(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169876
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】取り外し可能車を備えるクロノグラフモジュール
(51)【国際特許分類】
G04F 7/08 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
G04F7/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077637
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】22173862.8
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フィリップ・ロシャ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】取り付けと取り外しがしやすいような取り外し可能車を備えるクロノグラフモジュールを提供する。
【解決手段】クロノグラフモジュール1であって、第1のディスク4を支持する一次シャフト3と、一次シャフト3に取り付けられる取り外し可能車2とを備え、取り外し可能車2には、周部ギア構造と、一次シャフト3を把持する第1の弾性アームと第2の弾性アームがあり、一次シャフト3には、半径方向支持面があり、半径方向支持面は、第1の弾性アームと第2の弾性アームを支持することによって、取り外し可能車2を一次シャフト3に組み付け、クロノグラフモジュール1における取り外し可能車2の構成と寸法は、クロノグラフモジュール1の下段の重なり部品の組み付けが、一次シャフト3がクロノグラフモジュール1に取り付けられているときに取り外し可能車2がないことを必要とするように、取り外し可能車2と重なり部品との重なりを発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメントのためのクロノグラフモジュール(1)であって、
前記クロノグラフモジュール(1)は、プレート及び/又はプレートブリッジと、縦軸に沿って延在する一次シャフト(3)とを備え、
前記一次シャフト(3)は、前記縦軸のまわりを回転可能であり、
前記一次シャフト(3)は、前記一次シャフト(3)の前記縦軸に対して実質的に直交する平面に延在している第1のディスク(4)を支持し、
前記一次シャフト(3)は、前記第1のディスク(4)が前記クロノグラフモジュール(1)のギア列と係合するように前記プレート及び/又は前記プレートブリッジに取り付けられ、
前記クロノグラフモジュール(1)は、前記一次シャフト(3)に取り付けられる取り外し可能車(2)を備え、
前記取り外し可能車(2)には、周部ギア構造と、前記一次シャフト(3)を把持するように構成しているクランプ(30)を形成する第1の弾性アーム(22)と第2の弾性アーム(23)があり、
前記一次シャフト(3)には、半径方向にて支持する半径方向支持面(28)があり、
この半径方向支持面(28)は、前記第1の弾性アーム(22)と前記第2の弾性アーム(23)を支持し、これによって、前記取り外し可能車(2)を前記一次シャフト(3)に組み付け、
前記クロノグラフモジュール(1)には、前記クロノグラフモジュール(1)の下段に少なくとも1つの重なり部品があり、
前記クロノグラフモジュール(1)における前記取り外し可能車(2)の構成と寸法は、前記重なり部品の組み付けが、前記クロノグラフモジュール(1)において前記取り外し可能車(2)がないこと及び前記一次シャフト(3)があることを必要とするように、前記取り外し可能車(2)と前記重なり部品との重なりを発生させるものである
ことを特徴とするクロノグラフモジュール。
【請求項2】
前記重なりは、前記取り外し可能車(2)の直径の10分の1から半分までの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項3】
前記一次シャフト(3)の端(25)には、前記クランプ(30)のための半径方向支持面(28)がある
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項4】
前記クランプ(30)は、自由状態において、前記半径方向支持面(28)に外接する円筒の半径よりも小さい半径の円筒に外接される
ことを特徴とする請求項3に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項5】
前記半径方向支持面(28)は、円錐台の面である
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項6】
前記2つのアーム(22、23)にはそれぞれ、中央ノッチがあり、これによって、前記一次シャフト(3)の前記端(25)のためのオリフィスを形成し、
前記オリフィスは、好ましくは実質的に円形である
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項7】
二次シャフト(5)と、前記二次シャフト(5)上に配置されるクロノグラフの駆動ピニオン(13)と、三次シャフト(8)と、前記三次シャフト(8)上に配置される分カウンター車(9)とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項8】
