(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169898
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】医療器具セット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/11 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B17/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163467
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美利亜
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 美穂
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 直希
(72)【発明者】
【氏名】白石 美朱帆
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC02
4C160CC12
4C160DD02
4C160DD03
4C160DD26
(57)【要約】
【課題】癒合促進デバイスを生体組織の該当部位に挟み込んで吻合装置等の医療器具によって吻合を行う際に癒合促進デバイスにヨレが発生することを防止または抑制するとともに生体組織への設置が容易な医療器具セットを提供する。
【解決手段】本発明に係る医療器具セット1は、生体組織の癒合を促進するシート状の癒合促進デバイス100と、癒合促進デバイスを一時的に吸着可能であり、癒合促進デバイスの一方の側から押し付け力を付与可能な吸盤部410を備える医療器具400と、を有し、吸盤部は、外周部412と、外周部よりも径方向内方に設けられ、穴部を設けた内周部413と、を含む吸着面411を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の癒合を促進するシート状の癒合促進デバイスと、
前記癒合促進デバイスを一時的に吸着可能であり、前記癒合促進デバイスの一方の側から押し付け力を付与可能な吸盤部を備える医療器具と、を有し、
前記吸盤部は、外周部と、前記外周部よりも径方向内方に設けられ、穴部を設けた内周部と、を含む吸着面を備える、医療器具セット。
【請求項2】
前記癒合促進デバイスは、前記癒合促進デバイスの生体組織への吻合時において前記癒合促進デバイスの一方の側に配置され、前記癒合促進デバイスを生体組織と吻合可能な吻合部材を放出する放出部を備えた第1係合器具と、前記吻合時において前記癒合促進デバイスに対して前記第1係合器具と反対側に配置され、前記吻合時に前記第1係合器具とともに生体組織及び前記癒合促進デバイスを挟持する第2係合器具と、を備えた医療デバイスによって生体組織に吻合され、
前記第1係合器具は、前記穴部に挿通可能な第1シャフト部材を備え、
前記第2係合器具は、前記第1シャフト部材を収容可能な中空の第2シャフト部材を備え、
前記医療器具は、前記第1シャフト部材または前記第2シャフト部材によって挿通され、前記吸盤部と一体に構成された筒部をさらに備える請求項1に記載の医療器具セット。
【請求項3】
前記吸盤部は、前記外周部が前記内周部に対して軸方向に変位可能に構成され、
前記医療器具は、前記吸盤部の前記外周部が前記内周部に対して前記軸方向に変位した第1形状から前記第1形状よりも前記軸方向において前記内周部に接近した第2形状となるように前記面を変形させる展開部をさらに有する請求項2に記載の医療器具セット。
【請求項4】
前記吸盤部は、無負荷状態で前記第1形状となるように付勢され、前記軸方向に力を付与した状態で前記第2形状となるように構成された第1弾性部材を備え、
前記展開部は、前記軸方向において前記外周部が前記内周部に対して位置する側から前記内周部に向かって前記吸盤部に前記力を付与して前記外周部を前記軸方向において前記内周部に接近させる押圧部材を備える請求項3に記載の医療器具セット。
【請求項5】
前記吸盤部は、無負荷状態で前記第1形状となるように付勢され、前記軸方向に力を付与した状態で前記第2形状となるように構成された第1弾性部材を備え、
前記展開部は、前記軸方向において前記外周部が前記内周部に対して位置する側と反対側に前記吸盤部の径方向外方を引っ張る第1引張部材を備える請求項3に記載の医療器具セット。
【請求項6】
前記吸盤部は、無負荷状態で前記第2形状となるように構成された第2弾性部材と、
前記展開部は、前記第2弾性部材の径方向外方に対して引っ張り力を付与することによって前記第2弾性部材を前記第2形状から前記第1形状に変形させる第2引張部材を備える請求項3に記載の医療器具セット。
【請求項7】
前記吸盤部は、前記癒合促進デバイスを吸着可能な曲面を備え、
前記筒部は、テーパー状に形成されたテーパー部を備え、
前記癒合促進デバイスは、前記筒部の前記テーパー部を前記第1シャフト部材または前記第2シャフト部材に挿通させた状態において、前記癒合促進デバイスを前記第1被接合部位に押し付ける前記曲面を変化させることによって、前記吸盤部に吸着した状態から前記第1被接合部位または前記第2被接合部位に押し付けられる請求項2に記載の医療器具セット。
【請求項8】
前記医療器具は、前記筒部に設けられ、前記癒合促進デバイスを着脱可能な取り付け部をさらに備える請求項2に記載の医療器具セット。
【請求項9】
前記外周部は、前記癒合促進デバイスよりも寸法を大きく構成している請求項1~8のいずれか1項に記載の医療器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において生体器官を外科的手術により接合する手技(例えば消化管の吻合術)が知られている。上記のような手技が行われた場合、生体器官同士が接合された接合部における癒合の遅延が生じないことが術後の予後決定因子として重要であることが知られている。
【0003】
生体器官を接合する手技では種々の方法や医療器具が用いられるが、例えば生分解性の縫合糸により生体器官を縫合する方法や、ステープラーによる吻合を行う機械式の吻合装置(特許文献1参照)を利用する方法が提案されている。特に、機械式の吻合装置を利用して吻合術を行う場合、縫合糸を用いた方法と比較して接合部における生体器官同士の接合力を高めることができるため、縫合不全のリスクを低減させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の吻合装置では接合部位における漏出又は断裂等を防止するために支持構造体等のシート状の部材を挟むことによって接合部位の癒合を促進している。このような癒合を促進するデバイス(以下、癒合促進デバイスと言う)は、通常、強度が低く、濡れた物への密着度が高いため、ヨレずに生体組織に設置することが難しいという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、癒合促進デバイスを生体組織の該当部位に挟み込んで吻合装置等の医療器具によって吻合を行う際に、癒合促進デバイスにヨレが発生することを防止または抑制するとともに、生体組織への設置が容易な医療器具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る医療器具セットは、医療器具と、生体組織の癒合を促進するシート状の癒合促進デバイスと、を有する。医療器具は、癒合促進デバイスを一時的に吸着可能であり、癒合促進デバイスの一方の側から押し付け力を付与可能な吸盤部を備える。吸盤部は、外周部と、外周部よりも径方向内方に設けられ、穴部を設けた内周部を含むとともに癒合促進デバイスよりも面積の大きい吸着面を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療器具セットによれば、癒合促進デバイスを生体組織の該当部位に挟み込んで吻合装置等の医療器具によって吻合を行う際に癒合促進デバイスにヨレが発生することを防止または抑制することができる。また、癒合促進デバイスを生体組織に設置しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る医療器具セットと医療デバイスを示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に係る医療デバイスを構成する第1係合器具の先端と第2係合器具とを示す斜視図である。
【
