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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169932
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231124BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/155
A61P25/18
A61P31/14
A61P3/10
A61P25/00
A61P43/00 105
A61K31/506
A61K31/437
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081277
(22)【出願日】2022-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 公開1 ▲1▼発行日: 令和3年(2021)年7月21日 ▲2▼刊行物: The Journal of Biological Chemistry,(2021),Volume 297,Issue 2 ▲3▼公開者: 奥田翔平、佐藤真李子、加藤冴穂、長島駿、稲留涼子、柳茂、福田敏史 ▲4▼公開された発明の内容: 奥田翔平、佐藤真李子、加藤冴穂、長島駿、稲留涼子、柳茂及び福田敏史が、The Journal of Biological Chemistry 誌にて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (2) 公開2 ▲1▼ウェブサイトの掲載日: 令和3年(2021年)7月27日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス: https://www.toyaku.ac.jp/lifescience/newstopics/2021/0727_4578.html ▲3▼公開者: 学校法人東京薬科大学 ▲4▼公開された発明の内容: 学校法人東京薬科大学が、上記アドレスで公開されている東京薬科大学のウェブサイトにて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (3) 公開3 ▲1▼ウェブサイトの掲載日: 令和3年(2021年)7月27日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス: https://research-er.jp/articles/view/101624 ▲3▼公開者: 株式会社バイオインパクト ▲4▼公開された発明の内容: 株式会社バイオインパクトが、上記アドレスで公開されている日本の研究.comのウェブサイトにて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (4) 公開4 ▲1▼発行日: 令和3年(2021)年8月27日 ▲2▼刊行物: 科学新聞(2021年8月27日)第3839号 ▲3▼公開者: 株式会社科学新聞社 ▲4▼公開された発明の内容: 株式会社科学新聞社が、科学新聞にて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (5) 公開5 ▲1▼ウェブサイトの掲載日: 令和3年(2021年)8月30日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス: https://news.mynavi.jp/techplus/article/20210830-1959981/ ▲3▼公開者: 株式会社マイナビ ▲4▼公開された発明の内容: 株式会社マイナビが、上記アドレスで公開されているマイナビニュースのウェブサイトにて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (6) 公開6 ▲1▼ウェブサイトの掲載日: 令和3年(2021年)9月1日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス: http://saitama-ken.com/medical/13053/ ▲3▼公開者: 埼玉ネット ▲4▼公開された発明の内容: 埼玉ネットが、上記アドレスで公開されている埼玉ネットのウェブサイトにて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (7) 公開7 ▲1▼発行日: 令和4年(2022年)2月21日 ▲2▼刊行物: 東京薬科大学大学院 2021年度生命科学研究科生命科学専攻 修士学位論文発表会(開催場所:東京薬科大学内、オンライン(ZOOM)開催、開催日時:令和4年2月25日)の要旨集 ▲3▼公開者: 田邉基 ▲4▼公開された発明の内容: 田邉基が、東京薬科大学大学院 2021年度生命科学研究科生命科学専攻 修士学位論文発表会の要旨集にて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (8) 公開8 ▲1▼開催日: 令和4年(2022)年2月25日 ▲2▼集会名、開催場所: 東京薬科大学大学院 2021年度生命科学研究科生命科学専攻 修士学位論文発表会、東京薬科大学内、オンライン(ZOOM)開催 ▲3▼公開者: 田邉基 ▲4▼公開された発明の内容: 田邉基が、東京薬科大学大学院 2021年度生命科学研究科生命科学専攻 修士学位論文発表会にて、福田敏史及び田邉基が発明した、「医薬組成物」に関する研究の一部を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】592068200
【氏名又は名称】学校法人東京薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】福田 敏史
(72)【発明者】
【氏名】田邉 基
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA18
4C084ZB22
4C084ZB33
4C084ZC20
4C084ZC35
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086CB05
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA18
4C086ZB22
4C086ZB33
4C086ZC20
4C086ZC35
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA18
4C206ZB22
4C206ZB33
4C206ZC20
4C206ZC35
4C206ZC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物を含む医薬組成物であって、前記化合物が、
(a)メトホルミン、
(b)ユビキチン付加酵素阻害剤、
(c)CAMDI分解阻害剤、および、
(d)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
から選択される、前記医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための医薬組成物であって、
CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記CAMDI遺伝子の発現が、前記対象の脈絡叢において低下している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物が、
(a)下記:
【化1】
(式中、
基RおよびRは、水素、C1~C6アルキル基(ここでアルキル基は、ハロゲンまたは芳香族で置換されていてもよい)または芳香環(ここで芳香環はハロゲンで置換されていてもよい)であり、
基RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基である。)
の構造を有する化合物、
(b)ユビキチン付加酵素阻害剤、
(c)CAMDI分解阻害剤、および、
(d)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
精神疾患、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症、新型コロナウィルス感染症の後遺症および糖尿病から選択される疾患の予防および/または治療用の、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記対象の社会性臨界期に投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記CAMDI遺伝子の発現が、前記対象の脈絡叢において低下しているが、前記対象の脳においては低下していない、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記CAMDI遺伝子の発現が低下した対象が:
精神疾患、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症または新型コロナウィルス感染症の後遺症に罹患しているか、あるいは、
新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症および糖尿病の双方に罹患している、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
脈絡叢および/または大脳皮質神経細胞の分化および/または成熟経路を調節する組成物であって、
前記経路は、CAMDI遺伝子、CAMDIタンパク質、Cdc20、APC/Cおよびユビキチン付加酵素阻害剤を含み、
前記組成物が、CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物を含み、
前記CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物が、
(a)下記:
【化2】
(式中、
基RおよびRは、水素、C1~C6アルキル基(ここでアルキル基は、ハロゲンまたは芳香族で置換されていてもよい)または芳香環(ここで芳香環はハロゲンで置換されていてもよい)であり、
基RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基である。)
の構造を有する化合物、
(b)ユビキチン付加酵素阻害剤、
(c)CAMDI分解阻害剤、および、
(d)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
から選択される、組成物。
【請求項9】
前記経路が、ZO-1遺伝子、ZO-1タンパク質、Cldn2遺伝子、Cldn2タンパク質、TTR遺伝子、TTRタンパク質およびチューブリンから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(i)対象の脈絡叢における、CAMDI、TTR、ZO-1、Cldn2、ICAM1およびTNFAIP3からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定する工程と、
(ii)測定した前記遺伝子の発現量と、健常者の脈絡叢における前記遺伝子の発現量とを比較する工程と
を含む、精神疾患のリスクの評価方法。
【請求項11】
前記工程(i)が、脳脊髄液中の前記遺伝子の発現を測定することにより行われる、請求項10に記載の評価方法。
【請求項12】
前記工程(ii)において、前記対象の前記遺伝子の発現量が、前記健常者の前記遺伝子の発現量よりも多い、請求項10または11に記載の評価方法。
【請求項13】
CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための、医薬組成物であって、
ビグアニド系化合物、ユビキチン付加酵素阻害剤およびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤から選択される少なくとも1つを含む、医薬組成物。
【請求項14】
前記ビグアニド系化合物が、メトホルミンであり、
前記ユビキチン付加酵素阻害剤が、Apcinであり、
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、ツバスタチンAである、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
精神疾患は、脳の機能的または器質的問題によって生じる疾患の総称である。精神疾患発症の要因の1つとして、脳の発達異常、例えば、神経幹細胞からの分裂、細胞移動、シナプス形成、および、興奮/抑制のバランスの異常が考えられている。また、精神疾患以外にも、脳の機能的または器質的問題に起因する症状および疾患を有する患者も存在すると考えられる。
【0003】
精神疾患の治療には、現在のところ、対症療法しか実現されておらず、根本的治療法の確立が喫緊の課題となっている。また、その他の疾患についても、代替の治療手段の需要が存在するものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、スコットランドの精神疾患多発単一家系の遺伝子解析によって同定されている、精神疾患に関連する遺伝子DISC1(参考文献1)について研究を行い、DISC1タンパク質に結合するタンパク質CAMDI(Coiled-coil protein Associated with Myosin IIa and DISC1)が存在することを見出した。CAMDI遺伝子は、自閉症の原因ゲノム領域の1つとして知られる2q31.2に存在している。CAMDIは胎児大脳の神経細胞の移動を制御している(参考文献2および3)。本発明者らはこれまでに、CAMDI遺伝子欠損マウスは社会性の異常を含む自閉症様の行動になり、その行動の一部を胎生期の薬剤投与で改善できること、認知および記憶が異常になることなどを報告している(参考文献4および5)。
【0006】
CAMDI遺伝子欠損マウスを用いて網羅的な発現解析を行ったところ、脳脊髄液を産生し血液-脳脊髄液関門を形成している脈絡叢で特異的に発現する遺伝子の減少が認められた(図4図6A図6B)。分化および成熟マーカー遺伝子の発現も減少していることから、「脈絡叢の未成熟」が想定された。さらに、臨界期(獲得すべき能力は適切な刺激を適切な時期に受ける必要があるとされる期間)の制御に必要である遺伝子の発現が減少していた。
