(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169859
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシートの製造方法および複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20231122BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B28B1/30 101
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
B28B1/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202985
(22)【出願日】2022-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2022080754
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年9月4日九州大学病院キャンパスにおいて開催されたレーザー学会九州支部学生講演会2022で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年9月4日に開催されたレーザー学会九州支部学生講演会2022で頒布された冊子で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月26日大分大学理工学部旦野原キャンパスにおいて開催された2022年度応用物理学会九州支部学術講演会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月26日 http://whova.com/portal/registration/thasi_202211において掲載された2022年度応用物理学会九州支部学術講演会の予稿集で公開
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 由
(72)【発明者】
【氏名】植野 琴美
(72)【発明者】
【氏名】森永 高広
(72)【発明者】
【氏名】森 隆博
(72)【発明者】
【氏名】加来 昌典
(72)【発明者】
【氏名】甲藤 正人
【テーマコード(参考)】
4G052
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
4G052DA02
4G052DB01
4G052DC06
5E001AB03
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082FF05
5E082FG26
5E082FG46
(57)【要約】 (修正有)
【課題】離型処理が施されていない基材を用いたセラミックグリーンシートの製造方法および複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックグリーンシートの製造方法は、フィルム状の基材20の一面20aに紫外線を直接照射し、一面の表面粗さと水の接触角とを変化させる照射工程S12と、紫外線が照射された一面にスラリーSLを塗布する塗布工程S13と、を含む。紫外線の照射前の基材には、離型を促進させる表面処理が施されていない。紫外線の波長は200nmより長く300nmより短い。表面粗さは、紫外線の積算光量が大きくなるにつれて大きくなり、第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、次いで、小さくなり、第2粗さ光量よりも大きくなると安定する。接触角は、積算光量が第1濡れ光量よりも大きくなるにつれて小さくなり第2濡れ光量よりも大きくなると安定する。積算光量は、第1粗さ光量および第1濡れ光量よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材の一面に紫外線を直接照射して、前記一面の表面粗さと前記一面の水の接触角とを変化させる照射工程と、
前記紫外線が照射された前記一面に、セラミック粒子を含むスラリーを塗布する塗布工程と、
を含み、
前記紫外線の照射前の前記基材には、前記スラリーが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシートの前記基材からの離型を促進させる表面処理が施されておらず、
前記紫外線の波長は、200nmより長く300nmより短く、
前記表面粗さは、前記紫外線の積算光量が所定の第1粗さ光量まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、前記第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、前記積算光量が前記第1粗さ光量より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1粗さ光量よりも大きい第2粗さ光量よりも大きくなると安定するように変化して、
前記接触角は、前記積算光量が所定の第1濡れ光量よりも大きくなると、前記積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1濡れ光量よりも大きい第2濡れ光量よりも大きくなると安定するように変化して、
前記積算光量は、前記第1粗さ光量および前記第1濡れ光量よりも大きい光量に設定される、
セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】
前記基材の形状は、帯状で、
前記基材の短手方向において、前記一面は、
前記セラミックグリーンシートの端部が塗布される端部領域と、
前記端部領域間に位置する中央領域と、
を含み、
前記一面のうち、前記中央領域の前記積算光量は、前記第2粗さ光量よりも大きくなるように設定される、
請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項3】
前記一面のうち、前記端部領域の前記積算光量は、前記第1粗さ光量より大きく、かつ、前記第2粗さ光量よりも小さい範囲内、に設定される、
請求項2に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項4】
前記第2濡れ光量は、前記第1粗さ光量よりも大きく、
前記積算光量は、前記第2粗さ光量および前記第2濡れ光量よりも大きくなるように設定される、
請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項5】
前記紫外線の中心波長は、265nmまたは280nmである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項6】
前記第1粗さ光量は、250J/cm2であり、
前記第2粗さ光量は、前記第1粗さ光量の2倍~4倍である、
請求項5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項7】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項8】
フィルム状の基材と、
前記基材の一面に載置されているセラミックグリーンシートと、
を有してなる複合体の製造方法であって、
前記セラミックグリーンシートは、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法により製造される、
複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシートの製造方法および複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層構造を有する積層セラミック電子部品(例えば、積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitors)、チップインダクタ、低温同時焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)など)の製造工程では、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム状の基材上に、セラミック粉体をバインダーおよび溶剤に分散させたスラリーが塗布されて、溶剤が加熱乾燥により除去されることにより、基材上にセラミックグリーンシートが形成される。次いで、セラミックグリーンシート上に内部電極が適宜印刷される。次いで、セラミックグリーンシートが基材から剥離されて、複数のセラミックグリーンシート同士が積層・加熱・圧着されることによりセラミックグリーンシートの積層体が形成される。次いで、セラミックグリーンシートの積層体が所定のサイズに切断されることにより積層体がチップ化される。次いで、チップ化された積層体が焼成され、焼成体の表面に外部電極が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、この製造工程において、主にセラミックグリーンシートの基材からの剥離を容易にさせることを目的として、例えば、基材の表面に離型層を形成する離型処理が施されている(例えば、特許文献2、3参照)。特に、近年、電子部品の小型化により、セラミックグリーンシートの薄膜化が進み、離型処理はセラミックグリーンシートおよび多層構造の電子部品の製造に必要不可欠となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-122068号公報
