IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社瑞光の特許一覧

<>
  • 特開-粉砕装置 図1
  • 特開-粉砕装置 図2
  • 特開-粉砕装置 図3
  • 特開-粉砕装置 図4
  • 特開-粉砕装置 図5
  • 特開-粉砕装置 図6
  • 特開-粉砕装置 図7
  • 特開-粉砕装置 図8
  • 特開-粉砕装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169887
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 18/14 20060101AFI20231122BHJP
   B02C 18/16 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B02C18/14 A
B02C18/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081099
(22)【出願日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2022081170
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】島田 崇博
【テーマコード(参考)】
4D065
【Fターム(参考)】
4D065CA06
4D065CB02
4D065CC01
4D065DD08
4D065DD30
4D065EB11
4D065EE02
4D065EE07
(57)【要約】
【課題】パルプシートを粉砕してパルプ繊維を生成する粉砕装置であって、パルプ繊維の焦げやパルプシートの未粉砕等の不具合を抑制可能で、コンパクトで処理能力の高い粉砕装置を提供する。
【解決手段】粉砕装置は、回転軸(124)と、複数の回転刃(122)と、回転軸を回転させるモータ(126)と、ケーシング(110)と、回転軸を回転可能に支持する玉軸受(132)を備える。複数の回転刃は、回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転してパルプシートを粉砕する。ケーシングは、パルプシートが供給される供給口とパルプ繊維を排出する排出口とを有し、回転軸に取り付けられている回転刃を収容する。玉軸受の転動体(132a)はセラミック球である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプシートを粉砕してパルプ繊維を生成する粉砕装置であって、
回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転して前記パルプシートを粉砕する複数の回転刃と、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記パルプシートが供給される供給口と前記パルプ繊維を排出する排出口とを有し、前記回転軸に取り付けられている前記回転刃を収容するケーシングと、
前記回転軸を回転可能に支持する玉軸受と、
を備え、
前記玉軸受の転動体はセラミック球である、
粉砕装置。
【請求項2】
前記玉軸受は、グリス封入式である、
請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記玉軸受は、密封構造が非接触形である、
請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記玉軸受は、前記玉軸受と前記ケーシングとの間に空間が形成されるよう、離して配置されている、
請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記回転軸の中心から、前記回転軸の径方向において前記回転軸の前記中心に対して最も遠くに配置される前記回転刃の端部までの距離を半径とし、前記回転軸の軸方向において前記複数の回転刃が配置されている区間の距離を高さとする仮想円柱を仮想した際の、前記仮想円柱内のボイド空間の体積をV[m]とし、
前記回転軸の回転数をN[rpm]とし、
前記粉砕装置の最大粉砕量をAmax[kg/h]とするときに、
粉砕空間指数I[m/kg]は、(V[m]×N[rpm]×60[min])÷Amax[kg/h]という数式で定義され、
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量Amax[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が12.0以上となるように設定される、
請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が、14.0以上となるように設定される、
請求項5に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が、23.0以下となるように設定される、
請求項6に記載の粉砕装置。
【請求項8】
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が、21.5以下となるように設定される、
請求項7に記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の原料となるパルプシートを粉砕し、パルプ繊維を生成する粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2015-62463号公報)に開示されているように、回転刃を回転させ、回転刃によりパルプシートを粉砕することで、吸収体を製造するためのパルプ繊維を生成する粉砕装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-62463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような粉砕装置には、一般的な課題として、コンパクトな装置で、高処理能力を実現することが求められている。
【0005】
