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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169797
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】電極埋設部材、および基板保持部材
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/18 20060101AFI20231122BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231122BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H05B3/18
H01L21/68 N
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081128
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】三矢 耕平
【テーマコード(参考)】
3K092
5F131
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB26
3K092QB30
3K092QB74
3K092QB76
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF17
3K092RF27
3K092VV23
5F131AA02
5F131CA02
5F131CA03
5F131CA33
5F131CA42
5F131EA04
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】載置された基板の半径方向に温度分布を設けることができる電極埋設部材および基板保持部材を提供する。
【解決手段】電極埋設部材100であって、セラミックス焼結体により形成された基材10と、前記基材10に埋設されたヒーター電極20と、を備え、前記基材10は、前記基材10の内部に1または複数の空洞30を有し、前記基材10の垂直な断面において、前記空洞30は前記ヒーター電極20が埋設されたヒーター電極層24より前記基材10の上面12に近い位置にあり、前記空洞30は、前記上面12から透視した形状で、円環状の形状を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極埋設部材であって、
セラミックス焼結体により形成された基材と、
前記基材に埋設されたヒーター電極と、を備え、
前記基材は、前記基材の内部に1または複数の空洞を有し、
前記基材の垂直な断面において、前記空洞は前記ヒーター電極が埋設されたヒーター電極層より前記基材の上面に近い位置にあり、
前記空洞は、前記上面から透視した形状で、円環状の形状を含むことを特徴とする電極埋設部材。
【請求項2】
前記基材は、前記基材の内部に複数の空洞を有し、
前記複数の空洞は、前記上面から透視した形状で、同心円状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電極埋設部材。
【請求項3】
前記空洞を前記上面から透視した面積をSi、前記基材の基板載置面の面積をSとしたときに、0.25≦Si/S≦0.7であることを特徴とする請求項1に記載の電極埋設部材。
【請求項4】
前記空洞を前記上面から透視した面積をSi、前記基材の基板載置面の面積をSとしたときに、0.25≦Si/S≦0.7、であることを特徴とする請求項2に記載の電極埋設部材。
【請求項5】
基板保持部材であって、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の電極埋設部材と、
前記基材の下面に接合され、前記電極埋設部材を支持する支持部材と、を備えることを特徴とする基板保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極埋設部材、および基板保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部材として、電極(発熱抵抗体)が埋設されたヒータープレート(電極埋設部材)が用いられてきた。ヒータープレートは、載置した基板を加熱することができる。
【0003】
従来、ヒータープレートに用いられるAlN等のセラミックス基材は、基材の内部で発熱した熱は基材を等方的に伝熱し拡散する。そのため、基材自体は熱伝導率に応じて均熱化し、これに対応して基板も均熱化する傾向にあった。しかし、特定の半導体製造プロセスにおいては、基板の均熱化より基板の半径方向に特定の温度分布を設けることが要求される場合がある。
【0004】
