(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169947
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20231124BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20231124BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20231124BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231124BHJP
【FI】
F21S2/00 350
F21S2/00 311
F21V9/40 400
F21V7/00 510
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081306
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 延幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真文
(57)【要約】
【課題】外形が矩形である平面発光型LEDを用い、照度分布が円形で、高照度で、小さな配光角を有し、かつ、液晶レンズによって正確に制御することが出来る照明装置を実現する。
【解決手段】
これを実現するために、本発明は、次のような構成をとる。すなわち、内部に反射孔が形成されたリフレクタ20を有する照明ユニットをn個平面状に配置した照明装置であって、前記反射孔は底面、前記底面と対向した出射面を有し、前記反射孔の前記底部に外形が矩形である平面発光型LED10が配置し、光軸は前記反射孔の出射面と鉛直方向であり、前記n個の照明ユニット内に配置された前記平面発光型LED10は、前記光軸に対して、方位角方向に互いに90度/nの角度をなし、前記n個の照明ユニットの出射面に、前記n個の照明ユニットに共通な液晶レンズ100が配置していることを特徴とする照明装置。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に反射孔が形成されたリフレクタを有する照明ユニットをn個(nは2以上の整数)平面状に配置した照明装置であって、
前記反射孔は底面、前記底面と対向した出射面を有し、
前記反射孔の前記底面に外形が矩形である平面発光型LEDが配置し、
光軸は前記反射孔の出射面と鉛直方向であり、
前記n個の照明ユニット内に配置された前記平面発光型LEDは、前記光軸に対して、方位角方向に互いに90度/nの角度をなし、
前記n個の照明ユニットの出射面に、前記n個の照明ユニットに共通な液晶レンズが配置していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記照明ユニットの組み立て体は、平面で視て矩形であることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
前記n個の照明ユニットは、互いに結合していることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記照明ユニットの組み立て体は、平面で視て矩形ではなく、前記液晶レンズは平面で見て矩形であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記n個の照明ユニットは、前記液晶レンズに接着していることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記液晶レンズは、第1の液晶レンズと第2の液晶レンズで構成され、前記第1の液晶レンズは、第1の方向に偏光した光に対して作用し、第2の液晶レンズは、第1の方向と直角方向である第2の方向に偏光した光に対して作用することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項7】
前記液晶レンズは、さらに第3の液晶レンズと第4の液晶レンズを有し、前記第3の液晶レンズは、第1の方向と45度方向に偏光した光に対して作用し、第4の液晶レンズは、第1の方向と135度方向に偏光した光に対して作用することを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記液晶レンズは第1の液晶レンズと第2の液晶レンズを含み、前記第1の液晶レンズの第1の基板には、同心円状に電極が形成され、前記第2の液晶レンズの第1の基板には、同心円状に電極が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