しかし、従来の粉砕装置では、処理能力を高くするために回転刃の取り付けられている回転軸を高速回転させると、摩擦熱の影響で軸受の寿命が短くなる、軸受の滑りにより効率が低下する等の不具合が発生する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、処理能力が高くても、軸受の損傷が抑制されやすく、かつ、高効率な粉砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の粉砕装置は、パルプシートを粉砕してパルプ繊維を生成する。粉砕装置は、回転軸と、複数の回転刃と、モータと、ケーシングと、玉軸受と、を備える。複数の回転刃は、回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転してパルプシートを粉砕する。モータは、回転軸を回転させる。ケーシングは、パルプシートが供給される供給口と、パルプ繊維を排出する排出口と、を有する。ケーシングは、回転軸に取り付けられている回転刃を収容する。玉軸受は、回転軸を回転可能に支持する。玉軸受の転動体はセラミック球である。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の粉砕装置では、回転軸を高速回転させて、粉砕装置を高負荷で運転した場合にも、軸受の寿命が低下しにくく、高効率の運転が実現されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願発明の一実施形態に係る粉砕装置を有する吸収体製造装置の概略図である。
図2】本願発明の一実施形態に係る粉砕装置を、粉砕装置の回転軸の軸方向に沿って見た概略図である。
図3図2の粉砕装置の回転体及び軸受装置の概略上面図であり、ケーシング及び軸受ボックスは二点鎖線で描画している。
図4図2の粉砕装置の回転軸に取り付けられる回転刃(回転刃プレート)を、回転軸の軸方向に沿って見た概略図である。
図5図2の粉砕装置の回転体の回転刃の刃先の配置される円弧面を平面状に描画した図であり、回転刃の刃先の配置状態を説明するための図である。
図6図3中の符号VIの四角形の領域を部分的に拡大した図であり、ボイド空間を説明するための図である。
図7】粉砕装置の試験機を用いてパルプシートを粉砕した際の最大粉砕量及び粉砕空間指数を(表1のデータを)、最大粉砕量を横軸にとり粉砕空間指数を縦軸にとったグラフにプロットしたものであり、各プロットの記号は、得られたパルプ繊維の品質を示している。
図8図7のグラフ(表1のデータ)を得る上で試験に用いられた回転刃(回転刃プレート)を、回転軸の軸方向に沿って見た概略図である。
図9】変形例Aに係る粉砕装置を、粉砕装置の回転軸の軸方向に沿って見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本願発明に係る粉砕装置の実施形態を説明する。
【0011】
なお、以下で説明する実施形態は、本願発明の実施例に過ぎず、本願発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本願発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、以下の実施形態に多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0012】
(1)吸収体製造装置
本願発明の一実施形態に係る粉砕装置100を有する吸収体製造装置1について、図1を参照しながら説明する。図1は、吸収体製造装置1の概略図である。
【0013】
吸収体製造装置1の製造する吸収体Pは、パルプ繊維を所定形状に成形した物品である。吸収体Pは、例えば、ディスポーザブルのおむつや生理用ナプキン等に使用され、尿や経血等の体液を吸収する物品である。
【0014】
吸収体製造装置1は、粉砕装置100と、積繊装置10と、ダクト20と、サクションコンベア30と、を備える(図1参照)。粉砕装置100は、パルプ繊維を膠着させてシート状に形成したパルプシートSを粉砕し、パルプ繊維を生成する。粉砕装置100は、言い換えれば、シート状に形成されているパルプ繊維を綿状にほぐす(解繊する)装置である。ダクト20は、粉砕装置100の生成したパルプ繊維を、粉砕装置100から積繊装置10へと導くパルプ繊維の通路として機能する。積繊装置10は、粉砕装置100により粉砕されたパルプ繊維を所定形状の吸収体Pに成形する。積繊装置10の製造した吸収体Pは、サクションコンベア30により吸収体製造装置1の後段の工程へと搬送される。
【0015】
粉砕装置100についての詳細は後述する。
【0016】
ダクト20は、パルプ繊維の搬送経路において最上流に配置される第1開口22と、パルプ繊維の搬送経路において最下流に配置される第2開口24と、を有する(図1参照)。第1開口22は、粉砕装置100の、後述するケーシング110に形成されているパルプ繊維の排出口114と接続されている。第2開口24は、積繊装置10の、後述する積繊ドラム12の外周面の一部と対向するように配置されている。第1開口22からダクト20に流入するパルプ繊維は、第2開口24から、積繊ドラム12の外周面に設けられた後述する凹部12aに供給される。
【0017】
積繊装置10は、主に、積繊ドラム12を備える(図1参照)。
【0018】
積繊ドラム12は、内部が中空の円筒状の回転ドラムである。積繊ドラム12の外周部は、円筒状の積繊ドラム12の中心に沿って延びる回転軸周りを、矢印K1の方向に回転する(図1参照)。積繊ドラム12の外周面には、パルプ繊維を集合させ、パルプ繊維を所定の形状の吸収体Pに成形するための凹部12aが形成されている。凹部12aは、凹部12aから取り出されるパルプ繊維の形状が所定の吸収体Pの形状となるように、吸収体Pと対応する形状を有する。積繊ドラム12の外部と内部とは、凹部12aの底部(径方向内側)に形成されている孔12bを介して連通している(図1参照)。孔12bは、ダクト20から凹部12aに流入するパルプ繊維を含む空気のうち、空気の通過は許容し、パルプ繊維の通過は許容しないような寸法に設計されている。
【0019】
