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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169912
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】フィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20231124BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20231124BHJP
   A62B 7/10 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
B01D39/16 E
B01D39/16 A
A61L9/16 F
A62B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081243
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉城 武宣
(72)【発明者】
【氏名】津田 研史
【テーマコード(参考)】
2E185
4C180
4D019
【Fターム(参考)】
2E185CB09
2E185CB11
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA17
4C180AA19
4C180DD09
4C180HH05
4C180JJ01
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC01
4D019BC06
4D019BC10
4D019BC20
4D019BD01
4D019CA02
4D019CB04
4D019DA03
(57)【要約】
【課題】捕集したゴミや菌、ウイルス等が再飛散しにくく、フィルターに接触した手や衣服にこれらが転移しにくい、携帯型空気清浄機用のフィルターを提供する。
【解決手段】携帯型空気清浄機の本体外表面に装着するためのフィルターであって、該フィルターは少なくとも2層の不織布が積層されたフィルターであり、該2層の不織布の一方がメルトブロー不織布であり、該不織布のもう一方がスパンボンド不織布あるいはスパンレース不織布であり、かつ該フィルターの形状が、プリーツ加工が施されていないか、あるいは、プリーツ加工が施されている場合、該フィルターを平面上に置いた際に、平面とプリーツで構成される空間の高さが5mm以内である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型空気清浄機の本体外表面に装着するためのフィルターであって、該フィルターは少なくとも2層の不織布が積層されたフィルターであり、該2層の不織布の一方がメルトブロー不織布であり、該不織布のもう一方がスパンボンド不織布あるいはスパンレース不織布であり、かつ該フィルターの形状が、プリーツ加工が施されていないか、あるいは、プリーツ加工が施されている場合、該フィルターを平面上に置いた際に、平面とプリーツで構成される空間の高さが5mm以内であるフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型空気清浄機の本体外表面に装着するためのフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症に代表されるウイルス感染症の流行を抑制する方法の一つとして、マスクを着用することが広く行われている。ウイルス感染者がマスクを着用している場合にはマスクがウイルスの拡散を抑制し、ウイルス未感染者がマスクを着用している場合、ウイルスの吸入を抑制する。
【0003】
ウイルス感染症を抑制する観点ではマスクは常時着用することが推奨される。しかし、飲食時等では、マスクを一時的に外さざるを得ない状況が存在する。実際に新型コロナウイルス感染症の流行では飲食店にて集団感染が発生する事例が多数見られた。そこで、マスクを着用することなく、飲食店において効果的にウイルス感染を抑制可能な手段が求められている。
【0004】
ウイルス除去効果を有する空気清浄機が知られている。例えば特開2003-79714号公報(特許文献1)には、室内壁面等に付着した臭い、菌、ウイルスを除去することができる空気清浄機が開示されている。しかし、飲食店の繁忙時は来客が密集している状況になるため、当該空気清浄機にて飲食店全体の空気を浄化したとしても、ウイルス感染者の呼気からウイルス未感染者にウイルスが直接飛散してしまうため、ウイルス感染を抑制する効果は限定的であった。