前記液晶レンズは第1の液晶レンズと第2の液晶レンズを含み、前記第1の液晶レンズの第1の基板には、第1の方向に延在し、第2の方向に配列した第1の電極が形成され、前記第2の第1の基板には、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した第2の電極が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項10】
前記リフレクタの平面で視た外形は、正方形であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項11】
前記反射孔の前記出射面の形状は、平面で視て円であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
内部にn個(nは2以上の整数)の反射孔が形成されたリフレクタを有する照明装置であって、
前記反射孔は底面、前記底面と対向した出射面を有し、
前記反射孔の前記底面に外形が矩形である平面発光型LEDが配置し、
光軸は前記反射孔の出射面と鉛直方向であり、
前記n個の反射孔に配置された前記平面発光型LEDは、前記光軸に対して、方位角方向に互いに90度/nの角度をなし、
前記n個の反射孔の出射面に、前記n個の反射孔に共通な液晶レンズが配置していることを特徴とする照明装置。
【請求項13】
前記リフレクタは、外形が直方体であることを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度とすることが可能な矩形の面発光LEDを用いて、円形の光スポットを得ることが出来る照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置として発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)が用いられるようになってきている。LEDは発光効率が良く、消費電力低減に有利である。
【0003】
LEDは、スポットライトの形成にも利用されている。輝度が高いLEDを使用すると、発光体であるLEDチップの形状が光スポットに投影される場合がある。特許文献1には、複数のLEDを使用することによって、光スポットの形状を疑似円形とする構成が記載されている。
【0004】
特許文献2には、光源にLEDを用い、該LEDを囲んでコリメータレンズを配置して光をコリメートし、さらに、出射側に液晶レンズを配置して、出射光の透過、拡散、偏向等を制御する構成が記載されている。
【0005】
特許文献3には、光源にLEDを用い、該LEDを囲んで集光レンズを配置し、さらに、出射側に出射光の向きを変える光学装置を配置することが記載されている。また、特許文献3には、出射光の向きを変える光学装置として液晶レンズを配置することが記載されている。
【0006】
特許文献4には、液晶レンズを用いて光ビーム形状を制御する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2013/014809 A1
【特許文献2】特開2019-169435号公報
【特許文献3】特開2012-69409号公報
【特許文献4】US2019/0025657 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LEDは輝度が大きいので、スポットライトの光源としても使用される。特に、平面発光型のLEDは輝度が大きいので大きな照度が必要とされるスポットライトとしては有利である。しかし、平面発光型のLEDは輝度が大きいが、スポットライトの形状が矩形になるという問題を生ずる。しかし、一般には、スポットライトは、円形であることが必要な場合が多い。
【0009】
一方、液晶レンズを用いて、出射光を収束、発散、偏向等をおこなうことが出来る。液晶レンズを用いて出射光を制御する場合、出射光、すなわち、液晶レンズへの入射光がコリメートされていれば、正確な制御を行うことが出来る。
【0010】