図3】医療デバイスを構成する第2係合器具のシャフトに癒合促進デバイスを挿通した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1の癒合促進デバイスにおける貫通孔について示す断面図である。
【
図6】医療器具セットを用いた処置方法の各手順を示すフローチャートである。
【
図7】処置方法の実施形態(大腸吻合術)の手順を示すフローチャートである。
【
図8】大腸吻合術を説明するための模式的な断面斜視図である。
【
図9】大腸吻合術において癒合促進デバイスを体外から体内に挿入する際について示す図である。
【
図10】癒合促進デバイスを医療器具の吸盤部から第1被接合部位または第2被接合部位に配置する様子を示す図である。
【
図11】癒合促進デバイスを医療器具の吸盤部から第1被接合部位または第2被接合部位に配置する様子を示す図である。
【
図12】癒合促進デバイスを医療器具の吸盤部から第1被接合部位または第2被接合部位に配置する様子を示す図である。
【
図13】医療デバイスを用いた大腸吻合術について説明する図である。
【
図14】医療デバイスを用いた大腸吻合術について説明する図である。
【
図15】医療デバイスを用いた大腸吻合術について説明する図である。
【
図16】第1実施形態の変形例1に係る医療器具セットを示す図である。
【
図17】第1実施形態の変形例2に係る医療器具セットを示す図である。
【
図18】第2実施形態に係る医療器具セットを示す平面図である。
【
図20】第3実施形態に係る医療器具セットを示す平面図である。
【
図21】
図20の医療器具セットを中心線に沿って切断した断面図である。
【
図22】第3実施形態の変形例に係る医療器具セットを示す図である。
【
図23】第4実施形態に係る医療器具セットを示す図である。
【
図24】第4実施形態に係る医療器具セットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0011】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0012】
また、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明するが、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0013】
なお、以下では図面に座標系を示す。直交座標系のXは医療器具400を構成する吸盤部410の軸方向に沿い、軸方向Xと称する。Y、Zは軸方向Xと交差する面であって、平面方向YZと称する。
【0014】
円筒座標系のrは、平面方向YZに沿い、医療器具400の吸盤部410等の中心から径方向または放射方向に延びる方向であって、径方向rと称する。θは吸盤部410等の軸方向Xと交差する平面方向YZにおいて吸盤部410等の周方向または角度方向に沿い、周方向θと称する。
【0015】
<第1実施形態>
図1~
図5は本発明の第1実施形態に係る医療器具セット1、および医療器具セット1を使用する際に用いられる医療デバイス200の説明に供する図である。
図6~
図15は医療器具セット1を構成する癒合促進デバイス100を用いて大腸を一例として消化管の吻合を行う際を説明する図である。医療器具セット1は、
図1を参照して概説すれば、癒合促進デバイス100と、吻合術の際に癒合促進デバイス100と併用される医療器具400と、を有する。
【0016】
癒合促進デバイス100は、
図8~
図15に示すように所定の生体器官同士を接合する手技(例えば、消化管の吻合術)に適用することができる。後述するように、本明細書の説明では癒合促進デバイス100を使用した手技の例として大腸吻合術を説明するが、本発明に係る癒合促進デバイスを使用可能な部位は大腸に限定されない。
【0017】
医療器具セット1は、医療デバイス200によって大腸等の第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する際に使用される。医療器具セット1の説明にあたり、医療デバイス200について説明する。
【0018】
<医療デバイス>
医療デバイス200は、生体組織における第1被接合部位と第1被接合部位に対向する第2被接合部位とを接合する。医療デバイス200は、第1被接合部位及び第2被接合部位を介して本体部10を挟み込み可能な第1係合器具210と第2係合器具270を備える。第1係合器具210は
図13等に示すように癒合促進デバイス100の生体組織への吻合時に癒合促進デバイス100の一方の側に配置される。第1係合器具210は、第1被接合部位と当接可能に構成している。第2係合器具270は、吻合時に癒合促進デバイス100に対して第1係合器具210と反対側に配置され、第2被接合部位と当接可能に構成している。詳細については後述する。第1係合器具210は、トロッカーと呼ばれ得るとともに、第2係合器具270はアンビルと呼ばれ得る。以下、詳述する。
【0019】
<第1係合器具>
第1係合器具210は、
図1、
図2に示すように長尺部材220と、位置決め部230と、放出部240と、打抜き部250と、操作部260と、を備える。
【0020】
長尺部材220は、第1係合器具210の本体に相当する。長尺部材220は、
図2に示すように長手方向の先端において位置決め部230のシャフトを相対的に進退移動可能な空間Sを備える。なお、本明細書において長尺部材220の先端部において直線状に延びる方向を軸方向Xとする。長尺部材220は、軸方向Xに交差する断面を中空の円形状に構成している。長尺部材220は、本実施形態において長手方向に直線状に延在するとともに屈曲箇所を備えているが、後述する吻合機能と打抜き機能を実現できれば、長尺部材には屈曲箇所を設けなくてもよい。
【0021】
位置決め部230は、長尺状のシャフトを備える。位置決め部230のシャフトは、
図2に示すように長尺部材220の長手方向における先端において空間Sから相対的に進退移動自在に構成している。位置決め部230は本明細書において第1シャフト部材に相当する。位置決め部230は、癒合促進デバイス100の内側補強部21が形成する穴部30と後述する第2係合器具270のシャフト310に挿通可能に構成している。
【0022】
放出部240は、第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する複数のステープル(吻合部材に相当)を放出可能に構成している。放出部240は長尺部材220の長手方向における先端側において略円板状に形成している。放出部240は、長尺部材220の先端において周方向θに沿ってステープルの放出箇所を複数設けることによって構成している。なお、本明細書において長尺部材220の先端部における長手方向と交差する面方向を平面方向YZ、放射方向又は径方向を径方向r、周方向又は角度方向を周方向θとする。
【0023】
打抜き部250は、長尺部材220の先端において放出部240よりも径方向rの内方に配置し、第1被接合部位と第2被接合部位の放射方向内方を打ち抜くように構成している。打抜き部250は、
図2に示すように放出部240よりも径方向rの内方に第1被接合部位と第2被接合部位を打ち抜く環状のブレードを備えるように構成している。打抜き部250の形状は、長手方向から平面視した際に真円に構成できるが、癒合促進に不要な部位を打抜ければ打抜き部250の形状は上記以外にも楕円等であってもよい。
【0024】
操作部260は、位置決め部230と放出部240と打抜き部250とを操作できるように構成している。操作部260は、
図1に示すように回転部261と、ハンドル262と、を備える。
【0025】
回転部261は、長尺部材220の長手方向における基端部(基端側)に設けている。回転部261は、長尺部材220の基端側における長手方向を回転軸として長尺部材220に対して回転可能に構成している。回転部261は、第2係合器具270が第1係合器具210と係合した状態において、長尺部材220に対して回転させることによって第1係合器具210と第2係合器具270とを相対的に接近離間できるように構成している。
【0026】
ハンドル262は、長尺部材220の基端部(基端側)とともに使用者によって把持可能に構成している。ハンドル262は、回転軸263によって長尺部材220と回転可能に接続されている。ハンドル262は、使用者によって握られることによって回転軸263の周りに回転して長尺部材220と相対的に接近する。これにより、放出部240からステープルを放出し、長尺部材220の先端から打抜き部250の環状ブレードを突出できるように構成している。
【0027】
<第2係合器具>
第2係合器具270は、第1被接合部位と第2被接合部位を介して第1係合器具210とともに癒合促進デバイス100の本体部10を挟み込み可能に構成している。第2係合器具270は、
