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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016996
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】電子ペン及び電子ペン本体部
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20230126BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/041 600
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196013
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2020502028の分割
【原出願日】2018-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2018030529
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 航平
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健一
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
(72)【発明者】
【氏名】堀江 利彦
(57)【要約】
【課題】万年筆の機能を備える電子ペンの電子ペン本体部を提供する。
【解決手段】液体のインクを収容するカートリッジがペン芯の後端部に嵌合されていると共に、ペン体が、前記ペン芯に対して、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向に重ねられて配置されているインク筆記部と、タブレットとの間で信号のやり取りをするための電子部品を有するインタラクション部とを備える。インタラクション部は、ペン芯とカートリッジとの結合方向において、ペン体の筆記端よりもカートリッジ側に引っ込んでいる状態で、ペン芯の、ペン芯とカートリッジとの結合方向に直交する方向のペン体とは反対側に配設されている。インタラクション部の電子部品は、信号を送出する棒状の導電体を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体のインクを収容するカートリッジがペン芯の後端部に嵌合されていると共に、ペン体が、前記ペン芯に対して、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向に重ねられて配置されているインク筆記部と、
タブレットとの間で信号のやり取りをするための電子部品を有するインタラクション部と、
を備え、
前記インタラクション部は、前記ペン芯の、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向の前記ペン体とは反対側に配設されており、
前記インタラクション部の前記電子部品は、信号を送出する棒状の導電体を含む
ことを特徴とする電子ペン本体部。
【請求項2】
前記インタラクション部は、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向において前記ペン体の筆記端よりも前記カートリッジ側に引っ込んでいる状態で、前記ペン芯の、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向の前記ペン体とは反対側に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項3】
前記インタラクション部の前記電子部品は、前記インク筆記部とは所定の部材により仕切られた空間に存在するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項4】
少なくともペン先側とは反対側が、電子ペンの筒状の筐体内に収納されるホルダーを備え、
前記ホルダーの前記電子ペンのペン先側には、前記インタラクション部の前記電子部品を収容して、前記ペン先側に突出する電子部品収容部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項5】
少なくともペン先側とは反対側が、電子ペンの筒状の筐体内に収納されるホルダーを備え、
前記ホルダーは、前記インク筆記部を、前記電子ペンの軸心方向に直交する方向から収納可能とするインク筆記部収納部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項6】
前記ホルダーは、前記インク筆記部を、前記電子ペンの軸心方向に直交する方向から収納可能とするインク筆記部収納部を備え、
前記インク筆記部は、前記ペン芯の前記ペン体とは反対側が前記電子部品収容部と対向する状態で前記インク筆記部収納部に収納される
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン本体部。
【請求項7】
前記ホルダーは、前記電子部品収容部に収容されている電子部品と電気的に接続される部品を搭載するプリント基板を、前記電子ペンの筐体内に収納される部分に備える
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン本体部。
【請求項8】
少なくともペン先側とは反対側が、電子ペンの筒状の筐体内に収納されるホルダーを備え、
前記ホルダーは、前記電子ペンのペン先側に、前記インタラクション部の前記電子部品を収容して、前記ペン先側に突出する電子部品収容部が設けられている第1のホルダーと、前記インク筆記部を、前記電子ペンの軸心方向に直交する方向から収納可能とするインク筆記部収納部を備える第2のホルダーとからなり、前記第1のホルダーと前記第2のホルダーとが前記電子ペンの軸心方向に結合されることで、前記電子部品収容部と前記インク筆記部収納部とが別空間とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項9】
前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向において、前記インタラクション部とは反対側に筆圧検出部が配置されており、
前記筆圧検出部は、電子ペンの筐体内の固定されている部位に係合して、前記筐体との間で生じる力を受ける係合部を備え、前記ペン体の先端に印加された圧力に応じて電子ペン本体部の全体が前記圧力に応じて変位することで前記係合部に印加される前記力を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項10】