四次シャフト(7)と、前記四次シャフト(7)上に配置される第2のディスク(6)とを備え、
前記四次シャフト(7)は、前記二次シャフト(5)の一部のまわりに配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項9】
前記第1のディスク(4)は、前記二次シャフト(5)上に配置されるクロノグラフの前記第2のディスク(6)と噛み合う分カウンターの駆動車である
ことを特徴とする請求項8に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項10】
前記取り外し可能車(2)は、クロノグラフの前記分カウンター車(9)と噛み合う
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項11】
前記クロノグラフがアクチュエートされていない休み位置と、前記クロノグラフが前記第2のディスク(6)によって駆動されて前記二次シャフト(5)をアクチュエートする動作位置の間にて、前記第2のディスク(6)の上方にて前記二次シャフト(5)のまわりを摺動する連結フランジ(15)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項12】
前記一次シャフト(3)には、前記取り外し可能車(2)を前記一次シャフト(3)の縦軸に沿った位置に保持するように構成している軸方向当接支持面(29)がある
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項13】
前記重なり部品は、連結フランジ(15)、及び/又は前記ハンマー(17)、及び/又は回転ペイン(11)である
ことを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフモジュール。
【請求項14】
プレートと、駆動手段と、請求項1に記載のクロノグラフモジュール(1)とを備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り外し可能車を備えるクロノグラフモジュールに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなクロノグラフモジュールを少なくとも1つ備える計時器用ムーブメントに関する。
【0003】
本発明は、計時器用機構の分野に関し、特に、ギア列に関する。
【背景技術】
【0004】
一部の計時器用ムーブメントには複雑機構があり、これはムーブメントにおける特別な取り付けを必要とする。例えば、連結式クロノグラフの場合、車やピニオンのようなギアディスクを、ムーブメントに既に取り付けられたシャフト上に組み付ける必要がある。
【0005】
実際に、伝統的なクロノグラフにおいて、ムーブメントの一次モジュールの第2のディスクのシャフト上に追加の車を配置して、変位運動を獲得してクロノグラフモジュールへと伝達して、クロノグラフモジュールをアクチュエートすることが一般的である。
【0006】
他のタイプのクロノグラフの場合、取り外し可能車は、伝達ディスクの中間シャフト上に配置され、この伝達ディスクは、クロノグラフの秒カウンターのディスクをクロノグラフの分カウンターのディスクに接続する。
【0007】
別のクロノグラフモジュールの構成も可能である。また、このような取り外し可能車をシャフト上に組み付けることを必要とする別の複雑機構もある。
【0008】
しかし、このような取り外し可能車の組み付けは容易ではない。なぜなら、この車を固定するシャフトは、必然的に、ムーブメントに既に取り付けられているからである。実際に、シャフトは、その両端におけるベアリングブロック内に保持され、これらのベアリングブロックは、プレートやプレートブリッジにハフティングによって取り付けられる。これらのプレートやプレートブリッジは、取り外し可能車がシャフト上に存在していれば、その後に追加することができない。すなわち、取り外し可能車が既に固定されていれば、取り外し可能車とともにシャフトを取り付けることはできない。シャフトがプレートに少なくとも部分的に取り付けられた後に、取り外し可能車をシャフトとともに組み付けられなければならない。
【0009】
このために、取り外し可能車の中心においてその取り外し可能車を通り抜けるハブが一般的には用いられ、シャフトの円錐台状の端がハブ内で押されて取り外し可能車を担持する。
【0010】
しかし、このような押す動作には、いくつかの課題がある。
【0011】
一方で、特定の部品が早期に摩耗してしまうリスクがよく知られている。特に、シャフト及び/又は取り外し可能車は、望ましくない座屈や屈曲をしてしまうことがあり、このことによって、ムーブメントの適切な動作を妨げてしまうことがある。
【0012】
他方、ハブは、取り外し可能車の押圧や支持に耐えるように概して比較的厚く、取り外し可能車は、取り付け時に大きさを変えてムーブメント内に搭載することができるようにすることが必要である。また、必要な場合にムーブメントにおける追加の車や部品を分解することは、追加の車の分解に依存し、このような分解においてはハブをシャフトからねじって外す必要があり、難しい。これらの操作には時間がかかり、特別な道具やスキルを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の課題に対処するように意図されており、取り付けと取り外しがしやすいような取り外し可能車を備えるクロノグラフモジュールを提供するように意図されている。
