(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169801
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送制御システム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20231122BHJP
B65G 1/10 20060101ALI20231122BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
B65G1/10 Z
B65G1/137 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081133
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 久
(72)【発明者】
【氏名】松本 一宏
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 省吾
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022CC03
3F022FF21
3F022JJ11
3F022LL07
3F022MM08
3F022MM21
3F022MM51
3F022NN12
3F022NN38
3F022NN51
3F022NN55
3F022PP02
3F022PP06
3F022QQ03
3F022QQ04
3F022QQ17
3F522AA02
3F522BB25
3F522BB35
3F522CC01
3F522FF03
3F522FF04
3F522FF12
3F522FF14
3F522FF37
3F522GG24
3F522GG32
3F522GG46
3F522JJ02
3F522KK02
3F522KK05
3F522LL41
3F522LL51
3F522LL62
(57)【要約】
【課題】搬送装置を長寿命化する。
【解決手段】搬送対象物を搬送する搬送装置であって、所定の演算処理を実行する演算装置と、前記演算処理に使用されるデータを記憶する記憶装置とを有する制御部と、前記搬送装置の天面に設けられ、前記搬送対象物を積載する積載部と、前記積載部を回転可能に支持する1以上の支持部と、前記搬送対象物の底面の形状に関する情報を取得するセンサとを備え、前記制御部は、前記センサによる前記搬送対象物の底面の形状に関する情報に基づいて、前記積載部の回転を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する搬送装置であって、
所定の演算処理を実行する演算装置と、前記演算処理に使用されるデータを記憶する記憶装置とを有する制御部と、
前記搬送対象物を積載する積載部と、
前記積載部を回転可能に支持する1以上の支持部と、
前記搬送対象物の底面の形状に関する情報を取得するセンサとを備え、
前記制御部は、前記センサによる前記搬送対象物の底面の形状に関する情報に基づいて、前記積載部の回転を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記制御部は、前記取得した搬送対象物の底面の形状に関する情報と前記支持部の位置とに基づいて前記積載部の回転を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置であって、
前記搬送対象物は、その底面に1以上の梁を有し、
前記搬送対象物の形状に関する情報は、前記梁の位置の情報を含み、
前記制御部は、前記梁の位置が前記支持部の位置とは重ならないように前記積載部を回転し、前記梁を前記積載部に積載することを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の搬送装置であって、
前記搬送対象物は、その底面に1以上の梁を有し、
前記搬送対象物の形状に関する情報は、前記梁の位置の情報を含み、
前記制御部は、前記梁の位置が前記支持部の位置と重なるように前記積載部を回転し、前記梁を前記積載部に積載することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項2に記載の搬送装置であって、
前記搬送対象物は、その底面に1以上の梁を有し、
前記搬送対象物の底面の形状に関する情報は、前記梁の位置の情報を含み、