前記筆圧検出部の前記係合部は、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向において、前記電子ペンの筐体内に固定されている部位に係合するように形成されており、
前記ペン体の先端に印加された圧力に応じて、前記電子ペンの筐体内で、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に変位するように構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の電子ペン本体部。
【請求項11】
前記筆圧検出部の前記係合部は、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向において、前記電子ペンの筐体と係合するように形成されており、
前記ペン体の先端に印加された圧力に応じて、前記電子ペンの筐体内で、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に交差する方向に変位するように構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の電子ペン本体部。
【請求項12】
前記電子ペンの筐体内において、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に交差する方向に変位するように揺動する支点を備える
ことを特徴とする請求項11に記載の電子ペン本体部。
【請求項13】
前記インク筆記部は、着脱可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項14】
前記インク筆記部の前記カートリッジは交換可能である
ことを特徴とする請求項13に記載の電子ペン本体部。
【請求項15】
筒状の筐体内に、電子ペン本体部の少なくともペン先側とは反対側が収納される電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
液体のインクを収容するカートリッジがペン芯の後端部に嵌合されていると共に、ペン体が、前記ペン芯に対して、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向に重ねられて装着されているインク筆記部と、
タブレットとの間で信号のやり取りをするための電子部品を有するインタラクション部と、
を備え、
前記インタラクション部は、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向において前記ペン体の筆記端よりも前記カートリッジ側に引っ込んでいる状態で、前記ペン芯の、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向の前記ペン体とは反対側に配設されており、
前記インタラクション部の前記電子部品は、信号を送出する棒状の導電体を含む
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項16】
前記電子ペン本体部は、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向において、前記インタラクション部とは反対側に筆圧検出部を備えており、
前記筆圧検出部は、前記筐体内に固定されている部位に係合して、前記筐体との間で生じる力を受ける係合部を備え、前記ペン体の先端に印加された圧力に応じて前記電子ペン本体部の全体が前記圧力に応じて変位することで前記係合部に印加される前記力を検出する
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ペン。
【請求項17】
前記筆圧検出部の前記係合部は、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向において、前記筐体内に固定されている部位に係合するように形成されており、
前記電子ペン本体部は、前記ペン体の先端に印加された圧力に応じて、前記筐体内で、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に変位するように構成されている
ことを特徴とする請求項16に記載の電子ペン。
【請求項18】
前記筆圧検出部の前記係合部は、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向において、前記筐体内に固定されている部位に係合するように形成されており、
前記電子ペン本体部は、前記ペン体の先端に印加された圧力に応じて、前記筐体内で、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に交差する方向に変位するように構成されている
ことを特徴とする請求項16に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筆記具としての万年筆の機能をも有する電子ペン及び電子ペンを構成する電子ペン本体部に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙に描いた文字や絵を描いたときに、同時に、当該描かれた文字や絵の電子データ(位置座標や軌跡のデータ)を取得することができるようにしたタブレットが提案されている(例えば、特許文献1(WO2017/017800号公報)参照)。
【0003】
この種のタブレットと共に用いられる電子ペンは、特許文献1に示されるように、ボールペンやシャープペンシルなどの筆記具の機能を備えるように構成されている。使用者は、タブレットの位置検出センサの座標検出領域である平面上に用紙を置き、上記の電子ペンの筆記具の機能部により、その用紙に文字や絵を描く。すると、タブレットは、その用紙に文字や絵が描かられた際において、電子ペンにより指示された位置の座標及び軌跡を検出して、その電子データを保持するようにする。これにより、この種のタブレットは、用紙に描かられた文字や絵の電子データを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2017/017800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、用紙に描く筆記具としては、万年筆も根強く使用されている。万年筆の特徴としては、
・液体のインクを用いる
・ペン先部は、インクを導出させるための工夫がなされている