【0014】
このために、本発明は、計時器用ムーブメントのためのクロノグラフモジュールに関し、前記クロノグラフモジュールは、プレート及び/又はプレートブリッジと、縦軸に沿って延在する一次シャフトとを備え、前記一次シャフトは、前記縦軸のまわりを回転可能であり、前記一次シャフトは、前記一次シャフトの前記縦軸に対して実質的に直交する平面に延在している第1のディスクを支持し、前記一次シャフトは、前記第1のディスクが前記クロノグラフモジュールのギア列と係合するように前記プレート及び/又は前記プレートブリッジに取り付けられる。
【0015】
本発明は、前記クロノグラフモジュールは、前記一次シャフトに取り付けられる取り外し可能車を備え、前記取り外し可能車には、周部ギア構造と、前記一次シャフトを把持するように構成しているクランプを形成する第1の弾性アームと第2の弾性アームがあり、前記一次シャフトには、半径方向にて支持する半径方向支持面があり、この半径方向支持面は、前記第1の弾性アームと前記第2の弾性アームを支持し、これによって、前記取り外し可能車を前記一次シャフトに組み付け、前記クロノグラフモジュールには、前記クロノグラフモジュールの下段に少なくとも1つの重なり部品があり、前記クロノグラフモジュールにおける前記取り外し可能車の構成と寸法は、前記重なり部品の組み付けが、前記クロノグラフモジュールにおいて前記取り外し可能車がないこと及び前記一次シャフトがあることを必要とするように、前記取り外し可能車と前記重なり部品との重なりを発生させるものである、点で画期的である。
【0016】
クランプを形成する弾性アームのおかげで、前記取り外し可能車は、容易に、一次シャフトに取り付けたり一次シャフトから取り外したりすることができる。したがって、モジュールを計時器用ムーブメントに取り付けるときに、部品に欠陥を発生させる可能性のあるハフティングによって取り付けることが回避される。また、前記取り外し可能車は、特定の道具を用いることなく、容易に取り外しと再装着を行うことができ、これによって、その取り外し可能車の取り外しを必要とする部品にアクセスすることが可能になる。
【0017】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記重なりは、前記取り外し可能車の直径の10分の1から半分までの範囲内である。
【0018】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記一次シャフトの端には、前記クランプのための半径方向支持面がある。
【0019】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記クランプは、自由状態において、前記半径方向支持面に外接する円筒の半径よりも小さい半径の円筒に外接される。
【0020】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記半径方向支持面は、円錐台の面である。
【0021】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記2つのアームにはそれぞれ、中央ノッチがあり、これによって、前記一次シャフトの前記端のためのオリフィスを形成し、前記オリフィスは、好ましくは実質的に円形である。
【0022】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記クロノグラフモジュールは、二次シャフトと、前記二次シャフト上に配置されるクロノグラフの駆動ピニオンと、三次シャフトと、前記三次シャフト上に配置される分カウンター車とを備える。
【0023】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記クロノグラフモジュールは、四次シャフトと、前記四次シャフト上に配置される第2のディスクとを備え、前記四次シャフトは、前記二次シャフトの一部のまわりに配置されている。
【0024】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記第1のディスクは、前記二次シャフト上に配置されるクロノグラフの前記第2のディスクと噛み合う分カウンターの駆動車である。
【0025】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記取り外し可能車は、クロノグラフの前記分カウンターのディスクと噛み合う。
【0026】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記クロノグラフモジュールは、前記クロノグラフがアクチュエートされていない休み位置と、前記クロノグラフが前記第2のディスクによって駆動されて前記二次シャフトをアクチュエートする動作位置の間にて、前記第2のディスクの上方にて前記二次シャフトのまわりを摺動する連結フランジを備える。
【0027】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記一次シャフトには、前記取り外し可能車を前記一次シャフトの縦軸に沿った位置に保持するように構成している軸方向当接支持面がある。
【0028】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記重なり部品は、連結フランジ、及び/又は前記ハンマー、及び/又は回転ペインである。