【0007】
そこで、本発明者らは、脈絡叢でのみCAMDI遺伝子を欠損したマウスを作製したところ、このマウスは社会性の臨界期の異常と社会性の異常とを含む自閉症様の行動を示した(図1~3)。網羅的な遺伝子発現の解析から、脈絡叢の密着結合が破壊されることで炎症を起こしていること、その結果、血液成分が漏出し血液-脳脊髄液関門としての機能が失われていることが明らかとなった(図4~6)。
【0008】
本発明者らはさらに鋭意研究を進め、CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物が、CAMDI遺伝子欠損マウスにおいて、社会性および社会性認知を改善すること(図7)、脈絡叢成熟を改善すること、および、大脳皮質神経細胞の移動異常を改善することを明らかにした(図8~11)。これらの結果は、CAMDIタンパク質の代謝回転の調節を介した、脈絡叢および血液-脳脊髄液関門の改善、ならびに、大脳皮質神経細胞の移動の正常化に基づく、精神疾患の治療および/または予防の根本的治療の可能性を示唆する。本発明は、かかる知見に基づき成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は以下のとおりである:
[1]CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための医薬組成物であって、
CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物を含む、医薬組成物。
[2]前記CAMDI遺伝子の発現が、前記対象の脈絡叢において低下している、[1]または[2]に記載の医薬組成物;
[3]前記CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物が、
(a)下記:
【化1】
(式中、
基RおよびRは、水素、C1~C6アルキル基(ここでアルキル基は、ハロゲンまたは芳香族で置換されていてもよい)または芳香環(ここで芳香環はハロゲンで置換されていてもよい)であり、
基RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基である。)
の構造を有する化合物、
(b)ユビキチン付加酵素阻害剤、
(c)CAMDI分解阻害剤、および、
(d)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
から選択される、[1]または[2]に記載の医薬組成物;
[4]精神疾患、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症、新型コロナウィルス感染症の後遺症および糖尿病から選択される疾患の予防および/または治療用の、[1]または[2]に記載の医薬組成物;
[5]前記対象の社会性臨界期に投与される、[1]または[2]に記載の医薬組成物;
[6]前記CAMDI遺伝子の発現が、前記対象の脈絡叢において低下しているが、前記対象の脳においては低下していない、[1]または[2]に記載の医薬組成物;
[7]前記CAMDI遺伝子の発現が低下した対象が:
精神疾患、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症または新型コロナウィルス感染症の後遺症に罹患しているか、あるいは、
新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症および糖尿病の双方に罹患している、[1]または[2]に記載の医薬組成物;
[8]脈絡叢および/または大脳皮質神経細胞の分化および/または成熟経路を調節する組成物であって、
前記経路は、CAMDI遺伝子、CAMDIタンパク質、Cdc20、APC/Cおよびユビキチン付加酵素阻害剤を含み、
前記組成物が、CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物を含み、
前記CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物が、
(a)下記:
【化2】
(式中、
基RおよびRは、水素、C1~C6アルキル基(ここでアルキル基は、ハロゲンまたは芳香族で置換されていてもよい)または芳香環(ここで芳香環はハロゲンで置換されていてもよい)であり、
基RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基である。)
の構造を有する化合物、
(b)ユビキチン付加酵素阻害剤、
(c)CAMDI分解阻害剤、および、
(d)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
から選択される、組成物;
[9]前記経路が、ZO-1遺伝子、ZO-1タンパク質、Cldn2遺伝子、Cldn2タンパク質、TTR遺伝子、TTRタンパク質およびチューブリンから選択される少なくとも1つをさらに含む、[8]に記載の組成物;
[10](i)対象の脈絡叢における、CAMDI、TTR、ZO-1、Cldn2、ICAM1およびTNFAIP3からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定する工程と、
(ii)測定した前記遺伝子の発現量と、健常者の脈絡叢における前記遺伝子の発現量とを比較する工程と
を含む、精神疾患のリスクの評価方法;
[11]前記工程(i)が、脳脊髄液中の前記遺伝子の発現を測定することにより行われる、[10]に記載の評価方法;
[12]前記工程(ii)において、前記対象の前記遺伝子の発現量が、前記健常者の前記遺伝子の発現量よりも多い、[10]または[11]に記載の評価方法;
[13]CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための、医薬組成物であって、
ビグアニド系化合物、ユビキチン付加酵素阻害剤およびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤から選択される少なくとも1つを含む、医薬組成物;
[14]前記ビグアニド系化合物が、メトホルミンであり、
前記ユビキチン付加酵素阻害剤が、Apcinであり、
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、ツバスタチンAである、[13]に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】脈絡叢特異的CAMDI遺伝子欠損(cKO)マウスの脈絡叢でのCAMDI mRNAの遺伝子発現量(左図、A)および大脳皮質でのCAMDI mRNAの発現量(右図、B)を示す図である。
図2】社会性臨界期の試験の概要を示す図である。
図3】コントロールマウス(左図、A)およびcKOマウス(右図、B)を用いた社会性臨界期の試験結果を示す図である。
図4】メトホルミン投与によるTTR mRNAの発現量の変化を示す図である。
図5】メトホルミン投与による血液-脳脊髄液関門のバリア機能の回復を示す図である。
図6】メトホルミン投与による各種遺伝子の発現量の変化を示す図である。ZO-1 mRNA(図6A)、Cldn2 mRNA(図6B)、CAMDI mRNA(図6C)、ICAM1 mRNA(図6D)、TNFAIP3 mRNA(図6E)。