本発明の課題は、輝度の大きな、矩形の平面発光型のLEDを用いて、円形の光スポットを実現し、かつ、この光スポットを液晶レンズによって正確に制御することが出来る照明装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。すなわち、内部に反射孔が形成されたリフレクタを有する照明ユニットをn個平面状に配置した照明装置であって、前記反射孔は底面、前記底面と対向した出射面を有し、前記反射孔の前記底面に外形が矩形である平面発光型LEDが配置し、光軸は前記反射孔の出射面と鉛直方向であり、前記n個の照明ユニット内に配置された前記平面発光型LEDは、前記光軸に対して、互いに位角方向に90度/nの角度をなし、前記n個の照明ユニットの出射面に、前記n個の照明ユニットに共通な液晶レンズが配置していることを特徴とする照明装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】平面発光型LEDを光源とした照明装置の平面図である。
【
図11】照明ユニットを2個使用した場合の照明装置の平面図である。
【
図13】照明ユニットを4個使用した場合の照明装置の平面図である。
【
図15】液晶レンズを配置した照明装置の平面図である。
【
図17】液晶レンズの動作を説明する断面図である。
【
図18】液晶レンズの動作を説明する他の断面図である。
【
図19】液晶レンズの動作を説明するさらに他の断面図である。
【
図21】第1液晶レンズの電極形状を示す平面図である。
【
図22】第1液晶レンズと第2液晶レンズの動作を示す斜視図である。
【
図23】第1液晶レンズと第2液晶レンズを積層した状態を示す断面図である。
【
図24】第1液晶レンズ、第2液晶レンズ、第3液晶レンズ、第4液晶レンズの動作を示す斜視図である。
【
図25】
図13の照明装置に4枚の液晶レンズを配置した状態を示す断面図である。
【
図26】液晶レンズを偏向装置として使用する場合の説明図である。
【
図28】
図26の液晶レンズの他の例による電極構造を示す平面図である。
【
図29】組み合わせた照明ユニットの上に、液晶レンズを配置した構成を示す平面図である。
【
図31】実施例2における照明装置の平面図である。
【
図33】液晶レンズを配置した照明装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例0014】
LEDには、大きく分けて、いわゆる砲弾型と平面発光型(SMD(Surface Mount Device)とも呼ばれる)の2種類が存在する。砲弾型LEDの外形は平面で視て円であるが、平面発光型LEDは平面で視て矩形である。
【0015】
図1及び
図2は、砲弾型LED30をスポットライトの光源として使用した場合の照明装置の図であり、
図3はこの光源を用いたスポットライトの照度分布である。
図1及び
図2において、リフレクタ20は外形が直方体であり、内側に例えば、内壁が放物面状である孔が形成されている。孔の底面は、砲弾型LED30及び基板5によって塞がれている。LED30は、孔の中央部に配置している。砲弾型LED30からの光は、
図2に示すように、孔の壁面である反射曲面で反射し、
図2のLLで示すような、光軸に平行な光を出射する。
【0016】
砲弾型LED30は、
図1に示すように、外形が円形となっている。しかし、一般的には、砲弾型LED30は、輝度を大きくできないという問題がある。したがって、照度が大きいことが必要なスポットライトの光源として用いることは難しい。
【0017】
また、砲弾型LED30は、
図2に示すように、高さh1が高いので、砲弾型LED30の上面付近からの光は、放物面鏡による反射を受けず、LL1で示すように、直接外部に放射される。この光は光軸と平行ではないので、配光角が大きくなる。
【0018】
図3は、砲弾型LED30を用いた、
図1及び
図2に示す照明装置を用いた場合の光スポット形状である。
図3において、点線1000は照度が比較的小さな範囲まで含む光スポットであり、実線1100は照度が高い範囲の光スポットである。
図3に示すように、照度が高い部分のスポット1100も円形となっている。しかし、照度の絶対値を十分に大きくすることが難しく、また、配光角を小さくできないために、光スポット径を小さくすることが難しい。
【0019】
平面発光型LED10は、輝度を非常に大きくすることが出来るので、高い照度を必要とされるスポットライトの光源としては好適である。
図4は平面発光型LED10の平面図であり、
図5は
図4のA-A断面図である。
図4に示すように、平面発光型LED10は、外形が矩形である。
図4において、最上層にはp層が形成され、その上にp電極16が形成されている。
図4に示すp層14及び
図5に示す発光層13には一部に切り欠きが形成され、この切り欠き部分でn層12が露出しており、n層12の上にn電極15が形成されている。しかし、平面発光型LEDは全体としては矩形と考えてよい。
