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特開2023-169929検温装置、検温方法、及び検温プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169929
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】検温装置、検温方法、及び検温プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20231124BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20231124BHJP
【FI】
A61B5/01 350
G01J5/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081272
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】519050923
【氏名又は名称】株式会社WDS
(74)【代理人】
【識別番号】100119758
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 保宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩之
【テーマコード(参考)】
2G066
4C117
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066BA14
2G066CA02
2G066CA04
4C117XA01
4C117XB01
4C117XB04
4C117XD08
4C117XE43
4C117XE48
4C117XG01
4C117XG22
4C117XJ01
4C117XJ13
4C117XP12
4C117XQ18
(57)【要約】
【課題】外気の影響を極力排除し、体温を正確に測定することができる。
【解決手段】撮像部と表面温度測定部と出力部を備える検温装置は、撮像部により撮像された被測定者の画像に基づいて被測定者の口を認識する口認識部と、撮像部により撮像された被測定者の口の画像に基づいて口の開閉状態を判定する開閉状態判定部と、開閉状態判定部により被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを出力部に出力する開口メッセージ出力制御部と、開閉状態判定部により被測定者が口を開いていると判定された場合、表面温度測定部により測定された被測定者の口内の表面温度に基づいて被測定者の口内温度を算出する口内温度算出部と、口内温度算出部により算出された被測定者の口内温度を被測定者の体温として出力部に出力する体温出力制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者を撮像する撮像部と、前記被測定者の表面温度を非接触に測定する表面温度測定部と、所定の情報を出力する出力部と、を備えた検温装置であって、
前記撮像部により撮像された前記被測定者の画像に基づいて、前記被測定者の口を認識する口認識部と、
前記口認識部により認識された口の開閉状態を、前記撮像部により撮像された前記被測定者の口の画像に基づいて、判定する口開閉状態判定部と、
前記口開閉状態判定部により前記被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを前記出力部に出力する開口メッセージ出力制御部と、
前記口開閉状態判定部により前記被測定者が口を開いていると判定された場合、前記表面温度測定部により測定された前記被測定者の口内の表面温度に基づいて、前記被測定者の口内温度を算出する口内温度算出部と、
前記口内温度算出部により算出された前記被測定者の口内温度を、前記被測定者の体温として前記出力部に出力する体温情報出力制御部と、
を備えることを特徴とする検温装置。
【請求項2】
前記撮像部により撮像された前記被測定者の顔の画像に基づいて、前記被測定者が口にマスクを着用しているか否かを判定するマスク着用判定部と、
前記マスク着用判定部により前記被測定者が口にマスクを着用していると判定された場合、マスクの非着用を促すメッセージを前記出力部に出力するマスク非着用メッセージ出力制御部と、
を備え、
前記口開閉状態判定部は、前記マスク着用判定部により前記被測定者が口にマスクを着用していないと判定された場合に、前記被測定者の口の開閉状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の検温装置。
【請求項3】
前記口内温度算出部は、口内の複数個所の表面温度を計測し、該複数個所の表面温度のうち最高温度を、前記被測定者の口内温度として算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の検温装置。
【請求項4】
被測定者を撮像する撮像部と、前記被測定者の表面温度を非接触に測定する表面温度測定部と、所定の情報を出力する出力部と、を備えた検温装置による検温方法であって、
前記撮像部により撮像された前記被測定者の画像に基づいて、前記被測定者の口を認識する口認識ステップと、
前記口認識ステップにおいて認識された口の開閉状態を、前記撮像部により撮像された前記被測定者の口の画像に基づいて、判定する口開閉状態判定ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを前記出力部に出力する開口メッセージ出力制御ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を開いていると判定された場合、前記表面温度測定部により測定された前記被測定者の口内の表面温度に基づいて、前記被測定者の口内温度を算出する口内温度算出ステップと、
