑似皮膚のモデル基板上に塗布された持続性の高いメイクアップ化粧料を一定の物理条件で所定の物理力をかけて落としたときの除去性能のことをいう。それは、モデル基板上のメイクアップ化粧料の洗浄前後での色差測定より除去率として算出される。また、その実施例において、除去率が50%以上のものは、除去ポテンシャルを有するとされる。
また、温度安定性が良好とは、本発明の処方がノニオン性界面活性剤ベースの水溶液であるため、日焼け止め製品が使われる夏季温度条件下で曇点を迎えないだけの十分な温度安定性を有することをいう。具体的には曇点が45℃以上、好ましくは50℃以上に観測されることをいう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
成分(A)は、水溶性ノニオン性界面活性剤であり、成分(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれるHLB13以上のノニオン性界面活性剤の1種以上を50質量%以上含むものである。
(a1)ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
(a2)ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、
(a3)ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル。
ここで、水溶性ノニオン性界面活性剤とは、HLB10以上のノニオン性界面活性剤であり、単独又は組み合わせによって、25℃において水に20質量%の濃度で、透明均一に溶解するノニオン性界面活性剤のことをいう。
また、HLBは、親水性-親油性のバランス(Hydrophile Lipophile Balance)を示す指標であり、本明細書においては、グリフィン(Griffin)による次式により求められるものである。
【0015】
【数1】
【0016】
成分(a1)、(a2)及び(a3)は、特定構造の親水性ノニオン性界面活性剤であり、持続性を強化したメイクアップ化粧料などを落とす働きをする。そのため、成分(a1)、(a2)及び(a3)は、単独でもある程度の洗浄除去ポテンシャルを有することが好ましく、かつ成分(B)と組み合わせることで、被膜形成汚れの除去ポテンシャルの明らかな向上がみられるものである。
成分(a1)、(a2)及び(a3)のノニオン性界面活性剤は、水溶性を確保する点から、HLB13以上であり、14以上が好ましい。
【0017】
成分(a1)、(a2)及び(a3)のポリオキシエチレン(POE)基の平均付加モル数は、HLB13以上という観点から、(a1)では9モル以上、(a2)では6モル以上、(a3)では7モル以上であることが好ましく、成分(a1)、(a2)及び(a3)単独で発揮されるメイク除去ポテンシャルの観点から、(a1)では30モル以下、(a2)では20モル以下、(a3)では40モル以下が好ましく、(a1)では20モル以下、(a2)では10モル以下、(a3)では20モル以下がより好ましい。具体的には、(a1)では、POE(12)モノラウレート、(a2)では、POE(6)(カプリル/カプリン酸)グリセリル、POE(7)(カプリル/カプリン酸)グリセリル、(a3)では、POE(7)ヤシ油脂肪酸グリセリル、POE(8)ヤシ油脂肪酸グリセリルが好ましい。
【0018】
本発明において、成分(A)は、成分(a1)、(a2)及び(a3)以外の構造をもつ水溶性ノニオン性界面活性剤を含むことが可能である。成分(a1)、(a2)及び(a3)以外の、水溶性ノニオン性界面活性剤としては、POEグリセリン脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEソルビトール脂肪酸エステルなどから選ばれる、HLB10以上のものが好ましい。
これらの水溶性ノニオン性界面活性剤は、洗浄力という点では不利に働くため、成分(A)は、成分(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれるHLB13以上のノニオン性界面活性剤の1種以上を50質量%以上含むものである。成分(A)が、成分(a1)、(a2)及び(a3)以外の水溶性ノニオン性界面活性剤を含む場合には、持続性ファンデーションや日焼け止め製剤に対する洗浄力を維持する観点から、成分(A)の水溶性ノニオン性界面活性剤の全体に占める成分(a1)、(a2)及び(a3)の質量割合は、50質量%以上であり、65質量%以上が好ましい。
【0019】
成分(A)の水溶性ノニオン性界面活性剤の含有量は、成分(B)と組み合わせた時の温度安定性の観点から、全組成中に2質量%以上であり、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、使用時のぬるつきのなさや低温(5℃)でスプレー容器から霧状に吐出できる粘度を保つ観点から、全組成中に20質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に、2~20質量%であり、3~15質量%が好ましく、4~10質量%がより好ましい。
