(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169930
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】鞍乗車両
(51)【国際特許分類】
B62J 9/14 20200101AFI20231124BHJP
B62J 43/16 20200101ALI20231124BHJP
B62J 15/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B62J9/14
B62J43/16
B62J15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081273
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博
(57)【要約】
【課題】鞍乗車両の運転フィーリングを向上させる。
【解決手段】鞍乗車両は、車体フレームと、少なくとも1つの車輪と、前記車輪に伝達される動力を発生する駆動源と、電力を蓄えるバッテリが収容される収納空間と、バッテリを出し入れするために前記収納空間を上方に開放する開口と、を含むバッテリケースと、を備え、前記バッテリケースは、前記開口が上方かつ後方に斜めに向くように鉛直方向に対して傾斜しており、前記バッテリケースの下端は、前記駆動源の前方空間に配置されて、前記駆動源の上端よりも下方に位置している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
少なくとも1つの車輪と、
前記車輪に伝達される動力を発生する駆動源と、
電力を蓄えるバッテリが収容される収納空間と、バッテリを出し入れするために前記収納空間を上方に開放する開口と、を含むバッテリケースと、を備え、
前記バッテリケースは、前記開口が上方かつ後方に斜めに向くように鉛直方向に対して傾斜しており、
前記バッテリケースの下端は、前記駆動源の前方空間に配置されて、前記駆動源の上端よりも下方に位置している、鞍乗車両。
【請求項2】
前記少なくとも1つの車輪は、前輪及び後輪を含み、
前記鞍乗車両は、前記車体フレームと前記前輪とを接続し、上方かつ後方に斜めに延びたフロントフォークであって、長手方向に伸縮することで前記車体フレームに伝わる衝撃を緩和するフロントフォークを更に備え、
前記バッテリケースの前記下端は、前記車両の前後方向において前記フロントフォークと前記駆動源との間に配置されており、
前記バッテリケースの前面は、前記フロントフォークの前記長手方向と同じ方向または上方に向かうにつれてフロントフォークから離れる方向に延びている、請求項1に記載の鞍乗車両。
【請求項3】
前記少なくとも1つの車輪は、前輪及び後輪を含み、
前記鞍乗車両は、前記車体フレームと前記前輪とを接続し、上方かつ後方に斜めに延びたフロントフォークであって、長手方向に伸縮することで前記車体フレームに伝わる衝撃を緩和するフロントフォークを更に備え、
前記フロントフォークに接続されて、前記フロントフォークの伸縮に伴って前記フロントフォークとともに上下動する連動部品を更に備え、
前記バッテリケースの前面は、前記フロントフォークの伸縮に連動する連動部品の移動軌跡よりも後方に配置されている、請求項1に記載の鞍乗車両。
【請求項4】
前記少なくとも1つの車輪は、前輪及び後輪を含み、
前記鞍乗車両は、前記車体フレームと前記前輪とを接続し、上方かつ後方に斜めに延びたフロントフォークであって、長手方向に伸縮することで前記車体フレームに伝わる衝撃を緩和するフロントフォークを更に備え、
前記バッテリの挿入方向は、前記フロントフォークの前記長手方向と同じ方向または上方に向かうにつれて前記フロントフォークから離れる方向である、請求項1に記載の鞍乗車両。
【請求項5】
前記バッテリケースの前記収納空間は、下方に向かうにつれて前記バッテリケースにおける前記バッテリの挿入方向に直交する断面の面積が縮小する、請求項1から4のいずれか1項に記載の鞍乗車両。
【請求項6】
前記バッテリケースは、バッテリを支持する底壁を含み、
前記バッテリケースは、前記底壁が後方に向かうにつれて下方に向かうように傾斜するように傾斜し、
前記バッテリケースは、前記収納空間の下方かつ後方の角部に開口した水抜き穴が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の鞍乗車両。
【請求項7】
前記バッテリケースの前方において、少なくとも一部が前記バッテリケースと上下方向に重なるように配置された電装品を更に備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の鞍乗車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリを収納するバッテリケースを有する鞍乗車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モータによって駆動輪が駆動される電動の鞍乗車両を開示している。鞍乗車両には、バッテリケースが搭載される。バッテリケースは、モータに電力を供給するバッテリが収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータに電力を供給する鞍乗型車両においても、運転フィーリングの向上が望まれる。
【0005】