図7】メトホルミン投与による社会性および社会的認知の変化を示す図である。
図8】FLAG-CAMDIおよびEGFP-Cdc20をトランスフェクションした、ヒト胎児腎臓由来株HEK293細胞の共免疫沈降の結果を示す図である。
図9】FLAG-CAMDIをトランスフェクションしたのち共免疫沈降をしたサンプルを用いた、ウェスタンブロットを示す図である。
図10】FLAG-CAMDIおよびEGFP-Cdc20をトランスフェクションした、ヒト胎児腎臓由来株HEK293細胞に対し、Apcinを添加した結果を示す図である。
図11】EGFP-CAMDIマウス(左図、A)、Apcin添加したEGFP-CAMDIマウス(中央図、B)およびEGFP-CAMDI A123変異体(右図、C)を遺伝子導入したマウスにおけるEGFPの蛍光強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本発明の第一の側面は、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための医薬組成物であって、CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物を含む、医薬組成物に関する。
【0014】
ここで、「CAMDI遺伝子の発現」に関し、「低下」とは、健常対象におけるCAMDI遺伝子の発現量と比較して低下していることを意味する。ここで、「低下」とは、CAMDI遺伝子の発現量が、健常対象におけるCAMDI遺伝子の発現量に対して、例えば、1.1倍未満、0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍以下に低下していることをいう。CAMDI遺伝子の発現量は、当業者に公知の方法を利用して測定することができ、例えば、mRNA量については、定量PCR法を用いることにより、また、タンパク質量については、ウェスタンブロット法、組織免疫染色法または質量分析法を用いることによって測定することができる。
【0015】
「CAMDIタンパク質の代謝回転」とは、CAMDI遺伝子が翻訳されてCAMDIタンパク質が生成され、生成されたタンパク質が分解されるまでをいう。具体的には、生成されたCAMDIタンパク質が安定化された後、神経細胞が移動する際にその進行方向に形成される「ダイレーション」と称される膨らみ、および、中心体に、CAMDIタンパク質が集積する。ダイレーションに中心体が侵入すると、CAMDIタンパク質の集積が最も高くなり、神経細胞が移動する。神経細胞の移動が完了するとCAMDIタンパク質は、Cdc20-APC/Cにより分解される。CAMDIタンパク質が分解されると、神経細胞は、次の移動サイクルへと進む。よって、「CAMDIタンパク質の代謝回転」とは、CAMDI遺伝子が翻訳されてCAMDIタンパク質が生成され、生成されたCAMDIタンパク質がCdc20-APC/Cによって分解されるまでをいう。本明細書において、CAMDIタンパク質に関し、「代謝回転」の語は、「ターンオーバー」と互換可能に使用される。
【0016】
「CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物」には、CAMDIタンパク質の代謝回転を促進させる化合物、および、当該代謝回転を遅延させる化合物を含む。「CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物」は、好ましくは、CAMDIタンパク質の代謝回転を促進させる化合物である。
【0017】
「CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物」の語は、最も広い意味で使用され、脈絡叢および/または大脳皮質神経細胞の分化および/または成熟経路(以下、単に「経路」とも称する。)に関与する化合物および細胞のいずれか1つ以上の生物学的活性を阻害する化合物が含まれるものとする。ここで、「分化および/または成熟」の語は、未分化な脈絡叢上皮前駆細胞から機能的に成熟した最終分化細胞への過程の少なくとも一部をいい、脈絡叢および/または大脳皮質神経細胞の「分化」、「成熟」ならびに「分化および成熟」を包含する。
【0018】
本明細書において、「脈絡叢および/または大脳皮質神経細胞の分化および/または成熟経路」は、CAMDI遺伝子、CAMDIタンパク質、Cdc20、APC/Cおよびユビキチン付加酵素阻害剤を含むものである。好ましい態様において、Cdc20とAPC/Cとは、複合体「Cdc20-APC/C」を形成している。当該経路は、ZO-1遺伝子、ZO-1タンパク質、Cldn2遺伝子、Cldn2タンパク質、TTR遺伝子、TTRタンパク質およびチューブリンから選択される少なくとも1つをさらに含む。チューブリンは好ましくは、アセチル化されたチューブリンである。当該「経路」は、好ましくは、神経幹細胞からの非対称分裂、移動およびシナプスとの回路網形成をさらに含む。より具体的には、当該「経路」は、例えば、神経幹細胞、未成熟神経細胞、神経細胞への分化、神経細胞の目的部位までの移動と停止、神経突起の形成、他の細胞とのシナプス形成と不必要なシナプスの除去(臨界期で旺盛に行われる)、成熟した回路網の形成、および行動の制御を含む。
【0019】
「CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物」は、例えば、
(a)下記:


【化3】
(式中、R、R、RおよびRについては後述する。)
の構造を有する化合物、
(b)ユビキチン付加酵素阻害剤、
(c)CAMDI分解阻害剤、および、
(d)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
である。
【0020】
(a)の群の化合物は、式(I)で表される化合物である。式(I)中、基RおよびRは、水素、C1~C6アルキル基(ここでアルキル基は、ハロゲンまたは芳香族で置換されていてもよい)または芳香環(ここで芳香環はハロゲンで置換されていてもよい)であり、基RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基である。好ましくは、基RおよびRは、水素、C1~C4アルキル基(ここでアルキル基は、ハロゲンまたはベンゼン環で置換されていてもよい)または芳香環(ここで芳香環はハロゲンで置換されていてもよい)であり、基RおよびRは、水素またはメチル基である。
【0021】
(a)の群の化合物としては、例えば、ビグアニド、メトホルミン、ブホルミン、フェンホルミン、プログアニルおよびクロロプログアニルが挙げられる。
【0022】
(b)の群の化合物は、ユビキチン付加酵素阻害剤である。例えば、APC/C阻害剤、具体的には、ApcinおよびTosyl-L-Arginine Methyl Ester(TAME)が挙げられる。例えば、APC/Cは、CAMDIタンパク質の分解に関与する。いかなる理論に拘束されることも意図しないが、ApcinがAPC/Cを阻害することで、CAMDIタンパク質の分解が阻害され、CAMDIの安定化に伴って脈絡叢の機能が改善すると考えられる。
【0023】