【0020】
成分(B)は、(b1)、(b2)及び(b3)から選ばれる1種以上の化合物である。
(b1)フェノキシエタノール、
(b2)メチルパラベン、
(b3)エチルパラベン。
成分(B)の化合物は、一般に防腐剤として使われる成分であるが、成分(A)と組み合わせて用いることにより、被膜形成汚れに対する洗浄力を高める働きをする。
【0021】
成分(B)として、(b1)フェノキシエタノールの含有量は、洗浄力の観点から、全組成中に0.3質量%以上であり、0.4質量%以上が好ましく、皮膚刺激性の観点から、1質量%以下であり、0.8質量%以下が好ましい。(b2)メチルパラベンの含有量は、洗浄力の観点から、全組成中に0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、皮膚刺激性の観点から、0.4質量%以下であり、0.3質量%以下が好ましい。(b3)エチルパラベンの含有量は、洗浄力の観点から、全組成中に0.05質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、皮膚刺激性の観点から、0.2質量%以下である。
【0022】
成分(B)は、本来の防腐効果という観点から、組み合わせて用いるのが好ましく、(b1)と、(b2)及び(b3)から選ばれる1種以上とを組み合わせるのがより好ましい。
成分(B)の合計含有量、(b1)+(b2)+(b3)は、洗浄力を引き出す観点から、全組成中に0.2質量%以上であるのが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、皮膚刺激性の観点から、1質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましい。
また、(b2)及び(b3)の合計量に対する(b1)の質量割合(b1)/((b2)+(b3))は、洗浄力の観点から、0.5以上であるのが好ましく、1以上がより好ましく、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0023】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、曇点を45℃以上に保つという観点から、5以上であり、10以上が好ましい。
【0024】
成分(C)は、(c1)、(c2)及び(c3)から選ばれる1種以上の化合物である。
(c1)1,3-ブチレングリコール、
(c2)ジプロピレングリコール、
(c3)エタノール。
成分(C)の化合物は、しっとり感や清涼感などの使用感調整に使われるものであるが、本発明においては、成分(A)及び(B)の溶解を促進し、曇点を上げる働きを有するものである。
【0025】
また、ふき取って使用する場合、使用後のべたつきのなさという観点から、(c1)又は(c2)に、(c3)エタノールを組み合わせて用いるのが好ましい。(c1)及び(c2)の合計量に対するに(c3)の質量割合(c3)/((c1)+(c2))は、使用後のべたつきを抑える観点から、0.5以上であるのが好ましい。
【0026】
成分(C)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、成分(A)、成分(B)の溶解を促進し、曇点を上げるという観点から、全組成中に3質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、さらにふき取って使用する場合に使用後の肌がべたつかないという観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、7~15質量%がさらに好ましい。
【0027】
成分(D)の水は、成分(A)~(C)の溶剤として働き、また、使用感及び粘度の調整に用いられる。
成分(D)の含有量は、使用中のぬるつきのなさ、ふき取って使った後のべたつきのなさ、スプレー容器に充填して霧状にするための粘度調整の観点から、全組成中に70質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上がより好ましく、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。また、成分(D)の水の含有量は、全組成中に70~95質量%が好ましく、80~90質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗浄力を強化する目的で、さらに、(E)HLB10未満のノニオン性界面活性剤を含有することができる。
