(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169799
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20231122BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20231122BHJP
【FI】
B32B27/30 A
G02B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081130
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 鍵
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 勇介
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB12
2K009BB14
2K009BB22
2K009BB24
2K009BB28
2K009CC22
2K009CC24
2K009DD02
4F100AH04B
4F100AJ04A
4F100AK02A
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK42A
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4F100GB41
4F100JA07B
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4F100JL04
4F100JN01A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】高屈曲性と高硬度とを有し、カールが低減された光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層を有する光学フィルムであって、ハードコート層が、(A)1分子中に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(B)1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が15000~50000である(メタ)アクリルポリマーと、(C)チオール化合物とを含有する組成物の硬化膜であり、組成物の全固形分のうち、(メタ)アクリルモノマーの含有割合が60~85質量%であり、(メタ)アクリルポリマーの含有割合が5~35質量%であり、チオール化合物の含有割合が0.5~9質量%であり、ハードコート層の膜厚が3~20μmである、光学フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層を有する光学フィルムであって、
前記ハードコート層が、(A)1分子中に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(B)1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が15000~50000である(メタ)アクリルポリマーと、(C)チオール化合物とを含有する組成物の硬化膜であり、
前記組成物の全固形分のうち、前記(メタ)アクリルモノマーの含有割合が60~85質量%であり、前記(メタ)アクリルポリマーの含有割合が5~35質量%であり、前記チオール化合物の含有割合が0.5~9質量%であり、
前記ハードコート層の膜厚が3~20μmである、光学フィルム。
【請求項2】
前記チオール化合物が、一分子中に2以上のメルカプト基を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記透明基材が、トリアセチルセルロース、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリイミド及びポリアミドのいずれかよりなる、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記透明基材が、トリアセチルセルロース、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリイミド及びポリアミドのいずれかよりなる、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルムを備える画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置には、樹脂フィルム上にハードコート層を設けた光学フィルムが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明基材の片面または両面に、(メタ)アクリレート末端基を有するデンドリマー化合物、(メタ)アクリレート末端基を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン化合物、光開始剤及び溶剤を含む組成物を用いてコーティング層を形成したハードコーティングフィルムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマー、アクリレート系弾性高分子及び光開始剤を含有する樹脂組成物を硬化させて形成した偏光子保護フィルムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル基が修飾されたコロイダルシリカ、多官能チオール化合物及び光重合性開始剤を含有する紫外線硬化型ハードコート剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7002895号公報
【特許文献2】特許第6455993号公報
【特許文献3】特開2016-11365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、表示画面の大型化と機器サイズの小型化とを両立するため、画像表示装置を折り畳み可能に構成した携帯端末が開発されている。折り畳み可能な画像表示装置に用いる光学フィルムには、硬度が高いことに加え、高い屈曲性が求められる。しかしながら、一般的に、硬度と屈曲性はトレードオフの関係にあり、高硬度材料ほど屈曲性が劣るという問題があった。
【0008】
また、樹脂フィルム上にアクリル系樹脂の硬化層を設けた光学フィルムには、硬化時の収縮によりカールが発生する。光学フィルムのカールは高硬度アクリル系材料を使用した場合に強く現れる。高硬度アクリル系材料の一部を低カール性アクリル系材料に置換することも考えられるが、この場合、カールは抑制されるが、硬度が低下するという問題があった。
【0009】