積繊ドラム12の内部には、積繊ドラム12の内部に配置される隔壁14により分割された空間が、積繊ドラム12の周方向に沿って複数形成されている(図1参照)。複数の空間の1つである吸入空間Si(図1参照)は、図示しない開口から内部の空気が吸い出されている空間であり、積繊ドラム12の外部の圧力より圧力が低い(負圧の)空間である。吸入空間Siは、凹部12aの底部に形成されている孔12bを介して、積繊ドラム12の外部の空間から空気を取り込む。複数の空間の1つである吹出空間So(図1参照)は、積繊ドラム12の周方向において、吸入空間Siに隣接して配置される空間であり、積繊ドラム12の回転方向(図1の矢印K1参照)において、吸入空間Siの下流側に配置される。吹出空間Soは、図示しない開口から内部に空気が吹き込まれる空間であり、積繊ドラム12の外部の圧力よりも圧力が高い(正圧の)空間である。吹出空間Soは、凹部12aの底部に形成されている孔12bを介して、積繊ドラム12の外部の空間に空気を吹き出す。なお、積繊ドラム12が回転する際、積繊ドラム12の内部の吸入空間Si及び吹出空間Soの位置は変化しない。
【0020】
ダクト20の第2開口24は、積繊ドラム12の外周面のうち、外周面を隔てて内部に吸入空間Siが形成されている部位の一部と対向する。積繊ドラム12は回転しているため、第2開口24と対向する積繊ドラム12の外周面の部位は、積繊ドラム12の回転に従い変化する。積繊ドラム12が回転し、積繊ドラム12の外周面に形成されている凹部12aが、ダクト20の第2開口24と対向しながら移動していくと、その凹部12aにダクト20から供給されるパルプ繊維を含む空気が流入し、空気は、凹部12aの底面の孔12bを通過して供給空間Saより圧力の低い吸入空間Siに流入する。一方で、孔12bがパルプ繊維の通過を許容しない寸法に設計されているため、凹部12aに流入するパルプ繊維は、吸入空間Siには流入せずに、凹部12aに積層されていく。
【0021】
サクションコンベア30は、積繊ドラム12を介して、積繊ドラム12の内部の吹出空間Soと隣接して配置される(図1参照)。サクションコンベア30は、積繊ドラム12の回転方向(矢印K1参照)において、吸入空間Siの下流側に配置される(図1参照)。サクションコンベア30は、図1に矢印で示すように、コンベア面(搬送面)から空気を吸引するコンベアである。サクションコンベア30は、積繊ドラム12の外表面の凹部12aに積層されたパルプ繊維(吸収体P)を吸引して、吸収体Pを凹部12aから離型し、離型した吸収体Pを搬送する。サクションコンベア30が搬送する吸収体Pは、後段の工程に搬送され、ディスポーザブルのおむつや生理用ナプキン等に使用される。
【0022】
(2)粉砕装置
以下、図2図8を参照して、粉砕装置100の具体的構成について説明する。図2は、粉砕装置100を、粉砕装置100の後述する回転軸124の軸方向に沿って見た概略図である。図3は、粉砕装置100の回転体120の及び軸受装置130の概略上面図であり、後述するケーシング110及び軸受ボックス134は二点鎖線で描画している。図3は、言い換えれば、回転軸124の軸方向の延びる方向に垂直な方向から見た図である。図4は、回転軸124に取り付けられる回転刃122(回転刃プレート123)を、回転軸124の軸方向に沿って見た概略図である。図5は、回転体120の後述する回転刃122の刃先122aの配置される円弧面を平面状に描画した図であり、回転刃122の刃先122aの配置状態を説明するための図である。図6は、図3中の四角形VIの領域を部分的に拡大した図であり、ボイド空間を説明するための図である。図7は、粉砕装置の試験機を用いてパルプシートSを粉砕した際の最大粉砕量Amax及び粉砕空間指数Iを(表1のデータを)、最大粉砕量Amaxを横軸にとり粉砕空間指数Iを縦軸にとったグラフにプロットしたものであり、各プロットの記号は、得られたパルプ繊維の品質を示している。図8は、図7のグラフ(表1のデータ)を得る上で試験に用いられた回転刃122(回転刃プレート123)を、回転軸124の軸方向に沿って見た概略図である。
【0023】
粉砕装置100は、主に、ケーシング110と、回転体120と、軸受装置130と、を主に備える(図2参照)。
【0024】
(2-1)回転体
回転体120は、図3のように、回転軸124と、複数の回転刃122と、モータ126と、を含む。
【0025】
回転軸124は、モータ126により駆動されて、回転軸124の中心O1(図2参照)を通過して延びる回転軸O(図3参照)周りを回転する(回転方向を示す矢印K2参照)。
【0026】
複数の回転刃122は、回転軸124に取り付けられている。形状を限定するものではないが、各回転刃122は、回転体120を回転軸124の軸方向に沿って見た時に、刃先122a(回転体120の径方向外側端部)側が鉤爪状に形成されている。
【0027】
回転刃122の回転軸124への取り付けの態様を限定するものではないが、例えば、複数の回転刃122は、以下のような態様で回転軸124に取り付けられている。
【0028】
回転体120は、図4のように、周方向に沿って複数の回転刃122が配置され、中央部に取付穴123aが形成されている回転刃プレート123を複数有する。なお、図4に描画されている、回転刃プレート123に設けられている回転刃122の数は、例示に過ぎず、回転刃プレート123に設けられている回転刃122の数は適宜決定されればよい。回転軸124には、回転軸124の軸方向に沿って、複数の回転刃プレート123が、互いに所定距離だけ離して取り付けられている。回転軸124の軸方向における回転刃プレート123の位置決めのため、図示しないスペーサが利用されてもよい。各回転刃プレート123は、具体的には、回転軸124が取付穴123aを挿通するように回転軸124に取り付けられ、所定の方法で回転軸124と固定されている。なお、各回転刃プレート123は、回転軸124の周方向において、図5のように回転刃122の刃先122aの位置がずれて配置されるように、隣接する回転刃プレート123と角度をずらして回転軸124に取り付けられる。ただし、図2では、図面が煩雑になるのを避けるため、図面上一番手前に配置される回転刃プレート123しか描画していない。