図3に示すようにヘッド280と、当接部290と、シャフト310と、を備える。シャフト310は、本明細書において第2シャフト部材に相当する。
【0028】
ヘッド280は、第1係合器具210と第2係合器具270とを係合させた際に第1係合器具210の長尺部材220の特に先端側に隣接して配置される。ヘッド280は、本実施形態において
図2、
図3に示すように略円板形状に構成しており、断面形状が長尺部材220の円形状と同一又は類似する形状として構成している。
【0029】
当接部290は、放出部240から放出される複数のステープルと当接可能に構成している。当接部290は、ヘッド280の軸方向X(板厚方向)において第1係合器具210の側に設けている。当接部290は、放出部240から放出される複数のステープルと当接可能に構成している。放出部240から放出されたステープルは当接部290で当接し、変形することによって第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する。
【0030】
シャフト310は位置決め部230のシャフトと係合可能に構成しており、これにより第1係合器具210と第2係合器具270とを係合させるために設けられる。シャフト310は、第1係合器具210の側から軸方向Xに長尺状に延在するように構成している。シャフト310は、本実施形態において軸方向Xに直行する断面を円状に形成している。シャフト310には第1係合器具210の位置決め部230のシャフトを収容する空間を設けている。シャフト310は、位置決め部230のシャフトと嵌合するように構成しており、これにより第1係合器具210と第2係合器具270との位置合わせが可能になる。
【0031】
<癒合促進デバイス>
癒合促進デバイス100は、生体組織における第1被接合部位と第1被接合部位に対向する第2被接合部位との間に配置され、生体組織の癒合を促進する。癒合促進デバイス100は、
図3に示すように本体部10と、補強部20と、穴部30と、を備える。
【0032】
<本体部>
本体部10はシート状に構成し、生体組織における第1被接合部位と第1被接合部位に対向する第2接合部位とを接合する際に生体組織の癒合を促進する。
【0033】
本体部10は、
図3、
図4に示すように一例として円形状に形成しており、当該円形状の厚さ方向(軸方向X)に挿通するように形成された貫通孔11を複数備える。本体部10の貫通孔11の大きさについて例示すれば、好ましくは0.1~6mm、より好ましくは0.3~4mm、さらに好ましくは0.6~1.5mmである。本体部10は、貫通孔11の寸法DとピッチPとの比が0.25以上40未満となるように構成できる。
【0034】
本体部10は、生分解性の材料で構成することができる。本体部10の構成材料について特に制限はなく、例えば、生分解性樹脂が挙げられる。
【0035】
具体的には、(1)脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体;(2)上記(1)を構成する一以上の単量体から構成される共重合体などが挙げられる。
【0036】
すなわち、生分解性シートは、脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体、ならびに前記重合体を構成する一以上の単量体から構成される共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の生分解性樹脂を含むことが好ましい。
【0037】
<補強部>
補強部20は、医療デバイス200によって癒合促進デバイス100を第1被接合部位と第2被接合部位との間に留置する際等に癒合促進デバイス100のヨレ、ズレ、破損等を抑制するために設けられる。補強部20は、
図3に示すように内側補強部21と、外側補強部22と、を備える。内側補強部21は、本体部10の中空の円形状において内周縁に沿って形成し、外側補強部22は、本体部10の中空の円形状において外周縁に沿って形成している。内側補強部21及び外側補強部22は、本実施形態において本体部10のように貫通孔11を設けない形状として構成している。ただし、癒合促進デバイス100のヨレやズレを防止又は抑制し、強度を向上できれば、補強部20の具体的な形状は上記に限定されず、位置も内周縁や外周縁でなくてもよい。また、内側補強部21には、
図5に示すように後述する医療器具400の筒部420に設けられた雄ねじ形状等の取り付け部422と係合するために雌ねじ形状などの被係合部23を設けることができる。
【0038】
<穴部>
穴部30は、医療デバイス200のシャフト310に挿通可能に構成している。穴部30は、本実施形態において軸方向Xから見た際に略円形状に構成している。ただし、本体部によって生体組織の癒合を促進できれば、孔部の具体的な形状は円形状に限定されない。
【0039】
本体部10の製造方法について例示すれば、本体部10の貫通孔11の部分について上述した生分解性材料を含む繊維を円周状に配置し、同様の繊維を放射方向に配置して円周状の繊維と放射方向の繊維とを編み込むように一体にする方法が考えられる。生分解性樹脂からなる繊維を作製する方法としてはエレクトロスピニング法(電界紡糸法・静電紡糸法)やメルトブロー法等が挙げられる。本体部10は、上記方法のうち1種のみを選択してもよいし、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0040】
本体部10は、本体部10を構成する生分解性樹脂等の構成材料によって生体反応を惹起させる。本体部10は、この作用により、フィブリン等の生体成分の発現を誘導する。このようにして誘導された生体成分は、本体部10の貫通孔11を貫通するようにして集積することで、癒合を促進することができる。したがって、接合対象となる生体器官同士の間に、癒合促進デバイス100の本体部10を配置することにより、上記のメカニズムによる癒合の促進が生じる。
【0041】
<医療器具>
図5は医療器具セット1を構成する癒合促進デバイス100と医療器具400について示す図である。医療器具400は、
図5に示すように吸盤部410と、筒部420と、展開部430(押圧部材に相当)と、を備える。なお、
図5では中心線より右側を断面図にて示し、左側を側面図のように示している。なお、以下では例示的に癒合促進デバイス100を第1被接合部位と第2被接合部位のうちの第2被接合部位に配置することを前提に説明する。以下、詳述する。
【0042】
<吸盤部>
吸盤部410は、癒合促進デバイス100を一時的に吸着可能であり、癒合促進デバイス100の一方の側から第1被接合部位または第2被接合部位に押し付け力を付与できるように変形可能に構成している。吸盤部410は、
図5に示すように吸着面411を備える。
【0043】
吸着面411は、第1被接合部位または第2被接合部位に癒合促進デバイス100を配置するまで癒合促進デバイス100を吸着可能に構成している。吸着面411は、外周部412と、内周部413と、を備える。
【0044】
吸盤部410の吸着面411は、弾性変形可能な部材(第1弾性部材に相当)を備えるように構成している。吸着面411は、本実施形態では無負荷状態において
図5に示すようにドーム形状のような湾曲した面となるように構成している。このように吸盤部410がドーム形状の状態で後述する第2被接合部位の付近に配置することで、外周部412が第2接合部位に触れないようにすることができる。なお、吸盤部410の断面は、本実施形態において曲線を含むように構成しているが、断面形状は曲線以外にも直線であったり、又は滑らかでない不定形な形状であったりしてもよい。
【0045】
外周部412は、ドーム形状の外周縁部に相当し、本実施形態では略円形状に構成している。外周部412は、吸盤部410の軸方向Xから見た際に癒合促進デバイス100の外周縁部より径の寸法が大きくなるように構成している。内周部413は、外周部412よりも径方向rの内方に設けられる。内周部413は、本実施形態において略中央部に穴部を形成する内周縁部に相当する。外周部412は、弾性により内周部413に対して軸方向Xに変位可能に構成している。本明細書では、吸着面411の外周部412が内周部413に対して軸方向Xに変位した形状を第1形状といい、一例としてドーム形状を挙げることができる(
図10参照)。また、吸着面411の外周部412が第1形状よりも軸方向Xにおいて内周部413に対して接近した形状を第2形状といい、一例として平坦な形状を挙げることができる(
