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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169981
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ロボットおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B25J17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081374
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】沖田 太志
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707BS12
3C707CX01
3C707HS28
3C707KS33
3C707KX06
(57)【要約】
【課題】多関節ロボットの関節の位置に応じて適切な特性を持つモーターが選択されており、運動性能および出力効率に優れるロボット、および、かかるロボットを備えるロボットシステムを提供すること。
【解決手段】複数のジョイントを有するマニピュレーターと、マニピュレーターを支持するベースと、を備える多関節のロボットであって、ジョイントは、回転軸を中心軸とする円環状をなす界磁と電機子とを有するモーターを備え、回転軸の軸方向に沿う界磁の長さをhとし、界磁の外半径をRとし、h/Rを界磁のアスペクト比とし、複数のジョイントのうち最もベース側のジョイントが有するモーターを基端モーターとし、複数のジョイントのうち最も先端側のジョイントが有するモーターを先端モーターとするとき、基端モーターが有する界磁は、先端モーターが有する界磁に比べて、アスペクト比が小さいことを特徴とするロボット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のジョイントを有するマニピュレーターと、前記マニピュレーターを支持するベースと、を備える多関節のロボットであって、
前記ジョイントは、回転軸を中心軸とする円環状をなす界磁と電機子とを有するモーターを備え、
前記回転軸の軸方向に沿う前記界磁の長さをhとし、前記界磁の外半径をRとし、h/Rを前記界磁のアスペクト比とし、
複数の前記ジョイントのうち最も前記ベース側のジョイントが有する前記モーターを基端モーターとし、複数の前記ジョイントのうち最も先端側のジョイントが有する前記モーターを先端モーターとするとき、
前記基端モーターが有する前記界磁は、前記先端モーターが有する前記界磁に比べて、前記アスペクト比が小さいことを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記界磁の内半径をrとし、r/Rを前記界磁の内外半径比とするとき、
前記基端モーターが有する前記界磁は、前記先端モーターが有する前記界磁に比べて、前記内外半径比が小さい請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記基端モーターは、アキシャルギャップモーターであり、
前記先端モーターは、ラジアルギャップモーターである請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記界磁における磁極の周期の数を極対数とするとき、
前記基端モーターが有する前記界磁は、前記先端モーターが有する前記界磁に比べて、前記極対数が大きい請求項1または2に記載のロボット。
【請求項5】
前記界磁における磁極の周期に対応する部分を極対とし、前記磁極の半周期に対応する部分を極とし、前記極を構成する前記磁極の個片をセグメントとするとき、
前記基端モーターが有する前記界磁は、前記先端モーターが有する前記界磁に比べて、前記極あたりの前記セグメントの数が大きい請求項1または2に記載のロボット。
【請求項6】
請求項1または2に記載のロボットと、
前記ロボットを移動させる移動架台と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットおよびロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転関節機構により、複数のリンクを直列に連結したアーム構造を備える産業用ロボットが開示されている。また、各回転関節機構は、減速機と、減速機を駆動するサーボモーターと、を有することが開示されている。特に、3つ以上のリンクを直列に連結した多関節ロボットの場合、2つ以上のサーボモーターが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-262340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多関節ロボットに用いられる複数のサーボモーターは、互いに異なる関節機構に用いられる。各関節機構は、直列に接続されており、負荷の大きさが互いに異なる。ところが、負荷の大きさに見合った適切なサーボモーターが使用されていない場合、多関節ロボットの動作速度や位置精度等の運動性能が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の適用例に係るロボットは、
複数のジョイントを有するマニピュレーターと、前記マニピュレーターを支持するベースと、を備える多関節のロボットであって、
前記ジョイントは、回転軸を中心軸とする円環状をなす界磁と電機子とを有するモーターを備え、
前記回転軸の軸方向に沿う前記界磁の長さをhとし、前記界磁の外半径をRとし、h/Rを前記界磁のアスペクト比とし、
複数の前記ジョイントのうち最も前記ベース側のジョイントが有する前記モーターを基端モーターとし、複数の前記ジョイントのうち最も先端側のジョイントが有する前記モーターを先端モーターとするとき、
前記基端モーターが有する前記界磁は、前記先端モーターが有する前記界磁に比べて、前記アスペクト比が小さいことを特徴とする。
【0006】
本発明の適用例に係るロボットシステムは、
本発明の適用例に係るロボットと、
前記ロボットを移動させる移動架台と、