【特許文献2】特開2019-72849号公報
【特許文献3】特開2019-18583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
離型処理が施された基材の価格は、離型処理のグレードに応じて異なる。また、剥離性を向上させた基材の表面のスラリーの濡れ性は悪く、スラリーの均一な塗布が困難である。さらに、離型処理には離型効果の高いシリコン系の離型剤が広く用いられているが、セラミックグリーンシートが基材から剥離されるとき、離型剤のセラミックグリーンシートへの転写が生じ得る。一方、離型処理が施されていない基材の表面は、僅かに荒れており、スラリー(セラミックグリーンシート)との接触点が多くなる。そのため、スラリーの均一塗布が難しく、セラミックグリーンシートを基材から剥離する際にセラミックグリーンシートの破れや切れなどの不良が生じ得る。したがって、離型処理が施されていない基材へスラリーを直接塗布する手法が求められている。
【0006】
本発明は、離型処理が施されていない基材を用いたセラミックグリーンシートの製造方法および複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様におけるセラミックグリーンシートの製造方法は、フィルム状の基材の一面に紫外線を直接照射し、前記一面の表面粗さと前記一面における水の接触角とを変化させる照射工程と、前記紫外線が照射された前記一面に、セラミック粒子を含むスラリーを塗布する塗布工程と、を含み、前記紫外線の照射前の前記基材には、前記スラリーが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシートの前記基材からの離型を促進させる表面処理が施されておらず、前記紫外線の波長は、200nmより長く300nmより短く、前記表面粗さは、前記紫外線の積算光量が所定の第1粗さ光量まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、前記第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、前記積算光量が前記第1粗さ光量より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1粗さ光量よりも大きい第2粗さ光量よりも大きくなると安定するように変化して、前記接触角は、前記積算光量が所定の第1濡れ光量よりも大きくなると、前記積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1濡れ光量よりも大きい第2濡れ光量よりも大きくなると安定するように変化して、前記積算光量は、前記第1粗さ光量および前記第1濡れ光量よりも大きい光量に設定される。
【0008】
本発明の一実施態様における複合体の製造方法は、フィルム状の基材と、前記基材の一面に載置されているセラミックグリーンシートと、を有してなる複合体の製造方法であって、前記セラミックグリーンシートは、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、離型処理が施されていない基材を用いたセラミックグリーンシートの製造方法および複合体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法および本発明に係る複合体の製造方法を含む積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図1の製造方法の一部の工程を示す模式断面図である。
【
図3】
図1の製造方法に含まれる照射工程において、紫外線の積算光量に対する被照射面の表面粗さの変化の一例を模式的に示すグラフである。
【
図4】
図1の製造方法に含まれる照射工程において、紫外線の積算光量に対する被照射面の接触角の変化の一例を模式的に示すグラフである。
【
図5】
図1の製造法において製造される複合体において、複合体を構成しているセラミックグリーンシートおよび基材の位置関係の一例を示す模式断面図である。
【
図6】本発明の実施例において、被照射面の表面粗さの変化を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施例において、被照射面の接触角の変化を示すグラフである。
【
図8】
図3の照射工程において、基材の短手方向の端部領域および中央領域における紫外線の照射条件を異ならせた状態を示す模式図であり、(a)は端部領域の積算光量が中央領域の積算光量より小さい状態を示していて、(b)は端部領域の積算光量が中央領域の積算光量より大きい状態を示している。
【
図9】表面粗さとセラミックグリーンシートの剥離との関係を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法(以下「本シート製法」という。)および複合体の製造方法(以下「本複合体製法」という。)の実施の形態について説明する。以下の説明において、同一の構造または機能を有する要素については同一の符号が付されて、重複する説明は省略される。また、各要素の寸法比率は、各図面に図示されている比率に限定されない。
【0012】
●セラミックグリーンシートの製造方法および複合体の製造方法●
先ず、本シート製法および本複合体製法の実施の形態について説明する。本シート製法および本複合体製法は、例えば、多層構造を有する積層セラミック電子部品の製造工程において、各層(誘電体層)となるセラミックグリーンシートを製造する際に実行される。
【0013】
「積層セラミック電子部品」は、例えば、積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitors)、チップインダクタ、低温同時焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミックの多層構造を有する電子部品である。以下の実施の形態では、積層セラミックコンデンサの製造方法に本シート製法および本複合体製法が含まれている場合を一例として、本シート製法および本複合体製法が説明される。
【0014】
図1は、本シート製法および本複合体製法を含む積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2は、積層セラミックコンデンサの製造方法の一部の工程を示す模式断面図である。
以下の説明において、
図1および
図2は、特に明示されていなくても適宜参照される。
【0015】
積層セラミックコンデンサ1は、例えば、スラリー作製工程(S11)、照射工程(S12)、塗布工程(S13)、内部電極印刷工程(S14)、剥離工程(S15)、積層・加圧工程(S16)、チップ化工程(S17)、焼成工程(S18)、および外部電極形成工程(S19)を経て製造される。照射工程(S12)および塗布工程(S13)は、本シート製法および本複合体製法の一例である。以下の説明において、照射工程(S12)を除く各工程(S11,S13~S19)は公知の積層セラミックコンデンサの製造方法と共通するため、詳細な説明は省略される。
【0016】
先ず、積層セラミックコンデンサ1が備える各セラミック層(誘電体層12)となるセラミックグリーンシート10の材料となるスラリーSLが作製される(S11:スラリー作製工程)。スラリーSLは、例えば、誘電体セラミックの粉体、バインダー樹脂、および溶剤が湿式混合されることにより作製される。
【0017】
「誘電体セラミック粉末」は、高誘電率を有するセラミック製であり、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などから適宜選択される。
【0018】
「バインダー樹脂」は、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、及びこれらの共重合体などから適宜選択される。
【0019】
「溶剤」は、例えば、テルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、及び酢酸ベンジルなどから適宜選択される。
【0020】