【0029】
回転体120(回転刃122の取り付けられた回転軸124)がモータ126により駆動されて回転すると、回転軸124に取り付けられている複数の回転刃122も回転軸124と共に回転し、粉砕装置100に供給されるパルプシートSに接触して、パルプシートSを粉砕(解繊)する。
【0030】
(2-2)軸受装置
軸受装置130は、回転体120を回転可能に軸支する。より具体的には、軸受装置130は、回転体120の回転軸124を回転可能に支持する。粉砕装置100は、一対の軸受装置130を有し、一対の軸受装置130の間に、回転体120の回転刃122(回転刃プレート123)が配置される。
【0031】
各軸受装置130は、図2及び図3に示すように、主に、玉軸受132と、軸受ボックス134と、ベース136と、を含む。
【0032】
玉軸受132は、回転軸124を回転可能に支持する軸受である。玉軸受132は、好ましくは深溝玉軸受である。深溝玉軸受を用いる場合、他のタイプの玉軸受を用いる場合に比べ、一対の玉軸受132間の軸ズレが許容されやすい。
【0033】
玉軸受132は、転動体として鋼球を用いる物であってもよい。ただし、後述するような方法で設定される回転軸124の回転数が大きい場合(例えば、3500rpmを超える回転数(4000rpm等)で運転される場合)には、玉軸受132の転動体は、セラミック球132aであることが好ましい。また、回転軸124の回転数が大きくしつつ、これに合わせて回転軸124の径を大きくするような場合には、DN値(玉軸受132の内径[mm]と回転軸124の回転数[rpm]との積)も大きくなる。DN値が、300,000を超えるような場合(例えば450000である場合)、玉軸受132の転動体は、セラミック球132aであることが好ましい。セラミック球132aを転動体に使用した玉軸受132を使用することで、回転軸124の回転数やDN値が大きくなっても、軸受の長寿命化が図られやすい。
【0034】
また、本願発明者は、セラミック球132aを転動体に使用する場合、玉軸受132における滑りによる効率低下が、鋼球を転動体に使用する場合に比べて抑制されやすく、回転軸を高速で回転させても動力損失は比較的小さくなることを見出した。
【0035】
また、玉軸受132は、グリス封入式であることが好ましい。グリス封入式の玉軸受132を用いることで、油潤滑式(給油式)の軸受を採用する場合に比べ、玉軸受132周りの構造を単純化できる。また、油潤滑式の軸受を利用する場合、何らかの原因で油が後述するケーシング110内に流入しると、発火事故等につながるおそれがある。これに対し、給油構造のないグリス封入式の玉軸受132を利用する粉砕装置100では、このようなリスクがない。
【0036】
なお、軸受は、必ずしもグリス封入式の玉軸受である必要はなく、例えば、油潤滑式の高速アンギュラ玉軸受等が採用されてもよい。ただし、グリス封入式の玉軸受を用いることには、上述のような利点がある。
【0037】
さらに、玉軸受132の密封(シール)構造は、接触形・非接触形のいずれが採用されてもよいが、非接触形を採用することが好ましい。密封構造に非接触形を採用することにより、高速回転時の摩擦熱の発生を低減することができる。
【0038】
軸受ボックス134は、玉軸受132を内部に収容する筐体である。なお、軸受ボックス134は、回転刃122を内部に収容するケーシング110に取り付けられるのではなく、ベース136により下方から支持される。軸受ボックス134は、軸受ボックス134とケーシング110との間に空間が形成されるよう、回転軸124の軸方向において離して配置されている。言い換えれば、玉軸受132は、玉軸受132とケーシング110との間に空間が形成されるよう、回転軸124の軸方向において離して配置されている。例えば、玉軸受132(より具体的には軸受ボックス134)とケーシング110とは、後述する半径r(回転軸124の径方向において回転軸124の中心O1に対して最も遠くに配置される回転刃122の端部122bまでの距離)の1/6倍以上2倍以下の距離だけ離して配置されることが好ましい。このように構成されることで、粉砕装置100の過度な大型化は抑制しつつ、ケーシング110内の熱が玉軸受132の性能に与える悪影響を抑制することができる。
【0039】
なお、軸受ボックス134は、回転軸124の軸方向に沿って見た時、玉軸受132を収容する本体部134aと、本体部134aから、回転軸124の軸方向と直交する方向(図2で言えば左右方向)に張り出す脚部134bと、を有することが好ましい。軸受ボックス134の脚部134bは、ベース136に固定され、玉軸受132を、上下方向に加え、回転軸124の軸方向と直交する方向(図2で言えば左右方向)についても支持する。
【0040】
(2-3)ケーシング
ケーシング110は、図2のように、回転軸124に取り付けられている回転刃122(回転刃プレート123)を収容する筐体である。ケーシング110は、図1に示すように、図示しないシート搬送装置により供給されるパルプシートSが供給される供給口112と、回転刃122がパルプシートSを粉砕することで生成するパルプ繊維を排出する排出口114とを有している。
【0041】
(2-4)粉砕装置のパラメータの設定
粉砕装置100には、一般的な課題として、コンパクトな装置で、高処理能力を実現することが求められている。
【0042】
一方で、粉砕装置100には、生成されるパルプ繊維が品質水準を満たすことも求められる。具体的には、生成されるパルプ繊維には、例えば、生成されるパルプ繊維に焦げつきの無いことが求められる。また、生成されるパルプ繊維には、例えば、未解繊のパルプ繊維の混入量が一定量以下であることが求められる。また、生成されるパルプ繊維では、パルプ繊維の繊維長が一定であること(繊維が細かく粉砕され過ぎていないこと)が好ましい。従来は、生成されるパルプ繊維が品質水準を満たすことを優先して、実際には、装置サイズや処理能力にかなり余裕をみて粉砕装置の設計がなされている。
【0043】
