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特開2023-169962電子楽器、楽曲データ処理方法および楽曲データ処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169962
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電子楽器、楽曲データ処理方法および楽曲データ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G10H1/00 102Z
G10H1/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081326
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】須佐美 亮
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478EB33
(57)【要約】
【課題】楽曲データを用いた鍵盤の鍵の自動操作に対するユーザの違和感を抑制できる電子楽器、楽曲データ処理方法および楽曲データ処理プログラムを提供すること。
【解決手段】鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定する音色の優先度(音色優先度)が設定される優先音色テーブル11cが設けられ、MIDIデータMDのチャンネルのうち、優先音色テーブル11cの音色優先度が高い音色のチャンネル、例えば主旋律を構成する音色のチャンネルが鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定される。これにより、MIDIデータMDに基づき発音される楽音の主旋律と、鍵2aの自動操作とを一致させることができるので、当該自動操作に対するユーザHの違和感を抑制できる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動操作が可能な鍵を有する鍵盤を備えた電子楽器であって、
1以上のチャンネルを有し、チャンネル毎に音色を含む演奏情報が設定される楽曲データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段で取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に基づく優先度である音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択する選択手段と、
前記データ取得手段で取得された楽曲データにおける前記選択手段で選択されたチャンネルの演奏情報に基づき、前記鍵盤の鍵を自動操作させる自動操作手段と、を備えていることを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
前記音色に応じた音色優先度が記憶される優先音色記憶手段を備え、
前記選択手段は、前記データ取得手段で取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に対応する音色優先度を前記優先音色記憶手段から取得し、取得された音色優先度が高い音色のチャンネルを選択するものであることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
【請求項3】
前記楽曲データは、MIDIデータであり、
前記選択手段は、前記データ取得手段で取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色のプログラム番号が小さいほど高い音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記選択手段によるチャンネルの選択において、選択されるチャンネルの優先度であるチャンネル優先度が記憶される優先チャンネル記憶手段を備え、
前記選択手段は、複数の前記チャンネルに同一の音色優先度が設定された場合、当該複数のチャンネルのうち、前記優先チャンネル記憶手段に記憶されるチャンネル優先度が高いチャンネルを選択するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項5】
前記優先チャンネル記憶手段には、ピアノ演奏における左手パート又は右手パートに対応する所定のチャンネルのチャンネル優先度が高く設定されていることを特徴とする請求項4記載の電子楽器。
【請求項6】
1以上の複数のチャンネルが特定チャンネルに設定され、
前記選択手段は、複数の前記特定チャンネルに同一の音色優先度が設定された場合、対応する前記特定チャンネルの全てを前記鍵盤を自動操作させるチャンネルに選択するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項7】
前記特定チャンネルとして、ピアノ演奏における左手パート又は右手パートに対応する所定のチャンネルが設定されることを特徴とする請求項6記載の電子楽器。
【請求項8】
前記楽曲データは、MIDIデータであり、
前記楽曲データの演奏情報におけるリセット系のパケットを実行した場合に前記選択手段を実行するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項9】
前記データ取得手段で取得された楽曲データに基づき楽音を出力する楽音出力手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項10】
1以上のチャンネルを有し、チャンネル毎に音色を含む演奏情報が設定される楽曲データに基づいて所定の処理を実行する楽曲データ処理方法であって、