前記制御部は、少なくとも一つの前記梁が前記支持部に支持されるように、前記積載部を回転し、前記梁を前記積載部に積載することを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項3に記載の搬送装置であって、
前記積載部と前記梁は複数箇所で接触しており、
前記制御部は、積載位置の候補を複数探索し、最も多くの支持部に梁が支持されるように、前記積載部を回転し、前記搬送対象物の積載位置を決定することを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記支持部は、前記積載部を回転可能に支持するベアリング機構であることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記搬送対象物は、その底面に1以上の鋼製の梁を有し、
前記センサは、前記梁の接近を検出する磁気センサであることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送装置であって、
前記センサは前記支持部と同一径上に設けられることを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項8に記載の搬送装置であって、
前記制御部は、前記積載部を回転して、前記センサの出力信号によって前記梁の位置情報を取得することを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記搬送対象物は、その底面に1以上のマーカを有し、
前記センサは、前記マーカを検出する撮影装置であることを特徴とする搬送装置。
【請求項12】
搬送制御システムであって、
搬送対象物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の移動を制御する搬送制御装置とを備え、
前記搬送装置は、
所定の演算処理を実行する演算装置と、前記演算処理に使用されるデータを記憶する記憶装置とを有する制御部と、
前記搬送装置の天面に設けられ、前記搬送対象物を積載する積載部と、
前記積載部を回転可能に支持する1以上の支持部と、
前記搬送対象物の底面の形状に関する情報を取得するセンサとを有し、
前記制御部は、前記搬送制御装置からの指示によって前記搬送対象物の下に到達すると、前記センサが取得した前記搬送対象物の底面の形状に関する情報を用いて、前記積載部の回転を制御することを特徴とする搬送制御システム。
【請求項13】
搬送対象物を搬送する搬送装置が実行する制御方法であって、
前記搬送装置は、
所定の演算処理を実行する演算装置と、前記演算処理に使用されるデータを記憶する記憶装置とを有する制御部と、
前記搬送装置の天面に設けられ、前記搬送対象物を積載する積載部と、
前記積載部を回転可能に支持する1以上の支持部と、
前記搬送対象物の底面の形状に関する情報を取得するセンサとを有し、
前記制御方法は、
前記センサが、前記搬送対象物の底面の形状に関する情報を取得し、
前記制御部が、前記取得した底面の形状に関する情報を用いて前記積載部の回転を制御することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流センタで用いられる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イーコマースの物流センタでは、ネットワークを経由した物品オーダに応じて、倉庫から商品を取り出すイベントが発生する。物品の取り出しに用いられる物流機器の一つに、棚搬送無人搬送装置(AGV)がある。物品の取り出しイベントに基づき、物品が収容された棚をAGVが搬送する。棚は物品を取り出す作業員が待機する作業場(ピッキングステーション)まで移動し、作業員がオーダされた物品を取り出す。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2020-083548号公報)には、保管棚を持ち上げて保管エリア及び仕分棚搬送エリアを移動する搬送車が記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平10-113848号公報)には、被加工物等を設置するテーブルを主軸の回りの所定の位置に回動させる回転位置決め装置であって,基台に立設した主軸と,外周にピニオンを形成し上記主軸の回りに回動自在に嵌着したピニオン軸と,被加工物等を設置するテーブルと,上記ピニオン軸とテーブルとの間を着脱自在に連結する第1の噛合部材と,上記基台とテーブルとの間を着脱自在に連結する第2の噛合部材と,上記第1,第2噛合部材を作動させる連結駆動手段と,上記ピニオン軸の両側に互いに対向するように配置され上記ピニオンに噛合する第1,第2の駆動歯車と,上記駆動歯車の駆動手段と,上記連結駆動手段及び駆動歯車の駆動手段を操作する制御手段とを有しており,上記制御手段は,第1噛合部材または第2噛合部材のいずれか一方のみが作動するよう制御すると共に上記ピニオンを同一方向に駆動するよう上記第1,第2駆動歯車を駆動制御し,テーブルを回転させる場合には,第2噛合部材の噛合を解除したのち第1噛合部材を噛合させ,第1,第2駆動歯車を駆動して所望の位置にテーブルを回転させ,その後第1噛合部材の噛合を解除して第2噛合部材を噛合させることを特徴とするテーブルの回転位置決め装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-083548号公報
【特許文献2】特開平10-113848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送装置に棚を積載する場合、回転テーブルを支持する支持部材に荷重が集中すると、当該支持部材が早期に劣化する。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、回転テーブルを支持する支持部材の劣化を抑制し、搬送装置を長寿命化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、搬送対象物を搬送する搬送装置であって、所定の演算処理を実行する演算装置と、前記演算処理に使用されるデータを記憶する記憶装置とを有する制御部と、前記搬送装置の天面に設けられ、前記搬送対象物を積載する積載部と、前記積載部を回転可能に支持する1以上の支持部と、前記搬送対象物の底面の形状に関する情報を取得するセンサとを備え、前記制御部は、前記センサによる前記搬送対象物の底面の形状に関する情報に基づいて、前記積載部の回転を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、支持部の劣化を抑制できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1の搬送装置の構成を示す図である。
【
図2】実施例1の搬送装置と棚を示す斜視図である。
【
図3】実施例1の搬送装置の移動パターンの一例を示す図である。
【
図5】実施例1の天板を外した搬送装置の上面図である。
【
図6】実施例1の上リングを外した搬送装置の上面図である。
【
図7】実施例1の下リングを外した搬送装置の上面図である。
【
図11】実施例1の棚を搬送装置に積載した状態を示す図である。
【
図12】実施例1の棚を搬送装置に積載した状態を示す図である。
【
図14】実施例1の棚を搬送装置に積載した状態を示す図である。
【
図15】実施例1の搬送装置が棚を積載する処理のフローチャートである。
【
図16】実施例2の搬送装置の構成を示す図である。
【
図17】実施例2の上リングを取り外した搬送装置の上面図である。
【
図18】実施例2の搬送装置が棚を積載する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施例1>
図1は本発明の実施例の搬送装置1の構成を示す図であり、
図2は搬送装置1と棚8を示す斜視図である。
【0012】
図2に示すように、搬送装置1は、直進及び旋回可能な直方体の台車31と、台車31の上面に配置されて昇降可能かつ回転可能なテーブル32を有する自動走行装置である。搬送装置1は、例えば無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)でもよいし、自律移動ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)でもよい。なお、台車31の前進方向の辺には、衝突時の衝撃を緩和するバンパ35が配置されるとよい。
【0013】
搬送装置1が搬送する搬送対象物である棚8は、側面に一対の開口部を有する直方体で構成され、床面から所定の高さで脚部81によって支持された底板82と、物品を載置する1以上の棚板83を有する。棚板83には積み荷(物品又は商品)89が積載される。底板82の下部には搬送装置1が入り込む空間が設けられる。底板82には梁86が設けられて、梁86が棚8の構造を支えている。棚8の構造の詳細は、
図9、
図10、
図13を参照して後述する。
【0014】
