(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169960
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】配線曲げ処理用の治具及びこの治具を用いた配線曲げ処理方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/14 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H02G1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081324
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智
(72)【発明者】
【氏名】菅原 大樹
【テーマコード(参考)】
5G355
【Fターム(参考)】
5G355AA03
5G355AA05
5G355BA08
5G355CA02
(57)【要約】
【課題】
基板と配線との接続部の破損を防止しながら、当該配線に所望の曲げ癖を付与可能とする。
【解決手段】
ベース板2に設けられた挿入凹部5に基板7を配置するとともに、このベース板2に上記挿入凹部5から端縁4にかけて連続して設けられた配線曲げ処理用の誘導溝8に、上記挿入凹部5内の基板7から連続する配線6を挿入配置するとともに、この配線6の先端側を、上記誘導溝8から上記ベース板2の外方に配置した後、上記被覆板3に設けられた被係合部14を上記ベース板2に設けられた係合部11に係合した状態で、上記ベース板2の表面を被覆可能とする被覆板3を被覆した後、上記配線6の先端側を、上記ベース板2の端縁4側の外側面18に沿って曲げることにより、上記配線6に曲げ癖をつける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板と、このベース板の表面を被覆する被覆板とを備え、上記ベース板には、当該ベース板の上面にて上記被覆板を位置固定するための係合部と、基板を挿入配置可能とする挿入凹部と、この挿入凹部から上記ベース板の端縁にかけて連続する配線曲げ処理用の誘導溝とが設けられ、上記被覆板には、上記係合部に係合可能とする被係合部が設けられたことを特徴とする配線曲げ処理用の治具。
【請求項2】
上記被覆板は、透明又は半透明であることを特徴とする請求項1の治具。
【請求項3】
上記係合部はピン部材であって、上記被覆板の上記ピン部材の対応位置には、当該ピン部材を挿通可能とする挿通孔が設けられ、当該挿通孔を被係合部としたことを特徴とする請求項1の配線曲げ処理用の治具。
【請求項4】
上記誘導溝は、上記ベース板の端縁とは直交方向に設けられたことを特徴とする請求項1の配線曲げ処理用の治具。
【請求項5】
ベース板に設けられた挿入凹部に基板を配置するとともに、このベース板に上記挿入凹部から端縁にかけて連続して設けられた配線曲げ処理用の誘導溝に、上記挿入凹部内の基板から連続する配線を挿入配置するとともに、この配線の先端側20を、上記誘導溝から上記ベース板の外方に配置した後、上記被覆板に設けられた被係合部を上記ベース板に設けられた係合部に係合した状態で、上記ベース板の表面を被覆可能とする被覆板を被覆した後、上記配線の先端側を、上記ベース板の端縁4側の外側面に沿って曲げることにより、上記配線に曲げ癖をつけることを特徴とする配線曲げ処理用の治具を用いた配線曲げ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に接続した配線について、当該基板との接続部から近距離で配線を所望する位置に誘導する場合に、配線に誘導方向への曲げ癖をつけるための治具、及びこの治具を用いた配線の曲げ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に接続した配線を、当該基板と配線との接続部から近距離の位置に誘導する場合には、当該配線を所望の方向に曲げて誘導する必要があり、従来ではこの配線の曲げ処理作業を手作業で行うことが一般的となっていた。しかしながら、手作業で配線の曲げ処理作業を行った場合には、曲げ角度や曲げRに大きなばらつきが発生することで、特に曲げRが大きい場合には基板と配線の接続部近傍から配線の曲げ始めが位置する場合には、基板と配線との接続部に大きな負荷がかかり、当該接続部において断線などの不具合が発生するおそれがあった。
【0003】
そこで特許文献1に示す如く、配線にあらかじめ曲げ癖をつける処理方法が既に公知となっている。
【特許文献1】特開2012-190616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き従来の方法を採用した場合、配線の曲げ癖をつけることは可能となるが、配線と基板との接続部の破損を防ぐことは困難であるため、この課題については依然として解決されていないものであった。
