(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169913
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】充填ノズル
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
F17C5/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081246
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 勉
(72)【発明者】
【氏名】山口 敏弘
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BA04
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA24
3E172EA35
3E172EA45
3E172EA46
(57)【要約】
【課題】校正に必要な流量計その他の装置を小型化しつつ、校正に際しても水素充填プロトコルで求められている充填特性を獲得する。
【解決手段】本発明の充填ノズル(20)は、流量計(30)を内蔵し、流量計(30)の吸入側における流量計吸入側レセプタクル(32)と吐出側における流量計吐出側ノズル(34)を設け、FCV1のレセプタクル(10)の高さ方向位置と突出方向に対応して調整する調整機構(51、52)を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量計を内蔵し、
流量計の吸入側における流量計吸入側レセプタクルと吐出側における流量計吐出側ノズルを設け、前記流量計吸入側レセプタクルは水素充填装置側のディスペンサノズルと着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、
前記流量計吐出側ノズルは燃料電池自動車のレセプタクルに着脱自在であり、
燃料電池自動車のレセプタクルの高さ方向位置と突出方向に対応して調整する調整機構を有していることを特徴とする充填ノズル。
【請求項2】
前記調整機構は、車両側のノズルの高さ方向位置を調整する機能を有する高さ調整機構であり、及び/又は、車両側のノズルの伸長方向を調整する機能を有する角度調整機構である請求項1の充填ノズル。
【請求項3】
充填ノズルの吸入側流路に手動弁が配置されている請求項1の充填ノズル。
【請求項4】
充填ノズルには、光信号伝達用の光ファイバーが設けられており、燃料電池自動車のレセプタクル側に受光機構を設け、水素充填装置側のレセプタクルに発光機構を設けている請求項1~3の何れか1項の充填ノズル。
【請求項5】
支持装置を有し、支持装置の基部はロッドを放射状に複数本組み合わせて構成されている請求項1~4の何れか1項の充填ノズル。
【請求項6】
校正終了時に、脱圧作業は行わず、水素充填装置の充填ホースと充填ノズルに内蔵された流量計の自動脱圧を行い、
校正前に充填ノズルを燃料電池自動車のレセプタクルと接合した後に、充填ノズルの吸入側流路に設けられた手動弁を開放する工程と、
水素充填装置内における脱圧後に、前記手動弁を閉鎖する工程を有することを特徴とする校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池自動車(FCV)等に水素を充填する施設である水素ステーションで用いられる充填ノズルに関し、より詳細には、充填するべき水素の流量(質量流量)を正確に計測する機能を有する充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
校正のため充填するべき水素の流量を正確に計測し、水素ステーションの水素充填装置内の流量計に対して不正行為が行われないことを保証するため、従来技術においては、所定規則に従って、充填装置の校正を行っている。
係る校正に際して、流量計(マスターメーター)を内蔵した校正装置を用いて、車両に水素充填をしつつ、校正を行う場合が存在する(例えば特許文献1参照)。そして、その様な校正装置で用いられる流量計として、小型のコリオリ流量計が存在する。
校正に際しては、安全のため圧力と温度に基づく水素の充填特性を定める水素充填プロトコルに従って水素充填が行われ、その水素充填の際に、水素充填装置における流量計の計測値と、校正装置に内蔵された流量計の計測値とを比較し、JIS計量ガイドライン等の関連規定への適合性を確認している。
【0003】
校正装置を用いた従来の校正(特許文献1参照)について、
図9を参照して説明する。
図9において、水素充填装置2には充填ホース4が接続され、充填ホース4の先端に充填ノズル5が設けられている。
校正装置3には、基準流量計7(マスターメーター)が介装され、流量計吸入側レセプタクル6(逆止弁内蔵)、流量計吐出側ホース8、吐出側ホース8先端の流量計吐出側ノズル9を備えている。
流量計吸入側レセプタクル6は、充填ホース4先端の充填ノズル5と接続/取り外し可能に構成されており、流量計吐出側ノズル9は、水素を充填するべき機器である燃料電池自動車1(FCV)のレセプタクル10と接続/取り外し可能に構成されている。
図9に示す従来技術では、非通信充填で校正が行われる。
【0004】
校正装置3を用いて校正を行う場合は、
図9で示す様に、水素充填装置2の充填ノズル5を校正装置3の流量計吸入側レセプタクル6に接続し、流量計吐出側ノズル9をFCV1のレセプタクル10に接続する。
校正の際に、水素は、水素充填装置2から充填ホース4、充填ノズル5、校正装置3の流量計吸入側レセプタクル6、基準流量計7、流量計吐出側ホース8、流量計吐出側ノズル9、レセプタクル10を介して、FCV1の図示しない車載タンクに充填される。