そこで本開示の一形態では、鞍乗車両の運転フィーリングを向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の鞍乗車両は、車体フレームと、少なくとも1つの車輪と、前記車輪に伝達される動力を発生する駆動源と、電力を蓄えるバッテリが収容される収納空間と、バッテリを出し入れするために前記収納空間を上方に開放する開口と、を含むバッテリケースと、を備え、前記バッテリケースは、前記開口が上方かつ後方に斜めに向くように鉛直方向に対して傾斜しており、前記バッテリケースの下端は、前記駆動源の前方空間に配置されて、前記駆動源の上端よりも下方に位置している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、バッテリケースの下端が駆動源の上端よりも下方に位置しているので、重量物であるバッテリを低く配置でき、車両の低重心化を図ることができる。また、バッテリケースが、下端から上方に進むにつれて後方に傾斜しているので、バッテリケース上部を、駆動源により近づけて配置しやすい。これにより、鞍乗車両において、重量物である駆動源とバッテリケースとを近づけることで、それらの重量物を車体重心に近づけて配置しやすい。このようにして車両の姿勢変化の際の操作性の向上を図ることができ、運転フィーリングを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る鞍乗車両についての側面図である。
【
図2】
図1の鞍乗車両においてカバーが取り外された状態の平面図である。
【
図3】
図1の鞍乗車両のバッテリケースの前後方向に沿う面についての断面図である。
【
図4】
図1の鞍乗車両のバッテリケースの幅方向に沿う面についての断面図である。
【
図5】
図1の鞍乗車両におけるバッテリケース周辺について、カバーが閉じられた状態における前後方向に沿う面についての断面図である。
【
図6】
図1の鞍乗車両におけるバッテリケース周辺について、カバーが開けられ、蓋が取り外された状態における前後方向に沿う面についての断面図である。
【
図7】
図1の鞍乗車両におけるバッテリケース周辺について、バッテリケースにバッテリが搭載され、蓋が取り付けられ、カバーが閉められた状態における前後方向に沿う面についての断面図である。
【
図8】
図1の鞍乗車両において、バッテリケースの前部における二重底構造について拡大した、前後方向に沿う面についての断面図である。
【
図9】
図1の鞍乗車両において、バッテリケースの傾斜した角度について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る鞍乗車両について、添付図面を参照して説明する。本明細書においては、前後方向、左右方向(横方向)及び上下方向については、車両にライダーが着座したときに、ライダーから見た方向を示すものとする。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鞍乗車両1(車両)の側面図である。
図1に示すように、本実施形態では、鞍乗車両1は、電動の自動二輪車である。
【0011】
鞍乗車両1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4とを備える。車体フレーム4は、前輪2及び後輪3によって支持されている。鞍乗車両1は、前輪2と車体フレーム4とを接続して前輪2と車体フレーム4との間に設けられたフロントフォーク5を備えている。フロントフォーク5は、操舵軸7の下部に設けられ、上下方向に間隔をあけて配置されるブラケット8に連結されている。フロントフォーク5は、上方かつ後方に斜めに延びている。フロントフォーク5には前サスペンション6が設けられ、フロントフォーク5は前サスペンション6内部のバネが弾性変形することによって長手方向に伸縮可能に構成されている。フロントフォーク5は、長手方向に伸縮することで車体フレーム4に伝わる衝撃を緩和する。ブラケット8に接続される操舵軸7が車体フレーム4の一部であるヘッドパイプ4aに角変位可能に支持されている。また、鞍乗車両1は、後輪3を車体フレーム4の後部に接続する後サスペンション9を有している。また、車体フレーム4には、後輪3を支持して前後方向に延びるスイングアーム10が角変位可能に支持されている。
【0012】
操舵軸7には、運転者が手で握るハンドル11が設けられる。ハンドル11の後側には、後述するバッテリの挿入口を覆う外蓋53が設けられる。外蓋53の後側には、ライダーが着座するシート12が設けられる。鞍乗車両1は、車輪に伝達される動力を発生する駆動源としてモータMを備えている。モータMは、前輪2と後輪3と間において、車体フレーム4に搭載されている。本実施形態では、モータMは、後輪3に伝達される回転駆動力を発生させる原動機としての機能を有している。
【0013】
鞍乗車両1は、バッテリ14と、バッテリ14を内部に収納するバッテリケース13とを備えている。バッテリ13は、電装部品に供給される電力を蓄えるように構成されている。また、本実施形態においては、バッテリ13は、モータMに電力を供給する。これにより、モータMが駆動され、鞍乗車両1が走行する。バッテリ13は、電線15を介してモータMに接続されている。バッテリケース13は、車体フレーム4に取り付けられている。
【0014】
モータMは、モータケースMaと、モータケースMaから突出するモータ駆動軸Mbとを備えている。モータ駆動軸Mbにはスプロケット16がモータ駆動軸Mbと共回転するように設けられる。なお、スプロケット16の代わりに、回転部材としてギヤやプーリが用いられてもよい。そして、モータ駆動軸Mb側のスプロケット16に、チェーン17が接続されている。これにより、モータ駆動軸Mbで出力された駆動力を、チェーン17を介して後輪3に伝達する。なお、モータ駆動軸Mbで出力された駆動力を後輪3に伝達するのはチェーンでなくてもよく、ベルト等他の動力伝達部材であってもよい。
【0015】
ECU(電子制御ユニット)は、BMU(バッテリ管理ユニット)、インバータを介してバッテリ13からモータMに供給される電力を調節して駆動モータMの駆動を制御する。スロットル装置18は、ライダーに操作され、ライダーの操作に応じてモータMの駆動を制御する。
【0016】
ライダーが鞍乗車両1を運転し、走行路の凹凸等により走行時に車体に対し衝撃が作用したときに、フロントフォーク5が長手方向に伸縮する。前サスペンション6が伸縮によって車体フレーム4に伝わる衝撃を緩和することより、ライダーに伝達される衝撃を少なく抑えることができる。これにより、ライダーの乗り心地を向上させることができる。
【0017】