前記楽曲データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に基づく優先度である音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択する選択ステップと、
前記データ取得ステップで取得された楽曲データにおける前記選択ステップで選択されたチャンネルの演奏情報に基づいて前記所定の処理を実行する処理実行ステップと、を備えていることを特徴とする楽曲データ処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、1以上のチャンネルを有し、チャンネル毎に音色を含む演奏情報が設定される楽曲データに基づいて所定の処理を実行させる楽曲データ処理プログラムであって、
前記楽曲データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に基づく優先度である音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択する選択ステップと、
前記データ取得ステップで取得された楽曲データにおける前記選択ステップで選択されたチャンネルの演奏情報に基づいて前記所定の処理を実行する処理実行ステップと、を前記コンピュータに実行させることを楽曲データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子楽器、楽曲データ処理方法および楽曲データ処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、MIDIインターフェース14を介して外部のシーケンサから発音開始指示および発音停止指示を取得し、発音制御部16で楽音を生成して放音すると共に、鍵駆動制御部15でソレノイド23により楽音の放音とタイミングを合わせて鍵21aを動作(自動操作)させる電子楽器10が開示されている。これにより、ユーザにあたかも鍵21aの自動操作に応じて、楽音が放音されているように見せることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-209379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、MIDIデータには複数のチャンネルが設けられ、そのチャンネル毎に発音させる音色や発音開始指示、発音停止指示等の演奏情報が設定される。従来、MIDIデータのチャンネルのうち、設定された特定のチャンネルを鍵21aを動作させるチャンネルとしていた。しかし、MIDIデータによっては上記の設定された特定のチャンネルに、例えば、ベース等の主旋律を構成しない音色が設定されることもある。このような場合、放音される楽音の主旋律と鍵21aの動作とが一致しないため、ユーザに違和感を抱かせる虞がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、楽曲データを用いた鍵盤の鍵の自動操作に対するユーザの違和感を抑制できる電子楽器、楽曲データ処理方法および楽曲データ処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の電子楽器は、自動操作が可能な鍵を有する鍵盤を備えたものであり、1以上のチャンネルを有し、チャンネル毎に音色を含む演奏情報が設定される楽曲データを取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段で取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に基づく優先度である音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択する選択手段と、前記データ取得手段で取得された楽曲データにおける前記選択手段で選択されたチャンネルの演奏情報に基づき、前記鍵盤の鍵を自動操作させる自動操作手段と、を備えている。
【0007】
本発明の楽曲データ処理方法は、1以上のチャンネルを有し、チャンネル毎に音色を含む演奏情報が設定される楽曲データに基づいて所定の処理を実行する方法であり、前記楽曲データを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップで取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に基づく優先度である音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択する選択ステップと、前記データ取得ステップで取得された楽曲データにおける前記選択ステップで選択されたチャンネルの演奏情報に基づいて前記所定の処理を実行する処理実行ステップと、を備えている。
【0008】
また、楽曲データ処理プログラムは、コンピュータに、1以上のチャンネルを有し、チャンネル毎に音色を含む演奏情報が設定される楽曲データに基づいて所定の処理を実行させるプログラムであり、前記楽曲データを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップで取得された楽曲データに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に基づく優先度である音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択する選択ステップと、前記データ取得ステップで取得された楽曲データにおける前記選択ステップで選択されたチャンネルの演奏情報に基づいて前記所定の処理を実行する処理実行ステップと、を前記コンピュータに実行させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電子ピアノの外観を表す図である。