【0020】
図5は、
図4のA-A断面図である。
図5において、例えばサファイアで形成された基板11の上にn層12が形成され、その上に発光層13が形成され、発光層13の上にp層14が形成される。n層12の上のn電極15とp層14の上のp電極16間に電圧を印加すると、発光層13において、発光する。
【0021】
図6及び
図7は、平面発光型LED10を光源とした照明装置の平面図と断面図である。
図6及び
図7において、リフレクタ20は、
図1及び
図2で説明したリフレクタ20と同様に平面視で外形が矩形であり、内側には円形の開口を備える。すなわち、リフレクタ20は外形が直方体であり、内側に例えば、内壁が放物面状あるいは双曲面状である孔が形成されている。
【0022】
リフレクタ20は反射率の高い金属で形成してもよいし、樹脂で形成し、内側の反射面のみに、反射材料をコーティングしたものでもよい。孔の底面は、平面発光型LED10及び基板5によって塞がれている。平面発光型LED10は、孔の中央部に配置している。
図7に示すように、平面発光型LED10からの光は、孔の放物面で反射し、
図2のLLで示すような、光軸に平行な光を出射する。
【0023】
図7で使用している平面発光型LED10は、
図5に示すように、厚さが薄い。つまり、n層12、発光層13、p層14は薄膜なので、平面発光型LEDは、ほとんど基板の厚さで決まり、例えば0.27mmである。したがって、
図2に示すような、光軸と大きな角度をもって出射するLL1のような光は存在しないか、存在しても少量である。つまり、配光角を小さくすることが出来る。
【0024】
したがって、平面発光型LED10を用いることによって、輝度が大きく、かつ、配光角の小さな光スポットを得ることが出来る。しかし、平面発光型LED10を用いた照明装置は、発光面が矩形となるために、光スポットにおいて、特に照度が大きい部分において、光スポット形状が矩形になるという問題を生ずる。
【0025】
図8は、このような光スポットを示す平面図である。
図8において、点線1000は照度が小さい部分まで含めた光スポットの形状であり、実線1100は、照度が高い部分における光スポットの形状である。
図8に示すように、配光角を小さくできるので、光スポット全体としては、小さな光スポットを得ることが出来る。しかし、照度が高い部分におけるスポット形状1100は矩形であり、光スポットとしては不自然な形状となる。
【0026】
本発明は、外形が矩形である平面発光型LED10を用いて光スポットの照度分布を円形に出来る照明装置を実現することである。また、照明装置の出射面に液晶レンズを配置し、液晶レンズによって、光ビームを正確に制御することが可能な照明装置を実現することである。本発明で用いるLED10は、平面発光型LED10であるので、以後、LED10という場合は、特別にことわらない限り平面発光型LED10をいう。
【0027】
図9及び
図10は、本発明に用いる単位照明装置(以後、照明ユニットともいう)であり、
図9は平面図、
図10は、
図9の断面図である。
図9および
図10が、
図6及び
図7と異なる点は、リフレクタ20の平面図が正方形であり、かつ、リフレクタ20の内側に形成された円形孔の出射面側の径d1とリフレクタの外形との差が小さいということである。すなわち、
図9、
図10に示す照明ユニットは単独で使用されるのではなく、複数で利用することを前提としており、照明ユニットを複数使用した場合に、LED10とLED10の間隔を小さくして、複数のLED10からの光スポットをミックスし易くしている。また、照明装置全体の外形を小さくできるようにしている。
【0028】
図9及び
図10において、リフレクタ20の平面は正方形であり、1辺の長さ(x1、y1)は例えば6.9mm、内部に形成された孔の出射部における径d1は例えば6.13mm、LED側の径d2は2.5mmである。内部に配置しているLED10の外形は正方形であり、1辺が例えば1.7mmである。リフレクタ10の高さh2は例えば6mmである。
図9及び
図10のリフレクタ10の内部に形成された放物面鏡やLED10の形状は
図6及び
図7と同じであるから、
図9及び
図10の照明ユニットによって形成される光スポットは、
図8と同じである。
【0029】
図11は、照明ユニットを2個並べて配置した場合の照明装置の平面図である。
図11の2個の照明ユニットにおいて、リフレクタ10の形状は同じであるが、LED10の配置が異なっている。本明細書では、