を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムを示す斜視図である。
図2図1に示すロボットシステムの基本的な構成を説明するためのブロック図である。
図3】アキシャルギャップモーターの一例を示す断面図である。
図4図3のアキシャルギャップモーターが備える電機子を示す平面図である。
図5図3のアキシャルギャップモーターが備える界磁を示す平面図である。
図6図5のA-A線断面において磁極の磁化方向の配列パターンを5つのパターンに分けて説明するための概念図である。
図7】ラジアルギャップモーターの一例を示す断面図である。
図8図7のラジアルギャップモーターを示す平面図である。
図9図7のラジアルギャップモーターが備える界磁を示す平面図である。
図10図7のラジアルギャップモーターが備える界磁を示す平面図である。
図11図7のラジアルギャップモーターが備える界磁を示す平面図である。
図12図7のラジアルギャップモーターが備える界磁を示す平面図である。
図13図2に示すモーターM1、M6が有する界磁のアスペクト比と内外半径比との関係を示すグラフである。
図14図13に示すグラフに対し、図2に示すモーターM2~M5が有する界磁のアスペクト比と内外半径比との関係を追加したグラフである。
図15図2に示すモーターM1~M6と各モーターが有する界磁の極対数pとの関係を示すグラフである。
図16図2に示すモーターM1~M6と各モーターが有する界磁の極あたりのセグメント数lとの関係を示すグラフである。
図17】第2実施形態に係るロボットシステムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のロボットおよびロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係るロボットおよびロボットシステムについて説明する。
図1は、第1実施形態に係るロボットシステム100を示す斜視図である。図2は、図1に示すロボットシステム100の基本的な構成を説明するためのブロック図である。
図1に示すロボットシステム100は、ロボット1と、制御装置40と、を備える。
【0010】
1.1.ロボット
ロボット1は、例えば、複数のジョイントJ1~J6を有するマニピュレーター10と、マニピュレーター10を支持するベース11と、エンドエフェクター20と、力センサー30と、を備える。
【0011】
マニピュレーター10は、例えば、6つのジョイントJ1~J6により相互連結された7つのリンクを有し、6自由度で運動するロボティックアームである。図1に示す例において、マニピュレーター10は、それぞれ回転ジョイントである6つのジョイントJ1~J6を備える。なお、マニピュレーター10が備えるジョイントの数は、特に限定されず、6つ未満であっても、7つ以上であってもよい。ベース11は、マニピュレーター10のうち最もベース11側のリンクを、ジョイントJ1を介して支持する。
【0012】
エンドエフェクター20は、例えば、ねじ締め、把持、研磨等の種々の作業を行うツールである。エンドエフェクター20としては、例えば、スクリュードライバー、グリッパー、グラインダー等が挙げられる。エンドエフェクター20は、力センサー30を介して、マニピュレーター10の先端のメカニカルインターフェイスに取り付けられる。マニピュレーター10は、制御装置40に駆動を制御されることにより、エンドエフェクター20の位置および姿勢を決定する。
【0013】
なお、本明細書では、マニピュレーター10を基準にしてベース11側を「基端側」といい、エンドエフェクター20側を「先端側」という。
【0014】
力センサー30は、例えばエンドエフェクター20を介して、エンドエフェクター20の位置の基準であるツールセンターポイント(TCP)に作用する外力を検出する。力センサー30が外力を受けると、外力に対応した信号を制御装置40に出力する。これにより、制御装置40は、TCPに作用する3つの検出軸の力および3つの検出軸まわりのトルクを外力として検出する。3つの検出軸は、例えば、互いに直交するx軸、y軸およびz軸により定義されるワールド座標系である。
【0015】
図2に示すように、複数のジョイントJ1~J6は、複数のモーターM1~M6と、複数のエンコーダーE1~E6と、を備える。モーターM1~M6は、制御装置40の制御によりそれぞれ駆動され、ジョイントJ1~J6をそれぞれ駆動する。エンコーダーE1~E6は、モーターM1~M6の回転角を検出し、制御装置40に出力する。
【0016】
ジョイントJ1は、ジョイントJ1~J6のうち最も基端側に配置され、モーターM1およびエンコーダーE1を備える。ジョイントJ1の回転軸は、ワールド座標系におけるz軸に沿う。
ジョイントJ2は、ジョイントJ1の先端側に配置され、モーターM2およびエンコーダーE2を備える。ジョイントJ2の回転軸は、ワールド座標系におけるx-y平面に沿う。
ジョイントJ3は、ジョイントJ2の先端側に配置され、モーターM3およびエンコーダーE3を備える。ジョイントJ3の回転軸は、ワールド座標系におけるx-y平面に沿う。
ジョイントJ4は、ジョイントJ3の先端側に配置され、モーターM4およびエンコーダーE4を備える。ジョイントJ4の回転軸は、ジョイントJ3の回転軸と直交する。
ジョイントJ5は、ジョイントJ4の先端側に配置され、モーターM5およびエンコーダーE5を備える。ジョイントJ5の回転軸は、ジョイントJ4の回転軸と直交する。
ジョイントJ6は、ジョイントJ1~J6のうち最も先端側に配置され、モーターM6およびエンコーダーE6を備える。ジョイントJ6の回転軸は、ジョイントJ5の回転軸と直交する。
【0017】
1.2.制御装置
制御装置40は、コンピューターシステムを構成する処理回路41および記憶回路42を備える。処理回路41は、例えば記憶回路42に記憶される制御プログラムを実行することにより、各機能を実現する。処理回路41の少なくとも一部を構成する回路として、例えば、中央演算処理装置(CPU)、デジタルシグナルプロセッサー(DSP)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、特定用途向け集積回路(ASIC)等の種々の論理演算回路を採用可能である。
【0018】