また、鞍乗車両1は、フロントフォーク5に接続されて、フロントフォーク5の伸縮に伴ってフロントフォーク5と共に上下動する連動部品を備えている。本実施形態では、連動部品として、フロントフォーク5から前後方向に突出し、前輪2の上側を覆うようにフロントフォーク5に取り付けられたフロントフェンダ19が設けられている。フロントフェンダ19は、フロントフォーク5と共に上下動するので、フロントフォーク5が伸縮したとしても前輪2に対して相対移動しない。従って、フロントフェンダ19は、前輪2との間の所定の距離を維持したまま前輪2の上方を覆い続ける。従って、前輪2の回転によって小石、砂利等の異物が巻き上げられたとしても、ライダーや車体がフロントフェンダ19によって保護される。
【0018】
図2に、鞍乗車両1の平面図を示す。
図2に示されるように、鞍乗車両1は、バッテリ14をバッテリケース13に搭載させるために、上方に向かって開口された挿入口40を有している。挿入口40は、前後方向においてフロントフォーク5とシート12との間の位置で、バッテリ14をバッテリケース13に出し入れする際に、作業者がバッテリケース13の開口にアクセスするためにバッテリケース13の開口の上方に設けられている。
図2には、鞍乗車両1の挿入口40を覆う外蓋53が取り外された状態について示されている。また、バッテリケース13の収納空間の内部にはバッテリ14が収納されていない状態について示されている。そのため、
図2においては、後述するバッテリケース13におけるケース側コネクタ31が示されている。また、
図2に示されるように、バッテリケース13の内部には2つのバッテリ14が幅方向に並べられてバッテリケース13の内部に収納されるようにバッテリケース13が構成されている。
【0019】
次に、バッテリケース13の構成について説明する。
図3に、バッテリケース13を、前後方向に延びる面に沿って破断した断面図を示す。
図4に、バッテリケース13を、幅方向に延びる面に沿って破断した断面図を示す。また、
図5及び
図6に、バッテリケース周辺の領域について、前後方向に延びる面に沿って破断した断面図を示す。
図5には、鞍乗車両1において、バッテリケース13にアクセスするための鞍乗車両1の挿入口40を覆う外蓋53が閉じられた状態について示されている。
図6には、鞍乗車両1の挿入口40を覆う外蓋53が開けられ、蓋42が取り外された状態について示されている。
図7に、バッテリケース13の内部にバッテリ14が収納された状態のバッテリケース周辺の領域について、前後方向に延びる面に沿って破断した断面図を示す。
【0020】
図3に示されるように、バッテリケース13は、バッテリ14を収容可能な筐体として構成されている。バッテリケース13は、バッテリ14を収納する収納空間25を有している。また、バッテリケース13は、後方に向かうにつれて下方に傾斜した内底壁28と、内底壁28から上方に延び収納空間25の側方を囲む側壁48とを有している。また、バッテリケース13は、バッテリ14を出し入れするためにバッテリ14の収納空間25を上方に開放する開口21を有している。バッテリケース13は、鞍乗車両1に取り付けられたときに、開口21が上方かつ後方に斜めに向くように鉛直方向に対して傾斜している。すなわち、バッテリケース13は、下端から上方に進むにつれて後方に傾斜して鞍乗車両1に取り付けられている。
【0021】
バッテリケース13の収納空間25は、下方に向かうにつれて、バッテリ14の挿入方向D1に直交する断面の面積が縮小するように構成されている。本実施形態においては、バッテリケース13の内面上部の前面及び後面に段差22が設けられている。また、それに加え、バッテリケース13の内面の段差22の設けられた部分の下方において、バッテリケース13の内面の前面及び後面が、下方に向かうにつれて互いに近づくテーパ状となるようにバッテリケース13が構成されている。バッテリケース13は、内面において、上部の段差23の設けられた部分と、その下部のテーパ状となるように構成された部分24とによって、下方に向かうにつれて内面が内側に向かうように構成されている。バッテリケース13の側壁48は、収納空間25に侵入した水を排出する水抜き穴26を有している。水抜き穴26は、バッテリケース13において収納空間25の下方かつ後方の角部に開口している。バッテリケース13が鞍乗車両1に取り付けられた状態で、バッテリケース13の外部に向けて少なくとも下向き成分を有する方向に水抜き穴26が延びている。水抜き穴26は、バッテリケース13の後端部13dにおいて、側壁48の、上下方向の内底壁28に近接した位置に設けられている。また、バッテリケース13における収納空間25において、水抜き穴26は、収納空間25と外部とを連通させるように構成されている。
【0022】
図4に示されるように、バッテリケース13は、幅方向に2つのバッテリ14を収納することが可能に構成されている。本実施形態においては、幅方向に2つ並べられたバッテリ14の収納のスペースを区分けするように、バッテリケース13の内底壁28から収納空間25の内側に向けて突出した仕切部41が設けられている。仕切部41によって2つのバッテリ14のそれぞれを配置するスペースが区分けされ、それぞれのバッテリ14を適切な位置に配置することができる。
【0023】
鞍乗車両1は、バッテリケース13の上方に配置される蓋42を備えている。
図5に示されるように、バッテリケース13には、開口21を閉鎖する蓋42が取り付けられる。蓋42は、バッテリケース13にバッテリ14を収納した後にバッテリ14の上方を覆い、バッテリ14を保護する。本実施形態においては、蓋42は、バッテリケース13に対しネジ止めによって固定される。
【0024】
鞍乗車両1は、シート12の前方で蓋42の上方の位置に設けられた外蓋部材51を備えている。
図5に示されるように、外蓋部材51は、蓋42の上方において鞍乗車両1の外面の一部を構成すると共に、バッテリケース13の上方で外蓋53を開閉させることが可能に構成されている。バッテリ14は、鞍乗車両1に搭載されたバッテリケース13の内部に収納されたときに、バッテリケース13と蓋42と外蓋部材51とによって保護される。本実施形態においては、外蓋部材51は、バッテリケース13の側壁48の上端48aに取り付けられている。また、本実施形態においては、外蓋部材51は、シート12の前方の位置で鞍乗車両1のカウル50に部分的に埋め込まれ、カウル50から突出した部分が鞍乗車両1の外面を構成している。