図11の座標において、LED10の辺の角度がx軸となす角度θを方位角と定義する。すなわち、照明ユニットA1のLED10の方位角はゼロであり、照明ユニットA2のLED10の方位角θは45度となっている。照明ユニットA1と照明ユニットA2はともに外形が矩形のため、LED10の間隔を容易に制御できる。
【0030】
図12は
図11に示す照明装置による光スポットの例である。
図12において、点線で示す照度が比較的小さな領域1000は円となっている。照度が高い領域1100は、照明ユニットA1と照明ユニットA2からの光がミックスした形となっている。照明ユニットA1からの光スポット1100(A1)に対して、照明ユニットA2からの光スポット1100(A2)は、方位角で45度回転している。したがって、合成された光スポットの包絡線は、
図8に比べて円に近くなっている。
【0031】
図13は、照明ユニットを4個並べて配置した場合の照明装置の平面図である。
図14の4個の照明ユニットにおいて、リフレクタ10の形状は同じであるが、LED10の配置が異なっている。本明細書では、
図11の座標において、LED10の辺の角度がx軸となす角度θを方位角と定義している。すなわち、照明ユニットA1のLED10の方位角はゼロであり、照明ユニットA2のLED10の方位角θは-22.5度、A3のLEDの方位角θは22.5度、A4のLEDの方位角θは45度、となっている。
【0032】
図14は
図13に示す照明装置による光スポットの例である。
図14において、点線で示す照度が比較的小さな領域1000は円となっている。照度が高い領域1100は、照明ユニットA1、照明ユニットA2、照明ユニットA3、照明ユニットA4、からの光がミックスした形となっている。照明ユニットA1、A2、A3、A4から光スポット1100(A1)、1100(A2)、1100(A3)、1100(A4)、各々の照明ユニット内のLEDの方位角に対応してお互いに方位角が22.5度ずつ異なっている。
【0033】
図14に示すように、4個の光スポットがミックスすると、光のスポット形状はより円に近くなる。したがって、比較的照度が低い領域1000も、照度が高い領域1100も円形に近くなり、自然な照度分布を有し、かつコリメートした光を得ることが出来る。
【0034】
本実施例では、LED10を有する複数の照明ユニットを用い、各照明ユニット内のLED10は矩形であり、各LED10は互いに異なった方位角によって配置している。この方位角の差は、使用する照明ユニットがn個、すなわち、LEDがn個の場合、LED間の方位角の差は90/nとなる。すなわち、LEDを2個使用する場合は、方位角は互いに45度異なり、LEDを3個使用する場合は、方位角は互いに30度異なり、4個使用する場合は、互いに22.5度異なる。5個以上の場合も同様にして計算することが出来る。
【0035】
図15は、実施例1による照明装置の平面図であり、
図16は
図15のB-B断面図である。
図15における照明装置は
図13における照明装置に対して液晶レンズが積層された構成となっている。
図15において、4個の照明ユニットの上に共通の液晶レンズ100が配置している。すなわち、4個の照明ユニットから出射する光に対して単一の液晶レンズ100で収束、発散、偏向等をおこなうことになる。言い換えると、各照明ユニットから出射した光は、同一の液晶レンズ100の異なった部分において、異なったレンズ作用を受けることになる。
【0036】
液晶レンズ100は、入射光がコリメートされていると、光ビームに対して正確な制御が可能になる。
図10に示すように、LED10から出射した光は、放物面鏡によってコリメートされるので、液晶レンズ100は光ビームに対して正確な制御をおこなうことが出来る。
【0037】
すなわち、個々の照明ユニットにおいて、コリメート光を形成するので、リフレクタ20の高さを高くする必要がない。また、個々の照明ユニットにおいて、個々に液晶レンズを配置するのではないので、組み立ての工数を減らすことが出来るとともに、組み立て誤差の影響を小さくすることが出来る。
図15及び
図16の照明装置の組み立て方法は、照明ユニット同士を接着材によって貼り合わせ、その上に液晶レンズ100を配置してもよいし、液晶レンズ100に個々の照明ユニットを貼り付けるような構成でもよい。さらにLED10を一つの基板5上に複数配置し、各LEDに対応してリフレクタ20を配置してもよい。
【0038】
本実施例では外形が矩形のリフレクタ20を用いたが、外形が円形のリフレクタを用いても良い。外形が円形のリフレクタ20は樹脂や金属をプレス成型により容易に製造できる。
【0039】