次いで、セラミックグリーンシート10のキャリアフィルムとなる基材20に紫外線が照射される(S12:照射工程)。紫外線は、例えば、公知の紫外線照射装置100を用いて、基材20の上面20aに直接照射される。紫外線の光源は、例えば、個別に照射条件を変更可能な複数のLED(Light-Emitting Diode:例えば、日機装株式会社製の深紫外線LED)である。紫外線の照射条件は、後述される。
【0021】
なお、本発明において、紫外線の光源は、ランプでもよい。
【0022】
「基材20」は、例えば、合成樹脂製の透明なフィルムである。基材20の形状は、例えば、帯状である。基材20は、ロール状に巻かれた状態から順次送り出されることにより供給されている。合成樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリメタクリレートおよびポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ナイロン6,6などのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドなどから適宜選択される合成樹脂を含む。合成樹脂は、好ましくはポリエステルを含み、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。本実施の形態では、基材20は、ポリエチレンテレフタレート製である。
【0023】
本発明において、基材20の表面には、基材20からのセラミックグリーンシート10の離型を促進させる表面処理(例えば、公知の離型処理)は、施されていない。すなわち、紫外線の照射前の状態において、基材20における紫外線の被照射面である上面20aには、離型処理は施されていない。したがって、紫外線は、離型処理において用いられる離型剤(離型層)などを介することなく、基材20の上面20aに直接照射される。上面20aは、本発明における一面の一例である。
【0024】
紫外線の波長は、基材20を透過しない波長帯内であり、かつ、基材20の上面20aの表面粗さおよび上面20aにおける水の接触角(以下単に「接触角」という。)に後述される影響(変化)を与える波長に設定されている。ここで、300nm以上の波長の紫外線は、基材20を透過するため、照射工程(S12)の波長として適していない。また、200nm以下の波長の紫外線は、オゾンを発生させるため、環境への影響および設備(真空雰囲気を必要とするなど)の観点から照射工程(S12)の波長として適していない。そのため、照射工程(S12)において、紫外線の波長は、好ましくは200nmより長く300nmより短い波長であり、より好ましくは260nm以上290nm以下の波長であり、特に、中心波長が265nmまたは280nmの紫外線が好ましい。
【0025】
「表面粗さ」は、特に明示しない限り、上面20aの二乗平均平方根粗さ(Rq)の平均値を意味する。
【0026】
なお、本発明において、表面粗さは、算術表面粗さ(Ra)の平均値を意味していてもよい。
【0027】
「接触角」は、上面20aにおける水の接触角を意味する。
【0028】
紫外線の照射条件、特に、積算光量は、後述されるとおり、紫外線の積算光量に対する基材20の上面20aの表面粗さの変化、および、積算光量に対する上面20aの接触角の変化に基づいて設定されている。基材20の短手方向において、紫外線は、一定の照度で均一に照射される。積算光量は、例えば、基材20の送り速度により調節される。
【0029】
図3は、紫外線の積算光量に対する基材20の被照射面(上面20a)の表面粗さの変化の一例を模式的に示すグラフである。
同図の横軸は積算光量(J/cm
2)を示していて、縦軸は表面粗さとして二乗平均平方根粗さ(nm)を示している。
【0030】
図3に示されるとおり、基材20の被照射面である上面20aの表面粗さは、紫外線の積算光量の増加に伴い変化する。具体的には、表面粗さは、積算光量が紫外線の照射開始から大きくなるにつれて紫外線の照射前の表面粗さ(以下「初期表面粗さ」という。)「V
ini」から大きくなるように変化して、所定の積算光量(以下「第1積算光量」という。)「L1」において最大表面粗さ「V
max」となる。次いで、積算光量が第1積算光量「L1」よりも大きくなると、表面粗さは、最大表面粗さ「V
max」から小さくなるように変化する。次いで、所定の積算光量(以下「第2積算光量」という。)「L2」において、表面粗さは、最大表面粗さ「V
max」から初期表面粗さ「V
ini」と最大表面粗さ「V
max」との差分「V
dif」の半分だけ小さくなる。次いで、表面粗さは、積算光量が第2積算光量「L2」よりも大きい所定の積算光量(以下「第3積算光量」という。)「L3」になるまでは小さくなる。次いで、積算光量が第3積算光量「L3」以上において、表面粗さの変化(減少)は収束して、安定する(均されている)。第1積算光量は本発明における第1粗さ光量の一例であり、第3積算光量は本発明における第2粗さ光量の一例である。
【0031】
このように、紫外線が直接照射されたときにおける上面20aの表面粗さの状態は、紫外線の積算光量が大きくなるにつれて表面粗さが大きくなるように変化する表面粗さ増大状態(紫外線照射開始から第1積算光量「L1」までの状態)、積算光量が大きくなるにつれて表面粗さが小さくなるように変化する表面粗さ減少状態(第1積算光量「L1」から第3積算光量「L3」までの状態)、積算光量に依らず表面粗さの変化が安定する表面粗さ安定状態(第3積算光量「L3」以上の状態)、の順に変化する。すなわち、上面20aは、一度荒らされた後、滑らかに均される。その結果、上面20aの凹凸のばらつきは、紫外線の照射前よりも収束する。
【0032】
「表面粗さの安定」は、積算光量の増加に対する表面粗さの変化量が、例えば、約±30%以内に収まっている状態を意味する。
【0033】
図4は、紫外線の積算光量に対する基材20の被照射面(上面20a)の接触角の変化の一例を模式的に示すグラフである。
同図の横軸は積算光量(J/cm
2)を示していて、縦軸は接触角(deg)を示している。同図は、説明の便宜上、第1~第3積算光量「L1」~「L3」も示している。
【0034】
図4に示されるとおり、基材20の被照射面である上面20aの接触角は、紫外線の積算光量の増加に伴い変化する。具体的には、接触角は、所定の積算光量(以下「第4積算光量」という。)「L4」までは、紫外線の照射前の接触角(以下「初期接触角」という。)「θ
ini」とほぼ変わらず、安定している。次いで、積算光量が第4積算光量「L4」よりも大きくなると、接触角は、積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように(濡れが良くなるように)変化する。次いで、接触角は、第4積算光量「L4」よりも大きい所定の積算光量(以下「第5積算光量」という。)「L5」までは小さくなり、第5積算光量「L5」以上において、接触角の変化は、濡れの良い小さい値の接触角「θ
b」(例えば、5°~10°)近傍で安定する。第4積算光量は本発明における第1濡れ光量の一例であり、第5積算光量は本発明における第2濡れ光量の一例である。
【0035】
「接触角の安定」は、積算光量の増加に対する接触角の変化量が、例えば、約±20%以内に収まっている状態を意味する。
【0036】
このように、紫外線が直接照射されたときにおける上面20aの接触角の状態は、積算光量に依らず接触角の変化が安定している第1接触角安定状態(紫外線照射開始から第4積算光量「L4」までの状態)、積算光量が大きくなるにつれて接触角が小さくなる接触角減少状態(第4積算光量「L4」から第5積算光量「L5」までの状態)、積算光量に依らず接触角の変化が安定する第2接触角安定状態(第5積算光量「L5」以上の状態)、の順に変化する。
【0037】
ここで、詳細は後述される実施例において記載されるが、第1積算光量「L1」~第5積算光量「L5」それぞれの間には、以下の関係が成立している。
【0038】
(1)第3積算光量「L3」は、例えば、第1積算光量「L1」の約2倍~約4倍である。すなわち、一度大きくなった表面粗さは、少なくとも最大表面粗さ「Vmax」となる第1積算光量「L1」の2倍以上の積算光量となる紫外線が照射されなければ安定しない。
(2)第1積算光量「L1」と第4積算光量「L4」とは一致せず、表面粗さが増加しても接触角は増加しない。すなわち、紫外線の照射による表面粗さの変化と接触角の変化とは互いに関連せず、表面粗さと接触角とは異なるメカニズム(詳細は不明)により変化している。そのため、「表面粗さおよび接触角を共に小さな値で安定させる」という制御だけでなく、「表面粗さおよび接触角のうち、一方のみを小さな値で安定させて、他方は故意に安定させない」などの複雑な制御も可能となる。
(3)第5積算光量「L5」は、第1積算光量「L1」よりも大きい。すなわち、少なくとも、紫外線が第5積算光量「L5」以上照射されると、接触角の変化は小さな値で安定して、表面粗さは最大表面粗さ「Vmax」より小さくなる。