これに対し、本願発明者は、コンパクトな装置で高処理能力を実現するという課題と、生成されるパルプ繊維が品質水準を満たすという課題と、を満たす条件を数値化することで、パルプ繊維が焦げる、パルプシートの粉砕が不十分となる等の不具合を抑制可能で、なおかつ、コンパクトで処理能力の高い粉砕装置を提供することが可能になることを見出した。
【0044】
より具体的には、本願発明者は、粉砕空間指数I[m/kg]という値を定義し、この粉砕空間指数Iが所定の数値条件を満たすように、粉砕装置100の構造(具体的には後述する仮想円柱C内のボイド空間の体積V[m])、最大粉砕量Amax[kg/h]、回転軸124の回転数[rpm]を設定することで、パルプ繊維の品質水準を満たすことが可能となることを見出した。
【0045】
初めに、粉砕空間指数I[m/kg]、仮想円柱C内のボイド空間の体積V[m]、及び最大粉砕量Amax[kg/h]について定義を説明する。
【0046】
粉砕空間指数I[m/kg]は、(V[m]×N[rpm]×60[min])÷Amax[kg/h]という数式で定義される量である。
【0047】
ボイド空間の定義の中で登場する仮想円柱Cとは、回転軸124の中心O1から、回転軸124の径方向において回転軸124の中心O1に対して最も遠くに配置される回転刃122の端部122bまでの距離を半径rとし(図4参照)、回転軸124の軸方向において複数の回転刃122が配置されている区間の距離を高さhとする(図3参照)、仮想の円柱である(図3中の太い一点鎖線で示した部分を参照)。
【0048】
そして、仮想円柱C内のボイド空間の体積V[m]とは、仮想円柱C内で、何も部材が存在していない部分の体積を意味する。言い換えれば、仮想円柱C内のボイド空間の体積V[m]とは、仮想円柱C内の空洞部分の体積を意味する。例えば、図4のように、回転刃プレート123を回転軸124の軸方向に沿って見た時、ハッチングで示した回転刃122の存在しない部分がボイド空間に含まれる。また、図6中にハッチングで示した、回転軸124の軸方向において隣接する回転刃122間の隙間(言い換えれば、回転刃プレート123間の隙間)もボイド空間に含まれる。なお、仮に隣接する回転刃プレート123の間にスペーサを配置する場合には、スペーサの配置される空間は、ボイド空間からは除外される。
【0049】
最大粉砕量Amax[kg/h]は、粉砕装置100に許容される粉砕量(1時間あたりのパルプシートSの処理量)の設計最大値である。
【0050】
本願発明者は、粉砕装置100の試験機を用い、回転刃プレート123の形状、回転刃プレート123の直径(仮想円柱Cの半径rの2倍の値)、回転軸124の回転数、最大粉砕量Amax[kg/h]、仮想円柱C内のボイド空間の体積V[m]を表1のように変化させて、粉砕空間指数I[m/kg]と、パルプ繊維の品質と、の関係を求めた(表1参照)。なお、表1中の形状は、回転刃プレート123の形状を意味しており、表1中の数字は、図8中の回転刃プレート123のうち、どの回転刃プレート123を用いたかを示している。また、表1中の粉砕空間とは、V[m]×N[rpm]×60[min]という数式で定義される値である。
【0051】

表1:粉砕空間指数とパルプ繊維品質との関係
【0052】
表1の試験結果に基づき、最大粉砕量Amax及び粉砕空間指数Iを、最大粉砕量Amaxを横軸にとり粉砕空間指数Iを縦軸にとったグラフにプロットしたものが図7である。図7中のプロットの記号は、表1中のパルプ繊維品質の欄に対応しており、得られたパルプ繊維の品質を示している。
【0053】
この結果、本願発明者は、粉砕空間指数Iを12.0m/kg以上とすると、粉砕の際にパルプ繊維が焦げる、パルプシートSの粉砕が著しく不十分となる等の不具合の発生を抑制できることを見出した(表1及び図7参照)。
【0054】
また、本願発明者は、粉砕空間指数Iを14.0m/kg以上とすると、生産するパルプ繊維に、十分に粉砕されていない比較的大きな塊の状態のパルプ繊維が混入する可能性を低減できることを見出した(表1及び図7参照)。
【0055】
さらに、本願発明者は、粉砕空間指数Iを21.5m/kg以上とすると、更に好ましくは粉砕空間指数Iを20.0m/kg以上とすると、生産するパルプ繊維に、過度に粉砕されたパルプ繊維が混入する可能性を低減できることを見出した(表1及び図7参照)。
【0056】
これらの結果に基づき、本願発明者は、粉砕装置100では、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量[kg/h]を、以下のように設定することが好ましいことを見出した。
【0057】
まず、本願発明者は、パルプ繊維の品質の観点から大きな不具合を避けるという観点からは、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が12.0以上となるように設定されることが望まれることを見出した。
【0058】
さらに、本願発明者は、生産するパルプ繊維に、十分に粉砕されていない比較的大きな塊の状態のパルプ繊維が混入する可能性を低減する上では、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が14.0以上となるように設定されることが好ましいことを見出した。
【0059】
また、本願発明者は、生産するパルプ繊維に、過度に粉砕されたパルプ繊維が混入する可能性を低減するという観点からは、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が21.5以下となるように設定されることが好ましいことを見出した。さらに好ましくは、本願発明者は、生産するパルプ繊維に、過度に粉砕されたパルプ繊維が混入する可能性を低減するという観点からは、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が20.0以下となるように設定されることが好ましいことを見出した。逆に、本願発明者は、粉砕空間指数I[m/kg]が大きくなり過ぎると、過度に粉砕されたパルプ繊維の量が増えることから、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]が、粉砕空間指数I[m/kg]が23.0を超えないように設定されることが好ましいことを見出した。