図11参照)。第2形状は、本実施形態において力を付与することによって形成するように構成している。また、吸盤部410は、外周部412と内周部413がそれ以外の部分に比べて硬く、それ以外の部位が柔らかいと形状変形しやすくできる。
【0046】
吸盤部410は、第1形状と第2形状に変形可能であって、静電気等により癒合促進デバイス100を吸着可能な部材であれば、具体的な材料は特に限定されない。吸盤部410の材料について例示すれば、シリコンでできたシート状の部材を挙げることができる。
【0047】
<筒部>
筒部420は、吸盤部410と一体になるように構成している。筒部420は
図5に示すように中空に構成しており、内部に医療デバイス200の第1係合器具210の位置決め部230または第2係合器具270のシャフト310によって挿通可能に構成している。筒部420の内側面421は、第2係合器具270のシャフト310と嵌合するように軸方向Xに延在するように構成できる。ただし、第2係合器具270のシャフト310が挿通できれば、筒部の内側面は必ずしもシャフト310と篏合する形状や寸法でなくてもよい。
【0048】
筒部420は、後述する展開部430等によって吸盤部410の形状を変形できるように比較的剛直な材料によって構成することができる。また、筒部420の軸方向Xにおける吸盤部410の端部には癒合促進デバイス100を着脱可能な取り付け部422を設けている(
図5参照)。取り付け部422は、癒合促進デバイス100の被係合部23と係合することで癒合促進デバイス100を医療器具400と一体に構成している。取り付け部422は、医療器具400を癒合促進デバイス100と一体にできれば具体的な形状は特に限定されない。被係合部23は、ねじ溝等の雌ねじ形状を癒合促進デバイス100の内側補強部21等に設け、取り付け部422は筒部420に雄ねじ形状を設けることによって構成することができる。また、上記と反対に被係合部に雄ねじ形状を設け、取り付け部に雌ねじ形状を設けてもよい。
【0049】
<展開部>
展開部430は、吸盤部410が第1形状から第2形状になるように吸着面411を変形させる。展開部430は、本実施形態では軸方向Xにおいて外周部412が内周部413に対して位置する側から内周部413に向かって吸盤部410に力を付与して外周部412を内周部413に接近させる。展開部430は、
図5に示すように押し引き部431と、ストレート部432と、テーパー部433と、を備える。
【0050】
押し引き部431は、術者等の使用者の手指によって軸方向Xに押したり、引いたりすることが可能に構成している。押し引き部431は、筒部420の軸方向Xに交差する径方向rに突出する形状によって構成している。ただし、使用者の手指によって押したり、引いたりできれば、押し引き部の具体的な形状は
図5に限定されない。
【0051】
ストレート部432は、押し引き部431による動作をテーパー部433に伝達可能に構成している。押し引き部431、ストレート部432、およびテーパー部433は、筒部420に対して軸方向Xに一体的に移動するように構成している。
【0052】
テーパー部433は、テーパー形状に構成しており、押し引き部431による動作に応じてテーパー形状が変形して吸盤部410と当接したり、当接しなくなったりするように構成している。吸盤部410は、テーパー部433による押圧によってドーム形状である第1形状から平坦または平坦に近い第2形状に変形しうる。ストレート部432およびテーパー部433は、
図3等において見えない箇所も含めて周方向θに4カ所略均等な間隔で配置しているが、吸盤部410を第1形状から第2形状に変形できれば、ストレート部とテーパー部の個数や配置は
図3等に限定されない。
【0053】
<処置方法>
次に医療器具セット1を用いた処置方法を説明する。
図6、
図7は医療器具セット1を用いた処置方法の各手順を示すフローチャートである。
図8~
図15は大腸吻合術を説明するための模式的な図である。
【0054】
処置方法は、生体器官の接合対象となる一方の被接合部位(第2被接合部位)に癒合促進デバイス100と医療器具400を配置すること(S11)を含む。処置方法は、一方の第1被接合部位と他方の第2被接合部位との間に癒合促進デバイス100の本体部10の少なくとも一部を挟み込んだ状態で一方の第1被接合部位と他方の第2被接合部位とを接合すること(S12)を含む。
【0055】
処置方法により接合される生体器官及び生体器官における被接合部位は特に限定されず、任意に選択することができる。ただし、以下の説明では、大腸吻合術を例に挙げて説明する。
【0056】
また、以下に説明する各手技において、公知の手技手順や公知の接合装置については詳細な説明を適宜省略する。
【0057】
以下、本明細書の説明において「生体器官の間に癒合促進デバイスを配置する(以下、上記記載と言う)」とは、生体器官に癒合促進デバイスが直接的に又は間接的に接触した状態で配置されることを意味し得る。
【0058】
また、上記記載は生体器官との間に空間的な隙間が形成された状態で癒合促進デバイスが配置されることを意味し得る。また、上記記載はその両方の状態で癒合促進デバイスが配置されること(例えば、一方の生体器官に癒合促進デバイスが接触し、他方の生体器官には癒合促進デバイスが接触していない状態で配置されること)を意味し得る。
【0059】
また、本明細書の説明において「周辺」とは、厳密な範囲(領域)を規定するものではなく、処置の目的(生体器官同士の接合)を達成し得る限りにおいて、所定の範囲(領域)を意味する。
【0060】
また、各処置方法において説明する手技手順は、処置の目的を達成し得る限りにおいて、順番を適宜入れ替えることが可能である。また、本明細書の説明において「相対的に接近させる」とは、接近させる対象となる2つ以上のものを、互いに接近させること、一方のみを他方のみに接近させることの両方を意味する。
【0061】
本実施形態に係る処置方法において、接合対象となる生体器官は、癌腫瘍の切除に伴い切断された大腸である。具体的には、接合対象となる生体器官は、切断した大腸の口側A2と、切断した大腸の肛門側A1である。以下の説明では、切断した大腸の口側A2の口部周辺(第2被接合部位)と、切断した大腸の肛門側A1の腸壁の一部(第1被接合部位)を接合する手順を説明する。
【0062】
図7に示すように、本実施形態に係る処置方法は、大腸の口部周辺に癒合促進デバイス100および医療器具400を配置すること(S101)と、医療器具400を癒合促進デバイス100から取り外すこと(S102)を含む。処置方法は、大腸の口部周辺と大腸の腸壁を相対的に接近させること(S103)と、大腸の口部周辺と大腸の腸壁との間で癒合促進デバイス100の本体部10を挟み込むこと(S104)を含む。また、処置方法は、大腸の口部周辺と大腸の腸壁との間に癒合促進デバイス100に本体部10を挟み込んだ状態で接合すること(S105)を含む。以下、詳述する。
【0063】
まず、術者は、
図9において臍のあたり(
図9の〇で示す部分)の周囲にポートという穴のような部位を形成し、患者のお腹を膨らませる。
図9では臍を挟んで左右に2か所ずつ〇で示すポートを形成しているが、あくまで例示であってポートの位置や個数は
図9に限定されない。次に、術者は、
図9の×で示す臍のあたりに切開部を形成し、そこから口側A2の患部を体外に取り出す。そして、術者は、切開部を介して手術を施す患部を切り取る。次に、術者は、大腸の口側A2に、医療デバイス200の第2係合器具270を配置する。
【0064】
次に、術者は、第2係合器具270のシャフト310を大腸の口側A2に挿入し、シャフト310を突出した状態で巾着縫合し、縫合部A21を形成する。縫合部A21の外表面は、縫合に伴い凸側に部分的に突出した形状となる(
図8参照)。
【0065】
次に、術者は、体外において、
図8に示すように、大腸の口側A2と大腸の肛門側A1との間に癒合促進デバイス100及び医療器具400を配置する(S101)。なお、癒合促進デバイス100と医療器具400は、本実施形態において上述のように取り付け部422と被係合部23とによって一体に構成している。
【0066】
癒合促進デバイス100を大腸の口側A2に配置する際に、術者は癒合促進デバイス100と一体になっている医療器具400の筒部420の内側面421に医療デバイス200の第2係合器具270のシャフト310を挿通させる。そして、体外において展開部430の押し引き部431を手指により癒合促進デバイス100に向かって(
図10の下方向に向かって)押圧する。
【0067】
これにより、
図10、
図11に示すように、展開部430が筒部420に対して軸方向Xに移動し、テーパー部433が吸盤部410に当接し、吸盤部410の外周部412を軸方向Xに移動させる。その結果、吸盤部410の形状はドーム形状(第1形状)から平坦に近い形状(第2形状)に変形し、癒合促進デバイス100は、大腸の口側A2と当接する。上述した第1形状から第2形状への変形は、勢いよくよりは比較的ゆっくりの方が好ましい。
【0068】
癒合促進デバイス100が大腸の口側A2と当接することで、癒合促進デバイス100と水分を含んでいる大腸の口側A2との当接による接着力は、癒合促進デバイス100が静電気によって吸盤部410に吸着する力より大きくなり得る。この状態で押し引き部431による押圧を解除して、
図12に示すように吸盤部410の形状を平坦に近い形状からドーム形状に戻すか、ドーム形状に近づける。
【0069】
これにより、癒合促進デバイス100は、吸盤部410に吸着した状態から大腸の口側A2に付着した状態となる。そして、医療器具400を癒合促進デバイス100に対して周方向θに回転させて、取り付け部422と被係合部23の係合を解除する。これにより、医療器具400が癒合促進デバイス100から抜去可能になる(S102)。癒合促進デバイス100は
図12において平坦に図示しているが、この時点で生体において隆起するように形成された縫合部A21の形状に合わせて本体部10の径方向rの内方が
図9に示すように隆起するように変形し得る(
図13参照)。
【0070】
次に、術者は、大腸の口側A2に対して本体部10を保持した状態を維持しつつ、位置決め部230のシャフトと第2係合器具270のシャフト310とを離間した位置で係合させる。そして、回転部261を回転させて、
図14に示すように第1係合器具210と第2係合器具270を相対的に接近させる。これにより、大腸の口部周辺と大腸の腸壁とが相対的に接近する(S103)。
【0071】
次に、術者は、第1係合器具210と第2係合器具270との間で、大腸の口側A2の口部周辺、癒合促進デバイス100の本体部10、大腸の肛門側A1の腸壁に形成した貫通孔A11周辺を挟み込む(S104)。
【0072】
術者は、医療デバイス200の操作部260のハンドル262を回転軸263の回りに回転させて打抜き部250の環状ブレードを突出させる。そして、第1係合器具210と第2係合器具270との間に挟まれた大腸の口側A2の一部、本体部10の径方向内側、及び大腸の肛門側A1の一部を切除し、切除した部位の周囲をステープル(図示省略)により接合する(S105)。
【0073】
次に、術者は、
図15に示すように、医療デバイス200を、例えば、大腸の肛門側A1から肛門を介して生体外へ取り出す。このとき、第1係合器具210の打抜き部250の外径dより内方側に構成された領域を医療デバイス200とともに生体外へ取り出す。これにより、癒合促進デバイス100において打抜き部250よりも径方向rの内方に位置する部位は体内に残らず、除去される。
【0074】
癒合促進デバイス100の本体部10が接合対象となる生体器官の間に挟み込まれて留置されることによって、本体部10の貫通孔A11を通じて接合対象となる生体器官の癒合を促進させることができる。
【0075】
このような処置方法によれば、シート状の本体部10を第1被接合部位と第2被接合部位との間に挟み込ませるという簡便な方法により、接合手技(例えば、消化管の吻合術)後の縫合不全等のリスクを低減させることができる。なお、癒合促進デバイス100は、体外において第2係合器具270のシャフト310に取り付けると説明したが、上記以外にも体内で第1係合器具210の位置決め部230に癒合促進デバイス100を挿通させてもよい。
【0076】
以上説明したように本実施形態に係る医療器具セット1は、医療器具400と、生体組織の癒合を促進するシート状の癒合促進デバイス100と、を有する。医療器具400は、癒合促進デバイス100を静電気等により一時的に吸着可能であり、癒合促進デバイス100の一方の側から押し付け力を付与可能な吸盤部410を備える。吸盤部410は、外周部412と、外周部412よりも径方向rの内方に設けられ、穴部を設けた内周部413と、を含む吸着面411を備える。
【0077】
このように構成することによって、吸盤部410によって癒合促進デバイス100を大腸の口側A2等の第2被接合部位に押し付けて癒合促進デバイス100にヨレが生じることを防止または抑制できる。また、吸盤部410を用いて癒合促進デバイス100を第2被接合部位に押し付けることによって、癒合促進デバイス100を大腸の口側A2等の第2被接合部位に設置し易くすることができる。
【0078】
また、癒合促進デバイス100は、第1係合器具210と、第2係合器具270と、を備えた医療デバイス200によって生体組織に吻合される。第1係合器具210は、癒合促進デバイス100の生体組織への吻合時において癒合促進デバイス100の一方の側に配置される。第1係合器具210は、癒合促進デバイス100を生体組織と吻合可能なステープラーを放出する放出部240を備える。第2係合器具270は、吻合時において癒合促進デバイス100に対して第1係合器具210と反対側に配置され、吻合時に第1係合器具210とともに生体組織および癒合促進デバイス100を挟持する。第1係合器具210は、穴部30に挿通可能な位置決め部230を備える。第2係合器具270は、位置決め部230を収容可能な中空のシャフト310を備える。医療器具400は、位置決め部230またはシャフト310によって挿通可能であって吸盤部410と一体に構成された筒部420を備える。このように構成することによって、医療器具400を医療デバイス200に対して配置し易くでき、癒合促進デバイス100を第2被接合部位に配置する作業を円滑に行うことができる。
【0079】
また、吸盤部410は外周部412が内周部413に対して軸方向Xに変位可能に構成している。医療器具400は、展開部430を備える。展開部430は、吸盤部410の外周部412が内周部413に対して軸方向Xに変位した第1形状から第1形状よりも軸方向Xにおいて内周部413に接近した第2形状となるように吸着面411を変形させる。このように構成することによって、癒合促進デバイス100を第2被接合部位のような意図した部位に付着するまで癒合促進デバイス100が意図しない部位に付着しにくくすることができる。
【0080】
また、吸盤部410は、無負荷状態で第1形状となるように付勢され、軸方向Xに力を付与した状態で第2形状となるように構成された弾性部材を備える。展開部430は、軸方向Xにおいて外周部412が内周部413に対して位置する側から内周部413に向かって吸盤部410に力を付与して外周部412を軸方向Xにおいて内周部413に接近させる。このように、展開部430の操作によって吸盤部410を変形させ、癒合促進デバイス100を吸盤部410から第2被接合部位に押し付けることによって癒合促進デバイス100にヨレが生じることを防止または抑制できる。
【0081】
また、医療器具400は、筒部420に癒合促進デバイス100を着脱可能な取り付け部422を備えるように構成している。このように構成することによって、癒合促進デバイス100が大腸の口側A2の生体組織に設置された後に、容易に医療器具400のみを取り外すことができる。
【0082】
また、外周部412は、癒合促進デバイス100の外周縁部の寸法よりも径を大きく構成している。これにより、癒合促進デバイス100を第2被接合部位により設置しやすくすることができる。なお、本実施形態では外周部412や癒合促進デバイス100の比較対象となる寸法は直径としたが、両者の外径同士の大小を比較できれば直径に限定されず、上記以外にも多角形の一辺の長さ寸法等であってもよい。
【0083】
<第1実施形態の変形例1>
次に第1実施形態の変形例1について説明する。
図16は第1実施形態の変形例1に係る医療器具セット1aを示す図である。第1実施形態では展開部430が押し引き部431と、ストレート部432と、テーパー部433と、を備えると説明した。ただし、展開部は以下に示す螺旋等のばね状部材を備えるように構成してもよい。
【0084】
なお、本変形例1において癒合促進デバイス100と医療デバイス200、および医療器具400aの吸盤部410および筒部420は第1実施形態と同様であるため、共通する構成に同様の符号を付して説明を省略する。
【0085】
<展開部>
展開部430aは、弦巻ばねのようなばね状部材によって構成している。展開部430aにかかるバネは、筒部420に対して摺動可能に構成している。展開部430aは、
図16に示すように基端部431aと、先端部432aと、を備える。
【0086】