記憶回路42は、コンピューターにより読み取り可能な記憶媒体であって、ロボットシステム100の動作に必要な制御プログラムや各種データを記憶する。記憶回路42として、例えば半導体メモリーを採用可能である。処理回路41および記憶回路42は、一体のハードウェアで構成されていてもよいし、別個の複数のハードウェアで構成されていてもよい。制御装置40の構成要素の一部または全部は、ロボット1の筐体の内側に配置されてもよい。
【0019】
制御装置40は、制御プログラムにしたがって、目標値である位置および姿勢にTCPを運動させるようにモーターM1~M6を駆動する。制御装置40は、各エンコーダーE1~E6から取得される回転角に基づいて、ワールド座標系におけるTCPの位置および姿勢を検出する。また、制御装置40は、力センサー30から入力される外力を示す情報に基づいて、TCPに作用する外力が目標力に一致するようにTCPの目標値を補正する力制御を実行する。さらに、制御装置40は、制御プログラムにしたがって、エンドエフェクター20が有するモーターの駆動を制御する。
【0020】
1.3.モーター
モーターM1~M6には、例えば、アキシャルギャップモーター、ラジアルギャップモーター等が用いられる。以下、アキシャルギャップモーターおよびラジアルギャップモーターについて順次説明する。
【0021】
1.3.1.アキシャルギャップモーター
図3は、アキシャルギャップモーターMaの一例を示す断面図である。図4は、図3のアキシャルギャップモーターMaが有する電機子51を示す平面図である。図5は、図3のアキシャルギャップモーターMaが有する界磁52を示す平面図である。
【0022】
図3に示すアキシャルギャップモーターMaは、回転軸AXに沿って延在するシャフト50と、電機子51と、電機子51に対向する界磁52と、界磁52の電機子51と反対側に配置されるバックヨーク53と、を有する。アキシャルギャップモーターMaでは、回転軸AXに沿う軸方向において、電機子51と界磁52との間にエアギャップが設けられている。
【0023】
図3に示すアキシャルギャップモーターMaは、電機子51を介して2つの界磁52を有するダブルステーター構造を採用している。なお、界磁52の数は、1つであっても3つ以上であってもよい。また、図3に示すアキシャルギャップモーターMaでは、電機子51が回転子、界磁52が固定子であるが、これらの関係は逆であってもよい。
【0024】
図4に示す電機子51は、円板状をなしている。電機子51は、複数のコア54および複数のコイル55を有する。複数のコア54および複数のコイル55は、回転軸AXを対称の中心として18回の回転対称性を有するように、回転軸AXを中心とする円の円周に沿って等間隔に配列される。コア54は、軸方向に高さを有する四角状をなす部分を含む。コア54は、例えばアモルファス磁性体を含み、シャフト50の半径方向に積層される複数の板の積層体で構成される。複数のコア54は、例えばボビンに支持されることにより、互いの位置関係を固定される。コイル55は、コア54の側面に巻かれる巻線で構成される。コア54およびコイル55の対の数は、例えば18である。
【0025】
図5に示す界磁52は、円板状をなしている。界磁52は、複数の磁極58を有する。複数の磁極58は、回転軸AXを中心とする円の円周に沿って配列される。複数の磁極58の磁化方向は、配列方向において周期的に変化するように設定されている。ここでは、シャフト50に沿う第1方向に磁化している磁極58、および、第1方向とは反対の第2方向に磁化している磁極58を、それぞれ主磁極とする。界磁52は、磁化方向の変化の周期あたりに、2つの主磁極を有する。なお、本明細書では、配列方向における磁極58の磁化方向の変化周期を「磁極58の周期」ともいう。
【0026】
図6は、図5のA-A線断面において磁極58の磁化方向の配列パターンを5つのパターンに分けて説明するための概念図である。なお、図6では、磁極58の磁化方向を矢印で示している。また、図6では、磁極58の周期Cの半分(半周期)における磁極58の数をlとし、l=1、l=2、l=3、l=4およびl=5の5つのパターンで、界磁52の構成例を図示している。
【0027】
l=1である場合の界磁52を「界磁52a」とし、界磁52aが有する磁極58を「磁極58a」とする。界磁52aは、磁極58aの周期Cあたりに2つ主磁極を有する。
【0028】
l=2である場合の界磁52を「界磁52b」とし、界磁52bが有する磁極58を「磁極58b」とする。界磁52bは、磁極58bの周期Cあたりに、2つの主磁極と、2つの副磁極と、を有する。界磁52bでは、主磁極同士の間に1つの副磁極が配置されている。そして、界磁52bでは、シャフト50の半径方向から見て、隣り合う磁極58bの磁化方向が互いに90°異なるように、磁極58bの磁化方向が設定されている。また、界磁52b全体では、シャフト50の半径方向に沿う軸を回転軸として、磁化方向が90°ずつ回転するように、磁極58bの磁化方向が設定されている。
【0029】
l=3である場合の界磁52を「界磁52c」とし、界磁52cが有する磁極58を「磁極58c」とする。界磁52cは、磁極58cの周期Cあたりに、2つの主磁極と、4つの副磁極と、を有する。界磁52cでは、主磁極同士の間に2つの副磁極が配置されている。そして、界磁52cでは、シャフト50の半径方向から見て、隣り合う磁極58cの磁化方向が互いに60°異なるように、磁極58cの磁化方向が設定されている。また、界磁52c全体では、シャフト50の半径方向に沿う軸を回転軸として、磁化方向が60°ずつ回転するように、磁極58cの磁化方向が設定されている。
【0030】
l=4である場合の界磁52を「界磁52d」とし、界磁52dが有する磁極58を「磁極58d」とする。界磁52dは、磁極58dの周期Cあたりに、2つの主磁極と、6つの副磁極と、を有する。界磁52dでは、主磁極同士の間に3つの副磁極が配置されている。そして、界磁52dでは、シャフト50の半径方向から見て、隣り合う磁極58dの磁化方向が互いに45°異なるように、磁極58dの磁化方向が設定されている。また、界磁52d全体では、シャフト50の半径方向に沿う軸を回転軸として、磁化方向が45°ずつ回転するように、磁極58dの磁化方向が設定されている。
【0031】