【0005】
特開2019-219145号公報(特許文献2)や特開2020-199149号公報(特許文献3)には、送風機構と、送風される空気を浄化する浄化手段(フィルターや電気集塵機等)と、ヒトに装着するための装着手段や、ヒトの首に掛けるための特定の形状を備える携帯型空気清浄機が開示されている。このような携帯型空気清浄機を飲食店の来客が装着して飲食すれば、ウイルスが存在する雰囲気中でウイルス未感染者が吸気する場合においても、空気清浄機により浄化した空気を吸気できるので、マスクを着用することなくウイルス感染を十分に抑制することが期待される。
【0006】
飲食店の全来客に対し、携帯型空気清浄機を事前に装着した状態で来店することを求めるのは非現実的である。よって飲食店側で携帯型空気清浄機を複数個用意し、来店時に来客に貸し出し、退店時に返却してもらうことが望ましい。飲食店の繁忙時には多くの来客が想定されるため、返却された携帯型空気清浄機をそのまま次の来客に貸し出せることが理想だが、来客にウイルス感染者が含まれていることを想定すると、実際には返却された携帯型空気清浄機は筐体を完全に消毒し、例えば前述した特許文献2や特許文献3では浄化手段やウイルス吸着材等を洗浄または交換することが必須である。
【0007】
携帯型空気清浄機の筐体の外面はアルコール等で拭くことで容易に消毒できる。しかし、浄化手段として電気集塵機やHEPAフィルター等のフィルターが携帯型空気清浄機に内蔵されている場合、該浄化手段は送風機構の中間に位置している。この構造では、ウイルスに汚染された外気が送風機構に侵入するため、携帯型空気清浄機の内部まで消毒する必要があり作業が煩雑になる。また、浄化手段が内蔵されているため、来客ごとに携帯型空気清浄機を分解して浄化手段を取り外して交換する必要があり、飲食店の繁忙時には対応が実質的に困難である。
【0008】
実用新案登録第3226219号公報(特許文献4)には、フィルターを本体の吸込口外部側に有する空気清浄機が開示され、フィルターの交換が容易であることが記載される。
【0009】
しかし、携帯型空気清浄機はヒトが携帯するが故に、ヒトの動きに伴って生じる振動や衝撃が携帯型空気清浄機に加わることによって、フィルターが吸着したゴミや菌、ウイルスなどが再飛散する恐れがあった。また、空気清浄機からフィルターを取り外して廃棄する際にもフィルターが吸着したゴミや菌、ウイルスなどが再飛散する恐れがあった。さらに、携帯型空気清浄機が本体外表面にフィルター設置部を有する場合、意図せずフィルターに直接接触することによって手や衣服にゴミや菌、ウイルス等が転移してしまう場合があり、フィルターが捕集したゴミや菌、ウイルス等が再飛散しにくく、接触した手や衣服に転移しにくいフィルターが望まれていた。
【0010】
特開2019-151962号公報(特許文献5)では、実用に耐えうる耐久性や剛性を備え、フィルター材用途として捕集性能および寿命に優れ、成型性も優れた不織布として、特定の繊維径を有するスパンボンド不織布とメルトブロー不織布とが積層され、通気量と目付が特定の関係を満たす積層不織布が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003-79714号公報
【特許文献2】特開2019-219145号公報
【特許文献3】特開2020-199149号公報
【特許文献4】実用新案登録第3226219号公報
【特許文献5】特開2019-151962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、捕集したゴミや菌、ウイルス等が再飛散しにくく、フィルターに接触した手や衣服にこれらが転移しにくい、携帯型空気清浄機用のフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題は、以下の発明により解決される。
携帯型空気清浄機の本体外表面に装着するためのフィルターであって、該フィルターは少なくとも2層の不織布が積層されたフィルターであり、該2層の不織布の一方がメルトブロー不織布であり、該不織布のもう一方がスパンボンド不織布あるいはスパンレース不織布であり、かつ該フィルターの形状が、プリーツ加工が施されていないか、あるいは、プリーツ加工が施されている場合、該フィルターを平面上に置いた際に、平面とプリーツで構成される空間の高さが5mm以内であるフィルター。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、捕集したゴミや菌、ウイルス等が再飛散しにくく、フィルターに接触した手や衣服にこれらが転移しにくい、携帯型空気清浄機用のフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のフィルターの一実施例を示す概略断面図
