(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169815
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】3Dプリンターシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/321 20170101AFI20231122BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20231122BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20231122BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231122BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/118
B29C64/295
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081151
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】平山 貴之
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC01
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF36
4F213WK03
4F213WL02
4F213WL74
4F213WL87
(57)【要約】
【課題】フィラメント状材料が不要で、かつ材料吐出部が小型で軽量であることにより材料吐出部の移動が容易な3Dプリンターシステムを提供する。
【解決手段】材料を加熱溶融して送出する押出機31に接続され、前記押出機から送出される前記材料を加熱しながら通過させるヒーター付ホース20と、前記ヒーター付ホースに接続され、先端から前記材料を吐出するノズル21と、前記ノズルを移動させるロボット22と、前記ロボットを制御する制御装置23とを有する3Dプリンターシステム10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を加熱溶融して送出する押出機に接続され、前記押出機から送出される前記材料を加熱しながら通過させるヒーター付ホースと、
前記ヒーター付ホースに接続され、先端から前記材料を吐出するノズルと、
前記ノズルを移動させるロボットと、
前記ロボットを制御する制御装置と、
を有する3Dプリンターシステム。
【請求項2】
前記材料が熱可塑性樹脂である、
請求項1に記載の3Dプリンターシステム。
【請求項3】
前記ロボットが垂直多関節型ロボットである、
請求項1または2に記載の3Dプリンターシステム。
【請求項4】
複数の前記押出機のそれぞれに接続される複数の前記ヒーター付ホースと、前記複数のヒーター付ホースのそれぞれに接続された複数の前記ノズルとを有する、
請求項1または2に記載の3Dプリンターシステム。
【請求項5】
前記ノズルがギアポンプを備える、
請求項1または2に記載の3Dプリンターシステム。
【請求項6】
前記ノズルと前記ヒーター付ホースの接続部に、前記材料を排出する材料排出手段を備える、
請求項1または2に記載の3Dプリンターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから材料を押し出して3次元造形物を製造するための3Dプリンターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を用いた3Dプリンターとして、材料のフィラメントを溶融させてノズルから押し出して3次元造形物を製造するフィラメント方式のものが広く用いられている。しかし、この方式では、使用できる材料がフィラメントへの成形に適したものに限られるという問題があった。
【0003】
この問題に対して、特許文献1には、シリンダー内部にスクリューが配置された小型の押出機を溶融樹脂押出部とし、この押出機に粒状の樹脂材料を供給可能なホッパーを取り付け、押出機及び/又はテーブルを3次元方向への移動を制御可能とした三次元プリンターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された三次元プリンターによれば、フィラメント状材料を用いる必要がなく、市販の各種樹脂ペレットが使用できる。しかし、押出機を小さく軽くすると、単位時間当たりの材料の吐出量が少なくなり、大型の造形物の製造に時間がかかるという問題がある。一方、押出機を大きく重くすると、これを自在に移動させることが容易でなくなる。そのため、押出機を固定し、またはガントリーロボットに取り付けて1または2方向に移動可能としても、1ないし3方向に移動可能なテーブルが必要となり、装置が大型化する。また、3次元造形を実施できる場所が制限される。
【0006】