搬送装置1は、テーブル32の天板32Dを下降した状態で棚8の底板82の下方に台車31を移動した後、テーブル32の天板32Dを上昇して棚8を持ち上げる。搬送装置1は、テーブル32で棚8を持ち上げた状態で台車31を走行して、棚8を搬送する。搬送対象物として、棚8を例示するが、棚8以外の搬送対象物でもよい。
【0015】
搬送装置1は、天板32Dを台車31に対して回転可能であり、台車31の旋回時に天板32Dを台車31の旋回方向と逆に回転して、棚8の向きを維持して台車31の進行方向を変更できる。
【0016】
図2に示す例では、棚8が二つの開口面を有しているので、テーブル32の天板32Dを180°回転すると、異なる開口部をピッキングステーションに提供できる。なお、棚8の構成は、図示の例に限定されるものではなく、4面の開口部を設けたり、ハンガーを設置した箱やパレット等で、テーブル32が持ち上げ可能な底板82を有せばよい。
【0017】
テーブル32は、
図4から
図8に示すように、上リング32A、下リング32C、上リング32Aの上に取り付けられる天板32D、及び上リング32Aと下リング32Cとの間に転がりベアリング32Bを有する。転がりベアリング32Bは上リング32Aに取り付けられている。転がりベアリング32Bは、転がり要素の転動体であり、例えばスラストベアリングも用いることができる。
【0018】
下リング32Cの特定の位置には接近センサ37が設けられる(
図6参照)。接近センサ37は、例えば磁気センサであり、棚8の鋼製の梁86を検出する。接近センサ37の検出結果によって、棚8の積載位置が調整される。
【0019】
搬送装置1は、テーブル32の天板32Dを回転するテーブル回転サーボモータ38Aと、天板32Dを上昇し下降するテーブル昇降サーボモータ38Bを有する。テーブル回転サーボモータ38Aは、駆動力を発生して天板32Dを回転させるモータと、モータの回転量(すなわち天板32Dの水平方向の回転角)を検出するエンコーダを有する。テーブル昇降サーボモータ38Bは、駆動力を発生して天板32Dの高さを変更するモータと、モータの回転量(すなわち天板32Dの垂直方向の移動量)を検出するエンコーダを有する。
【0020】
搬送装置1は、制御装置2を有する。制御装置2は、テーブル32の天板32Dの回転及び昇降を制御する機能部であり、テーブル回転チャンネル210、テーブル昇降チャンネル211、テーブル回転位置決定部212、テーブル回転動作発生部213及びテーブル昇降動作発生部214を有する。
【0021】
テーブル回転チャンネル210は、テーブル回転サーボモータ38Aのエンコーダが出力した信号を受信して、テーブル回転位置決定部212に送信するインターフェースである。テーブル昇降チャンネル211は、テーブル昇降サーボモータ38Bが出力した信号を受信して、テーブル回転位置決定部212に送信するインターフェースである。テーブル回転位置決定部212は、テーブル回転サーボモータ38Aのエンコーダの出力信号及びテーブル昇降サーボモータ38Bのエンコーダの出力信号を用いて、テーブル32の回転動作及び昇降動作の制御量を決定する。テーブル回転動作発生部213は、テーブル回転位置決定部212が決定したテーブル32の制御量に基づいて回転駆動信号を生成し、生成した回転駆動信号をテーブル回転サーボモータ38Aに駆動信号を送信する。テーブル昇降動作発生部214は、テーブル回転位置決定部212が決定したテーブル32の制御量に基づいて昇降駆動信号を生成し、生成した昇降駆動信号をテーブル昇降サーボモータ38Bに送信する。
【0022】
制御装置2は、図示を省略する演算装置と記憶装置とを有するマイコンで構成される。演算装置は、記憶装置に格納されたプログラムを実行するプロセッサである。演算装置が、所定のプログラムを実行することによって、各種機能を提供する機能部として動作する。記憶装置は、不揮発性記憶領域及び揮発性記憶領域を含み、演算装置が実行するプログラムと、演算装置がプログラム実行時に使用するデータを格納する。
【0023】
図3は、直進と旋回を組み合わせた搬送装置1の移動パターンの一例を示す図である。図示する例では、搬送装置1が直進し、90°左旋回した後に、直進する。
【0024】
搬送装置1は、行番号251=「C」、列番号252=「e」のエリア(以下、C,eと表す)から、位置エリア(A,e)まで直進し、直進モードから旋回モードに切り替えて、エリア(A,e)で反時計回りに90°旋回する。
【0025】