図16では、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120で液晶レンズ100を構成している。以下に液晶レンズ100について説明する。
図17は、液晶レンズの原理を示す断面図である。
図17において、液晶層300の左側からコリメートされた光が入射している。
図17におけるPは入射光の偏向方向の意味である。通常の光の偏向方向はランダム分布しているが、液晶は屈折率に異方性があるので、
図17はP方向に偏向している光についての作用を示すものである。
【0040】
図17において、液晶層300には、電極によって液晶分子301が液晶層300の周辺に行くにしたがって、傾きが大きくなるように配向している。液晶分子301は細長い形状であり、液晶分子301の長軸方向の実効屈折率は、液晶分子301の短軸方向の実効屈折率よりも大きいので、液晶層300の周辺ほど屈折率が大きくなるため、凸レンズが形成される。
図17における点線は光波面WFであり、fはレンズのフォーカス距離である。
【0041】
液晶は、屈折率に異方性があるので、レンズを形成するには、第1のレンズが作用する光の偏向方向と直角方向に偏向する光に作用する第2のレンズが必要になる。
図18はこのレンズ構成を示す分解斜視図である。
図18において、左側の平行四辺形は光の波面である。つまり、X方向とY方向に偏向した光が液晶層300に入射する。第1液晶レンズ110はX偏光光に作用するレンズであり、第2液晶レンズ120はY偏光光に作用するレンズである。
【0042】
図18において、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120では液晶分子301の初期配向方向が90度異なっている。液晶分子301の初期配向は、液晶レンズ内の配向膜の配向方向によって決定される。つまり、
図18では、2枚の液晶レンズ110、120において、光が入射する側の基板における配向膜の配向方向が互いに直角方向になっている。
【0043】
図19は液晶レンズによって凹レンズを形成する場合である。
図19において、波面WFが液晶層300に平行で、1方向に偏向した光が、左側から液晶層300に入射する。
図18において、液晶層300における液晶分子301は、電極によって光軸付近において最も大きく配向され、周辺に行くにしたがって、配向角度が小さくなっている。このような液晶配向によるレンズ構成によって、液晶層300を通過した光の波面WFは
図25の点線で示すような曲線になって凹レンズが形成される。なお、凹レンズの場合も、
図18に示すように、2枚の液晶レンズが必要なことは同じである。
【0044】
図20は、液晶レンズ110の詳細断面図である。
図20において、TFT基板111の上には、第1電極112が形成され、第1電極112を覆って第1配向膜113が形成されている。第1配向膜113の配向方向によって、入射光のうちの、液晶レンズによって作用を受ける方向の偏光光が決められる。対向基板115の内側には、第2電極116が形成され、第2電極116を覆って第2配向膜117が形成されている。第1配向膜113の配向方向と第2配向膜117の配向方向の関係は、どのような液晶を使用するかによって決められる。TFT基板111と対向基板115の間に液晶層300が挟持されている。
【0045】
図21の左側は第1基板111に形成された第1電極112の平面図である。第1電極112は同心円状の円となっている。円状の各電極112には電圧を印加するための引き出し配線114が接続されている。
図21の右側の図は、対向基板115に形成された第2電極116の形状を示す平面図である。第2電極116は、平面電極であり、対向基板115のほぼ全面にわたって形成されている。
【0046】
図21において、第1電極112と第2電極116間の電圧を変化させることによって種々の強度のレンズを形成することができる。
図20、
図21の例は、第1電極111が同心円で形成されているので、円形のレンズを容易に形成できるという特徴を有している。
【0047】
図20及び
図21で説明した液晶レンズ110は、1方向、例えば偏光光PXに対して作用するレンズである。しかし、LED10からの光は、あらゆる方向に偏光しているので、少なくとも、PXと直角方向に偏光した光PYに対して作用する液晶レンズが必要である。
【0048】
図22はこの構成を示す斜視図である。