基端部431aは、軸方向Xにおいて吸盤部410を設けた側と反対側に位置する。基端部431aおよび基端部431aの近傍は術者によって軸方向Xに押圧するか、引っ張るように構成できる。先端部432aは、展開部430aが筒部420に対して移動可能であることによって吸盤部410に当接したり、離間したりできる。展開部430aは、基端部431aから先端部432aにかけてばねの径が大きくなるように構成しているが、押圧によって吸盤部410の形状を平坦な形状に変形できれば、具体的な形状は
図16に限定されない。
【0087】
<処置方法>
第1実施形態の変形例1に係る医療器具セット1aを用いた処置方法は、癒合促進デバイス100を大腸の口側A2に設置する際の展開部430aの操作が第1実施形態と異なる。
【0088】
癒合促進デバイス100は、吸盤部410を大腸の口側A2に設置する際に展開部430aの基端部431aを術者の手指等によって押圧する。これにより、展開部430aが筒部420に対して軸方向Xに対して移動し、先端部432aが吸盤部410に当接して吸盤部410の形状をドーム形状から平坦に近い形状に変形させる。なお、先端部432aは、最初から吸盤部410に当接していてもよい。
【0089】
これにより、癒合促進デバイス100が水分を含んでいる大腸の口側A2に付着する。そして、基端部431aを吸盤部410から離すように操作することで吸盤部410の形状が平坦に近い形状からドーム形状に戻り、癒合促進デバイス100の吸盤部410に対する吸着力が減少する。
【0090】
そして、取り付け部422と被係合部23の係合を解除し、医療器具400aを大腸の口側A2から抜去することで癒合促進デバイス100が大腸の口側A2に設置された状態となる。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
以上説明したように本変形例1では展開部430aが弦巻ばねのようなばね状部材を備えるように構成している。このように構成することによっても癒合促進デバイス100を吸盤部410から第2被接合部位に押し付けて癒合促進デバイス100のヨレを防止または抑制することができる。また、吸盤部410を用いて癒合促進デバイス100を第2被接合部位に押し付けることによって癒合促進デバイス100を第2被接合部位に設置しやすくできる。
【0092】
<第1実施形態の変形例2>
図17は、第1実施形態の変形例2に係る医療器具セット1bを示す図である。第1実施形態において展開部430は、押し引き部431と、ストレート部432と、テーパー部433と、を備え、変形例1では展開部430aがばね状部材を備えると説明した。しかし、展開部は以下のようなシート部材を備えるように構成することができる。なお、変形例2では癒合促進デバイス100、医療デバイス200、及び医療器具400bの吸盤部410および筒部420は第1実施形態と同様であるため、共通する構成の説明を省略する。
【0093】
<展開部>
展開部430bは、
図17に示すように穴部431bを備えたシート部材を備える。展開部430bのシート部材は、軸方向Xから見た際の形状を癒合促進デバイス100と同様の中空の略円形状に構成できる。展開部430bの穴部431bは、筒部420の外側面と篏合する程度の寸法に構成できる。展開部430bは、吸盤部410の形状をドーム形状から平坦に近い形状に変形できるように硬質のプラスチック等の材料を含むように構成できる。
【0094】
<処置方法>
変形例2に係る医療器具セット1bを用いた処置方法は、癒合促進デバイス100を大腸の口側A2に設置する際の展開部430bの操作が第1実施形態と異なる。
【0095】
癒合促進デバイス100は、吸盤部410を大腸の口側A2に設置する際に展開部430bのシート部材を術者の手指によって押圧する。これにより、展開部430bが筒部420に対して軸方向Xに対して移動し、展開部430bのシート部材が吸盤部410の外周部412に当接し、吸盤部410が展開部430bの押圧によりドーム形状から平坦に近い形状に変形する。
【0096】
これにより、癒合促進デバイス100が吸盤部410の形状と同様に変形して水分を含んでいる大腸の口側A2に付着するようになる。そして、展開部430bを軸方向Xにおいて癒合促進デバイス100から離間させることで吸盤部410が復元力により平坦に近い形状からドーム形状に変形し、癒合促進デバイス100の吸盤部410に対する吸着力が減少する。
【0097】
そして、取り付け部422と被係合部23の係合を解除し、医療器具400bを大腸の口側A2から抜去することで癒合促進デバイス100が大腸の口側A2に設置された状態となる。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
以上説明したように本変形例2では展開部430bが平坦で比較的硬質のシート部材を備えるように構成している。このように構成することによって癒合促進デバイス100を吸盤部410から第2被接合部位に押し付けて癒合促進デバイス100のヨレを防止または抑制することができる。また、吸盤部410を用いて癒合促進デバイス100を第2被接合部位に押し付けることによって癒合促進デバイス100を第2被接合部位に設置しやすくできる。
【0099】
<第2実施形態>
次に第2実施形態に係る医療器具セット1cについて説明する。
図18は本発明の第2実施形態に係る医療器具セット1cを示す平面図である。
図19は
図18の医療器具セット1cを構成する医療器具400cを示す側面図である。
【0100】
第1実施形態では吸盤部410の外周部412が略円形状に形成されていると説明した。また、展開部430は、押し引き部431と、ストレート部432と、テーパー部433と、を備えると説明した。ただし、吸盤部は円形以外の形状で構成するとともに、展開部は紐状部材を含むように構成することができる。なお、第2実施形態では癒合促進デバイス100、医療デバイス200、および医療器具400cの筒部420は第1実施形態と同様であるため、共通する構成の説明を省略する。
【0101】
<吸盤部>
吸盤部410c(第1弾性部材に相当)は、第1実施形態と同様にシリコン等の材料によって構成される。吸盤部410cは、無負荷状態でドーム形状(第1形状)に形状付けされ、軸方向Xに力を付与することで平坦形状または平坦に近い形状(第2形状)となるように構成している。吸盤部410cは、
図18に示すように筒部420を中心にして帯状部材を周方向θに複数配置している。
【0102】
外周部412cは、本実施形態において複数の帯状部材の外周縁部に相当する。外周部412cは、
図18に示すように少なくとも一部が癒合促進デバイス100の外周縁部より大きくなるように構成している。内周部413は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。吸盤部410cの帯状部材は、本実施形態において周方向θにおいて等間隔に4つ設けるように構成している。ただし、吸盤部によって癒合促進デバイスを第1被接合部位または第2被接合部位に貼り付けることができれば、帯状部材の枚数は4枚に限定されず、間隔も等間隔でなくてもよいが、帯状部材の数は2枚以上であって4枚が好ましい。吸着面411cは吸着面411と形状は異なるが機能は同様であるため、説明を省略する。
【0103】
<展開部>
展開部430c(第1引張部材に相当)は、本実施形態において吸盤部410cの帯状部材の各々に紐状部材を設けることによって構成している。展開部430cの紐状部材は、吸盤部410cの帯状部材を軸方向Xにおいて外周部412が内周部413に対して位置する側と反対側に引っ張ることによって吸盤部410cのドーム形状を平坦な形状に近づけることができる。展開部430cは、吸盤部410cの径方向外方を引っ張るように構成している。
【0104】
<処置方法>
第2実施形態に係る医療器具セット1cを用いた処置方法は、癒合促進デバイス100を大腸の口側A2に設置する際の展開部430cの操作が第1実施形態と異なる。
【0105】
癒合促進デバイス100は、吸盤部410cを大腸の口側A2に設置する際に展開部430cの紐状部材を軸方向Xにおいて内周部413に対して外周部412cが位置する側と反対側に吸盤部410cを引っ張るように操作する。これにより、吸盤部410cの形状がドーム形状から平坦な形状に変形する。
【0106】
その結果、癒合促進デバイス100と大腸の口側A2との接触面積が増加し、癒合促進デバイス100が水分を含んでいる大腸の口側A2に付着しやすい状態になる。なお、吸盤部410cは、鉗子等を用いて平坦な形状等に保持してもよい。そして、展開部430cの紐状部材を軸方向Xにおいて大腸の口側A2から離間させるように引っ張る。これにより、吸盤部410cの形状が平坦な形状から元のドーム形状に変形し、癒合促進デバイス100の吸盤部410cに対する吸着力が減少する。