【0060】
このように粉砕空間指数Iを用いることで、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]をどのように設定すればよいかを数値的に把握できるため、本実施形態の粉砕装置100では、パルプ繊維が焦げる、パルプシートの粉砕が不十分となる等の不具合を抑制可能で、なおかつ、コンパクトで処理能力の高い粉砕装置を実現することが可能である。
【0061】
(3)特徴
(3-1)
上記実施形態の粉砕装置100は、パルプシートSを粉砕してパルプ繊維を生成する。粉砕装置100は、回転軸124と、複数の回転刃122と、モータ126と、ケーシング110と、を備える。複数の回転刃122は、回転軸124に取り付けられ、回転軸124と共に回転してパルプシートSを粉砕する。モータ126は、回転軸124を回転させる。ケーシング110は、パルプシートSが供給される供給口112と、パルプ繊維を排出する排出口114と、を有する。ケーシング110は、回転軸124に取り付けられている回転刃122を収容する。ここで、仮想円柱C内のボイド空間の体積をV[m]とし、回転軸124の回転数をN[rpm]とし、粉砕装置100の最大粉砕量をAmax[kg/h]とする。また、粉砕空間指数I[m/kg]を、(V[m]×N[rpm]×60[min])÷Amax[kg/h]という数式で定義する。なお、仮想円柱Cは、回転軸124の中心O1から、回転軸124の径方向において回転軸124の中心O1に対して最も遠くに配置される回転刃122の端部122bまでの距離を半径rとし、回転軸124の軸方向において複数の回転刃122が配置されている区間の距離を高さhとする仮想の円柱である。以上の定義において、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が12.0以上となるように設定される。
【0062】
本願発明者は、粉砕空間指数Iを12.0m/kg以上とすると、粉砕の際にパルプ繊維が焦げる、パルプシートSの粉砕が著しく不十分となる等の不具合の発生を抑制できることを見出した(表1及び図7参照)。この粉砕装置100では、この条件を満たすように体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]を設定するので、過度な安全余裕を見なくても、パルプ繊維が焦げる、パルプシートSの粉砕が著しく不十分となる等の不具合の発生を抑制できる。
【0063】
より好ましくは、粉砕装置100では、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が、14.0以上となるように設定される。
【0064】
本願発明者は、粉砕空間指数Iを14.0m/kg以上とすると、生産するパルプ繊維に、十分に粉砕されていない比較的大きな塊の状態のパルプ繊維が混入する可能性を低減できることを見出した(表1及び図7参照)。粉砕装置100において、この条件を満たすように体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]が設定されることで、過度な安全余裕を見なくても、生産するパルプ繊維に十分に粉砕されていない比較的大きな塊の状態のパルプ繊維が混入しにくい。
【0065】
(3-2)
好ましくは、粉砕装置100では、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が、23.0以下となるように設定される。
【0066】
上記条件を満たすことで、粉砕装置100では、パルプシートSが過度に粉砕される不具合の発生を抑制でき、高品質なパルプ繊維を生成することができる。
【0067】
より好ましくは、粉砕装置100では、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が、21.5以下となるように設定される。
【0068】
本願発明者は、粉砕空間指数Iを21.5m/kg以上とすると、生産するパルプ繊維に、過度に粉砕されたパルプ繊維が混入する可能性を低減できることを見出した(表1及び図7参照)。粉砕装置100において、この条件を満たすように体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]が設定されることで、過度な安全余裕を見なくても、生産するパルプ繊維に、過度に粉砕されたパルプ繊維が混入しにくく、より高品質なパルプ繊維を生成できる。
【0069】
(3-3)
上記実施形態の粉砕装置100は、パルプシートSを粉砕してパルプ繊維を生成する。粉砕装置100は、回転軸124と、複数の回転刃122と、モータ126と、ケーシング110と、玉軸受132と、を備える。複数の回転刃122は、回転軸124に取り付けられ、回転軸124と共に回転してパルプシートSを粉砕する。モータ126は、回転軸124を回転させる。ケーシング110は、パルプシートSが供給される供給口112と、パルプ繊維を排出する排出口114と、を有する。ケーシング110は、回転軸124に取り付けられている回転刃122を収容する。玉軸受132の転動体はセラミック球132aである。
【0070】
従来、粉砕装置には、回転軸を軸支する軸受の転動体には鋼球が用いられている。しかし、このような粉砕装置では、回転数を大きくし過ぎると、摩擦熱により軸受が損傷しやすくなる、効率が低下する等の不具合が生じる可能性がある。
【0071】
これに対し、玉軸受132の転動体にセラミック球132aを用いれば、セラミックは熱に強いため、回転軸124を従来の粉砕装置における回転数よりも増速し、粉砕装置を高負荷で運転した場合にも、摩擦熱による玉軸受132の損傷が抑制されやすい。また、本願発明者は、玉軸受132の転動体にセラミック球132aを用いることで、玉軸受132における滑りに伴う効率の低下も抑制できることを見出した。
【0072】
玉軸受132の転動体にセラミック球132aを用いれば、粉砕装置100では、粉砕空間指数I[m/kg]が上述の数値を満たすように回転軸124が高速回転で運転され、DN値(軸受内径[mm]と回転軸124の回転速度[rpm]との積の値で無次元量)が大きな値となった場合でも、軸受の寿命が低下しにくい。