基準流量計7は充填される水素の流量を正確に計測し、それにより水素充填装置2内で充填される水素の流量を計測する流量計(図示せず)の計測精度を評価して、校正を行うことが出来る。
一方、通常の水素充填の際には、水素充填装置2の充填ノズル5を、直接、燃料電池車1側のレセプタクル10に接続する。水素は、水素充填装置2から充填ホース4、充填ノズル5、レセプタクル10を介して、FCV1の車載タンクに充填される。
校正終了後は、水素充填装置2の充填ホース4、充填ノズル5内に残存する水素ガスは、水素充填装置2の脱圧機構(遮断弁12、脱圧弁13、脱圧系統14)を介して、自動的に排出される。
【0005】
図9で示す校正の際に、校正装置3内の基準流量計7(マスターメーター)としては、例えば小型のコリオリ流量計が用いられている。
しかし、
図9に示す従来の校正装置3は、上述した様に吐出側ホース8(流量計吐出側ホース)を介してFCV1の車載タンクに水素ガスを充填するので、通常充填時の(非校正時の)水素充填に比較して、校正装置3の流量計吐出側ホース8の分だけ、水素充填系統における熱容量及び圧損が増大している。
そして、水素充填系統における熱容量、圧損が大きいと、定められた充填プロトコルに従った充填特性が得られなくなり、水素充填プロトコルに従った水素充填が困難になる。
また、校正装置3の流量計吐出側ホース8により、通常充填の場合に比較して、校正時には水素充填系統における熱容量及び圧力損失が大きくなるため、校正時において、プロトコル通りの充填特性が得られない恐れがある。
さらに、流量計吐出側ホース8には寿命があり、通常は1000~2000回という水素充填の回数(校正の回数)の制限が存在する。寿命が尽きたホース8は交換する必要があり、そのために労力、コストが必要になるため、ホースの使用回数の制限を無くしたいという要請が存在した。
それに加えて、
図9に示す従来の校正装置3では、校正終了後に校正装置3内に存在する高圧の水素ガスを脱圧する構造(脱圧弁15を備える脱圧系統11)を用いて、作業員が脱圧作業(手作業)を行う必要があり、校正における作業場の負担が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、校正に必要な流量計その他の装置を小型化しつつ、校正に際しても水素充填プロトコルで求められている充填特性を獲得することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は種々研究の結果、充填車両側のレセプタクルに接続される充填ノズルにおいて校正の際に充填される水素流量(質量流量)を計測すれば、上述した問題を解消できることを見出した。
係る知見に基づいて創作された本発明の水素ガス供給用の充填ノズル(20)は、
流量計(質量流量計30)を内蔵し、
流量計(30)の吸入側における流量計吸入側レセプタクル(32)と吐出側における流量計吐出側ノズル(34)を設け、前記流量計吸入側レセプタクル(32)は水素充填装置(2)側の水素充填ノズル(5:ディスペンサノズル)と着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、
前記流量計吐出側ノズル(34)は燃料電池自動車(1:FCV)のレセプタクル(10)に着脱自在であり、
燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)の高さ方向位置と突出方向に対応して調整する調整機構(50)を有していることを特徴としている。
本発明の充填ノズル(20)は水素充填のみならず、給油装置の給油用ノズルとして適用することも可能である。
【0009】
本発明において、前記調整機構(50)は、車両側のノズル(34:流量計吐出側ノズル)の高さ方向位置を調整する機能を有する高さ調整機構(51)であり、及び/又は、車両側のノズル(34:流量計吐出側ノズル)の伸長方向を調整する機能を有する角度調整機構(52)であるのが好ましい。
また本発明において、充填ノズル(20)の吸入側通路(水素流路HFの水素充填装置2側の領域)に手動弁(54:手動タイプの開閉弁)が配置されているのが好ましい。
【0010】
さらに本発明において、充填ノズル(20)には、光信号伝達用の光ファイバー(60)が設けられており、充填ノズル(20)における燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)側(の流量計吐出側ノズル34)に受光機構(61)を設け、水素充填装置(2)側の(流量計吸入側)レセプタクル(32)に発光機構(62)を設けているのが好ましい。
それに加えて本発明において、充填ノズル(20)は(充填ノズル20を載置する)支持装置(40)を設けており、支持装置(40)の基部(41)は(例えば断面矩形の)ロッド(41A)を放射状に複数本(例えば3本)組み合わせて(配置することにより)構成されているのが好ましい。
【0011】
上述した充填ノズル(充填ノズル20)を用いた校正方法は、
校正終了時に、脱圧作業は行わず、水素充填装置(2)内の充填ホース(4)と充填ノズル(20)に内蔵された流量計(30の)自動脱圧を行い、
校正前に充填ノズル(20)を燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)と接合した後に、充填ノズル(20)の吸入側流路(水素流路HFの水素充填装置2側の領域)に設けられた手動弁(54:手動タイプの開閉弁)を開放する工程と、