l=5である場合の界磁52を「界磁52e」とし、界磁52eが有する磁極58を「磁極58e」とする。界磁52eは、磁極58eの周期Cあたりに、2つの主磁極と、8つの副磁極と、を有する。界磁52eでは、主磁極同士の間に4つの副磁極が配置されている。そして、界磁52eでは、シャフト50の半径方向から見て、隣り合う磁極58eの磁化方向が互いに36°異なるように、磁極58eの磁化方向が設定されている。また、界磁52e全体では、シャフト50の半径方向に沿う軸を回転軸として、磁化方向が36°ずつ回転するように、磁極58eの磁化方向が設定されている。
【0032】
界磁52b、52c、52d、52eのように、l≧2である場合、磁化方向の配列は、ハルバッハ配列となる。磁化方向の配列がハルバッハ配列である場合、電機子51は、ハルバッハ配列の強磁界側に配置される。一方、バックヨーク53は、ハルバッハ配列の弱磁界側に配置される。磁化方向の配列をハルバッハ配列とすることで、電機子51側の表面における磁束密度を増大できるため、トルク定数を高められる。特に、l≧3である場合、配列方向における磁束密度の変化を特に滑らかにすることができ、トルク定数を特に高めることができる。
【0033】
1.3.2.ラジアルギャップモーター
図7は、ラジアルギャップモーターMrの一例を示す断面図である。図8は、図7のラジアルギャップモーターMrを示す平面図である。図9ないし図12は、図7のラジアルギャップモーターMrが有する界磁62を示す平面図である。
【0034】
図7に示すラジアルギャップモーターMrは、回転軸AXに沿って延在するシャフト60と、電機子61と、電機子61に対向する界磁62と、界磁62の電機子61と反対側に配置されるバックヨーク63と、を有する。ラジアルギャップモーターMrでは、シャフト60の半径方向において、電機子61と界磁62との間にエアギャップが設けられている。
【0035】
図7に示すラジアルギャップモーターMrでは、電機子61が回転子、界磁62が固定子であるが、これらの関係は逆であってもよい。
【0036】
図8に示す電機子61は、コア64および複数のコイル67を有する。コア64は、円筒状のヨーク部65と、ヨーク部65の側面から外側に突出する複数のリブ部66と、を有する。リブ部66は、回転軸AXを対称の中心として18回の回転対称性を有するように、回転軸AXを中心とする円の円周に沿って等間隔に配列される。コア64は、例えばアモルファス磁性体を含み、軸方向に積層される複数の板の積層体で構成される。コイル67は、リブ部66に巻かれる巻線で構成される。リブ部66およびコイル67の対の数は、例えば18である。
【0037】
図8に示す界磁62は、複数の磁極68を有する。複数の磁極68は、回転軸AXを中心とする円の円周に沿って配列される。複数の磁極68の磁化方向は、配列方向において周期的に変化するように設定されている。
【0038】
図9ないし図12では、磁極68の磁化方向の配列パターンを4つのパターンに分けて図示している。なお、図9ないし図12では、磁極68の磁化方向を矢印で示している。また、図9ないし図12では、磁極68の周期Cの半分(半周期)における磁極68の数をlとし、l=1、l=2、l=3およびl=4の4つのパターンで界磁62の構成例を図示している。ここでは、シャフト60の半径方向に磁化している磁極68、および、半径方向とは反対の方向に磁化している磁極68を、それぞれ主磁極とする。磁極68は、磁化方向の変化の周期Cあたりに、2つの主磁極を有する。なお、本明細書では、配列方向における磁極68の磁化方向の変化周期を「磁極68の周期」ともいう。
【0039】
l=1である場合の界磁62を「界磁62a」とし、界磁62aが有する磁極68を「磁極68a」とする。界磁62aは、磁極68aの周期Cあたりに2つの主磁極を有する。
【0040】
l=2である場合の界磁62を「界磁62b」とし、界磁62bが有する磁極68を「磁極68b」とする。界磁62bは、磁極68bの周期Cあたりに、2つの主磁極と、2つの副磁極と、を有する。界磁62bでは、主磁極同士の間に1つの副磁極が配置されている。そして、界磁62bでは、シャフト60の半径方向から見て、隣り合う磁極68bの磁化方向が互いに90°異なるように、磁極68bの磁化方向が設定されている。また、界磁62b全体では、シャフト60の半径方向に沿う軸を回転軸として、磁化方向が90°ずつ回転するように、磁極68bの磁化方向が設定されている。
【0041】
l=3である場合の界磁62を「界磁62c」とし、界磁62cが有する磁極68を「磁極68c」とする。界磁62cは、磁極68cの周期Cあたりに、2つの主磁極と、4つの副磁極と、を有する。界磁62cでは、主磁極同士の間に2つの副磁極が配置されている。そして、界磁62cでは、シャフト60の半径方向から見て、隣り合う磁極68cの磁化方向が互いに60°異なるように、磁極68cの磁化方向が設定されている。また、界磁62c全体では、シャフト60の半径方向に沿う軸を回転軸として、磁化方向が60°ずつ回転するように、磁極68cの磁化方向が設定されている。
【0042】
l=4である場合の界磁62を「界磁62d」とし、界磁62dが有する磁極68を「磁極68d」とする。界磁62dは、磁極68dの周期Cあたりに、2つの主磁極と、6つの副磁極と、を有する。界磁62dでは、主磁極同士の間に3つの副磁極が配置されている。そして、界磁62dでは、シャフト60の半径方向から見て、隣り合う磁極68dの磁化方向が互いに45°異なるように、磁極68dの磁化方向が設定されている。また、界磁62d全体では、シャフト60の半径方向に沿う軸を回転軸として、磁化方向が45°ずつ回転するように、磁極68dの磁化方向が設定されている。
【0043】
界磁62b、62c、62dのように、l≧2である場合、磁化方向の配列は、ハルバッハ配列となる。磁化方向の配列がハルバッハ配列である場合、電機子61は、ハルバッハ配列の強磁界側に配置される。一方、バックヨーク63は、ハルバッハ配列の弱磁界側に配置される。磁化方向の配列をハルバッハ配列とすることで、電機子61側の表面における磁束密度を増大できるため、トルク定数を高められる。特に、l≧3である場合、配列方向における磁束密度の変化を特に滑らかにすることができ、トルク定数を特に高くすることができる。
【0044】