特許文献1は、半導体プロセスにおいて、多様な環境下でウエハ等の精密な均熱制御を実現するセラミックスヒーターを提供することを目的として、セラミックス基材の内部に埋設された複数の発熱抵抗体と、セラミックス基材の表面に形成された被加熱物を載置する載置面と、載置面の反対面側に前記複数の発熱抵抗体の埋設された略平面を貫くように設けられ、発熱抵抗体の作用領域を仕切る少なくとも1つの仕切り溝と、を具備することを特徴とするセラミックスヒーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-251707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、溝によって発熱抵抗体が分離されて配置され、ヒーター電極から発生した熱量は水平方向に拡散は抑制されるものの、セラミックス基材の裏面より載置面方向に深い溝を形成する必要があり、基材自体の強度が低下する。そのため高温下で使用される環境下では、基材の破損リスクが増大する。また、分離されたヒーター電極間の電気的な接続や、基材の下面中央部に設けられたシャフトの内側からの電気的な配線が困難であった。
【0007】
そこで、載置された基板の半径方向に温度分布を設けることができ、かつ、実用性、信頼性の高いヒーターが要望されてきた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、載置された基板の半径方向に温度分布を設けることができる電極埋設部材および基板保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の電極埋設部材は、電極埋設部材であって、セラミックス焼結体により形成された基材と、前記基材に埋設されたヒーター電極と、を備え、前記基材は、前記基材の内部に1または複数の空洞を有し、前記基材の垂直な断面において、前記空洞は前記ヒーター電極が埋設されたヒーター電極層より前記基材の上面に近い位置にあり、前記空洞は、前記上面から透視した形状で、円環状の形状を含むことを特徴としている。
【0010】
このように、断熱領域となる空洞をヒーター電極層より上方に円環状に形成することによって、熱の半径方向の拡散が抑制され、上方に伝熱することになる。その結果、基材表面の半径方向に温度分布が生じるように設計することができ、基板の半径方向に温度分布を設けることが容易になる。また、ヒーター電極の配置位置と、断熱領域を独立して設定できるため、基材の表面温度分布の設計の自由度が増大する。
【0011】
(2)また、本発明の電極埋設部材は、上記(1)に記載の電極埋設部材であって、前記基材は、前記基材の内部に複数の空洞を有し、前記複数の空洞は、前記上面から透視した形状で、同心円状に配置されることを特徴としている。
【0012】
このように、複数の空洞を同心円状に配置することで、基材の表面の温度を半径方向に細かく分布させることができ、基板の半径方向の温度分布を細かく設けることが容易になる。
【0013】
(3)また、本発明の電極埋設部材は、上記(1)に記載の電極埋設部材であって、前記空洞を前記上面から透視した面積をSi、前記基材の基板載置面の面積をSとしたときに、0.25≦Si/S≦0.7であることを特徴としている。
【0014】
このように、空洞を上面から透視した面積Si、基板載置面の面積Sに対して、0.25≦Si/S≦0.7とすることで、基材の強度を維持しつつ、基材の等方的な伝熱を抑制して基材上方向への伝熱を促進させることができる。
【0015】
(4)また、本発明の電極埋設部材は、上記(2)に記載の電極埋設部材であって、前記空洞を前記上面から透視した面積をSi、前記基材の基板載置面の面積をSとしたときに、0.25≦Si/S≦0.7、であることを特徴としている。
【0016】
これにより、基材の強度を維持しつつ、基材の等方的な伝熱を抑制して基材上方向への伝熱を促進させることができる。
【0017】
(5)また、本発明の基板保持部材は、基板保持部材であって、上記(1)から(4)のいずれかに記載の電極埋設部材と、前記基材の下面に接合され、前記電極埋設部材を支持する支持部材と、を備えることを特徴としている。
【0018】
これにより、基材表面の半径方向に温度分布が生じるように設計することができ、基材の表面温度分布の設計の自由度が増した基板保持部材を構成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電極埋設部材および基板保持部材によれば、載置された基板の半径方向に温度分布を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電極埋設部材の一例を示した模式的な断面図である。
図2】実施形態に係る電極埋設部材の上面の一例を示した模式図である。
図3】(a)、(b)、それぞれ図2の上面において基材の基板載置面の面積S、および空洞を上面から透視した面積Siの範囲を示す模式図である。
図4】実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示した模式的な断面図である。
図5】実施形態に係る電極埋設部材の上面の変形例を示した模式図である。
図6】実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示した模式的な断面図である。
図7】実施形態に係る電極埋設部材の上面の変形例を示した模式図である。