図2】(a)及び(b)は、MIDIデータのチャンネル構成を表す図である。
図3】電子ピアノの機能ブロック図である。
図4】電子ピアノの電気的構成を示すブロック図である。
図5】(a)は、優先音色テーブルを模式的に表す図であり、(b)は、優先CHテーブルを模式的に表す図であり、(c)は、音色スコアテーブルを模式的に表す図である。
図6】メイン処理のフローチャートである。
図7】音色設定処理のフローチャートである。
図8】変形例における音色設定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して本実施形態の電子ピアノ1の概要を説明する。図1は、電子ピアノ1の外観を表す図であり、電子ピアノ1は、ユーザHの演奏に基づいた楽音や、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格の楽曲データであるMIDIデータMDに基づいて楽音を発音する電子楽器である。
【0011】
電子ピアノ1には、主に鍵盤2と、ユーザHからの各種設定が入力される設定キー3と、各種設定の設定状態等が表示されるLCD4とが配設される。鍵盤2は、ユーザHの演奏による演奏情報を取得するための入力装置である。鍵盤2には、複数の鍵2aが配設され、ユーザHによる鍵2aの押鍵/離鍵操作に応じたMIDI規格の演奏情報が、CPU10(図4参照)へ出力され、楽音として出力される。
【0012】
鍵盤2には、鍵2aのそれぞれを独立して上下に駆動させるソレノイド2bが設けられる。ユーザHによって指定されたMIDIデータMDにおいて、ノートオンが実行された場合にソレノイド2bにより鍵2aを下方に駆動させることで、鍵2aの押鍵が実現される。一方で、MIDIデータMDにおいてノートオフが実行された場合に、ソレノイド2bにより鍵2aを上方に駆動させることで鍵2aの離鍵が実現される。
【0013】
ユーザHに指定されたMIDIデータMDに基づくソレノイド2bによる鍵2aの押鍵/離鍵と、当該MIDIデータMDによる楽音の発音とを同期させることで、ユーザHに電子ピアノ1が自動演奏されているように見せることができる。以下、このようなMIDIデータMDに基づきソレノイド2bを駆動させ、鍵2aを動作させることを「鍵2aの自動操作」という。
【0014】
MIDIデータMDには1以上のチャンネルが設けられ、そのチャンネル毎に音色やノートオン・ノートオフ等の演奏情報が設定される。そのため、MIDIデータMDに含まれる複数のチャンネルから、例えばピアノ演奏における左手パートと右手パートとの主旋律のような、特定の演奏情報が含まれるチャンネルを選択し、鍵2aの自動操作させるチャンネルに設定する必要がある。本実施形態では、かかるチャンネルの選択を、チャンネルの演奏情報における音色に基づいて行われる。図2を参照して、本実施形態におけるチャンネル選択の概要を説明する。
【0015】
図2(a)は、MIDIデータMD1のチャンネル構成を表す図であり、図2(b)は、別のMIDIデータMD2のチャンネル構成を表す図である。本実施形態のMIDIデータMDには、ch1~ch16までの16個のチャンネルが設けられ、それぞれに演奏情報が設定される。MIDIデータMDには、ch1~ch16に全て演奏情報が設定される必要はなく、楽曲に応じた数のチャンネルが設けられる。図2及び後述の図5において「-」は、チャンネルが設定されていないことを表す。なお、MIDIデータMDに設けられるチャンネルは16個に限らず、16個以上でも16個以下でも良い。
【0016】
MIDIデータMDに設定される音色には、それぞれを識別するためのバンク情報およびプログラム番号(PC)の組み合わせが予め定められている。バンク情報として最上位ビットを表す「MSB」と、最下位ビットを表す「LSB」とが設けられる。MSB、LSB及びプログラム番号には、それぞれ0~127の整数が設定される。これらMSB及びLSBと、プログラム番号(PC)との組み合わせによって音色が識別される。
【0017】
図2,5には、MIDIデータMDの各チャンネルに設定される音色のMSB、LSB及びプログラム番号が、「MSB/LSB/プログラム番号(PC)」の形式で表されている。例えば、図2(a)のMIDIデータMD1のch1には、MSBが「1」、LSBが「68」、プログラム番号が「0」の音色が設定されており、かかる音色は「ピアノB」が対応している。図2(b)のMIDIデータMD2のch3には、MSBが「65」、LSBが「0」、プログラム番号が「58」の音色が設定されており、かかる音色は「トロンボーン」が対応している。
【0018】
このようなMIDIデータMDから、鍵2aを自動操作させるチャンネルが選択される。従来技術においては、MIDIデータMDのch3とch4とを鍵2aを自動操作させるチャンネルに選択していた。これは、MIDIデータMDのch3とch4とに、ピアノ演奏の主旋律である左手パートと右手パートとを対応させていることが多いからである。例えば、図2(a)のMIDIデータMD1においては、ch3とch4とをピアノ演奏の左手パートと右手パートに対応させるため、それぞれに「ピアノD」が設定される。
【0019】
しかし、上記した通りMIDIデータMDには、楽曲に応じてチャンネルの音色を設定できる。例えば、図2(b)のMIDIデータMD2のように、ch1に主旋律を構成する「ピアノB」が設定される一方で、ch3とch4とには「トロンボーン」と「トレモロ・ストリング」とが設定される。このようなMIDIデータMD2において、一律にch3とch4とを鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定すると、MIDIデータMD2に基づいて発音される楽音の主旋律と鍵2aの自動操作とが食い違い、ユーザHに違和感を生じさせてしまう。