・ペン体は、金属であることが多い
・傾けて使用されることが一般的である
などが挙げられる。
【0006】
上記の万年筆の特徴は、以下に説明するように電子ペンとは親和性が悪く、従来、万年筆の機能を電子ペンに搭載した場合の具体的な提案は殆ど存在しない。
【0007】
すなわち、電子ペンのペン先には、位置検出センサとインタラクションする電子部品(例えば電磁誘導方式の場合にはコイル)が設けられるが、この電子部品は水分に対して敏感である。また、万年筆のペン体は金属が用いられることが多いが、電子ペンのインタラクションする電子部品は、金属の影響を受け易い。
【0008】
また、万年筆は傾けて使用されるが、電子ペンのペン先には、上述のような位置検出センサとインタラクションするための電子部品を配置する必要があるが、万年筆のペン体による斜めにした書き易さを維持する構成とする場合における、前記電子部品の位置が問題となる。
【0009】
この発明は、以上の問題点を回避することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、
液体のインクを収容するカートリッジがペン芯の後端部に嵌合されていると共に、ペン体が、前記ペン芯に対して、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向に重ねられて配置されているインク筆記部と、
タブレットとの間で信号のやり取りをするための電子部品を有するインタラクション部と、
を備え、
前記インタラクション部は、前記ペン芯の、前記ペン芯と前記カートリッジとの結合方向に直交する方向の前記ペン体とは反対側に配設されており、
前記インタラクション部の前記電子部品は、信号を送出する棒状の導電体を含む
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0011】
上述の構成の電子ペンにおいては、タブレットとの間で信号のやり取りをするための電子部品を有するインタラクション部は、インク筆記部のペン芯の、ペン芯とカートリッジとの結合方向に直交する方向においてペン体とは反対側に配設されている。
【0012】
したがって、上述の構成の電子ペンによれば、液体のインクが含浸されるペン体とは、ペン芯を介して反対側にインタラクション部が配設されているので、インタラクション部の電子部品が液体のインクの影響を受けにくくすることができる。また、芯体が金属で構成されている場合でも、インタラクション部とペン体との間には、ペン芯が存在する状態となるので、インタラクション部が、金属のペン体からの干渉を受けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明による電子ペン本体部の第1の実施形態の構成例を説明するための縦断面図である。
図2】この発明のよる電子ペン本体部の第1の実施形態の分解斜視図である。
図3】この発明のよる電子ペン本体部の第1の実施形態の一部の構成を説明するための図である。
図4】この発明のよる電子ペン本体部の第1の実施形態の一部の構成を説明するための図である。
図5】この発明のよる電子ペン本体部の第1の実施形態の電子ペン構成ユニットの構成例を説明するための図である。
図6】この発明のよる電子ペン本体部の第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
図7】この発明のよる電子ペン本体部の第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
図8】この発明のよる電子ペン本体部の第2の実施形態の構成例を説明するための図である。
図9】この発明のよる電子ペン本体部の第3の実施形態の構成例を説明するための図である。
図10】この発明のよる電子ペン本体部の第4の実施形態の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
この発明による電子ペン及び電子ペン本体部の第1の実施形態を、電磁誘導方式の電子ペンの場合について、図を参照しながら説明する。
【0015】
図1図6は、この第1の実施形態の電子ペンで用いられる電子ペン本体部10の構成を説明するための図である。図1は、第1の実施形態の電子ペン本体部10の縦断面図である。また、図2は、第1の実施形態の電子ペン本体部10を構成する各部の分解斜視図である。
【0016】
電子ペン本体部10は、図1及び図2に示すように、ホルダー11に、電子ペン機能部を構成する電子ペン構成部品(電子部品)が配設される電子ペン構成ユニット10U(図6参照)と、万年筆の機能を実現するためのインク筆記部12とが組み合わされた構造となっている。
【0017】
インク筆記部12は、周知の万年筆のペン先側の構成を備えるもので、この例では、金属製のペン体121が、インク溝122aを備えるペン芯122の上に重ねられて設けられていると共に、ペン芯122にインクカートリッジ123が嵌合されて構成されている。インクカートリッジ123の内部の空間には液体のインク124が充填されている。
【0018】
インクカートリッジ123は、この実施形態の電子ペンの軸心方向(以下、単に軸心方向という)において、ペン芯122の後端側に結合されている。そして、ペン体121は、その先端(ペン先)がペン芯122の軸心方向の先端よりも、軸心方向に突出する状態で、ペン芯122に対して、軸心方向に直交する方向に重ねられて設けられている。
【0019】
周知のように、インクカートリッジ123に充填されているインク124は、ペン芯122を通じてペン体121に供給され、ペン体121の先端を用紙に接触させて移動させることで、文字や絵を描くことができる。なお、ペン芯122に対して、インクカートリッジ123は着脱可能であり、インクカートリッジ123は、ペン芯122から取り外して交換が可能である。
【0020】
図1図2及び図3に示すように、この実施形態では、ホルダー11は、絶縁性材料、例えば樹脂で構成され、軸心方向に結合される第1のホルダー111と、第2のホルダー112とで構成されている。図3(A)は、第1のホルダー111と第2のホルダー112とを結合した状態の斜視図、図3(B)は、第1のホルダー111と、第2のホルダー112とを分解して示した分解斜視図、図3(C)は、第1のホルダー111のペン先側の拡大斜視図である。この例では、第1のホルダー111内に、第2のホルダー112が、軸心方向に挿入されて結合されることでホルダー11が構成される。
【0021】