【0073】
(3-4)
上記実施形態の粉砕装置100では、玉軸受132はグリス封入式である。
【0074】
粉砕装置100では、油潤滑の玉軸受を使用しないため、玉軸受132周りの構造を単純化できる。
【0075】
また、油潤滑の軸受を利用する場合、何らかの原因で油がケーシング110内に流入しると、発火事故等につながるおそれがある。これに対し、給油構造のないグリス封入式の玉軸受132を利用する粉砕装置100では、このようなリスクがない。
【0076】
(3-5)
上記実施形態の粉砕装置100では、玉軸受132は、密封(シール)構造が非接触形であることが好ましい。
【0077】
非接触形の密封構造を採用することにより、密封構造の存在に伴う高速回転時の摩擦熱の発生を低減できる。
【0078】
(3-6)
上記実施形態の粉砕装置100では、玉軸受132は、玉軸受132とケーシング110との間に空間が形成されるよう、離して配置されている。より具体的には、玉軸受132を収容する軸受ボックス134は、玉軸受132とケーシング110との間に空間が形成されるよう、離して配置されている。
【0079】
粉砕装置100では、ケーシング110内が高温になりやすい。そのため、玉軸受132(玉軸受132を収容する軸受ボックス134)がケーシング110と接触している場合、ケーシング110内の熱が玉軸受132の性能に悪影響を与えるおそれがある。これに対し、玉軸受132をケーシング110から離して配置することで、玉軸受132が、ケーシング110内の熱の影響を受けにくい。
【0080】
(4)変形例
(4-1)変形例A
軸受ボックス134の脚部134b及びベース136の形状は、図2で描画した形状に限定されない。
【0081】
例えば、軸受ボックス134の脚部134b及びベース136の、回転軸124の軸方向に沿って見た時の左右方向の幅は、図9に示すように比較的大きいことが好ましい。
【0082】
例えば、軸受ボックス134の脚部134bの最大幅W1は、回転軸124の玉軸受132が支持する部分の直径D1(図3参照)の3倍以上6倍未満であることが好ましい。
【0083】
また、例えば、軸受ボックス134のベース136の幅W2の平均は、回転軸124の玉軸受132が支持する部分の直径D1の3倍以上6倍未満であることが好ましい。
【0084】
このように構成されることで、回転軸124が高速で回転しても振動が抑制されやすく、玉軸受132の損傷や、粉砕装置100の効率低下を抑制することができる。
【0085】
(4-2)変形例B
図3の描画では、回転軸124の玉軸受132が支持する部分の直径D1に対して、ケーシング110内に収容され、回転軸124に回転刃122が取り付けられている部分の直径D2が大きく設定されているが(直径D1<直径D2)、図3で描画した形状に限定されず、直径D1≧直径D2の関係となる形状であってもよい。ただし、直径D1<直径D2の形状であれば、たわみの減少や共振の発生を防止することができるため好ましい。
【0086】
<付記>
最後に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0087】
本願発明の第1観点に係る粉砕装置は、パルプシートを粉砕してパルプ繊維を生成する。粉砕装置は、回転軸と、複数の回転刃と、モータと、ケーシングと、玉軸受と、を備える。複数の回転刃は、回転軸に取り付けられ、回転軸と共に回転してパルプシートを粉砕する。モータは、回転軸を回転させる。ケーシングは、パルプシートが供給される供給口と、パルプ繊維を排出する排出口と、を有する。ケーシングは、回転軸に取り付けられている回転刃を収容する。玉軸受は、回転軸を回転可能に支持する。玉軸受の転動体はセラミック球である。
【0088】
第1観点に係る粉砕装置では、回転軸を高速回転させて、粉砕装置を高負荷で運転した場合にも、軸受の寿命が低下しにくく、高効率の運転が実現されやすい。
【0089】
本願発明の第2観点に係る粉砕装置は、第1観点の粉砕装置であって、玉軸受は、グリス封入式である。
【0090】
第2観点に係る粉砕装置では、油潤滑の玉軸受を使用しないため、玉軸受周りの構造を単純化できる。
【0091】
また、油潤滑の軸受を利用する場合、何らかの原因で油がケーシング内に流入しると、発火事故等につながるおそれがある。これに対し、給油構造のないグリス封入式の玉軸受を利用する粉砕装置では、このようなリスクがない。
【0092】
本願発明の第3観点に係る粉砕装置は、第1観点又は第2観点の粉砕装置であって、玉軸受は、密封(シール)構造が非接触形であることが好ましい。
【0093】
第3観点に係る粉砕装置では、非接触形の密封構造を採用することにより、高速回転時の摩擦熱の発生を低減できる。
【0094】
本願発明の第4観点に係る粉砕装置は、第1観点から第3観点のいずれかの粉砕装置であって、玉軸受は、玉軸受とケーシングとの間に空間が形成されるよう、離して配置されている。
【0095】
粉砕装置では、ケーシング内が高温になりやすい。そのため、玉軸受がケーシングと接触している場合、ケーシング内の熱が軸受の性能に悪影響を与えるおそれがある。これに対し、第4観点に係る粉砕装置では、玉軸受がケーシングから離して配置されるので、玉軸受が、ケーシング内の熱の影響を受けにくい。
【0096】
本願発明の第5観点に係る粉砕装置は、第1観点から第4観点のいずれかの粉砕装置である。ここで、仮想円柱内のボイド空間の体積をV[m]とし、回転軸の回転数をN[rpm]とし、粉砕装置の最大粉砕量をAmax[kg/h]とする。また、粉砕空間指数I[m/kg]を、(V[m]×N[rpm]×60[min])÷Amax[kg/h]という数式で定義する。なお、仮想円柱は、回転軸の中心から、回転軸の径方向において回転軸の中心に対して最も遠くに配置される回転刃の端部までの距離を半径とし、回転軸の軸方向において複数の回転刃が配置されている区間の距離を高さとする仮想の円柱である。以上の定義において、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が12.0以上となるように設定される。
【0097】