前記口内温度算出ステップにより算出された前記被測定者の口内の表面温度を、前記被測定者の体温として前記出力部に出力する体温情報出力制御ステップと、
を備えることを特徴とする検温方法。
【請求項5】
被測定者を撮像する撮像部と、前記被測定者の表面温度を非接触に測定する表面温度測定部と、所定の情報を出力する出力部と、を備えた検温装置のための検温プログラムであって、
前記撮像部により撮像された前記被測定者の画像に基づいて、前記被測定者の口を認識する口認識ステップと、
前記口認識ステップにおいて認識された口の開閉状態を、前記撮像部により撮像された前記被測定者の口の画像に基づいて、判定する口開閉状態判定ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを前記出力部に出力する開口メッセージ出力制御ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を開いていると判定された場合、前記表面温度測定部により測定された前記被測定者の口内の表面温度に基づいて、前記被測定者の口内温度を算出する口内温度算出ステップと、
前記口内温度算出ステップにより算出された前記被測定者の口内の表面温度を、前記被測定者の体温として前記出力部に出力する体温情報出力制御ステップと、
を前記検温装置に実行させることを特徴とする検温プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の体温を非接触にて測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、新型コロナウイルスの感染拡大の防止策として、公共施設、商業施設など多くの人が利用する施設では、検温装置を用いて入場者の体温を測定することが行われている。例えば、特許文献1には、撮像部が撮像した画像に基づいて入場者の顔の部位を検知し、顔の部位から放射される赤外線を検出して、顔の表面温度を算出し、算出した表面温度を体温として表示する、非接触型の検温装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3229711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非接触型の検温装置が測定するのは顔の表面温度であり、厳密には人の体温ではない。そのため、外部環境の影響を排除できない場合には、体温を正確に測定できないという問題がある。例えば、寒い環境下から施設に入館したばかりの入場者に対しては、外気の影響を受けて正確な体温を計測することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、外気の影響を極力排除し、体温を正確に測定することができる検温装置、検温方法、及び検温プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る検温装置は、その一態様として、
被測定者を撮像する撮像部と、前記被測定者の表面温度を非接触に測定する表面温度測定部と、所定の情報を出力する出力部と、を備えた検温装置であって、
前記撮像部により撮像された前記被測定者の画像に基づいて、前記被測定者の口を認識する口認識部と、
前記口認識部により認識された口の開閉状態を、前記撮像部により撮像された前記被測定者の口の画像に基づいて、判定する口開閉状態判定部と、
前記口開閉状態判定部により前記被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを前記出力部に出力する開口メッセージ出力制御部と、
前記口開閉状態判定部により前記被測定者が口を開いていると判定された場合、前記表面温度測定部により測定された前記被測定者の口内の表面温度に基づいて、前記被測定者の口内温度を算出する口内温度算出部と、
前記口内温度算出部により算出された前記被測定者の口内温度を、前記被測定者の体温として前記出力部に出力する体温情報出力制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
また、本発明に係る検温方法は、その一態様として、
被測定者を撮像する撮像部と、前記被測定者の表面温度を非接触に測定する表面温度測定部と、所定の情報を出力する出力部と、を備えた検温装置による検温方法であって、
前記撮像部により撮像された前記被測定者の画像に基づいて、前記被測定者の口を認識する口認識ステップと、
前記口認識ステップにおいて認識された口の開閉状態を、前記撮像部により撮像された前記被測定者の口の画像に基づいて、判定する口開閉状態判定ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを前記出力部に出力する開口メッセージ出力制御ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を開いていると判定された場合、前記表面温度測定部により測定された前記被測定者の口内の表面温度に基づいて、前記被測定者の口内温度を算出する口内温度算出ステップと、
前記口内温度算出ステップにより算出された前記被測定者の口内の表面温度を、前記被測定者の体温として前記出力部に出力する体温情報出力制御ステップと、
を備えることを要旨とする。
【0008】