水素充填装置(2)内における脱圧後に、前記手動弁(54)を閉鎖する工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上述の構成を具備する本発明の充填ノズル(20)は、流量計(30)を有し、且つ、水素充填装置(2)のディスペンサノズル(5)と流量計(30)の流量計吸入側レセプタクル(32)とを接続し、流量計(30)の流量計吐出側ノズル(34)を燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)に接続することにより、燃料電池自動車(1)内に水素ガスを充填することが出来る。
そして校正の際には、流量計(30)で水素ガスの質量流量を計測することにより、従来技術に係る校正装置(3:
図9参照)を用いることなく、燃料電池乗車(1)に水素ガスを充填しつつ、校正を行うことが出来る。
【0013】
また本発明の水素充填ノズル(20)では、校正用の流量計(30)の吐出側にホースを設ける必要が無いため、従来の校正装置(3:
図9参照)におけるマスターメーター(7)と校正装置(3)のノズル(9)とを結ぶホース(8)が不要である。
その結果、従来の校正と比較して、流量計吐出側水素充填ホース(8:
図9)の分だけ、水素充填系統における熱容量及び圧損が減少し、その結果、定められた充填プロトコルにおける充填特性を容易に得ることが出来て、水素充填プロトコルに従った水素充填が実行できる。
そして、従来の校正装置(3)における流量計吐出側水素充填ホース(8)が不要であることから、当該ホースの使用回数の制限を考慮する必要がなくなる。
【0014】
さらに、本発明の水素充填ノズル(20)で校正を行えば、校正終了後、水素充填ノズル(20)内に残存する水素ガスは微量であり、また、当該残存する水素ガスは、水素充填装置(2)側の脱圧機構(脱圧弁13、脱圧系統14)を介して、自動的に排出される。
そのため、従来の校正装置(3)の様に、校正終了後に、校正装置(3)内に存在する高圧の水素ガスを脱圧する構造(脱圧弁15、脱圧系統11:
図9参照)を設ける必要がなく、作業員による脱圧作業が不要である。従って、校正における作業が簡素化され、校正に必要な機器の製造コストの低下にも寄与する。
【0015】
本発明の充填ノズル(20)において、支持装置(40)が設けられていれば、支持装置(40)により、流量計(30)を有する充填ノズル(20)の大重量を支持することが出来る。その結果、流量計(30)を有する充填ノズル(20)を燃料電池車(1)のレセプタクル(10)に接続しても、当該レセプタクル(10)が充填ノズル(20)の重量で破損することが防止される。
【0016】
それに加えて、本発明の充填ノズル(20)には調整機構(50)が設けられているので、燃料電池自動車(1)毎に異なるレセプタクル(10)の高さ方向位置について充填ノズル(20)を整合することが出来て、燃料電池自動車(1)毎に異なるレセプタクル(10)の突出方向にも充填ノズル(20)を整合することが出来る。そのため、本発明の充填ノズル(20)は、多種多様な燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)と接合して、充填、校正を行うことが出来る。
ここで、本発明における調整機構(50)が高さ調整機構(51)であれば、高さ調整機構(51)は伸縮して充填ノズル(20)の高さ位置を変動し、任意の高さ方向位置で固定できる。そのため、充填ノズル(20)の車両側のノズル(34:流量計吐出側ノズル)を燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)の高さ方向位置に整合させ、且つ、充填ノズル(20)の重量がレセプタクル(10)に作用することを防止出来る。
また、調整機構(50)が角度調整機構(52)であれば、充填ノズル(20)の車両側のノズル(34:流量計吐出側ノズル)の伸長方向を適宜調整して、レセプタクル(10)の突出方向と整合させることが出来る。そのため、充填ノズル(20)をレセプタクル(10)に接合した際にレセプタクル(10)に余計な外力が付加せず、破損が防止される。
【0017】
さらに本発明において、充填ノズル(20)の吸入側流路(水素流路HFにおける水素充填装置2側の領域)に手動弁(54:手動タイプの開閉弁)が配置されていれば、当該手動弁(54)を閉鎖することにより、水素充填装置(2)側から充填ノズル(20)内に水素は流入しない。
【0018】
また本発明において、充填ノズル20には、光信号伝達用の光ファイバー(60)が設けられており、充填ノズル(20)の燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)側(の流量計吐出側ノズル34)に受光機構(61)を設け、充填ノズル(20)の水素充填装置(2)側のレセプタクル(32)に発光機構(62)を設ければ、充填ノズル(20)の燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)側では、前記受光機構(61)が燃料電池自動車(1)側からの光信号を受信することが出来る。また、充填ノズル(20)の水素充填装置(2)側では、レセプタクル(32)の発光機構(62)を介して、水素充填装置(2)側に燃料電池自動車(1)における水素タンク内の圧力及び温度の情報に係る光信号を伝達することが出来る。
その結果、本発明の充填ノズル(20)を用いれば、燃料電池自動車(1)内の水素タンク内の圧力及び温度の情報を水素充填装置(2)側に伝達しつつ校正或いは充填を行う通信充填をすることが出来る。そのため、通信充填を行うことが出来ない充填ノズルを用いる場合に比較して、より高圧となるまで水素を充填することが出来る。また、光信号の授受により燃料電池自動車(1)内のタンク内圧力及び温度の情報を水素充填装置(2)側に伝達するので、電気信号を用いた場合の様な火花の発生が防止され、水素充填設備における安全性が向上する。