本願発明者は、粉砕空間指数Iを12.0m/kg以上とすると、粉砕の際にパルプ繊維が焦げる、パルプシートの粉砕が著しく不十分となる等の不具合の発生を抑制できることを見出した。第5観点に係る粉砕装置では、この条件を満たすように体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]を設定するので、過度な安全余裕を見なくても、パルプ繊維が焦げる、パルプシートの粉砕が著しく不十分となる等の不具合の発生を抑制できる。
【0098】
本願発明の第6観点に係る粉砕装置は、第5観点の粉砕装置であって、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が、14.0以上となるように設定される。
【0099】
本願発明者は、粉砕空間指数Iを14.0m/kg以上とすると、生産するパルプ繊維に、十分に粉砕されていない比較的大きな塊の状態のパルプ繊維が混入する可能性を低減できることを見出した。第6観点に係る粉砕装置では、この条件を満たすように体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]を設定するので、過度な安全余裕を見なくても、生産するパルプ繊維に十分に粉砕されていない比較的大きな塊の状態のパルプ繊維が混入しにくい。
【0100】
本願発明の第7観点に係る粉砕装置は、第5観点又は第6観点の粉砕装置であって、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が、23.0以下となるように設定される。
【0101】
第7観点に係る粉砕装置では、パルプシートが過度に粉砕される不具合の発生を抑制でき、高品質なパルプ繊維を生成することができる。
【0102】
本願発明の第8観点に係る粉砕装置は、第7観点の粉砕装置であって、体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量[kg/h]は、粉砕空間指数I[m/kg]が、21.5以下となるように設定される。
【0103】
本願発明者は、粉砕空間指数Iを21.5m/kg以上とすると、生産するパルプ繊維に、過度に粉砕されたパルプ繊維が混入する可能性を低減できることを見出した。第4観点に係る粉砕装置では、この条件を満たすように体積V[m]、回転数N[rpm]及び最大粉砕量Amax[kg/h]を設定するので、過度な安全余裕を見なくても、生産するパルプ繊維に、過度に粉砕されたパルプ繊維が混入しにくく、より高品質なパルプ繊維を生成できる。
【符号の説明】
【0104】
100 粉砕装置
110 ケーシング
112 供給口
114 排出口
124 回転軸
122 回転刃
122b 端部
126 モータ
132 玉軸受
132a セラミック球
134 軸受ボックス
Amax 最大粉砕量
C 仮想円柱
h 高さ
I 粉砕空間指数
N 回転数
r 半径
S パルプシート
V ボイド空間の体積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプシートを粉砕してパルプ繊維を生成する粉砕装置であって、
回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸と共に回転して前記パルプシートを粉砕する複数の回転刃と、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記パルプシートが供給される供給口と前記パルプ繊維を排出する排出口とを有し、前記回転軸に取り付けられている前記回転刃を収容するケーシングと、
前記回転軸を回転可能に支持する玉軸受と、
を備え、
前記玉軸受の転動体はセラミック球であ
前記玉軸受は、軸受ボックスに収容され、
前記軸受ボックスは、前記玉軸受を収容する本体部と、前記本体部から、前記回転軸の軸方向と直交する方向に張り出す、前記玉軸受を支持する脚部と、を有し、
前記回転軸の軸方向と直交する方向における前記脚部の最大幅(W1)は、前記回転軸の前記玉軸受により支持される部分の直径(D1)の3倍以上6倍未満である、
粉砕装置。
【請求項2】
前記玉軸受は、グリス封入式である、
請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記玉軸受は、密封構造が非接触形である、
請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記玉軸受は、前記玉軸受と前記ケーシングとの間に空間が形成されるよう、離して配置されている、
請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記回転軸の中心から、前記回転軸の径方向において前記回転軸の前記中心に対して最も遠くに配置される前記回転刃の端部までの距離を半径とし、前記回転軸の軸方向において前記複数の回転刃が配置されている区間の距離を高さとする仮想円柱を仮想した際の、前記仮想円柱内のボイド空間の体積をV[m]とし、
前記回転軸の回転数をN[rpm]とし、
前記粉砕装置の最大粉砕量をAmax[kg/h]とするときに、
粉砕空間指数I[m/kg]は、(V[m]×N[rpm]×60[min])÷Amax[kg/h]という数式で定義され、
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量Amax[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が12.0以上となるように設定される、
請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が、14.0以上となるように設定される、
請求項5に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が、23.0以下となるように設定される、
請求項6に記載の粉砕装置。
【請求項8】
前記体積V[m]、前記回転数N[rpm]及び前記最大粉砕量[kg/h]は、前記粉砕空間指数I[m/kg]が、21.5以下となるように設定される、
請求項7に記載の粉砕装置。