また、本発明に係る検温プログラムは、その一態様として、
被測定者を撮像する撮像部と、前記被測定者の表面温度を非接触に測定する表面温度測定部と、所定の情報を出力する出力部と、を備えた検温装置のための検温プログラムであって、
前記撮像部により撮像された前記被測定者の画像に基づいて、前記被測定者の口を認識する口認識ステップと、
前記口認識ステップにおいて認識された口の開閉状態を、前記撮像部により撮像された前記被測定者の口の画像に基づいて、判定する口開閉状態判定ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを前記出力部に出力する開口メッセージ出力制御ステップと、
前記口開閉状態判定ステップにおいて前記被測定者が口を開いていると判定された場合、前記表面温度測定部により測定された前記被測定者の口内の表面温度に基づいて、前記被測定者の口内温度を算出する口内温度算出ステップと、
前記口内温度算出ステップにより算出された前記被測定者の口内の表面温度を、前記被測定者の体温として前記出力部に出力する体温情報出力制御ステップと、
前記検温装置に実行させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外気の影響を極力排除し、体温を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る検温装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る検温装置の外観図である。
図3】本発明の実施の形態に係る検温装置による検温処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
<検温装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る検温装置1の概略構成図である。検温装置1は、非接触型の検温装置であり、撮像部が撮像した画像に基づいて被測定者の顔の部位を検知し、顔のうち口内から放射される赤外線を検知して、口内の表面温度を計測し、計測した口内の表面温度に基づいて算出した口内温度を体温として情報出力するように構成されている。図2に、検温装置1の外観の一例を示す。
【0013】
ここで、口内の表面温度を測定するのは、以下の理由による。一般に、体温測定は、放熱がなく体内温に近い直腸温、口腔温、鼓膜温、又は腋窩温で測定することが好適であると考えられている。本実施の形態では、この点を踏まえて、公衆の面前で測定すること、また、口は、通常、閉じていることから、測定時点において被測定者に開口してもらえば、外気の影響を受けにくいということに基づいて、口内の表面温度を測定することとした。
【0014】
検温装置1は、図1に示すように、撮像部11と、表面温度測定部12と、出力部13と、記憶部14と、制御部15と、を備えている。
【0015】
撮像部11は、例えば、2つのステレオカメラで構成され(図2参照)、被測定者の画像を撮像する。
【0016】
表面温度測定部12は、例えば、熱を検知するサーマルカメラで構成され(図2参照)、測定部位から放射される赤外線を検知して測定部位の表面温度を計測する。表面温度測定部12は、被測定者の顔全体の表面温度を計測することが可能であるが、本実施の形態では、特に、被測定者の口内の複数点の表面温度を計測することを特徴としている。上述したように、口内は、体内温に近く、外気の影響を受けにくいという点を考慮したものである。
【0017】
出力部13は、情報を出力する装置であり、例えば、液晶ディスプレイ(図2参照)やスピーカなどで構成される。本実施の形態では、例えば、図2に示すように、被測定者の顔画像、被測定者の体温、正常体温か否かの判定情報、サーモグラフ、スピーカから出力される音声内容を示す補足表示などの情報が液晶ディスプレイ上に表示される。
【0018】
記憶部14は、例えば、メモリ、ハードディスク等から構成されている。本実施の形態の記憶部14には、検温装置1に設定されるパラメータ(以下、設定パラメータという。)21、検温装置1を実行するためのアプリケーションプログラム22などが記憶されている。設定パラメータ21は、例えば、正常体温の閾値、ディスプレイに示す表示項目、画像判定範囲、背景画像などのパラメータを備えている。ここで、正常体温の閾値は、算出された被測定者の体温が正常か異常かを判定するためのパラメータである。本実施の形態では、算出された被測定者の体温が閾値以下であれば、正常体温と判定し、そうでない場合には、異常体温と判定する。
【0019】
なお、アプリケーションプログラム22は、上述した記憶部14に格納されている他、外部ハードディスク、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録することも、通信ネットワークを介して配信することも可能である。アプリケーションプログラム22は、本発明の検温プログラムに該当する。
【0020】
制御部15は、例えば、CPU及びメモリ等から構成されている。制御部15は、アプリケーションプログラム22を実行することにより、記憶部14の制御や、各種データの転送、種々の演算、データの一時的な格納等を行い、検温処理を実行する。
【0021】
制御部15は、詳しくは、口認識部23と、マスク着用判定部24と、マスク非着用メッセージ出力制御部25と、口開閉状態判定部26と、開口メッセージ出力制御部27と、口内温度算出部28と、体温情報出力制御部29と、を具備する構成である。
【0022】
口認識部23は、撮像部11が撮像した被測定者の画像に基づいて、顔の各部位を検知することにより、被測定者の口を認識する。
【0023】
マスク着用判定部24は、口認識部23が被測定者の口の位置を検知した後、撮像部11が撮像した被測定者の口近傍の画像に基づいて、被測定者が口にマスクを着用しているか否かを判定する。
【0024】
マスク非着用メッセージ出力制御部25は、マスク着用判定部24が被測定者の口にマスクが着用されていると判定した場合、マスクの非着用を促すメッセージ(例えば、「マスクを外してください」などのメッセージ)を出力部13に出力する。マスク非着用メッセージ出力制御部25は、例えば、「マスクを外してください」の音声をスピーカから出力するとともに「マスクを外してください」の文言を液晶ディスプレイに表示してもよい。
【0025】
口開閉状態判定部26は、マスク着用判定部24が被測定者の口にマスクが着用されていないと判定した場合、撮像部11が撮像した被測定者の口近傍の画像に基づいて、被測定者が口を開けているか閉じているかを判定する。
【0026】
開口メッセージ出力制御部27は、口開閉状態判定部26が被測定者の口は閉じられていると判定した場合、開口を促すメッセージ(例えば、「口を開けてください」などのメッセージ)を出力部13に出力する。開口メッセージ出力制御部27は、例えば、「口を開けてください」の音声をスピーカから出力するとともに「口を開けてください」の文言を液晶ディスプレイに表示してもよい。
【0027】
口内温度算出部28は、口開閉状態判定部26が被測定者の口は開いていると判定した場合、表面温度測定部12により測定された口内の複数個所の表面温度に基づいて、口内温度を算出する。例えば、口内の複数個所の表面温度の最高温度を口内温度としてもよいし、口内の複数個所の表面温度の平均値を口内温度としてもよい。
【0028】
体温情報出力制御部29は、口内温度算出部28が算出した口内温度を被測定者の体温とみなし、被測定者の体温に関する情報(以下、体温情報という。)を出力部13に出力する。ここで、体温情報とは、例えば、被測定者の体温、及び体温が正常体温であるか否かの判定結果を含む情報である。体温情報出力制御部29は、例えば、(1)正常体温である場合には、液晶ディスプレイに正常体温(例えば、「36.5°C」などの文字)を表示するとともに背景画像を緑色にして表示する一方、(2)正常体温でない場合には、液晶ディスプレイに異常体温(例えば、「39°C」などの文字)表示するとともに背景画像を赤色にして表示してもよい。なお、被測定者の体温が正常体温であるか否かは、設定パラメータ11の正常体温の閾値に基づいて判定される。
【0029】
<検温装置の動作>
次に、図3を用いて、検温装置1の動作について説明する。図3は、検温装置1が実行する検温処理の流れを示すフローチャートである。図3に示す検温処理の流れは、本発明の検温方法に該当するものである。
【0030】
検温装置1は、撮像部11により撮像された被測定者の画像を取得する(ステップS10)と、取得した被測定者の画像に基づいて顔の各部を検出し(ステップS20)、その結果、口の位置を認識する(ステップS30)。
【0031】
次に、検温装置1は、ステップS30にて認識した口近傍の画像に基づいて、被測定者が口にマスクを着用しているか否かを判定する(ステップS40)。被測定者が口にマスクを着用している場合には(ステップS40:YES)、検温装置1は、マスクを外す旨のメッセージを出力部13に出力し(ステップS50)、その後、ステップS40に戻る。一方、被測定者が口にマスクを着用していない場合には(ステップS40:NO)、検温装置1は、被測定者の口近傍の画像に基づいて、被測定者が口を閉じているか否かを判定する(ステップS60)。
【0032】
被測定者が口を閉じている場合には(ステップS60:YES)、検温装置1は、開口を促すメッセージを出力部13に出力し(ステップS70)、その後、ステップS60に戻る。一方、被測定者が口を開けている場合には(ステップS60:NO)、検温装置1は、口内の複数個所の表面温度を測定し、測定した複数の表面温度に基づいて口内温度を算出する(ステップS80)。
【0033】
最後に、検温装置1は、ステップS80において算出した被測定者の口内温度を体温とみなし、被測定者の体温、及び被測定者の体温が正常体温か否かを判定した結果を含む体温情報を出力部13に出力する(ステップS90)。
【0034】
以上、本実施の形態の検温装置1は、被測定者を撮像する撮像部11と、被測定者の表面温度を非接触に測定する表面温度測定部12と、所定の情報を出力する出力部13と、を備え、撮像部11により撮像された被測定者の画像に基づいて、被測定者の口を認識する口認識部23と、口認識部23により認識された口の開閉状態を、撮像部11により撮像された被測定者の口の画像に基づいて、判定する口開閉状態判定部26と、口開閉状態判定部26により被測定者が口を閉じていると判定された場合、開口を促すメッセージを出力部13に出力する開口メッセージ出力制御部27と、口開閉状態判定部26により被測定者が口を開いていると判定された場合、表面温度測定部12により測定された被測定者の口内の表面温度に基づいて、被測定者の口内温度を算出する口内温度算出部28と、口内温度算出部28により算出された被測定者の口内温度を、被測定者の体温として出力部13に出力する体温情報出力制御部29と、を備える。
【0035】
このような構成を採用することにより、本実施の形態の検温装置1によれば、外気の影響を極力排除し、被測定者の体温を正確に測定することができる。また、被測定者が口を閉じていたとしても、開口を促すメッセージを出力するので、被測定者の口の開閉状態に係わらず、被測定者の口内温度を容易に算出することができる。