(c)の群の化合物は、CAMDI分解阻害剤である。(c)の群の化合物には、具体的には、CAMDIの分解に関与する分子または細胞の活性を阻害する化合物が含まれる。例えば、CAMDIを分解する分子に対する中和抗体、当該分子に結合するアプタマー、当該分子の全体もしくはそのサブユニットをコードする遺伝子の翻訳および転写の少なくとも一方を阻害することのできる核酸分子(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、デコイおよびリボザイム)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
(d)の群の化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素(Histone deacetylase inhibitor;HDAC)阻害剤である。(d)の群の化合物としては、例えば、HDAC6特異的阻害剤であるツバスタチンA、ボリノスタット(SAHA)およびパノビノスタットが挙げられる。
【0025】
先述のとおり、本発明者らは、CAMDI遺伝子欠損マウスの網羅的な発現解析により、脳脊髄液を産生し、血液-脳脊髄液関門を形成している脈絡叢で特異的に発現する遺伝子が減少していることを見出した(図1)。さらには、定量PCR法により、脳での発現には影響を与えることなく、脈絡叢でのみCAMDI遺伝子の欠損を確認した(図1)。したがって、好ましい一態様において、CAMDI遺伝子の発現は、対象の脈絡叢において低下している。より好ましい一態様において、CAMDI遺伝子の発現は、対象の脈絡叢において低下しているが、脳においては低下していない。脈絡叢における遺伝子の発現は、例えば、脳脊髄液中の遺伝子の発現量を測定することにより行われる。
【0026】
「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物である。本明細書において、「哺乳動物」の語は、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を指すために使用され、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌおよびネコが含まれるが、これらに限定されない。本明細書において、「対象」は、好ましくはヒトである。
【0027】
一態様において、本発明にかかる医薬組成物は、精神疾患の予防および/または治療用の医薬組成物である。精神疾患は、特に、CAMDI遺伝子の発現の低下を伴う精神疾患である。精神疾患としては、例えば、自閉症および発達障害、ならびに、社会性行動の障害を伴う精神疾患全般が包含される。
【0028】
別の態様において、本発明にかかる医薬組成物は、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症の予防および/または治療用の医薬組成物である。例えば、新型コロナウィルスが脈絡叢に感染して炎症を起こし血液-脳脊髄液を破壊すること、および、新型コロナウィルス感染による遺伝子発現と精神疾患で見られる遺伝的変異との関連性が報告されている(参考文献7、8および9)。
【0029】
さらに別の態様において、本発明にかかる医薬組成物は、新型コロナウィルス感染症の後遺症の予防および/または治療用の医薬組成物である。例えば、新型コロナウィルスに感染した患者の後遺症として、ブレインフォグと呼ばれる、記憶および/または認知の障害など、精神的な症状が報告されている(参考文献10および11)。
【0030】
別の態様において、本発明にかかる医薬組成物は、糖尿病、特に2型糖尿病の予防および/または治療用の医薬組成物である。例えば、2型糖尿病患者であって、新型コロナウィルスに感染しており、糖尿病の治療のためにメトホルミン投与を受けている場合、死亡率が低下することが報告されている(参考文献12)。すなわち、本発明にかかる医薬組成物は、糖尿病および新型コロナウィルス感染症の双方に罹患している患者の治療にも使用できることが期待される。よって、本発明にかかる医薬組成物は、糖尿病および新型コロナウィルス感染症の双方に罹患している患者の治療用の医薬組成物である。
【0031】
一態様において、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、精神疾患に罹患している。別の一態様において、脈絡叢におけるCAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、精神疾患に罹患している。
【0032】
一態様において、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症に罹患している。別の一態様において、脈絡叢におけるCAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症に罹患している。
【0033】
一態様において、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、新型コロナウィルス感染症の後遺症に罹患している。別の一態様において、脈絡叢におけるCAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、新型コロナウィルス感染症の後遺症に罹患している。
【0034】
一態様において、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、糖尿病および新型コロナウィルス感染症に罹患している。別の一態様において、脈絡叢におけるCAMDI遺伝子の発現が低下した対象は、糖尿病および新型コロナウィルス感染症の双方に罹患している。ここで、糖尿病は特に2型糖尿病である。
【0035】
すなわち、本発明に関連して、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象は:
精神疾患、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症または、新型コロナウィルス感染症の後遺症に罹患しているか、あるいは、
新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症および糖尿病の双方に罹患している。
【0036】
本明細書において、精神疾患に関し、「治療」の語は、症状の改善、回復および進行の防止を含むものとする。精神疾患の「治療」には、例えば、社会性の獲得および社会性の回復、ならびに、組織の炎症の減少、破壊の回復、炎症の減速、破壊の減速、炎症の遅延および破壊の遅延などが含まれるが、これらに限定されない。精神疾患の「治療」は、当該分野で公知の方法に従って評価することができ、例えば、社会性行動の改善および組織の回復等によって評価することができる。社会性行動の改善は、例えば、社会性試験を行うことによって、評価することができる。組織の回復は、例えば、組織染色および画像診断を用いて評価することができる。ここで、組織には、脈絡叢、血液-脳脊髄液関門、神経細胞、特に大脳皮質神経細胞などが挙げられる。組織の回復は、例えば、従来、アルツハイマー病など脳疾患において評価および治療に用いられているように、脳脊髄液に基づいて評価されてもよい。具体的には、脳脊髄液成分の生化学的解析によって評価されてもよい。また、精神疾患の「治療」は、大脳皮質神経細胞の移動の正常化によっても評価することができる。
