(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169900
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】表面疵検出方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20231124BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01B11/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081207
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山腰 浩平
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA63
2F065BB11
2F065CC06
2F065FF01
2F065FF42
2F065JJ08
2F065MM08
2F065QQ17
2F065QQ24
(57)【要約】
【課題】撮影画像にボケを生じても、被検体の表面に生じた線状疵の有害無害の評価を簡易かつ確実に行うことができる表面疵検出方法を提供する。
【解決手段】鋼片1の表面をCCDカメラ2で撮影して撮影画像中の線状疵の疵幅と輝度より当該線状疵の良否を判定する方法であって、上記表面に対するCCDカメラ2の撮影角度θを検出して、コンピュータ4内で、当該撮影角度θにおける撮影画像の台形歪みを幾何的に四角形へ変形補正するとともに、変形補正した撮影画像中の疵画像Piの疵幅Wと輝度ΔLを、予め用意した、撮影角度θに対する疵幅補正値と疵輝度補正値を使用してそれぞれ補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の表面を撮像手段で撮影して撮影画像中の線状疵の疵幅と輝度より当該線状疵の良否を判定する方法であって、前記表面に対する撮像手段の撮影角度を検出して、当該撮影角度における撮影画像の台形歪みを幾何的に四角形へ変形補正するとともに、変形補正した撮影画像中の疵画像の疵幅と輝度を、予め用意した、撮影角度に対する疵幅補正値と疵輝度補正値を使用してそれぞれ補正することを特徴とする表面疵検出方法。
【請求項2】
前記疵幅補正値と疵輝度補正値を正規分布の数式に代入して、横断面の輝度が当該正規分布となる線状疵の疵画像を生成する請求項1に記載の表面疵検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面疵検出方法に関し、特に鋼片表面の線状疵の検出に好適な表面疵検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼片表面の線状疵の検出においては、疵幅が当該疵の有害無害の評価の指標になるが、鋼片等の一定長の被検体の表面に生じる線状疵を検出する場合には、撮像手段を一台だけ設けてこれを首振り作動させることによって被検体の表面全体を撮影するのが合理的である。ところが、被検体の表面に対し撮影手段が正対していないと、撮影角度に応じた歪みが撮影画像に生じて画像中の疵幅が変動し、正確な疵幅判定ができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、正対時の四角枠画像に、撮影角度に応じた台形歪が生じることを利用して画像変換を行うことによって正確な疵幅判定を可能とした方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、撮影角度が変わると撮影画像に歪が生じるのに加えて、撮像手段と被検体表面の距離が変わるために撮影手段の焦点から外れて撮影画像にボケを生じ、これによって疵幅が変化するという問題がある。また、疵深さに対応する輝度も疵の有害無害の評価の指標になるが、撮影画像にボケを生じると輝度も変化して線状疵の評価が正確にできないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、撮影画像にボケを生じても、被検体の表面に生じた線状疵の有害無害の評価を簡易かつ確実に行うことができる表面疵検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明は、被検体(1)の表面を撮像手段(2)で撮影して撮影画像中の線状疵の疵幅と輝度より当該線状疵の良否を判定する方法であって、前記表面に対する撮像手段(2)の撮影角度(θ)を検出して、当該撮影角度(θ)における撮影画像の台形歪みを幾何的に四角形へ変形補正するとともに、変形補正した撮影画像中の疵画像(Pi)の疵幅(W)と輝度(ΔL)を、予め用意した、撮影角度に対する疵幅補正値と疵輝度補正値を使用してそれぞれ補正することを特徴とする。
【0008】
本第1発明においては、変形補正した撮影画像中の疵画像の疵幅と輝度を、予め用意した、撮影角度に対する疵幅補正値と疵輝度補正値によってカメラ正対時のものに補正しているから、撮像手段と被検体表面の距離の変化に伴う撮影画像のボケを排して線状疵の有害無害の評価を簡易かつ確実に行うことができる。
【0009】
本第2発明では、前記疵幅補正値と疵輝度補正値を正規分布の数式に代入して、横断面の輝度が当該正規分布となる線状疵の疵画像(Pi)を生成する。