【0107】
そして、取り付け部422と被係合部23の係合を解除し、医療器具400cを大腸の口側A2から抜去することで癒合促進デバイス100が大腸の口側A2に設置された状態となる。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0108】
以上、説明したように第2実施形態に係る医療器具セット1cは、吸盤部410cが無負荷状態で第1形状となるように付勢され、軸方向Xに力を付与した状態で第2形状となるように構成された弾性部材を備える。展開部430cは、軸方向Xにおいて外周部412が内周部413に対して位置する側と反対側に吸盤部410cを引っ張る紐状部材を備えるように構成している。これにより、第1実施形態と同様に吸盤部410cにより癒合促進デバイス100を第1被接合部位または第2被接合部位に押し付けて癒合促進デバイス100のヨレを防止または抑制することができる。
【0109】
また、吸盤部410cを用いて癒合促進デバイス100を第2被接合部位に押し付けることによって癒合促進デバイス100を第2被接合部位に設置しやすくできる。
【0110】
<第3実施形態>
図20は第3実施形態に係る医療器具セット1dを示す平面図である。
図21は
図20に係る医療器具セット1dを中心軸に沿って切断した断面図である。第1実施形態では吸盤部410が無負荷状態においてドーム形状に形状付けられると説明したが、以下のように平坦に近い形状に形状付けしてもよい。なお、本実施形態では癒合促進デバイス100、医療デバイス200、医療器具400dの筒部420が第1実施形態と同様であるため、共通する構成の説明を省略する。
【0111】
<吸盤部>
吸盤部410d(第2弾性部材に相当)は、本実施形態において無負荷状態において
図11の吸盤部410のように平坦または平坦に近い形状(第2形状)となるように形状付けられている。吸盤部410dは本実施形態において円盤状の部材をドーム形状と平坦に近い形状とに変形可能に構成している。ただし、癒合促進デバイス100を一時的に吸着するとともに第1被接合部位または第2被接合部位に付着できれば、吸盤部の具体的な形状は円盤以外にも第2実施形態のような複数の帯状部材を周方向θに配置するように構成してもよい。なお、吸盤部410dが備える吸着面411d、外周部412d、および内周部413dは吸盤部410dが無負荷状態で平坦な形状に形状づけられている仕様を除いて、その他は第1実施形態と同様である。よって、詳細な説明を省略する。
【0112】
<展開部>
展開部430d(第2引張部材に相当)は、吸盤部410dの弾性部材の径方向rの外方に対して引っ張り力を付与して弾性部材の形状を平坦に近い形状(第2形状)からドーム形状(第1形状)に変形させるように構成している。展開部430dは、本実施形態において吸盤部410dに対して張力を付与する糸状部材を周方向において4カ所等間隔にて配置し、筒部420に取り付けるように構成している。ただし、一時的に吸盤部410dの形状をドーム形状に維持できれば、糸状部材の本数は4本でなくてもよく、間隔も等間隔でなくてもよい。
【0113】
<処置方法>
第3実施形態に係る医療器具セット1dを用いた処置方法は、癒合促進デバイス100を大腸の口側A2に設置する際の展開部430dの操作が第1実施形態と異なる。
【0114】
癒合促進デバイス100を吸盤部410dから大腸の口側A2に設置する際には展開部430dの糸状部材を切断する。ここで、4本ある展開部430dの糸状部材は部分的に、例えば周方向θにおいて180度の位置関係にある糸状部材を切断する。これにより、吸盤部410dの中でも切断された糸状部材の付近の部位は、張力から解放されることによって無負荷状態に近づき、当該部分がドーム形状から平坦な形状に近づくように変形する。
【0115】
その結果、癒合促進デバイス100の大腸の口側A2との接触面積が増加し、癒合促進デバイス100の吸盤部410dに対する吸着力が減少する。この状態で切断した糸状部材を筒部420の基端部などに接合等する。これにより、吸盤部410dの中でも平坦に変形した部分が再びドーム形状に変形する。癒合促進デバイス100は、水分を含む大腸の口側A2と接触することで、吸盤部410dの形状がドーム形状に変形しても大腸の口側A2に付着したままの状態となる。
【0116】
そして、取り付け部422と被係合部23の係合を解除して、医療器具400dを大腸の口側A2から抜去することで癒合促進デバイス100が大腸の口側A2に設置された状態となる。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、展開部の糸状部材の張力を減少させることができれば、糸状部材は切断してもよいし、解くようにしてもよい。
【0117】
以上説明したように第3実施形態に係る医療器具セット1dでは、吸盤部410dが無負荷状態で平坦な形状に近い第2形状になるように付勢された弾性部材を備えるように構成している。展開部430dは、吸盤部410dの弾性部材の径方向rの外方に引っ張り力を付与することによって弾性部材を平坦に近い第2形状からドーム形状の第1形状に変形させる糸状部材を備えるように構成している。このように弾性部材に付加された引張力を解除することによって弾性部材が吸盤部410dを復元力によって平坦に近い形状に変形させ、吸盤部410dに吸着した癒合促進デバイス100を第2被接合部位に付着させることができる。これにより、癒合促進デバイス100のヨレを防止または抑制することができる。
【0118】
また、吸盤部410dを用いて癒合促進デバイス100を第2被接合部位に押し付けることによって、癒合促進デバイス100を第2被接合部位に設置しやすくできる。
【0119】
(第3実施形態の変形例)
図22は第3実施形態の変形例に係る医療器具セット1eを示す図である。第3実施形態では吸盤部410dに係る弾性部材の径方向rの外方に引っ張り力を付与することによって弾性部材を平坦に近い形状からドーム形状に付勢すると説明した。ただし、展開部の構成は糸状部材を筒部に巻き付けることによって構成してもよい。
【0120】
なお、本変形例では癒合促進デバイス100、医療デバイス200、医療器具400eの筒部420が第1実施形態と同様であり、吸盤部410dが第3実施形態と同様であるため、同様の符号を用いて共通する構成の説明を省略する。
【0121】
<展開部>
展開部430eは、筒部420の外側面に巻き付け可能な糸状部材によって構成している。展開部430eに係る糸状部材は、第3実施形態と同様に吸盤部410dの径方向rの外方に取り付けるように構成している。展開部430eに係る糸状部材は、筒部420に巻き付けることによって吸盤部410dの形状を平坦に近い形状(
図22の上図参照)からドーム形状(
図22の下図参照)に近づけることができる。
【0122】
<処置方法>
第3実施形態の変形例に係る医療器具セット1eを用いた処置方法は、癒合促進デバイス100を大腸の口側A2に設置する際の展開部430eの操作が第1実施形態と異なる。
【0123】
癒合促進デバイス100を吸盤部410dから大腸の口側A2に設置する際に、展開部430eの糸状部材は、
図22の下図に示すように筒部420に巻き付けられて吸盤部410dをドーム形状に付勢している。ここで術者は、筒部420に巻き付けられた展開部430eの糸状部材を解くように操作する。
【0124】
これにより、展開部430eの糸状部材による張力が減少し、吸盤部410dの径方向rの外方は
図22の上図に示すようにドーム形状から無負荷状態の平坦に近い形状に変形する。吸盤部410dの変形に応じて吸盤部410dに吸着した癒合促進デバイス100も水分を含む大腸の口側A2に接近して付着し、大腸の口側A2との接触面積が増加する。
【0125】
この状態から展開部430eの糸状部材を筒部420に再び巻き付けることによって展開部430eの糸状部材による張力が増加し、吸盤部410dの径方向rの外方はドーム形状に付勢される。癒合促進デバイス100は水分を含む大腸の口側A2と接触することで接着力が生じるため、吸盤部410dが平坦形状からドーム形状に変形しても、癒合促進デバイス100は吸盤部410dの形状に沿って変形しにくい状態となる。そのため、癒合促進デバイス100の吸盤部410dに対する吸着力が減少する。
【0126】
そして、取り付け部422と被係合部23の係合を解除し、医療器具400eを大腸の口側A2から抜去する。これにより、癒合促進デバイス100が大腸の口側A2に設置された状態となる。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0127】