【0029】
本発明は、さらに、前記のようなクロノグラフモジュールを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0030】
添付の図面を参照しながら大まかなガイドとして与えられる以下の説明を読むことによって、他の特定の特徴や利点が明確になる。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る取り外し可能車と、この取り外し可能車が取り付けられた一次シャフトとを備えるクロノグラフモジュールを上方から見た斜視図である。
【
図2】
図1のクロノグラフモジュールを下方から見た斜視図である。
【
図3】
図1のクロノグラフモジュールを上から見た図である。
【
図4】
図1のクロノグラフモジュールの断面図である。
【
図5】前記取り外し可能車と、前記一次シャフトの端の斜視図である。
【
図6】本発明に係るクロノグラフモジュールを備える計時器用ムーブメントを上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、計時器用ムーブメントのためのクロノグラフモジュール1に関する。
図1~4に示しているクロノグラフモジュール1は、一次シャフト3と、伝達シャフトと、ここではクロノグラフの二次シャフトである二次シャフト5と、ここではクロノグラフの分カウンターシャフトである三次シャフト8と、ここでは二次シャフトである四次シャフト7とを備える。
【0033】
この実施形態において、二次シャフト5は、四次シャフト7の内側に配置される。したがって、二次シャフト5と四次シャフト7は同軸である。四次シャフト7は、二次シャフト5とは独立して回転することができる。クロノグラフの動作モードにおいて、二次シャフト5と四次シャフト7が同時に回転し、四次シャフト7が二次シャフト5を駆動する。
【0034】
一次シャフト3は、二次シャフト5と三次シャフト8の間に配置され、3つのシャフトを通り抜ける平面に対してオフセットされている。したがって、一次シャフト3、二次シャフト5及び三次シャフト8は、実質的に同じレベルにて、三角形の頂点に配置される。
【0035】
クロノグラフモジュール1は、さらに、第3のシャフト8上に配置された分カウンター車9と、二次シャフト5上に配置されたクロノグラフの駆動ピニオン13と、四次シャフト7上に配置された第2のディスク6とを備える。分カウンター車9と第2のディスク6は、対応するシャフトの上側レベルに配置され、クロノグラフの駆動ピニオン13は、二次シャフト5の下側レベルに配置される。
【0036】
クロノグラフモジュール1には、さらに、第2のディスク6からクロノグラフの駆動ピニオン13へと運動を伝達するように構成している連結フランジ15がある。
【0037】
連結フランジ15は、第2のディスク6の上方にて、二次シャフト5上に配置される。連結フランジ15は、クロノグラフモジュール1がアクチュエートされない休み位置と第2のディスク6によって駆動される動作位置の間にて、二次シャフト5のまわりを縦方向に摺動する。
【0038】
動作位置において、二次シャフト5は、連結フランジ15によって四次シャフト7とともに駆動される。したがって、クロノグラフの駆動ピニオン13は、連結フランジ15を介して第2のディスク6によって回転する。
【0039】
クロノグラフモジュール1は、さらに、ここでは分カウンターの駆動ディスクである第1のディスク4を備え、この第1のディスク4は、一次シャフト3の下側レベルにて、一次シャフト3上に配置される。第1のディスク4は、クロノグラフの駆動ピニオン13と噛み合う。したがって、連結フランジ15の動作位置において、クロノグラフの駆動ピニオン13が第1のディスク4と一次シャフト3を回転させる。
【0040】
また、クロノグラフモジュール1は、ハンマー17と、ハンマー17が支持する回転ペイン11とを備える。
【0041】
クロノグラフモジュール1は、連結フランジ15の上方にて、二次シャフト5上に配置されるクロノグラフ車の心臓状部品14と、クロノグラフの分カウンター車9の下にて、分カウンターの第2の心臓状部品12とを備える。
【0042】
また、クロノグラフモジュール1は、一次シャフト3の上端に配置される取り外し可能車2を備える。取り外し可能車2は、三次シャフト8の分カウンター車9と噛み合う伝達ディスクである。したがって、一次シャフト3が回転すると、取り外し可能車2は、分カウンター車9と三次シャフト8の回転をアクチュエートする。
【0043】
この実施形態において、取り外し可能車2は、
図5に示している伝達車であり、この車は、環状でありギア歯がある周部ギア構造21を有する。
【0044】
この取り外し可能車2には、さらに、少なくとも第1の半径方向に弾性があるアーム22と、少なくとも第2の半径方向に弾性があるアーム23がある。好ましくは、アーム22、23どうしは、対称であり、実質的に平行である。アーム22、23は、リングの内側にあり、アーム22、23はそれぞれ、周部ギア構造21の2つの反対側の点どうしを接続する。
【0045】
一次シャフト3には、当接支持体として取り外し可能車2を一次シャフト3上に保持するように構成している軸方向当接支持面29がある。軸方向当接体29は、zにおける縦軸に沿った一次シャフト3上の取り外し可能車2の正確な位置を定めることを可能にする。これは、この方向に沿った車の位置を制御することが困難なハフティングにおける取り付けとは対照的である。