図8】実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示した模式的な断面図である。
図9】実施形態に係る基板保持部材の一例を示した模式的な断面図である。
図10】(a)~(d)、それぞれ電極埋設部材の製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
図11】電極埋設部材の製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0022】
[実施形態]
(電極埋設部材の構成)
本発明の実施形態に係る電極埋設部材について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の一例を示した模式的な断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の上面の一例を示した模式図である。図1は、図2のA-A線における断面を示している。本発明の実施形態に係る電極埋設部材100は、基材10、およびヒーター電極20を備えている。
【0023】
基材10は、セラミックス焼結体により形成されている。基材10は略円板状のほか、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。なお、基材10は、空洞30や上面12に形成される凸部等を除いて平板状である。また、基材10は、基材10の中央に向かって凸形状または凹形状であってもよい。基材10の上面12に後述するピン状凸部40が形成されない場合、基材10の上面12は、基板を載置する所定の形状の平面または曲面(基板載置面)を形成する。
【0024】
基材10は、セラミックス焼結体により一体的に形成されることが好ましい。基材10がセラミックス焼結体により一体的に形成されるとは、後述する空洞30の天井部を形成するセラミックス焼結体と空洞30の底部を形成するセラミックス焼結体がセラミックスを含む接合材を用いてもしくは接合材を用いずに接合されていることをいう。これにより、基材10の機械的強度が高くなる。
【0025】
ヒーター電極20は、基材10に埋設されている。ヒーター電極20は、基板(ウエハ)を加熱するために用いられる。図2において、ヒーター電極20は、電極埋設部材100の設計に応じた形状のものが埋設される。
【0026】
基材10は、基材の内部に1または複数の管状の空洞30を有する。基材10の垂直な断面において、空洞30はヒーター電極20が埋設されたヒーター電極層24より基材10の上面12に近い位置にある。空洞30の幅は、1mm以上60mm以下であることが好ましい。空洞30の断面形状は、矩形に限られず、円形、楕円形、半円形、段差付きの形状など、製造可能な形状であればどのようなものでもよい。
【0027】
空洞30は、基材10を上面12から透視した形状で、円環状の形状を含む。空洞30を円環状に形成することで、ヒーター電極20を空洞30の内側と外側に区画することができる。これにより、基材10表面の半径方向に温度分布が生じるように設計することができ、基板の温度分布を空洞30の円の半径方向に設定することができる。図2の点線は、基材10を上面12から透視したときの空洞30の形状を示している。空洞30以外の透視される構造は省略している。
【0028】
空洞30を上面12から透視した面積をSi、基材10の基板載置面の面積をSとしたときに、0.25≦Si/S≦0.7であることが好ましい。これにより、基材10の強度を維持しつつ、基材10の等方的な伝熱を抑制して基材10上方向への伝熱を促進させることができる。
【0029】
図3(a)、(b)は、それぞれ図2の上面において基材10の基板載置面の面積S、および空洞30を上面12から透視した面積Siの範囲を示す模式図である。図1および図2の模式図で表される電極埋設部材100では、SおよびSiは、図3(a)、(b)に示される面積として測定される。なお、空洞30の幅が空洞30の深さ方向に異なる場合、Siは、空洞30を上面12から透視した各部分の最大幅で測定することとする。また、基板載置面が曲面である場合、SおよびSiは、当該曲面に沿った面積として測定することとする。
【0030】
ヒーター電極20は、異なる電力を印加できる複数の領域に分割されることが好ましい。これにより、電極埋設部材100に載置される基板の半径方向の温度分布をよりシャープにすることができる。
【0031】
空洞30の天井部は、上面12からの距離が1mm以上8mm以下であることが好ましい。これにより、基材10の上面12の強度を保つことができる。また、空洞30の上部に他の電極70を埋設することができる。
【0032】
図4は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示した模式的な断面図である。図5は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の上面の変形例を示した模式図である。図4は、図5のB-B線における断面を示している。
【0033】