【0036】
従来、非接触型の検温装置(以下、従来の検温装置という。)では、被測定者の額の表面温度を計測して、体温として出力することが一般的であるが、この場合、外部環境、気化熱、服装の影響を受けてしまい、体温が正確に測定できない場合があるという問題があった。ここで、外部環境の影響とは、例えば、外気の影響である。具体的には、冬は外気に触れた額が冷たくなり表面温度は体温より低くなる一方、夏は日光が顔に当たるため、体表面温度は体温より高くなる傾向がある。また、気化熱の影響とは、夏に外気に触れた場合や実際に高熱がある場合には汗をかく影響である。この場合、汗が蒸発するのでその気化熱により、額の表面温度は体温より低くなる傾向がある。また、服装の影響とは、帽子などにより額が見えない影響である。この場合には、体温を測定することできない。
【0037】
そのため、大勢の人が建物の入り口や受付に集まり、即時に検温が必要になる、病院、ホテル、映画館、イベント会場などの公共施設においては、上記問題により困っているという状況があった。本実施の形態の検温装置1は、このような問題を解決するものであり、撮像装置11により被測定者の口内を特定するとともに、表面温度測定部12により口内の表面温度を測定することにより、被測定者の体温を正確に算出することができるという画期的な検温装置である。
【0038】
ここで、本出願人による実験結果の一例を用いて具体的に説明する。前提として、接触型の体温計により被測定者の脇下を測定した場合の体温が36.8°Cであり、被測定者が外気温1°Cの環境下にマスクを着用して30分間いた後の検温結果について述べる。なお、検温結果は、測定部位における複数個所の測定結果のうちの最高温度を検温結果としている。まず、(1)従来の検温装置を用いて、額部分の表面温度を計測した場合には、検温結果は34.0°C、次に(2)従来の検温装置を用いて、マスク上部の鼻の一部の表面温度を計測した場合には、検温結果は36.4°C、また、(3)従来の検温装置を用いて、マスクを外した後、閉じた口の口周辺の表面温度を計測した場合には、検温結果は36.7°Cであった。一方、(4)検温装置1を用いて、マスクを外した後、開いた口の口内の表面温度を計測した場合には、検温結果は36.8°Cであった。
【0039】
この実験結果によれば、外部環境の影響を最も受けない測定部位は、口内であることがわかる。勿論、この実験結果は、一般に、体温測定の好適な部位として推奨されている部位(上述した口腔温)とも合致するものである。本出願人は、従来から推奨されている体温測定部位、検温装置が不特定多数の人が集まる公共の空間に設置されること、及び上記実験結果を踏まえて、被測定者の口内の表面温度を計測することを考案したものである。
【0040】
また、本実施の形態の検温装置1は、撮像部11により撮像された被測定者の顔の画像に基づいて、被測定者が口にマスクを着用しているか否かを判定するマスク着用判定部24と、マスク着用判定部24により被測定者が口にマスクを着用していると判定された場合、マスクの非着用を促すメッセージを出力部13に出力するマスク非着用メッセージ出力制御部25と、を備え、口開閉状態判定部26は、マスク着用判定部24により被測定者が口にマスクを着用していないと判定された場合に、被測定者の口の開閉状態を判定する。
【0041】
このような構成を採用することにより、本実施の形態の検温装置1によれば、被測定者がマスクを着用していたとしても、被測定者の口内の表面温度を計測することできるので、被測定者のマスク着用状態に係わらず、外気の影響を極力排除し、被測定者の体温を正確に測定することができる。
【0042】
また、本実施の形態の検温装置1の口内温度算出部28は、口内の複数個所の表面温度を計測し、該複数個所の表面温度のうち最高温度を、被測定者の口内温度として算出するので、被測定者の体温をより正確に測定することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、検温機能だけを備える検温装置1について説明したが、検温装置1の機能を拡張させて、被測定者の検温とともに顔認証を行う顔認証システムとしてもよい。顔認証システムを、例えば、顔画像データを用いて施設内への入館を管理するコンピュータシステムとし、AI(artificial intelligence;人工知能)機能を搭載するカメラを備えるようにしてもよい。この場合、顔認証システムは、AI機能を有し、撮像した人物の顔画像データ及び顔認証システムに記憶された顔画像データの特徴点をリアルタイムに抽出可能なカメラと、カメラから出力された顔画像データの特徴点を解析し、解析した特徴点に基づいて人物を特定するコンピュータと、施設内を利用可能な利用者の顔画像データやカメラが撮像した画像データを記憶する記憶装置と、を備える構成としてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施の形態に対して種々の変形や変更を施すことができ、そのような変形や変更を伴うものもまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 検温装置
11 撮像部
12 表面温度測定部
13 出力部
14 記憶部
15 制御部
21 設定パラメータ
22 アプリケーションプログラム
23 口認識部
24 マスク着用判定部
25 マスク非着用メッセージ出力制御部
26 口開閉状態判定部
27 開口メッセージ出力制御部
28 口内温度算出部
29 体温情報出力制御部
図1
図2
図3