【0025】
外蓋部材51は、シート12にライダーが跨ったときに、ライダーの脚の間に位置し、外蓋部材51の上端51aがシート12よりも上方に向かって突出している。外蓋部材51は、開口52aを有するベース52と、ベース52の開口52aを開閉可能に設けられた外蓋53と、ベース52に対して外蓋53を回動自在に接続するヒンジ部54とを有している。ヒンジ部54を中心に外蓋53が回動することにより、外蓋53がベース52に対し開閉する。ヒンジ部54は、外蓋53が後方に開くようにベース52の後部に設けられている。外蓋53が閉じた状態において、ヒンジ部54は、外蓋53の前端よりも低い位置に配置されている。
【0026】
外蓋53が開けられると、
図6に示されるように、ベース52の内側に、バッテリケース13にバッテリ14を出し入れする際のバッテリ14の通過するスペースとしての挿入口40が設けられる。挿入口40は、バッテリケース13に向かってバッテリが挿入される挿入方向に沿った、バッテリケース13の上方に位置している。
図6に示されるように、挿入口40は、外蓋部材51に設けられている。
【0027】
図5、6及び7に示されるように、本実施形態では、バッテリケース13は、モータMの前側に隣接して鞍乗車両1に取り付けられている。バッテリケース13は、鞍乗り車両1の前後方向において、フロントフォーク5とモータMとの間に配置されている。本実施形態においては、後述するように、バッテリケース13が傾斜して配置され、バッテリケース13の前面がフロントフォーク5の長手方向と同じ方向に延びている。
【0028】
図7に示されるように、蓋42は、バッテリ14がバッテリケース13の内部に収納された状態で、バッテリ14の上端43と当接するように構成されている。バッテリ14がバッテリケース13に収納された状態でバッテリ14が蓋42と当接するので、バッテリケース13の内部でバッテリ14が押さえつけられる。鞍乗車両1の走行中にも蓋42によってバッテリ14が押さえつけられるので、走行中に鞍乗車両1に上下方向に力が作用したとしても、バッテリ14がそれによって上下方向に移動することを抑えることができる。
【0029】
図3から7に示されるように、バッテリケース13の底部は、二重底構造35を有するように構成されている。バッテリケース13の底部の二重底構造35は、内底壁28と、内底壁28を下方から覆う外底壁29と、外底壁29を内底壁28に接続する周壁30と、を有している。内底壁28と外底壁29とを合わせて、底壁56と言うものとする。底壁56は、バッテリケース13が傾斜しているのに伴い、後方に向かうにつれて下方に向かうように傾斜している。バッテリケース13の内底壁28には、収納空間25の内方に向かって突出したケース側コネクタ31が設けられている。バッテリ14には、バッテリ14がバッテリケース13の収納空間に収納されたときにケース側コネクタ31と接続するバッテリ側コネクタ32が設けられている。
【0030】
バッテリケース13の二重底構造35における外底壁29と内底壁28との間の配線空間33には、ケース側コネクタ31に接続された電線34が配置されている。本実施形態では、電線34は、ケース側コネクタ31からバッテリケース13の内底壁28の内部を貫通して配線空間33に向かって延び、配線空間33の内部を通って後方に向かい、バッテリケース13の外部に延びている。バッテリケース13は、二重底構造35と、ケース側コネクタ31と、電線34と、を含んで構成されている。本実施形態では、外底壁29及び周壁30は、内底壁28とは別体に構成されている。また、外底壁29及び周壁30は、ワンピースの底蓋36を構成している。
【0031】
図8に、バッテリケース13の前部における二重底構造35について拡大した断面図を示す。バッテリケース13の内底壁28及び底蓋36の合わせ面には、シール部材37が介在している。また、
図5から7に示されるように、周壁30には、水抜き穴38が設けられている。水抜き穴38は、バッテリケース13の後端部13dにおいて、外底壁29に近接した位置に設けられている。水抜き穴38は、配線空間33と外部とを連通させるように構成されている。
【0032】
本実施形態では、外底壁29が、後方に向かうにつれて下方に延びるように傾斜しているので、バッテリケース13の配線空間33の内部に水が侵入したとしても、侵入した水は、外底壁29に沿って流れる。配線空間33に侵入した水は、配線空間33における後方に向かう。本実施形態では、バッテリケース13の内面における後方且つ外底壁29に近い位置に水抜き穴38が設けられているので、侵入した水は水抜き穴38に向かって進み、結果的に水が水抜き穴38から排出される。本実施形態では、水抜き穴26、38は、収納空間25と配線空間33との両方において、空間内に侵入した水を排出するように設けられている。
【0033】
鞍乗車両1は、バッテリケース13の前方において、少なくとも一部がバッテリケース13と上下方向に重なるように配置された電装品を更に備えている。
図5、6及び7に、バッテリケース13の前方において、電装品が配置される電装品配置スペース39が示されている。電装品配置スペース39には、鞍乗車両1で用いられる電装品が配置される。
【0034】
本実施形態では、上述のように、バッテリケース13は下端から上方に進むにつれて後方に傾斜して車体フレーム4に取り付けられている。従って、バッテリケース13の前方に物を配置することができるスペースが生じる。従って、本実施形態では、バッテリケース13の前方に生じたスペースに電装品を配置することにより、電装品が配置されるスペースを新たに設ける必要が無い。そのため、鞍乗車両1内のスペースを効率的に利用することができる。従って、鞍乗車両1を小型化することができる。特に、本実施形態においては、ECUが、バッテリケース13の前方に生じた電装品配置スペース39に設けられる電装品に含まれる。バッテリケース13の前方の電装品配置スペース39にECUを含む電装品を設けることにより、走行風を直接的に受けるスペースにECUを設けることができる。従って、走行風によってECUを効率的に冷却することができる。特に、ECUは鞍乗車両1の走行に伴って発熱し易いので、走行風によってECUを冷却することにより、鞍乗車両1の走行中においてもECUの温度を適切な温度とすることができる。