テーブル32に棚8を積載していない空荷状態では、搬送装置1は直前の移動モードにかかわらず、台車31は角加速度Aで左方向に旋回する。一方、テーブル32に棚8を積載している場合、搬送装置1は直進モードから旋回モードに切り替わるため、台車31は角加速度Aより小さい角加速度Cで旋回する。このとき、台車31の旋回と同時にテーブル32の天板32Dを逆方向に回転して、棚8の向きが変わらないようにする。
【0026】
次に、搬送装置1は、エリア(A,e)からエリア(A,c)に直進移動する。搬送装置1は、空荷状態では最大の加速度Aで移動する。一方、テーブル32に棚8を積載している状態では、搬送装置1は加速度Aより小さい加速度Cで加速して移動する。
【0027】
図4から
図8を参照して、搬送装置1のテーブル32の構成を説明する。
【0028】
図4は、天板32Dが取り付いた搬送装置1の上面図である。搬送装置1の上面には、天板32Dが回転可能に取り付けられている。天板32Dは上リング32Aと係合しており、上リング32Aの回転に従って天板32Dが回転する。例えば、天板32Dの凸部と上リング32Aの凹部によって、天板32Dと上リング32Aが係合する。
【0029】
天板32Dは、上リング32A上に配置されている。すなわち、天板32Dを搬送装置1から取り外すと、
図5に示すように、上リング32Aが見える。上リング32Aは、テーブル回転サーボモータ38Aと係合している。例えば、上リング32Aの内側にスプロケットを設け、テーブル回転サーボモータ38Aの軸に歯車を取り付け、スプロケットと歯車を係合させる。このため、テーブル回転サーボモータ38Aの回転によって上リング32Aが回転し、上リング32A上に配置される天板32Dが回転する。上リング32Aには、接近センサ37が取り付けられる。前述したように、接近センサ37は、例えば磁気センサであり、棚8の底板82を観測し、棚8の底面の形状に関する情報を取得し、取得した底面の形状に関する情報から棚8の鋼製の梁86の位置を検出する。
【0030】
上リング32Aの下には、
図6に示すように、下リング32Cが設けられる。上リング32Aの底面には転がりベアリング32Bが取り付けられており、転がりベアリング32Bが上リング32Aの荷重を支持し、転がりベアリング32Bによって上リング32Aが下リング32Cの上でスムーズに回転できるように構成されている。
【0031】
下リング32Cは、
図8に示すように、支柱32Eによって支えられている。支柱32Eはテーブル昇降サーボモータ38Bによって上下に移動し、下リング32Cを上下に移動する。例えば、支柱32Eとテーブル昇降サーボモータ38Bがボールネジを構成している。例えば、支柱32Eにネジ軸を形成し、該ネジ軸を係合したナットをテーブル昇降サーボモータ38Bで回転することによって、ナットに対してネジ軸が移動する。このように、テーブル昇降サーボモータ38Bによって、下リング32Cと上リング32Aと天板32Dを上下に移動できる。
【0032】
【0033】
棚8は、床面から所定の高さで脚部81によって支持された底板82と、物品を載置する1以上の棚板83を有する。底板82の下部には搬送装置1が入り込む空間が設けられる。底板82には梁86が設けられる。
【0034】
梁86は、例えば鋼製の断面が四角形やU字形のチャンネル材を底板82に溶接して構成される。例えば、梁86は、
図10に示すように、棚8の側面に沿って設けられ、さらに底板82の中央で縦方向の梁86と横方向の梁86が交わるように設けられる。また、梁86は、
図13に示すように、棚8の側面に沿って設けられ、さらに側面の梁86の内側に、複数の縦方向の梁86と複数の横方向の梁86が交わるように設けられてもよい。
【0035】
図11、
図12は、
図10に示す棚8を搬送装置1に積載した状態を示す図であり、
図11は、梁86と接近センサ37が接近している位置に棚8が搬送装置1に積載されている例を示し、
図12は、梁86と接近センサ37が離れた位置に棚8が搬送装置1に積載されている例を示す。
【0036】
図11に示すように、梁86と接近センサ37が接近している状態では、梁86の下に位置する転がりベアリング32Bの荷重が大きくなり、梁86の下に位置しない転がりベアリング32Bより劣化する。このため、
図12に示すように、棚8を積載する方向(テーブルが昇降する方向)から見て、梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置とが重ならないように棚8を搬送装置1に積載するとよい。言い換えると、梁86が転がりベアリング32Bの間に位置して、特定の転がりベアリング32Bに棚8の荷重がかからないように(すなわち、転がりベアリング32Bへの荷重が均等になるように)、棚8を搬送装置1に積載するとよい。例えば、テーブル回転位置決定部212は、棚8の積載位置の複数の候補を探索し、それぞれの候補について梁86が転がりベアリング32Bの上部に位置する箇所の数を算出し、最も少ない位置で梁86が転がりベアリング32Bの上に位置するように、棚8の積載位置を決定してもよい。