ホルダー11には、インク筆記部12が収納保持されると共に、電子ペン機能部を構成する電子部品が収納保持される。この実施形態の電子ペン本体部10の電子部品は、磁性体コア、この例ではフェライトコア13に巻回されたコイル14と、プリント基板15と、プリント基板15に配設されてコイル14と電気的に並列に接続されて並列共振回路を構成するキャパシタ16と、筆圧検出部17とで構成される。
【0022】
第2のホルダー112の軸心方向のペン先側には、図1図3に示すように、インク筆記部12のインクカートリッジ123の部分とペン芯122の一部が収納されるインク筆記部収納部112aが形成されている。このインク筆記部収納部112aは、円筒を半分に縦割りしたようなハーフパイプ形状を備える。
【0023】
第1のホルダー111は、図1図3に示すように、第2のホルダー112が軸心方向に挿入可能な筒状形状を有する。そして、この第1のホルダー111の軸心方向のペン先側には、第2のホルダー112のインク筆記部収納部112aを外部に露呈することができるようにするために、円筒を半分に縦割りしたようなハーフパイプ形状の凹部111aを備える。
【0024】
したがって、図3(A)に示すように、第1のホルダー111に第2のホルダー112が結合された状態において、第2のホルダー112のインク筆記部収納部112aが外部に露出する状態となり、後述するように、軸心方向に直交する方向から、インク筆記部12のインクカートリッジ123及びペン芯122の一部を収納することが可能となる。インク筆記部12を、インク筆記部収納部112aに収納したときには、ペン体121とペン芯122の一部は、インク筆記部収納部112aには収納されずに、ペン先側に突出する状態となる。
【0025】
フェライトコア13に巻回されたコイル14は、位置検出センサと電磁結合してインタラクションするために、できるだけ、ペン先側に設けることが好ましい。この実施形態では、第1のホルダー111には、図1図3に示すように、ハーフパイプ状の凹部111aの先端部よりも、軸心方向にペン先側に突出するように、フェライトコア13に巻回されたコイル14を収容するための収容部111bが形成される。
【0026】
この第1のホルダー111の収容部111bは、図1及び図3(C)に示すように、フェライトコア13の軸心方向の長さ分の深さの凹穴111bhを備える。コイル14が巻回されたフェライトコア13は、図3(C)において矢印で示すように、この第1のホルダー111の収容部111bの凹穴111bh内に差し込まれて収容される。
【0027】
この場合に、コイル14の両端のリード線14a及び14bは、図3(B)に示すように、この収容部111bから、第1のホルダーの凹部111a内に導出されるように構成されており、後述するように、リード線14a及び14bの間に、コイル14と共に共振回路を構成するキャパシタが接続される。したがって、この実施形態では、コイル14が巻回されたフェライトコア13が収容部111bに収容されることで、電子ペン本体部10のインタラクション部が構成される。
【0028】
第2のホルダー112の軸心方向の先端部には、第1のホルダー111に挿入して結合したときに、第1のホルダー111の収容部111bの凹穴111bhの少なくとも、凹部111aの開口側を閉塞するようにする閉塞部112bが形成されている。この場合に、図1に示すように、第2のホルダー112の閉塞部112bは、第1のホルダー111の収容部111bの凹穴111bhとの間で、凹部111aの開口側とは反対側には隙間を設けるように構成されており、この隙間を通って、コイル14の両端のリード線14a及び14bが凹部111aの底部に導出可能とされている。そして、図1に示すように、第1のホルダー111の凹部111aの内壁面の底部と、第2のホルダー112のインク筆記部収納部112aの底部の外周壁との間には、空間が形成されており、この空間に、コイル14の両端のリード線14a及び14bが這わせられる。
【0029】
第2のホルダー112のインク筆記部収納部112aよりも軸心方向にペン先側とは反対側には、図1図3及び図4並びに図5に示すように、プリント基板15を載置するための基板載置部112cが形成されている。この基板載置部112cは、第2のホルダー112において、中実の円柱状部の、インク筆記部収納部112aの開口側とは軸心方向に直交する方向において反対側の半円柱部分が切除されたような形状とすることで形成される。この基板載置部112cのプリント基板15を載置する部分は、図1に示すように、平面状とされている。
【0030】
なお、図4(A)は、ホルダー11を、第1のホルダー111の凹部111aの開口側とは反対側から見た図であり、図4(B)は、基板載置部112cの部分の拡大図である。また、図5は、ホルダー11の第2のホルダー112の基板載置部112cに、プリント基板15を装着した状態を示す斜視図である。
【0031】
筒状の第1のホルダー111の、第2のホルダー112が挿入されて結合されたときに、基板載置部112cが対応する位置となる部分は、図1図3に示すように、当該基板載置部112cが第1のホルダー111からも外部に露出するように、ハーフパイプ状に切り欠かれた切欠き部111cとされている。
【0032】
第2のホルダー112の基板載置部112cよりも軸心方向にペン先側とは反対側は、当該第2のホルダー112の後端部112dとされる。この後端部112dは、図1図3に示すように、基板載置部112cと連通する円柱状空間112eを有するように筒状に形成されており、第2のホルダー112の後端側において開口となっている。
【0033】
筆圧検出部17は、この例では、図1図2及び図4(A)に示すように、軸心方向においてプリント基板15の後端側に結合されて取り付けられている。この例の筆圧検出部17は、図1に示すように、プリント基板15を挟持するようにして、当該プリント基板15に対して固定するための取付固定部171と、感圧部172と、感圧部172に対して圧力を印加する押子部材173とからなる。押子部材173は、取付固定部171に対して筐体2の軸心方向に移動可能として感圧部172を押圧するような状態で、筆圧検出部17から外部に突出している。
【0034】
筆圧検出部17の感圧部172は、例えば容量可変キャパシタの静電容量を、印加される圧力(筆圧)に応じて変化させる機構を用いるもの(例えば特許文献(特開2011-186803号公報)参照)で構成される。なお、筆圧検出部17の感圧部172は、容量可変キャパシタをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる半導体チップで構成したもの(例えば特許文献(特開2013-161307号公報)参照)を用いることもできる。筆圧検出部17の構成は、これらの構成例に限られるものではなく、筆圧をインダクタンスの変化として検出するものであってもよい。