【0035】
バッテリ14をバッテリケース13に収納する際には、
図6に示されるように、挿入口40を覆う外蓋53が開けられる。外蓋53が開けられると、バッテリケース13の上方の蓋42が取り外される。外蓋53が開けられ、蓋42が取り外されると、外部からバッテリケース13の収納空間25の内部にアクセスすることができる。バッテリ14が、ベース52の前後方向内側の挿入口40を通り、バッテリケース13の開口21を通って、バッテリケース13の収納空間25に配置される。それから、バッテリケース13の収納空間25にバッテリ14が収納された状態で蓋42がバッテリケース13の上方に取り付けられ、挿入口40を外蓋53によって閉じることにより、バッテリケース13へのバッテリ14の収納が完了する。
【0036】
図9を参照して、バッテリケース13の傾斜について説明する。バッテリケース13の開口21が上方かつ後方に斜めに向くようにバッテリケース13が鉛直方向に対して傾斜しているので、バッテリケース13の上端の開口21の中心と、内底壁28の中心とを結ぶ線L1が傾斜している。バッテリケース13にバッテリ14を挿入する際には、バッテリ14が中心線L1に沿ってバッテリケース13の内部に挿入される。このときの線L1に沿ってバッテリ14がバッテリケース13に挿入される方向を、バッテリケース13におけるバッテリ14の挿入方向D2と言うものとし、このときの線L1において、鉛直方向に延びる線L5に対して傾斜した角度を挿入角度θ1と言うものとする。バッテリケース13が挿入角度θ1だけ傾いて鞍乗車両1に配置されているので、バッテリケース13の外壁の前面13aが鉛直方向に対して傾いている。また、フロントフォーク5の長手方向D4に沿う線を線L2とし、線L2において、鉛直方向に延びる線L5に対して傾斜した角度を傾斜角度θ2と言うものとする。本実施形態においては、バッテリケース13におけるバッテリ14の挿入角度θ1と、フロントフォーク5の長手方向D4の鉛直方向に対する傾斜角度θ2とが同じ角度となるように、鞍乗車両1が構成されている。これにより、バッテリ14をバッテリケース13に収納する際の、バッテリ14におけるバッテリケース13の開口21への挿入方向D2が、フロントフォーク5の長手方向D4と同じ方向となるように、鞍乗車両1が構成されている。
【0037】
バッテリケース13におけるバッテリ14の挿入角度θ1と、フロントフォーク5の長手方向D4の傾斜角度θ2とが同じ角度で傾斜しているので、フロントフォーク5が伸縮し、それに伴ってフロントフェンダ19が移動したとしても、フロントフェンダ19の後端19aとバッテリケース13の前面13aとの、挿入方向D2に直交する直交方向D3についての隙間の長さg1が維持されたままフロントフェンダ19が移動する。従って、直交方向D3において、フロントフェンダ19がバッテリケース13の前面13aに近づく方向に移動することが抑えられる。
図9において、バッテリケース13の前面13aの延びる方向に沿う線を線L3とし、フロントフェンダ19の前端19aがフロントフォーク5の伸縮に連動する移動軌跡の延びる方向に沿う線を線L4とする。
【0038】
フロントフェンダ19が移動する際に、直交方向D3において、フロントフェンダ19の後端19aとバッテリケース13の前面13aとの隙間の長さg1が維持されるので、フロントフェンダ19の移動量がどんなに大きくなったとしても、それによってフロントフェンダ19とバッテリケース13とが干渉することが抑えられる。バッテリケース13とフロントフォーク5とが同じ角度傾斜し、バッテリケース13の前面13aがフロントフォーク5の後方にあることから、バッテリケース13の前面13aは、フロントフォーク5の伸縮に連動するフロントフェンダ19における前端19aの移動軌跡よりも後方に配置される。そのため、バッテリケース13の配置位置がフロントフェンダ19との干渉によって制限されることが抑えられ、鞍乗車両1の設計の自由度が向上する。
【0039】
特に、鞍乗車両1においてバッテリケース13を低い位置に配置したとしてもフロントフェンダ19とバッテリケース13とが干渉することが抑えられるので、バッテリケース13の配置位置を低くすることができる。一般的に、鞍乗車両1において、バッテリケース13の内部に収納されるバッテリ14は重量物になる。重量物であるバッテリ14を低い位置に配置することができるので、鞍乗車両1を低重心化させることができる。
【0040】
バッテリケース13を低い位置に配置することができるので、本実施形態では、バッテリケース13の下端13bがモータMの上端Mcよりも下方に位置するようにバッテリケース13が配置されている。バッテリケース13の下端13bは、鞍乗り車両1の前後方向において、フロントフォーク5とモータMとの間に配置されている。また、本実施形態では、バッテリケース13の上部がバッテリケース13の下部よりも後方に位置するので、バッテリケース13の上部をモータMに近づけて配置することができる。具体的には、バッテリケース上部の後端部は、モータの前端部よりも後方に位置する。すなわち上面視において、上下方向にバッテリケースの一部とモータの一部とが重なる。これによって、バッテリケースが鉛直に配置される場合に比べて、バッテリ14の重心G1を、鞍乗車両1における車体重心G2(言い換えるとロール軸)に近づけて配置することができる。運転者は、鞍乗車両1を用いて旋回走行する場合には、体重移動によって、車体をロール軸まわりに角変位させる。この場合に、バッテリ重心G1が車体重心G2に近づいているために、車体をロール軸まわり旋回させるのに必要な回転モーメントを小さくすることができる。これによって車両を姿勢変化させる際の操作性の向上を図ることができる。