(4)第3積算光量「L3」は、第4積算光量「L4」よりも大きい。すなわち、表面粗さは、接触角が低下し始めた後に安定する。
(5)第1積算光量「L1」と第3積算光量「L3」との間における一部の範囲と、第4積算光量「L4」と第5積算光量「L5」との間における一部の範囲とは、重複している。すなわち、積算光量をこの重複範囲に設定することにより、表面粗さおよび接触角の両方が安定する前の状態において、表面粗さおよび接触角の制御が可能となる。
【0039】
製造工程の説明において参照される主な図面は、
図1および
図2に戻る。
次いで、紫外線が照射された基材20の上面20aにスラリーSLが塗布される(S13:塗布工程)。スラリーSLは、公知の塗布方法(例えば、ドクターブレード法、ダイコータ法など)を用いて直接塗布される。ここで、例えば、紫外線が第5積算光量「L5」以上に照射されることにより、上面20aの接触角は小さな値で安定しているため、スラリーSLは、上面20aに均一に塗布可能である。また、紫外線が第4積算光量「L4」から第5積算光量「L5」までの範囲で照射されることにより、接触角の制御が可能となり、塗布後のスラリーSL(セラミックグリーンシート10)の厚み(濡れ広がり)の制御が可能となる。さらに、紫外線が第3積算光量「L3」および第5積算光量「L5」以上照射されることにより、スラリーSLは、均一かつムラ無く(均等に)塗布可能となる。本実施の形態では、紫外線は、上面20aの全面に対して、第3積算光量「L3」および第5積算光量「L5」以上照射されている。塗布後、塗布されたスラリーSLが乾燥されることにより、所定の厚み(例えば、1μm以下)の帯状のセラミックグリーンシート10が、上面20aに形成(載置)される。セラミックグリーンシート10は、最終的に積層セラミックコンデンサ1の誘電体層12を構成する。基材20、および基材20の上面20aに載置されたセラミックグリーンシート10は、本発明における複合体11を構成している。
【0040】
図5は、複合体11において、複合体11を構成しているセラミックグリーンシート10および基材20の位置関係の一例を示す模式断面図である。
同図は、基材20の短手方向に沿う断面を示している。
【0041】
基材20の短手方向において、スラリーSLは、例えば、基材20の上面20aの両端近傍まで塗布されている。その結果、同方向において、セラミックグリーンシート10は上面20aの両端近傍まで形成されている。ここで、上面20aの接触角が小さいと、スラリーSLの端部の厚さ、すなわち、セラミックグリーンシート10の端部の厚さも薄くなる(同端部は剥離工程(S15)前の打ち抜きにより除外される)。一方、上面20aの接触角が大きくなるにつれて、スラリーSLの端部における厚さが薄くなる領域は小さくなり、セラミックグリーンシート10の端部における厚さが薄くなる領域も小さくなる。その結果、剥離工程(S15)において、より大きいセラミックグリーンシート10の剥離が可能となる。したがって、同方向において、上面20aのうち、セラミックグリーンシート10の端部が形成される領域(以下「端部領域20b」という。)の接触角は、小さくなり過ぎないように設定されることが好ましい。一方、同方向において、上面20aのうち、端部領域20b間に位置する領域(以下「中央領域20c」という。)の接触角は、小さくなるように設定されることが好ましい。
【0042】
製造工程の説明において参照される主な図面は、
図1および
図2に戻る。
次いで、導電ペーストが公知の印刷方法(例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷など)を用いてセラミックグリーンシート10の上面10aに印刷されることにより、上面10aに所定パターンの内部電極13が印刷される(S14:内部電極印刷工程)。導電ペーストは、内部電極13の主成分金属の粉末、バインダー、溶剤、および、必要に応じてその他助剤を含む。
【0043】
次いで、内部電極13が印刷されたセラミックグリーンシート10の一部が所定の大きさのシート状に打ち抜かれ、打ち抜かれたセラミックグリーンシート10が基材20から剥離される(S15:剥離工程)。ここで、例えば、紫外線が第3積算光量「L3」以上に照射されることにより、セラミックグリーンシート10と接している基材20の上面20aの表面粗さの状態は、表面粗さ安定状態となる。すなわち、上面20aの表面は均され、セラミックグリーンシート10と基材20との接触点は紫外線照射前より少なくなっている。そのため、紫外線が照射された上面20aに対するセラミックグリーンシート10の剥離性は、紫外線が照射されていない上面20aに対するセラミックグリーンシート10の剥離性よりも良好である。そのため、セラミックグリーンシート10は、離型処理が施されていない上面20aに塗布されていても、同上面20aから容易に剥離できる。また、基材20には離型処理が施されていないため、剥離工程(S15)において、セラミックグリーンシート10への離型剤の転写は、生じない。
【0044】
次いで、剥離されたシート状のセラミックグリーンシート10は、例えば、内部電極13と、誘電体層12となるセラミックグリーンシート10と、が交互になるように所定層数(例えば、数100層)積層されて、加圧される(S16:積層・加圧工程)。
【0045】
次いで、積層・加圧されたセラミックグリーンシート10が所定寸法に切断されて、チップ化されたほぼ直方体状のセラミック積層体14が形成される(S17:チップ化工程)。
【0046】
次いで、セラミック積層体14は、例えば、焼成炉を用いて所定条件で焼成されて、焼結体15が形成される(S18:焼成工程)。
【0047】
次いで、焼結体15に外部電極16が形成されることにより、積層セラミックコンデンサ1が形成される(S19:外部電極形成工程)。
【0048】
なお、上記された積層セラミックコンデンサの製造方法は、一例であり、本実施の形態に限定されない。すなわち、例えば、剥離工程(S15)は、積層後に実行されていてもよい。
【0049】
●実施例(紫外線照射例)
次に、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムに紫外線が直接照射されたときの表面粗さおよび接触角の変化が、本発明の実施例(紫外線照射例)として説明される。以下の実施例の説明において、中心波長が265nmおよび280nmの紫外線が用いられていて、比較例として中心波長が310nmの紫外線が用いられている。表面粗さは、例えば、公知のAFM(Atomic Force Microscope)を用いて測定されていて、二乗平均平方根粗さ(Rq)で示されている。また、接触角は、例えば、「θ/2法」を用いる公知の測定装置を用いて測定されている。接触角の測定において、液適量は0.69μLであり、測定時間は滴下後120secである。積算光量の測定は、例えば、ウシオ電機株式会社製の「USR-45VA/DA」を用いて測定されている。
【0050】
図6は、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムに紫外線が照射されたときのフィルムの被照射面の表面粗さの変化を示すグラフである。
図7は、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムに紫外線が照射されたときのフィルムの被照射面の接触角の変化を示すグラフである。
これらの図の横軸は積算光量(J/cm
2)を示していて、
図6の縦軸は表面粗さ(nm)を示していて、
図7の縦軸は接触角(deg)を示している。
【0051】
●265nm
先ず、中心波長が265nmの紫外線が照射されたときの被照射面の表面状態が説明される。265nmの紫外線が照射された被照射面における表面粗さは、積算光量が紫外線の照射開始から大きくなるにつれて初期値(約2.0nm)から大きくなるように変化して、積算光量「L11:250J/cm2」において最大値(約7.7nm)となる。次いで、積算光量が積算光量「L11」よりも大きくなると、表面粗さは、積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化している。次いで、積算光量「L12:350J/cm2」において、表面粗さは、最大値から初期値と最大値との差分(約5.8nm)の約半分程度小さくなっている。次いで、積算光量「L13:750J/cm2」以上において、表面粗さの変化(減少)は収束して、安定し始める。一方、被照射面の接触角は、紫外線の照射開始(積算光量「L14:0J/cm2」)から積算光量が大きくなるにつれて初期の角度(約78°)から小さくなるように変化している。そして、積算光量「L15:750J/cm2」以上において、接触角は、小さな値(約5°)前後で安定している。ここで、積算光量「L11」は第1積算光量「L1」に対応して、積算光量「L12」は第2積算光量「L2」に対応して、積算光量「L13」は第3積算光量「L3」に対応して、積算光量「L14」は第4積算光量「L4」に対応して、積算光量「L15」は第5積算光量「L5」に対応している。