図2】本発明のフィルターを携帯型空気清浄機に装着した一例を示す概略断面図
図3】プリーツ加工を施したフィルターを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細について図を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明のフィルターの一実施例を示す概略断面図である。本発明のフィルター23は少なくとも2層の不織布が積層されたフィルターであり、該2層の不織布の一方がメルトブロー不織布231であり、該不織布のもう一方がスパンボンド不織布232あるいはスパンレース不織布232である。本発明においてメルトブロー不織布とは「メルトブロー法」により製造される不織布である。一般にメルトブロー法は、原料の樹脂を加熱溶融して紡糸ノズルから押出し、これに高温の空気流を当てて繊維状にしつつ飛散させ、コンベアや他の不織布などのコレクターの表面に吹き付けて集積して固化する製造方法である。
【0018】
メルトブロー不織布の繊維に使用される樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの高い電気抵抗率を有する材料が好ましい。中でも、低融点であり、メルトブロー不織布の製造が容易なポリプロピレンがより好ましい。また、メルトブロー不織布に使用される樹脂に、帯電性、耐候性、熱安定性、機械的特性、着色、表面特性、またはその他の特性を強化し改良するために、各種の添加剤を加えることができる。特に、エレクトレット加工を行うため、帯電性を強化する目的で、樹脂中にエレクトレット添加剤を含むことが好ましい。エレクトレット添加剤としては、ヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物の群から選ばれる少なくとも一種のエレクトレット添加剤が好ましい。
【0019】
本発明において、メルトブロー不織布の繊維に使用される樹脂中には、上記の化合物の他に、熱安定剤、耐候剤、重合禁止剤等の公知の添加剤を添加することもできる。
【0020】
本発明において、メルトブロー不織布はエレクトレット加工されていることが好ましい。エレクトレット加工方法としては、エレクトロエレクトレット、熱エレクトレット、ラジオエレクトレット、メカノエレクトレット、フォトエレクトレット、マグネットエレクトレットなどが挙げられ、特に制限はないが、工業的に不織布フィルターで用いられているエレクトロエレクトレットおよび熱エレクトレットが好ましい。
【0021】
本発明において、メルトブロー不織布に含まれる繊維の平均単繊維径は、0.1~8.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~6.0μmであり、さらに好ましくは、1.0~4.0μmである。平均単繊維径が8.0μmを超えると、メルトブロー不織布の繊維間の空隙が大きくなり、捕集効率が低下する場合がある。一方、平均単繊維径が0.1μm未満では、繊維間の空隙が狭くなり、圧力損失が高くなる場合がある。
【0022】
本発明において、メルトブロー不織布の目付けは10~50g/mが好ましく、より好ましくは15~40g/mである。目付けが50g/mを超えると圧力損失が高くなる場合があり、一方、目付けが10g/m未満であると、捕集効率が低下する場合がある。
【0023】
本発明のフィルターは上記メルトブロー不織布に、スパンボンド不織布あるいはスパンレース不織布が積層される。本発明においてスパンボンド不織布とは、溶融させた熱可塑性樹脂をノズルから紡糸して糸条を吐出させ、紡糸糸条をノズル口金直下の牽引ジェットに導引して高速で牽引細化した後、移動コンベア上に開繊しながら堆積させてウェブを得、その後ウェブを加熱、絡合等により一体化して巻き取り、長繊維不織布としたものである。スパンボンド不織布を構成する繊維の原料となる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレンやプロピレンと各種α-オレフィンの共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンやエチレンと各種α-オレフィンの共重合体等のポリエチレン系樹脂などが挙げられる。紡糸性や強度の特性から、特にポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。また、スパンボンド不織布には、繰返し水洗耐性をより強化し改良するために、撥水性シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの撥水剤を担持させることができる。なお、必要に応じて、スパンボンド不織布には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、脱臭、抗菌、防カビ、抗ウイルス、抗アレルゲン、芳香性薬剤等の各種機能を付与してもよい。