図22において、LEDからの光LLが左側から入射すると、第1液晶レンズ110によってPX方向に偏光した光が液晶レンズの作用を受ける。PY方向に偏光した光は第1液晶レンズ110の影響を受けない。PY方向に偏光した光は、第2液晶レンズ120によって液晶レンズの作用を受ける。PX方向に偏光した光は、第2液晶レンズ120の作用は受けない。これによって、x方向に偏光した光もy方向に偏光した光も液晶レンズの作用を受けることが出来る。
【0049】
図23は、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120を積層した状態を示す断面図である。第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120は透明接着材200によって接着している。第1液晶レンズ110は、
図17及び
図18において説明したとおりである。
図23において、第2液晶レンズ120の電極構成は、第1液晶レンズ110と同じである。つまり、第2液晶レンズ120において、TFT基板121に第3電極122が形成され、その上に第3配向膜123が形成されている。対向基板125の上に第4電極126が形成され、その上に第4配向膜127が形成されている。
【0050】
第2液晶レンズ120が第1液晶レンズ110と異なる点は、配向膜123の配向方向である。
図23において、ALは配向膜113の配向方向を示している。
図23において、第1液晶レンズ110におけるTFT基板111に形成された第1配向膜113の配向方向は例えばx方向である。第2液晶レンズ120のTFT基板121に形成された第3配向膜123の配向方向は、例えばy方向である。つまり、x方向に偏光した光もy方向に偏光した光も、2枚の液晶レンズ110及び120によって作用を受けることが出来る。
【0051】
なお、第1液晶レンズ110における対向基板115に形成された第2配向膜117の配向方向、及び第2液晶レンズ120の対向基板125に形成された第4配向膜127の配向方向は、液晶300としてどのような液晶を使用するかによって決まる。つまり、第1液晶レンズ110における第2配向膜117は第1配向膜113と同じ方向に配向する場合もあるし、直角方向に配向する場合もある。第2液晶レンズ120における第3配向膜123と第4配向膜127の関係も同じである。
【0052】
ところで、LED10からの光は、全方向に偏光しているので、PXあるいはPYの偏光光にのみ作用したのでは、液晶レンズの十分な作用を得られない場合がある。この場合は、
図24に示すように、例えば、x方向に対して45度方向に偏光している光P45に対して作用する液晶レンズ130、x方向に対して135度方向に偏光している光P135に対して作用する液晶レンズ140を加えればよい。
【0053】
図25は、
図24に対応し、液晶レンズ110、120、130、140を加えた場合の液晶レンズ付照明装置の断面図である。
図25において、照明ユニットの構成は、
図16の構成と同じである。すなわち、
図25においても
図15と同様、4個の照明ユニットが組み合わさって矩形上状の照明装置を構成している。照明装置の出射孔側に4枚の液晶レンズ110、120、130、140が積層して配置されている。液晶レンズの厚さは、各々が1mm程度であるので、4枚積層しても4mm程度であるから、照明装置全体の厚さに対しては大きな問題にはならない。
【0054】
液晶レンズ100による作用としては、発散や収束等のレンズ作用のみでなく、光を偏向させたいような場合もある。この場合も、直角方向に偏光する光に対して作用する2枚の液晶レンズをペアとして使用する。
図26は、ペアの液晶レンズのうちの、第1液晶レンズ110の作用を示す断面図である。
【0055】
図26は液晶レンズ110によって、光を左方向に偏向する場合の原理を示す図である。
図26において、上側の図は、液晶レンズ110の断面図である。液晶レンズ110の第1基板111の上に第1電極112が形成され、その上に第1配向膜113が形成されている。第2基板115の上に第2電極116が形成され、その上に第2配向膜117が形成されている。第1配向膜113と第2配向膜117の間に液晶層300が存在している。液晶層300はシール材150によって封止されている。
【0056】
図26の第1電極112と第2電極116の間に、
図26の下側のグラフに示すように、電位差が左から右に大きくなるような電圧vを印加すると、液晶分子301の配向角度が場所ごとに変化し、液晶層300の実効複屈率Δnがグラフのように変化する。このような液晶層300の構成によって、液晶レンズ110に下側から入射した光LLは左方向に偏向されて出射することになる。
【0057】
入射光に対して右方向に屈折させたい場合は、