【0037】
一方、
図13に示す棚8は、
図14に示すように、搬送装置1に積載するとよい。
【0038】
図15は、本実施例の搬送装置1が棚8を積載する処理のフローチャートである。
【0039】
まず、制御装置2(テーブル回転位置決定部212)は、テーブル回転サーボモータ38Aを駆動して、天板32Dの回転位置を原点に復帰する(S101)。例えば、
図12に示すように、搬送装置1の進行方向に転がりベアリング32Bが位置しない回転位置を原点位置にするとよい。
【0040】
次に、搬送制御装置(図示省略)からの指示によって、搬送装置1が搬送すべき棚8の下に到着すると(S102)、制御装置2(テーブル昇降動作発生部214)は、テーブル昇降サーボモータ38Bを駆動して、天板32Dを所定位置まで上昇する(S103)。例えば、天板32Dが棚8の梁86から数ミリメートル離れた位置で天板32Dの上昇を停止するとよい。
【0041】
次に、テーブル回転位置決定部212は、テーブル回転サーボモータ38Aを駆動して、接近センサ37の出力信号を監視する(S104)。例えば、接近センサ37は磁気センサであり、鋼製の梁86に近づくと出力信号が大きくなる。
【0042】
そして、テーブル回転位置決定部212が接近センサ37の出力信号のピークを検出すると、テーブル回転位置決定部212がテーブル回転サーボモータ38Aの駆動を停止し、上リング32Aの回転を停止する(S105)。テーブル回転位置決定部212は、接近センサ37の出力信号の時間微分の符号の変化によって、接近センサ37の出力信号のピークを検出するとよい。また、接近センサ37の出力信号のピーク値から行き過ぎた場合、テーブル回転位置決定部212が上リング32Aを逆転して、ピーク位置を探索してもよい。
【0043】
そして、テーブル昇降動作発生部214は、テーブル昇降サーボモータ38Bを駆動して、棚8が搬送装置1に積載される位置まで天板32Dを上昇する(S106)。
【0044】
なお、ここまで、梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置との関係について、棚8を積載する方向(テーブルが昇降する方向)から見て、梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置とが重ならないように棚8を搬送装置1に積載する例について説明した。しかし、本実施例に開示される発明はこの例に限られず、梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置とが少なくとも1か所以上で重なるように制御してもよい。例えば、テーブル回転位置決定部212は、棚8の積載位置の複数の候補を探索し、梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置との関係が所定の条件を満たす候補を選択し、棚8の積載位置を決定してもよい。例えば、梁86が転がりベアリング32Bの上部に位置する箇所の数を算出し、所定の閾値以上の位置、かつ、最も多くの位置で梁86が転がりベアリング32Bの上に位置するように、棚8の積載位置を決定してもよい。このように制御することで、特定の転がりベアリング32Bに負荷が集中することを抑制しつつ、上リング32Aや下リング32Cに生じる歪みを低減することができる。
【0045】
梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置とが重なるように制御するのか、又は梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置とが重ならないように制御するのかは、棚8の種類や、梁86の構造、又は、搬送装置1の転がりベアリング32B、上リング32A、下リング32C等の材料や構造、物性に応じて決定されてよい。例えば、上リング32Aや下リング32Cが劣化しやすい条件では、梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置とが重なるように制御するとよい場合がある。また、上リング32Aや下リング32Cが劣化しにくく、転がりベアリング32Bが劣化しやすい条件では、梁86の位置と転がりベアリング32Bの位置とが重ならないように制御するとよい場合がある。