【0019】
本発明の充填ノズル(20)において、支持装置(40)の基部(41)を平板状に構成せずに、断面矩形のロッド(41A)を放射状に(例えば3本)組み合わせて構成する(配置する)ことにより、燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)の位置に拘わらず、当該基部(41)が燃料電池自動車(1)のタイヤと干渉することなく、設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る水素充填ノズルが燃料電池自動車のレセプタクルに接続された状態を示す説明図である。
【
図2】
図1の水素充填ノズルの燃料電池自動車側における受光機構の概要を示す説明図である。
【
図3】
図1の燃料電池自動車のレセプタクルにおける発光機構の概要を示す説明図である。
【
図4】
図1の水素充填ノズルの流量計吸入側レセプタクルにおける発光機構の概要を示す説明図である。
【
図5】水素充填装置の充填ノズルにおける受光機構の概要を示す説明図である。
【
図6】
図1の水素充填ノズルの支持装置の基部の説明平面図である。
【
図7】
図1で示す水素充填ノズルを用いた校正作業の説明図である。
【
図8】
図1~
図7で示す水素充填ノズルを用いた校正作業の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1~
図8において、
図9で示すのと同様の部材は
図9と同様な符号を付している。
図1において、図示の実施形態に係る水素充填ノズルは全体を符号20で示している。
充填ノズル20は流量計30(質量流量計:例えばコリオリ流量計)を内蔵しており、流量計30の吸入側における流量計吸入側レセプタクル32と、吐出側における流量計吐出側ノズル34を有している。そして充填ノズル20内には水素流路HFが設けられており、水素流路HFは流量計吸入側レセプタクル32と流量計吐出側ノズル34を連通しており、流量計30を介装している。
流量計吸入側レセプタクル32は、水素充填装置2(
図7)の充填ホース4先端の充填ノズル5と着脱出来る様に構成されている。本明細書において、水素充填装置2側の充填ノズル5を「ディスペンサノズル5」と記載する場合がある。流量計吸入側レセプタクル32は、
図9の校正装置3におけるレセプタクル6とは異なり、逆止弁は内蔵していない。
流量計吐出側ノズル34は、
図9のノズル9と同様に構成されており、燃料電池自動車1(FCV)のレセプタクル10と着脱自在に構成されている。
充填ノズル20は支持装置40を有し、支持装置40は後述の調整機構50(高さ調整機構51、角度調整機構52)を有している。
【0022】
図7には、図示の実施形態に係る充填ノズル20を用いた校正作業が示されている。
図7において、水素充填装置2は、水素充填装置2の充填ホース4、充填ノズル5(ディスペンサノズル5)内に残存する水素ガスを水素充填後に脱圧するための脱圧機構(遮断弁12、脱圧弁13、脱圧系統14)を有している。
図1及び
図7において、充填ノズル20の流量計吸入側レセプタクル32に水素充填装置2のディスペンサノズル5を接続し、充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10に接続して、FCV1(燃料電池自動車)に対して水素充填を行えば、水素充填装置2、充填ホース4、ディスペンサノズル5、流量計吸入側レセプタクル32を介して水素ガスが流量計30を流れ、流量計30により質量流量が計測される。そして、水素充填装置2における流量計の計測結果と比較することにより、校正が行われる。
明確には図示されていないが、例えばカメラ(画像撮影機器)を設け、水素充填装置2において表示された各種数値を撮影して、画像として記録することが可能である。係る画像は証拠写真として活用することが出来る。
【0023】
FCV1の車種毎に、レセプタクルの位置(高さ方向位置も含む)は異なる。流量計30を内蔵する充填ノズル20の重量は大きいので、流量計吐出側ノズル34の高さ方向位置とFCV1のレセプタクル10の高さ方向位置が異なる場合に、高さ方向が異なる両者を接続して校正或いは充填すると、レセプタクル10が破損する可能性がある。
図1において、図示の実施形態に係る充填ノズル20には、流量計吐出側ノズル34の高さ方向位置を調整する高さ調整機構51が設けられており、流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10の高さ方向位置に対応して移動或いは調整することが出来る。
高さ調整機構51は、支持装置40の柱部42において、調整ハンドル部51Aにより高さ方向に伸縮可能に構成し、調整ハンドル51Aを締めることにより任意の高さ方向位置に固定することが出来る。
図1において、伸縮する高さ方向を矢印A1で示している。
高さ調整機構51によって、流量計吐出側ノズル34の高さ方向位置をFCV1のレセプタクル10の高さ方向位置に整合させれば、流量計吐出側ノズル34とレセプタクル10を接続した際に、ノズル20の重量は支持装置40で支持されレセプタクル10には作用しないので、充填ノズル20の重量がレセプタクル10に作用して破損させてしまうことが防止される。
【0024】
レセプタクル10が突出している方向もFCV1の車種毎に異なり、流量計吐出側ノズル34の伸長方向とレセプタクル10の突出している方向が異なった状態で充填ノズル20をレセプタクル10に接合すると、やはりレセプタクル10が破損してしまう。