【0020】
そこで本実施形態では、鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定する音色の優先度である、音色優先度が設定される後述の優先音色テーブル11c(図5(a))が設けられ、MIDIデータMDのチャンネルのうち、優先音色テーブル11cの音色優先度が高い音色が設定されているチャンネルが取得され、鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定される。
【0021】
よって、MIDIデータMDにおけるチャンネルの音色の割り当てがどのようであっても、音色優先度が高い音色、例えば主旋律を構成する音色が鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定される。これにより、MIDIデータMDに基づいて発音される楽音の主旋律と、鍵2aの自動操作とを一致させることができるので、発音される楽音と自動操作とによるユーザHの違和感を抑制できる。
【0022】
また、MIDIデータMDに含まれる音色が優先音色テーブル11cに設定されていない場合、音色優先度として該当する音色のプログラム番号(PC)に応じた値が設定される。具体的に、音色のプログラム番号が小さいほど、高い音色優先度が設定される。MIDIデータMDにおいてプログラム番号が小さな音色には、ピアノやオルガン等の主旋律となり得る音色が割り当てられていることが多い。そこで、プログラム番号が小さな音色のチャンネルに高い音色優先度が設定されることで、主旋律に設定され得る音色を確率良く鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定できる。
【0023】
上記したch3,ch4を主旋律として作成されたMIDIデータMDとは別に、複数のチャンネルに同一の音色が設定され、更にそのうちの特定のチャンネルが主旋律として作り込まれているMIDIデータMDもある。本実施形態では、選択されるチャンネルの優先度であるチャンネル優先度が設定された後述の優先CHテーブル11d(図5(b))が設けられ、MIDIデータMDにおいて同一の音色優先度が複数のチャンネルに設定された場合に、これら複数のチャンネルのうち優先CHテーブル11dにおいてチャンネル優先度が高いチャンネルが鍵2aを自動操作されるチャンネルに設定される。
【0024】
これにより、同一の音色かつ特定のチャンネルである、MIDIデータの主旋律のチャンネルを確率良く鍵2aを自動操作させるチャンネルに選択できる。
【0025】
更に上記した従来技術のように、MIDIデータMDのch3,ch4に主旋律として同一の音色が設定され、ch3,ch4に同一の音色優先度が設定される場合、他のチャンネルの音色優先度に関わらずch3,ch4が鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定される。これにより、ch3,ch4を主旋律として作成されたMIDIデータMDで鍵2aを自動操作させる際に、これらch3,ch4を鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定できる。
【0026】
なお、かかる動作は、ch3,ch4に同一の音色優先度が設定される場合に限らず、例えばch6,ch7に同一の音色優先度が設定される場合等、他の複数のチャンネルに同一の音色優先度が設定される場合に、それらの複数のチャンネルを鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定しても良い。
【0027】
次に、図3を参照して電子ピアノ1の機能を説明する。図3は、電子ピアノ1の機能ブロック図である。図3に示すように、電子ピアノ1は、データ取得手段100と、選択手段101と、自動操作手段102とを有する。
【0028】
データ取得手段100は、MIDIデータMDを取得する手段であり、図4で後述のCPU10で実現される。選択手段101は、データ取得手段で取得されたMIDIデータMDに含まれるチャンネル毎に、演奏情報に設定される音色に基づく優先度である音色優先度が設定され、設定された音色優先度が高いチャンネルを選択する手段であり、CPU10で実現される。自動操作手段102は、データ取得手段100で取得されたMIDIデータMDにおける選択手段101で選択されたチャンネルの演奏情報に基づき、鍵盤2の鍵2aを自動操作させる手段であり、CPU10で実現される。
【0029】
MIDIデータMDにおいて、鍵2aを自動操作させる演奏情報がチャンネルの演奏情報に設定されている音色の音色優先度に基づいて選択される。よって、鍵2aの自動操作を、MIDIデータMDにおいて音色優先度が高く主旋律となる音色のチャンネルに基づいて行うことができるので、当該自動操作に対するユーザHの違和感を抑制できる。
【0030】
次に、図4,5を参照して電子ピアノ1の電気的構成を説明する。図4は、電子ピアノ1の電気的構成を示すブロック図である。電子ピアノ1は、CPU10と、フラッシュROM11と、RAM12と、上記した鍵盤2、設定キー3及びLCD4と、音源13と、Digital Signal Processor14(以下「DSP14」と称す)とを有し、それぞれバスライン15を介して接続される。
【0031】