成分(E)のHLB10未満のノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、モノグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0029】
成分(E)のノニオン性界面活性剤は、洗浄力を向上させる観点から、HLB8以下の親油性のものが好ましく、オレイン酸、ステアリン酸若しくはイソステアリン酸とグリセリン若しくはジグリセリンのモノエステル、又はオレイルアルコール、ステアリルアルコール若しくはイソステアリルアルコールとグリセリン若しくはジグリセリンのモノエーテル等が挙げられる。また、平均付加モル数1~5のPOE基を有する、POEモノミリスチン酸エステル、POEモノラウリン酸エステル、POEグリセリンモノオレイン酸エステル、POEグリセリンモノステアリン酸エステル、POEグリセリンモノイソステアリン酸エステル等が挙げられ、さらにモノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン等が挙げられる。
中でも、低温安定性を確保する観点から、オレイン酸若しくはイソステアリン酸とグリセリン若しくはジグリセリンのモノエステル、又はオレイルアルコール若しくはイソステアリルアルコールとグリセリン若しくはジグリセリンのモノエーテル、平均付加モル数1~5のPOE基を有する、POEモノラウリン酸エステル又はPOEグリセリンモノオレイン酸エステル若しくはPOEグリセリンモノイソステアリン酸エステル、さらにモノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタンが好適に用いられる。
【0030】
成分(E)は成分(B)と同様に、成分(A)と組み合わせることで、持続性ファンデーションや日焼け止め製剤に対する洗浄力を向上させる働きをするが、親油性であることから、組み合わせによっては会合が進み、系の粘度上昇や曇点の低下を引き起こす場合がある。このため、成分(E)に対する(A)の質量割合(A)/(E)は、5以上であるのが好ましく、6以上がより好ましい。また、成分(A)と成分(E)の合計含有量は、使用時のぬるつきのなさや低温(5℃)でスプレー容器から霧状に吐出できる粘度を保つ観点から、全組成中に20質量%以下か好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0031】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、さらに、前記成分以外に、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分を含有することができる。例えば、上記以外のポリオール、上記以外の界面活性剤;ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;糖(誘導体)やアミノ酸(誘導体)、動植物(タンパク質)誘導体、動植物抽出物等の保湿成分;ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン誘導体;高分子化合物;硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の無機又は有機塩類;酸、アルカリ等のpH調整剤;グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びこれらの誘導体等の抗炎症剤;イソプロピルメチルフェノール等の殺菌剤;防腐剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、ビタミン類、天然色素、タール色素等の着色剤などが挙げられる。
【0032】
本発明の皮膚洗浄剤組成物において、前記成分(A)~(D)を含有する水系液状の組成物は、成分(D)の水以外の成分を測り取り、60℃に加温して攪拌混合後、水を徐々に添加しながら冷却することにより製造することができる。
【0033】
水系液状の組成物の粘度は、スプレー容器に充填し、容器から吐出させて使用するため、幅広い生活温度範囲での使用性を考慮し、スプレー容器から霧状にして吐出させる観点から、5℃における粘度が20mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以下がより好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい。
本発明において、粘度は、B型粘度計(TVB-10M型粘度計、東機産業社製)を用い、100mPa・s未満の粘度は、ロータNo.M1(回転数)60rpmで、測定時間1分間にて測定される。
【0034】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、25℃で透明一液相である。ここで、透明一液相とは、分離のない透明な外観を有することであり、各成分が均一に相互溶解していることを意味している。このような状態であれば、除去ポテンシャルが高くなる。