【0010】
本第2発明においては、線状疵の疵画像を生成することにより、直感的に疵の有害無害を判定することができる。
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の表面疵検出方法によれば、撮影画像にボケを生じても、被検体の表面に生じた線状疵の有害無害の評価を簡易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態における、本発明方法を実施するための機器構成を示す図である。
【
図2】カメラから鋼片表面までの距離とカメラの首振り角との関係を示す図である。
【
図3】カメラ首振り角とこれに対応する撮影画像を示す図である。
【
図5】台形変形した撮影画像とこれを四角形に射影変換した撮影画像を示す図である。
【
図6】キャリブレーション関数f(θ)の一例を示すグラフである。
【
図7】キャリブレーション関数g(θ)の一例を示すグラフである。
【
図8】第2実施形態における、線状疵の疵画像を横断した時の輝度分布と補正後の輝度分布を示すグラフである。
【
図9】
図8の輝度分布に従って描いた疵画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
(第1実施形態)
図1には本発明の表面疵検出方法を実施するための機器構成を示す。
図1において、被検体としての一定幅で長さTの鋼片1の上方に、撮像手段としてのCCDカメラ(以下、単にカメラという)2が設置されている。カメラ2の両側には照明装置3A,3Bが設けられて下方の鋼片1の表面を照らしている。カメラ2は図略の機構によって、鋼片1の長手方向へ前後それぞれ一定角度範囲θmで首振り作動可能であり、これによって一台のカメラ2で鋼片1の必要範囲の表面を撮影することができる。なお、カメラ2には角度検出器として図略のロータリエンコーダが付設されている。また
図1に示すように、カメラ2の撮影画像とロータリエンコーダの角度情報はコンピュータ4へ送られて、以下に説明する処理が行われる。
【0015】
カメラ2の首振り角度θに応じて、カメラ2から鋼片表面までの距離dは
図2に一例を示すように指数的に変化する。このため、近くのものは大きく遠くのものは小さく見える現象は、首振り角度θが大きくなるにつれて甚だしくなり、
図3に示すように、首振り角度0°で、カメラ2の直下の距離d0にある鋼片1の撮影画像は、一定幅の鋼片1を一定長で切り取った四角形になるのに対して、カメラ2の首振り角度がθmで、鋼片1の表面までの距離がdmになると撮影画像中の鋼片1は、全体の幅が縮小しつつカメラ2に近い側の辺が相対的に長く遠い側の辺が相対的に短い台形に変形する。
【0016】
この変形に伴って鋼片1の表面に生じた線状疵の幅も変化するため、正確な疵幅を検出するには
図4に示すように、カメラ2の首振り角度情報から当該角度θにおける台形図形の4点の座標(x11,y11)~(x14,y14)を算出し、この4点をカメラ2が鋼片1の表面に正対している時の四角形図形の4点(x21,y21)~(x24,y24)に変換する公知の射影変換を行う。
【0017】
このようにして、台形に変形した撮影画像(
図5(1))を、カメラ2が鋼片1の表面に正対している時の四角形図形に射影変換(
図5(2))するが、射影変換して四角形画像に変形しても未だ疵画像Piの幅は実際の幅より大きくなり、またその輝度は低下している。この理由は、カメラ2の首振り角度θに応じてカメラ2と鋼片1表面の距離dが変化するため、カメラ2の焦点から外れて鋼片1表面の撮影画像全体にボケが生じるからである。
【0018】
そこで、本実施形態では、これを補正するために、予めキャリブレーション関数f(θ),g(θ)を準備しておく。キャリブレーション関数g(θ)の一例を
図6に示す。
図6に示すように、カメラ2の首振り角度θと撮影画像のボケによる疵幅Wの変化をプロットし、プロットした各点に対して適当な近似式を定めてキャリブレーション関数g(θ)とする。
図7にはキャリブレーション関数f(θ)の一例を示す。
図7に示すように、カメラ2の首振り角度θと撮影画像のボケによる疵輝度ΔLの変化をプロットし、プロットした各点に対して適当な近似式を定めてキャリブレーション関数f(θ)としている。
【0019】
四角形図形に射影変換後の撮影画像内の線状疵の疵画像Pi(
図5(2))は首振り角度θの時のものであるから、キャリブレーション関数f(θ),g(θ)のグラフ(ないし表)を参照して、疵幅Wと疵輝度ΔLを、カメラ正対時の首振り角度θ、すなわち0°の時のものに補正する。この補正された疵幅Wfと疵輝度ΔLfがそれぞれ所定の閾値を超えているか否かで当該疵の有害無害を判定する。
【0020】
(第2実施形態)
ところで、線状疵の疵画像Piを横断した時の輝度分布は正規分布で近似できる。例えば、
図8(1)の実測値と角度情報から、キャリブレーション関数で補正後の疵幅Wfと疵輝度ΔLfを下式(1)に代入してaとbを定数とした正規分布曲線を描き(
図8(2))、このような輝度の横断分布を有する線状疵の疵画像Piを描くと(
図9)直感的に疵の有害無害を判定することができる。
【0021】
【符号の説明】
【0022】
1…鋼片(被検体)、2…CCDカメラ(撮像手段)、3…照明装置、4…コンピュータ。