CPU10は、バスライン15により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM11は、CPU10により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、制御プログラム11aと、複数のMIDIデータMDが記憶されるMIDIデータ11bと、優先音色テーブル11cと、優先CHテーブル11dとを含む。CPU10によって制御プログラム11aが実行されると、図6のメイン処理が実行される。図5(a),(b)を参照して優先音色テーブル11c及び優先CHテーブル11dを説明する。
【0032】
図5(a)は、優先音色テーブル11cを模式的に表す図である。優先音色テーブル11cには、上記した音色優先度が高い順に、音色の音色名とバンク情報およびプログラム番号(MSB/LSB/PC)とが記憶される。図5(a)においては優先音色テーブル11cには、音色優先度が高い順に0番目(No.0)から7番目(No.7)までの8つの音色が記憶される。
【0033】
具体的に優先音色テーブル11cには、主旋律として用いられることが多いピアノの音色(ピアノA~D)と、ドレミ音階を音声で発音するソルフェージュ用の音色(ドレミ音階A,B)とオルガンの音色(オルガンA,B)とが記憶される。これらのうち、ピアノの音色の音色優先度が最も高く、オルガンの音色の音色優先度が最も低く、そして、ソルフェージュ用の音色の音色優先度がピアノの音色の音色優先度とオルガンの音色の音色優先度との中間となるように、優先音色テーブル11cの0番目から7番目に、ピアノの音色→ソルフェージュ用の音色→オルガンの音色の順に記憶される。
【0034】
なお、優先音色テーブル11cに記憶される音色は、8つ以下でも8つ以上でも良い。また、優先音色テーブル11cに記憶される順(即ち音色優先度の順)は、ピアノの音色→ソルフェージュ用の音色→オルガンの音色の順に限らず、例えば、ピアノの音色→オルガンの音色→ソルフェージュ用の音色の順や、ソルフェージュ用の音色→ピアノの音色→オルガンの音色の順など、他の順でも良い。更に優先音色テーブル11cには、ピアノの音色、オルガンの音色、ソルフェージュ用の音色が記憶されるものに限らず、例えば、管楽器(フルート等)の音色や弦楽器(ギター、バイオリン等)の音色等、その他の楽器等の音色が記憶されても良い。
【0035】
図5(b)は、優先CHテーブル11dを模式的に表す図である。優先音色テーブル11cには、上記したチャンネル優先度が高い順に、チャンネルが記憶される。本実施形態では、図5(b)に示す通り優先CHテーブル11dにピアノ演奏において右手パートとされ得るch4と、左手パートとされ得るch3とのチャンネル優先度が高く設定される。これにより、主旋律である右手パート又は左手パートとされ得るチャンネルを、確率良く鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定できる。
【0036】
なお、優先CHテーブル11dのチャンネル優先度の順は、図5(b)に示すものに限らず、ch3,ch4のチャンネル優先度を低く設定し、他のチャンネル(例えばch6等)のチャンネル優先度を高く設定しても良い。
【0037】
図4に戻る。RAM12は、CPU10がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、対象MIDIデータ12aと、鍵駆動CHメモリ12bと、音色スコアテーブル12cとを含む。対象MIDIデータ12aには、鍵2aの自動操作や楽音を出力する対象のMIDIデータMDが記憶される。鍵駆動CHメモリ12bには、その対象MIDIデータ12aのMIDIデータMDにおいて鍵2aを自動操作させるチャンネルが記憶される。図5(c)を参照して音色スコアテーブル12cを説明する。
【0038】
図5(c)は、音色スコアテーブル12cを模式的に表す図である。音色スコアテーブル12cには、対象MIDIデータ12aのチャンネルごとに対応する音色の音色名とバンク情報およびプログラム番号(MSB/LSB/PC)とスコアとが記憶される。音色スコアテーブル12cにおけるスコアは、対応する音色の音色優先度に基づく値であり、具体的に音色優先度が高いほど小さな値が設定される。
【0039】
図4に戻る。音源13は、入力される演奏情報に基づく波形データを出力する装置である。DSP14は、音源13から入力された波形データを演算処理するための演算装置である。DSP14には、デジタルアナログコンバータ(DAC)16が接続され、そのDAC16にはアンプ17が接続され、そのアンプ17にはスピーカ18が接続される。
【0040】
次に、図6,7を参照して電子ピアノ1のCPU10で実行される処理を説明する。図6は、メイン処理のフローチャートである。メイン処理は、電子ピアノ1の電源が投入された場合に実行される処理である。メイン処理はまず、鍵2aの自動操作を行うかを確認する(S1)。本実施形態において鍵2aの自動操作を行う又は行わないを、ユーザHの設定キー3(図1参照)の操作により設定可能に構成され、S1の処理ではその設定状態が確認される。
【0041】
S1の処理において、鍵2aの自動操作を行う場合は(S1:Yes)、ユーザHの設定キー3の操作により、MIDIデータ11bに記憶されているMIDIデータMDのうち、1つのMIDIデータMDが指定されたかを確認する(S2)。
【0042】
S2の処理において、MIDIデータMDが指定された場合は(S2:Yes)、指定されたMIDIデータMDをMIDIデータ11bから取得し、対象MIDIデータ12aに保存する(S3)。S3の処理の後、対象MIDIデータ12aに記憶されるMIDIデータの読み出し位置である現在位置を、当該MIDIデータMDの先頭位置に設定する(S4)。
【0043】