それ故に、本発明は、高屈曲性と高硬度とを有し、カールが低減された光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光学フィルムは、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層を有し、ハードコート層が、(A)1分子中に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(B)1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が15000~50000である(メタ)アクリルポリマーと、(C)チオール化合物とを含有する組成物の硬化膜であり、組成物の全固形分のうち、(メタ)アクリルモノマーの含有割合が60~85質量%であり、(メタ)アクリルポリマーの含有割合が5~35質量%であり、チオール化合物の含有割合が0.5~9質量%であり、ハードコート層の膜厚が3~20μmであるものである。
【0011】
本発明に係る画像表示装置は、上記の光学フィルムを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高屈曲性と高硬度とを有し、カールが低減された光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る光学フィルムの概略構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。同様に、「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの両方の総称である。
【0015】
図1は、実施形態に係る光学フィルムの概略構成を示す断面図である。
【0016】
光学フィルム1は、透明基材2と、透明基材2の一方の面に積層されたハードコート層3とを備える。
【0017】
透明基材2は、光学フィルムの基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れる材料により形成される。透明基材の形成材料としては、トリアセチルセルロース、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリイミド及びポリアミド等を利用できる。透明基材2の厚みは特に限定されないが、例えば、10~200μmであることが好ましい。
【0018】
透明基材2の表面には、他の層との密着性を向上させるために、表面改質処理を施しても良い。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0019】
ハードコート層3は、光学フィルム1に硬度を付与する層である。ハードコート層3は、(A)1分子中に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(B)1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が15000~50000である(メタ)アクリルポリマーと、(C)チオール化合物とを所定の割合で含有する組成物を透明基材2に塗布し、硬化させることによって形成することができる。ハードコート層3の膜厚は、3~20μmであることが好ましい。ハードコート層3の膜厚が3μm未満の場合、ハードコート層3の硬度が不足するため好ましくない。一方、ハードコート層3の厚みが30μmを超える場合、光学フィルム1の屈曲性が低下すると共に、硬化時の収縮によるカールが大きくなるため好ましくない。
【0020】
(A)(メタ)アクリルモノマー
(メタ)アクリルモノマーは、主として、ハードコート層に硬度を付与する成分である。(メタ)アクリルモノマーとしては、1分子中に3以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を使用する。2官能以下の(メタ)アクリルモノマーを使用した場合、硬度が十分に発現しない。3官能以上の(メタ)アクリルモノマーの配合割合は、ハードコート層形成用組成物の固形分の60~90質量%とする。3官能以上の(メタ)アクリルモノマーの配合割合が、60質量%未満の場合、ハードコート層の硬度が十分に発現しない可能性がある。一方、3官能以上の(メタ)アクリルモノマーの配合割合が90%を超える場合、カールが強く現れると共に屈曲性が悪化する。
【0021】
3官能以上の(メタ)アクリルモノマーの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0022】
また、(メタ)アクリルモノマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリルモノマーとして、上述した化合物のいずれか1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
(メタ)アクリルモノマーの具体例として、例えば、共栄社化学製のライトアクリレートPE-3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、ライトアクリレートTMP-A(トリメチロールプロパントリアクリレート)、ライトアクリレートDPE-6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を使用することができる。
【0026】
(B)(メタ)アクリルポリマー
(メタ)アクリルポリマーは、主として、低カール性と屈曲性を付与する成分である。(メタ)アクリルポリマーとしては、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が15000~50000である化合物を使用することができる。2官能以上の(メタ)アクリルポリマーは、相互に絡み合ってネットワークを形成する。この(メタ)アクリルポリマーのネットワークがバインダーの骨格となることにより、カールを抑制し、屈曲性を向上させることができる。また、(メタ)アクリルポリマーのネットワークの隙間には、上述した(メタ)アクリルモノマーが入り込み、ポリマー間を架橋する。この結果、重合密度が高まり、硬度が向上する。(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量が15000未満の場合、(メタ)アクリルポリマーが上述したネットワークを十分に構成できず、カール抑止能と屈曲性が低下するため好ましくない。一方、(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量が50000を超える場合、ハードコート層形成用組成物の相溶性が悪化するため好ましくない。
【0027】