図4および図5に示されるように、基材10は、基材10の内部に複数の空洞30を有し、空洞30は、基材10を上面12から透視した形状で、同心円状に配置されることが好ましい。これにより、基材10の表面の温度を半径方向に細かく分布させることができ、基板の半径方向の温度分布を細かく設けることが容易になる。同心円状に配置される複数の空洞30は、図4および図5のように2重であってもよいし、3重以上であってもよい。隣接する空洞30の間隙の幅(隣接する空洞30の間隙に存在する基材10の幅)は、2mm以上であることが好ましい。また、隣接する空洞30の間隙の幅は、空洞30の幅の25%以上であることが好ましい。これにより、基材10の内部に空洞30を形成しても、基材10の強度を保つことができる。
【0034】
図6は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示した模式的な断面図である。図7は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の上面の変形例を示した模式図である。図6は、図7のC-C線における断面を示している。
【0035】
図6および図7に示されるように、空洞30は、円環状の空洞30以外に、基材10を上面12から透視した形状で、中心16に配置される円形の空洞30を含んでもよい。これにより、基材10の表面の温度を半径方向に細かく分布させることができ、基板の半径方向の温度分布を細かく設けることが容易になる。
【0036】
空洞30は、円環状に配置された複数の円弧の形状を含んでもよい。空洞30を円弧状に形成することで、円弧の端部の外側に基材10の一部が存在するので、基材10の機械的強度をより高めることができる。また、空洞30は、直線状の形状を含んでもよい。空洞30を直線状に形成することで、ヒーター電極20を直線の両側に区画することができる。これにより、基板の温度分布を直線に垂直方向に設定することができる。円環状の空洞30と円弧状の空洞30を組み合わせて2重以上の同心円状に形成してもよい。また、円弧状の空洞30と直線状の空洞30を組み合わせてもよい。また、円環状の空洞30と円弧状の空洞30と直線状の空洞30を組み合わせてもよい。円環状の空洞30、円弧状の空洞30、および円形の空洞30と直線状の空洞30は、連通していてもよい。
【0037】
図6および図7に示されるように、電極埋設部材100は、ピン状凸部40を備えていてもよい。その場合、ピン状凸部40は、基材10の上面12から上方に突出して複数形成される。ピン状凸部40の形状は、円柱状、角柱状等の柱状、円錐状、角錐状等の錐状、円錐台状、角錐台状等の錐状の上部を切断した形状等から適宜選択される。
【0038】
ピン状凸部40の配置は特に限定されない。既知の形態またはそれに類似する形態であればよく、例えば、図7に示されるような同心円状のほか、正方格子状、三角格子状など規則的な配置であってもよいし、局部的に疎密が生じているような不規則的な配置であってもよい。また、電極埋設部材100の上面12の外周部には、ピン状凸部40を囲むように環状の凸部が配置されていてもよい。
【0039】
基材10にピン状凸部40が形成される場合、複数のピン状凸部の上端は、全体として基板を載置する所定の形状の平面または曲面(基板載置面)を形成する。これによって、複数のピン状凸部40は、基板を支持する。すなわち、複数のピン状凸部の上端により形成される基板載置面が決定される。これにより、複数のピン状凸部の上端と基板とが当接し、基板が支持される。なお、複数のピン状凸部40のうち、上端が基板と当接しないものがあってもよい。これは、そのような凸部があっても、周りのピン状凸部40の配置によっては、基板を支持することが可能だからである。ピン状凸部の上端は、全面が基板と当接していてもよいし、一部のみが基板と当接していてもよい。
【0040】
ピン状凸部40の高さは、10μm以上500μm以下であることが好ましい。なお、ピン状凸部40の高さとは、基材10の上面12からピン状凸部の上端までの距離をいう。ピン状凸部の上端は、所定の大きさの平面になっていることが好ましい。その場合、ピン状凸部の上端の平面の最大径は、100μm以上5mm以下であることが好ましい。ピン状凸部の上端の平面の表面粗さRaは、0.01μm以上1.6μm以下であることが好ましい。
【0041】
図8は、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の変形例を示した模式的な断面図である。図8に示されるように、基材10は、静電吸着用電極または高周波電極(他の電極70)がさらに埋設されることが好ましい。これにより、基板の静電吸着機能や高周波電力によるバイアスの付与など半導体製造プロセスをより高機能なものにすることができる。
【0042】
他の電極70は、空洞30の天井部より基材10の上面12に近い位置に埋設されることが好ましい。これにより、静電吸着用電極または高周波電極の設計の自由度が増加する。図8は、他の電極70が空洞30の天井部より基材10の上面12に近い位置に埋設されている例を示している。
【0043】
電極埋設部材100は、必要に応じて端子50、51や端子穴52を備えていてもよい。また、電極埋設部材100は、図示しないリフトピン孔や、真空チャックとして使用する場合の通気孔等を備えていてもよい。