【0052】
中心波長が265nmのとき、積算光量は、「L14」「L11」「L15」「L12」「L13」の順に大きくなる。すなわち、積算光量「L11」と積算光量「L14」とは一致せず、積算光量「L15」は積算光量「L11」より大きく、積算光量「L13」は積算光量「L14」よりも大きい。積算光量「L13」は、積算光量「L11」の3倍である。積算光量「L11」と「L13」との間における一部の範囲(250J/cm2~350J/cm2)は、積算光量「L14」と「L15」との間における一部の範囲(250J/cm2~350J/cm2)と重複している。このように、中心波長が265nmのとき、前述の(1)~(5)の関係は、成立している。積算光量「L15」以上「L13」未満の範囲では、接触角は小さな値で安定していて、表面粗さは積算光量が大きくなるにつれて減少している。すなわち、同範囲では、接触角を小さな値で安定させながら、表面粗さのみを微調整するような制御が可能となる。また、積算光量「L13」以上(すなわち、積算光量「L15」以上)では、表面粗さおよび接触角は小さな値で安定している。すなわち、同積算光量では、スラリーSLは被照射面に対して塗布し易くなり、かつ、セラミックグリーンシート10は被照射面から剥離し易くなる。
【0053】
●280nm
次に、中心波長が280nmの紫外線が照射されたときの被照射面の表面状態が説明される。280nmの紫外線が照射された被照射面における表面粗さは、積算光量が紫外線の照射開始から大きくなるにつれて初期値(約2.0nm)から少し低下した後に大きくなるように変化して、積算光量「L21:250J/cm2」において最大値(約5.2nm)となる。次いで、積算光量が積算光量「L21」よりも大きくなると、表面粗さは、積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化している。次いで、積算光量「L22:350J/cm2」において、表面粗さは、最大値から初期値と最大値との差分(約3.2nm)の約半分程度小さくなっている。次いで、積算光量「L23:750J/cm2」以上において、表面粗さの変化(減少)は収束して、安定し始める。一方、被照射面の接触角は、紫外線の照射開始から積算光量が大きくなるにつれて初期の角度(約72°)から少し低下しつつ、積算光量「L24:350J/cm2」までは比較的大きな値(65°~70°)近傍で安定している。次いで、積算光量が積算光量「L24」よりも大きくなると、同接触角は、積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化している。そして、積算光量「L25:750J/cm2」以上の積算光量における接触角は、小さな値(約5°)前後で安定している。ここで、積算光量「L21」は第1積算光量「L1」に対応して、積算光量「L22」は第2積算光量「L2」に対応して、積算光量「L23」は第3積算光量「L3」に対応して、積算光量「L24」は第4積算光量「L4」に対応して、積算光量「L25」は第5積算光量「L5」に対応している。
【0054】
中心波長が280nmのとき、積算光量は、「L21」「L22=L24」「L23=L25」の順に大きくなる。すなわち、積算光量「L21」と積算光量「L24」とは一致せず、積算光量「L25」は積算光量「L21」より大きく、積算光量「L23」は積算光量「L24」よりも大きい。積算光量「L23」は、積算光量「L21」の3倍である。積算光量「L21」と「L23」との間における一部の範囲(350J/cm2~750J/cm2)は、積算光量「L24」と「L25」との間における一部の範囲(350J/cm2~750J/cm2)と重複している。このように、中心波長が280nmのとき、前述の(1)~(5)の関係は、成立している。積算光量「L24」以上「L25」未満の範囲では、接触角は積算光量が大きくなるにつれて減少していて、表面粗さも積算光量が大きくなるにつれて減少している。ただし、接触角の減少量に対して、表面粗さの減少量は小さい。すなわち、同範囲では、表面粗さを比較的小さい値で徐々に変化させつつ、接触角を大きく変化させるような制御が可能となる。換言すれば、同範囲では、接触角のみを大きく変化させる制御が可能となる。また、積算光量「L23(L25)」以上では、表面粗さおよび接触角は小さな値で安定している。すなわち、同積算光量では、スラリーSLは被照射面に対して塗布し易くなり、かつ、セラミックグリーンシート10は被照射面から剥離し易くなる。
【0055】
●310nm
次に、比較例として、中心波長が310nmの紫外線が照射されたときの被照射面の表面状態が説明される。前述のとおり、300nmを超える波長の紫外線は、フィルムを透過する。そのため、310nmの紫外線が照射された被照射面における表面粗さは、僅かに低下するものの、積算光量に依らず初期値(約2.0μm)から殆ど変化していない。同様に、接触角は、積算光量に依らず初期の角度(約75°)から殆ど変化していない。
【0056】
●紫外線の中心波長と表面粗さとの関係
積算光量の増加に伴う表面粗さの変化の傾向は、表面粗さが最大表面粗さとなるまでの間には少し差異があるが、中心波長が265nmと280nmとで共通している。すなわち、中心波長が265nmと280nmの両波長において、表面粗さが最大値となる積算光量は共通していて、表面粗さが安定する積算光量も共通している。一方、中心波長が265nmにおける最大表面粗さは、中心波長が280nmにおける最大表面粗さよりも大きい。この差異は、紫外線の光子エネルギーの差異によるものと推測される。すなわち、光子エネルギーは、波長が短くなるにつれて大きくなる。そのため、紫外線が同じ積算光量で照射されたとき、表面粗さは、波長が短くなるにつれて大きくなる傾向にある。したがって、仮に、265nmよりも短い中心波長(例えば、240nm)の紫外線がフィルムに照射されたとき、最大表面粗さは265nmの紫外線が照射されたときの値よりも増加するものと推測される。また、表面粗さの変化の傾向は、265nmの紫外線が照射されたときの変化の傾向と類似するものと推測される。
【0057】
●紫外線の中心波長と接触角との関係
積算光量の増加に伴う接触角の変化の傾向は、中心波長が265nmと280nmとで共通していない。すなわち、中心波長が280nmのとき、接触角は、積算光量「L24」までは殆ど低下せず、積算光量「L24」以上において急激に低下している。一方、中心波長が265nmのとき、接触角は、紫外線の照射開始と共に(積算光量「L14」以上で)急激に低下している。この差異も、紫外線の光子エネルギーの差異によるものと推測される。すなわち、光子エネルギーが増加するにつれて、被照射面における化学的結合の切断が促進されて、親水基の生成が早まるものと推測される。したがって、仮に、265nmよりも短い中心波長(例えば、240nm)の紫外線がフィルムに照射されたとき、接触角は紫外線の照射開始と共に低下して、積算光量「L15」よりも小さい積算光量で安定するものと推測される。すなわち、紫外線の波長が大きくなる(例えば、いわゆるUV-B領域に属し300nm未満の波長)と接触角減少状態の変動幅(角度幅)は大きくなり、紫外線の波長が小さくなる(例えば、いわゆるUV-C領域に属する波長)と接触角減少状態の変動幅(角度幅)は小さくなる。
【0058】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、本シート製法は、照射工程(S12)および塗布工程(S13)を含む。照射工程(S12)では、上面20aの表面粗さおよび上面20aにおける水の接触角を変化させるため、フィルム状の基材20の上面20aに紫外線が直接照射される。紫外線の照射前の基材20には、スラリーSLが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシート10の基材20からの離型を促進させる表面処理が施されていない。紫外線の波長は、200nmより長く300nmより短い。上面20aの表面粗さは、紫外線の積算光量が所定の第1積算光量「L1」まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、第1積算光量「L1」において最大表面粗さとなり、積算光量が第1積算光量「L1」より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、第2積算光量「L2」よりも大きくなると安定するように変化する。上面20aにおける接触角は、積算光量が所定の第4積算光量「L4」よりも大きくなると、積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、積算光量が第5積算光量「L5」よりも大きくなると安定するように変化する。紫外線の積算光量は、第1積算光量「L1」および第4積算光量「L4」よりも大きい光量に設定される。この構成によれば、紫外線の積算光量は、スラリーSLの塗布(セラミックグリーンシート10の状態)に影響を与える接触角(濡れ性)だけでなく、セラミックグリーンシート10の剥離に影響を与える表面粗さに基づいて設定可能となる。そのため、本シート製法では、離型処理が施されていない基材20に対してスラリーSLの均一な塗布が可能となると共に、同基材20からのセラミックグリーンシート10の剥離が可能となる。その結果、離型処理が施されている従来の基材が使用される場合と比較して、セラミックグリーンシート10の製造コストは低減され、シリコンなどの転写は生じない。