【0024】
本発明において、スパンボンド不織布の繊維に使用される樹脂の繊維の平均単繊維径は5~50μmであることが好ましく、より好ましくは8~30μmである。平均単繊維径が5μm未満では、繊維間の空隙が狭くなり、圧力損失が高くなる場合があり、50μmを超えると十分な再飛散防止効果が得られない場合がある。
【0025】
本発明において、スパンボンド不織布層の目付けは5~50g/mが好ましく、より好ましくは8~40g/mであり、さらに好ましくは10~20g/mである。目付けが50g/mを超えると圧力損失が高くなる場合があり、目付けが5g/mに満たないとゴミや菌、ウイルス等の再飛散防止効果が低下する場合がある。
【0026】
本発明においてスパンレース不織布とは、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、エアレイ法等の乾式法、あるいは抄紙技術を用いた湿式法にて形成された繊維ウェブ、さらには、これらの各種製法で得られた繊維ウェブを多層に積層した繊維ウェブに、ノズルから噴出される高圧または低圧の水流を当てることにより繊維ウェブ内の繊維同士を絡み合わせた不織布を指す。
【0027】
スパンレース不織布を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらポリマーの変性ポリマー等のホモポリマーおよびコポリマーのようなポリエステル系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはこれらポリマーの変性ポリマー等のホモポリマーおよびコポリマーのようなポリオレフィン系繊維、アクリル繊維、モダクリル繊維等のようなポリアクリロニトリル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のようなポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン繊維、ポリスチレン樹脂等の有機合成繊維;また、レーヨン等の再生セルロース繊維やコラーゲン、アルギン酸、キチン質等を溶液にしたものを紡糸した繊維等のような再生繊維;アセテート繊維等のような半合成繊維;麻、コットン、パルプ等のセルロース系繊維や羊毛、絹等の蛋白質系繊維等のような天然繊維が挙げられ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。さらに、上記繊維に金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維のような無機系繊維等の各種繊維を配合してもよい。
【0028】
本発明において、スパンレース不織布に用いる繊維の平均単繊維径は5~50μmであることが好ましく、より好ましくは8~30μmである。平均単繊維径が5μm未満では、繊維間の空隙が狭くなり、圧力損失が高くなる場合があり、50μmを超えると十分な再飛散防止効果が得られない場合がある。
【0029】
本発明において、スパンレース不織布層の目付けは5~50g/mが好ましく、より好ましくは8~40g/mであり、さらに好ましくは10~30g/mである。目付けが50g/mを超えると圧力損失が高くなる場合があり、目付けが5g/mに満たないとゴミや菌、ウイルス等の再飛散防止効果が低下する場合がある。
【0030】
本発明のフィルターは、メルトブロー不織布とスパンボンド不織布との間、あるいはメルトブロー不織布とスパンレース不織布との間や、更にはメルトブロー不織布とスパンボンド不織布あるいはスパンレース不織布が接する面の反対側の面に1層、もしくは複数層の不織布を積層することもできるが、フィルター全体の圧力損失が高くならない範囲で積層することが望ましい。また本発明のフィルターには携帯型空気清浄機に固定するための加工を施してもよい。加工法としては、磁石で固定するための磁性体をフィルター端部に入れる方法、部分的なテープ加工、面ファスナー加工等公知の方法が挙げられる。
【0031】
本発明のフィルターの形状は、プリーツ加工が施されていないか、あるいは、プリーツ加工が施されている場合、該フィルターを平面上に置いた際に、平面とプリーツで構成される空間の高さが5mm以内である。この高さを超えた場合には、ゴミや菌、ウイルス等の再飛散防止効果が劣る。