【0044】
(基板保持部材の構成)
次に、実施形態に係る基板保持部材の構成を説明する。図9は、本発明の実施形態に係る基板保持部材の一例を示した模式的な断面図である。基板保持部材200は、電極埋設部材100と、支持部材110と、を備える。電極埋設部材100の基本的構成は、上記のとおりである。図9の基板保持部材200は、図4の電極埋設部材100を用いた例を示している。
【0045】
支持部材110は、セラミックス焼結体からなり、電極埋設部材100を支持する。これにより、基板保持部材200は、シャフト付ヒーター等に適用される。支持部材110は、電極埋設部材100の下面14(基材の上面12と対向する面)の所定の位置に接合されている。接合は、固相接合であってもよいし、接合材を用いた接合であってもよい。支持部材110は、電極埋設部材100の基材10と同一の主成分を有するセラミックス焼結体で形成されていることが好ましい。
【0046】
[電極埋設部材の製造方法]
次に、本発明の実施形態に係る電極埋設部材の製造方法を説明する。本発明の実施形態に係る電極埋設部材は、例えば、以下に説明する成形体ホットプレス法によって作製された電極埋設部材前駆体を積層し、接合することで作製される。なお、電極埋設部材前駆体の製法は本方法に限られず、例えば、粉末ホットプレス法や従前のグリーンシート積層法等であってもよい。粉末ホットプレス法は、セラミックス原料粉と所定の発熱抵抗体や電極を交互に重ねることにより発熱抵抗体や電極をセラミックスの内部に埋設し、それを1軸ホットプレス焼成する方法である。
【0047】
成形体ホットプレス法による本発明の実施形態に係る電極埋設部材の製造方法は、セラミックス成形体形成工程、セラミックス脱脂体作製工程、積層体形成工程、積層体焼成工程、基材前駆体加工工程、基材前駆体接合工程、基材加工工程を備えている。
【0048】
セラミックス成形体形成工程では、例えば、AlN(窒化アルミニウム)を主成分とするセラミックス原料粉から複数のセラミックス成形体を形成する。必要に応じて焼結助剤が添加されてもよい。例えば、AlNセラミックス原料粉末に焼結助剤のY成分としてY、バインダ、可塑剤、分散剤などの添加剤を適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法等により顆粒(セラミックス原料粉)を造粒する。その後、造粒粉を加圧成形して複数のセラミックス成形体を形成することができる。
【0049】
原料となるセラミックス粉末としては、AlN以外には、例えば、SiC(炭化珪素)、Al(酸化アルミニウム)、Si(窒化珪素)などが用いられる。これらの中でも、熱伝導率の高いAlNを用いることが好ましい。本発明は、熱伝導率の高い材料を使用した場合であっても、設定した方向や基板載置面の領域に伝熱をコントロールできるからである。
【0050】
セラミックス原料粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、セラミックス原料粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。
【0051】
混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。なお、セラミックス成形体を形成する方法は、加圧成形に限らず、例えば、グリーンシート積層、または鋳込み成形であっても適用が可能であり、これらを適宜脱脂、またはさらに仮焼する工程により、セラミックス成形体を製造することができる。
【0052】
セラミックス成形体は、成形後、機械加工により成形体の形状が整えられてもよい。また、セラミックス成形体の片面または両面(他のセラミックス成形体との接合面)に、ヒーター電極や他の電極、ビア、配線等の形状に合わせた形状の溝が形成されてもよい。機械加工は、脱脂後に行なってもよい。
【0053】
セラミックス脱脂体作製工程では、複数のセラミックス成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して複数のセラミックス脱脂体を作製する。
【0054】
セラミックス成形体は、例えば、500℃以上900℃以下の温度で熱処理され、セラミックス脱脂体となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができるが、バインダの有機成分を除去するために、大気炉の方が好ましい。
【0055】
積層体形成工程では、ヒーター電極および必要な場合、他の電極、ビアの材料、配線を準備し、これらと複数のセラミックス脱脂体を組み合わせ、平板状に形成された複数の積層体を形成する。複数の積層体は、例えば、上面に基板載置面を有し、他の電極が埋設された積層体、ヒーター電極が埋設された積層体、配線が埋設された積層体などである。積層体は、1のセラミックス脱脂体からなるものがあってもよい。他の電極、ビアの材料、配線はモリブデンやタングステンなどの箔、薄板、ワイヤー、メッシュまたはこれら材質の多孔体、ペースト充填、印刷により形成される。
【0056】