1.3.3.界磁のアスペクト比
図13は、図2に示すモーターM1、M6が有する界磁のアスペクト比と内外半径比との関係を示すグラフである。図13の横軸は、界磁の内外半径比であり、縦軸は、界磁のアスペクト比である。図13では、モーターM1、M6が有する界磁のアスペクト比および内外半径比がプロットされた領域を示している。
【0045】
図3に示すアキシャルギャップモーターMaでは、回転軸AXの軸方向に沿う界磁52の長さをhとし、界磁52の外半径をRとする。このとき、h/Rを界磁52のアスペクト比とする。また、図3に示すアキシャルギャップモーターMaでは、界磁52の内半径をrとする。このとき、r/Rを界磁52の内外半径比とする。
【0046】
図7に示すラジアルギャップモーターMrでは、回転軸AXの軸方向に沿う界磁62の長さをhとし、界磁62の外半径をRとする。このとき、h/Rを界磁62のアスペクト比とする。また、図7に示すラジアルギャップモーターMrでは、界磁62の内半径をrとする。このとき、r/Rを界磁62の内外半径比とする。
【0047】
マニピュレーター10が有する複数のジョイントJ1~J6のうち、最もベース11側のジョイントJ1が有するモーターM1を「基端モーター」とする。また、複数のジョイントJ1~J6のうち、最も先端側のジョイントJ6が有するモーターM6を「先端モーター」とする。本実施形態では、図13に示すように、基端モーターが有する界磁が、先端モーターが有する界磁に比べて、アスペクト比h/Rが小さくなるように設定されている。
【0048】
界磁のアスペクト比h/Rは、界磁の扁平の程度を表す指標に相当する。つまり、アスペクト比h/Rが小さくなれば、界磁は、より薄く広がった円盤状をなし、モーターの低背化を図ることができ、アスペクト比h/Rが大きくなれば、界磁は、より細長い円筒状をなし、モーターの小径化が容易になる。
【0049】
したがって、図13に示すようなアスペクト比h/Rの界磁を有することにより、基端モーターであるモーターM1では、界磁の低背化および大径化が図られ、マニピュレーター10の低重心化を図るとともに、モーターM1のトルク定数を高めることができる。マニピュレーター10を低重心化することで、マニピュレーター10の振動等が抑制されるとともに高速化が容易になり、運動性能を高めることができる。また、モーターM1のトルク定数の増加は、例えば可搬重量の増加やさらなる小型化、軽量化を可能にし、マニピュレーター10の運動性能を高めることに寄与する。
【0050】
また、図13に示すようなアスペクト比h/Rの界磁を有することにより、先端モーターであるモーターM6では、界磁の軽薄化および小径化が図られ、マニピュレーター10の先端部の軽量化を図るとともに、モーターM6のトルク定数を低くすることができる。マニピュレーター10の先端部を軽量化することで、マニピュレーター10の振動等が抑制されるとともに高速化が容易になり、運動性能を高めることができる。また、モーターM6のトルク定数の減少は、マニピュレーター10の先端部に繊細な動きを与え、マニピュレーター10の運動性能を高めることに寄与する。
【0051】
以上のようにして、界磁のアスペクト比h/Rを最適化することにより、マニピュレーターの力点付近に設けられるモーターM1、および、マニピュレーター10の作用点付近に設けられるモーターM6が、それぞれ設けられる位置に応じた適切な形状の界磁を有することができ、それに伴ってモーターM1、M6に適切な特性が与えられる。これにより、マニピュレーター10の運動性能を高めることができる。
【0052】
なお、図13に示すグラフは、一例であり、モーターM1が有する界磁のアスペクト比h/Rは、モーターM6が有する界磁のアスペクト比h/Rよりも小さければ、図13に示す関係に限定されない。
【0053】
また、モーターM6が有する界磁のアスペクト比h/Rは、特に限定されないが、0.7以上1.3以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましい。これにより、マニピュレーター10の先端部により繊細な動きを与えることができる。
【0054】
また、モーターM1が有する界磁のアスペクト比h/Rは、モーターM6が有する界磁のアスペクト比h/Rを1としたとき、0.05以上0.8以下であることが好ましく、0.1以上0.5以下であることがより好ましく、0.1以上0.4以下であることがさらに好ましい。これにより、マニピュレーター10の低重心化とマニピュレーター10の先端部の軽量化とを両立させることができ、マニピュレーター10の運動性能をさらに高めることができる。
【0055】
図14は、図13に示すグラフに対し、図2に示すモーターM2~M5が有する界磁のアスペクト比と内外半径比との関係を追加したグラフである。図14では、モーターM1~M6が有する界磁のアスペクト比および内外半径比がプロットされた領域を示している。
【0056】
モーターM1~M6の界磁のアスペクト比h/Rは、モーターM1、M6以外ではどのように変化していてもよいが、図14に示すように、モーターM1からモーターM6に向かって連続的に大きくなっていることが好ましい。図14に示す関係を満たしたマニピュレーター10は、基端から先端に向かって連続的に、モーターが有する界磁の非扁平化が図られ、例えば界磁の小径化が容易になる。換言すれば、図14に示す関係を満たしたマニピュレーター10は、先端から基端に向かって連続的に、モーターが有する界磁の低背化および大径化が容易になる。その結果、モーターM1~M6が設けられる位置に応じて各界磁に適切な形状が与えられ、それに伴ってモーターM1~M6に適切な特性が与えられるため、マニピュレーター10の運動性能を特に高めることができる。
【0057】
なお、連続的とは、図14に示す各モーターに対応した領域の中心が、縦軸に沿って少しずつずれている様子を指す。具体的には、モーターM1~M6に対応する領域は、この順で、縦軸の下から上に向かって少しずつずれていればよい。この場合、図14において隣り合うモーター同士を比べたとき、先端側のモーターは、基端側のモーターに比べて、界磁のアスペクト比h/Rが0以上0.5以下の範囲で大きいことが好ましく、0.05以上0.3以下の範囲で大きいことがより好ましい。これにより、各モーターにより適切な特性を与えることができる。