一方でS2の処理において、MIDIデータMDが指定されない場合は(S2:No)、S3,S4の処理をスキップする。
【0044】
S2,S4の処理の後、対象MIDIデータ12aの現在位置がリセット系のパケットかどうかを確認する(S5)。本実施形態において「リセット系のパケット」は、「GM2SystemOn」や「GMSystemOn」とされるが、これ以外のパケットでも良い。
【0045】
S5の処理において、対象MIDIデータ12aの現在位置がリセット系のパケットである場合は(S5:Yes)、音色スコアテーブル12cをリセットし(S6)、鍵駆動CHメモリ12bに初期値としてch3とch4とを設定する(S7)。本実施形態において、音色スコアテーブル12cのリセットは、音色スコアテーブル12cの各チャンネルの音色名とバンク情報およびプログラム番号とをクリアし(即ち図5(c)において「-」を設定する)、各チャンネルのスコアに音色優先度の上限(例えば「127」)より大きな値(例えば「255」)を設定することを指す。
【0046】
なお、S7の処理において鍵駆動CHメモリ12bに設定される初期値は、ch3とch4とに限らず、他のチャンネルでも良い。
【0047】
MIDIデータMDのリセット系のパケットが実行される場合は、その後にチャンネルに新たな音色が再設定される可能性が高い。そこで、音色スコアテーブル12cをリセットし、音色スコアテーブル12cのスコアに基づいて設定される鍵駆動CHメモリ12bに初期値のch3とch4とを設定する。これにより、後述のS8,S9の処理による、新たな音色に基づいて鍵2aを自動操作させるチャンネルを再設定する際、これまでチャンネルに設定されていた音色が、新たなチャンネルの再設定に影響してしまう事態を防止できる。
【0048】
S5の処理において、対象MIDIデータ12aの現在位置がリセット系のパケットではない場合は(S5:No)、S6,S7の処理をスキップする。
【0049】
S5,S7の処理の後、対象MIDIデータ12aの現在位置がチャンネルへの音色の設定かを確認する(S8)。S8の処理において、対象MIDIデータ12aの現在位置がチャンネルへの音色の設定である場合は(S8:Yes)、音色設定処理(S9)を実行する。ここで、図7を参照して音色設定処理を説明する。
【0050】
図7は、音色設定処理のフローチャートである。音色設定処理はまず、設定される音色の音色名とバンク情報およびプログラム番号とを音色スコアテーブル12cに追加する(S20)。以下、S20の処理で音色スコアテーブル12cに追加された音色のことを「追加した音色」という。S20の処理の後、追加した音色が優先音色テーブル11cに存在するかを確認する(S21)。
【0051】
S21の処理において、追加した音色が優先音色テーブル11cに存在する場合は(S21:Yes)、優先音色テーブル11cにおける追加した音色に対応する位置から優先音色テーブル11cのデータ数(即ち「8」)を減算した値を、音色スコアテーブル12cの追加した音色のスコア(即ち音色優先度)に設定する(S22)。例えば、追加した音色が「ピアノC」である場合、優先音色テーブル11cにおけるピアノCの位置は「2」なので、スコアは「2-8」で「-6」となる。
【0052】
図5(a)に示す通り、本実施形態の優先音色テーブル11cにおける音色の位置は、最も音色優先度が高いものを「0」とし、以下は昇順に割り振られるため、優先音色テーブル11cにおいて最も音色優先度が低い音色である「オルガンB」の位置は「7」となる。従って、優先音色テーブル11cに含まれる音色のスコアは、対応する音色の優先音色テーブル11cの位置から優先音色テーブル11cのデータ数「8」を減算して算出されるので、当該スコアは必ずマイナスの値となる。
【0053】
一方でS21の処理において、追加した音色が優先音色テーブル11cに存在しない場合は(S21:No)、追加した音色のプログラム番号を音色スコアテーブル12cの追加した音色のスコアに設定する(S23)。
【0054】
S22,S23の処理の後、音色スコアテーブル12cのスコアが設定済みのチャンネルのうち、最小値のスコア(最小スコア)のチャンネルが複数存在するかを確認する(S24)。S24の処理において、最小スコアのチャンネルが複数存在する場合は(S24:Yes)、最小スコアのチャンネルのうち、優先CHテーブル11dのチャンネル優先度が最も高いチャンネルを鍵駆動CHメモリ12bに設定する(S25)。一方でS24の処理において、最小スコアのチャンネルが複数存在しない場合は(S24:Yes)、最小スコアのチャンネルを鍵駆動CHメモリ12bに設定する(S26)。
【0055】
ここで、音色スコアテーブル12cには、S22の処理による優先音色テーブル11cに基づくスコアと、S23の処理による音色のプログラム番号に基づくスコアとが混在する場合がある。上記した通り、優先音色テーブル11cに基づくスコアはマイナスの値であり、一方で音色のプログラム番号の範囲は0~127なので、音色のプログラム番号に基づくスコアは0以上である。
【0056】
よって、優先音色テーブル11cに基づくスコアと、音色のプログラム番号に基づくスコアとが音色スコアテーブル12cに混在する場合は、必ず優先音色テーブル11cに基づくスコアの方が、音色のプログラム番号に基づくスコアより小さくなる。これにより、優先音色テーブル11cに設定されている音色をより優先して鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定できる。
【0057】