【0005】
そこで本願の第一、第二発明は上記の如き課題を解決しようとするものであって、基板と配線との接続部の破損を防止しながら、当該配線に所望の曲げ癖を付与可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1発明は上述の如き課題を解決したものであって、ベース板と、このベース板の表面を被覆する被覆板とを備え、上記ベース板には、当該ベース板の上面にて上記被覆板を位置固定するための係合部と、基板を挿入配置可能とする挿入凹部と、この挿入凹部から上記ベース板の端縁にかけて連続する配線曲げ処理用の誘導溝とが設けられ、上記被覆板には、上記係合部に係合可能とする被係合部が設けられたものである。
【0007】
また本願の第2発明は、上記第1発明の治具を用いた配線曲げ処理方法であって、ベース板に設けられた挿入凹部に基板を配置するとともに、このベース板に上記挿入凹部から端縁にかけて連続して設けられた配線曲げ処理用の誘導溝に、上記挿入凹部内の基板から連続する配線を挿入配置するとともに、この配線の先端側を、上記誘導溝から上記ベース板の外方に配置した後、上記被覆板に設けられた被係合部を上記ベース板に設けられた係合部に係合した状態で、上記ベース板の表面を被覆可能とする被覆板を被覆した後、上記配線の先端側を、上記ベース板の端縁側の外側面に沿って曲げることにより、上記配線に曲げ癖をつけるものである。
【0008】
また上記本願の第1発明において、上記被覆板は透明又は半透明であってもよい。
【0009】
また上記本願の第1発明において、上記係合部はピン部材であって、上記被覆板の上記ピン部材の対応位置には、当該ピン部材を挿通可能とする挿通孔が設けられ、当該挿通孔を被係合部としたものであってもよい。
【0010】
また上記本願の第1発明において、上記誘導溝は、上記ベース板の端縁とは直交方向に設けられたものであってもよい。これにより、上記誘導溝とベース板の端縁とで形成される角部が直角となることから、この角部に沿って配線を曲げた場合には、当該配線と基板との接続部から離れた位置で、当該配線に直角付近の角度の曲げ癖をつけることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本願の第1、2発明は上記の如く、ベース板には、内部に基板を挿入配置可能とする挿入凹部を設けるとともに、この挿入凹部から上記ベース板の端縁にかけて連続する配線曲げ処理用の誘導溝を設けたものであるから、基板と、この基板から連続する配線との接続状態をベース板にて固定することができるため、良好な状態に維持することが可能となる。
【0012】
また、上記誘導溝と上記ベース板の端縁とがなす角度が一定となるため、当該誘導溝から延びる配線を上記ベース板の端縁に沿って配線を曲げることにより、配線の基板との接続部から離れた位置において、当該配線に一定の角度で曲げ癖をつけることができる。従って、配線の基板との接続部に対する負荷低減および複数の配線を全て一定の角度に曲げることができるため、配線の曲げ角度のばらつきを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本願第1、2発明の実施例1を示す治具、基板、及び配線の平面図。
【
図2】実施例1のベース板、及び被覆板を示す平面図。
【
図3】実施例1において、ベース板と被覆板との対向状態を示す斜視図。
【
図4】実施例1において基板及び配線を配置したベース板を示す平面図。
【
図5】実施例1において曲げ処理を行った基板及び配線の平面図。
【実施例0014】
本願の第1、2発明に係る実施例1を以下に説明する。
図1に示す如く、(1)は配線曲げ処理用の治具である。この治具(1)は、
図2に示す如く平板状で長方形のベース板(2)と、当該ベース板(2)と同寸法且つ同形状で透明な被覆板(3)とから成るものである。そして上記ベース板(2)は、中央部よりも端縁(4)側に長方形状の挿入凹部(5)を設けている。そしてこの挿入凹部(5)は、曲げ処理を行う配線(6)を接続した基板(7)を挿入配置可能な寸法にて形成している。またこの挿入凹部(5)は、
図2に示す如くベース板(2)の端縁(4)とは一定間隔を介して当該端縁(4)と平行に配置している。
【0015】
また上記挿入凹部(5)とベース板(2)の端縁(4)との間には、当該端縁(4)と直交方向に誘導溝(8)を設けている。この誘導溝(8)は
図2に示す如く、挿入凹部(5)から端縁(4)まで連続して形成するとともに、その深さを挿入凹部(5)よりも浅いものとしている。また上記ベース板(2)には、当該挿入凹部(5)に近い角部(10)と、この角部(10)から上記挿入凹部(5)をはさんだ対角線上に、それぞれ本実施例の係合部(11)であるピン部材(12)を突設している。