【0037】
また、本明細書において、精神疾患に関し、「予防」の語は、精神疾患を予防することに加え、抑制すること、遅らせること、および軽減することを包含するものとする。本発明に関連して、精神疾患の「予防」は、組織の炎症の減少、破壊の回復、炎症の減速、破壊の減速、炎症の遅延および破壊の遅延などが含まれるが、これらに限定されない。精神疾患の「予防」は、当該分野で公知の方法に従って評価することができ、例えば、組織の回復等によって評価することができる。具体的には、「予防」は、脳脊髄液成分の生化学的解析によって評価することができる。
【0038】
精神疾患の「治療」および「予防」は、脈絡叢、脳および神経細胞等に高発現する遺伝子を指標として評価することもできる。組織に高発現している遺伝子は、例えば、免疫蛍光染色法、ELISA法、質量分析法およびRT-PCR法によって確認することができる。
【0039】
本発明者らは、作製したモデルマウスの自閉症様行動が、脈絡叢の未成熟による社会性臨界期の異常に起因することを示した(図2、3および6)。また、メトホルミン(Metformin)を生後7日から21日目(授乳期に相当、直後から社会性の臨界期が開始する)に仔マウスに投与し、生後56日目(成体)で確認したところ、炎症の低下に加えて密着結合関連遺伝子の発現や血液-脳脊髄液関門の機能が回復し、さらに社会性の行動が有意に改善されたことを見出した(図5、6および7)。したがって、本発明にかかる医薬組成物は、対象の社会性臨界期前後に投与されることが好ましい。例えば、対象がマウスの場合、本発明にかかる医薬組成物は、対象の生後35日目の前後、具体的には生後15日目~55日目の間、好ましくは生後21日目~49日目の間に投与されることが好ましいが、この期間に限定されない。例えば、対象がヒトの場合、自閉症などの発達障害に関しては、3~5歳前後、具体的には1歳~7歳の間、好ましくは1歳~5歳、より好ましくは1.5歳~3歳に投与されることが好ましいが、この期間に限定されない。
【0040】
臨界期とは、獲得すべき能力は適切な刺激を適切な時期に受ける必要があるとされる期間をいう。したがって、社会性臨界期とは、社会性を獲得すべき能力は適切な刺激を適切な時期に受ける必要があるとされる期間である。
【0041】
本発明に係る医薬組成物には、典型的には、製薬上に許容される添加剤、例えば、当該分野で既知の賦形剤、結合剤、滑沢剤、溶剤、希釈剤、安定化剤、等張化剤などを含んでよい。本発明に係る医薬組成物は、例えば、経口、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内により投与することができるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の第二の側面は、脈絡叢および/または大脳皮質神経細胞の分化および/または成熟経路を調節する組成物に関する。当該経路は、第一の側面に関して説明した、先述の構成要素を含んでよい。当該組成物は、CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物を含む。CAMDIタンパク質の代謝回転を調節する化合物については、上述したとおりである。
【0043】
本発明の第三の側面は、精神疾患のリスクの評価方法に関し、当該評価方法は、以下の工程:
(i)対象の脈絡叢におけるCAMDI、TTR、ZO-1、Cldn2、ICAM1およびTNFAIP3からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定する工程と、
(ii)測定した前記遺伝子の発現量と、健常者の脈絡叢における前記遺伝子の発現量とを比較する工程と
を含む。
【0044】
本評価方法において、工程(i)は、典型的には、脳脊髄液中の前記遺伝子を測定することによって行われる。測定には、当該分野において公知の方法が用いられ、例えば、免疫蛍光染色法、ELISA法、質量分析法および、RT-PCR法を用いることができる。
【0045】
工程(ii)における比較において、工程(i)で測定したCAMDI遺伝子の発現量が、健常者の脈絡叢におけるCAMDI遺伝子の発現量よりも増加している場合、精神疾患のリスクが存在すると同定する。
【0046】
工程(ii)では、例えば、前記対象の前記遺伝子の発現量が、前記健常者の前記遺伝子の発現量よりも多く、典型的には、前記対象の前記遺伝子の発現は検出されるが、健常者の前記遺伝子の発現は、検出されない。
【0047】
上記のリスクの評価方法を実施する時期としては、特に限定されず、疾患によって異なるが、対象がヒトの場合、例えば、1歳~30歳の間に行われる。自閉症などの発達障害の場合は、例えば、1歳~5歳、好ましくは、1.5歳~3歳の間に行うことが好ましい。また、統合失調症などの場合、思春期から成人早期(20代)での発症が多いとされており、例えば、1歳~40歳、好ましくは、10歳~25歳の間に行うことが好ましい。
【0048】
本発明の更なる側面は、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象に投与するための、医薬組成物であって、ビグアニド系化合物、ユビキチン付加酵素阻害剤およびビグアニド系化合物から選択される少なくとも1つを含む、医薬組成物に関する。
【0049】
好ましい態様において、前記ビグアニド系化合物はメトホルミンであり、前記ユビキチン付加酵素阻害剤はApcinであり、前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤はツバスタチンAである。
【0050】
本発明の別のさらなる側面は、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象において、脈絡叢および/または大脳皮質神経細胞の分化および/または成熟経路を調節するための組成物に関する。
【0051】
本発明によれば、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象の治療用の医薬組成物が提供される。作製したモデルマウスへの投与により、社会性の改善、組織の回復および関連遺伝子の発現の回復が示されたことから、本発明にかかる医薬組成物は、従来の対症療法とは異なり、根本的治療法となる可能性が示された。
【0052】
さらに、本発明者らは、自閉症様行動が「脈絡叢の未成熟」による臨界期の異常に起因することをモデルマウスの作製により証明し、自閉症様行動を含む精神疾患を、生後に治療することができる可能性が示された。また、精神疾患の関連遺伝子を特定したことにより疾患発症のリスク評価方法も提供することができた。すなわち、本発明によれば、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象における精神疾患の治療用の医薬組成物が提供される。
【0053】