【0046】
以上に説明したように、本発明の実施例1によると、転がりベアリング32Bの位置を考慮して棚8を積載するので、転がりベアリング32Bや上リング32A、下リング32Cの劣化を効果的に抑制し、搬送装置1を長寿命化できる。また、転がりベアリング32Bの劣化のバラつきが低減され、転がりベアリング32Bの交換時期の予測が可能となる。
【0047】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、接近センサ37でテーブル32と梁86の位置関係を検出するが、実施例2では棚8の底部に設けられたマーカ87及び天板32Dの切り欠きによって、テーブル32と梁86の位置関係を検出する。なお、実施例2において前述した実施例1との差を主に説明し、実施例1と同じ構成には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0048】
図16は、本実施例の搬送装置1の構成を示す図である。
【0049】
棚8は、側面に一対の開口部を有する直方体で構成され、床面から所定の高さで脚部81によって支持された底板82と、物品を載置する1以上の棚板83を有する。棚板83には積み荷(物品又は商品)89が積載される。底板82の下部には搬送装置1が入り込む空間が設けられる。底板82には梁86が設けられて、梁86が棚8の構造を支えている。棚8はその底面にマーカ87を有する。マーカ87は、例えば、二次元バーコードを使用でき、棚8の底板82の下面に一つ以上設けられるとよい。監視カメラ39で撮影されたマーカ87の位置によって、棚8の向きを検出できる。また、マーカ87は、監視カメラ39が撮影した画像で棚8の向きを検出できればよいので、画像でマーカ87を検出できる形態であればよく、例えば、基準角度の印を付した多角形のシールでもよい。
【0050】
搬送装置1は、直進及び旋回可能な直方体の台車31と、台車31の上面に配置されて昇降可能かつ回転可能なテーブル32を有する自動走行装置である。テーブル32は、上リング32A、下リング32C、上リング32Aの上に取り付けられる天板32D、及び上リング32Aと下リング32Cとの間に転がりベアリング32Bを有する。転がりベアリング32Bは上リング32Aに取り付けられている。
【0051】
搬送装置1の上面には、天板32Dが回転可能に取り付けられている。天板32Dは上リング32Aと係合しており、上リング32Aの回転に従って天板32Dが回転する。例えば、天板32Dの凸部と上リング32Aの凹部によって、天板32Dと上リング32Aが係合する。
【0052】
搬送装置1の上部中央には監視カメラ39が設けられる(
図17参照)。監視カメラ39は、搬送装置1の上面から棚8の底面を観測するイメージセンサであり、棚8の底面に設けられたマーカ87と天板32Dの切り欠きを検出する。監視カメラ39の観測結果によって棚8の積載位置が調整される。
【0053】
搬送装置1は、テーブル32の天板32Dを回転するテーブル回転サーボモータ38Aと、天板32Dを上昇し下降するテーブル昇降サーボモータ38Bを有する。テーブル回転サーボモータ38Aは、駆動力を発生して天板32Dを回転させるモータと、モータの回転量(すなわち天板32Dの水平方向の回転角)を検出するエンコーダを有する。テーブル昇降サーボモータ38Bは、駆動力を発生して天板32Dの高さを変更するモータと、モータの回転量(すなわち天板32Dの垂直方向の移動量)を検出するエンコーダを有する。
【0054】
搬送装置1は、制御装置2を有する。制御装置2は、テーブル32の天板32Dの回転及び昇降を制御する機能部であり、テーブル回転チャンネル210、テーブル昇降チャンネル211、テーブル回転位置決定部212、テーブル回転動作発生部213及びテーブル昇降動作発生部214及び棚方向計測部215を有する。
【0055】