またロール軸だけではなく、車両重心G2にバッテリ重心G1が近付くことで、車体が車両重心G2まわりに姿勢変化(ピッチ、ヨー、ロール軸周り)する場合の慣性を小さくすることができる。このようにして、運転者または車両から与えられる力に基づいた車両の姿勢変化を速めることができるので、鞍乗車両1の運動性能を向上させることができる。このように、鞍乗車両1を低重心化すると共に、バッテリ14の重心位置G1を鞍乗車両1の重心位置G2に近接させてバッテリ14を配置することができるので、鞍乗り車両1の操作性を向上させることができると共に、鞍乗車両1の運転フィーリングを向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態においては、バッテリケース13の下端13bが駆動モータMのモータケースMaの下端Mdよりも上方となるように、バッテリケース13が鞍乗車両1に配置されている。バッテリケース13の下端13bがモータケースMaの下端Mdよりも上方の位置にあるので、バッテリケース13よりも先にモータケースMaが、車体下方の障害物に接触する可能性が高い。従って、バッテリケース13が障害物に接触することを抑えることができ、バッテリケース13内部のバッテリ14をより確実に保護することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、バッテリケース13が鞍乗車両1の低い位置に配置されているので、バッテリケース13の内部に収納された状態のバッテリの上端位置14aが、シート12の下端12aよりも下方に位置している。また、本実施形態においては、バッテリケース13の上側の後端13cは、駆動モータMのモータケースMaの前端Meよりも後方に配置されている。また、本実施形態においては、バッテリケース13の上側の後端13cは、シート前端12bよりも前方に配置されている。
【0043】
なお、本実施形態においては、フロントフェンダ19が、フロントフォーク5の伸縮に伴って移動する。本実施形態では、鞍乗車両1は、バッテリケース13が傾斜することによりバッテリケース13とフロントフェンダ19との干渉を防止する形態について説明している。本実施形態として、フロントフォーク5の伸縮に伴って上下動する部品(連動部品)は、フロントフェンダ19以外のものであってもよい。例えば、ダウンフォースを得るための部品である空力パーツが連動部品であってもよい。この場合、フロントフォーク5の伸縮に伴って上下動する部位に取り付けられ、空力パーツの後端がバッテリケース13と近接するような位置にあるような場合に好適に適用できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、バッテリ14をバッテリケース13に収納する際のバッテリ14のバッテリケース13への挿入方向D2が、フロントフォーク5の長手方向D4と同じ方向である。これによって、バッテリケース13にバッテリ14を出し入れする際に、フロントフォーク5の上部に設けられる部品がバッテリ14の出し入れの動作の邪魔になることを抑えることができる。本実施形態においては、フロントフォーク5の上方に操舵軸7が設けられ、操舵軸7にハンドル11が取り付けられている。一般に、フロントフォーク5の延びる方向D4に沿って操舵軸7が延び、フロントフォーク5の延びる方向D4と操舵軸7の延びる方向とが同じ方向である。バッテリ14の挿入方向D2がフロントフォーク5の延びる方向D4と同じである場合には、バッテリ14の挿入方向D2と操舵軸7の延びる方向とがほぼ同じ方向となる。従って、バッテリ14をバッテリケース13に収納する際に、バッテリ14と操舵軸7とが干渉することを抑えることができる。これにより、操舵軸7がバッテリ14の収納作業の邪魔になることを抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、バッテリケース13は、下方に向かうにつれて内面が内側に向かうように構成されている。そのため、バッテリケース13の開口21が大きく形成され、バッテリケース13にバッテリ14を収納する際にバッテリ14を容易に収納させることができる。また、本実施形態においては、バッテリケース13内部の収納空間25における前面及び後面の上部に段差22が設けられているので、バッテリケース13の収納空間25の内部にバッテリ14を挿入する際にバッテリ14の挿入位置をある程度の範囲に位置決めすることができる。また、本実施形態においては、バッテリケース13内部の収納空間25における段差22の下部の前面及び後面が、下方に向かうにつれて互いに近づくテーパ状である。従って、バッテリケース13の内面がバッテリ14の挿入の際のガイド面として機能する。そのため、バッテリ14をバッテリケース13の内面に沿わせて挿入することにより、バッテリ14をバッテリケース13内の適正な設置位置に配置することができる。
【0046】
本実施形態においては、バッテリケース13の内底壁28に、収納空間25に向けて突出したケース側コネクタ31が設けられている。また、バッテリ14の下端には、バッテリ14がバッテリケース13に収納されたときにバッテリケース13の内底壁28に向けて突出するように、バッテリ側コネクタ32が設けられている。バッテリ14がバッテリケース13内の適正な位置に設置されると、ケース側コネクタ31とバッテリ側コネクタ32とが適切に接続されるように構成されている。本実施形態においては、バッテリ14がバッテリケース13内の適正な位置に設置されないと、ケース側コネクタ31とバッテリ側コネクタ32とが適切に接続されない。
【0047】
本実施形態によれば、バッテリケース13の収納空間の内部にバッテリ14を挿入する際に、段差22によってバッテリ14の挿入位置の位置決めを行うと共に、テーパ面24によってバッテリ14をガイドする。従って、バッテリ14の挿入過程において、バッテリ14をバッテリケース13の設置位置に導くことができ、バッテリ14を適正な設置位置に配置させることができる。従って、ケース側コネクタ31とバッテリ側コネクタ32とをより確実に適切に接続させることができる。また、バッテリ14を挿入する作業者は、バッテリ14とバッテリケース13との間の位置合わせする作業を簡易化できる。