さらに、本発明によれば、CAMDI遺伝子の発現が低下した対象における他の疾患の治療用の医薬組成物が提供される。例えば、新型コロナウィルス(COVID-19,SARS-CoV-2)感染症、新型コロナウィルス感染症の後遺症および糖尿病などの治療用の医薬組成物を提供することができる。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態を例示したが、上記実施形態はあくまでも例として示されるものであり、発明の範囲を限定することを意図するものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【実施例0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
<1>脈絡叢上皮細胞でのみCAMDI遺伝子を欠損した(cKO)マウスの作製
Foxj1CreERT2::GFPマウスはMuthusamy等により作製された遺伝子組換えマウスである(Muthusamy et al.,Genesis. 2014;52(4):350-8.doi:10.1002/dvg.22753)。Foxj1遺伝子は運動繊毛の発生を制御する遺伝子の転写制御因子であり、肺および脈絡叢上皮細胞の多繊毛細胞などで発現している。11番染色体に存在するFoxj1遺伝子のエクソン2にGFP融合CreERT2遺伝子が導入されており、時期特異的にFoxj1プロモーターにより発現が誘導される。CreERT2::GFP配列のCreはタモキシフェンの投与によりCre/loxP部位特異的組換えシステムとして機能するため、時期及び部位特異的に遺伝子破壊をしたマウスの作製を可能にしている。Foxj1遺伝子の発現は胎生15.5日目までは脈絡叢に特異的に発現することが明らかにされている。
【0057】
Foxj1CreERT2::GFPとCAMDI flox-floxマウスを掛け合わせ、胎生15.5日目にタモキシフェンを投与した。この時点でFoxJ1遺伝子を発現する脈絡叢上皮細胞でCAMDI遺伝子を欠損したマウスを作製した。脈絡叢上皮細胞はこの後も増殖することが知られている。胎生15.5日目のみで欠損させているため、脈絡叢上皮細胞の70%程度の細胞でCAMDIを欠損したマウスを作製した。
【0058】
Foxj1CreERT2::GFPとCAMDI flox-floxマウスを掛け合わせて作製した、脈絡叢上皮細胞特異的にCAMDIを欠損したcKOマウスにおいて、定量PCR法により、脳での発現には影響を与えることなく、脈絡叢でのみCAMDI遺伝子の欠損を確認した(図1)。
【0059】
<2>血液-脳脊髄液関門のバリア機能評価
以下の手順で、血液-脳脊髄液関門のバリア機能の評価を行った。
1.Evans Blue(色素)を40mg/kg[体重]となるように腹腔内投与(その後血液中に吸収される)し、45分後、生理食塩水を用いて灌流し脳を摘出
2.500μL PBS中でホモジナイズ
3.4℃,1,500rpm,10minで遠心
4.上清350μLをホルムアミド1mLと混和
5.60℃,24hインキュベート
6.OD620,OD740を測定し、下記の式を用いて漏出量を計算
【数1】
7.得られた漏出量を各脳重量でノーマライズ。
【0060】
Controlマウスで検出されるEvans Blue(色素)の量と比較して、cKOマウスでは有意に増加しており、血液-脳脊髄液関門としてのバリア機能が喪失し、血管から脈絡叢上皮細胞間への漏出が明らかとなった(図5、左から1つ目と3つ目の比較)。定量PCRの結果、血液-脳脊髄液関門の構成遺伝子であるZO-1、Cldn2の発現が有意に低下していた(図6AおよびBの各々左から1つ目と3つ目のバーの比較)。
【0061】
また、CAMDIについても、定量PCRの結果、発現が有意に低下していた(図6C)。ここで、CAMDIを欠損していない細胞が約30%存在し、その細胞内でメトホルミンによりCAMDIの発現が上昇したことが示された(図6C、左から3つ目と4つ目のバーの比較)。なお、図6に示す他の遺伝子(図6A、B、DおよびE)については、CAMDIとは異なり欠損させてはいないため、全ての細胞において発現が回復した可能性があることを示している。
【0062】
<3>RNA-seq(網羅的発現遺伝子解析:炎症遺伝子の増加を検出)
RNeasy Kitを用いてtotal RNAを抽出した。Bcl2fastq(v2.17.1.14)を用いて、予備的な品質分析を行った。有効濃度や必要なシーケンスデータ量に応じてライブラリーを混合した後、Illumina GA Pipeline v1.8を使用してシーケンスを行った。発現差解析には、DESeq2 Bioconductorパッケージ、負の二項分布に基づくモデルを使用し、分散と対数倍変化の推定には、データ駆動型の事前分布を用い、遺伝子のPadjを<0.05に設定し、発現量に差のある遺伝子を検出した。
【0063】
RNA-seqの結果、炎症系の遺伝子の変動が確認された。それらの遺伝子について定量PCR法により再確認したところ、変動が確認された炎症系遺伝子の増加が認められ、炎症の亢進が明らかとなった(図6DおよびEの各々左から1つ目と3つ目のバーの比較)。
【0064】
<4>社会性臨界期の試験
生後21日目(P21)から生後35日目(P35)まで集団で飼育されなかった野生型マウスは社会性が有意に低下することから、野生型マウスの社会性の臨界期はP21からP35であると報告されている(Makinodan et al., Science. 2012;337(6100):1357-60. doi:10.1126/science.1220845.2012)。cKOマウスにて同様に社会性臨界期の評価を行うため、下記の条件を用いて実験を行った。
【0065】
[飼育条件]
・集団飼育(RE):Testマウスを含めた雄マウス3匹以上での飼育
・単独飼育(IS):1ケージにつきTestマウス1匹で飼育
【0066】
飼育条件として、1ケージで複数のマウスを飼育する集団飼育(regular environment;RE)または1ケージで1匹のみマウスを飼育する単独飼育(isolation;IS)を、各マウスのP21からP35またはP36からP65の期間にどちらかの飼育を実施することで、社会的経験を受けるマウス群と受けないマウス群を作製した(図2)。これらの条件で飼育されたマウスに対し、社会的認知能力を評価する社会性試験(下記)を生後65日目(P65)で実施した。
【0067】
[社会性試験(生後65日目(P65))]
マウスは通常、初見マウスに対して相手の素性を知るために近接して匂いを嗅ぐ行動をとる(sniffing)。まず社会性の指標として1回目の試験におけるsniffing時間を確認する(下記手順5)。この時間の低下は、社会性行動の低下と判断する。2回目、3回目の試験(下記手順7)では同一初見マウスを用いるため、自然なsniffing時間の低下を認める。4回目の試験において先程と異なる初見マウスを用いることで、異なるマウスと社会的認知ができればsniffing時間は3回目の試験より増加する。この増加時間の比が小さい場合、社会的認知機能の低下を示す。
【0068】
Testマウス:試験対象となるマウス
Novelマウス:Testマウスと同じ遺伝型、同じ性別かつ週齢の最も近い生後56日目以降のマウスであり、過去に一度もTestマウスに接触したことのないマウス
ホームケージ:マウスが一日以上生活を行い、十分にマウスの匂いが付いているケージ
【0069】
1.Testマウスを空のカップを入れたOpen fieldに10分間慣れさせる。
2.Testマウスを10分間ホームケージで休ませる。