【0059】
また、以上説明した実施の形態によれば、基材20の形状は帯状である。基材20の短手方向において、上面20aは、セラミックグリーンシート10の端部が形成される端部領域20bと、端部領域20b間に位置する中央領域20cと、を含む。上面20aのうち、中央領域20c(および端部領域20b)の積算光量は、第3積算光量「L3」よりも大きくなるように設定される。この構成によれば、セラミックグリーンシート10と上面20aとの接触点は少なくなり、セラミックグリーンシート10の上面20aからの剥離性は向上する。
【0060】
また、以上説明した実施の形態によれば、第5積算光量「L5」は、第1積算光量「L1」よりも大きい。照射工程(S12)において、紫外線の積算光量は、第1積算光量「L1」および第5積算光量「L5」よりも大きくなるように設定される。この構成によれば、上面20aに対して、スラリーSLのムラの無い塗布が可能となる。
【0061】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、照射工程(S12)において、紫外線の中心波長は、265nmまたは280nmである。この構成によれば、オゾンが生成されることなく、紫外線は基材20の上面20aに確実に照射される。また、中心波長が265nmの紫外線が照射されることにより、接触角が小さい値で安定した後に表面粗さを微調整するような制御が可能となる。一方、中心波長が280nmの紫外線が照射されることにより、表面粗さを比較的小さい値で徐々に変化させつつ、接触角を大きく変化させるような制御が可能となる。
【0062】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、第1積算光量「L1」は紫外線の中心波長に依らず共通して(250J/cm2)、第3積算光量「L3」は第1積算光量「L1」の3倍(2倍~4倍の範囲内)である。この構成によれば、紫外線の積算光量に対する表面粗さは、実施例において説明されたとおりに変化する。そのため、本シート製法が確実に実施可能となる。
【0063】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、基材20は、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムである。この構成によれば、実施例において説明されたとおり、紫外線の積算光量に対する表面粗さの変化と接触角の変化との間に差異が確実に生じている。そのため、本シート製法が確実に実施可能となり、離型処理が施されていない基材20に対してスラリーSLのムラの無い塗布が可能となると共に、同基材20からのセラミックグリーンシート10の剥離が可能となる。
【0064】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本複合体製法は、フィルム状の基材20、および、基材20の上面20aに載置されているセラミックグリーンシート10を備える複合体11の製造方法である。セラミックグリーンシート10は、本シート製法により製造されている。この構成によれば、上面20aに載置されているセラミックグリーンシート10の厚みは、均等な厚みに制御される。また、剥離工程(S15)において、セラミックグリーンシート10は、基材20から容易に剥離可能である。
【0065】
●その他の実施形態●
なお、以上説明した実施の形態において、本シート製法および本複合体製法は、積層セラミックコンデンサの製造方法に含まれていた。これに代えて、本シート製法および本複合体製法は、他の積層セラミック電子部品(例えば、チップインダクタ)の製造方法に含まれていてもよい。
【0066】
また、以上説明した実施の形態において、基材20は、透明でなくてもよい。
【0067】
さらに、以上説明した実施例において、積算光量「L13」「L23」(第3積算光量「L3」)は、積算光量「L11」「L21」(第1積算光量「L1」)の3倍であった。しかしながら、実施例において、500J/cm
2~750J/cm
2および750J/cm
2~1000J/cm
2における表面粗さは測定されておらず、
図6において、第3積算光量「L3」に対応する積算光量「L13」「L23」は750J/cm
2前後になり得る。そのため、第3積算光量「L3」は、第1積算光量「L1」の3倍に限定されず、第1積算光量「L1」の2倍よりも大きく、4倍未満でもよい。
【0068】
さらにまた、照射工程(S12)において、基材20の短手方向において、基材20の端部領域20bに対する紫外線の照射条件(積算光量)は、端部領域20b間に位置する中央領域20cに対する紫外線の照射条件(積算光量)と異なっていてもよい。
【0069】
図8は、基材20の短手方向において、端部領域20bおよび中央領域20cに対する紫外線の照射条件を異ならせた状態を示す模式図であり、(a)は端部領域20bの積算光量が中央領域20cの積算光量より小さい状態を示し、(b)は端部領域20bの積算光量が中央領域20cの積算光量より大きい状態を示す。
同図の黒塗り矢印は積算光量の大きさを示していて、その長さが長いほど積算光量は大きいことを意味している。また、説明の便宜上、同図の二点鎖線は、セラミックグリーンシート10を示している。
【0070】
前述のとおり、端部領域20bの濡れ性が良好な場合、接触角が小さくなるため、端部領域20bにおいてスラリーSLの厚み、すなわち、セラミックグリーンシート10の厚みが薄くなる。ここで、端部領域20bの積算光量が中央領域20cの積算光量よりも小さい場合、端部領域20bの接触角は、中央領域20cの接触角よりも大きくなる。すなわち、端部領域20bの濡れ性は、中央領域20cの濡れ性よりも悪くなる。この構成では、前述した端部領域20bにおける接触角の減少によるセラミックグリーンシート10の厚みの減少が抑制される。また、端部領域20bにおける表面粗さは、中央領域20cにおける表面粗さよりも荒くなり易い。したがって、故意に端部領域20bの表面粗さを中央領域20cの表面粗さよりも大きくすることにより、端部領域20bにおいて、セラミックグリーンシート10の剥離の起点が形成し易くなる。すなわち、例えば、中央領域20cの積算光量は第3積算光量「L3」よりも大きくなるように設定されて、端部領域20bの積算光量は第1積算光量「L1」よりも大きく、かつ、第3積算光量「L3」よりも小さい範囲に設定されることにより、端部領域20bにおいて、セラミックグリーンシート10の剥離の起点が形成し易くなる。起点の形成の詳細は、後述される。
【0071】
図9は、表面粗さとセラミックグリーンシート10の剥離との関係を説明する模式図である。同図は、説明の便宜上、セラミックグリーンシート10を、セラミックグリーンシート10を構成するセラミック粉末により示している。また、同図は、端部領域20bの表面粗さが中央領域20cの表面粗さよりも大きい状態を示している。
【0072】
端部領域20bでは、表面粗さが比較的大きいため、セラミックグリーンシート10と上面20aとの接触点が全体的に多くなり、セラミックグリーンシート10の剥離性は低下する。しかしながら、端部領域20bにおける凹凸の凸部は比較的高く、鋭くなるため、凸部の頂点近傍ではセラミックグリーンシート10と上面20aとの接触点が局所的に少なくなり、セラミックグリーンシート10は局所的に剥がれ易くなる。一方、中央領域20cでは、表面粗さが比較的小さいため、セラミックグリーンシート10と上面20aとの接触点が全体的に少なくなり、セラミックグリーンシート10の剥離性は向上する。また、中央領域20cにおける凹凸の凸部は比較的低く、鈍るため、凸部の頂点近郷でもセラミックグリーンシート10と基材20の接触点の数は、殆ど変わらない。そのため、セラミックグリーンシート10は、全体的に剥がれ易くなる。セラミックグリーンシート10を上面20aから剥離する際の起点はセラミックグリーンシート10の端部に形成されるため、端部領域20bの表面粗さが中央領域20cの表面粗さよりも大きいと、端部領域20bにおいて起点が形成され易くなると共に、中央領域20cにおいてセラミックグリーンシート10は上面20aから剥がれ易くなる。