【0048】
本実施形態によれば、外底壁29及び周壁30がワンピースの底蓋36として構成される。バッテリケース13の内底壁28及び底蓋36の合わせ面にシール部材37が介在している。これによって、内底壁28と底蓋36との間を通って配線空間33の内部に水が侵入することが抑えられる。また、バッテリケース13が傾斜して配置されると共に、配線空間33の内面における後方の位置に水抜き穴38が設けられている。仮に配線空間33に水が侵入したとしても、進入した水は水抜き穴38から排出される。従って、配線空間33の内部が高い防水性によって保護される。
【0049】
本実施形態によれば、仮に収納空間25に水が侵入しても進入した水は水抜き穴26から排出される。従って、収納空間25の内部が高い防水性によって保護される。
【0050】
本実施形態によれば、バッテリケース13の底部が二重底構造35を有するように構成されているので、バッテリケース13の底部55の強度を向上させることができる。本実施形態では、バッテリケース13が傾斜して配置されることにより、バッテリケース13の底部55が、比較的鞍乗車両1の前方を向いた姿勢で配置される。そのため、バッテリケース13の底部55が走行風による風圧を受け易い位置に配置されている。本実施形態では、二重底構造35によってバッテリケース13の底部55の強度が向上されているので、底部55が強い風圧を受けたとしてもバッテリケース13の耐久性が確保される。また、フロントフォーク5の伸縮によってバッテリケース13に負荷が作用したとしても、バッテリケース13におけるバッテリ14の挿入方向D2とフロントフォークの延びる方向とが同じ方向であるので、バッテリケース13に作用する負荷に対し底部が面によって受け止めることができる。従って、バッテリケース13の底部における単位面積当たりに作用する負荷を小さくすることができ、バッテリケース13の耐久性を向上させることができる。
【0051】
また、鞍乗車両1は、バッテリケース13の上方に配置され、物を収納可能なストレージ45を備えている。本実施形態においては、上述のように、バッテリケース13が傾斜して車体フレーム4に取り付けられ、それによってバッテリケース13を鞍乗車両1の低い位置に配置することができる。鞍乗車両1の内部で、バッテリケース13が相対的に低い位置に配置されるので、鞍乗車両1において、バッテリケース13の上方にスペースが生じる。従って、そのスペースを、物を収納可能なストレージ45として用いることができる。本実施形態においては、外蓋部材51における外蓋53の内部にストレージ45が設けられている。これにより、鞍乗車両1を高くすることなく、収納スペースとしてのストレージ45を鞍乗車両1に設けることができる。従って、鞍乗車両1が大型化することを抑えながら、使い勝手の良い鞍乗車両1とすることができる。本実施形態においては、外蓋53を開けることにより、ストレージ45の空間にアクセスすることができ、ストレージ45に物を収納すると共に、ストレージ45から物を取り出すことができる。ストレージ45に物を収納する場合には、バッテリケース13に蓋42が取り付けられた状態で、ストレージ45の内部に物を収納する。
【0052】
なお、本実施形態においては、バッテリケース13の前面13aは、フロントフォーク5が延びる方向と同じ方向に延びている形態について説明したが、これに限定されない。バッテリケース13の前面13aは、上方に向かうにつれてフロントフォーク5から後方へ離れる方向に延びていてもよい。これにより、フロントフェンダ19がフロントフォーク5と共に上下動したとしても、バッテリケース13とフロントフェンダ19とが干渉することを抑えることができる。
【0053】
また、上記実施形態においては、鞍乗車両1が自動二輪車である形態について説明したが、これに限定されない。鞍乗車両1は、車輪が1つであってもよく、また3つ以上であってもよい。鞍乗車両1は、少なくとも1つの車輪を備えていればよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、バッテリケース13へのバッテリ14の挿入方向D2が鉛直方向に対して傾斜した角度θ1と、フロントフォーク5の延びる方向が鉛直方向に対し傾斜した角度θ2とが同じ角度である形態について説明したが、これに限定されない。フロントフォーク5の傾斜した角度θ2よりも、バッテリケース13へのバッテリ14の挿入方向D2が鉛直方向に対して傾斜した角度θ1の方が大きく傾斜していてもよい。これにより、バッテリケース13の前面13aが、上方に向かうにつれてフロントフォーク5から後方へ離れる方向に延び、バッテリケース13が上方に向かうにつれてフロントフォーク5から遠ざかるようにバッテリケース13が配置される。従って、フロントフェンダ19がフロントフォーク5の伸縮に連動したとしても、バッテリケース13とフロントフェンダ19とが干渉することを抑えることができる。
【0055】
また、上記実施形態においては、バッテリケース13内面の前面及び後面の上部に段差22が設けられ、バッテリケース13内面の段差22下部の前面及び後面が、下方に向かうにつれて互いに近づくテーパ状に形成されている形態について説明したが、これに限定されない。バッテリケース13内面の前面及び後面に加え、バッテリケース13内面の両側面に段差22が設けられると共に、バッテリケース内面の段差22下部の前面及び後面に加え、バッテリケース内面の段差22下部の両側面が下方に向かうにつれて互いに近づくテーパ状に形成されてもよい。また、バッテリケース13内面の前面及び後面に段差22が設けられずに、バッテリケース13内面の両側面のみに段差22が設けられてもよい。また、バッテリケース13内面の前面及び後面はテーパ状に形成されずに、バッテリケース13内面の両側面のみがテーパ状に形成されてもよい。また、バッテリケース13は、バッテリケース13内面の上部に段差が設けられる構成、あるいは、バッテリケース13内面がテーパ状に形成されている構成のいずれか一方を有する構成であってもよい。