また、界面活性剤が高次会合構造を形成すると外観が半透明になることがあるが、この場合も1液相と判断する。系が2相に分離した場合、外観は白く濁るかまたは、2層状態となり、上記諸性能を設計通りに得ることは難しくなる。
【0035】
本発明においては、成分(A)~(D)を含有する水系液状の組成物を、スプレー容器に収容し、皮膚に直接吹き付けて使用することにより、狭い面積から広い面積まで自在に、かつ均一にスプレー(塗布)して、洗浄することができる。
【0036】
スプレー容器としては、皮膚洗浄剤組成物を、泡状、霧状、微小な液滴状等に噴射できるものであれば、いずれでも良く、例えば、トリガー式(トリガー式ディスペンサー装置付きの)スプレー容器、ポンプ式(ポンプ式ディスペンサー装置付きの)スプレー容器、エアゾール等が挙げられる。これらのうち、一般消費者の認知度、使い勝手の良さ、経済性、環境適合性等の観点から、トリガー式スプレー容器が好ましい。
スプレー容器は、吐出する液の広がりや、吐出効率の観点から、噴射ノズルの噴口径が0.2~0.5mmであるのが好ましく、0.3~0.45mmがより好ましい。
【0037】
また、スプレー容器は、ミスト吐出型スプレー容器(ミスト容器)であるのが好ましく、対象となる部位に過不足なく塗布するという観点から、1回の吐出量が、0.2~0.7mLであるのが好ましく、0.3~0.6mLがより好ましい。
【0038】
本発明の皮膚洗浄剤組成物を腕に吹き付けて使用することを想定した場合、12cmの距離からひと吹きしたときの液(組成物)の広がりが、直径10cm以下になるのが好ましい。それよりも大きくなった場合、的を外れて飛び散る液の量が多くなり、周りを汚してしまう。また、片腕に使用するのに十分な量を2gとしたとき、吐出回数は、10回以下であるのが好ましい。それ以上になってしまうと、かえって手間感が増す。
また、液を何回も吐出しなければならないような使用状況下では、高速で連続的な吹き付けが行われることが想定される。そのような行動をとった場合、スプレー容器のトリガー又はポンプ部分は中途半端に押されることになる。このような状況を考慮し、素早く(5回吐出を2秒間で行い)吐出したときに(1回あたり)吐出される液量と、本来(1回あたり)吐出されるべき液量の比を吐出効率とすると、その吐出効率は50%以上であるのが好ましい。50%未満ということは、押し圧が高いか、戻りが遅くて、中途半端にしかトリガーを引いていないか、ポンプを押せていないことを意味する。このような挙動は、非効率的であり、ユーザーの使用実感としても重いと感じられ、好ましくない。
【0039】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、スプレー容器に収容され、皮膚に直接吹き付け、ふき取るか又は洗い流して使用することができる。皮膚に直接吹き付けた後、なじませてから、ふき取るか又は洗い流すこともできる。中でも、皮膚洗浄剤組成物をなじませた後、ティッシュペーパーやペーパータオルなどでふき取る方法が、洗浄液を無駄にすることなく、汚れが効果的に除去できる方法なので好ましい。
【0040】
粘度の低い洗浄剤組成物を肌に適用する場合、あらかじめシートやコットンなどの担体に含浸させた状態で使用するのが一般的であるが、その場合、担体自身も液を保持するため実際に汚れに働く液量は低下する。
しかしながら、本発明のように、スプレー容器に収容し、皮膚に直接吹き付けて汚れとなじませてからふき取る方法では、低粘度の液が細かい凹凸の間に入り込みやすく、一方で液が直接汚れに作用するため無駄がない。そしてなじませた後、浮かせた汚れをふき取って取り去ることで高い洗浄性を発揮する。
一方、シートやコットンに含浸させて拭きとる方法は、顔などの面積が一定で、凹凸の大きい構造をもれなく洗浄するために有用な方法であるが、本発明が好ましく適用される場面は、例えばメイクするために指先にとったファンデーションを落とすためであったり、腕や首などボディーの平らで広い面積に塗られた日焼け止めを落とす場面であったりする。従って、同じもので両方の場面に対応する場合、優先されるのは無駄なく効率良く、高い洗浄力が出せることである。その点から、吹き付ける液量を簡単に調整できる使い方が、消費者にとっても有用である。
【0041】
また、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、シートや化粧用コットンにスプレーして含浸させ、皮膚に当て、メイク等をふき取って使用することもできる。
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、皮膚に吹き付けた後、ふき取るか又は洗い流すことにより、皮膚を洗浄することができる。
また、本発明の皮膚洗浄剤組成物を、皮膚に吹き付けた後、なじませてから、ふき取るか又は洗い流すことにより、皮膚を洗浄することができる。