【0058】
また、界磁のアスペクト比h/Rを踏まえると、モーターM1~M3は、アキシャルギャップモーターMaであることが好ましく、モーターM4~M6は、ラジアルギャップモーターMrであることが好ましい。アキシャルギャップモーターMaは、界磁のアスペクト比h/Rが比較的小さく、ラジアルギャップモーターMrは、界磁のアスペクト比h/Rが比較的大きい。これにより、マニピュレーター10の運動性能を特に高めることができる。なお、各モーターM1~M6におけるモーターの種類の選択は、上記に限定されない。
【0059】
また、本実施形態では、ロボット1が垂直多関節ロボットであるが、本発明に係るロボットは、水平多関節ロボット(スカラロボット)であってもよいし、多関節ロボットアームを複数(2本以上)備える双腕ロボットであってもよい。
【0060】
1.3.4.界磁の内外半径比
本実施形態では、図13に示すように、基端モーター(モーターM1)が有する界磁が、先端モーター(モーターM6)が有する界磁に比べて、内外半径比r/Rが小さいことが好ましい。
【0061】
界磁の内外半径比r/Rは、シャフトの半径方向における界磁の厚さ(肉厚)を表す指標に相当する。つまり、仮にRが一定であると仮定した場合、内外半径比r/Rが小さくなれば、界磁は半径方向により厚くなり、内外半径比r/Rが大きくなれば、界磁は半径方向により薄くなる。
【0062】
したがって、図13に示すような内外半径比r/Rの界磁を有することにより、基端モーターであるモーターM1では、界磁を半径方向に厚くすることができ、モーターM1のトルク定数を高めることができる。モーターM1には、マニピュレーター10の総重量に近い負荷が加わることから、モーターM1のトルク定数の増加は、マニピュレーター10の運動性能を高めることに寄与する。
【0063】
また、図13に示すような内外半径比r/Rの界磁を有することにより、先端モーターであるモーターM6では、界磁を半径方向に薄くすることができ、マニピュレーター10の先端部の軽量化を図るとともに、モーターM6のトルク定数を低くすることができる。モーターM6には、エンドエフェクター20が取り付けられることから、マニピュレーター10の先端部の軽量化およびモーターM6のトルク定数の減少は、エンドエフェクター20が取り付けられるマニピュレーター10の先端部に繊細な動きを与えるという観点で有用である。これにより、マニピュレーター10の運動性能を高めることができる。なお、繊細な動きとは、例えば、エンドエフェクター20で剛性の低い物体に触れたりする作業を行うとき、物体を壊したり意図せず動かしてしまったりすることなく作業を行うために必要な動き等が挙げられる。
【0064】
以上のようにして、界磁の内外半径比r/Rを最適化することにより、マニピュレーターの力点付近に設けられるモーターM1、および、マニピュレーター10の作用点付近に設けられるモーターM6が、それぞれ設けられる位置に応じた適切な形状の界磁を有することができ、それに伴ってモーターM1、M6に適切な特性が与えられる。これにより、マニピュレーター10の運動性能をより高めることができる。
【0065】
なお、モーターM1が有する界磁の内外半径比r/Rと、モーターM6が有する界磁の内外半径比r/Rと、の関係は、必ずしも上記のような関係でなくてもよい。また、上記のような関係を満たすとしても、両者の関係は、図13に示す関係に限定されない。
【0066】
また、モーターM6が有する界磁の内外半径比r/Rは、特に限定されないが、0.6以上1.0以下であることが好ましく、0.7以上0.9以下であることがより好ましい。これにより、マニピュレーター10の先端部により繊細な動きを与えることができる。
【0067】
また、モーターM1が有する界磁の内外半径比r/Rは、モーターM6が有する界磁の内外半径比r/Rを1としたとき、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.4以上0.8以下であることがより好ましく、0.5以上0.7以下であることがさらに好ましい。これにより、マニピュレーター10の低重心化とマニピュレーター10の先端部の軽量化とを両立させることができ、マニピュレーター10の運動性能をさらに高めることができる。
【0068】
モーターM1~M6の界磁の内外半径比r/Rは、図14に示すように、モーターM1からモーターM6に向かって連続的に大きくなっていることが好ましい。図14に示す関係を満たしたマニピュレーター10は、基端から先端に向かって連続的に、モーターが有する界磁を半径方向に薄くすることができる。換言すれば、図14に示す関係を満たしたマニピュレーター10は、先端から基端に向かって連続的に、モーターが有する界磁を半径方向に厚くすることができる。その結果、モーターM1~M6が設けられる位置に応じて各界磁に適切な形状が与えられ、それに伴ってモーターM1~M6に適切な特性が与えられるため、マニピュレーター10の運動性能を特に高めることができる。
【0069】
なお、連続的とは、図14に示す各モーターに対応した領域の中心が、横軸に沿って少しずつずれている様子を指す。具体的には、モーターM1~M6に対応する領域は、この順で、横軸の左から右に向かって少しずつずれていればよい。この場合、図14において隣り合うモーター同士を比べたとき、先端側のモーターは、基端側のモーターに比べて、界磁の内外半径比r/Rが0以上0.3以下の範囲で大きいことが好ましく、0.01以上0.2以下の範囲で大きいことがより好ましい。これにより、各モーターにより適切な特性を与えることができる。
【0070】
1.3.5.界磁の極対数
図15は、図2に示すモーターM1~M6と各モーターが有する界磁の極対数pとの関係を示すグラフである。図15の縦軸は、界磁の極対数pである。極対数pとは、界磁における磁極の周期Cの数である。また、図15では、従来技術に相当する比較例のグラフと、実施形態に相当する実施例1、2のグラフと、を併せて示している。
【0071】
本実施形態では、図15に示すように、基端モーター(モーターM1)が有する界磁が、先端モーター(モーターM6)が有する界磁に比べて、極対数pが大きくなるように設定されている。