本発明は上記を考慮してなされたものであり、フィラメント状材料が不要で、かつ材料吐出部が小型で軽量であることにより材料吐出部の移動が容易な3Dプリンターシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の3Dプリンターシステムは、材料を加熱溶融して送出する押出機に接続され、前記押出機から送出される前記材料を加熱しながら通過させるヒーター付ホースと、前記ヒーター付ホースに接続され、先端から前記材料を吐出するノズルと、前記ノズルを移動させるロボットと、前記ロボットを制御する制御装置とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の3Dプリンターシステムによれば、フィラメント状材料が不要で、市販の各種樹脂ペレットが使用できる。また、押出機とノズルをヒーター付ホースで接続することによって、容量の大きい押出機を用いる場合でも、比較的軽量なノズルだけをロボットで移動させて3次元造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の3Dプリンターシステムの装置構成を示す図である。
【
図3】他の実施形態の3Dプリンターシステムの装置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の3Dプリンターシステムの一実施形態を、
図1および2に基づいて説明する。
【0011】
図1を参照して、本実施形態の3Dプリンターシステム10は、押出機31に接続されたヒーター付ホース20と、ヒーター付ホース20に接続されたノズル21と、ノズル21を把持して移動させるロボット22と、ロボット22を制御する制御装置23とを有する。
【0012】
材料は、例えばペレット状のものがホッパー32に投入されて押出機31に供給され、押出機31で加熱溶融されて押出機から送出され、ヒーター付ホース20を通過してノズル21先端から吐出され、冷却されて固まる。ロボット22が3次元造形物の形状に応じた所定の経路に沿ってノズル21を移動させることで、3次元造形物が製造される。
【0013】
なお、
図1では、テーブル30上で造形を行う場面を描いたが、3次元造形を実施する場所は特に限定されない。例えば、製品の設置場所にその場で造形してもよい。また、テーブル30上で造形を行う場合でも、当該テーブルは昇降または水平に移動可能である必要はない。
【0014】
材料は、押出機31から送出可能で、ノズル21から吐出後に硬化可能であれば、特に限定されない。材料としては、各種の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを好適に用いることができる。
【0015】
押出機31は、材料を加熱溶融して送出する。押出機31としては、公知のスクリュー式の押出機を用いることができる。これにより、市販の各種樹脂ペレットを用いることができ、スクリューの回転数を変えることで材料の送出量を制御することができる。また、異なる樹脂同士、あるいは樹脂と着色料等の添加剤を混ぜて用いる場合は、二軸の混練押出機を用いることで、より均一に混合された材料が得られる。押出機31はロボットによって移動させる必要がないため、現場に設置されている既存の押出機を流用することも可能である。
【0016】
ヒーター付ホース20は、一端が押出機31に接続され、押出機から送出される材料を加熱しながら通過させる。これにより、押出機と3次元造形を行う場所が離れていても、材料が溶融した状態を維持して、3次元造形の作業場所まで移送できる。ヒーター付ホース20としては、市販の公知のものを用いることができる。ヒーター付ホース20は、材料が内部を通過するホースの外面にヒーターが装着され、ヒーターの外側が保温材と編組チューブ(ブレードチューブ)で覆われた構造を有する。
【0017】
ノズル21は、ヒーター付ホース20の押出機31と反対の端に接続され、その先端から材料を吐出する。
【0018】
ノズル21は、材料の流路に設置できる撹拌式のインラインミキサーやスタティックミキサー等のミキサーを内部に備えていてもよい。これにより、吐出する材料内の温度の均一性を高め、吐出された材料の硬化時の変形を抑えることができる。
図2には、スタティックミキサー24を備えるノズル21を示した。
【0019】
また、ノズル21は、ギアポンプを内部に備えていてもよい。材料の時間当たりの吐出量(以下「吐出速度」という)を一時的に増減させたい場合、押出機31とノズル21を繋ぐヒーター付ホース20が長いと、押出機のスクリューの回転数を変えて押出機からの送出量を増減させても、ノズルからの吐出速度に反映されるまでに時間のずれが生じる。ノズルがギアポンプを備えていれば、ギアポンプの回転を制御することで、材料の吐出速度をより正確に制御することできる。
【0020】
また、3Dプリンターシステム10は、ノズル21とヒーター付ホース20との接続部に、ノズル先端からの材料の吐出を止めて、材料を排出するための材料排出手段を備えていてもよい。ここで、ノズル21とヒーター付ホース20の接続部には、ノズルの基端とヒーター付ホースの先端との間の他、ノズルの基端部およびヒーター付ホースの先端部を含む。
図2では、ノズル21とヒーター付ホース20の間に3方向の切替弁25で、ヒーター付ホース20、ノズル21、排出路26の間で流路を切り替えることができる。排出路26は、好ましくは、他のヒーター付ホースからなり、材料を図示しない排出口へ導く。
図2はヒーター付ホース20とノズル21の流路が接続された状態を示しており、切替弁25のT字路を右に90度回転することによって、ノズル先端からの材料の吐出を止めて、材料の流路を排出路26へ切り替える。
【0021】