また、バッテリケース13は、バッテリケース13内面の前面及び後面あるいは両側面のいずれか一方の上部に段差が設けられ、バッテリケース内面の前面及び後面あるいは両側面の他方がテーパ状に形成されている構成であってもよい。つまり、バッテリケース13内面において、段差22が設けられている面とテーパ状に形成されている面24とが異なる面であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、水抜き穴26は、バッテリケース13の後端部13dにおいて、側壁48においてバッテリ14の挿入方向D1に直交する方向に側壁48を貫通するように形成されているが、これに限定されない。収納空間25に侵入した水を外部に排出することができるのであれば、水抜き穴26は他の構成であってもよい。例えば、水抜き穴26が、内底壁28を、バッテリ14の挿入方向D1に沿って貫通するように形成され、収納空間25に侵入した水を外部に排出することができるように構成されていてもよい。その場合、水抜き穴26は、底蓋36に干渉しないように、底蓋36よりも外側の位置に形成されることが求められる。
【0057】
また、上記実施形態においては、水抜き穴38は、バッテリケース13の後端部13dにおいて、周壁30においてバッテリ14の挿入方向D1に直交する方向に周壁30を貫通するように形成されているが、これに限定されない。配線空間33に侵入した水を外部に排出することができるのであれば、水抜き穴38は他の構成であってもよい。例えば、水抜き穴38が、外底壁29を、バッテリ14の挿入方向D1に沿って貫通するように形成され、配線空間33に侵入した水を外部に排出することができるように構成されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、鞍乗車両1が、車輪に伝達される動力を発生する駆動源としてモータMを備えた形態について説明したが、これに限定されない。鞍乗り車両1は、モータ以外のものを駆動源として備えてもよい。例えば、鞍乗り車両1は、駆動源としてエンジンを備えていてもよい。また、駆動源は単一のものでなくてもよく、複数の駆動源で発生された駆動力を用いることによって鞍乗車両1が駆動されてもよい。また、鞍乗車両1が、駆動源としてモータMを備えていない場合には、バッテリ14に蓄えられた電力は、駆動源以外の電装品に供給されて、そこで使用されてもよい。
【0059】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0060】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0061】
[項目1]
車体フレームと、
少なくとも1つの車輪と、
前記車輪に伝達される動力を発生する駆動源と、
電力を蓄えるバッテリが収容される収納空間と、バッテリを出し入れするために前記収納空間を上方に開放する開口と、を含むバッテリケースと、を備え、
前記バッテリケースは、前記開口が上方かつ後方に斜めに向くように鉛直方向に対して傾斜しており、
前記バッテリケースの下端は、前記駆動源の前方空間に配置されて、前記駆動源の上端よりも下方に位置している、鞍乗車両。
【0062】
[項目2]
前記少なくとも1つの車輪は、前輪及び後輪を含み、
前記鞍乗車両は、前記車体フレームと前記前輪とを接続し、上方かつ後方に斜めに延びたフロントフォークであって、長手方向に伸縮することで前記車体フレームに伝わる衝撃を緩和するフロントフォークを更に備え、
前記バッテリケースの前記下端は、前記車両の前後方向において前記フロントフォークと前記駆動源との間に配置されており、
前記バッテリケースの前面は、前記フロントフォークの前記長手方向と同じ方向または上方に向かうにつれてフロントフォークから離れる方向に延びている、項目1に記載の鞍乗車両。
【0063】
[項目3]
前記少なくとも1つの車輪は、前輪及び後輪を含み、
前記鞍乗車両は、前記車体フレームと前記前輪とを接続し、上方かつ後方に斜めに延びたフロントフォークであって、長手方向に伸縮することで前記車体フレームに伝わる衝撃を緩和するフロントフォークを更に備え、
前記フロントフォークに接続されて、前記フロントフォークの伸縮に伴って前記フロントフォークとともに上下動する連動部品を更に備え、
前記バッテリケースの前面は、前記フロントフォークの伸縮に連動する連動部品の移動軌跡よりも後方に配置されている、項目1または2に記載の鞍乗車両。
【0064】
[項目4]
前記少なくとも1つの車輪は、前輪及び後輪を含み、
前記鞍乗車両は、前記車体フレームと前記前輪とを接続し、上方かつ後方に斜めに延びたフロントフォークであって、長手方向に伸縮することで前記車体フレームに伝わる衝撃を緩和するフロントフォークを更に備え、
前記バッテリの挿入方向は、前記フロントフォークの前記長手方向と同じ方向または上方に向かうにつれて前記フロントフォークから離れる方向である、項目1から3のいずれかに記載の鞍乗車両。
【0065】
[項目5]
前記バッテリケースの前記収納空間は、下方に向かうにつれて前記バッテリケースにおける前記バッテリの挿入方向に直交する断面の面積が縮小する、項目1から4のいずれかに記載の鞍乗車両。
【0066】
[項目6]
前記バッテリケースは、バッテリを支持する底壁を含み、
前記バッテリケースは、前記底壁が後方に向かうにつれて下方に向かうように傾斜するように傾斜し、
前記バッテリケースは、前記収納空間の下方かつ後方の角部に開口した水抜き穴が形成されている、項目1から5のいずれかに記載の鞍乗車両。
【0067】
[項目7]
前記バッテリケースの前方において、少なくとも一部が前記バッテリケースと上下方向に重なるように配置された電装品を更に備える、項目1から6のいずれかに記載の鞍乗車両。
【符号の説明】
【0068】
1 鞍乗車両
2 前輪(従動輪)
3 後輪(駆動輪)
4 車体フレーム(車体)
5 フロントフォーク
13 バッテリケース
14 バッテリ
19 フロントフェンダ(連動部品)
25 収納空間
33 配線空間
45 ストレージ
26、38 水抜き穴
M モータ(駆動源)