【0035】
そして、この例では、プリント基板15は、筆圧検出部17が結合された状態で、図4に示すように、第2のホルダー112の後端部112dの開口から円柱状空間112e内に挿入されて、基板載置部112cに固定される。第2のホルダー112の後端部112dの円柱状空間112eの開口は、蓋部18により閉塞される。
【0036】
蓋部18は、軸心方向の貫通孔18aを備え、当該貫通孔18a内に、筆圧検出部17を収納する状態で、第2のホルダー112の後端部112dの円柱状空間112eに圧入嵌合されて、当該円柱状空間112eの開口を閉塞する。この場合に、円柱状空間112eに圧入嵌合される蓋部18の軸心方向の端部は、プリント基板15の後端部と衝合し、これにより、プリント基板15の軸心方向の位置が固定される。
【0037】
そして、図1及び図5に示すように、筆圧検出部17の押子部材173の突出部は、軸心方向において蓋部18よりも外部に突出する状態とされる。そして、この例では、この押子部材173の先端には、図1及び図2に示すように、後述する電子ペン1の筐体内の固定部と嵌合する嵌合部材19が嵌合されている。
【0038】
以上のように構成される電子ペン本体部10の組み立て手順について説明する。
【0039】
先ず、図3(C)に示すように、コイル14を巻回したフェライトコア13を、第1のホルダー111の収容部111b内に挿入して収容する。このとき、コイル14の両端のリード線14a及び14bは、第1のホルダー111の凹部111aの底部に、軸心方向に這わせられ、第1のホルダー111の切欠き部111cにまで延長される状態としておく(図1図3(B)及び図4(A),(B)参照)。
【0040】
次に、図3(B)に示すように、第1のホルダー111に対して、第2のホルダー112を、そのインク筆記部収納部112aを第1のホルダー111の凹部111aに収納するように挿入し、第2のホルダー112の軸心方向の先端の閉塞部112bで、第1のホルダー111の収容部111bを閉塞するような状態とする。このとき、コイル14の両端のリード線14a及び14bは、図1に示すように、インク筆記部収納部112aと第1のホルダー111の凹部111aとの間の空間に存在する状態となり、当該コイル14の両端のリード線14a及び14bの先端は、図4(A)及び(B)に示すように、第2のホルダー112の基板載置部112c上に存在する状態となる。
【0041】
次に、図4(A)及び(B)に示すように、キャパシタ16が配置されていると共に、筆圧検出部17が後端側に結合されているプリント基板15を、第2のホルダー112の後端部112dの円柱状空間112eの開口から挿入し、第2のホルダー112の基板載置部112cに配置させる。このとき、図4(B)に示すように、プリント基板15の先端15aが、第2のホルダー112に設けられている凹穴112fに嵌合されることでプリント基板15は、基板載置部112cから脱落しないように係止される。
【0042】
そして、第2のホルダー112の後端部112dの円柱状空間112eに、蓋部18を、その貫通孔18a内に筆圧検出部17を収納する状態で圧入嵌合させて、図5に示すような状態とする。
【0043】
次に、図5に示す状態において、コイル14の両端のリード線14a及び14bを、キャパシタ16と並列に接続するように、プリント基板15に半田付けする。そして、この例では、更に、キャパシタ16に対して、筆圧検出部17を構成する可変容量キャパシタを並列に接続するように、プリント基板15に対して、筆圧検出部17の感圧部172から導出されるリード線を半田付けする。
【0044】
そして、蓋部18よりも突出している筆圧検出部17の押子部材173の先端に嵌合部材19を装着して、図6(A)に示すような電子ペン構成ユニット10Uを形成する。この電子ペン構成ユニット10Uの第2のホルダー112のインク筆記部収納部112aに、図6(A)の矢印で示すように、軸心方向に直交する方向から、インク筆記部12を収納させる。これにより、図6(B)に示すような、この実施形態の電子ペン本体部10が形成される。
【0045】
図7は、以上のようにして作成したこの実施形態の電子ペン本体部10を、筒状の筐体2内に収納した、第1の実施形態の電子ペン1を説明するための図である。この図7は、理解を容易にするために、電子ペン1の筒状の筐体2のみを断面として示してある。
【0046】
この実施形態の電子ペン1の筒状の筐体2は、ペン先側筐体21と、後端側筐体22とからなり、両者が螺合されて構成される。すなわち、図7に示すように、ペン先側筐体21の後端側には、内壁面にねじ部21Sが形成されていると共に、後端側筐体22のペン先側には、外周面にねじ部22Sが形成されており、ねじ部21Sとねじ部22Sとが螺合することにより、ペン先側筐体21と後端側筐体22に結合される。
【0047】
ペン先側筐体21は、ペン先側に開口21aを備える。電子ペン本体部10の、インク筆記部12のペン体121及びペン芯122のペン先側と、コイル14が巻回されているフェライトコア13が収容された第1のホルダー111の収容部111bとが、この開口21aから突出される状態となる。
【0048】
そして、図7に示すように、電子ペン本体部10の第1のホルダー111の、収容部111bが突出している端面が、ペン先側筐体21の開口21aの近傍の内壁面と衝合することで、筐体2内における電子ペン本体部10の、軸心方向のペン先側への移動が規制される。
【0049】
また、図7に示すように、後端側筐体22の後端側は開口とされずに、中空部が閉塞された構成とされており、軸心方向に直交する方向の内壁面を有する。この後端側筐体22の後端側の軸心方向に直交する方向の内壁面には、電子ペン本体部10の後端側の嵌合部材19が嵌合される凹部22aが設けられている。そして、電子ペン本体部10を収納した状態で、ペン先側筐体21と、後端側筐体22とを螺合して結合したときに、後端側筐体22の凹部22a内に、電子ペン本体部10の嵌合部材19が嵌合して、電子ペン本体部10は、軸心方向にがたつかない状態となるように構成されている。
【0050】
この電子ペン1のペン体121のペン先に圧力(筆圧)が印加されると、電子ペン本体部10は、印加された圧力に応じて軸心方向に移動するような変位する。しかし、電子ペン本体部10の後端側は、上述したように、筐体2の後端側筐体22により位置規制されているので、この電子ペン本体部10の変位により、筆圧検出部17においては、感圧部172が、押子部材173によりペン先に印加された圧力と同じ圧力を、ペン先に印加された圧力の方向とは反対の方向から受ける状態となる。これにより、筆圧検出部17は、電子ペン本体部10のペン体121のペン先に印加された圧力を検出する。