材料の吐出を一時的に停止したい場合、押出機31とノズル21を繋ぐヒーター付ホース20が長いと、押出機からの送出を停止しても、ノズルから吐出が停止するまでに時間のずれが生じる。また、押出機からの送出・停止を短時間で繰り返すと、ヒーター付ホース内の材料の流量が安定しにくい。ノズルが材料排出手段を備えていれば、押出機を作動させたままで、材料の吐出の停止・再開の応答性を高めることができる。
【0022】
なお、材料排出手段は、
図2に示した切替弁25には限られない。材料排出手段を構成する他の方法として、例えば、ノズル21の基端にヒーター付ホース20からの流路を開閉する電磁弁を設け、排出路の入り口に圧力が高まると開く逃がし弁を設けてもよい。
【0023】
ロボット22は、ノズル21を把持して、3次元空間内でノズルを移動させる。ロボットの構造は特に限定されないが、好ましくは垂直多関節型のロボットを用いる。これにより、ノズル21を把持して、3次元空間内でノズルを所望の位置に、かつ所望の姿勢で移動させることができる。例えば、ノズルを斜めにして材料を吐出することができれば、3次元造形物に斜めに枝状の突起部分を積層することが可能となり、造形する形状の自由度が広がる。
【0024】
制御装置23は、ロボット22の動作を制御する。また、制御装置23は、押出機31の作動・停止や、スクリューの回転速度を増減させて材料の送出速度を制御してもよい。また、制御装置23は、ノズル21が駆動部を有するミキサーまたはギアポンプを備える場合や、ノズル21とヒーター付ホース20の接続部に材料排出手段を備える場合は、それらの動作を制御する。また、制御装置23はヒーター付ホースの温度を制御してもよい。
【0025】
次に、本実施形態の3Dプリンターシステムの使用法を説明する。
【0026】
造形しようとする製品の形状に応じて、予めノズル21の移動経路を求めておく。押出機31を作動して、ペレット材料をホッパー32に投入して押出機31に供給する。材料は押出機31で加熱溶融されて押出機から送出され、ヒーター付ホース20を通過してノズル21へ送られる。制御装置23がロボット22の動作を制御して、ノズル21を予定された経路に沿って移動させながら、材料を吐出する。
【0027】
材料の吐出速度の制御は、押出機31のスクリューの回転速度を制御することによって調整できるが、好ましくは、押出機からの送出速度を一定にして、ロボット22に把持されたノズル21の移動速度を変えることによって、各位置での吐出量を制御する。これにより、押出機を安定した状態で運転することができる。また、ノズル21がギアポンプを備えている場合は、ノズル先端からの材料の吐出速度をより正確に制御することができる。
【0028】
また、本実施形態の3Dプリンターシステム10では、材料の吐出位置を基本的に一筆書きで移動させるが、製品の形状によっては吐出を一旦停止し、ノズルを移動させた後に吐出を再開させる必要がある。このとき、押出機31を停止することにより吐出を停止する場合でも、ヒーター付ホース20内に滞留する材料は加熱されているので、途中で固まることがない。また、ノズル21とヒーター付ホース20の接続部に材料排出手段を備える場合は、より正確なタイミングで材料の吐出を停止、再開することができる。
【0029】
次に、本発明の3Dプリンターシステムの他の実施形態を
図3に基づいて説明する。
【0030】
図3を参照して、本実施形態の3Dプリンターシステム11は、複数のヒーター付ホース20a、20bと、複数のノズル21a、21bを有する点で先の実施形態と異なる。
図3の各装置は、符号の数字が一致する
図1の装置と同じである。
【0031】
本実施形態では、異なる材料毎に複数の押出機31a、31bを用いる。ヒーター付ホース20a、20bは押出機31a、31bにそれぞれ接続され、ノズル21a、21bはヒーター付ホース20a、20bの先端にそれぞれ接続されている。ロボット22は、複数のノズル21a、21bを取り替えながら3次元造形を行う。
【0032】
本実施形態の3Dプリンターシステム11は、複数の材料を用いて1個の製品を造形する場合に好適に用いることができる。複数の材料とは、例えば材質の異なる複数の樹脂や、色の異なる複数の樹脂である。また、3Dプリンターによる造形では、作業中に造形物が崩れないために、サポート材を用いて足場を造形し、その上に製品となる部分を造形することがある。このサポート材は、造形後に簡単に除去できるように、製品部分とは異なる材料、例えば水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)などが用いられる。この3Dプリンターシステム11によれば、複数のノズルを取り替えながら足場部分と製品部分を造形することができる。
【0033】
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0034】
例えば、複数のホースおよびノズルの束をロボットで保持した状態で、吐出するノズルを切り替えながら、または同時に吐出しながら3次元造形を行ってもよい。本発明では軽量なノズル部分のみを移動させるため、1台のロボットで複数のノズルを同時に保持することができる。これにより、ノズル取り換えの手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0035】
10、11 3Dプリンターシステム
20、20a、20b ヒーター付ホース
21、21a、21b ノズル
22 ロボット
23 制御装置
24 スタティックミキサー
25 切替弁(材料排出手段)
26 排出路
30 テーブル
31、31a、31b 押出機
32、32a、32b ホッパー