界磁の極対数pは、モーターのトルク定数を左右する。具体的には、界磁の極対数pが大きくなると、モーターのトルク定数が高くなり、界磁の極対数pが小さくなると、モーターのトルク定数が低くなる傾向がある。
【0072】
したがって、図15に示すような極対数pの界磁を有することにより、基端モーターであるモーターM1のトルク定数を高めることができ、かつ、先端モーターであるモーターM6のトルク定数を低くすることができる。これにより、マニピュレーター10の運動性能をより高めることができる。
【0073】
なお、モーターM1が有する界磁の極対数pと、モーターM6が有する界磁の極対数pと、の関係は、必ずしも上記のような関係でなくてもよい。また、上記のような関係を満たすとしても、両者の関係は、図15に示す関係に限定されない。
また、基端モーター(モーターM1)が有する界磁の極対数pと、先端モーター(モーターM6)が有する界磁の極対数pと、の差は、極対数pによっても異なるが、一例として、2以上15以下であることが好ましく、5以上10以下であることがより好ましい。
【0074】
また、本実施形態では、モーターM1~M6が有する界磁の極対数pが、図15に示すように、モーターM1からモーターM6に向かって連続的に小さくなっていることが好ましい。図15に示す関係を満たしたマニピュレーター10は、基端から先端に向かって連続的に、モーターのトルク定数を低くすることができる。その結果、モーターM1~M6が設けられる位置に応じて適切なトルク定数が与えられるため、マニピュレーター10の運動性能を特に高めることができる。
【0075】
なお、連続的とは、図15において左右に隣り合うモーター同士を比べたとき、右のモーターが有する界磁の極対数pが、左のモーターが有する界磁の極対数p以下であることをいう。つまり、モーターM1からモーターM6に向かって、界磁の極対数pが、横ばいが許容された右肩下がりになっていればよい。
【0076】
1.3.6.界磁の極あたりのセグメント数
図16は、図2に示すモーターM1~M6と各モーターが有する界磁の極あたりのセグメント数lとの関係を示すグラフである。図16の縦軸は、界磁の極あたりのセグメント数lである。極とは、界磁における磁極の半周期に対応する部分である。また、隣り合う2つの極は、界磁における磁極の周期Cに対応する部分であり、これを極対という。さらに、極を構成する磁極の個片をセグメントという。また、図16では、従来技術に相当する比較例のグラフと、実施形態に相当する実施例1~3のグラフと、を併せて示している。
【0077】
本実施形態では、図16に示すように、基端モーター(モーターM1)が有する界磁が、先端モーター(モーターM6)が有する界磁に比べて、極あたりのセグメントの数(セグメント数l)が大きくなるように設定されている。
極あたりのセグメント数lは、界磁によって形成される磁束密度の変化の滑らかさを左右し、結果的にモーターのトルク定数を左右する。具体的には、極あたりのセグメント数lが大きくなると、界磁によって形成される磁束密度の変化がより滑らかになり、モーターのトルク定数が高くなり、極あたりのセグメント数lが小さくなると、界磁によって形成される磁束密度の変化が不連続的になり、モーターのトルク定数が低くなる傾向がある。
【0078】
したがって、図16に示すような極あたりのセグメント数lの界磁を有することにより、基端モーターであるモーターM1のトルク定数を高めることができ、かつ、先端モーターであるモーターM6のトルク定数を低くすることができる。これにより、マニピュレーター10の運動性能をより高めることができる。
【0079】
なお、モーターM1が有する界磁の極あたりのセグメント数lと、モーターM6が有する界磁の極あたりのセグメント数lと、の関係は、必ずしも上記のような関係でなくてもよい。また、上記のような関係を満たすとしても、両者の関係は、図16に示す関係に限定されない。
【0080】
また、本実施形態では、モーターM1~M6が有する界磁の極あたりのセグメント数lが、図16に示すように、モーターM1からモーターM6に向かって連続的に小さくなっていることが好ましい。図16に示す関係を満たしたマニピュレーター10は、基端から先端に向かって連続的に、モーターのトルク定数を低くすることができる。その結果、モーターM1~M6が設けられる位置に応じて適切なトルク定数が与えられるため、マニピュレーター10の運動性能を特に高めることができる。
【0081】
なお、連続的とは、図16において左右に隣り合うモーター同士を比べたとき、右のモーターが有する界磁の極あたりのセグメント数lが、左のモーターが有する界磁の極あたりのセグメント数l以下であることをいう。つまり、モーターM1からモーターM6に向かって、界磁の極あたりのセグメント数lが、横ばいが許容された右肩下がりになっていればよい。
【0082】
1.4.第1実施形態が奏する効果
以上のように、本実施形態に係るロボット1は、複数のジョイントJ1~J6を有するマニピュレーター10と、マニピュレーター10を支持するベース11と、を備える多関節のロボットである。そして、ジョイントJ1~J6は、回転軸AXを中心軸とする円環状をなす界磁と電機子とを有するモーターM1~M6を備える。また、回転軸の軸方向に沿う界磁の長さをhとし、界磁の外半径をRとし、h/Rを界磁のアスペクト比とする。さらに、複数のジョイントJ1~J6のうち最もベース11側のジョイントJ1が備えるモーターM1を基端モーターとし、複数のジョイントJ1~J6のうち最も先端側のジョイントJ6が備えるモーターM6を先端モーターとする。このとき、基端モーター(モーターM1)が有する界磁は、先端モーター(モーターM6)が有する界磁に比べて、アスペクト比h/Rが小さい。
【0083】
このような構成によれば、マニピュレーターの力点付近に設けられるモーターM1、および、マニピュレーター10の作用点付近に設けられるモーターM6が、それぞれ設けられる位置に応じた適切な形状の界磁を有することができ、それに伴ってモーターM1、M6に適切な特性が与えられる。これにより、マニピュレーター10の運動性能を高めることができる。
【0084】
また、モーターM1、M6が有する界磁の形状が適切になることで、モーターM1、M6のさらなる小型化、軽量化、静音化、長寿命化等を図ることができる。