3.Novelマウスの1匹目をカップに5分間入れ、慣れさせる。
4.全ての器具を70%EtOHでcleanする。
5.カップに慣らしを行なったNovelマウスを入れた状態でTestマウスを、Open fieldの中央に入れ、5分間測定する。
6.Testマウスを10分間ホームケージで休ませる。その間に全ての器具をcleanする。
7.10分間のホームケージでの休憩を挟み、手順5を計3回行う。
8.Testマウスをホームケージで60分間休ませる。
9.1匹目とは別のNovelマウスをカップに5分間入れ、慣れさせる。
10.カップに慣らしを行ったNovelマウスの2匹目を入れた状態でTestマウスを、Open fieldの中央に入れ、5分間測定する。
【0070】
[測定項目]
・sniffing(匂い嗅ぎ)時間
【0071】
社会性臨界期の試験(飼育条件を3群(RE-RE、IS-REおよびRE-IS)に分けて、その後に社会性認知試験を行って評価)を行った。
【0072】
コントロールマウス:P21からP35の期間に単独飼育(IS)した群で社会性の有意な低下が確認された。既報通り(参考文献6)、社会性臨界期はP21からP35の間にあることが明らかとなった(図3A)。
【0073】
cKOマウス:P35からP65の期間に単独飼育(IS)した群で社会性の有意な低下が確認された。コントロールマウスとは異なり、社会性臨界期はP35からP65の間にあり遅延していることが明らかとなった(図3B)。
【0074】
<5>メトホルミン投与による脈絡叢の機能および社会性行動の回復
・Metformin Hydrochloride(東京化成 M2009)
一回の投与量:0.9% NaClで100mg/mLに調整し、100mg/kg[体重]で経口投与。糖尿病の治療薬として用いられているメトホルミン(Metformin)を生後7日から21日目(授乳期に相当、社会性の臨界期が開始する直前)に仔マウスに経口投与した。生後21日目(離乳期)で遺伝子発現(脈絡叢分化および成熟マーカー、血液-脳脊髄液関門、炎症関連)およびバリア機能の評価、生後65日目(成体)で社会性および社会性認知行動の評価を行った。
【0075】
P7からP21の期間におけるMetforminの経口投与かつ通常飼育を行い、cKOマウスで発現量の有意な減少、増加が確認されていた遺伝子のmRNA発現量の解析を行った。P21の脈絡叢において、脈絡叢の分化および成熟マーカーであるTTR(トランスサイレチン)が有意に発現増加し、コントロールマウスと同程度までの回復が認められた(図4)。血液-脳脊髄液関門のバリア機能評価を行なったところ、cKOマウスのVehicle(溶媒のみ)投与群においては漏出が確認されるのに対し、Metformin投与群では漏出が認められず、コントロールマウスと差が認められないことが明らかとなった(図5、左から3つ目と4つ目のバーの比較)。また、血液-脳脊髄液関門の構成遺伝子であるZO-1、Cldn2の発現は、cKOマウスのMetformin投与群で有意な増加が確認され、コントロールマウスと同程度に回復していることが確認された(図6AおよびBの各々左から3つ目と4つ目のバーの比較)。
【0076】
CAMDI発現は、cKOマウスのMetformin投与群で、CAMDIを欠損していない約30%の細胞において、有意な増加が確認され、コントロールマウスの半分程度に回復していることが確認された(図6C、左から3つ目と4つ目のバーの比較)。
【0077】
炎症関連遺伝子ICAM1、TNFAIP3は、cKOマウスのMetformin投与群で有意な減少が確認され、コントロールマウスと同程度に回復していることが確認された(図6DおよびEの各々左から3つ目と4つ目のバーの比較)。さらに、cKOマウスで確認されていた社会性の低下について検証した結果、Metformin投与群では1回目の社会性、並びに、4回目の社会的認知について有意な回復が認められた(図7)。
【0078】
<6>CAMDIの安定性と大脳皮質ニューロンの移動
(1)生化学的解析
FLAGタグを付加したCAMDI発現プラスミド、EGFPタグを付加したCdc20発現プラスミド、並びにHAタグを付加したUb(ユビキチン)発現プラスミドを作製した。
【0079】
ヒト胎児腎臓由来株HEK293細胞にFLAG-CAMDIとEGFP-Cdc20をトランスフェクションし、共免疫沈降、ウェスタンブロット法による確認を行ったところ、結合ならびにユビキチン化が確認された(図8および図9)。また、Cdc20と複合体を作るユビキチン付加酵素APC/Cの阻害剤であるApcinを添加したところ、CAMDIの分解が抑制された(図10)。
【0080】
(2)生きた脳組織内での解析
EGFPタグを付加したCAMDI、およびCdc20が認識するコンセンサス配列(D-box,123-129アミノ酸領域)を破壊したCAMDI発現プラスミドを作製した。
【0081】
子宮内遺伝子導入法を用いてEGFP-CAMDIをマウス胎児脳に発現させ、脳を摘出後、スライスを作製しライブイメージングを行なった。EGFPの蛍光強度を経時的に測定したところ、EGFP-CAMDIは安定と分解を繰り返して神経細胞の移動を制御していた(図11A)。そこにCAMDIのCdc20結合部位を破壊した変異体の強制発現、もしくはAPC/C阻害剤であるApcinを添加したところ、CAMDIの安定と分解を繰り返しが消失した(図11B、C)。
【0082】
以上より、CAMDIは、Cdc20-APC/C複合体と呼ばれる細胞周期の関連装置により分解されること、APC/Cの阻害剤であるApcin(ヒトへの評価のない試薬)、並びに、Cdc20-APC/Cによる分解を受けないCAMDIの強制発現で神経細胞の移動が異常になること、CAMDIの分解と安定の繰り返しが正常な神経細胞の移動に必要であることが示された。
【0083】
(参考文献)
1) J K Millar et al.,“Disruption of two novel genes by a translocation co-segregating with schizophrenia” Hum Mol Genet.2000 May 22;9(9):1415-23.
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3) Shohei Okuda et al.,“Oscillation of Cdc20-APC/C-mediated CAMDI stability is critical for cortical neuron migration” J Biol Chem. 2021 Aug;297(2):100986. Epub 2021 Jul 21.
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10) URL: https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info98.html
11) URL: https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60702748
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