一方で、音色スコアテーブル12cに音色のプログラム番号に基づくスコアのみが設定されている場合は、そのうちのプログラム番号が最小のチャンネルが鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定される。これにより、楽音の主旋律に設定される可能性が高い、プログラム番号が最小の音色のチャンネルが鍵2aを自動操作させるチャンネルに設定できので、出力される楽音と当該自動操作との間のユーザHの違和感を抑制できる。
【0058】
S25,S26の処理の後、音色スコアテーブル12cのch3とch4とのスコアが設定済みで且つこれらのスコアが同じかを確認する(S27)。S27の処理において、ch3とch4とのスコアが設定済みで且つこれらのスコアが同じである場合は(S27:Yes)、ch3とch4とに同一の音色が設定され、これらが主旋律を構成するチャンネルと判断されるので、鍵駆動CHメモリ12bにch3とch4とを設定する(S28)。
【0059】
一方でS27の処理において、ch3とch4とのスコアが設定済みで且つこれらのスコアが同じではない場合は(S27:No)、S28の処理をスキップする。S27,S28の処理の後、音色設定処理を終了する。
【0060】
図6に戻る。S8の処理において、対象MIDIデータ12aの現在位置がチャンネルへの音色の設定ではない場合は(S8:No)、音色設定処理(S9)をスキップする。S8,S9の処理の後、対象MIDIデータ12aの現在位置がノート情報であるかを確認する(S10)。S10の処理において、対象MIDIデータ12aの現在位置がノート情報である場合は(S10:Yes)、そのノート情報の対象のチャンネルが鍵駆動CHメモリ12bのチャンネルに含まれるかを確認する(S11)。
【0061】
S11の処理において、ノート情報の対象のチャンネルが鍵駆動CHメモリ12bのチャンネルに含まれる場合は(S11:Yes)、そのノート情報に応じてソレノイド2bを動作させる(S12)。例えば、ノート情報がノートオンの場合はノートオンされる対象の鍵2aが押鍵されるようにソレノイド2bを動作させ、ノート情報がノートオフの場合はノートオフされる対象の鍵2aが離鍵されるようにソレノイド2bを動作させる。なお図示はしないが、S12の処理と共に現在位置のノート情報に応じた楽音の出力も実行される。
【0062】
一方で、S10の処理において対象MIDIデータ12aの現在位置がノート情報ではない場合(S10:No)、S11の処理においてノート情報の対象のチャンネルが鍵駆動CHメモリ12bのチャンネルに含まれない場合(S11:No)、又は、S12の処理の後、対象MIDIデータ12aの現在位置を一つ進める(S13)。
【0063】
S1の処理において、鍵2aの自動操作を行わない場合(S1:No)、又は、S13の処理の後、電子ピアノ1のその他の処理を実行し(S14)、S1以下の処理を繰り返す。S14の処理における「その他の処理」として、例えば、対象MIDIデータ12aの現在位置のノート情報による楽音の出力や、ユーザHの鍵2aの演奏に基づく楽音の出力が挙げられる。
【0064】
以上、上記実施形態に基づき説明したが、種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0065】
上記実施形態では、電子楽器として電子ピアノ1を例示したが、これに限らず、シンセサイザや電子吹奏楽器等、他の電子楽器に本発明を適用しても良い。例えば、本発明をシンセサイザに適用する場合は、シンセサイザの鍵を光を透過させる半透明の材質で形成し、その鍵の内部にLEDを設ける。そして、対象MIDIデータ12aのMIDIデータMDにおいて、鍵駆動CHメモリ12bのチャンネルのノートオンである場合は対応する鍵のLEDを点灯させ、ノートオフである場合は対応する鍵のLEDを消灯させれば良い。これにより、シンセサイザのユーザHに運指させる鍵やその鍵の押鍵/離鍵のタイミングを、LEDの点灯/消灯により提示できる。
【0066】
また、制御プログラム11aをパーソナル・コンピュータや携帯端末等の情報処理装置で実行できるようにしても良い。この場合、例えば、パーソナル・コンピュータ等の表示装置にピアノ等の楽器のグラフィックを表示し、対象MIDIデータ12aのMIDIデータMDにおいて、鍵駆動CHメモリ12bのチャンネルのノートオンである場合は、対応する楽器の鍵のグラフィックの態様を選択表示し(例えば、対応する白鍵または黒鍵を赤色にする)、ノートオフである場合は、鍵のグラフィックの態様を選択表示を解除すれば良い。
【0067】
また、表示装置に対象MIDIデータ12aのMIDIデータMDの各チャンネルに対応する楽譜を表示し、 楽譜において鍵駆動CHメモリのチャンネルに対応するパートを、他のパートと異なる態様(例えば異なる色)で表示しても良い。これにより、楽譜において主旋律となるパートをユーザHに提示できる。この際、優先音色テーブル11cに特定の楽器の音色、例えばバイオリンの音色の音色優先度を高く設定しておけば、表示されるMIDIデータMDによる楽譜において、特定の楽器(バイオリン等)に対応するパートが異なる態様で表示されるので、ユーザHに当該パートを明確に提示することができる。
【0068】
上記実施形態では、図6のS3の処理において、MIDIデータ11bからMIDIデータMDを取得する構成としたが、これに限られない。例えば、電子ピアノ1に外部の機器と通信する通信装置を設け、その通信装置を介して他の機器やインターネットからMIDIデータMDを取得しても良い。この場合、MIDIデータMD全体を他の機器やインターネットから取得してから鍵の自動操作の処理や楽音出力の処理を行うものに限らず、例えば、他の機器やインターネットから、MIDIデータMDを構成するノート情報等の制御信号を順次取得し、取得した制御信号に基づいて鍵の自動操作の処理や楽音出力の処理を順次行っても良い。
【0069】