図示の実施形態に係る充填ノズル20は角度調整機構52を設けており、角度調整機構52は流量計吐出側ノズル34の伸長方向を調整する機能を有しているので、流量計吐出側ノズル34の伸長方向をレセプタクル10の突出している方向と整合する様に調整することが出来る。
【0025】
角度調整機構52は、折曲部52Aを中心(支点)として充填ノズル20が自在な角度で折れ曲る(回動可能)様に構成されている。そのため、レセプタクル10の突出方向が水平方向であっても或いは水平方向に対して傾斜していても、流量計吐出側ノズル34の伸長方向と整合させることが出来る。なお、折曲部52Aには固定ハンドル52Bが設けられ、積極部52Aにおける折れ曲がり角度を任意の角度に固定することが出来る。
角度調整機構52により流量計吐出側ノズル34の伸長方向をFCV1のレセプタクル10の突出している方向と整合させることにより、余分な外力が作用しない態様で流量計吐出側ノズル34とレセプタクル10が接続されるので、充填ノズル20の重量がレセプタクル10に作用して、破損させてしまうことを防止出来る。
【0026】
図1において、流量計吐出側ノズル34とFCV1のレセプタクル10との高さ方向位置の調整に関して、FCV1に人が乗り降りすると、車高が変動する。それに対処するため、図示の実施形態の充填ノズル20は、支持装置40の柱部42においてガススプリング53を設けている。ガススプリング53は従来公知のものを適用することが出来る。
ガススプリング53の調整機能により、人の乗り降り等に伴うFCV1の動き(車高の変動)に充填ノズル20側が追従することが出来るので、流量計吐出側ノズル34とFCV1のレセプタクル10の高さ方向位置が不整合状態とはならず、ノズル20の重量の様な外力は付加せず、レセプタクル10の破損が防止される。
【0027】
図1において、流量計吸入側レセプタクル32と流量計吐出側ノズル34を連通する水素流路HFの流量計吸入側レセプタクル32側の領域(流入側の領域)には、手動弁54(手動タイプの開閉弁)が介装されている。校正或いは充填が終了し、水素充填装置2側の自動脱圧機能による脱圧が終了した後、手動弁54を閉鎖すれば、水素充填装置2側から充填ノズル20内に水素が流入することはない。
【0028】
図1で示す充填ノズル20によりFCV1に水素ガスを充填し、或いは充填しつつ校正するに際しては(
図7参照)、FCV1内の水素タンク内の圧力及び温度の情報を水素充填装置2側に伝達する通信充填が行われる。そのため、図示の実施形態に係る充填ノズル20を用いた場合には、通信充填を行うことが出来ない充填ノズルを用いる場合に比較して、より高圧となるまで水素充填を行うことが出来る。
図示の実施形態では、電気信号を用いて火花が発生することを防止するため、光通信により信号の授受を行う。
図1において、充填ノズル20には光信号伝達用の光ファイバー60が設けられ、FCV1のレセプタクル10側の流量計吐出側ノズル34には受光機構61(
図2参照)が設けられており、水素充填装置2側の流量計吸入側レセプタクル32に発光機構62(
図4参照)が設けられている。
【0029】
充填ノズル20(
図1参照)におけるFCV1のレセプタクル10側の流量計吐出側ノズル34に設けた受光機構61には、
図2で示す様に、円周方向等間隔に複数箇所(例えば3箇所)の受光素子61Aが配置されている。
FCV1のレセプタクル10側の発光機構63には、
図3で示す様に、例えば円周方向の連続した領域(例えば円周方向の1/4に亘る領域)に複数(例えば5個)の発光素子63Aが配置されている。
【0030】
そのため、充填ノズル20をFCV1のレセプタクル10に接合すれば、レセプタクル10側の発光機構63(
図3)の発光素子63Aから送信される光信号は、流量計吐出側ノズル34の受光機構61の複数の受光素子61Aの何れかによって確実に受信(受光)される。ここで、発光機構63からの光信号の拡散により、発光機構63と受光機構61の位置が完全に整合していなくても、光信号は受光素子61Aの何れかにより受光されるので、発光素子63Aと受光素子61Aとの厳格な位置整合は不要である。そのため、図示の実施形態においては、充填ノズル20とFCV1のレセプタクル10が接合すると、厳格な位置調整をしなくても光通信が確立される。
ここで、
図1、
図2で示す様に、充填ノズル20におけるFCV1のレセプタクル10側の受光機構61には、受光素子61Aの周方向位置を調整するための調整機構である調整ネジ65が設けられている。受光素子61Aが配置された受光機構本体61Bを回動して(矢印A2)発光素子63Aとの相対位置を調整し、適正な位置で調整ネジ65を締め込んで固定する。
図示はされていないが、受光素子61Aを周方向の一箇所にのみ設けることも可能である。
【0031】
図4で示す様に、充填ノズル20の流量計吸入側レセプタクル32に設けた発光機構62には、円周方向等間隔に複数箇所(例えば3箇所)の発光素子62Aが配置されている。一方、ディスペンサノズル5における受光機構64には、
図5に示す様に、複数(例えば3個)の受光素子64Aが配置されている。
上述した様に、発光素子62Aから照射される光信号は拡散するので、ディスペンサノズル5を流量計吸入側レセプタクル32と接続すれば、流量計吸入側レセプタクル32の発光機構62の発光素子62Aから送信される光信号は拡散し、ディスペンサノズル5における受光機構64の受光素子64Aに到達して受信(受光)される可能性が高い。そのため、発光機構62と受光機構64の位置が完全整合していなくても、光通信が確立される。
図1、
図4に示す様に、流量計吸入側レセプタクル32の発光機構62にも、発光素子62Aの周方向位置を調整するための調整機構である調整ネジ66が設けられている。発光素子62Aから照射される光信号が受光素子64Aに到達して受信(受光)される様に、発光素子62Aが配置された発光機構本体62Bを回動(矢印A3)して、調整ネジ66により締め込んで固定すれば、光信号は確立する。