ヒーター電極は、電極埋設部材の設計に応じた形状に加工されたものを準備する。ヒーター電極の形状は、メッシュ状や箔状など、様々な形状とすることができる。また、材質も、モリブデン、タングステンなど、様々な材質とすることができる。
【0057】
積層体焼成工程では、形成された積層体を、それぞれ積層方向に一軸加圧焼成して基材前駆体を形成する。焼成条件は材質によって異なるが、AlNを主成分とするセラミックスを使用する場合、加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、焼成温度は、1700℃以上2000℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましく、1時間以上5時間以下であることがより好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、それぞれの積層体で1または複数のセラミックス脱脂体が焼結してセラミックス焼結体となり、これらが一体化され、複数の基材前駆体を得ることができる。
【0058】
複数の基材前駆体とは、例えば、空洞の蓋となる基材前駆体、空洞の一部が形成される基材前駆体、他の電極が埋設された基材前駆体、ヒーター電極が埋設された基材前駆体、配線が埋設された基材前駆体などである。図10(a)~(d)、および図11は、それぞれ電極埋設部材の製造工程の一段階を示す模式的な断面図である。図10(a)は、空洞の蓋となる基材前駆体101、空洞の一部が形成される基材前駆体102、ヒーター電極が埋設された基材前駆体103の断面を示している。図10は、3つの基材前駆体を用いて基材を作製しているが、基材前駆体の数は、電極埋設部材の設計に応じて2でも4以上でもよい。
【0059】
基材前駆体加工工程では、複数の基材前駆体に対し、それぞれ必要な加工を行なう。例えば、接合後空洞となる溝の形成をしたり、ビアが配置される位置に穴を設けてビアの材料を充填したりする。図10(b)は、基材前駆体102に接合後空洞となる溝105が形成された断面を示している。図10では、溝105に他の基材前駆体が蓋をすることで空洞が形成されているが、2つの基材前駆体にそれぞれ形成された溝が組み合わさって空洞が形成されてもよい。このような方法によると、様々な形状の空洞を形成することができる。
【0060】
基材前駆体接合工程では、複数の基材前駆体を接合して、基材を作製する。接合は、接合材を用いた接合方法、および接合材を用いない接合方法のいずれかを用いることができる。図10(c)は、接合前の複数の基材前駆体を配置した様子を示している。図10(d)は、接合後の基材を示している。なお、これらの接合方法は、電極埋設部材と支持部材を接合して基板保持部材を作製する方法に適用できる。
【0061】
最初に接合材を用いた接合方法を説明する。まず、接合材を準備し、基材前駆体の接合する側の端面の少なくとも一方に接合材を塗布する。基材前駆体の接合する側の端面は、表面粗さRaを1.6μm以下にすることが好ましく、0.4μm以下に研磨することがより好ましい。塗布する接合材の厚さは、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0062】
次に、複数の基材前駆体を配置し、基板載置面に垂直方向に加圧しつつ加熱する。接合条件は材質によって異なるが、AlNを主成分とするセラミックスを使用する場合、加圧する力は、5kPa以上であることが好ましい。また、加熱温度は、1500℃以上1800℃以下であることが好ましい。加熱時間は、0.5時間以上5時間以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、複数の基材前駆体を接合することができる。
【0063】
接合材は、基材前駆体同士を接合できればどのようなものであってもよい。例えば、基材前駆体をAlNを主成分とするセラミックスで形成した場合、これらと同一の主成分であるAlN粉末にY粉末を少なくとも含む混合粉末のペーストであってもよい。また、AlNを90wt%以上95wt%以下、Yを5wt%以上含み、必要に応じて接合時融液となる温度を調節するためにCaO、MgO、ZrO、SiOを含むペーストであってもよい。
【0064】
次に、接合材を用いない接合方法を説明する。まず、複数の基材前駆体を配置する。基材前駆体の接合する側の端面は、表面粗さRaを0.1μm以下に研磨することが好ましい。次に、基板載置面に垂直方向に加圧しつつ加熱する。接合条件は材質によって異なるが、AlNを主成分とするセラミックスを使用する場合、加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、加熱温度は、1600℃以上2000℃以下であることが好ましい。加熱時間は、0.5時間以上6時間以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、複数の基材前駆体を接合することができる。
【0065】
基材加工工程では、基材の外形の加工をする。また、必要な場合、ピン状凸部等を形成する。また、下面の所定の位置に端子を接続するための端子穴の穿設を行なう。
【0066】