【0032】
次に本発明のフィルターの使用法について説明する。図2は本発明のフィルターを携帯型空気清浄機に装着した一例を示す概略断面図である。図2において、携帯型空気清浄機1は外気流入口10と内気流出口11を有し、外気流入口10と内気流出口11を接続する気体流路16内に送風手段12を有している。さらに外気流入口10の外気側である本体外表面に本発明のフィルター23を有している。図2の携帯型空気清浄機1は、例えば図示しない固定具によりヒトの首から掛けることが可能であり、そのようにして装着した場合、外気流入口10は装着者の前方より外気を取り入れ、内気流出口11から装着者の顎近傍下部から上方に向けて空気を送風することで、例えば飲食時や会話時における飛沫感染の予防に利用することができる。図2に示す通り、携帯型空気清浄機1はフィルター23の外側(送風手段12と反対側)にフィルターを覆う筐体(図示していない)を有さないことが好ましい。これにより、特に廃棄時にフィルター23の交換が容易になる。一方で、フィルター23を携帯型空気清浄機1の本体外表面に露出した状態で装着することによって、フィルターが捕集したゴミや菌、ウイルス等が再飛散する可能性が高くなることから、前述の通りのフィルターの構造を取ることが必要となる。
【0033】
図2に示したように、フィルター23を携帯型空気清浄機1に装着するにあたって、フィルター23が有するメルトブロー不織布231が携帯型空気清浄機1の外気流入口10に近い側に位置するように装着することが好ましい。これによりフィルター23が吸着したゴミや菌、ウイルス等の再飛散を効果的に防止することができる。フィルター23および外気流入口10の大きさは特に限定されず、フィルター23が外気流入口10の開口部を被覆できればよいが、25cm以上あると送風量が多くなるので好ましい。
【0034】
図2において携帯型空気清浄機1が好ましく有する電源14としては特に限定されず、送風手段12を連続的に駆動可能な電力を供給できる任意の電源を用いることができる。具体的にはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、アルカリ乾電池、マンガン乾電池等が例示できる。電源14は一次電池であってもよく、二次電池であってもよい。なお、図2では図示していないが、電源14から送風手段12には電気配線が接続されており、電力が供給され、送風手段12が駆動される。
【0035】
さらに、図2において図示していないが、本発明の携帯型空気清浄機1は送風手段12のスイッチ、送風手段12の風量調節ボタン、携帯型空気清浄機1の内部にある気体流路16や送風手段12を掃除するための構造(例えば、外気流入口10や内気流出口11を構成する部品が脱着可能)、電源14を交換するための構造(例えば、電源14の保護カバーが脱着可能)、電源14を充電するための外部電源接続部を有していてもよい。また、携帯型空気清浄機1の外観形状は特に限定されず、立方体、球体等、任意の形状とすることができる。
【0036】
本発明のフィルターを廃棄する方法としては、本発明者らが特願2022-41788号として提案した、粘着テープをフィルターの装着時における外気側表面に貼付けて廃棄する方法が最も好ましい。特にこの方法を用いる際に、フィルターの形状が、プリーツ加工が施されていないか、あるいは、プリーツ加工が施されている場合、該フィルターを平面上に置いた際に、平面とプリーツで構成される空間の高さが5mm以内であることの利点が顕在化する。
【実施例0037】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<不織布>
実施例で使用した不織布は下記の通りである。
不織布A:エレクトロエレクトレット加工したメルトブロー不織布として、平均単繊維径2.4μm、目付け25g/m、圧力損失20Paであるポリプロピレン製メルトブロー不織布を準備した。
不織布B:エレクトレット加工していないメルトブロー不織布として、平均単繊維径2.4μm、目付け25g/m、圧力損失20Paであるポリプロピレン製メルトブロー不織布を準備した。
不織布C:スパンボンド不織布として、平均単繊維径14.8μm、目付け19g/m、圧力損失1.5Paであるポリプロピレン製スパンボンド不織布を用意した。
不織布D:スパンボンド不織布として、平均単繊維径14.8μm、目付け19g/m、圧力損失1.5Paであるポリエステル製スパンボンド不織布を用意した。
不織布E:スパンレース不織布として、平均単繊維径12.4μm、目付け25g/m、圧力損失1.8Paであるポリプロピレン製スパンレース不織布を用意した。