【0032】
図1~
図5を参照して説明した様に、充填ノズル20の流量計吸入側レセプタクル32と水素充填装置2側のディスペンサノズル5を接続し、充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10に接続することにより、FCV1内の水素タンクからFCV1のレセプタクル10側の発光機構63の発光素子63A、流量計吐出側ノズル34の受光機構61の受光素子61A、光信号伝達用の光ファイバー60、流量計吸入側レセプタクル32の発光機構62の発光素子62A、水素充填装置2側のディスペンサノズル5側の受光機構64の受光素子64Aを経由して、水素充填装置2(
図7参照)に至る光伝達経路が成立し、通信充填が確立する。そして、FCV1内の水素タンクにおける圧力、温度情報が水素充填装置2に送信される。
明確には図示されていないが、通信充填が確立すると、水素充填装置2の表示部(図示せず)において、通信充填が確立した旨を表示するマークが点灯する。
【0033】
上述した様に、流量計30を有する充填ノズル20の大重量を支持装置40により支持しており、FCV1のレセプタクル10と充填ノズル20との接続時に、充填ノズル20の重量でレセプタクル10が破損することを防止している。
図6に示す様に、支持装置40の基部41は、平板状の台座ではなく、断面矩形のロッド41Aを放射状に3本組み合わせて構成されており、基部41は柱部42に取り付けられている。
図6において、レセプタクル10以外のFCV1側の構成の図示は省略している。
支持装置40の柱部42の高さ調整機構51は、調整ハンドル51A(
図1)を含んでいる。また明確には図示されてないが、支持装置40の柱部42は基部41に対して回動自在に構成されている。
【0034】
FCV1の車種毎にレセプタクル10の位置は異なっている。充填ノズル20の支持装置40の基部が平板状部材で構成した場合には、レセプタクル10の位置によっては、平板状部材で構成された当該基部がFCVのタイヤTRと干渉する恐れがある。
それに対して図示の実施形態の様に、基部41を3本のロッド41Aを放射状に組み合わせて構成されているので、
図6で示す様に、レセプタクル10の平面上の位置がFCV1のタイヤTRと重複するような場合でも、充填ノズル20の支持装置40の基部41を構成する3本のロッド41Aの位置を適宜調整してタイヤTRと干渉しない様に位置せしめることが出来る。
基部41を構成する3本のロッド41Aの位置を適宜調整してタイヤTRと干渉しない位置に調整した後に、直ちに流量計吐出側ノズル34をレセプタクル10と接合できるようにするため、充填ノズル20の支持装置40の柱部42は基部41に対して回動自在に構成されている。
【0035】
図1~
図7を参照して説明した図示の実施形態に係る校正作業を、
図9で示す従来の校正と比較すると、
図1~
図7で示す充填ノズル20には流量計吐出側水素充填ホース8(
図9)が存在しないので、その分だけ水素充填系統における熱容量及び圧損が少なく、定められた充填プロトコルにおける充填特性で、水素充填プロトコルに従った水素充填を実行することができる。
流量計30で計測された質量流量は、図示しない送信装置により、例えば赤外線通信(IR通信:光通信)により、例えば作業者が保持する図示しない情報処理装置(例えばタブレット)に送信される。係る送信は図示しない無線装置で行うことが出来るし、或いは、図示しない信号ラインを介して行うことが出来る。図示しない情報処理装置においては、流量計30の計測結果に基づいて水素充填装置2側の流量計の器差を演算し、校正の報告書を作成することが可能である。
【0036】
図7において、FCV1の水素タンク内に水素充填をする際には、当該水素タンク内の圧力、温度は、光通信(IR通信)により水素充填装置2に送信され、通信充填が実行される。校正作業においても同様に通信充填が行われた状態で、FCV1内に水素が充填される。すなわち、図示の実施形態に係る充填ノズル20は、校正装置としての機能を発揮するノズルであり、この充填ノズル20を使用することにより、通常の水素充填と同様な態様で校正を行うことが出来る。
図示の実施形態では、通常の水素充填(図示せず)の際には、充填ノズル20を使用せず、水素充填装置2のディスペンサノズル5を、直接、FCV1側のレセプタクル10に接続して行うことが出来る。もちろん、図示の実施形態に係る充填ノズル20を用いて通常の水素充填作業を行うことも可能である。
なお、図示の実施形態に係る充填ノズル20は流量計30を有しているので、燃料電池自動車1内に水素ガスを充填する際に、充填した水素ガスの質量流量を計測できるので、水素充填装置2内の流量計を省略することも可能である。
【0037】
図示の実施形態に係る充填ノズル20は流量計30を内蔵しているが、流量計30とFCV1のレセプタクル10との間に充填ホースは存在しないので、FCV1に対して充填ノズル20により水素充填を行った後に充填ノズル20内に残存する水素ガスは微量である。また、レセプタクル32には逆止弁が内蔵されていない。そのため、校正の後、充填ノズル20内に残存する水素ガスは、水素充填装置2のディスペンサノズル5、充填ホース4を介して、水素充填装置2側の脱圧機構(脱圧弁13、脱圧系統14、
図7)により自動脱圧される。
そのため、
図9に示す従来の校正装置3とは異なり、校正終了後に、校正装置3内に存在する高圧の水素ガスを脱圧する構造(脱圧弁15、脱圧系統11:
図9)を設ける必要がなく、作業員による脱圧作業が不要である。そして、脱圧系統を設ける必要がないため、脱圧系統から逆流するのを防止するための逆止弁等も不要であり、その分だけ校正に用いられる機器の構造が簡素化され、校正に関するコストも低減できる。
【0038】
流量計30の駆動源としてはバッテリー(図示せず)が好適であるが、電源ケーブル(図示せず)を用いて図示しない商用電源と接続して駆動源とすることも可能である。
図示はされていないが、大重量の充填ノズル20を支えるため、図示しないサポートアームにより、上方から充填ノズル20を吊り下げて支持することも可能である。
ただし、サポートアームのバランサは固定されているので、サポートアームの調整が必要となる。そのため、サポートアームの調整を行わずに済むように、充填ノズル20の支持は、支持装置40によることが好適である。
【0039】
次に、
図8を参照して、図示の実施形態に係る充填ノズル20を用いて校正を行った場合における校正の手順、特に校正終了の手順を説明する。以下の説明において、
図1~
図7で表示されている部材については、
図1~
図7の符号を付して記載する。
校正を行うに際して、ステップS1では、充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10に接合する。そして流量計吸入側レセプタクル32に水素充填装置2側のディスペンサノズル5を接合する。
ステップS1で先ず流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10に接合するのは、接合に先立ち調整機構50(高さ調整機構51、角度調整機構52)により流量計吐出側ノズル34の高さ方向位置と伸長方向をレセプタクル10の高さ位置及び突出角度と整合して、レセプタクル10を破損防止するためである。換言すれば、流量計吐出側ノズル34の高さ方向位置と伸長方向を調整するためには、ディスペンサノズル5及び充填ホース4が充填ノズル20の流量計吸入側レセプタクル32に接続されていない方が、操作が容易だからである。
ただし、流量計吸入側レセプタクル32にディスペンサノズル5を接合した後に、流量計吐出側ノズル34の高さ方向位置と伸長方向を調整して、レセプタクル10に流量計吐出側ノズル34を接合することも可能である。
充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1のレセプタクル10に接合し、流量計吸入側レセプタクル32にディスペンサノズル5を接合すると、
図2~
図5を参照して上述した様に通信充填が確立され、水素充填装置2の表示部(図示せず)に通信充填が確立した旨を表示するマークが点灯する。
【0040】
ステップS1に続くステップS2では、校正を行うのに先立ち、充填ノズル20の吸入側流路(水素充填装置2側の領域の流路)に設けられた手動弁54(手動タイプの開閉弁)を開放する。そしてステップS3に進む。
ステップS3では校正を行う。充填ノズル20でFCV1に水素充填を行えば、水素充填装置2、充填ホース4、ディスペンサノズル5、流量計吸入側レセプタクル32を介して水素ガスが流量計30を流れ、(流量計30により)質量流量が計測され、FCV1への水素充填と同時に校正が行われる。
【0041】
ステップS3に続くステップS4では、校正を終了するか否かを判断する。校正或いは水素充填の際には、水素充填装置2(
図7)の吐出側に配置された圧力計(図示せず)で圧力がチェックされるので、水素充填装置2の吐出側圧力が所定値(例えば80MPa)以上か否かを判断し、所定以上の高圧になった場合に「校正或いは充填を終了」と判断する。当該判断は、水素充填装置2の図示しない制御ユニットにより実行される。
ステップS4の判断の結果、校正或いは充填を終了する場合(ステップS4が「Yes」)はステップS5に進む。校正或いは充填を終了しない場合(ステップS4が「No」)はステップS4に戻り、校正或いは充填を継続する(ステップS4が「No」のループ)。
【0042】
ステップS5(校正或いは充填を終了する場合)では、水素充填装置2の遮断弁12(
図7)を閉鎖して、ステップS6に進む。
ステップS6では、水素充填装置2の脱圧弁13(
図7)を開放し、脱圧系統14(
図7)を介して水素充填装置2内に残留する水素ガスを脱圧する。
脱圧弁13を開放することにより、水素充填装置2の充填ホース4(
図7)、水素充填装置2のディスペンサノズル5(
図7)内に残存する水素ガスが排出されると共に、充填ノズル20内に残存する微量の水素ガスも、逆止弁が内蔵されていないレセプタクル32、水素充填装置2のディスペンサノズル5、充填ホース4を介して、水素充填装置2の脱圧弁13、脱圧系統14を介して排出(自動脱圧)される。
【0043】
続くステップS7では、ステップS6による水素充填装置2の自動脱圧が終了したか否かを判断する。自動脱圧が終了したか否かの判断に際し、水素充填装置2の吐出側圧力が脱圧の基準圧力(例えば1MPa)以下になった場合に「自動脱圧が終了」と判断する。当該判断は、水素充填装置2の制御ユニットにより実行される。
ステップS7で自動脱圧が終了した場合(ステップS7が「Yes」)はステップS8に進む。自動脱圧が終了していない場合(ステップS7が「No」)はステップS6に戻り、脱圧を継続する(ステップS7が「No」のループ)。
【0044】
ステップS8(自動脱圧が終了)では、水素充填装置2の遮断弁12を開放し、脱圧弁13を閉鎖する。それと共に、充填ノズル20における手動弁54を閉鎖して、水素充填装置2側から充填ノズル20内に水素が流入することを防止する。そしてステップS9に進む。