そして、端子穴にロウ材等で端子を接続する。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。図11は、端子を接続した基材の断面を示している。
【0067】
なお、セラミックス脱脂体作製工程と、積層体形成工程との間に、セラミックス仮焼体作製工程を設けてもよい。セラミックス仮焼体作製工程を設ける場合、セラミックス脱脂体を所定の温度で仮焼してセラミックス仮焼体を作製する。これにより、電極埋設部材の寸法精度をより高くすることができる。仮焼条件は材質によって異なるが、AlNを主成分とするセラミックスを使用する場合、仮焼温度は1200℃以上1700℃以下であることが好ましい。仮焼時間は、0.5時間以上12時間以下であることが好ましい。仮焼雰囲気は、窒素や不活性ガス雰囲気であることが好ましいが、真空などの雰囲気であってもよい。仮焼体作製工程を設ける場合、機械加工は仮焼体作製工程の後に行なってもよい。
【0068】
また、上述した方法では、基材前駆体をセラミックス焼結体で形成して、それらを接合して基材としたが、基材前駆体をセラミックス仮焼体で形成して、それらを接合しつつ焼結させて基材を作製してもよい。また、空洞や配線の構造が単純な場合は、セラミックス脱脂体を加工して、積層、焼結して基材を作製することもできる。空洞や配線の構造が複雑な場合や流路を設ける場合、空洞の寸法精度を高くする場合は、セラミックス焼結体を接合する方法のほうが好ましい。
【0069】
このようにして、載置された基板の半径方向に温度分布を設けることができる電極埋設部材を製造することができる。
【0070】
[基板保持部材の製造方法]
次に、実施形態に係る基板保持部材の製造方法を説明する。本発明の実施形態に係る基板保持部材の製造方法は、電極埋設部材準備工程、支持部材成形体形成工程、支持部材脱脂体作製工程、支持部材焼成工程、および接合工程を含む。
【0071】
電極埋設部材準備工程では、上記のように製造された電極埋設部材を準備する。基板保持部材を製造する場合、電極埋設部材の端子穴の穿設は、支持部材との接合工程の後に行なってもよい。また、端子の接続は、支持部材との接合工程の後に行なうことが好ましい。
【0072】
支持部材成形体形成工程では、例えば、AlNを主成分とするセラミックス原料粉から支持部材成形体を形成する。セラミックス原料粉の作製方法や支持部材成形体の成形方法等は、セラミックス成形体形成工程と同じでよい。セラミックス原料粉は、焼結助剤を含まないことが好ましい。
【0073】
支持部材脱脂体作製工程では、支持部材成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して支持部材脱脂体を作製する。支持部材成形体の脱脂条件の数値範囲等は、電極埋設部材の製造方法のセラミックス脱脂体作製工程と同じでよい。なお、支持部材脱脂体作製工程を、セラミックス脱脂体作製工程と同時に行ってもよい。
【0074】
支持部材焼成工程では、支持部材脱脂体を焼成してセラミックス基材を支持する支持部材を焼成する。焼成条件は材質によって異なるが、AlNを主成分とするセラミックスを使用する場合、支持部材の焼成は常圧焼成であることが好ましい。また、焼成温度は、1800℃以上2000℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。
【0075】
接合工程では、電極埋設部材と支持部材とを接合する。接合は、上述した接合方法を用いることができる。
【0076】
電極埋設部材に端子穴を設けていない場合、支持部材との接合後に端子穴を設ける。また、必要な場合、ピン状凸部等を形成する。そして、端子穴にロウ材等で端子を接続する。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。
【0077】
このようにして、載置された基板の半径方向に温度分布を設けることができる基板保持部材を製造することができる。
【0078】
[実施例および比較例]
(実施例1)
実施例1は、図9のような、円環状の空洞が2重の同心円状に形成された基板保持部材である。基材および支持部材の材質は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス焼結体からなる。ヒーター電極は、円弧を基調とした形状に加工したMoメッシュ(線径0.1mm)を用いた。ヒーター電極は、外径がおよそ294mmの範囲に収まる形状とした。
【0079】
円環状の空洞は、半径40mmの円周を中心線とする幅20mmの空洞、および半径110mmの円周を中心線とする幅20mmの空洞を形成した。Si/Sの値は、0.267であった。また、空洞の位置は、空洞の天井部と基材の上面との距離が3mm、空洞の底部と基材の下面との距離が10mmとなるように形成した。
【0080】
上記のヒーター電極が基材に埋設された直径φ300mm、厚さ25mmの略円板状に形成された電極埋設部材となるように、3つの基材前駆体を接合した。また、支持部材を準備した。そして、電極埋設部材と支持部材とを接合した。3つの基材前駆体の接合、および電極埋設部材と支持部材との接合は、接合材を用いずに行なった。