上記実施形態では、図7のS21~S23の処理において、追加した音色が優先音色テーブル11cに記憶されている場合は、優先音色テーブル11cから該当する音色優先度を設定し、記憶されていない場合は追加した音色のプログラム番号に基づく音色優先度を設定した。これに限らず、優先音色テーブル11cを省略し、常に追加した音色のプログラム番号から音色優先度を設定しても良い。この場合、図8の変形例における音色設定処理のように、S20の処理の後に、S23の処理によって追加した音色のプログラム番号を音色スコアテーブル12cの追加した音色のスコアに設定し、そのS23の処理の後に、S24以下の処理を実行すれば良い。
【0070】
一方で、優先音色テーブル11cに電子ピアノ1で使用される全ての音色の音色優先度を記憶させ、追加した音色の音色優先度を常に優先音色テーブル11cから設定しても良い。
【0071】
更に図7のS23の処理において、追加した音色のプログラム番号を音色優先度に設定したが、これに限られない。例えば、追加した音色のプログラム番号とバンク情報(MSB,LSB)とに基づいて音色優先度を設定しても良い。この場合、追加した音色のプログラム番号、MSB及びLSBのそれぞれに所定の係数を乗算し、乗算した結果を更に加算(即ち重み付け演算)したものを音色優先度としても良い。これにより、設定される音色優先度を、追加した音色のプログラム番号と共にバンク情報をも考慮に入れたものとすることができる。
【0072】
上記実施形態では、優先音色テーブル11cに音色のプログラム番号とバンク情報とを共に記憶したが、これに限られない。例えば、優先音色テーブル11cに音色のプログラム番号のみを記憶し、図7のS21の処理において追加した音色のプログラム番号が、優先音色テーブル11cにおいてプログラム番号のみが設定された音色(例えば「音色X」とする)のプログラム番号と一致した場合は、追加した音色のバンク情報に依らず、優先音色テーブル11cにおける音色Xの音色優先度を設定しても良い。MIDIデータMDにおいてピアノやオルガン等の特定の音色は、バンク情報の位置に依らず、同一のプログラム番号に設定されていることが多いので、優先音色テーブル11cにプログラム番号のみを設定しておくことで、優先音色テーブル11cにバンク情報毎の音色を記憶させる必要がない。
【0073】
なお、優先音色テーブル11cにプログラム番号のみの音色と、プログラム番号とバンク情報とによる音色とを混在して記憶させても良いし、優先音色テーブル11cにプログラム番号のみの音色だけを記憶させても良い。
【0074】
上記実施形態では、図7のS24~S26の処理において、同一の音色優先度のチャンネルが複数あった場合に、優先CHテーブル11dにおいてチャンネル優先度が最も高いチャンネルを鍵2aを自動操作させるチャンネルに選択した。しかし、これに限らず、チャンネル優先度テーブルにおいてチャンネル優先度が高い上位の複数のチャンネル(例えば、チャンネル優先度が上位一位および二位のチャンネル)を、鍵2aを自動操作させるチャンネルに選択しても良い。また、S24~S26の処理を省略し、その代わりに同一の音色優先度の複数のチャンネル全てを、鍵2aを自動操作させるチャンネルに選択しても良い。
【0075】
上記実施形態では、図7のS27,S28の処理で、ch3,ch4が同じ音色優先度であった場合に、これらch3,ch4を共に鍵2aを自動操作させるチャンネルに選択したが、これに限られない。S27,S28の処理を省略し、ch3,ch4が同じ音色優先度であっても、S24~S26の処理による音色優先度およびチャンネル優先度に基づき、鍵2aを自動操作させるチャンネルを選択しても良い。
【0076】
上記実施形態では、図6のS5~S7の処理において、対象MIDIデータ12aの現在位置がリセット系のパケットである場合に、音色スコアテーブル12cのリセットと鍵駆動CHメモリ12bに初期値への設定とを行ったが、これに限られない。音色スコアテーブル12cのリセットと鍵駆動CHメモリ12bに初期値への設定とを、例えば、電子ピアノ1の電源投入直後や、図6のS3の処理によってMIDIデータMDが取得された直後に行っても良い。
【0077】
上記実施形態では、対象MIDIデータ12aのMIDIデータに基づき鍵2aの自動操作と楽音の出力とを行ったが、これに限られない。例えば、電子ピアノ1において対象MIDIデータ12aに基づく鍵2aの自動操作をする一方で、楽音の出力を省略し、その代わりに他の機器から対象MIDIデータ12aのMIDIデータに対応する楽曲を出力しても良い。
【0078】
また、対象MIDIデータ12aのMIDIデータを用いて音源13等から楽音を出力するものに限らず、例えば、電子ピアノ1に、鍵2a毎に対応する音高の弦とその弦を打撃するハンマーとを設け、対象MIDIデータ12aのMIDIデータに含まれるノート情報に該当する音高の弦をハンマーで順次打撃することで、楽音を出力しても良い。
【0079】
上記実施形態では、楽曲データとしてMIDIデータMDを例示したが、これに限らず、MIDI規格以外の他の楽曲に関するデータを楽曲データとして用いても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 電子ピアノ(電子楽器)
2 鍵盤
2a 鍵
11a 制御プログラム(楽曲データ処理プログラム)
11c 優先音色テーブル(優先音色記憶手段)
11d 優先CHテーブル(優先チャンネル記憶手段)
MD,MD1,MD2 MIDIデータ(楽曲データ)
S3 データ取得手段、データ取得ステップ
S21~S28 選択手段、選択ステップ
S12 自動操作手段、処理実行ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8