【0073】
その他の実施形態の説明において参照される主な図面は、
図8に戻る。
一般的に、紫外線照射装置100の照射範囲内における照射量は、照射範囲の外縁部において弱くなる傾向にある。したがって、基材20の短手方向の長さ(幅)が照射範囲とほぼ同じ場合、端部領域20bの積算光量が中央領域20cの積算光量よりも小さくなり易い。すなわち、短手方向において積算光量が不均一になり易い。ここで、端部領域20bの積算光量が中央領域20cの積算光量より大きい場合、前述した積算光量の不均一が解消される。このように、部分的に照射条件を変更することにより、塗布工程(S13)において、セラミックグリーンシート10を均一に塗布できると共に、剥離工程(S15)において、セラミックグリーンシート10を均一に剥離できる。
【0074】
●本発明の実施態様●
次に、以上説明した各実施形態から把握される本発明の実施態様について、各実施形態において記載された用語と符号とを援用しつつ、以下に記載する。
【0075】
本発明の第1の実施態様は、フィルム状の基材(例えば、基材20)の一面(例えば、上面20a)に紫外線を直接照射し、前記一面の表面粗さ(例えば、二乗平均平方根粗さ(Rq))と前記一面における水の接触角とを変化させる照射工程(例えば、照射工程(S12))と、前記紫外線が照射された前記一面に、セラミック粒子を含むスラリー(例えば、スラリーSL)を塗布する塗布工程(例えば、塗布工程(S13))と、を含み、前記紫外線の照射前の前記基材には、前記スラリーが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシートの前記基材からの離型を促進させる表面処理が施されておらず、前記紫外線の波長は、200nmより長く300nmより短く、前記表面粗さは、前記紫外線の積算光量が所定の第1粗さ光量(例えば、第1積算光量「L1」)まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、前記第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、前記積算光量が前記第1粗さ光量より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1粗さ光量よりも大きい第2粗さ光量(例えば、第3積算光量「L3」)よりも大きくなると安定するように変化して、前記接触角は、前記積算光量が所定の第1濡れ光量(例えば、第4積算光量「L4」)よりも大きくなると、前記積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1濡れ光量よりも大きい第2濡れ光量(例えば、第5積算光量「L5」)よりも大きくなると安定するように変化して、前記積算光量は、前記第1粗さ光量および前記第1濡れ光量よりも大きい光量に設定される、セラミックグリーンシート(例えば、セラミックグリーンシート10)の製造方法である。
この構成によれば、離型処理が施されていない基材(上面)に対してスラリーの均等な塗布が可能となると共に、同上面からのセラミックグリーンシートの剥離が可能となる。
【0076】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記基材の形状は、帯状で、前記基材の短手方向において、前記一面は、前記セラミックグリーンシートの端部が形成される端部領域(例えば、端部領域20b)と、前記端部領域間に位置する中央領域(例えば、中央領域20c)と、を含み、前記一面のうち、前記中央領域の前記積算光量は、前記第2粗さ光量よりも大きくなるように設定される、セラミックグリーンシートの製造方法である。
この構成によれば、セラミックグリーンシートの上面からの剥離性は向上する。
【0077】
本発明の第3の実施態様は、第2の実施態様において、前記一面のうち、前記端部領域の前記積算光量は、前記第1粗さ光量より大きく、かつ、前記第2粗さ光量よりも小さい範囲内、に設定される、セラミックグリーンシートの製造方法である。
この構成によれば、端部領域において剥離の起点が形成され易くなると共に、中央領域においてセラミックグリーンシートは上面から剥がれ易くなる。
【0078】
本発明の第4の実施態様は、第1の実施態様において、前記第2濡れ光量は、前記第1粗さ光量よりも大きく、前記積算光量は、前記第2粗さ光量および前記第2濡れ光量よりも大きくなるように設定される、セラミックグリーンシートの製造方法である。
この構成によれば、上面に対して、スラリーのムラの無い塗布が可能となる。
【0079】
本発明の第5の実施態様は、第1乃至第4のいずれか1の実施態様において、前記紫外線の中心波長は、265nmまたは280nmである、セラミックグリーンシートの製造方法である。
この構成によれば、オゾンが生成されることなく、紫外線は基材の上面に確実に照射される。
【0080】
本発明の第6の実施態様は、第5の実施態様において、前記第1粗さ光量は、250J/cm2であり、前記第2粗さ光量は、前記第1粗さ光量の2倍~4倍である、セラミックグリーンシートの製造方法である。
この構成によれば、本シート製法が確実に実施可能となる。
【0081】
本発明の第7の実施態様は、第1乃至第6のいずれか1の実施態様において、前記基材は、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムである、セラミックグリーンシートの製造方法である。
この構成によれば、本シート製法が確実に実施可能となる。
【0082】
本発明の第8の実施態様は、フィルム状の基材(例えば、基材20)と、前記基材の一面(例えば、上面20a)に載置されているセラミックグリーンシート(例えば、セラミックグリーンシート10)と、を有してなる複合体(例えば、複合体11)の製造方法であって、前記セラミックグリーンシートは、第1の実施態様に記載のセラミックグリーンシートの製造方法により製造される、複合体の製造方法である。
この構成によれば、離型処理が施されていない基材に対してスラリーの均等な塗布が可能となると共に、同基材からのセラミックグリーンシートの剥離が可能となる。
【符号の説明】
【0083】
1 積層セラミックコンデンサ
10 セラミックグリーンシート
11 複合体
20 基材
20a 上面
20b 端部領域
20c 中央領域
【手続補正書】
【提出日】2023-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材の一面に紫外線を直接照射して、前記一面の表面粗さと前記一面の水の接触角とを変化させる照射工程と、
前記紫外線が照射された前記一面に、セラミック粒子を含むスラリーを塗布する塗布工程と、
を含み、
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムであり、
前記紫外線の照射前の前記基材には、前記スラリーが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシートの前記基材からの離型を促進させる表面処理が施されておらず、
前記紫外線の中心波長は、200nmより長く280nm以下であり、
前記表面粗さは、前記紫外線の積算光量が所定の第1粗さ光量まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、前記第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、前記積算光量が前記第1粗さ光量より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1粗さ光量よりも大きい第2粗さ光量よりも大きくなると安定するように変化して、
前記接触角は、前記積算光量が所定の第1濡れ光量よりも大きくなると、前記積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1濡れ光量よりも大きい第2濡れ光量よりも大きくなると安定するように変化して、
前記第1粗さ光量と前記第2粗さ光量それぞれは、前記紫外線が累積的に照射される照射時間により定まる前記紫外線の前記積算光量であり、
前記積算光量は、前記第1粗さ光量および前記第1濡れ光量よりも大きい光量に設定される、
セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】
前記基材の形状は、帯状で、
前記基材の短手方向において、前記一面は、
前記セラミックグリーンシートの端部が塗布される端部領域と、
前記端部領域間に位置する中央領域と、
を含み、
前記一面のうち、前記中央領域の前記積算光量は、前記第2粗さ光量よりも大きくなるように設定される、
請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項3】