【0046】
この第1の弾性アーム22と第2の弾性アーム23は、一緒にクランプ30を形成し、このクランプ30は、軸方向当接支持面7の近くにて一次シャフト3にある半径方向支持面28を把持するように構成している。このようにして、取り外し可能車2と一次シャフト1の間の摩擦が確実になる。
【0047】
クランプ30は、一次シャフト3の端25を把持するように構成している。このために、一次シャフト3には、その端25に、半径方向支持面28があり、この半径方向支持面28上にて第1の弾性アーム22と第2の弾性アーム23が支持される。アーム22、23の弾性のおかげで、これらのアーム22、23どうしを分離して、これらのアーム22、23の間に一次シャフト2の端25を挿入して、アーム22、23が摩擦によって半径方向支持面28を把持することが可能となる。したがって、一次シャフト上に追加の車を組み付けることができる。
【0048】
半径方向支持面28は、好ましくは、逆円錐台の面であり、これによって、この逆円錐台の面の下に位置する当接体が当たって、取り外し可能車2を端25に保持する。逆円錐台の面の基部が端25の端にあり、逆円錐台の面の頂部が一次シャフト3の中央の方を向いている。
【0049】
シャフト1上の取り外し可能車2の組み付けのために、取り外し可能車2のアーム22、23の弾性を利用して、正しいポジショニングを可能にし、好ましくは、適切な位置でクリックするようにする。
【0050】
一次シャフト3には、第1の弾性アーム22と第2の弾性アーム23を半径方向に押し返すように構成している導入用斜面27があり、これによって、一次シャフト3上に取り外し可能車2を導入することを容易にする。この導入用斜面27は、例えば、一次シャフト3の端に位置する面取り部である。
【0051】
好ましいことに、自由状態において、前記クランプ30は、半径方向支持面28に外接する円筒の半径よりも半径が小さい円筒によって外接される。
【0052】
このために、2つのアーム22、23にはそれぞれ、中央ノッチ24があり、これによって、一次シャフト3の端25のためのオリフィスを形成し、このオリフィスは、好ましくは、実質的に円形である。
【0053】
クロノグラフモジュール1には、クロノグラフモジュール1の下段に取り付けられる少なくとも1つの重なり部品がある。クロノグラフモジュール1における取り外し可能車2の構成と寸法は、前記重なり部品の上に取り外し可能車2の重なりを発生させる。
【0054】
説明している実施形態において、いくつかの重なり部品があり、このために、クロノグラフモジュール1において組み付けることができるように取り外し可能車2がないことを必要とする。
【0055】
ここで、重なり部品は、連結フランジ15、回転ペイン11、及びハンマー17である。取り外し可能車2は、一次シャフト3上に組み付けられるときに、重なり部品と重なる。すなわち、取り外し可能車2の延長平面に対して直交し一次シャフト3と平行な射影において、重なり部品と重なる。
【0056】
連結フランジ15の半径は、一次シャフト3と二次シャフト5の間の距離から取り外し可能車2の半径を引いた値よりも大きく、これによって、クロノグラフモジュール1において連結フランジ15と取り外し可能車2が組み付けられる際に、連結フランジ15の周部が取り外し可能車2の周部の下方に配置される。
【0057】
回転ペイン11は、一次シャフト3の近くに配置される。回転ペイン11の一部は、取り外し可能車2の直下を通る。ハンマー17の一部も、取り外し可能車2の直下を通る。
【0058】
この場合、これらの重なり部品の組み付けには、一次シャフト2がクロノグラフモジュール1に取り付けられるときに、取り外し可能車2がないことを必要とする。実際に、これらの重なり部品をクロノグラフモジュール1に取り付けることは、取り外し可能車2が一次シャフト3上に既に取り付けられている場合には、できない。
【0059】
クランプ30のおかげで、取り外し可能車2を、一次シャフト3から容易に取り外すことができ、又は一次シャフト3とともに組み付けることができる。クランプ30は、特に、取り外し可能車2の取り外しを必要とするようなクロノグラフモジュール1の部品の修理やクリーニングを容易にする。
【0060】
図6は、本発明に係るクロノグラフモジュールが取り付けられている計時器用ムーブメントを示している。上面にて、分カウンター車9と、第2のディスク6と、分カウンター車9と噛み合う取り外し可能車2とを観察することができる。
【0061】
この
図6は、連結フランジ15や回転ペイン11のような特定の重なり部品を組み付けることができるように取り外し可能車2を取り外す必要性をわかりやすく示している。
【0062】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく他の実施形態を考えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 クロノグラフモジュール
2 取り外し可能車
3 一次シャフト
4 第1のディスク
5 二次シャフト
6 第2のディスク
7 四次シャフト
8 三次シャフト
9 分カウンター車
11 回転ペイン
13 駆動ピニオン
15 連結フランジ
17 ハンマー
22 第1の弾性アーム
23 第2の弾性アーム
25 端
28 半径方向支持面
29 軸方向当接支持面
30 クランプ
【外国語明細書】