【0039】
なお、上記した圧力損失は下記の通り測定した。
[圧力損失の評価方法]
各不織布について、通風サイズ300×300mmとなるようにカットした。このカットした不織布を一定の風速で空気を導入できる試験風洞に、不織布の周囲からのリークが無いように、かつ、たるみが生じないように設置した。風速5.3cm/sの条件で不織布の上流側と下流側の差圧をマノメータで測定し圧力損失を測定した。
【0040】
<フィルターの評価>
不織布A~Eをフィルター1~5とし、また不織布A~Eを表1に記載するような構成となるよう、ウレタン系ホットメルトを用いたホットメルト法で接着することでフィルター6~10を準備した。
【0041】
得られたフィルター1~10について捕集効率、再飛散防止効果を評価した。捕集効率、再飛散防止効果については、下記の通り評価した。結果を表1に示す。
【0042】
[捕集効率の測定方法]
各フィルターについて、通風サイズ300×300mmとなるようにカットした。このカットしたフィルターを一定の風速で空気を導入できる試験風洞に、フィルターの周囲からのリークが無いように、かつ、たるみが生じないように設置した。この際、フィルター6~10については、上流側に表1に記載する不織布(II)側が面するように設置した。風速5.3cm/sの条件でフィルターの上流側と下流側の0.3~0.5μm粒径の大気塵粒子数をパーティクルカウンターにて測定し、上流側と下流側の測定結果から、捕集効率(%)を算出した。
【0043】
[再飛散防止効果の評価方法]
評価するフィルターを80mm×80mmにカットし、ダストカウンターと共にクリーンベンチ内に持ち込んだ。クリーンベンチ内で何もせずダストカウンターによりクリーンベンチ内のダストの数を200秒間カウントしたところ、0.3~0.5μm粒径のダストはカウントされなかった。次に、ダストカウンターの空気取り入れ口から5cmの位置にフィルターを手で保持し、15秒間に1回該フィルターを手で揉む動作を13回繰り返した。この時、フィルターを手で揉む動作の最初からダストカウンターを稼働させ、200秒間で発生する0.3~0.5μm粒径のダストの数をカウントした(以上記載した200秒間の試験を「揉み試験」と言う)。次に同じフィルターを80mm×80mmにカットし、線香の直上10cmの距離に表1に記載する不織布(II)が線香側を向くよう固定し、線香に火をつけ、10分間線香の煙で燻した。線香の煙で燻したフィルターを、不織布(II)がダストカウンターに向くよう保持しながら揉み試験を行い、その時に発生するダストの数をカウントした。線香の煙で燻したフィルターと何もしていないフィルターの揉み試験のカウント数の差が2000未満の場合を〇、2000以上5000未満の場合を△、5000以上の場合を×として評価した。
【0044】
【表1】
【0045】
[廃棄時の再飛散防止効果の評価]
次にフィルター6について、80mm幅で表2に示す長さに切り取り、図3に示すように、山折り線bで山折りに、谷折り線cで谷折りにして、間隔aおよび周期d、ならびに該フィルターを平面上に置いた際に、平面とプリーツで構成される空間の高さが、それぞれ表2に示す長さと高さになるようにプリーツ加工したフィルター11~14を得た。次に、前述した再飛散防止効果の評価方法と同様にして、線香の煙でフィルター6とプリーツ加工したフィルター11~14を燻した。その後線香の煙で燻した面の全面にDIC(株)製#8602テープを貼付け、線香の煙で燻していない面はそのままで、前述した再飛散防止効果の評価と同様に揉み試験を行った。この時のダストのカウント数の値が、線香の煙で燻していないフィルター6の片面にDIC(株)製#8602テープを貼付けて行った揉み試験でのカウント数の値から引いた差が500未満の場合を〇、500以上2000未満の場合を△、2000以上の場合を×として評価した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表1、表2の結果から本発明の効果が良く判る。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は飲食を伴う際に使用する携帯型空気清浄機の本体外表面に装着するフィルターとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 携帯型空気清浄機
10 外気流入口
11 内気流出口
12 送風手段
14 電源
16 気体流路
23 フィルター
231 メルトブロー不織布
232 スパンボンド不織布あるいはスパンレース不織布
a 間隔
b 山折り線
c 谷折り線
d 周期
図1
図2
図3