以上説明したように第3実施形態の変形例に係る医療器具セット1eでは、展開部430eの糸状部材を筒部420に巻き付けるように構成している。このように構成することによっても糸状部材の張力を調整して吸盤部410dの形状をドーム形状から平坦な形状に近づけて癒合促進デバイス100を第2被接合部位に付着させ、癒合促進デバイス100のヨレを防止または抑制することができる。
【0128】
また、吸盤部410dを用いて癒合促進デバイス100を第2被接合部位に押し付けることによって、癒合促進デバイス100を第2被接合部位に設置しやすくできる。
【0129】
<第4実施形態>
図23、
図24は第4実施形態に係る医療器具セット1fを中心軸に沿って切断した断面図である。第1実施形態から第3実施形態では、吸盤部が平坦に近い形状とドーム形状に変形可能であると説明した。ただし、吸盤部は以下のように変形しないように構成することもできる。なお、第4実施形態では医療デバイス200が第1実施形態と同様であるため、共通する構成の説明を省略する。また、癒合促進デバイス100fは、取り付け部422と係合する被係合部23を備えず、その他の構成は癒合促進デバイス100と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0130】
<医療器具>
医療器具400fは、
図23等に示すように吸盤部410fと、筒部420fと、を備える。医療器具400fは、本実施形態において後述のように筒部420fによって展開部の機能を実現するように構成している。
【0131】
<吸盤部>
吸盤部410fは、癒合促進デバイス100fを吸着可能な球状の曲面を備えた吸着面411fを備えるように構成している。吸着面411fは、第1実施形態等と同様にシリコンなどの材料を含むことによって一時的に癒合促進デバイス100fを吸着させることができるように構成している。吸盤部410fの吸着面411fは、本実施形態において球体の一部をなす曲面のように構成しているが、癒合促進デバイス100fを一時的に吸着できれば、吸着面の具体的な形状は
図23等に限定されない。なお、吸盤部410fが備える外周部412fおよび内周部413fは吸盤部410fが第1実施形態のような変形可能な仕様に対して変形しない仕様となっている事項を除いて、その他は第1実施形態と同様である。よって、詳細な説明を省略する。
【0132】
<筒部>
筒部420fは、本実施形態において
図23、
図24に示すように外壁面421fと内壁面422f(テーパー部に相当)をテーパー形状に構成している。これにより、筒部420fは、肉厚を一定に構成している。ただし、後述のように吸盤部と筒部によって癒合促進デバイス100fを第2被接合部位に付着させることができれば、筒部の肉厚は必ずしも一定でなくてもよい。また、筒部420fは、軸方向Xにおける癒合促進デバイス100fの側において取り付け部422を設けないように構成している。
【0133】
癒合促進デバイス100fの第2被接合部位への付着は、筒部420fの内壁面422fを利用することによって構成している。医療デバイス200の第2係合器具270のシャフト310は、筒部420fの内壁面422fに挿通可能に構成している。癒合促進デバイス100fは、内壁面422fの一部をシャフト310に部分的に当接(挿通)させた状態で癒合促進デバイス100fを介して吸着面411fを第2被接合部位に押し付けることができる。
【0134】
癒合促進デバイス100fは、吸盤部410fに吸着した状態から吸盤部410fの吸着面411fが癒合促進デバイス100fを第2被接合部位に押し付ける部位を変化させることによって付着し得る。そのため、筒部420fの内壁面422fは、展開部のように機能し得る。
【0135】
<処置方法>
第4実施形態に係る医療器具セット1fを用いた処置方法は、癒合促進デバイス100fを大腸の口側A2に設置する際の吸盤部410fの動作が第1実形態と異なる。
【0136】
癒合促進デバイス100fは、大腸の口側A2に設置する前に吸盤部410fの吸着面411fに吸着した状態となっている。術者は、この状態から医療器具400fの筒部420fの内部に医療デバイス200の第2係合器具270のシャフト310を挿通させる。
【0137】
そして、シャフト310の外側面を筒部420fの内壁面422fに当接させて、癒合促進デバイス100fを介して吸盤部410fの吸着面411fを大腸の口側A2に押し付ける。そして、癒合促進デバイス100fを介して吸盤部410fが大腸の口側A2に押し付け力を付与する部位が変わるようにシャフト310と内壁面422fとの当接箇所を変化させる。
【0138】
これにより、癒合促進デバイス100fと水分を含む大腸の口側A2との接触面積が増加し、癒合促進デバイス100fが大腸の口側A2に付着する。この状態で医療器具400fを大腸の口側A2から抜去することで癒合促進デバイス100fが大腸の口側A2に設置された状態となる。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0139】
以上説明したように第4実施形態に係る医療器具セット1fは、吸盤部410fが曲面を備えた吸着面411fを備えた球状部材を備える。筒部420fは、テーパー状に形成された内壁面422fを備える。筒部420fの内壁面422fを医療デバイス200のシャフト310に挿通させ、癒合促進デバイス100fを押し付ける吸着面411fを変化させることで、癒合促進デバイス100fは、吸盤部410fに吸着した状態から第2被接合部位に押し付けられる。このように構成することによっても癒合促進デバイス100fを第2被接合部位に押し付けて癒合促進デバイス100fにヨレが生じることを防止または抑制することができる。
【0140】
また、吸盤部410fを用いて癒合促進デバイス100fを第2被接合部位に押し付けることによって、癒合促進デバイス100fを第2被接合部位に設置しやすくすることができる。
【0141】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。例えば、第2実施形態などでは吸盤部410cが第1形状に相当するドーム形状から第2形状に相当する平坦な形状に変形すると説明した。ただし、吸盤部が変形可能である場合に、吸盤部の押し付けによって癒合促進デバイス100の第1被接合部位との接触面積が増えた状態で吸盤部の変形によって癒合促進デバイスとの接触面積を減らせれば、第2形状は平坦な形状でなくてもよい。第2形状は平坦な形状以外にも外周部が軸方向Xにおいて第1形状の一例であるドーム形状である場合と反対側に反り返るように変形させてもよい。
【0142】
また、吸盤部は、ドーム形状から平坦な形状に変形することで癒合促進デバイスを第2被接合部位に付着可能にすると説明したが、癒合促進デバイスを吸盤部から第2被接合部位に付着できれば、吸盤部は平坦な形状からドーム形状に変形するように構成してもよい。
【0143】
また、第1実施形態等では医療器具400が筒部420と展開部430を備えると説明した。ただし、吸盤部によって癒合促進デバイス100を第2接合部位等に押し付けできれば、医療器具は吸盤部を備え、筒部及び展開部を備えない場合も本発明の一実施形態に含まれる。医療器具が展開部を備えない場合、吸盤部は術者の手指などによって押圧するように構成してもよい。
【0144】
また、医療器具セットは、取り付け部422と被係合部23とによって癒合促進デバイス100と医療器具400とが一体に構成していると説明したが、医療器具セットは癒合促進デバイスと医療器具とが別体となっている場合も本発明の一実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
23 被係合部、
100、100f 癒合促進デバイス、
200 医療デバイス、
210 第1係合器具、
230 位置決め部(第1シャフト部材)、
270 第2係合器具、
310 シャフト(第2シャフト部材)、
400 医療器具、
410、410c 吸盤部(第1弾性部材)、
410d 吸盤部(第2弾性部材)、
411、411c、411d 吸着面、
411f 吸着面(曲面)、
412、412c、412d、412f 外周部、
413、413d 内周部、
420 筒部、
422 取り付け部、
422f 内壁面(テーパー部)、
430 展開部(押圧部材)、
430a、430b、430e 展開部、
430c 展開部(第1引張部材)、
430d 展開部(第2引張部材)、
A1 肛門側(第1被接合部位)、
A2 口側(第2被接合部位)、
X 軸方向、
θ 周方向(角度方向)。