前記一面のうち、前記端部領域の前記積算光量は、前記第1粗さ光量より大きく、かつ、前記第2粗さ光量よりも小さい範囲内、に設定される、
請求項2に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項4】
前記第2濡れ光量は、前記第1粗さ光量よりも大きく、
前記積算光量は、前記第2粗さ光量および前記第2濡れ光量よりも大きくなるように設定される、
請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項5】
前記紫外線の前記中心波長は、265nmまたは280nmである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項6】
前記第1粗さ光量の下限値は、250J/cm2であり、
前記第2粗さ光量の下限値は、前記第1粗さ光量の2倍~4倍である、
請求項5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項7】
フィルム状の基材と、
前記基材の一面に載置されているセラミックグリーンシートと、
を有してなる複合体の製造方法であって、
前記セラミックグリーンシートは、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法により製造される、
複合体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一実施態様におけるセラミックグリーンシートの製造方法は、フィルム状の基材の一面に紫外線を直接照射し、前記一面の表面粗さと前記一面における水の接触角とを変化させる照射工程と、前記紫外線が照射された前記一面に、セラミック粒子を含むスラリーを塗布する塗布工程と、を含み、前記基材は、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムであり、前記紫外線の照射前の前記基材には、前記スラリーが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシートの前記基材からの離型を促進させる表面処理が施されておらず、前記紫外線の中心波長は、200nmより長く280nm以下であり、前記表面粗さは、前記紫外線の積算光量が所定の第1粗さ光量まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、前記第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、前記積算光量が前記第1粗さ光量より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1粗さ光量よりも大きい第2粗さ光量よりも大きくなると安定するように変化して、前記第1粗さ光量と前記第2粗さ光量 それぞれは、前記紫外線が累積的に照射される照射時間により定まる積算光量であり、前記接触角は、前記積算光量が所定の第1濡れ光量よりも大きくなると、前記積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1濡れ光量よりも大きい第2濡れ光量よりも大きくなると安定するように変化して、前記積算光量は、前記第1粗さ光量および前記第1濡れ光量よりも大きい光量に設定される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材の一面に紫外線を直接照射して、前記一面の表面粗さと前記一面の水の接触角とを変化させる照射工程と、
前記紫外線が照射された前記一面に、セラミック粒子を含むスラリーを塗布する塗布工程と、
を含み、
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムであり、
前記紫外線の照射前の前記基材には、前記スラリーが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシートの前記基材からの離型を促進させる表面処理が施されておらず、
前記紫外線の中心波長は、200nmより長く280nm以下であり、
前記表面粗さは、前記紫外線の積算光量が所定の第1粗さ光量まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、前記第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、前記積算光量が前記第1粗さ光量より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1粗さ光量よりも大きい第2粗さ光量よりも大きくなると安定するように変化して、
前記接触角は、前記積算光量が所定の第1濡れ光量よりも大きくなると、前記積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1濡れ光量よりも大きい第2濡れ光量よりも大きくなると安定するように変化して、
前記第1粗さ光量と前記第2粗さ光量それぞれは、前記紫外線が累積的に照射される照射時間により定まる前記紫外線の前記積算光量であり、
前記第1粗さ光量は、250J/cm
2
であり、
前記第2粗さ光量は、750J/cm
2
であり、
前記積算光量は、前記第1粗さ光量および前記第1濡れ光量よりも大きい光量に設定される、
セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】
前記基材の形状は、帯状で、
前記基材の短手方向において、前記一面は、
前記セラミックグリーンシートの端部が塗布される端部領域と、
前記端部領域間に位置する中央領域と、
を含み、
前記一面のうち、前記中央領域の前記積算光量は、前記第2粗さ光量よりも大きくなるように設定される、
請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項3】
前記一面のうち、前記端部領域の前記積算光量は、前記第1粗さ光量より大きく、かつ、前記第2粗さ光量よりも小さい範囲内、に設定される、
請求項2に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項4】
前記第2濡れ光量は、前記第1粗さ光量よりも大きく、
前記積算光量は、前記第2粗さ光量および前記第2濡れ光量よりも大きくなるように設定される、
請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項5】
前記紫外線の前記中心波長は、265nmまたは280nmである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項6】
フィルム状の基材と、
前記基材の一面に載置されているセラミックグリーンシートと、
を有してなる複合体の製造方法であって、
前記セラミックグリーンシートは、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法により製造される、
複合体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一実施態様におけるセラミックグリーンシートの製造方法は、フィルム状の基材の一面に紫外線を直接照射し、前記一面の表面粗さと前記一面における水の接触角とを変化させる照射工程と、前記紫外線が照射された前記一面に、セラミック粒子を含むスラリーを塗布する塗布工程と、を含み、前記基材は、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルムであり、前記紫外線の照射前の前記基材には、前記スラリーが乾燥されることにより形成されるセラミックグリーンシートの前記基材からの離型を促進させる表面処理が施されておらず、前記紫外線の中心波長は、200nmより長く280nm以下であり、前記表面粗さは、前記紫外線の積算光量が所定の第1粗さ光量まで大きくなるにつれて大きくなるように変化して、前記第1粗さ光量において最大表面粗さとなり、前記積算光量が前記第1粗さ光量より大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1粗さ光量よりも大きい第2粗さ光量よりも大きくなると安定するように変化して、前記接触角は、前記積算光量が所定の第1濡れ光量よりも大きくなると、前記積算光量が大きくなるにつれて小さくなるように変化して、前記積算光量が前記第1濡れ光量よりも大きい第2濡れ光量よりも大きくなると安定するように変化して、前記第1粗さ光量と前記第2粗さ光量 それぞれは、前記紫外線が累積的に照射される照射時間により定まる積算光量であり、前記第1粗さ光量は、250J/cm
2
であり、前記第2粗さ光量は、750J/cm
2
であり、前記積算光量は、前記第1粗さ光量および前記第1濡れ光量よりも大きい光量に設定される。