【0051】
電子ペン1の筐体2において、ペン先側筐体21と後端側筐体22との螺合を外すことで、電子ペン本体部10を、筐体2から容易に抜き出すことができる。そして、インク筆記部12は、電子ペン構成ユニット10Uの第2のホルダー112のインク筆記部収納部112aから軸心方向に直交する方向に取り外すことができる。そして、インク筆記部12において、インクカートリッジ123をペン芯122から引き抜き、新たなインクカートリッジ123と交換することができる。インク筆記部12の全体を、交換するようにしても勿論よい。
【0052】
[実施形態の効果]
上述の構成の実施形態の電子ペン本体部10おいては、タブレットとの間で信号のやり取りをするためのインタラクション部は、コイル14が巻回されたフェライトコア13が収容部111bに収容されることで構成され、インク筆記部12の液体のインクが含浸されるペン体121とは、ペン芯122を介して反対側に配設されている。このため、インタラクション部を構成する電子部品としてのコイル14は、金属製のペン体121とは、樹脂製のペン芯122により離間されていると共に、収容部111bにより、インク筆記部12とは別空間となるように仕切られているので、金属製のペン体121の影響を受けにくくすることができると共に、液体のインクの影響を受けにくくすることができる。
【0053】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、筆圧検出部17は、電子ペン本体部10の後端部に設けられていると共に、ペン体121のペン先に印加される圧力(筆圧)に応じて電子ペン本体部10の全体が軸心方向に変位するように構成して、その電子ペン本体部10の軸心方向に変位に応じた圧力を検出する構成であって、ペン体のペン先に印加される筆圧を確実に検出することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態の電子ペン1では、電子ペン本体部10の全体が、筐体2内において、ペン体121のペン先に印加される圧力(筆圧)に応じて軸心方向に変位することを用いて筆圧を検出するようにした。しかし、インク筆記部12による筆記は、使用者が電子ペン1の筐体2を用紙に対して斜めに傾けた状態で行うことが多いと考えられる。このため、電子ペン本体部10の軸心方向の変位に基づく方法では、筆圧検出が困難になる場合も生じる。
【0055】
第2の実施形態の電子ペン1Bは、電子ペン本体部10Bを、電子ペン1Bの筐体2B内で、軸心方向に交差する方向に回転変位することができるように構成すると共に、筆圧検出部を、電子ペン本体部10Bを、軸心方向に交差する方向に回動変位させる力を検出できるように構成して、ペン体121のペン先に斜め方向から印加される圧力(筆圧)を、比較的良好に検出することができるようにした場合の例である。
【0056】
図8(A)は、この第2の実施形態の電子ペン1Bの構成例を説明するための縦断面図である。また、図8(B)及び図8(C)は、第2の実施形態の電子ペン1Bを構成する電子ペン本体部10Bの要部を説明するための図である。
【0057】
この第2の実施形態におけるインク筆記部12Bにおいては、ペン体121とインクカートリッジ123は、第1の実施形態と同様に構成されるが、ペン芯122Bは、第1の実施形態のペン芯122とは若干異なる構成とされている。
【0058】
すなわち、この第2の実施形態のインク筆記部12Bのペン芯122Bは、ペン芯本体1221の後端側に、回転軸保持部1222が結合されて構成されている。回転軸保持部1222は、電子ペン1Bの筐体の中心線位置よりもずれた位置において、軸心方向に直交する方向の回転軸1223を備える。そして、この回転軸保持部1222の後端側に、インクカートリッジ123が、着脱可能に取り付けられてインク筆記部12Bが構成される。
【0059】
この第2の実施形態の電子ペン本体部10Bの電子ペン構成ユニット10BUは、ホルダー11Bに、ハーフパイプ形状のインク筆記部収納部11Baと、インタラクション部を構成する収容部11Bbと、プリント基板15が載置される基板載置部11Bcとを備える。
【0060】
電子ペン構成ユニット10BUの収容部11Bb内には、図示は省略するが、第1の実施形態と同様にコイル14が巻回されたフェライトコア13が収容されていると共に、コイル14の両端のリード線14a,14bが、インク筆記部収納部11Baを介して、基板載置部11Bcまで延長して配置されている。基板載置部11Bcには、この実施形態においても、キャパシタ16が配設されているプリント基板15が載置されており、このプリント基板15上において、コイル14と、キャパシタ16と、筆圧検出部17Bにより構成される可変容量キャパシタとが並列に接続されて、共振回路が構成されている。
【0061】
そして、第1の実施形態と同様に、インク筆記部12Bのインクカートリッジ123及びペン芯122Bの回転軸保持部1222の部分が、ホルダー11Bのインク筆記部収納部11Ba内に収納される。このとき、筐体2Bの軸心方向に直交する方向において、ペン芯122Bのペン芯本体1221の、ペン体121が設けられている側とは反対側に収容部11Bbが重ねられるようにされる。
【0062】
そして、以上のように、インク筆記部12Bがホルダー11Bのインク筆記部収納部11Baに収納されて、ペン芯122Bに対して収容部11Bbが重ねられた状態において、インク筆記部12Bとホルダー11Bとが、固定部材125により固定される。この場合に、回転軸保持部1222は、筐体2Bの軸心方向に直交する方向において、回転軸1223が、ペン芯本体1221のペン体121が配設される側と同じ側おいて外部に露出する状態で固定される。
【0063】
そして、この実施形態では、図8(B)に示すように、ハーフパイプ形状の2個の軸受部材126及び127により、回転軸1223を軸受支持する状態で、ホルダー11Bのインク筆記部収納部11Baの一部を含んで回転軸保持部1222が覆われる。軸受部材126及び127は、図8(B)に示すように、ハーフパイプ形状の円周方向の互いに対向する端縁に、回転軸1223の軸心方向の一方及び他方の端部を軸受支持する軸受用穴126a及び127aを備えている。
【0064】
そして、この軸受部材126及び127は、軸受用穴126a及び127aで回転軸1223の両端を軸受支持する状態で、図8(C)に示すように、回転軸保持部1222及びホルダー11Bのインク筆記部収納部11Baの一部の周側面を覆うように結合される。この状態で、図8(C)に示すように、この第2の実施形態の電子ペン1Bの筐体2Bを構成するペン先側筐体21Bが、ホルダー11Bの基板載置部11Bcの後端側から挿入されて、図8(A)に示すように、結合された2個の軸受部材126,127が、このペン先側筐体21Bにより、その結合状態を保持されるようにされる。