2官能以上の(メタ)アクリルポリマーの配合割合は、ハードコート層形成用組成物の固形分の5~35質量%とする。2官能以上の(メタ)アクリルポリマーの配合割合が5質量%未満の場合、十分な低カール性と屈曲性が得られなくなるため好ましくない。一方、2官能以上の(メタ)アクリルポリマーの配合割合が35質量%を超える場合、ハードコート層の硬度が低下するため好ましくない。
【0028】
(メタ)アクリルポリマーとして、例えば、側鎖に(メタ)アクリロイルと水酸基を有する、共栄社化学製のSMP-250AP(アクリル当量:240~260g/eq、重量平均分子量:20000~30000)、SMP-360AP(アクリル当量:350~370g/eq、重量平均分子量:20000~30000)、SMP-550AP(アクリル当量:540~560g/eq、重量平均分子量:20000~30000)を使用することができる。
【0029】
(C)チオール化合物
チオール化合物は、硬化助剤として働く成分である。チオール化合物の配合割合は、ハードコート層形成用組成物の固形分の0.5~9質量%とする。チオール化合物は、比較的少量の添加により、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーの硬化性を高め、ハードコート層の硬度を向上させることができる。チオール化合物は、特に(メタ)アクリルモノマーの硬化性を向上させる。
【0030】
また、チオール化合物の添加により、バインダーマトリックス内にメルカプト基が導入されるため、低カール性及び屈曲性を向上させる。低カール性及び屈曲性を向上させるため、チオール化合物として、一分子中に2以上のメルカプト基を有する化合物を使用することが好ましい。
【0031】
チオール化合物の配合割合が0.5質量%未満の場合、配合割合が少ないことにより、低カール性と屈曲性の向上効果が小さくなるため好ましくない。また、チオール化合物の配合割合が少ない場合、硬化助剤としての機能が不十分となる。一方、チオール化合物の配合割合が9質量%を超える場合、低カール性及び屈曲性は更に良化するが、ハードコート層の硬度が著しく低下するため好ましくない。
【0032】
チオール化合物の具体例として、例えば、昭和電工製のカレンズMT(登録商標)BD-1(1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン)やカレンズMT(登録商標)PE-1(ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート))を使用することができる。
【0033】
(D)光重合開始剤
ハードコート層形成用組成物には、紫外線による重合硬化を可能とするため、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤を好適に使用することができる。例えば、光重合開始剤として、2,2-エトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-フェニルアセトフェノン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用して良い。市販されている光重合開始剤として、例えば、IGM RESIN製のOmnirad 184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)やOmnirad 651(2,2-ジメトキシ-フェニルアセトフェノン)を使用することができる。光重合開始剤の配合割合は、ハードコート層形成用組成物の固形分の0.1~10.0質量%であることが好ましい。
【0034】
(E)レベリング剤
ハードコート層形成用組成物の塗膜の面性を向上させるために、レベリング剤を配合しても良い。レベリング剤の配合割合は、ハードコート層形成用組成物の固形分の0.05~5.0質量%であることが好ましい。レベリング剤として使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば、信越化学工業製 KY-1203を使用することができる。
【0035】
尚、ハードコート層形成用組成物には、適宜溶剤を添加しても良い。溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、水等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0036】
その他、必要に応じて、ハードコート層形成用組成物に、上述した以外のモノマーやオリゴマー、ポリマー、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等の各種添加剤を配合しても良い。
【0037】
本実施形態に係る光学フィルム1は、液晶パネルや有機ELパネル等の画像表示パネルの最表面に貼合して画像表示装置を構成するのに利用することができる。光学フィルム1と画像表示パネルとの間にタッチパネルが設けられても良い。また、光学フィルム1は、画像表示装置が備える偏光板の保護フィルムとして利用することもできる。本実施形態に係る光学フィルム1は、硬度及び屈曲性に優れるため、折り畳み型の画像表示装置を備えた携帯端末に好適である。また、本実施形態に係る光学フィルム1は、カールが抑制されているため、画像表示装置の製造時における加工性に優れる。
【0038】
尚、上記の実施形態では、透明基材2の一方面上にハードコート層3を積層したハードコートフィルムを例として説明したが、透明基材2の両面にハードコート層3を積層した光学フィルムを構成しても良い。また、透明基材2上に、ハードコート層3に加えて、防眩層、低反射層、高屈折率層、中屈折率層、帯電防止層、電磁波遮断層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層、防汚層等の機能層が1層以上積層された光学フィルムを構成することもできる。
【実施例0039】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0040】
実施例及び比較例で使用した材料は次の通りである。
【0041】
(A)(メタ)アクリルモノマー
(A-1)ライトアクリレートPE-3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、共栄社化学株式会社
(A-2)ライトアクリレート3EG-A(トリエチレングリコールジアクリレート)、共栄社化学株式会社
【0042】
(B)(メタ)アクリルポリマー
(B-1)SMP-250AP、重量平均分子量20000~30000、共栄社化学株式会社
(B-2)ライトアクリレート9EG-A(PEG400#ジアクリレート)、重量平均分子量1000以下、共栄社化学株式会社