図26の場合と逆に、電位差が右から左に徐々に大きくなるように、各電極に電圧を印加すればよい。そうすると、液晶分子301の配向角度が場所ごとに変化し、液晶層300の実効複屈率Δnが
図26の下側のグラフと逆に変化し、下側から液晶レンズに入射した光は右方向に偏向されることになる。
【0058】
図27は
図26に対応する第1液晶レンズ110の電極構成を示す平面図である。第1電極112も第2電極116もITO(Indium Tin Oxide)等のような、透明導電膜で形成される。
図27の上側は、対向基板115に形成された第2電極116の形状を示す。第2電極116は、第2基板115全体に平面的に形成されている。
【0059】
図27の下側は、TFT基板111であり、ストライプ状の電極112が形成されている。
図27において、ストライプ状の電極112はy方向に延在し、x方向に配列している。液晶レンズ110を動作させる場合は、各ストライプ状の電極112には、一方の端から順に電圧が上昇、あるいは低下するように印加される。
【0060】
第1液晶レンズ110のTFT基板111及び対向基板115の電極構造は、第2液晶レンズ120も同じである。第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120が異なる点は、第1液晶レンズ110における第1配向膜113及び第2配向膜117の配向方向と、第2液晶レンズ120における第1配向膜123及び第2配向膜127の配向方向とが互いに90度の角度をなしている点である。
【0061】
つまり、第1液晶レンズと第2液晶レンズの配向方向の関係は、
図22に示したのと同じである。また、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120の積層構造、第1配向膜113と第3配向膜123の配向方法、第2配向膜117と第1配向膜114の関係、第4配向膜127と第3配向膜123の関係は、
図23で説明したのと同じである。
【0062】
図27の第1液晶レンズの電極構成は、光を、平面で視て、左右方向に偏光させる場合である。
図28は、光を、平面で視て、上下方向に偏光させる場合の電極構成を示す図である。
図28において、対向基板115に形成された第2電極116は平面形状であり、
図27と同じである。
図28の下側に示すTFT基板111に形成された第1電極112は、x方向に延在し、y方向に配列している。つまり、
図27の第1電極112と直交関係にある。したがって、
図26で説明したと同様な作用によって、光を上下方向に偏光させることが出来る。
【0063】
このように、
図27に示す電極構造を持つ液晶レンズと第28に示す電極構造を示す液晶レンズを用いることによって、光を、平面で視て、上下、左右に偏光させることが出来る。なお、光を偏向する場合も、より完全な液晶レンズの作用を行うためには、
図24に示すように、平面で視て、左右方向、あるいは、平面で視て上下方向の各々に対して、4枚の液晶レンズを使用すればよい。
【0064】
ところで、照明ユニットの組み合わせ体の平面図は、矩形からずれる場合がある。一方、液晶レンズ100の外形は、矩形のままのほうが、合理的に製造することが出来る場合が多い。
図29は、3個の照明ユニットの組み合わせ体が矩形以外であり、液晶レンズ100が矩形の場合の例である。
図30は
図29のC-C断面図である。
【0065】
図29において、照明ユニットを3個組み合わせた場合の平面図は逆T型となっている。3個の照明ユニット内に配置するLED10の方位角は、各々90度/3、すなわち、30度ずつ異なっている。一方、液晶レンズ100の外形は矩形となっている。液晶レンズ100を含めた照明装置の平面図が矩形であることで、照明装置の取り扱いが容易になるという利点もある。
【0066】
以上説明したように、実施例によれば、同一の構成を有する照明ユニットを複数配置して光源としているので、用途に応じて照明装置の形状や、輝度を比較的自由に変化させることが出来る。また、複数のLEDを、異なる方位角で配置することによって、円形の自然なスポットを得ることが出来る。また、1個の共通した液晶レンズによって、複数のコリメートした光を制御するので、光スポットの正確な制御を行うことが出来る。
【0067】
なお、照明ユニットは、数や配置によっては、平面が矩形の形状とならない場合がある。このような場合でも、液晶レンズを矩形に形成することによって、液晶レンズを製造しやすくすることが出来る。また、照明装置の部品としての取り扱いも容易になる。