【0016】
また上記被覆板(3)は、上記ベース板(2)と同じ寸法且つ同形状に形成したものであって、両者を重ね合わせた場合には、
図1に示す如くぴったりと重なり合うように形成している。また当該被覆板(3)において、上記ベース板(2)に設けたピン部材(12)の対応位置に、
図3に示す如く当該ピン部材(12)を挿通可能な大きさの挿通孔(13)をそれぞれ2か所に設けており、この挿通孔(13)を本実施例の被係合部(14)としている。またこの被覆板(3)には、
図1に示す如く、上記挿入凹部(5)に挿入配置する基板(7)の突部(15)を挿入可能とする挿通開口(16)を、上記基板(7)の突部(15)が配置される位置に対応する位置に設けている。
【0017】
上記の如く形成した治具(1)を用いて配線(6)の曲げ処理を行う方法について以下に説明する。まず、上記の如く形成した挿入凹部(5)内に、基板(7)を挿入配置する。この時、当該基板(7)には複数本の配線(6)が接続されていることから、
図4に示す如くこれらの配線(6)を上記誘導溝(8)内に並列に並べた状態で挿入配置する。
【0018】
この時、当該誘導溝(8)は上記挿入凹部(5)よりも浅く形成していることから、配線(6)の基板(7)との接続部(17)に負荷をかけることなく配線(6)を上記誘導溝(8)に挿入配置することができる。よって、上記基板(7)と配線(6)との接続状態を良好に保つことができる。
【0019】
そして、上記の如く挿入凹部(5)及び誘導溝(8)内に基板(7)及び全ての配線(6)を各々配置するとともに、当該配線(6)の先端側(20)を上記誘導溝(8)から上記ベース板(2)の外方に配置した状態で、
図3に示す如くベース板(2)の上方から被覆板(3)を被覆する。
【0020】
この時、上記ベース板(2)に設けたピン部材(12)の対応位置に、当該ピン部材(12)を挿通可能な大きさの挿通孔(13)を設けていることから、ベース板(2)の2か所のピン部材(12)が挿通孔(13)に挿通され、ピン部材(12)と挿通孔(13)とが係合した状態でベース板(2)上に被覆板(3)が配置されるものとなる。
【0021】
また被覆板(3)には、上記挿入凹部(5)に配置した基板(7)の突部(15)を挿入可能とする挿通開口(16)が当該突部(15)の対応位置に配置されていることから、ベース板(2)上に被覆板(3)を被覆することにより、当該挿通開口(16)から基板(7)の突部(15)が突出した状態で配置される。以上より、ベース板(2)と被覆板(3)とが
図1に示す如く外周及び対向面においてぴったりと重なり合った状態で接合され、当該ベース板(2)上の基板(7)と配線(6)とが被覆板(3)により位置固定されるものとなる。
【0022】
そのため、上記の如くベース板(2)に配置された基板(7)と、当該基板(7)から連続する配線(6)との接続部(17)がベース板(2)の挿入凹部(5)、誘導溝(8)、及び被覆板(3)にて固定されるものとなる。その後、このような状態で上記配線(6)を所望する方向への曲げ処理を行うことにより、上記基板(7)と配線(6)との接続部(17)への負荷低減となることから、当該配線(6)や接続部(17)が破損したり切断したりするという事態を防止することが可能となり、基板(7)と当該基板(7)に接続された複数の配線(6)との接続状態を良好に維持しながら、上記複数の配線(6)の曲げ処理を行うことができる。
【0023】
このような状態において、上記ベース板(2)から外方に位置する配線(6)を、一本ずつ曲げる曲げ処理を行う。即ち、上記各配線(6)の先端側(20)を、上記ベース板(2)の端縁(4)側の外側面(18)に沿って曲げる。これにより、配線(6)と基板(7)との接続部(17)から離れた位置で所望する方向へ配線(6)を曲げられることおよび上記誘導溝(8)と上記ベース板(2)の端縁(4)とがなす角度が一定であることから、上記の如く誘導溝(8)から延びる配線(6)を上記ベース板(2)の端縁(4)に沿って配線(6)を曲げることにより、上記配線(6)に一定の角度で曲げ癖をつけることができる。
【0024】
そして全ての配線(6)の曲げ処理が完了した後、基板(7)及び配線(6)を上記ベース板(2)から取り出す。この時、
図5に示す如く複数の配線(6)が全て一定の角度に曲げ処理をされた状態であるため、当該複数の配線(6)の曲げ角度のばらつきを防止することが可能となる。また、上記の如くベース板(2)上に被覆板(3)が被覆された状態で配線(6)の曲げ処理作業が行われるため、作業者の手が基板に直接接触する事態を防ぐことができる。よって、作業時にはめている作業用軍手による繊維付着の抑制にもつながる。