【0081】
ヒーター電極は、下面側から基材に端子挿入のための端子穴を穿設して、Ni製の端子を挿入することによって端子と接続した。
【0082】
実施例2は、円環状の空洞が3重の同心円状に形成された基板保持部材とした。円環状の空洞は、半径37.5mm、半径77.5mm、および半径127.5mmの円周をそれぞれ中心線とする幅15mmの空洞を形成した。それ以外は、実施例1と同様の条件で基板保持部材を作製した。Si/Sの値は、0.323であった。
【0083】
実施例3は、円環状の空洞が6重の同心円状に形成された基板保持部材とした。円環状の空洞は、半径35mm、半径55mm、半径75mm、半径95mm、半径115mm、および半径135mmの円周をそれぞれ中心線とする幅10mmの空洞を形成した。それ以外は、実施例1と同様の条件で基板保持部材を作製した。Si/Sの値は、0.453であった。
【0084】
実施例4は、円環状の空洞が12重の同心円状に形成された基板保持部材とした。円環状の空洞は、円環状の空洞は、半径22.5mm、半径32.5mm、半径42.5mm、半径52.5mm、半径62.5mm、半径72.5mm、半径82.5mm、半径92.5mm、半径102.5mm、半径112.5mm、半径122.5mm、および半径132.5mmの円周をそれぞれ中心線とする幅5mmの空洞を形成した。それ以外は、実施例1と同様の条件で基板保持部材を作製した。Si/Sの値は、0.413であった。
【0085】
実施例5は、円環状の空洞が12重の同心円状に形成された基板保持部材とした。円環状の空洞は、円環状の空洞は、半径24mm、半径34mm、半径44mm、半径54mm、半径64mm、半径74mm、半径84mm、半径94mm、半径104mm、半径114mm、半径124mm、および半径134mmの円周をそれぞれ中心線とする幅8mmの空洞を形成した。それ以外は、実施例1と同様の条件で基板保持部材を作製した。Si/Sの値は、0.674であった。
【0086】
(比較例1)
比較例1は、空洞が形成されなかった以外は、実施例1と同様の条件で基板保持部材を作製した。
【0087】
(基板保持部材の評価方法)
実施例1および比較例1の基板保持部材に基板(シリコンウエハ)を載置し、ヒーター電極に電力を印加することで、基板の半径75mmの位置の温度を400℃に設定し温度制御した。すなわち、半径75mm付近を高温部とし、中心方向および外縁付近に対して温度勾配を設けるような制御を行った。このとき、基板の上空に設置した赤外線カメラを使用して、基板の温度分布を測定した。比較例1において、基板の外縁から5mmを除いたφ290mmの領域における最高温度から最低温度を減算した温度差は2.7℃であって、半径75mmの位置が最大値であり中心方向および外縁に向かって単調に温度減少していた。これに対し、実施例1は、中心からある半径方向に並ぶ直線上の中心付近、内側の空洞の中心線の上面付近、内側の空洞と外側の空洞の間の中間付近、外側の空洞の中心線の上面付近、および外側の空洞より外側の領域の中間付近の温度を測定した。そして、比較例1の全面の温度差よりも大きな温度勾配がつくかどうかを確かめた。
【0088】
(基板保持部材の評価)
実施例1の各部の温度は、順に394.8℃、398.2℃、400.0℃、397.8℃、および395.0℃となっていた。これにより、中心からある半径方向に並ぶ直線上で、比較例1の全面の温度差よりも大きな5.2℃の温度勾配がつけられ、基板の半径方向(半径75mm付近)に高温部を有する温度分布を設けることができることが確かめられた。
【0089】
また、実施例2から5も、半径75mm付近の温度と中心部または外縁部との温度差を測定すると、各々温度差が6.7℃、8.0℃、11.8℃、12.7℃であり、中心からある半径方向に並ぶ直線上で、比較例1の全面の温度差よりも大きな温度勾配がつけられ、基板の半径方向に温度分布を設けることができることが確かめられた。空洞の数が同じ実施例4と5を比較すると、Si/Sの値が大きかった実施例5のほうが温度勾配を大きくすることができた。これは、Si/Sの値が大きくなった結果、空洞が伝熱を抑制する効果が大きくなったものと推定される。
【0090】
また、実施例5のように、隣接する空洞の間の壁が2mmであっても問題なく製造できることが分かった。これにより、Si/Sの値は、0.7程度に大きくすることも可能であることが確かめられた。
【0091】
以上により、本発明の電極埋設部材および基板保持部材は、載置された基板にシャープな温度勾配を設けることができることが確かめられた。
【0092】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0093】
10 基材
12 上面
14 下面
16 中心
20 ヒーター電極
24 ヒーター電極層
30 空洞
40 ピン状凸部
50、51 端子
52 端子穴
70 他の電極
100 電極埋設部材
101、102、103 基材前駆体
105 溝
110 支持部材
200 基板保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11