さらに、適切な特性が与えられることにより、モーターM1、M6の出力効率を高められるため、マニピュレーター10の消費電力を削減できる。これにより、ロボット1の省エネルギー化を図ることができ、地球環境保護に寄与することができる。
【0085】
また、本実施形態に係るロボット1では、界磁の内半径をrとし、r/Rを界磁の内外半径比とするとき、基端モーターであるモーターM1が有する界磁は、先端モーターであるモーターM6が有する界磁に比べて、内外半径比r/Rが小さいことが好ましい。
【0086】
このような構成によれば、マニピュレーターの力点付近に設けられるモーターM1、および、マニピュレーター10の作用点付近に設けられるモーターM6が、それぞれ設けられる位置に応じた適切な形状の界磁を有することができ、それに伴ってモーターM1、M6に適切な特性が与えられる。これにより、マニピュレーター10の運動性能をより高めることができる。
【0087】
また、本実施形態に係るロボット1では、基端モーター(モーターM1)は、アキシャルギャップモーターMaであることが好ましく、先端モーター(モーターM6)は、ラジアルギャップモーターMrであることが好ましい。これにより、マニピュレーター10の運動性能を特に高めることができる。
【0088】
また、本実施形態に係るロボット1では、界磁における磁極の周期Cの数を極対数pとするとき、基端モーター(モーターM1)が有する界磁は、先端モーター(モーターM6)が有する界磁に比べて、極対数pが大きいことが好ましい。これにより、モーターM1のトルク定数を高めることができ、かつ、モーターM6のトルク定数を低くすることができる。その結果、マニピュレーター10の運動性能をより高めることができる。
【0089】
また、本実施形態に係るロボット1では、界磁における磁極の周期Cに対応する部分を極対とし、磁極の半周期に対応する部分を極とし、極を構成する磁極の個片をセグメントとするとき、基端モーター(モーターM1)が有する界磁は、先端モーター(モーターM6)が有する界磁に比べて、極あたりのセグメントの数が大きいことが好ましい。これにより、モーターM1のトルク定数を高めることができ、かつ、モーターM6のトルク定数を低くすることができる。その結果、マニピュレーター10の運動性能をより高めることができる。
【0090】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るロボットシステムについて説明する。
図17は、第2実施形態に係るロボットシステム100Aを示す斜視図である。
【0091】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図17において、前記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0092】
ロボットシステム100Aは、ロボット1Aと、ロボット1Aを移動させる移動架台12と、図示しない制御装置と、を備える。
ロボット1Aは、第1実施形態に係るロボット1と同様である。したがって、ロボットシステム100Aは、移動架台12を備える以外、第1実施形態に係るロボットシステム100と同様である。
【0093】
ロボット1Aは、複数のジョイントJ1~J6を有するマニピュレーター10と、マニピュレーター10を支持するベース11Aと、エンドエフェクター20と、力センサー30と、を備える。
移動架台12は、モーターM0を有し、x軸に沿ってベース11Aを移動させる。これにより、移動架台12は、x軸に沿ってロボット1Aを移動させることができる。なお、移動架台12は、曲線に沿ってロボット1Aを移動させる機能を有していてもよいし、AGV(Automatic Guided Vehicle)を構成する機能(自動搬送機能)を有していてもよいし、AMR(Autonomous Mobile Robot)を構成する機能(自律走行機能)を有していてもよい。
【0094】
以上のように、本実施形態に係るロボットシステム100Aは、ロボット1Aと、ロボット1Aを移動させる移動架台12と、を備える。
このようなロボットシステム100Aによれば、ロボット1Aの稼働範囲を広げることができ、ロボット1Aによる作業能力を高めることができる。
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0095】
以上、本発明に係るロボットおよびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明に係るロボットおよびロボットシステムは、それぞれ前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成物に置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…ロボット、1A…ロボット、10…マニピュレーター、11…ベース、11A…ベース、12…移動架台、20…エンドエフェクター、30…力センサー、40…制御装置、41…処理回路、42…記憶回路、50…シャフト、51…電機子、52…界磁、52a…界磁、52b…界磁、52c…界磁、52d…界磁、52e…界磁、53…バックヨーク、54…コア、55…コイル、58…磁極、58a…磁極、58b…磁極、58c…磁極、58d…磁極、58e…磁極、60…シャフト、61…電機子、62…界磁、62a…界磁、62b…界磁、62c…界磁、62d…界磁、63…バックヨーク、64…コア、65…ヨーク部、66…リブ部、67…コイル、68…磁極、68a…磁極、68b…磁極、68c…磁極、68d…磁極、100…ロボットシステム、100A…ロボットシステム、AX…回転軸、C…周期、E1…エンコーダー、E2…エンコーダー、E3…エンコーダー、E4…エンコーダー、E5…エンコーダー、E6…エンコーダー、J1…ジョイント、J2…ジョイント、J3…ジョイント、J4…ジョイント、J5…ジョイント、J6…ジョイント、M0…モーター、M1…モーター、M2…モーター、M3…モーター、M4…モーター、M5…モーター、M6…モーター、Ma…アキシャルギャップモーター、Mr…ラジアルギャップモーター、l…セグメント数、p…極対数、h…長さ、r…内半径、R…外半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17