(B-3)ウレタンアクリレートBPZA-66、重量平均分子量約100000、共栄社化学株式会社
【0043】
(C)チオール化合物
カレンズMT(登録商標)PE-1(ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート))、昭和電工株式会社
【0044】
(D)光重合開始剤
Omnirad 184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、IGM RESIN社
【0045】
(E)レベリング剤
KY-1203、信越化学工業株式会社
【0046】
ポリイミド基材(厚み50μm)の表面に、表1に記載の組成のハードコート層形成用組成物をバーコート法により塗布して乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて照射線量200mJ/m2で紫外線を照射して塗膜を硬化させ、各実施例及び各比較例に係る光学フィルムを得た。尚、ハードコート層形成用組成物は、全体の固形分濃度が40質量%となるようにメチルイソブチルケトンで希釈した。また、ハードコート層形成用組成物の塗工量は、硬化後の膜厚が表1に記載の値となるように調節した。
【0047】
各実施例及び各比較例に係る光学フィルムを用いて、下記方法により、鉛筆硬度、カール及び屈曲性を評価した。
【0048】
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、JIS K5400-1900に準拠して測定した。鉛筆(uni、三菱鉛筆株式会社製)及びクレメンス型引掻き試験機(HA-301、テスター産業株式会社製)を用いて、ハードコート層表面の鉛筆硬度を測定した。鉛筆の硬度を変えながら繰り返し試験を行って、キズによる外観の変化を目視で観察し、キズが観察されない最大の硬度を評価値とした。評価基準は次の通りである。
◎:6H以上
〇:5H
△:4H
×:3H以下
【0049】
<カール>
作製した光学フィルムを100mm角の正方形に切り出したサンプルを作製し、このサンプルを平面上に載置して、平面から4隅の先端までの垂直距離をmm単位で測定し、4隅の測定値の平均を評価値とした。この評価値が小さいほどカールが小さいことを意味する。評価基準は次の通りである。
◎:10mm以下
〇:10mm超、かつ、20mm以下
△:20mm超、かつ、35mm以下
×:35mm超
【0050】
<屈曲性>
作製した光学フィルムを30mm幅に切り出したサンプルを作製し、このサンプルのハードコート層が外側になるように、クラムシェル型屈曲試験機(DR11MR-CS-t、ユアサシステム機器株式会社製)に固定して、20万回繰り返し折り曲げ試験を行った。20万回繰り返し折り曲げ試験可能なmm単位の屈曲直径を下記基準で判定した。
◎:5mm以下
〇:5mm超、かつ、10mm以下
△:10m超、かつ、15mm以下、
×:15mm超
【0051】
表1に、実施例及び比較例に係るハードコート層形性用組成物の組成と、鉛筆硬度、カール及び屈曲性の評価結果を示す。
【0052】
【0053】
表1に示すように、実施例1~6に係る光学フィルムは、鉛筆硬度、カール及び屈曲性のいずれも○以上の評価であり、鉛筆硬度、カール及び屈曲性の全てが良好であった。
【0054】
比較例1に係る光学フィルムは、(メタ)アクリルモノマーの配合割合が少ないことにより、鉛筆硬度が低くなった。
【0055】
比較例2に係る光学フィルムは、(メタ)アクリルモノマーの配合割合が多いことにより、カールが大きくなり、屈曲性が低くなった。
【0056】
比較例3に係る光学フィルムは、チオール化合物の配合割合が多いことにより、鉛筆硬度が低くなった。
【0057】
比較例4に係る光学フィルムは、(メタ)アクリルポリマー及びチオール化合物が配合されていないことにより、カールが大きくなり、屈曲性が低くなった。
【0058】
比較例5に係る光学フィルムは、(メタ)アクリルモノマーが配合されていないことにより、鉛筆硬度が低くなった。
【0059】
比較例6及び7に係る光学フィルムは、(メタ)アクリルポリマーが配合されていないことにより、カールが大きくなり、屈曲性が低くなった。
【0060】
比較例8に係る光学フィルムは、チオール化合物が配合されていないハードコート層形成用組成物を用いてハードコート層を形成したものである。比較例8と実施例4((メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーの配合割合がほぼ同じ)との対比からわかるように、ハードコート層形成用組成物にチオール化合物が添加されていないことにより、カールが大きくなり、屈曲性が低くなった。また、比較例8における(メタ)アクリルモノマーの配合割合は、実施例4よりも多いが、ハードコート層形成用組成物に硬化助剤として働くチオール化合物が添加されていないために、実施例4と比べて鉛筆硬度が低下した。
【0061】
比較例9に係る光学フィルムは、チオール化合物が配合されていないハードコート層形成用組成物を用いてハードコート層を形成したものである。比較例9と実施例1((メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーの配合割合がほぼ同じ)との対比からわかるように、ハードコート層形成用組成物に硬化助剤として働くチオール化合物が添加されていないことにより、実施例1と比べて鉛筆硬度が低下した。尚、比較例9において、カール及び屈曲性の評価が「○」であるのは、硬度と引き換えにカール及び屈曲性を悪化させる(メタ)アクリルモノマーの配合量が実施例1とほぼ同量であり、比較例8よりも少ないためである。
【0062】
比較例10に係る光学フィルムは、2官能の(メタ)アクリルモノマーを使用したことにより、鉛筆硬度が低くなった。
【0063】
比較例11に係る光学フィルムは、(メタ)アクリルポリマーの代わりに低分子量の重合性化合物を使用したことにより、カールが大きくなり、屈曲性が低くなった。これは、ハードコート層形成用組成物に長鎖の(メタ)アクリルポリマーが配合されていないために、骨格となるポリマーのネットワークが形成されなかったためと考えられる。
【0064】
比較例12に係る光学フィルムは、(メタ)アクリルポリマーとして分子量が10万の重合性化合物を使用したことにより、鉛筆硬度が低くなった。これは、使用した(メタ)アクリルポリマーの分子量が大きすぎることにより、ハードコート層形成用組成物の相溶性が悪化し、各成分の偏りが生じたからであると考えられる。
【0065】
比較例13に係る光学フィルムは、ハードコート層の膜厚が薄いことにより、鉛筆硬度が低下した。
【0066】
比較例14に係る光学フィルムは、ハードコート層の膜厚が厚いことにより、カールが大きくなり、屈曲性が低くなった。