【0065】
この第2の実施形態においては、筆圧検出部17Bは、軸心方向に交差する方向の圧力を検出するように、ホルダー11Bに対して取り付けられている。すなわち、この第2の実施形態に用いられる筆圧検出部17Bは、第1の実施形態の筆圧検出部17と同様の構成を備えるもので、ホルダー11Bの基板載置部11Bcの裏側の面に取り付け固定される取付固定部171Bと、感圧部172Bと、感圧部172Bに対して圧力を印加する押子部材173Bとからなる。押子部材173Bは、取付固定部171Bに対して筐体2Bの軸心方向に直交する方向に移動可能として感圧部172Bを押圧するような状態で、筆圧検出部17Bから外部に突出している。
【0066】
そして、図8(A)に示すように、筐体2Bを構成する後端側筐体22Bが、ホルダー11Bの全体を軸心方向に収納するような状態で、ペン先側筐体21Bと軸心方向に結合される。このとき、筆圧検出部17Bの押子部材173Bは、筐体2Bの軸心方向に直交する方向に、取付固定部171に対して移動可能の状態で、当該筆圧検出部17Bから外部に突出している。そのため、筆圧検出部17Bの押子部材173Bの先端は、図8(A)に示すように、筐体2Bの後端側筐体22Bの内周側壁面と接触するような状態となる。
【0067】
このように構成される第2の実施形態の電子ペン1Bのインク筆記部12Bのペン体121のペン先に、図8(A)の矢印ARaの方向に圧力が印加されると、電子ペン本体部10Bは、回転軸1223を回転中心として、後端側が、矢印ARbに示す方向に回動する。これにより、筆圧検出部17Bの押子部材173Bは、筐体2Bの後端側筐体22Bの内壁面に、ペン体121のペン先に印加された圧力に応じた力で、押し当てられることになる。このため、筆圧検出部17Bの押子部材173Bは、後端側筐体22Bの内周側壁面からの反力を受けて、感圧部172Bに圧力を加える状態となって、筆圧検出部17Bは、ペン体121のペン先に印加された圧力に応じた圧力を検出する。
【0068】
したがって、第2の実施形態の電子ペン1Bによれば、上述した第1の実施形態の電子ペン1と同様の作用効果が得られると共に、一般に傾けて使用されるインク筆記部12Bのペン体121のペン先に印加される圧力を、筆圧検出部17Bにより、良好に検出することができるという効果を奏する。
【0069】
なお、電子ペン本体部10Bを、電子ペン1Bの筐体2Bに対して軸心方向に直交する方向に回動可能の構成として、筆圧検出部17Bで軸心方向に直交する方向の圧力を検出することができるようにするための構成としては、上述した回転軸1223を用いた構成に限られるものではなく、種々の構成が可能であることは言うまでもない。
【0070】
[第3の実施形態]
上述の第1の実施形態の電子ペン1では、筆圧検出部17により筐体2の軸心方向の圧力により筆圧を検出するようにし、また、第2の実施形態の電子ペン1Bでは、筆圧検出部17Bにより筐体2Bの軸心方向に直交する方向の圧力により筆圧を検出するようにした。しかし、実際の筆圧は、電子ペンを傾けて使用する場合には、筐体の軸心方向の圧力と、軸心方向に直交する方向の圧力との合力となっている。
【0071】
第3の実施形態では、このことに鑑み、筆圧検出手段として、第2の実施形態の電子ペン1Bの筆圧検出部17Bに加えて、第1の実施形態の電子ペンの筆圧検出部17と同様の構成の筆圧検出部17Cを備える電子ペン1Cを提供する。
【0072】
図9は、この第3の実施形態の電子ペン1Cの構成例を示す断面図であり、これは、第2の実施形態の電子ペン1Bの構成例を説明するための図8(A)に対応するものである。この図9において、上述した第2の実施形態の電子ペン1Bと同一部分には、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。
【0073】
この例の電子ペン1Cにおいては、図9に示すように、電子ペン構成ユニット10CUのホルダー11Bの基板載置部11Bcの後端側に、筐体2Cの軸心方向の圧力を検出する筆圧検出部17Cを設ける。この筆圧検出部17Cは、第1の実施形態における筆圧検出部17と同様の構成を有し、ホルダー11Bの基板載置部11Bcの後端部に対して固定するための取付固定部171Cと、感圧部172Cと、押子部材173Cとからなる。そして、押子部材173Cの外部に突出している部分に、嵌合部材19Cが装着される。
【0074】
この第3の実施形態の電子ペン1Cの筐体2Cは、第2の実施形態の電子ペン1Bと同様に、ペン先側筐体21Cと後端側筐体22Cとからなり、ペン先側筐体21Cは、第2の実施形態におけるペン先側筐体21Bと同一の構成とされる。この第3の実施形態における後端側筐体22Cは、ペン先側筐体21Cと結合することで、筐体2Cを構成するが、後端側筐体22Cの後端側は開口とされずに、中空部が閉塞された構成とされており、軸心方向に直交する方向の内壁面を有する。
【0075】
この後端側筐体22Cの後端側の軸心方向に直交する方向の内壁面には、電子ペン本体部10Cの後端側の嵌合部材19Cが嵌合される凹部22Caが設けられている。そして、電子ペン本体部10Cを収納した状態で、ペン先側筐体21Cと、後端側筐体22Cとを結合したときに、後端側筐体22Cの凹部22Ca内に、電子ペン本体部10Cの嵌合部材19Cが嵌合して、電子ペン本体部10Cは、軸心方向にがたつかない状態となるように構成されている。
【0076】
この第3の実施形態では、後端側筐体22Cの後端側の軸心方向に直交する方向の内壁面の凹部22Caは、図9に示すように、電子ペン本体部10Cの後端側の嵌合部材19Cが軸心方向に直交する方向に変位することが可能なように、嵌合部材19Cよりも大きなものとされている。このようにするのは、筆圧検出部17Bで軸心方向に直交する方向の筆圧を検出するために、電子ペン本体部10Cの全体が、回転軸1223を回転中心として回動変位することを可能するためであり、凹部22Caの大きさは、筆圧検出部17Bで軸心方向に直交する方向の筆圧を検出することを可能にする大きさとされる。
【0077】
そして、この第3の実施形態では、このようにペン先側筐体21Cと、後端側筐体22Cとを結合したときに、ペン先側筐体21Cと、後端側筐体22Cとの間には、図9に示すように、軸心方向の筆圧を検出するのに十分な長さの空隙gが生じるように構成されている。この空隙gは、インク筆記部12Bのペン体121のペン先に圧力が印加されたときに、電子ペン本体部10Cの全体が、筐体2Cの後端側筐体22Cに対して、軸心方向に変位することを可能とするためである。その他は、第2の実施形態の電子ペン1Bと同様の構成とされている。