テーブル回転チャンネル210は、テーブル回転サーボモータ38Aのエンコーダが出力した信号を受信して、テーブル回転位置決定部212に送信するインターフェースである。テーブル昇降チャンネル211は、テーブル昇降サーボモータ38Bが出力した信号を受信して、テーブル回転位置決定部212に送信するインターフェースである。テーブル回転位置決定部212は、テーブル回転サーボモータ38Aのエンコーダの出力信号及びテーブル昇降サーボモータ38Bのエンコーダの出力信号を用いて、テーブル32の回転動作及び昇降動作の制御量を決定する。テーブル回転動作発生部213は、テーブル回転位置決定部212が決定したテーブル32の制御量に基づいて回転駆動信号を生成し、生成した回転駆動信号をテーブル回転サーボモータ38Aに駆動信号を送信する。テーブル昇降動作発生部214は、テーブル回転位置決定部212が決定したテーブル32の制御量に基づいて昇降駆動信号を生成し、生成した昇降駆動信号をテーブル昇降サーボモータ38Bに送信する。棚方向計測部215は、監視カメラ39が撮影した棚8の底面に設けられたマーカ87の位置によって、搬送装置1と棚8の相対位置を検出する。また、棚方向計測部215は、監視カメラ39が撮影した天板32Dに設けられた切り欠きの位置によって、天板32Dの原点位置を検出する。
【0056】
制御装置2は、図示を省略する演算装置と記憶装置とを有するマイコンで構成される。演算装置は、記憶装置に格納されたプログラムを実行するプロセッサである。演算装置が、所定のプログラムを実行することによって、各種機能を提供する機能部として動作する。記憶装置は、不揮発性記憶領域及び揮発性記憶領域を含み、演算装置が実行するプログラムと、演算装置がプログラム実行時に使用するデータを格納する。
【0057】
図17は、上リング32Aを取り外した搬送装置1の上面図である。
【0058】
図17に示すように、下リング32Cの中央部の棚8のマーカ87に対応する位置には、監視カメラ39が設けられる。天板32Dの監視カメラ39に対応する位置には、監視カメラ39が棚8のマーカ87を撮影するための穴が設けられる。監視カメラ39は、天板32Dの穴を通じて棚8のマーカ87を撮影する。
【0059】
図18は、本実施例の搬送装置1が棚8を積載する処理のフローチャートである。
【0060】
まず、制御装置2(テーブル回転位置決定部212)は、テーブル回転サーボモータ38Aを駆動して、天板32Dの回転位置を原点に復帰する(S111)。例えば、
図12に示すように、搬送装置1の進行方向に転がりベアリング32Bが位置しない回転位置を原点位置にするとよい。
【0061】
次に、搬送制御装置(図示省略)からの指示によって、搬送装置1が搬送すべき棚8の下に到着すると(S112)、制御装置2(テーブル昇降動作発生部214)は、テーブル昇降サーボモータ38Bを駆動して、天板32Dを所定位置まで上昇する(S113)。例えば、天板32Dが棚8の底板82から数ミリメートル離れた位置で天板32Dの上昇を停止するとよい。
【0062】
次に、監視カメラ39が棚8の底面を撮影し、棚方向計測部215が、撮影された画像の解析によって棚8の底板82の下面に設置されたマーカ87を検出し、棚8の方向を判定する(S114)。
【0063】
次に、監視カメラ39で天板32Dの底面を撮影し、棚方向計測部215が、撮影された画像の解析によって天板32Dの切り欠きを検出し、転がりベアリング32Bが設けられている方角を判定する(S115)。
【0064】
そして、テーブル回転位置決定部212が、判定された棚8の方向と判定された転がりベアリング32Bが設けられている方角を用いて、天板32Dの切り欠きの位置が棚8の梁86の位置が一致するようにテーブル回転サーボモータ38Aを駆動して、天板32Dを回転する(S116)。
【0065】
そして、テーブル昇降動作発生部214は、テーブル昇降サーボモータ38Bを駆動して、棚8が搬送装置1に積載される位置まで天板32Dを上昇する(S117)。
【0066】
以上に説明したように、本実施例によれば、監視カメラ39を用いて棚8の向きを判定するので、棚8が鋼製でなくても(例えば、木製、アルミニウム製、ステンレス製)であっても、棚8を適正な位置に積載できる。
【0067】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0068】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0069】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0070】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0071】
1 搬送装置
2 制御装置
8 棚
31 台車
32 テーブル
32A 上リング
32B 転がりベアリング
32C 下リング
32D 天板
32E 支柱
35 バンパ
37 接近センサ
38A テーブル回転サーボモータ
38B テーブル昇降サーボモータ
39 監視カメラ
81 脚部
82 底板
83 棚板
86 梁
87 マーカ