ステップS9では、充填ノズル20の流量計吐出側ノズル34をFCV1側のレセプタクル10から取り外す。その際に、充填ノズル20の脱圧は不要である。ステップS6において、充填ノズル20内の水素は、水素充填装置2側の脱圧弁13、脱圧系統14を介して排出されているからである。換言すれば、図示の実施形態では、校正終了時に、水素充填装置2内における脱圧のみを行い、水素充填装置2内の流量計と別途設けられた充填ノズル20に内蔵された流量計30については脱圧を行わない。
なお、ステップS8、S9の作業は、同時に実行することも出来、或いはステップS9、ステップS8の順で実行することも出来る。また、
図8は校正作業の手順を説明しているが、充填ノズル20を用いて水素充填を行う場合には、上述したのと同様な手順で充填作業を行うことが出来る。
【0045】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態は水素充填ノズルについて説明しているが、本発明の充填ノズルは給油装置の給油ノズルとして適用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・燃料電池自動車(FCV)
2・・・水素充填装置
5・・・充填ノズル(ディスペンサノズル)
10・・・燃料電池自動車のレセプタクル
20・・・充填ノズル
30・・・流量計(質量流量計)
32・・・流量計吸入側レセプタクル
34・・・流量計吐出側ノズル
40・・・支持装置
41・・・支持装置の基部
41A・・・基部を構成するロッド
50・・・調整機構
51・・・高さ調整機構
52・・・角度調整機構
54・・・手動弁
60・・・光信号伝達用の光ファイバー
61・・・受光機構
62・・・発光機構
FCV1・・・燃料電池自動車
HF・・・水素流路
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
発明者は種々研究の結果、充填車両側のレセプタクルに接続される充填ノズルにおいて校正の際に充填される水素流量(質量流量)を計測すれば、上述した問題を解消できることを見出した。
係る知見に基づいて創作された本発明の水素ガス供給用の充填ノズル(20)は、
流量計(質量流量計30)を内蔵し、
流量計(30)の吸入側における流量計吸入側レセプタクル(32)と吐出側における流量計吐出側ノズル(34)を設け、前記流量計吸入側レセプタクル(32)は水素充填装置(2)側の水素充填ノズル(5:ディスペンサノズル)と着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、
前記流量計吐出側ノズル(34)は流量計吐出側ホースを不要として直接燃料電池自動車(1:FCV)のレセプタクル(10)に着脱自在であり、
燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)の高さ方向位置と突出方向に対応して調整する調整機構(50)を有し、
前記調整機構(50)は、流量計吐出側ノズル(34)の高さ方向位置と燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)の高さ方向位置が整合せず充填ノズル(20)の重量が前記レセプタクル(10)に作用して破損させてしまうことを防止するため、流量計吐出側ノズル(34)の高さ方向位置を調整する機能を有する高さ調整機構、及び/又は、流量計吐出側ノズル(34)の伸長方向と燃料電池自動車(1)のレセプタクル(10)の突出している方向が異なった状態で流量計吐出側ノズル(34)を前記レセプタクル(10)に接合することによる破損を防止するため、流量計吐出側ノズル(34)の伸長方向を調整する機能を有する角度調整機構であることを特徴としている。
本発明の充填ノズル(20)は水素充填のみならず、給油装置の給油用ノズルとして適用することも可能である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明において、充填ノズル(20)の吸入側通路(水素流路HFの水素充填装置2側の領域)に手動弁(54:手動タイプの開閉弁)が配置されているのが好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量計を内蔵し、
流量計の吸入側における流量計吸入側レセプタクルと吐出側における流量計吐出側ノズルを設け、前記流量計吸入側レセプタクルは水素充填装置側のディスペンサノズルと着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、
前記流量計吐出側ノズルは流量計吐出側ホースを不要として直接燃料電池自動車のレセプタクルに着脱自在であり、
燃料電池自動車のレセプタクルの高さ方向位置と突出方向に対応して調整する調整機構を有し、
前記調整機構は、流量計吐出側ノズルの高さ方向位置と燃料電池自動車のレセプタクルの高さ方向位置が整合せず充填ノズルの重量が前記レセプタクルに作用して破損させてしまうことを防止するため、流量計吐出側ノズルの高さ方向位置を調整する機能を有する高さ調整機構、及び/又は、流量計吐出側ノズルの伸長方向と燃料電池自動車のレセプタクルの突出している方向が異なった状態で流量計吐出側ノズルを前記レセプタクルに接合することによる破損を防止するため、流量計吐出側ノズルの伸長方向を調整する機能を有する角度調整機構であることを特徴とする充填ノズル。
【請求項2】
充填ノズルの吸入側流路に手動弁が配置されている請求項1の充填ノズル。
【請求項3】
充填ノズルには、光信号伝達用の光ファイバーが設けられており、燃料電池自動車のレセプタクル側に受光機構を設け、水素充填装置側のレセプタクルに発光機構を設けている請求項1、2の何れかの充填ノズル。
【請求項4】
充填ノズルは支持装置を有し、支持装置の基部はロッドを放射状に複数本組み合わせて構成されている請求項1の充填ノズル。