【0078】
この第3の実施形態の電子ペン1Cにおいては、インク筆記部12Bのペン体121のペン先に圧力が印加されると、その軸心方向の成分は、筆圧検出部17Cで検出され、また、その軸心方向に直交する方向の成分は、筆圧検出部17Bで検出される。そして、この第3の実施形態の電子ペン1Cでは、筆圧情報は、筆圧検出部17Cで検出された筆圧情報と、筆圧検出部17Bで検出された筆圧情報とを、位置検出装置に送信するようにする。そして、位置検出装置では、筆圧検出部17Cで検出された筆圧情報と、筆圧検出部17Bで検出された筆圧情報とを合成(ベクトル合成)することで、電子ペン1Cのペン体121のペン先に印加された筆圧として検出する。
【0079】
なお、電子ペン1Cにおいて、筆圧検出部17Cで検出した筆圧情報と、筆圧検出部17Bで検出した筆圧情報とを合成(ベクトル合成)する演算を行い、その合成した筆圧情報を位置検出装置に送信するようにしたもよい。
【0080】
[位置検出装置で検出される電子ペンの指示位置の補正について]
上述した実施形態の電子ペン1,1B及び1Cにおいては、電磁誘導方式のインタラクション部を構成する収容部111b,111Bbの位置は、インク筆記部12、12Bのペン体121のペン先とは軸心方向に直交する方向にずれている。このために、位置検出装置で検出された電子ペン1,1B及び1Cの指示位置の座標は、インク筆記部12、12Bのペン体121のペン先による指示位置の座標とはずれる。
【0081】
しかしながら、上述した実施形態の電子ペン1,1B及び1Cにおいては、インク筆記部12,12Bと、電子ペン構成ユニット10U及び10BUのインタラクション部を構成する収容部111b及び111Bbとは結合されていて、互いの位置関係は固定されている。
【0082】
そこで、この実施形態の電子ペン1,1B,1Cと共に使用する位置検出装置においては、検出された電子ペン1,1B,1Cによる指示位置の座標を、インク筆記部12,12Bと、電子ペン構成ユニット10U及び10BUのインタラクション部を構成する収容部111b及び111Bbとの位置関係に基づいて補正する補正回路を設ける。これにより、電子ペン1,1B,1Cのインク筆記部12、12Bのペン体121のペン先による指示位置を、位置検出装置で正しく検出することができる。
【0083】
[第4の実施形態]
上述の第1~第3の実施形態の電子ペン1,1B,1Cは、いずれも電磁誘導方式の電子ペンに適用した場合であるが、この発明は、電磁誘導方式に限らず、静電結合方式など、他の方式の電子ペンにも適用可能であることは勿論である。
【0084】
図10は、この発明をアクティブ静電結合方式の電子ペンに適用した、第4の実施形態の電子ペン本体部10Dの一例を説明するための図である。この図10に示す電子ペン本体部10Dの例は、第1の実施形態の電磁誘導方式の電子ペン1の構成を、アクティブ静電結合方式の電子ペンに変更したもので、図1に示したものと同一部分には、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。
【0085】
この図10に示す第4の実施形態の電子ペン本体部10Dにおいて、インク筆記部12の構成は、第1の実施形態の電子ペン1と同様であって、ペン体121と、ペン芯122と、インクカートリッジ123とからなる。
【0086】
この第4の実施形態の電子ペン本体部10Dにおいては、電子ペン構成ユニット10DUは、第1の実施形態の電子ペン本体部10のホルダー11と同様の構成を備え、第1の実施形態の第1のホルダー111とは若干異なる第1のホルダー111Dと、第1の実施形態と同様の構成の第2のホルダー112とからなる。
【0087】
すなわち、第1のホルダー111Dにおいては、インク筆記部12のペン芯122のペン体121とは反対側のインク溝122a側に重ねられる収容部111Dbを備えるが、この収容部111Dbには、コイル14が巻回されたフェライトコア13の代わりに、導電性の棒状体31が収容される。この導電性の棒状体31は、筆記機能を備えないアクティブ静電結合方式の電子ペンの芯体を構成する。
【0088】
この例では、導電性の棒状体31は、リード線33と接続され、このリード線33が、第1のホルダー111Dと第2のホルダー112との間の隙間を通って、第2のホルダー112の基板載置部112cに設けられているプリント基板15Dにまで延長されている。プリント基板15Dには、信号発生回路32が設けられており、リード線33は、この信号発生回路32の出力端に接続されている。
【0089】
その他の構成は、プリント基板15Dに対して、筆圧検出部17が結合されることを含め、第1の実施形態の電子ペン1と同様に構成される。
【0090】
この第4の実施形態の電子ペン1Dでは、静電結合方式で位置検出装置と結合して、信号発生回路32からの信号を収容部111Dbの導電性の棒状体31から送信することで、位置検出装置とインタラクションする。この例では、筆圧検出部17で検出した筆圧情報は、信号発生回路32からの信号の周波数の変化して送信する。なお、信号発生回路32からの信号をASK(Amplitude Shift Keying)信号として、筆圧情報を含めるようにしてもよい。その他の動作は、第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0091】
[その他の実施形態又は変形例]
上述の実施形態では、筆圧情報は、位置検出装置と電磁誘導方式や静電結合方式でインタラクションする手段により、電子ペンから位置検出装置に送信するようにしたが、電子ペンと、位置検出装置とに、例えば近距離無線通信方式による無線通信部を設けて、その無線通信部を通じて、別途送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1,1B,1C,1D…電子ペン、2,2B,2C…筐体、10,10B,10C,10D…電子ペン本体部、10U,10DU…電子ペン構成ユニット、11,11B,11C,11D…ホルダー、12,12B…インク筆記部、13…フェライトコア、14…コイル、15…プリント基板、16…キャパシタ、17,17B,17C…筆圧検出部、111a…インク筆記部収納部、111b…収容部、121…ペン体、122,122B…ペン芯、123…インクカートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10