【実施例0042】
実施例A、比較例A
表1に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を製造し、被膜形成性ポリマーを含有するファンデーションA、又は含有しないファンデーションBを用いたときの除去ポテンシャル、使用時のぬるつきのなさ及び外観を評価した。結果を表1に併せて示す。
なお、実施例の表中、各成分の含有量は、アクティブ量を示す。
【0043】
(製造方法)
成分(D)の水以外の成分を測り取り、60℃に加温して攪拌混合した後、水を徐々に添加しながら冷却することにより、皮膚洗浄剤組成物を製造した。
【0044】
(評価方法)
(1)除去ポテンシャル:
7cm×12cmにカットされた白色人工皮革シート(オカモト化成品社製、ラフォーレ白)上の5cm×10cmの範囲に、ファンデーションを0.04~0.05gになるように指で均一に塗布した後、2時間以上乾燥させた。その後、その人工皮革シートを電子天秤上に置き、各皮膚洗浄剤組成物を1.5cm角のコットン片に3滴(0.06~0.07g)垂らし、指1本でコットン片に100g重となるような力をかけながら、ファンデーション塗布面を、直線を描くようにゆっくり2回、裏返して1回ふき取った。
色差計にて、ファンデーション塗布前、ファンデーション塗布後、ふき取り洗浄後のそれぞれの白色人工皮革シートの色差(L,a,b)を3か所分測定し、洗浄除去率を計算して求め、平均値を求めた。
なお、ファンデーションは、被膜形成性ポリマーを含むものとして、レブロンカラーステイメイクアップN、色番370を、含まないものとして、メイベリンフィットミーファンデーション 色番220を用いた。
【0045】
(2)使用時のぬるつきのなさ:
専門パネラー5人により、各皮膚洗浄剤組成物1mLを前腕に広げてゆくときのぬるつきのなさを官能評価し、以下の基準で示した。
5;5人全員がぬるつかない、ややぬるつかないと評価した。
4;5人中4人がぬるつかない、ややぬるつかないと評価した。
3;5人中3人がぬるつかない、ややぬるつかないと評価した。
2;5人中2人がぬるつかない、ややぬるつかないと評価した。
1;5人中1人以下がぬるつかない、ややぬるつかないと評価した。
【0046】
(3)外観:
各皮膚洗浄剤組成物20mLをスクリュー管に入れ、45℃又は50℃の恒温槽に1時間以上放置した後、目視により外観を観察し、以下の基準で示した。
T;透明。
C;白濁又は2層分離。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果より、被膜形成性ポリマーを含むファンデーションAに対して、成分(B)を含有する実施例Aの皮膚洗浄剤組成物は、高い洗浄効果を発揮するのに対し、成分(B)を含有しない比較例Aでは十分な洗浄効果がみられなかった。一方で、被膜形成性ポリマーを含まないファンデーションBでは、両者とも高い洗浄効果を発揮した。
【0049】
実施例1~14、比較例1~8
実施例Aと同様にして、表2~表4に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を製造し、被膜形成性ポリマーを含有するファンデーションAを用いたときの除去ポテンシャル、使用時のぬるつきのなさ及び外観を評価した。結果を表2~表4に併せて示す。
なお、実施例の表中、各成分の含有量は、アクティブ量を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
実施例15(スプレー容器の評価)
表5に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を、実施例Aと同様にして製造し、表6に示すスプレー容器に収容した。各容器から皮膚洗浄剤組成物を吐出させたときのミストの状態(液の広がり、高速吐出時の液量)を評価した。結果を表6に併せて示す。
【0054】
(4)ミストの評価:
液の広がり;新聞紙を貼った壁面に対し、12cm離れた距離からミストを1回噴射して、その直径を測定した。3回測定し、平均値を求めた。
高速吐出時の液量;天秤上に置いたプラスティック容器の中に、2回/秒の高速で5回吐出したときの吐出液量を計測した。3回測定し、平均値を求めた。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
実施例16~19
実施例Aと同様にして、表7に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を製造し、除去ポテンシャル、使用時のぬるつきのなさ及び外観を評価するとともに、5℃粘度を測定し、5℃粘度におけるミストの吐出性を評価した。結果を表7に併せて示す。
【0058】
(5)粘度:
各皮膚洗浄剤組成物を、5℃の恒温槽に一晩放置した後、室温でB型粘度計にて直ちに粘度を測定する。測定は、デジタル式粘度計TVB-M10型(東海産業社製)、スピンドルM1、60rpm、1分で行った。
【0059】
(6)ミストの吐出性:
各皮膚洗浄剤組成物をスプレー容器(トリガー噴霧式ディスペンサーC)に収容し、数回吐出した。そのときに吐出される液の状態を、目視により観察した。
【0060】
【表7】
【0061】
試験例1
表8に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を製造し、スプレー容器(トリガー噴霧式ディスペンサーC)に収容し、被膜形成性ポリマーを含有する日焼け止め製品A、又は含有しない日焼け止め製品Bに対する除去ポテンシャルを評価した。結果について、日焼け止め製品Aを用いた場合を表9に、日焼け止め製品Bを用いた場合を表10に示す
【0062】
(7)日焼け止めの除去ポテンシャル:
7cm×12cmにカットされた黒色人工皮革シート(オカモト化成品社製、ラフォーレ黒)上の5cm×10cmの範囲に日焼け止めを0.05g塗布し、6時間以上乾燥した。
なお、日焼け止めは、被膜形成ポリマーを含有するものとして、花王 ビオレUVキッズピュアミルクSPF50,PA+++(日焼け止め製品A)を、含まないものとして、花王 キュレル デイバリアUVローション(乳液タイプ)SPF50+,PA+++(日焼け止め製品B)を用いた。
この日焼け止め塗布シートに対し、表8で調製した皮膚洗浄剤組成物を、(i)なじませた後ふき取る方法と、(ii)シート(日焼け止め塗布シートとは別のドライ不織布)に含浸してふき取る方法により、除去ポテンシャルを評価した。その際、(ii)で使用するシートには、液を2回分(1mL)、4回分(2mL)、16回(8mL)分吹き付けて評価した。
【0063】
(i)なじませた後ふき取る方法:
皮膚洗浄剤組成物を日焼け止め塗布シートに2回(1g相当)噴霧後、日焼け止め塗布面を6分割して各々を指2本で150~200g重程度の力をかけて、円を描くようにくるくる3回ずつなじませる。その後、塗布面を2分割し、ドライ不織布((ii)と同じもの)で150~200g重で一度ずつふき取って、シート上の液体成分を除去した。
(ii)シートに含浸してふき取る方法:
皮膚洗浄剤組成物を所定回数分、15×20cmにカットした不織布に吹きかけて一晩以上なじませ、含浸シートを作成した。不織布は、コットン/レーヨン/PET=50/30/20からなる坪量45g/mのものを用いた。
日焼け止め塗布面を2分割して、4つ折りにした含浸シートで面を変えながら、それぞれ5回ずつ150~200g重の力で拭き取った。
日焼け止めの残留量を、日焼け止めに含まれるUV散乱剤由来の白さとし、塗布前、塗布後、ふき取り洗浄後の色差(L,a,b値)として測定することで、除去率を計算し、(i)の方法で除去された日焼け止めの除去率を基準としたときの相対値として示した。また、白さの残り具合を目視で観察した。
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
表9は、被膜形成性ポリマーを含有する日焼け止め製品Aを用いた場合の結果である。
実施例15の皮膚洗浄剤組成物を、(i)の方法で評価したときの日焼け止めの除去率を1として、相対的な除去率を測定した。その結果、シートに含浸して拭き取る場合、2回、4回吹き付けたシートでは液の大半がシートに吸収されて働かず、洗浄力的に劣るものであった。同等の洗浄力を得るためには、16回の吹き付けが必要で、非効率的であった。また、見た目評価でも、(i)の方法では白さが目立たなかったのに対し、2回、4回吹き付けたシートによる除去では白さが目立っていた。
一方、比較例9の洗浄液を用いて、(i)の方法で評価した場合も、洗浄率は劣り、白さも目立った。
【0067】
【表10】
【0068】
表10は、被膜形成性ポリマーを含有しない日焼け止め製品Bを用いた場合の結果である。
実施例15の皮膚洗浄剤組成物を、(i)の方法で評価したときの日焼け止めの除去率を1として、相対的な除去率を測定した。その結果、シートに含浸して拭き取る場合、2回、4回、16回吹き付けたシートでいずれも比較的高い除去率を示し、白さも目立たなかった。また、比較例9を(i)の方法で評価した場合も、日焼け止め製品Bは十分除去されることがわかった。すなわち、被膜形成ポリマーを含まない日焼け止めでは、方法や処方の影響を受けなかった。
【0069】
処方例1
実施例Aと同様にして、表11に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を調製し、スプレー容器に収容した。
得られた皮膚洗浄剤組成物は、除去ポテンシャルが高く、温度安定性が良好で、使用後の肌がべたつかないものであり、スプレー容器から皮膚に直接吹き付けて使用することにより、狭い面積から広い面積まで自在に、かつ均一にスプレーして、洗浄することができる。
【0070】
【表11】